今日のあぶく

江戸川乱歩編『世界短編傑作集』全5巻(創元推理文庫)がリニューアルされ、『世界推理短編傑作集』として刊行が始まった。旧版は1960-1961年初版だから半世紀以上にわたるロングセラーだったわけだが、このアンソロジーの収録作品は、先行するS・S・ヴァン・ダイン、ドロシイ・L・セイヤーズ、エラリー・クイーンの編集したアンソロジーに多くを拠っている。この機会に整理してみた。

【V】=S・S・ヴァン・ダイン(W・H・ライト)編《The Great Detective Stories: A Chronological Anthology》(1927)(全収録作
【S1】 【S2】=ドロシイ・L・セイヤーズ編《Great Short Stories of Detection, Mystery and Horror vol.1(1928), vol.2(1931)(全収録作 vol.1 vol.2
【Q】=エラリー・クイーン編《101 Years' Entertainmen》(1941)(全収録作

【第1巻】
「人を呪わば」 ウィルキー・コリンズ 【V】 【S2】
「安全マッチ」 アントン・チェーホフ 【V】
「レントン館盗難事件」 アーサー・モリスン 【V】 【Q】
「医師とその妻と時計」 アンナ・キャサリン・グリーン 【V】
「ダブリン事件」 バロネス・オルツィ 【Q】
「十三号独房の問題」 ジャック・フットレル 【Q】
「放心家組合」 ロバート・バー 【S1】 【Q】

【第2巻】
「赤い絹の肩かけ」 モーリス・ルブラン 【Q】
「奇妙な跡」 バルドゥイン・グロルラー 【V】
「ズームドルフ事件」 M・D・ポースト 【Q】
「オスカー・ブロズキー事件」 R・オースティン・フリーマン
「ギルバート・マレル卿の絵」 ヴィクター・ホワイトチャーチ 【S1】
「好打」 E・C・ベントリー 【Q】
「ブルックベンド荘の悲劇」 アーネスト・ブラマ 【Q】
「急行列車内の謎」 F・W・クロフツ 【S2】
「窓のふくろう」 G・D・H&M・コール 【S2】 【Q】

【第3巻】
「キプロスの蜂」 アンソニー・ウィン 【S1】 【Q】
「堕天使の冒険」 パーシヴァル・ワイルド 【S1】
「茶の葉」 エドガー・ジェプスン&ロバート・ユーステス 【S1】 【Q】
「偶然の審判」 アントニイ・バークリー 【S2】 【Q】
「密室の行者」 ロナルド・A・ノックス 【S2】 【Q】
「イギリス製濾過器」 ベクホッファー・ロバーツ 【S1】
「ボーダー・ライン事件」 マージェリー・アリンガム 【Q】
「二壜のソース」 ロード・ダンセイニ 【Q】
「夜鴬荘」 アガサ・クリスティ 【Q】
「完全犯罪」 ベン・レイ・レドマン 【Q】

【第4巻】
「殺人者」 アーネスト・ヘミングウェイ
「三死人」 イーデン・フィルポッツ
「スペードという男」 ダシール・ハメット 【Q】
「は茶め茶会の冒険」 エラリー・クイーン 【Q】
「信・望・愛」 アーヴィン・S・コッブ 【Q】
「オッターモール氏の手」 トマス・バーク 【Q】
「いかさま賭博」 レスリー・チャーテリス
「疑惑」 ドロシイ・L・セイヤーズ 【Q】
「銀の仮面」 ヒュー・ウォルポール 【Q】

【第5巻】
「黄色いなめくじ」 H・C・ベイリー
「見知らぬ部屋の犯罪」 カーター・ディクスン 【Q】
「クリスマスに帰る」 ジョン・コリア―
「爪」 ウィリアム・アイリッシュ
「ある殺人者の肖像」 Q・パトリック
「十五人の殺人者たち」 ベン・ヘクト
「危険な連中」 フレドリック・ブラウン
「証拠のかわりに」 レックス・スタウト
「悪夢」 デイヴィッド・C・クック

ご覧の通り、第1巻~第4巻までは、ほぼこの三つのアンソロジーから作品を選んでいて、いかにこれらの本が大きな影響を与えていたかが窺える。ヴァン・ダインとセイヤーズはそれぞれ探偵小説史を概観した序論を書いていて、これも翻訳出版の指針となった。

(7.20)

twitter


HOME