2006年セ・リーグの総括


前半戦終了時と同じ観点で、各チームの成績をまとめてみた。打撃成績は100打席以上の選手の集計なので、チーム全体の集計とは若干異なる。

長打率 出塁率 OPS 四球 三振 盗塁 犠打 併殺打 得点 失策 被本塁打 奪三振 与四球 DIPS 失点
中日 0.416 0.338 0.754 434 747 70 95 95 669 46 109 1034 333 3.47 496
阪神 0.402 0.324 0.726 408 846 50 76 91 597 55 91 1109 409 3.35 508
ヤクルト 0.402 0.323 0.729 357 803 69 61 100 669 83 126 1020 373 3.75 642
巨人 0.364 0.301 0.665 307 794 62 47 69 552 55 135 1027 335 3.75 592
広島 0.396 0.324 0.720 260 771 52 58 86 549 81 171 952 382 4.33 648
横浜 0.388 0.314 0.702 321 907 48 98 84 575 75 156 976 422 4.24 662

一見して分かるのが、得点力の重要性である。守りのチームの印象が強いドラゴンズは、実際には長打率・出塁率ともにトップで、もちろん得点もスワローズと並んで一位。かつDIPSはタイガースに次いで低く、失点は最も少ない。優勝も当然である。ついでに得失点差を調べてみると下のようになって、下位2チームを除いて見事に順位と相関する。

得失点差
中日 173
阪神 89
ヤクルト 27
巨人 -40
広島 -99
横浜 -87

面白いのが、犠打と併殺打が全く相関していないこと。犠打が多いほど併殺が少ないように思えるが、犠打の多いドラゴンズと少ないスワローズは、併殺打数はあまり変わらないし、得点は全く同じである。また、犠打の少ないジャイアンツは併殺打も少ない。この結果は、「ゲッツーを防ぐための犠打」という戦法にあまり意味がないことを裏付けている、と言えそうだ。
一方DIPSの方を見てみると、上位2チームが優秀なのは当然として、スワローズとジャイアンツがDIPSは同じながら、スワローズが50点も失点が多い。つまり投手の責任でない失点が多いわけで、ここで気になるのが失策である。失策数は守備力とあまり関係がないことを承知で言うのだが、スワローズとジャイアンツの失策数の差28は、やはり有意なものと考えるべきであろう。ここで前半戦終了時(80〜85試合を消化)と比べてみると、上位2チームの失策数の増加がわずかであることが分かる。つまり大事な夏場にそれだけミスが少ないわけで、上位進出のポイントはこの辺にもありそうだ。

2006年プロ野球前半戦の総括



前半戦終了を機に、セ・リーグ各チームの成績をまとめてみた。打撃成績は、100打席以上の選手のものを集計した。

長打率 出塁率 OPS 四球 三振 盗塁 犠打 併殺打 得点 失策 被本塁打 奪三振 与四球 DIPS 失点
中日 0.394 0.326 0.720 216 407 38 54 53 335 33 52 567 185 3.33 262
阪神 0.394 0.323 0.717 240 517 28 37 55 336 44 49 655 237 3.25 281
ヤクルト 0.431 0.338 0.769 192 435 42 25 51 411 54 75 590 201 3.73 367
広島 0.390 0.306 0.696 141 440 24 26 59 315 56 94 584 206 4.08 359
巨人 0.395 0.316 0.711 176 451 33 27 38 356 45 84 625 214 3.82 376
横浜 0.423 0.329 0.752 183 488 27 58 41 341 47 89 576 243 4.19 386


昨年、チーム打率はリーグトップでありながら得点はリーグ最少と得点力不足に泣いたヤクルトが、大幅な得点力アップを果たしている。その原動力は、長打率(0.402→0.431)、出塁率(0.323→0.338)の2つともに向上したことだ。これらはいずれもリーグトップである。ホームランに頼った大味な野球という批判も多いが、出塁率が高いのはアウトになりにくいということであり、すなわち打線のつながりがいいということに他ならない。四球数はリーグ3位であり、にもかかわらず出塁率がトップなのは、それだけヒットで出塁しているということになり、さらに価値が高い。
三振、併殺打ともに目立って多いということはなく、「チャンスで三振かゲッツーばかり」という批判は当たっていない。
また、盗塁も他チームに比べて明らかに多い。しかも上の表には、代走専門の三木の7盗塁は含まれていない。阪神の28盗塁のうち20個は赤星による。チームとして盗塁を重視しているとは、決して言えない。
横浜、中日を見ればわかるように、犠打の数が多いほど得点が少ない。この傾向は昨年から変わらない(05年の阪神731得点・85犠打、横浜621得点、119犠打)。犠打でアウトを増やすことで、得点機会を減らしているのである。これにいち早く気づいたヤクルトが、チームの改革に成功した。

得点が増加したにもかかわらず、ヤクルトが上位に進出できないのは、得点以上に失点が多いからである。その原因のひとつが失策と思われる。54失策は、既に昨年の51失策を超えている。特に、他チームに比べて外野の失策が多いのが気になる。内野に比べ、外野の失策は失点につながりやすいのは容易に想像がつく。

一方で、失策は必ずしも守備能力の優劣を意味しない。失策したのは、正しい守備位置にいて守備機会を得たからである。本当に下手なら、そもそも守備機会を得られない。昨年の成績を見ても、114失策で779失点の広島はダントツだが、他の5チームはいずれも60失策前後でありながら、失点は533〜737までと大きな差がある。

そこで問題は、投手力である。五十嵐の不調、石井弘の故障でリリーフ陣が手薄なヤクルトだが、被本塁打が上位2チームに比べて多い。ただ、これは球場の狭さも影響しているはずで、むしろ健闘していると言えるかもしれない。奪三振は中日より上、与四球は阪神より優秀である。中日で奪三振が多いのは川上だけらしい。一方阪神は、与四球は多いものの、三振を奪ってピンチを脱している、という傾向がうかがえる。DIPSを計算してみると、中日、阪神がやはり図抜けていて、上位と下位に明確な差が出た。

ヤクルトが上位を狙うには、投手陣のテコ入れと外野のエラーの減少が重要になりそうだ。