前半戦終了時と同じ観点で、各チームの成績をまとめてみた。打撃成績は100打席以上の選手の集計なので、チーム全体の集計とは若干異なる。
長打率 | 出塁率 | OPS | 四球 | 三振 | 盗塁 | 犠打 | 併殺打 | 得点 | 失策 | 被本塁打 | 奪三振 | 与四球 | DIPS | 失点 | |
中日 | 0.416 | 0.338 | 0.754 | 434 | 747 | 70 | 95 | 95 | 669 | 46 | 109 | 1034 | 333 | 3.47 | 496 |
阪神 | 0.402 | 0.324 | 0.726 | 408 | 846 | 50 | 76 | 91 | 597 | 55 | 91 | 1109 | 409 | 3.35 | 508 |
ヤクルト | 0.402 | 0.323 | 0.729 | 357 | 803 | 69 | 61 | 100 | 669 | 83 | 126 | 1020 | 373 | 3.75 | 642 |
巨人 | 0.364 | 0.301 | 0.665 | 307 | 794 | 62 | 47 | 69 | 552 | 55 | 135 | 1027 | 335 | 3.75 | 592 |
広島 | 0.396 | 0.324 | 0.720 | 260 | 771 | 52 | 58 | 86 | 549 | 81 | 171 | 952 | 382 | 4.33 | 648 |
横浜 | 0.388 | 0.314 | 0.702 | 321 | 907 | 48 | 98 | 84 | 575 | 75 | 156 | 976 | 422 | 4.24 | 662 |
一見して分かるのが、得点力の重要性である。守りのチームの印象が強いドラゴンズは、実際には長打率・出塁率ともにトップで、もちろん得点もスワローズと並んで一位。かつDIPSはタイガースに次いで低く、失点は最も少ない。優勝も当然である。ついでに得失点差を調べてみると下のようになって、下位2チームを除いて見事に順位と相関する。
得失点差 | |
中日 | 173 |
阪神 | 89 |
ヤクルト | 27 |
巨人 | -40 |
広島 | -99 |
横浜 | -87 |
面白いのが、犠打と併殺打が全く相関していないこと。犠打が多いほど併殺が少ないように思えるが、犠打の多いドラゴンズと少ないスワローズは、併殺打数はあまり変わらないし、得点は全く同じである。また、犠打の少ないジャイアンツは併殺打も少ない。この結果は、「ゲッツーを防ぐための犠打」という戦法にあまり意味がないことを裏付けている、と言えそうだ。
一方DIPSの方を見てみると、上位2チームが優秀なのは当然として、スワローズとジャイアンツがDIPSは同じながら、スワローズが50点も失点が多い。つまり投手の責任でない失点が多いわけで、ここで気になるのが失策である。失策数は守備力とあまり関係がないことを承知で言うのだが、スワローズとジャイアンツの失策数の差28は、やはり有意なものと考えるべきであろう。ここで前半戦終了時(80〜85試合を消化)と比べてみると、上位2チームの失策数の増加がわずかであることが分かる。つまり大事な夏場にそれだけミスが少ないわけで、上位進出のポイントはこの辺にもありそうだ。
前半戦終了を機に、セ・リーグ各チームの成績をまとめてみた。打撃成績は、100打席以上の選手のものを集計した。
長打率 | 出塁率 | OPS | 四球 | 三振 | 盗塁 | 犠打 | 併殺打 | 得点 | 失策 | 被本塁打 | 奪三振 | 与四球 | DIPS | 失点 | |
中日 | 0.394 | 0.326 | 0.720 | 216 | 407 | 38 | 54 | 53 | 335 | 33 | 52 | 567 | 185 | 3.33 | 262 |
阪神 | 0.394 | 0.323 | 0.717 | 240 | 517 | 28 | 37 | 55 | 336 | 44 | 49 | 655 | 237 | 3.25 | 281 |
ヤクルト | 0.431 | 0.338 | 0.769 | 192 | 435 | 42 | 25 | 51 | 411 | 54 | 75 | 590 | 201 | 3.73 | 367 |
広島 | 0.390 | 0.306 | 0.696 | 141 | 440 | 24 | 26 | 59 | 315 | 56 | 94 | 584 | 206 | 4.08 | 359 |
巨人 | 0.395 | 0.316 | 0.711 | 176 | 451 | 33 | 27 | 38 | 356 | 45 | 84 | 625 | 214 | 3.82 | 376 |
横浜 | 0.423 | 0.329 | 0.752 | 183 | 488 | 27 | 58 | 41 | 341 | 47 | 89 | 576 | 243 | 4.19 | 386 |
昨年、チーム打率はリーグトップでありながら得点はリーグ最少と得点力不足に泣いたヤクルトが、大幅な得点力アップを果たしている。その原動力は、長打率(0.402→0.431)、出塁率(0.323→0.338)の2つともに向上したことだ。これらはいずれもリーグトップである。ホームランに頼った大味な野球という批判も多いが、出塁率が高いのはアウトになりにくいということであり、すなわち打線のつながりがいいということに他ならない。四球数はリーグ3位であり、にもかかわらず出塁率がトップなのは、それだけヒットで出塁しているということになり、さらに価値が高い。
三振、併殺打ともに目立って多いということはなく、「チャンスで三振かゲッツーばかり」という批判は当たっていない。
また、盗塁も他チームに比べて明らかに多い。しかも上の表には、代走専門の三木の7盗塁は含まれていない。阪神の28盗塁のうち20個は赤星による。チームとして盗塁を重視しているとは、決して言えない。
横浜、中日を見ればわかるように、犠打の数が多いほど得点が少ない。この傾向は昨年から変わらない(05年の阪神731得点・85犠打、横浜621得点、119犠打)。犠打でアウトを増やすことで、得点機会を減らしているのである。これにいち早く気づいたヤクルトが、チームの改革に成功した。
得点が増加したにもかかわらず、ヤクルトが上位に進出できないのは、得点以上に失点が多いからである。その原因のひとつが失策と思われる。54失策は、既に昨年の51失策を超えている。特に、他チームに比べて外野の失策が多いのが気になる。内野に比べ、外野の失策は失点につながりやすいのは容易に想像がつく。
一方で、失策は必ずしも守備能力の優劣を意味しない。失策したのは、正しい守備位置にいて守備機会を得たからである。本当に下手なら、そもそも守備機会を得られない。昨年の成績を見ても、114失策で779失点の広島はダントツだが、他の5チームはいずれも60失策前後でありながら、失点は533〜737までと大きな差がある。
そこで問題は、投手力である。五十嵐の不調、石井弘の故障でリリーフ陣が手薄なヤクルトだが、被本塁打が上位2チームに比べて多い。ただ、これは球場の狭さも影響しているはずで、むしろ健闘していると言えるかもしれない。奪三振は中日より上、与四球は阪神より優秀である。中日で奪三振が多いのは川上だけらしい。一方阪神は、与四球は多いものの、三振を奪ってピンチを脱している、という傾向がうかがえる。DIPSを計算してみると、中日、阪神がやはり図抜けていて、上位と下位に明確な差が出た。
ヤクルトが上位を狙うには、投手陣のテコ入れと外野のエラーの減少が重要になりそうだ。