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人生のすべてに倦怠し、不慮の惨禍を夢見て見世物小屋や曲芸場に通う猟奇の徒が犯した奇妙な完全犯罪(「或る精神異常者」)。妻の不貞を発見した男が愛人の上に加えた残酷な復讐(「犬舎」)。わずかな施しでその日その日を暮らす乞食が人生の最後に得た〈小さな幸福〉とは(「幻想」)。グラン・ギニョール劇の原作者として名を馳せ、ポー、ヴィリエ・ド・リラダンの後継者と謳われた異色作家モーリス・ルヴェル。残酷・謎・怪奇・暗合・意外・戦慄・哀愁・人間味に満ちた彼の短篇(コント)は、20世紀初頭の仏英読書人を魅了し、また田中早苗の麗筆によって本邦に紹介され、江戸川乱歩、夢野久作、小酒井不木らを感嘆せしめ、《新青年》の人気作家となった。名訳の誉れ高い作品集『夜鳥』(春陽堂、昭和3)を完全収録、《新青年》から未収録作品を増補した決定版。付録として乱歩他のルヴェル讃も併録。◆創元推理文庫 2003年2月刊 700円(税別) [amazon]
《IN★PCCKET》 「2003年文庫翻訳ミステリー・ベスト10」 総合6位 (作家部門4位 評論家・翻訳部門4位) 人生を不意によぎる思いがけない暗合の皮肉さを、甘い余韻を峻拒する筆致で綴っているところにこそ、ルヴェルの残酷譚の真髄がある。――千街晶之氏評(SFマガジン5月号) よくポーと比較されるが、むしろモーパッサンに近い平明さと残酷さが持ち味。必ずオチがある現代でいえばショート・ショート集だが、乱歩好みの暗い抒情を味わう余裕を持ちたい。特に訳文が見事だ。――中条省平氏評(ダ・カーポ4月2日号) 国産ミステリーの開祖江戸川乱歩らが快哉を叫んだフランスの鬼才の、詩情あふれる綺譚集。(中略) 怖い。だが不思議に切なさを誘う。――朝日新聞3月9日 驚愕と戦慄の破局をもって終わる短い小説。そこに切り取られた残酷な人生の一断面は、また新たな読者の血を騒がせようとしている。――野崎六助氏評(週刊エコノミスト3/18) グラン・ギニョール風の猟奇趣味と裏町人生の哀愁が渾然一体となった残酷コント。――東雅夫氏評(小説推理4月号) 残酷、怪奇、謎、ペーソスといった美しい悪夢に満ちた短編31編。――ダ・ヴィンチ4月 幻想文学、婦人公論、TVtaro、ELLE、週刊エコノミスト、北海道新聞ほかでも絶賛! |