環境ホルモンを考える
食の安全を考える会 野本健司
環境ホルモンのメカニズムを知ろう!
<まずは遺伝子の話…>
クローン羊は、人工授精とどう違う?
生物に必要な全ての情報が詰まっているのが遺伝子です。
遺伝子は、その情報のうち必要な部分だけが機能することで、手となり、足となるのです。
卵子や精子 は全ての情報が機能している状態です。この状態での人工授精は可能です。
羊として生まれたものの体細胞の遺伝子を、全てが活性化している状態に戻すことで、クローン羊が生まれました。
遺伝子組み換えも、環境ホルモンも、遺伝子レベルの問題?
遺伝子組み換えでは、組み込んだ遺伝子が、もともとその生物が持っていた性質の中で、機能していなかった部分を活性化させてしまい、全く予想しなかった物質を生みだし、死亡事故(トリプトファン事件)や、アレルギー(ブラジルナッツ)を起す事故が起きています。
体内ホルモン(内分泌)は、必要なときに、必要なだけ体内で分泌されて、細胞に入り込み、そのホルモンに特定のレセプターにくっつくことで、遺伝子の必要な部分を活性化し、身体を作りあげ、維持しています。
化学物質の中には、このレセプターにくっつくことができるものがあって、必要で無い時に遺伝子の必要で無い部分を活性化させ、身体に重大な異変をもたらし、維持出来なくしてしまう性質があることが明らかになって来ました。このような化学物質を、体外の“環境中の”ホルモンということで、“環境ホルモン”(内分泌撹乱物質)と呼びます。現在8万種類の化学物質があり、70種類以上の物質が環境ホルモンとされています。すでに、20才の男性の精子数は、40才の男性の約半分となってしまっているのです。
環境ホルモンは、pptレベル(一兆分の一の濃度)のごく微量で効力を発することが判明して来ました。これは、今までの毒性物質としての基準では、全く意味をなさない大変低い量なのです。(50mプールに、目薬一滴程度の濃度)
環境ホルモンの現状
<どんなものに含まれているの?>
一番多く判明しているのは“農薬”です。特に有機塩素系農薬は体内に留まる期間が非常に長いので、環境ホルモン様作用も持続することになります。
同じ有機塩素系物質で猛毒の“ダイオキシン”“PCB”“DDT”にも環境ホルモン作用があります。
プラスチック類では、塩化ビニールモノマー、ポリカーボネートの原料であるビスフェノールA、スチレントリマーとダイマー、エポキシ樹脂に含まれるビスフェノールA、多くのプラスチックに使用されている添加剤(フタル酸エステルなど)も環境ホルモン物質が多い。
合成洗剤の中には、分解して環境ホルモンであるノニルフェノールを生むものもある。とくに最近多くなった“分解性が良い”“手に優しい”と宣伝している、液体系のものに多い。
インクや接着剤に使用される溶剤にも環境ホルモン物質がある。
現時点では、女性ホルモン(エストロジェン)様などの化学物質約70物質が、環境ホルモンとして取り上げられていますが、どんどん増えていくことが予想されます。さらにその他のホルモン(成長ホルモンなど)についても、今後環境ホルモン物質が発見されるに違いありません。
もうすでに20代の日本人男性の精子を調べた結果、WHOの基準を満たしたのは34検体中たった1検体だけだった!
<普段の生活で今すぐ出来ることは?>
発泡スチロール容器(スチレン)のカップ麺は絶対食べないこと。特に強化スチレン容器(○ヤング○ップ焼きそばなど、折り曲げると白くなる)からは通常容器の約100倍の溶出がある。またトレーに揚げ物等をのせたものも避ける。
ほ乳びんは、必ずガラスびんのものを使う。プラスチック製は絶対使わないこと。
無添加ポリエチレンラップを使い、塩ビラップは絶対使わないこと。
合成洗剤は使用せず、せっけんを使う。
まずは輸入の農産物を避け(特に柑橘類、ダークチェリー、バナナ)、次に有機栽培で農薬の使用が少ないものを選ぶようにする。
缶飲料は底と胴が一体で、白いものを選ぶ。
PETボトルには、大変多くの添加剤が使用されているので、なるべく買わない。
缶詰はエポキシ樹脂コーティング製品を避けたいが、現在では選択の使用がない。早期の製缶メーカーの対応が待たれる。(果物の缶詰にはOKなものが多いらしいが…)
環境ホルモンについて生活クラブではすでに調査が終わり、順次対応がはじまっています!