【城昌幸作品】
みすてりいのすたるじあ


みすてりい

城 昌幸


終電間近の駅のプラットフォームで目撃した空中遊行術の奇蹟。退屈病患者がある夜出会った猟奇商人の奇妙な提案。果知れぬ曠野を埋め尽くす赤ン坊の群れ。高い高い絶壁の上から下界に犇めく人間たちの必死の登攀を見下ろす異形の怪物。自分の生涯を完璧に計画した男の最後のたくらみ――。江戸川乱歩が「人生の怪奇を宝石のように拾い歩く詩人」と評した異才、城昌幸の珠玉の傑作を集めた自選集『みすてりい』(桃源社)を完全収録。秘密結社に追われる男たちの運命を描いたデビュー作「脱走人に絡る話」とその続篇「仮面舞踏会」、城左門名義の散文詩的作品「たぶれっと」など、初期作品を併録した。

【収録内容】
Ⅰ みすてりい
艶隠者/その夜/ママゴト/古い長持/根の無い話/波の音/猟銃/その家/道化役/スタイリスト/幻想唐艸/絶壁/花結び/猟奇商人/白い糸杉/殺人婬楽/その暴風雨(あらし)/怪奇製造人/都会の神秘/夜の街/死人の手紙/模型/老衰/人花/不思議/ヂャマイカ氏の実験/不可知論/中有の世界 ◇跋 江戸川乱歩/あとがき
Ⅱ 補遺・その他の短篇
根の無い話
B・C/幻想唐艸 第三話 思い出/脱走人に絡る話/仮面舞踏会/譚(ものがたり)/五月闇/たぶれっと

解説=長山靖生

創元推理文庫 2024年10月刊 1100円(税込)[amazon]
装幀=山田英春/装画=柳智之




のすたるじあ

城 昌幸


“だァれも知らないとこなの”――女が語った美しい故郷の風景、哀切極まる真相が胸を打つ「エルドラドオ」。中世の錬金術師が悪魔から入手した死者甦りの秘薬をめぐる奇譚「復活の霊液」。偶々下船した島で見知らぬ女との暮しに引き込まれていく「郷愁」 他、読者を「異様なミステリアスな宇宙へとさそいこむ」と星新一が絶賛するショートショートの先駆者、城昌幸傑作選『のすたるじあ』(牧神社)を完全収録。第Ⅱ部には、酒場の主人が語る或る常連客の数奇な運命の物語 「面白い話」、ナイル河畔に出没する魔性の一族の甘美な恐怖と誘惑を描く「吸血鬼」、ドッペルゲンガー譚「うら表」など、書籍初収録を含む珠玉の短篇を収める。

【収録内容】
Ⅰ のすたるじあ
大いなる者の戯れ/ユラリゥム/ラビリンス/まぼろし/A Fable/光彩ある絶望/燭涙/エルドラドオ/美しい復讐/復活の霊液/斬るということ/蒸発/哀れ/郷愁
 ◇解説 星新一
Ⅱ その他の短篇
今様百物語/シャンプオオル氏事件の顚末/東方見聞/神ぞ知食す/死人に口なし/吸血鬼/書狂/他の一人/面白い話/三行広告/間接殺人/うら表/憂愁の人/夢見る/怪談京土産/白夢/2 + 2 = 0/はかなさ

解説=夕木春央

創元推理文庫 2024年10月刊 1100円(税込)[amazon]

装幀=山田英春/装画=柳智之


昌幸(じょう まさゆき)
1904年、東京生まれ。1924年(大正13)、同人誌「東邦藝術」(改題「奢灞都」)を創刊、城左門名義で詩・小説・翻訳を発表。1925年、「探偵文芸」に「秘密結社脱走人に絡る話」、「新青年」に「その暴風雨」を投稿して探偵小説デビューを飾る。人生の怪奇と神秘を格調高く描いた短篇で独自の境地を拓いた。戦後は、ますます洗練の度を加えた幻想短篇を発表する傍ら、探偵小説専門誌「宝石」の創刊に加わり、編集主幹として活躍、のちに宝石社社長を務めた。時代物に「若さま侍捕物手帖」のシリーズがある。1976年没。