【大阪圭吉作品】 とむらい機関車/銀座幽霊/死の快走船 |
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昭和11年に大阪圭吉が挑戦した 〈新青年〉6ヶ月連続短篇は、その作家活動のハイライトであった。廃院寸前の精神病院で発見された脳を抜き取られた死体、グロテスクな犯罪に驚くべきトリックが仕掛けられた傑作「三狂人」、沈没した捕鯨船の乗組員がある夜帰ってきた……雄大なスケールの海洋ミステリ「動かぬ鯨群」、雪降るクリスマスの夜、平和な一家を突如襲った惨劇「寒の夜晴れ」など、毎回、趣向を凝らした状況に魅力的な謎を盛り込んだ一連の作品は、戦前本格短篇の最高峰といってもよいだろう。他に、水産試験所の東屋所長が、海霧の夜、燈台を襲った正体不明の怪物の謎を解く「燈台鬼」の怪奇な雰囲気、弁護士大月対次が登場する「大百貨注文者」のユーモラスな味も捨てがたい。また、これも戦後初の活字化である孤島の燈台にまつわる綺譚「人間燈台」や、没後遺稿として発表された「幽霊妻」の不思議な読後感は、大阪圭吉の意外に幅広い作風を教えてくれる。初出誌から挿絵多数収録。 【収録内容】 三狂人/銀座幽霊/寒の夜晴れ/燈台鬼/動かぬ鯨群/花束の虫/闖入者/白妖/大百貨注文者/人間燈台/幽霊妻 解説=山前譲/大阪圭吉著作リスト 創元推理文庫 2001年10月刊/新装版2020年9月 800円(税別)[amazon] 装画=柳智之/装幀=山田英春 岬の端に建つ白堊館の主人キャプテン深谷は、ある霧の夜、愛用のヨットで帆走に出掛け、その翌朝、無惨な死体となって発見された。前夜、深谷氏は何かをひどく怖れていたというのだが……堂々たる本格中篇「死の快走船」(「白鮫号の殺人事件」を改題改稿)をはじめ、猟奇的エロティシズムを湛えた犯罪奇譚「水族館異変」、東京駅のホームを舞台に三の字づくしの謎に隠された意外な犯罪をあばく「三の字旅行会」、アパートの謎の住人“香水夫人”の正体とは? 思わぬ取り違えから盗難事件に巻き込まれた青年が謎解きに乗り出すユーモア探偵小説「愛情盗難」、時代物〈弓太郎捕物帖〉から四谷怪談上演中の中村座奈落にお岩の幽霊が出現する「夏芝居四谷怪談」、元日の朝、町内の男七人が一斉に姿を消す「ちくてん奇談」。そのほか少女小説、辺境奇譚、防諜探偵・横川禎介物など、大阪圭吉の知られざる多彩な魅力を網羅した傑作選。 【収録内容】 死の快走船/なこうど名探偵/塑像/人喰い風呂/水族館異変/求婚広告/三の字旅行会/愛情盗難/正札騒動/告知板の女/香水紳士/空中の散歩者/氷河婆さん/夏芝居四谷怪談/ちくてん奇談 【随筆・アンケート回答】 小栗さんの印象など/犯罪時代と探偵小説/鱒を釣る探偵/巻末に/怒れる山(日立鉱山錬成行)/アンケート回答 解説=小野純一 創元推理文庫 2020年8月刊 960円(税別) [amazon] 装画=柳智之/装幀=山田英春
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