更新履歴と周辺雑記

更新履歴を兼ねて、日記付け。完結していない作品については、ここに書いていきます。

2018年7月17日(火)
人形の肖像

最近、山本弘氏の言うレトロ特撮映画をよく観ている。
その一環で『サンダーバード6号』('68)を観たら、特撮とは別に面白いシーンがあった。
以前、アニメの中の絵画表現について調べたことがある。
これはさしずめ、人形劇の中の絵画表現。レディ・ペネロープの肖像。



こちらがご本人。



スタッフが悩んだかどうかは知らないが、そのまんまの写実主義で行くことにしたらしい。

シルビア・アンダーソンと、本作監督のデイビッド・レーンによる音声解説から。
次作の『キャプテン・スカーレット』について。
『サンダーバード』はあの頭でっかちの人形だが、『キャプテン・スカーレット』では人間に近い等身に改めたら不評だったことに触れ、「あれは人形の進化形ではなかった」と言っていて興味深い。
人形の口を動かすには、当初は手動だったが、後に頭部に電磁石を仕込んで、音声テープと連動して口パクが可能になった。手動の頃は編集でセリフに口パクを合わせていたのだそうだ。人形劇でもそんなにリップシンクにこだわるのか。
表情をつけるためには目を動かす。この眼球は、本物の義眼を製造していた会社に発注したもの。

本作では複葉機のタイガー号が大活躍するのだが、これは本物も使用している。本機を操縦していたのはジョーン・ヒューズという女性パイロット。元イギリス空軍で爆撃機の輸送任務に就いていて、『素晴らしきヒコーキ野郎』('65)では、飛行機の上から通り過ぎざまに鐘を打つというスタントをしていた人だそうだ。
終盤のスタントでは複葉機の翼の上に実物大の人形をくくりつけて撮影したので、空気抵抗が多くて苦労したとか。
本作監督のデイビッド・レーンは『サンダーバード』は子供だましでないのが良いと語る。
「子供は子供なりに理解していて、子供だましには引っかからない。5歳の子供は5才児向けの番組なんか観ない。背伸びしようとして、10才児向けの番組を観るんだ」

アンダーソン夫妻は後に実写番組制作に乗り出す。そこで初めて、「大根役者というものの存在を知った」そうだ。
なお、本作では手のアップは生身の人間のものだが、スタッフの手ですませようとしたら、組合から「俳優の手を使え」と言われて困ったとか。

本作以外にも、いろいろレトロ特撮ものを観た。
山本氏が強く推していた『雨ぞ降る』('39)のダム決壊シーンは確かに凄いが、私がゾクッときたのは別のシーン。洪水の後に疫病が発生し、ヒロインは看護婦として患者の世話をしているのだが、疲労のあまり、間違えて患者の使ったグラスで水を飲んでしまう。
これに気づくシーンのカメラワークが凄いのだ。
水を飲み終えたヒロインがふと患者の方を見ると、その足下、水差しの脇の定位置にグラスがない。そこからカメラがぐるっと回り込んで彼女の手元に、彼女が飲むつもりで水を入れたグラスと、たった今飲みほしたグラスとが並んでいるのが映る!感染した!ということが一発でわかる戦慄のシーンだ。
『桑港』('36)のサンフランシスコ大地震シーン。『シカゴ』('37)のシカゴ大火シーン。そして『大地は怒る』('47)のニュージーランドの大地震のシーン。これ、森の巨木が次々に倒れていくのだが本当にミニチュアとは信じられない出来。

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