『とむらい機関車』 『銀座幽霊』

大阪圭吉

1992年に刊行された 『とむらい機関車』 (国書刊行会) で、戦前最高の本格ミステリ作家として、劇的な復権をはたした大阪圭吉の代表作を網羅した傑作集 『とむらい機関車』 『銀座幽霊』 が、このたび創元推理文庫から刊行されました。国書刊行会版にさらに作品を増補、エッセイ、初出時の挿絵も多数収録して、一層充実した内容となっています。戦前の日本探偵小説界には珍しく、論理的興味を前面に押し出して洗練された本格短篇を書き続けた大阪圭吉ですが、その作品はけっして無味乾燥な論理パズルなどではありません。半世紀を経ていまなお色あせぬ魅力と革新性に満ちた、真の探偵小説的興奮がここにはあります。この機会に、ぜひご一読をお勧めいたします。(2001.10)

【各巻収録内容】 青字は国書刊行会 『とむらい機関車』 未収録

《とむらい機関車》

日曜日毎に繰り返される奇怪な轢死事件の謎を追う名作 「とむらい機関車」 を巻頭に、名探偵青山喬介が神の如き明察を披露する 「デパートの絞刑吏」 「カンカン虫殺人事件」 「気狂い機関車」 「あやつり裁判」 他の、素晴らしいアイディアに満ちた本格短篇、金鉱探しに取り憑かれた男が陥った出口なしの状況をえがいて出色の犯罪小説 「雪解」、海底炭坑という巨大な密室で起きた不可能犯罪に取り組み、大阪圭吉本格ミステリの到達点ともいうべき傑作中篇 「坑鬼」 を収録。後に 「死の快走船」 に改稿された 「白鮫号の殺人事件」 は、初出誌 〈新青年〉 掲載以後、完全に埋もれていた幻のヴァージョンである。併録した 「幻影城の番人」 「連続短篇回顧」 他のエッセイは、本格探偵作家としての矜持と苦悩、そして創作の秘密を垣間見せるファン必読の好読物。

【収録内容】
とむらい機関車/デパートの絞刑吏/カンカン虫殺人事件白鮫号の殺人事件/気狂い機関車/石塀幽霊/あやつり裁判/雪解/坑鬼
【エッセイ】 我もし自殺者なりせば/探偵小説突撃隊/幻影城の番人/お玉杓子の話/頭のスイッチ――近頃読んだもの/弓の先生/連続短篇回顧/二度と読まない小説/好意ある督戦隊/停車場狂い
解説=巽昌章

2001年10月刊 本体780円 [amazon]
装画=大倉ひとみ 装丁=東京創元社装幀室


「泉のようにわき出る多彩なアイデアを、独特のセンスで、謎と解明の物語にしたてあげる彼の手ぎわはまことに見事です。(中略) 現代の目で見た時、よくも、これだけの水準のものを続けざまに発表できたものだと驚きます」――北村薫氏評 (讀賣新聞夕刊200/4/26)

《銀座幽霊》

昭和11年に大阪圭吉が挑戦した 〈新青年〉 6ヶ月連続短篇は、その作家活動のハイライトであった。廃院寸前の精神病院で発見された脳を抜き取られた死体、グロテスクな犯罪に驚くべきトリックが仕掛けられた傑作 「三狂人」、沈没した捕鯨船の乗組員がある夜帰ってきた……雄大なスケールの海洋ミステリ 「動かぬ鯨群」、雪降るクリスマスの夜、平和な一家を突如襲った惨劇 「寒の夜晴れ」 など、毎回、趣向を凝らした状況に魅力的な謎を盛り込んだ一連の作品は、戦前本格短篇の最高峰といってもよいだろう。他に、水産試験所の東屋所長が、海霧の夜、燈台を襲った正体不明の怪物の謎を解く 「燈台鬼」 の怪奇な雰囲気、弁護士大月対次が登場する 「大百貨注文者」 のユーモラスな味も捨てがたい。また、これも戦後初の活字化である孤島の燈台にまつわる綺譚 「人間燈台」 や、没後遺稿として発表された 「幽霊妻」 の不思議な読後感は、大阪圭吉の意外に幅広い作風を教えてくれる。

【収録内容】
三狂人/銀座幽霊/寒の夜晴れ/燈台鬼/動かぬ鯨群/花束の虫/闖入者/白妖/大百貨注文者人間燈台/幽霊妻
解説=山前譲 大阪圭吉著作リスト

2001年10月刊 本体760円 
[amazon]
装画=大倉ひとみ 装丁=東京創元社装幀室


※大阪圭吉とその作品については、【大阪圭吉ファン頁】および【圭吉の部屋】をご覧下さい。

※刊行記念企画として、大阪圭吉作品 『塑像』 (上記傑作集未収録) のテキストを公開しました。(2001.11.13)
※刊行記念企画として、大阪圭吉 『死の快走船』 あとがきのテキストを公開しました。(2001.11.20)

※刊行記念企画として、甲賀三郎 「大阪圭吉のユニクさ」のテキストを公開しました。(2002.1.17)