【銀の仮面】

ヒュー・ウォルポール
倉阪鬼一郎 編訳

50歳の独身女性ソニアはある日、玄関前で出会った今にも倒れそうな青年を家へ招き入れる。青年は職もなく飢えに苦しんでいたが、優れた美術鑑賞眼を持ち、振舞いも上品だった。親切心からソニアは青年を秘書に雇うが、やがて思わぬ状況に・・・善意に満ちた孤独な女性の心の隙間に入りこむ美しく不気味な侵入者――“奇妙な味”の名作「銀の仮面」。大嫌いな男に親友気取りでつきまとわれた男、微妙な人間関係がむかえる奇妙な顛末「敵」、大都会の暗闇にひそむ獣の恐怖を描いてモダン・ホラー的味わいの「虎」、ゴースト・ストーリーの佳品「雪」「ちいさな幽霊」など、犯罪小説から超自然の怪談まで、絶妙な筆致で不安と恐怖の物語を織り上げる名匠ヒュー・ウォルポールの傑作集。国書刊行会版『銀の仮面』に、二人の伯父の屋敷に引き取られた少年が遭遇した怪異と恐怖「ターンヘルム」、内気な少年に訪れたクリスマスの小さな奇蹟の物語「奇術師」を新訳で追加収録。解説=千街晶之

◆創元推理文庫 
2019年12月予定 1000円(税別) [amazon]
◆装画=河井いづみ/装幀=藤田知子

収録作品
銀の仮面/敵/死の恐怖/中国の馬/ルビー色のグラス/トーランド家の長老/みずうみ/海辺の不気味な出来事/虎/雪/ちいさな幽霊/ターンヘルム/奇術師


ヒュー・ウォルポール (1884-1941)
イギリスの作家。《ヘリス年代記》と総称される大河小説群で絶大な人気を博す一方、『赤毛の男の肖像』(25)、『暗い広場の上で』(31。ハヤカワ・ミステリ)、『殺す者と殺される者』(42)などの特異な犯罪小説を発表。ミステリ・怪奇小説の短篇でも優れた手腕を発揮し、「銀の仮面」 はアンソロジー・ピースとして有名。