更新履歴と周辺雑記

更新履歴を兼ねて、日記付け。完結していない作品については、ここに書いていきます。

2026年6月16日(火)
縦型ショートドラマ

BSスペシャル『縦の支配 中国ショートドラマの光と影』を観た。
近年中国で激増している、スマホ向けショートドラマ。1話わずか1分間。その制作の実態と問題。
4日で数10話分の撮影を終えると、監督不在のまま編集に突入する。
以下はその編集者の発言だが、これがなんとも含蓄に富んでいる(見た目も味わい深いが)。











「ショートドラマは考えさせないことが重要。少しでも考えると欠点に気づいてしまう」
「ケンカのシーンはセリフを重ねて作る」
「視聴者を刺激するポイントはすべて脚本に指示されている」
「女が感情的にセリフを言うとき素早く顔にズームする」
「音響と効果音の波で視聴者の思考を止める」
「まるでファストフードのようだ。見終われば内容を思い出すことはない」

これがタイパ最優先ファスト視聴の終着点。
…とは言うものの、昭和30年代、日本映画黄金期に大量生産されていたプログラムピクチャーも似たようなもんだったんじゃねーの?という気もする。

ディレクター:高倉天地 劉璐
制作統括:高倉基也 松島剛太 鐘川崇仁 


○サイト開設20周年
気がついたら、当サイト開設から20年が経過していた。
早いものだ。
思えば、開設した20年前はちょうどブログの勃興期だった。すでにテキストサイトは古いものだったのだが、あまり深く考えずにホームページビルダーを買い込んでちまちまと作った。
中断もあったがあっという間に20年が経って、逆にブログはサービスが相次いで終了し、消えつつある。残ったのはこの示準化石のようなテキストサイト。皮肉な話だ。
ともあれ、20年も続いたのはお読みくださる皆様と、なによりサーバーを貸し続けてくれるDTI社のおかげである。
感謝、感謝。

追記
ブログと違って余計な広告が載らないのは、ホームページの明らかな利点ですな。

2026年5月25日(月)
『淡島百景』7話

名作になるべくして生まれてくる作品というものが、まれに存在する。高山文彦が手掛けた『青い花』が例えばそうだ。
そして今季一番楽しみに観ているこの作品、浅香守生監督の『淡島百景』。監督は1967年生まれだから今59歳。還暦も間近でこんな瑞々しい作品が撮れることには驚くしかない。

その7話で感心した場面。
病室の窓から見える満開の桜が、3回映る。上からアバンタイトル、Aパート始め、Bパート始め。







これ同じ光景なのに、よく見ると3枚とも違う絵を使っているのだ。(水面を見るとわかりやすい)

時間の経過によって花が散っているからだが、同じ絵を使いまわしたって誰も文句は言わないだろうに、この手間のかけよう。
いやまあ、たぶんこれはデジタル制作の恩恵で、思ったほどの手間ではないのかもしれない。それにしたって、これほどの細やかな気配りが質の向上に寄与しないわけがない。
神は細部に宿るとはこのことだ。

思えば志村貴子作品は、『青い花』は言うに及ばず、『放浪息子』といい『どうにかなる日々』といい、どれも幸せなアニメ化だ。優れた原作だからではあるが、優れたアニメスタッフを惹きつけるものがある、ということでもあろう。

ちなみに、前の期で一番は『違国日記』。

2026年5月10日(日)
最近のイベント

〇アニメスタイルイベント「20年目の『ストレンヂア』」
こんな記事書いたことのある人間としては、行かないわけにいかない。10数年ぶりに新文芸坐へ。
中村豊氏の『ストレンヂア』愛が見えて大変よかった。
今回は質疑応答もあり。さすがアニメスタイル読者というか、質問もえらいハイレベルだった。
以下は私の要約。

Q:剣術と中国武術を交えたアクションを描くにあたって注意したことは。
A:安藤監督:現実味がありつつ、アニメ的な見応え、カッコよさとのバランスをとるのに苦労した。
とはいえ、羅狼のジャンプは高すぎた。
中村氏:クライマックスまでのアクションの積み重ねがあるから、最後はもう超人的にするしかなかった。舞台もそれでだんだん大きくなって、最終的に美術設定の3倍くらいの広さになってしまった。
名無しはどっしりと地に足のついた動き。羅狼は乱舞するような動きで対比させた。
安藤監督:名無しは疲れてるから。羅狼は楽しくて仕方がない感じ。

Q:脚本の高山文彦氏の仕事で印象に残っていることは。(年来のお付き合いの方はお分かりと思うが、これは私の質問)
A:安藤監督:ペラ1枚の私の原案、少年と剣士の話だけからシナリオにまとめてくれた。最終的に第5稿をもらったときに、後は口出ししないから好きにやってくれと言われた。そこから自分で考えて自分の映画にしたが、何か迷ったときに戻る場所としてあり続けた。

Q:時代劇をアニメでエンタメにするうえで工夫したことは。
(小黒氏から補足)『獣兵衛忍風帖』にする道はなかったの?
A:安藤監督:山田風太郎の世界も大好きなのだが、ここでは現実的な剣戟にこだわった。リファレンスにしたのは『カムイの剣』。あれも妖怪じみた忍者が出てくるが、幻想シーン。1対1の剣戟がクライマックスにくるアニメは他にないので。


〇藤津氏の「アニメを読む」特別講義「花田十輝の人生を変えた作品」
脚本家の花田十輝氏を招いての特別講義。以下、印象的な発言の要約。

・幼稚園時代から『11PM』を観ていたTVっ子。
・『トム・ソーヤーの冒険』でハックルベリー・フィンが夜の散歩に誘いに来るシーンが好きだった。子供にとって夜は異世界。『中二病でも恋がしたい!』で六花が夜のベランダに降りてくるシーンはこれが念頭にある。
・かけだしのころ、雑誌に『テッカマンブレード』のあらすじを書いていた。
・『ガンダム』のサイド6に入るシーンで、フラウが「両替は済んだ?」と言う。このたったひとことで「外国に来た」感が出る。これを書けるかどうかが脚本家の腕の差。
・ララァのファンだった。安彦さんの絵はもちろんだが、藩恵子の声が好きなのだと後で気がついた。
・『めぐりあい宇宙』冒頭の映画っぽさ。
・『愛の若草物語』手紙の回。キャラクターと道具一つあれば、30分のお話が回る。脚本家としてのルーツ。
・完成度の高いシナリオは、
①必要なことが書いてある。
②不要なことは書いていない。
③ムダなことはムダと承知の上で書いてある。
何のために書かれているか、目的が明確。

2026年3月23日(月)
生存報告

皆様ご無沙汰しております。
生きてますよ。

フェイスブックではお知らせしたけど(一応アカウントは持っているのだ)、昨年11月に晴れて関東へ戻って参りました。
そろそろ、また書き物したい欲がうずいてきたので、ちょっとずつ復帰していこうと思います。
とりあえず最新ネタ2件。

○『パリに咲くエトワール』
谷口悟朗監督が何でもできる器用な人なのはよく承知しているが、少女が主人公のこういう作品をどう料理するのか興味があった。結果、骨太な王道エンタテイメントで、実に楽しかった。
比べるのも気の毒だが、ちょうど1週間前に観た『花緑青の明ける日に』と比べるともう格の差が歴然。
感動的でありつつ、大事な話をするときは引いたカメラで、また俯瞰を多用するクールさはいかにも谷口節。第1次世界大戦を背景にした結構シビアな世界観も、お話の説得力に寄与している。

パンフよりインタビュー抜粋。太字は引用者による。

キャラクターデザイン・総作画監督 山下 祐
-作画をするうえで意識をしていたことはありますか?
あまり影をしつこくつけないようには意識しました。鼻の影も、鼻筋の輪郭線の側に軽くつけるぐらいです。光源に対して面で影がつくのではなく、あくまでデザインのひとつとして影をつける方向を原則に考えました。洋服のシワについても、光源に対してというよりは、洋服の質感を伝えるためにつける感じです。そのほか、横顔で口を開いたとき口の中は描くのかどうなのかと、涙の処理の方法については、作画上の注意事項をこちらでまとめて、共有することであまりバラつかないようにしました。(後略)

-完成した本作を観ていかがでしょうか?
本作はモブシーンを是非観てほしいです。パリの大通りのシーンを観ても、止め絵ではなく、馬車が走っていたり、道行くいろんな人がちゃんと歩いていたりと、街の雰囲気が伝わるように描かれています。馬車やトラムも手描きで動いていて、チェックに回ってきたカットを見るたびに、「今回は(省力化する方向に)逃げないんだな」と思い、完成を楽しみにしていました。

殺陣作画監督 中田 栄治
-実際に作画をする上で、なにか参考にしたものはありますか?
(略)ほかにも薙刀を持ったことがない制作スタッフにも持ってもらって、その動きを観察しました。これはこれで、手元がこんがらがっちゃったり、足運びがヘンだったりと、初心者がやりがちなミスが、後半の練習生たちの動きの参考になるんです。頭の中で想像した下手な動きだけだと、ワンパターンになってしまいますが、実際にいろいろな人にやってもらうと意外性のある動きが出てくるんです。
-千鶴の薙刀さばきを描く上で意識したポイントはありますか?
パリでフジコと再会するシーンでは、武術家らしいムダのない動きを意識しました。難しかったのは、リアルに寄せすぎるとアニメの動きとしてはもったりするというか、重くなりすぎてしまうところです。かといってケレン味を入れすぎると、今度はリアリティがなくなってしまう。そのバランスをとるところに苦労しました。
(後略)「」


本作に限らず、近年デジタル化が行くところまで行って、手描きの復権/再評価の機運があるような気がする。


○アニメスタイルイベント『THE 八犬伝』1話、新章4話、『迷宮物語』
行ってきた。関東に帰ってきたという実感が湧いた。新文芸座に行ったのは十数年ぶり。『THE 八犬伝』『迷宮物語』ともに、「初めて観た人」という質問に場内8割ぐらいは挙手していた。こっちはびっくりだよ。こころなしか、『ヤマト2199』と違って若い人が多かった。機会があれば若い人もこういうけったいな作品を観る、というのは心強い。
トークイベントから印象に残ったくだり。私の記憶によるものなので、あくまで大意。

小黒祐一郎氏
「マッドハウスは歴史上倒産の危機が3回あって、その最初が『迷宮物語』。ちなみに2回目は『YAWARA!』。初めてのTVシリーズで、力の入れ具合がわからなかった。3回目は『メトロポリス』(場内納得)。」
井上俊之氏
「『THE 八犬伝』1話冒頭のアクションシーンは、沖浦(啓之)君の原画。
新章4話の作画説明資料を見たことがあるが、「口パクのときに、小鼻が動くこと」と注意をしていた。やってみるとわかるように、確かに実在の人間の動きはその通りだがアニメでこんな表現を見たことがない。また、白眼をほとんど描かない。実際、普段人間の眼は白眼などほとんど見えないが、そんなことを意識せずにアニメでは白目を描いてしまっていた。
大平晋也君が、『AKIRA』からわずか4年の間に何があってこのような表現に向かったのか、とても興味がある。」

井上氏も4話を「大事故物件(作画はともかく)」と評していて、よかった!当時そう思ったのはオレだけじゃなかったんだ!と思った。


○『ぼくたちのコミケ50年史』
NHK-BSはいつもそうだが、取材対象への敬意がうかがえるいい番組だった。スタッフの志向が反映されるものなのか知らないが、メモしておく。
ディレクター:堀いつか
プロデューサー:神原一光
取材:大嶋智博、青木恒介


○『原画は、なぜ海外へ マンガ・アニメ文化のゆくえ』
上とうって変わって、ダメな番組。
タイトルから、「最近の原画スタッフは海外発注ばかりで、このままでは技術が継承されない。アニメ大国の行く末やいかに」という番組だと思ったら、マンガの生原稿を海外のコレクターが美術品として買いあさってるという話だった。
マンガの生原稿とアニメの原画及びセル画をごっちゃにしているあたり、雑なこと極まりない。

私はマンガにせよアニメにせよ原画にあまり興味がなくて、印刷/放送されたものが完成形だと思っている。大衆文化は大量生産され、消費されて消えていくのが本望という考えにも一理はある。
海外のコレクターだって、温度・湿度・酸化・火災に気を付けて長期安全に保存してくれるのなら、マンガ家宅の押し入れで朽ちていくよりずっといい。
国内で研究者がアクセスしにくくなるのは確かに欠点だが、事例として示していた『ナウシカ』の修正・指示入り原画。あれファンが買いそうな原画か?宮崎の手になるものならイワシの頭でもいいという向きもいるのかもしれんが。


バックナンバー