【ドラゴン・ヴォランの部屋】

J・S・レ・ファニュ
千葉康樹訳

1818年、ナポレオン戦争直後のフランスを旅する英国人青年が、パリへの途上で美貌の伯爵夫人一行と出会ったことから奇怪な犯罪と冒険に巻き込まれていく過程をサスペンスの連続で描き、19世紀犯罪スリラーの白眉とされる中篇 「ドラゴン・ヴォランの部屋」。辺境の地の城主は賭けでは負け知らずだったが、ある日、謎の訪問者が館を訪れる……悪魔と契約した男の末路を鬼気迫る筆で描く 「ロバート・アーダ卿の運命」。名家の娘ファニーは年の離れた貴族の妻となるが、その屋敷には恐ろしい秘密が隠されていた……ブロンテ姉妹への影響も云々されるゴシック短篇の名作 「ティローン州のある名家の物語」。18世紀のジャコバイトの反乱を背景に、迫害を逃れて廃城に隠れ住む一家を怪異が襲う 「ウルトー・ド・レイシー」。森の中から現れた黒衣の男が村の美少女ローラを見初め、花嫁に求めるが……民間伝承に取材した 「ローラ・シルヴァー・ベル」 の全5篇を収録。M・R・ジェイムズ、セイヤーズらが絶賛する十九世紀の 〈謎と恐怖の巨匠〉 レ・ファニュの傑作選。

土方正志氏評 (讀賣新聞 3/19)


◆創元推理文庫 
2017年1月刊 1000円(税別)[amazon]
◆装画=伊豫田晃一/装幀=山田英春

収録作品
ロバート・アーダ卿の運命 (本邦初訳)
ティローン州のある名家の物語
ウルトー・ド・レイシー (本邦初訳)
ローラ・シルヴァー・ベル
ドラゴン・ヴォランの部屋 (本邦初訳)


ジョゼフ・シェリダン・レ・ファニュ (1814-1873)
アイルランドの作家。『アンクル・サイラス』 『ワイルダーの手』 『墓地に建つ館』 などの長篇で人気を博した19世紀サスペンス小説の大家。「吸血鬼カーミラ」 [緑茶」 などの怪奇短篇の名作で、近代怪奇小説の祖とも目される。 20世紀初めにM・R・ジェイムズ、セイヤーズ、E・ボウエンらの再評価があり、怪奇小説の巨匠としての地位を確立。ブロンテ姉妹やジェイムズ・ジョイスへの影響も指摘されている。