遺伝子組み換え食品を考える

食の安全を考える会 野本健司

 

遺伝子組み換え作物の研究に関するまとめ(PDF)はこちら

 

遺伝子組み換え技術と、品種改良や人工授精は全く違う物です。

今までの技術でも動物の卵子や精子を使用した人工授精は可能でした。しかし、もう成体になってしまった生き物の体細胞をいくら増殖させても元の生物にはなりません。その体細胞の遺伝子の情報を、卵子や精子のような状態に戻すことで、クローン羊が生まれたのでした。

自然界では植物は植物の、動物は動物のごく近縁種同士でしか交配することができません。これは「種の壁」を越えないことで、種の保存と自然界のバランスを保つためでした。ところが遺伝子組み換え技術はこの「種の壁」を越えてしまう技術なのです。つまり、トウモロコシとバクテリア、トマトとハエ、イネとヒトというような組み合わせを、遺伝子レベルで合体させてしまうことができる技術なのです。

遺伝子組み換えは、まだ未熟な技術です。

遺伝子組み換えでは、組み込んだ遺伝子が、もともとその生物が持っていた性質の中で機能していなかった部分を活性化させてしまい、全く予想もしなかった毒性物質ができ、死亡者を出したトリプトファン事件が起こりました。また、予期せずにアレルギー物質を生成してしまった事例(スターリンクコーン、ブラジルナッツ)も起きています。また、逆に必要な栄養素などを生み出さなくなる可能性もあると言えます。これは、現在の遺伝子組み換え技術では、組み込む遺伝子が遺伝子のどの部分に組み込まれるかわからない状態で、ほとんど偶然のように組み換えられたものを、一緒に組み込んだマーカー遺伝子を使って見つけ出して培養しているからなのです。一見画期的な先進技術に見える遺伝子組み換えも、まだまだ不安定な技術であることは間違いないようです。

実際に認可されている遺伝子組み換え作物

・除草剤耐性作物(大豆、なたね、とうもろこし)

効き目の強い指定された除草剤(ラウンドアップなど)にだけ耐性があり、他の植物は全て枯れても、遺伝子を組み換えた作物は枯れずに育つ品種です。農家は除草剤をまく回数が減るので労働力の軽減になるといううたい文句です。メーカーは、組み換え作物の種と除草剤をペアで販売するので、市場を独占することができます。

・害虫抵抗性作物(ジャガイモ、綿(ワタ)、とうもろこし)

BT毒素を含む殺虫剤をまくかわりに、作物全体にBT毒素を生成する機能を持たせ、害虫殺虫性作物としたものです。作物を食べた害虫は死んでしまうので、農家は殺虫剤をまく手間が減るというのが売りです。メーカーは害虫殺虫性という付加価値があるので高価で売ることができます

・さらに第二世代といわれる遺伝子組み換え作物

今後は、栄養価等の付加価値を付けるための組み換え作物が増えていく模様です。現実に日本でも食べた人の免疫力を高める効果のある物質を組み込むために、ヒトの遺伝子をイネに組み込んだ遺伝子組み換えイネが実験圃場で栽培されています。国も数十億円にも及ぶ莫大な予算を組んで遺伝子組み換えを推進しています。

私たちにとってのメリットは一切ない

食品の安全性で言えば、予想し得ない性質が生まれる可能性、殺虫成分を含んだ食品を食べつづけた時のリスク、マーカー遺伝子の抗生物質耐性遺伝子による抗生物質耐性などが上げられます。

環境全体へのリスクで言えば、除草剤耐性作物と近縁種との雑交配で、耐性を持った雑草が発生するおそれや、有用な虫に対する影響があると言われていて、いくつもの実証例が報告され始めています。

また、農薬メーカーが世界の食料生産を動かすようになるという、一番恐れるべき事態も懸念されるのです。

遺伝子組み換え作物を使用した食品たち

ヨーロッパに続き日本でも遺伝子組み換え食品に表示義務ができることが決まりました。義務化されたのはごく一部の食品に限られ、多くの問題を含んでいると言えますが、食品業界に対する影響は大きく、施行を前に自主的に表示するメーカーやスーパーも現われてきています。

遺伝子組み換え作物を使用している可能性のある食品と言えば、味噌、醤油、豆腐、納豆、コーンフレーク、ポテトチップスなどを思い浮かべる方が多いことでしょう。現在ではこれらの食品には遺伝子組み換えされていない原料で作ったことが明記されているものも出回るようになっていきました。しかし実際にはこういった食品だけでなく、食用油脂やそれを原料に使用した加工食品や、ブドウ糖、アルコール、コーンスターチ、レシチン、水飴、酵素、などにもかなりの割合で含まれている可能性があるのです。そして家畜の飼料用として輸入される遺伝子組み換え作物がとても多いことにも注意しなければなりません。私たちの目からは見えにくいものですが、間接的に確実に口に入っているのです。

私たちに出来ることは、とにかく国産品を選んで食べること。そして同じ意思の人たちと共にNON-GMO(非遺伝子組み換え)作物を確保し食べていく事で、自分たちの意思を表示しつづけることではないでしょうか

 

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