本日小ネタをまとめて。
その1
「ハガレン」3話「邪教の街」でやっていた、ちょっと変わったカメラワーク。教会の中で語るエドとロゼ。

画面分割自体は別に珍しい技法ではないが、このカットは下図のように

右のエドはフィックスで左側のロゼにだけズームしていくのだ。左右ともにズームする、又は片方はズーム片方は引くというのは時々あるけど、一方だけにズームしていくのはあまり見た覚えがない。
このシーンは一見ダイアローグに見えながら、エドの言葉はロゼの心に刺さるのに対して、心身共に鋼の鎧をまとうエドにロゼの言葉は届いていない、という表現なのだろうと思うが。
こんな簡単な工夫で味のある画面が作れるものなのだなあ、と。
その2
「ダークナイト」のちょっとした伏線。
「ダークナイト」の中盤、バットマンことブルース・ウェインは地方検事ハービー・デントに後を託してバットスーツを脱ぐことを決意する。しかしその後、デントは「実は自分がバットマンだ」と爆弾発言、逮捕される。護送中のデントを、ジョーカーが襲う。そこへ現れるバットマン!
私は、この一連のシークエンスが急ぎすぎだと思っていた。
さっきバットマンをやめると言っておいて、すぐまた登場してしまうんだもの。もちろん物語上の要請ではそれが正しいというのは解る。上映時間もまだ半分だし(いわゆる折り返し点、ミッドポイントだ)。
しかし、バットケイブを閉鎖する描写までしているのだから、もう一度バットマンを演じようと決意するための葛藤が必要なはずだ、と感じていたのだ。
ところが、観返してみて気がついた。これ、ちゃんと伏線が張られているのだ。
この映画で執事のアルフレッドが初登場するシーン。DVDで13分目。
昨夜の首尾を語り、自分で傷口を縫うウェインに、アルフレッドは「限界を知るべきです」と諭す。
ウェインは「バットマンに限界などない」と返す。
アルフレッド(A)「でももしそのときが来たら?」
ウェイン(W)「そのとき、君は『だから言ったのに』と言うだろうな」
A「本当にそのときが来たら、言いませんよ」
というやりとりをする。
で、バットケイブ閉鎖のシーン。1時間10分目。
W「今日こそ、『だから言ったのに』と言ってくれ」
A「そういう気分では・・・・・・」
で、少し間を置いてから
A「だから言ったのに!」
つまり、逆説的に「今はまだバットスーツを脱ぐべきときではない」と言っているのだ。
だから、「もう一度バットマンになろうと決意するシーン」なんて必要ないわけ。
ついでに原語も確認してみた。最初のやりとりは、
A : And what's gonna happen on the day that you find out?
W : We all know how much you like to say "I told you".
A : On that day, Master Wayne, even I want do that.
バットケイブ閉鎖時のやりとりはこう。
W : Today, you get to say "I told you".
A : Today, I want to・・・・・・But I did bloody tell you.
日本語字幕ではどちらも「だから言ったのに」だが、言い回しが違う。bloodyは単なる強調の意でいいのかな?この辺のニュアンスの違いは私の英語力ではくみ取れない。語学力のある方にご教示頂きたい。
その3
毎週楽しく観ている「佐武と市捕物控」の実写合成。
背景が実写だったり

実写画面上でセルが動いたりするのは別に驚かないが(カニが歩く。上の図は止め絵)、

キャラクターの脚まで実写にしちゃうというのは大胆だ!

斬られた血の表現。

水槽に絵の具を落としたのを撮影している。
日本のTVアニメ表現の原点はここにある、というのはこういう実験精神を指しているのですな。
「絶望先生」はまだ甘いぞ。がんばれシャフト。
なお、この回は小林清志と井上真樹夫がゲスト出演していて笑った。
おまけ。
「青い花」第3話から今週の山節。
「送ってくれて、ご苦労様」。
「ありがとう」じゃなくて。
これが許嫁に対するセリフなんだもの。ただこれだけで人間関係が解る。
山文彦脚本で、1話絵コンテ・演出がカサヰケンイチ。2話が長井龍雪。
残念ながら長井の担当はこれだけらしいが、それでも幸せすぎます。
|