有機農産物、有機食品について

 

 

食の安全を考える会 野本健司

有機JASマークって知ってますか?

 2000年夏にJAS法が改正され、有機農産物及び有機農産物加工食品の検査認証制度によって、認定登録されたものだけが“有機○○”“オーガニック××”という表示が認められることになりました。また、それらの食品には“有機JASマーク”をつけることができるようになりました。これにより、“有機低農薬〜〜”とか“有機減農薬〜〜”というような、曖昧な表現ができなくなり、消費者にとってわかりやすい表示にするというのが目的です。これに違反すると罰金が科せられます。詳しくは、農水省のページをご覧下さい


改正後の有機農産物基準の概要

1.      基本的に化学肥料、および農薬を使用しない。

2.      遺伝子組み換え技術を使わない。

3.      放射線照射、洗浄剤、消毒剤などによる衛生管理を行なわない。

4.      農林水産大臣の登録を受けた認定機関の検査・認証を受ける。

※これが有機JASマークです。見たことありますか?
 だんだん増えてきましたね!

安全な農産物を求める心と現実のギャップ

 

 有機一次農産物の市場は、1996年に1500億円だったものが、2000年には2500億円にまで増大してきています。そして実に86.7%の消費者が有機農産物や有機食品を購入した事があると報告されているのです。私たちの中には安全な食品として“有機”“オーガニック”というものが着実に定着しつつあるのは事実のようです。その一方で、輸入生鮮農産物は1960年に6000億円だったものが、1998年にはなんと4兆6000億円にまで増えている現実があります。私たちが食べる農産物の量に大きな変化はないでしょうから、これはそのまま国内の農業の弱体化を意味します。数週間も船で揺られて輸送されて来る輸入農産物はポストハーベスト農薬の危険が大きな問題となっています。

 

農薬の残留基準とポストハーベスト

 

 日本では食品衛生法で農薬の残留基準値が定められていて、その農薬の数は1991年の26農薬から、2000年4月には199農薬にまで増えています。これは輸入食品の増加、新しく開発された農薬の増加を受けてのことなのですが、基準を定めるという事はその農薬を受け入れた事となってしまうのです。残留基準についてもWTO体制のもとで、環境庁が定めた登録保留基準の1000倍に緩和される事となってしまった農薬もあるにもかかわらず、厚生省は安全宣言をしているのです。アメリカなどの輸出大国からの貿易障壁になるという圧力で、日本では使用が認められていないポストハーベスト農薬を、食品添加物という扱いで認可してしまいました。

ポストハーベストや自給率については輸入食品の項を参照

食品添加物扱いになったTBZ、OPP、DPなどの毒性については食品添加物一覧表を参照

 

進む土壌劣化

 

環境全体からみると、化学農薬と化学肥料の多用という農業の近代化によって世界中で土壌劣化がすすみ、農業を存続するための基盤自体が不安になってきています。世界資源研究所によれば1945年から1990年までに、環境に配慮のない農業によって、世界の総耕作地面積の38%の土地が劣化したといわれているのです。これからの農業は環境全体を考えたうえで、バランスのとれた持続可能な農業を目指す必要が出てきているのです。


有機認証制度は、本当に私たちのため?

 

 単純に農産物に安全性を求めるならば、ポストハーベストから逃れられない輸入農産物を避けるのが第一になるのですが、それも国内での生産があってこそのことです。国内で農業が存続できるための国をあげた努力が求められています。 ところが、今回の制度は完全無農薬、無化学肥料で栽培することができるごく一部の農家と、それを求める消費者には喜ばれるかもしれないのですが、できる限り化学農薬の使用を減らし、有機質肥料をバランスよく使用した農業を目指す多くの農家は、有機認証されないために市場では付加価値がつかず、生活の基盤が揺らぐ危険さえ懸念されます。

  一方で輸入農産物についての有機基準は向こうまかせで丸々そのまま受け入れて、自動的に有機JAS認定される事となります。しかし、つい最近輸入の有機小麦を使用したパンから、普通の輸入小麦で作ったパンより多くの残留農薬が検出されましたが、食品としては残留基準値以下であったため、問題はないという結果になってしまいました。日本の農家は、認証を得るためだけにも今まで以上に経費がかかる上に、輸入農産物は優遇されるこのような制度で、本当に日本の農家が元気が出る日は来るのでしょうか。

 

 

私達に出来る事

 まず私達はできる限り国産の農産物、農産加工品だけを食べるようにして、安全だけでなく、国内の農業を元気づけることが第一といえるでしょう。農法が自分で確かめられる、地場(地域)の農産物を食べることも重要です。過度の有機信奉は考え物で、有機質肥料であっても必要以上に多用することは、土壌の硝酸塩汚染の原因となってしまいます。環境全体を考え、持続可能な農業を目指すためにも、近隣の農家との信頼関係がなにより大切です。輸入農産物をできる限り買わない努力もひとつの行動だと言えるのではないでしょうか。

 

補足資料

登録保留基準とは、農薬が作物や土壌に残留して人や家畜に被害を与えないかなどについて環境庁が審査し、設定する残留基準値のことです。この基準値を越えて作物や土壌に残留する場合は農薬の販売が許可されません。厚生省が定める残留農薬基準のように、基準値を越えた農産物が販売禁止になることはありませんが、環境庁の登録保留基準も厚生省が定める残留農薬基準と同様に、食品の摂取量に基づいて健康に害がないと考えられる量を決めています。日本で登録されている農薬にはすべて登録保留基準がありますが、必ずしも厚生省による残留農薬基準は策定されていません。厚生省の定める残留農薬基準が新しく施行された場合、これが、登録保留基準に取って代わることになります。戻る

ポストハーベスト農薬とは、貯蔵・輸送中に腐敗したり、カビや虫がついたりすることを防ぐ為に、収穫後に農作物に散布される農薬のことです。保存性が高まるため、品質が一定に保たれ、安いコストで農産物を供給できるというメリットがありますが、収穫後に使用されるために農作物に残留する可能性は高くなります。戻る