【霊魂の足】
加賀美捜査一課長全短篇

角田喜久雄

上野駅地階の食堂で、眼鏡の男が隣席の客の古トランクをすり替える現場を目撃した加賀美は、男を尾行して焼跡と闇市が混在する上野の街へ。男の奇妙な行動に隠された動機とは……「怪奇を抱く壁」。地下室の暗闇の中、被害者は如何にして射殺されたのか。地方出張中に遭遇した事件「霊魂の足」ほか、昭和21年、敗戦直後の混乱した世相を背景に発生した事件を、冷徹な観察と推理で解決していく加賀美敬介捜査一課長の活躍を描き、戦後探偵小説の幕開けを飾ったシリーズ全短篇を集成。関連エッセー2篇を併録。

◆創元推理文庫 2021年10月刊 1100円(税込)[amazon]
◆解説 末國善己
◆装幀=山田英春/装画=松岡潤

【目次】
緑亭の首吊男
怪奇を抱く壁
霊魂の足
Yの悲劇
髭を描く鬼
黄髪の女
五人の子供

〈エッセイ〉
加賀美の帰国
「怪奇を抱く壁」について
 解題
 解説 末國善己
角田喜久雄(1906-1994)
神奈川県横須賀生まれ、東京浅草で育つ。1922年、〈新趣味〉に「毛皮の外套を着た男」を発表。学生時代から〈新青年〉他で活躍。1935年、時代小説『妖棋伝』で一躍人気作家となる。終戦直後、『高木家の惨劇』『奇蹟のボレロ』他、一連の加賀美捜査一課長物で探偵小説に復帰、本格長篇時代の幕をひらく。『虹男』『黄昏の悪魔』等のスリラーにも意欲を示し、その後も時代小説のかたわら、「悪魔のような女」「笛吹けば人が死ぬ」等の傑作短篇を発表。『角田喜久雄全集』全13巻がある。