神奈川ネットワーク運動・あさお ニュース掲載原稿より
(2003年以前の執筆です。情報は最新ではありませんのでご了承ください。)

シリーズ「あぶない食の話」1 〜表示されない添加物〜

シリーズ「あぶない食の話」2 〜添加物屋さんは芋づる式〜

シリーズ「あぶない食の話」3 〜あなたの食べているもの、本物?〜

シリーズ「あぶない食の話」4 〜輸入食品の裏側にあるもの〜

シリーズ「あぶない食の話」5 〜ポストハーベストは農薬じゃないの?〜

シリーズ「あぶない食の話」6 〜化けたり、化かされたり・・・〜

シリーズ「あぶない食の話」7 〜知ってますよね、遺伝子組み換え〜

シリーズ「あぶない食の話」8 〜食べますか?食べませんか?〜

 


食の安全を考える会 野本健司

シリーズ「あぶない食の話」 

〜表示されない添加物〜

1400種類以上の食品添加物が認められている今、その食品にどんな添加物が使われているかを知る唯一の手がかりが原材料表示です。しかし、殆どは本来その食品を作るために必要な原材料と区別されずに表示されています。例えば、酸化防止剤としてよく使われるビタミンC(V・C)などは、化学合成添加物で、金属イオンと結びついて発ガン性物質を生み出してしまうなど、いくつかの危険性があるにもかかわらず、材料に元々含まれているものだと勘違いされてしまうのです。さらに香料や調味料のように数十種類から数百種類の物質が認められているのに一括名で表示されてしまい、いったいどんな物質が使われているのか全く見当もつかないものも数多くあります。

ところがさらに驚いたことに、全く表示しなくてよいと認められている添加物がかなり存在しているのです。それがキャリーオーバー、加工助剤、栄養強化、ばら売りの免除という規定です。キャリーオーバーとは、製品を作る原材料に元々含まれているもの、例えば、練り製品を作る時の材料である“たらすり身”に使用されていたリン酸塩などは表示しなくてよいというものです。加工助剤とは補助的に使われるもので、麺を茹でる時に消泡剤として使われる、シリコ−ン樹脂などがこれにあたります。また、発色や保存の目的で使用される物質の中で、鉄類やカルシウム類などは、本当は毒性のある物質でも、栄養強化目的だということで表示免除にされてしまうものもあります。ばら売りの免除とは、計り売りやばら売りの場合は、全ての添加物を表示しなくてよいというものです。

表示一つをとっても問題の多い添加物ですが、次回は実際の食品加工の現場で、添加物がどう使われていくのか、そしてその問題点についてお話します。

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シリーズ「あぶない食の話」 2

〜添加物屋さんは芋づる式〜

添加物は製造の現場ではどのように使われるのでしょう。私たちは商品の原材料表示から、添加物が各々単体で使用されていると思いますが、実際には専用の添加物を添加物屋が商品化し、食品メーカーは商品化された添加物を使用して製造しているのです。

私が知っているものに、カニカマレッド、おかるの素、お釜にポン、ひじき調味用製剤、などという商品化された添加物があります。もう名前だけでどんな食品専用なのかわかるものもありますね。これらの商品は全て数種類から十数種類の添加物を調合して作られています。そして驚く事にこれらのパッケージには、とても簡素化された“表示例”つまり「これを使って食品を作ったら、こう表示すればいいですよ!」ということが指示されていて、メーカーはそのとおりに記載するというわけです。ここでは“製造用剤”として規定された添加物が表示免除となります。添加物自体を腐らないようにしたり、安定化させたり、液状にしたりするために、あくまでも“補助的に”使われる添加物だから、表示しなくても良いと決められているのです。有機溶剤のプロピレングリコール、シリコーン樹脂、リン酸塩類などがよく使われますが、毒性があるものもあります。

そう、あくまでも添加物はメーカーの利潤追求のためだけにあるのです。たとえばハムを作るとき、少ない肉で大きいハムを作ろうと、植物タンパクで増量する事にします。すると発色剤に加えて着色料も必要になり、味が落ちるので化学調味料も必要となり、さらに腐らなくするために防腐剤や殺菌剤が使われ、それらの添加物が出て行かないように結着剤で固めて出来上がりです。増量したために、次々と添加物を使用していく、このような使われ方を添加物の芋づる式と言うのです。

次回は外食産業とフェイク食品についてお話しします。

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シリーズ「あぶない食の話」 3

〜あなたの食べているもの、本物?〜

皆さんはフェイク食品という言葉を聞いた事がありますか。これは本来の食品そのものとは全く違うもので作られた食品のことです。私達に一番馴染みのあるものとしては、植物油脂を原料とするマーガリンで、これはバターのフェイク食品です。しかし問題なのは、私たちが知らずに食べてしまうものも沢山あるということなのです。たとえば人口イクラは、増粘多糖類や乳化剤などと油脂類で形を作り、香りや味をつけたものですが、プチッという食感といい、なかなかの出来栄えです。シシャモ子を結着剤でつなぎ合わせ、着色味付けしたものを数の子のように使用する事もあります。さらに言えばシシャモ自体、日本近海のものは大変希少になってしまったため、一般的には海外で捕れるカペリンという魚がシシャモとして流通しています。しかもオスも卵を注入されて、全部子持ちに変身することもあるのです。

また、赤身の牛モモ肉に、油脂を注入してサシをつくり人工的に霜降り肉を作る事が実際に行われています。それどころか硬い横隔膜を5〜8枚重ね、結着剤でくっつけたうえで、酵素を注入して柔らかくしたものもあります。サーロイン風に縁や模様を脂身で作ったり、隣の人と同じ模様のステーキにならない様に、いくつかのパターンを作ったりと、至れり尽せりで専門家が食べても区別がつかないくらいです。このような肉は成形肉といい、生肉として売られる事はありません。

例の100%ビーフ云々だって、肉については100%だというだけで、副原料としてほかの食材や添加物も使っているわけですから、その部分に何が使われているかはわかりませんよね。ビーフ自体も“牛肉”というより“牛の中の何処か”と言う方が正しい気がします。

このようなフェイク食品は主に、原材料が表示されない外食産業で、出会う事ができます。

これら以外にも様々な化け方をする食品が沢山あるのですが、それらはまたの機会として、次回は輸入食品の問題点をお話しします。

 

 

シリーズ「あぶない食の話」 4

〜輸入食品の裏側にあるもの〜

今回から輸入食品についてお話しします。私たちの食卓は約6割を輸入に頼っています。国内で自給できる力は、すでにそこまで落ちてしまっているのが現状です。メーカーは出来るだけ安い原材料を確保するために輸入食材を使い、消費者も価格で判断し、安いものを買ってしまうという傾向があります。つまり金銭的な利益追求を、メーカーも消費者もしてきた結果が国内自給率の低下なのです。そのために安全性に不安があるものを食べなければならないことがあっても、自業自得なのかもしれませんね。

しかし、問題は他にもあるのです。

日本をはじめとする先進国と言っている国々の多国籍企業などが、アジア、アフリカ、南米などの後進国と呼んでしまう国々で大規模農園を経営し、現地の人々をわずかな低賃金で、しかも劣悪な健康管理の中で雇用し、農薬と化学肥料に頼った、まさに利潤追求型の農業を行っていることも事実です。そしてそこがだめになれば次の土地へと移っていくのです。現地の人々の健康と環境を破壊しながら、利益は多国籍企業のものとなります。

日本の農家は価格競争に勝てず、国内自給率の低下に結びついていく原因となります。米の大凶作で外米を買いあさり、米の相場を吊り上げてしまったことで、アジアなどの貧しい生活を強いられている人々から、米を取り上げてしまう結果となったことも、もう忘れてしまっていませんか?

全ての日本人が、自分が食べるものの為に踏みつけにしている人々がいる事を、見つめ直さなければならなりません。私たちが健康に気を使うのも、老後の心配をするのも、豊かに暮らしたいと願うのも、そういう現実の上でのことなのです。

私たちができる事は、まず沢山の人に「食」をとりまく様々な問題に関心をもってもらうこと。そして出来る限り国産のものを選び、食べ続けることだと思います。それが誰にでも出来る行動の、第一歩なのではないでしょうか。

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シリーズ「あぶない食の話」 5

〜ポストハーベストは農薬じゃないの?〜

みなさん「ポストハーベスト」という言葉を聞いたことがありますか。 “ポスト”は“〜の後の”、“ハーベスト”は“収穫” という意味です。つまり、収穫後に使用される農薬のことなのです。さてその使われ方や実態はどんなものなのでしょうか。

まず一番大切なことは、日本では現在でもポストハーベスト農薬の使用は禁止されているという事実です。ところが、アメリカなどからの貿易圧力によって、日本では認められていない農薬が、食品添加物という扱いで認可されてしまったのです。イマザリル、OPP、TBZなどがそうで、殺虫や殺菌が主目的です。

栽培中に使用される場合、表面にかかった農薬は風雨で流されたり、分解されたりしますが、ポストハーベストは収穫されたあとの作物に直接かけられるので、残留が大きいのです。しかも、流通の途中で流れ落ちてしまわないために、ワックスに混ぜられて使用されたり、さらに箱ごと、トラックごと殺菌剤のシャワーを浴びて出荷されているのです。そして輸入されたあとも、その多くが臭化メチルで燻蒸されて販売店に並びます。皮をむけばよいと考えがちですが、ジャガイモの芽止め剤などは、作物内部に染みてこそ役目を果たすものなので、皮をむいてもあまり意味がないのです。

もちろん毒性も心配です。レモンに使用される2−4−Dという物質は、へたの部分を青く保つ為に使われますが、これはベトナム戦争で使用された枯葉剤の主成分で、発がん性、催奇形性があります。ポストハーベスト農薬に多い有機リン系の農薬は、あの“サリン”と同じような毒性が認められています。

しかし、ポストハーベストされていない物を食べるのは案外簡単です。果物、特に柑橘類、穀類は国産を買いましょう。バナナは安全が確保された流通ルートの物が出回り始めています。残念ですが、今のところダークチェリー、グレープフルーツはあきらめるしかなさそうです。

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シリーズ「あぶない食の話」 6

〜化けたり、化かされたり・・・〜

日本ではポストハーベスト農薬を直接降り混ぜられた穀類も大量に輸入されています。大豆や小麦などは国内自給率がごくわずかしかなく、ほぼ輸入というのが現状です。以前に学校給食のパンから、極度のアレルギーや化学物質過敏症の子供が発作を起こす恐れがある濃度の残留農薬が検出され問題になりました。最近では有機認証を受けた輸入小麦を使用したパンから、通常の輸入小麦のパンより高い残留農薬が検出されてしまい、やはり輸入食品の安全性には不安があると言わざるをえない現状です。国内での生産者を増やして作付けしてもらう以外に手はないのですが、自給率はほぼ変わっていません。これは個人レベルではなく、国や各自治体の農業政策になんとか期待をかけるしかありませんね。

さて、私たちが購入する時に、これは輸入食品だと判断できればまだ良いのですが、実は国産に化けてしまう物も多くあり、港に何年も野積みになっている輸入の塩蔵野菜などが有名です。山菜、きのこ、ナス、キュウリ、ニンニク、生姜などが主な物で、後々どんな色にでも加工できるように白く漂白されている物が多いのです。日本の各名産地に運ばれ、塩抜きして色と味をつけ、瓶詰めなどにしてしまえば「国産」に化けてしまいます。これは実質的変更を加えた場所=加工した場所が産地となるからです。最近生鮮農産物は産地を表示するようになりましたが、加工品はその原料の産地を表示しなくても良く、「○○名産」などと書かれてしまうと日本で採れた山菜かと思ってしまいますよね。しかもナスやキュウリの漬物、生姜の甘酢漬け、山菜瓶詰めといった日本ぽいものだとよけいです。しかし実際にはその多くが輸入食品なのです。輸入のカボチャを布で拭いて“特選”などのシールを貼っただけで、日本の産地が書かれたトラックで運ばれていくという話を現場の方から聞くと、実質的変更とは何かと聞きたくなります。さらには生きた牛も輸入されています。やはり牛肉の名産地などに運ばれ、一応3ヶ月以上日本で暮らせば国産牛と名乗っていいことになっていて、これは不正入国ではありません(笑)

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シリーズ「あぶない食の話」 7
〜知ってますよね、遺伝子組み換え〜
 とうとう日本でも4月から遺伝子組み換え作物を原料とする食品への表示義務化が施行されました。皆さんご存知の通り、スーパーなどでは以前からメーカーの自主的な表示がされた製品が出回っていましたが、表示が義務化されたのは4月からとなります。表示としては、遺伝子組み換え原料を使用、不分別(分別処理していない)、不使用(全く使用していない)となりましたが、実際どのくらい表示されているのか、気をつけて見てください。施行前とそれほど大きな変化はないのではないでしょうか。それもそのはず、表示が義務化された食品自体が少ないからなのです。特に遺伝子組み換えの可能性が高い油脂類が「精製後にたんぱく質が残存しない」という理由で表示しなくて良いことになっています。サラダ油には大豆とナタネもよく使われます。また大豆は多くの加工食品に使われる食用油脂の主原料ですが国内自給率はわずかに3%です。既に輸入大豆の50%以上が遺伝子組み換えであることを考えると、消費者としては油脂類の表示義務化を望むところです。醤油も表示が免除されているのですが、自主的な表示がされている物を見かけます。
 ところが、この遺伝子組み換え原料不使用というのもクセ者で、現在のルールでは「予期せずに混入してしまった場合」については目をつぶって良いことになっているのです。大豆だけが混入の上限を定められていますが、コーン・ナタネ・ワタ・ジャガイモ・テンサイは、予期しない混入ならば、いくら混入してもお咎め無しというのが現状なのです。
 国は「実質的同等」という言葉のもと、安全性評価もそこそこに輸入を認めてしまいましたが、組み換えない作物と本当に同等なのでは、メーカーが莫大な予算をかけて組み換えるわけがありませんよね。

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シリーズ「あぶない食の話」 8

〜食べますか?食べませんか?〜

「遺伝子組み換えされた食品を食べたいですか?食べたくないですか?」と聞かれれば、多くの人が「食べたくはないです」と答えるのかもしれません。しかし、一部の食品にのみ表示義務があるだけで、自分で食品を選択できる状況が確保されていないのです。要は、遺伝子組み換え食品に限って言えば「食べたくなければ食べなくていい」という状況になっていないことなのです。

組み換え作物の混入については、大豆だけ混入許容量が5%までと決められていましたが、コーンについても5%までと決められ、さらにはジャガイモについても設定される動きが出てきました。現在の技術では1%に満たないわずかな混入でも検出することができるそうですから、1%未満という許容量にすればよいわけですが、輸出国側の管理体制上の都合で5%が妥当と言うのでは、あまりにも日本のイニシアチブが低すぎるのではないでしょうか。スターリンクコーンの混入事件や組み換えジャガイモの混入スナック回収など、目に付くことが頻発していますが、安全性を論議する以前に、いとも簡単に混入し、違法食品が出回ってしまうまで気づかなかった、ずさんな検査体制と流通システムに大変大きな問題があることは明白です。このことを踏まえ、遺伝子組み換え食品については“選択性”と“追跡可能性”の確保を限りなく追求していかなければならないでしょう。

個人ができる行動もあります。食の安全を求める人たちの最大の武器は、“買わないこと”です。これは誰でもすぐに実行でき、メーカーやスーパーに多大な影響力を持ちます。売れないものは作らないという、企業の論理を最大限に利用して、食を取り巻く環境をより良くしていきましょう!

まだまだ書いていない食の問題はたくさんありますが、ひとまずこれまで!

 

注)神奈川ネットワーク運動・あさお(旧名麻生いきいきNET) の意向でニュースへの掲載はこの回で終了となりました。食の安全については政策に生かすことができなくなったとの理由でした。優先順位の問題等 もあると思われますが、大変残念なことです。また機会がありましたら食について優先順位の高い団体等で続きを書いていきたいと思いますので、それまではこのシリーズはしばらくお休みとなります。

 

 

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