映画観続けて30数年、私はいまだにウィリアム・ワイラーとロバート・ワイズの区別がつかないのだが、これは1961年のワイラー監督作品。
片田舎の私立女学校で、2人の女教師が同性愛者の噂を立てられて破滅していくというお話。女性の受難を描く作品は、男性が救う形になることが多い(ヒチコック映画とか)が、この映画は最後までヘビーでむしろ男は全く役に立たない。生徒たちが突然退学し始め、主人公がその理由、同性愛者の噂が流れていることを知るシーンを遠景・無音で撮ったり、名誉毀損の裁判のシーンをばっさりカットして結果だけ見せたり、映画ならではの省略話法が実に心地よい。落ち着いたカメラワークと編集で、いかようにも劇的に見せることができる好例。
噂の発生源となる子供の邪悪さも容赦ない描写。この性悪娘を演じたのはカレン・バルキンという子役で、これがデビュー作だが、ImDBによるとこの後わずか3作品で引退してしまったらしい。想像だが、本作のこの役があまりにも真に迫っていたためではないか。
うまく言えないのだが、男性が百合を見るのと、女性がBLを見るのとでは、同じようにファンタジーとして楽しんでいるとしても決して対等ではない。
百合を娯楽として消費する者は、ぜひ一度観ておくべき映画。
ついでながら、今WOWOWで連続ドラマ『ミセス・アメリカ~時代に挑んだ女たち~』を放映している。こちらは1970年代、男女平等憲法修正条項の批准を巡る推進派と反対派の抗争を描いたもの。
ポイントは、反対派の女性たちに焦点を当てているところ。男女平等となれば、女性も徴兵されるようになるのではないかという不安に妊娠中絶問題も絡み、反対する女性も決して少なくなかった。
その反対派のリーダーを演じているのがケイト・ブランシェットで、声を当てているのが田中敦子。『呪術廻戦』もそうだが、田中敦子の声でしゃべる敵には勝てる気がしない!
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