平井呈一怪談翻訳集成


幽霊島 平井呈一怪談翻訳集成

A・ブラックウッド他
平井呈一訳

佐藤春夫、永井荷風に師事し、小泉八雲や世紀末詩人ダウスンの翻訳を手掛けた平井呈一は、戦後、『吸血鬼ドラキュラ』『吸血鬼カーミラ』『怪奇小説傑作集』『オトラント城綺譚』など、怪奇小説の翻訳、アンソロジーの編纂で注目を集め、またそれらに付された滋味あふれる語り口で怪奇小説の楽しみを説いた解説で、多くのファンを育ててきた斯界の第一人者である。その独特の名調子を愛する読者は今も多い。紀田順一郎・荒俣宏編《怪奇幻想の文学》収録作を中心に、本邦怪奇小説史に大きな足跡を残した平井呈一の現在入手困難な翻訳作品を集成。
廃城にひとり暮らす者の独白を達意の訳筆で綴ったH・P・ラヴクラフト「アウトサイダー」、 カナダの大森林を背景に強烈な超自然的恐怖を描くA・ブラックウッド「幽霊島」、文学におけるロマン派的吸血鬼像を確立した歴史的作品、ジョン・ポリドリ「吸血鬼」をはじめ、吸血鬼小説の名作4篇、リチャード・バーラムの奇譚集『インゴルツビー伝説』から「ライデンの一室」、聖堂騎士団の遺跡で見つけた青銅の笛が怪異を呼び寄せるM・R・ジェイムズの代表作「“若者よ、笛吹かばわれ行かん”」、不穏なユーモア横溢のJ・D・ベリスフォード「のど斬り農場」、英国随一の幽霊屋敷にアメリカ公使が移り住むが幽霊の奮闘むなしく公使一家は一向に怖がらない、オスカー・ワイルドの喜劇的幽霊小説の絶品「カンタヴィルの幽霊」ほか、全13篇。
付録として、生田耕作とゴシック小説・翻訳談義を繰り広げた「対談・恐怖小説夜話」(《牧神》創刊号)、伝説の同人誌《THE HORROR》に寄稿した翻訳・文章のすべて、そのほか雑誌新聞に発表したエッセー・書評を多数収録。
解説=紀田順一郎


◆創元推理文庫 2019年8月刊 1540円(税込)[amazon]
◆装丁=山田英春
◆装画=タダジュン

「本書をひもとき、初めて怪奇小説の世界に触れる読者は(・・)平井呈一の芸を通して、恐怖の愉しみを知るだろう。そして、知らず知らずのうちに、平井呈一の子供たちの仲間入りをすることだろう」――若島正氏評(毎日新聞10/6)
「泰西怪奇文学をこよなく愛した文人翻訳家の本領を窺うに足る一巻本選集」――東雅夫氏評(朝日新聞9/8)
「英語圏において長い歴史を誇る怪奇小説というジャンル。その頂点において光を放つ宝石だけを拾い集めたような、決定版的セレクションである」――朝宮運河氏評(BOOKアサヒコム/好書好日

【収録内容】
アウトサイダー H・P・ラヴクラフト
幽霊島 アルジャーノン・ブラックウッド
吸血鬼 ジョン・ポリドリ
塔のなかの部屋 E・F・ベンソン
サラの墓 F・G・ローリング
血こそ命なれば F・マリオン・クロフォード
サラー・ベネットの憑きもの W・F・ハーヴェイ
ライデンの一室 リチャード・バーラム
若者よ、笛吹かばわれ行かん M・R・ジェイムズ
のど斬り農場 J・D・ベリスフォード
死骨の咲顔 F・マリオン・クロフォード
鎮魂曲 シンシア・アスキス
カンタヴィルの幽霊 オスカー・ワイルド
     
付録T 対談・恐怖小説夜話 平井呈一・生田耕作
付録U THE HORROR
  怪奇小説のむずかしさ  L・P・ハートリー
  試作のこと  M・R・ジェイムス
  森のなかの池  オーガスト・ダレット
  聴いているもの  ウオルター・デ・ラ・メア
  怪談つれづれ草T 古城
  怪談つれづれ草U 英米恐怖小説ベスト・テン

付録V エッセー・書評
  八雲手引草
  英米恐怖小説手引草
  恐怖小説手引草拾遺
  怪異 その日本的系譜 東西お化け考
  英文人の夢と営為語る 由良君美『椿説泰西浪曼派文学談義』評
  怪奇文学の魅惑 『ブラックウッド傑作集』評
解説 平井呈一と怪奇小説のルネッサンス  紀田順一郎
平井呈一 (1902-1976)
早稲田大学文学部中退。英国世紀末文学に傾倒、佐藤春夫に師事し、翻訳の下請けなどを行なう。その後、永井荷風の弟子となるが、荷風の書・原稿の贋作事件を起こし破門に。戦後、『魔人ドラキュラ』(東京創元社、1956)を皮切りに怪奇小説・推理小説の翻訳を手掛ける。《世界恐怖小説全集》(東京創元社 1958-59)では作品選定、解説に活躍。訳書に小泉八雲『怪談』、サッカレー『床屋コックスの日記・馬丁粋語録』、ストーカー『吸血鬼ドラキュラ』、レ・ファニュ『吸血鬼カーミラ』、ホイートリ『黒魔団』、ウォルポール『オトラント城綺譚』、セイヤーズ『ナイン・テイラーズ』、ディクスン『黒死荘殺人事件』、『アーサー・マッケン作品集成』『こわい話・気味のわるい話』など多数。創作怪奇小説集に『真夜中の檻』がある。『小泉八雲作品集』で日本翻訳文化賞受賞。



恐怖 アーサー・マッケン傑作選

アーサー・マッケン
平井呈一訳

アーサー・マッケンは平井呈一が最も愛した怪奇小説家だった。二十代の頃、友人から借りた英国の文芸雑誌で読んだ「パンの大神」に衝撃を受けた平井は、戦後その翻訳紹介に尽力、晩年には『アーサー・マッケン作品集成』全6巻を完成させた。異界との交わりが生み出した恐怖を描いて世紀末の読者を戦慄せしめた出世作「パンの大神」をはじめ、「輝く金字塔」「赤い手」「白魔」他の初期作に、第一次大戦中に英国の或る地方を襲った怪事件の顛末を悠々たる筆致で物語る中篇「恐怖」など、異次元を覗く作家マッケンの傑作を平井呈一入魂の名訳で贈る。付録として、平井呈一がマッケンの生涯を辿りつつその作品を論じた『作品集成』全6巻の解説を収録。
解説=南條竹則

◆創元推理文庫 2021年5月刊 1650円(税込) [amazon]
◆装丁=山田英春
◆装画=タダジュン

【収録内容】
訳者のことば 平井呈一
パンの大神/内奥の光/輝く金字塔/赤い手/白魔/生活の欠片/恐怖
付録 『アーサー・マッケン作品集成』解説(全6巻) 平井呈一
解説 南條竹則

アーサー・マッケン (1863-1947)
ウェールズ生まれ。ロンドンで家庭教師、オカルト書のカタログ製作、翻訳、新聞記者、俳優などの仕事をしながら文筆活動を続ける。最初の短篇「パンの大神」(1894)は文芸批評家には酷評されたが、熱狂的なファンを生み、「白魔」『三人の詐欺師(怪奇クラブ)』『夢の丘』『恐怖』などの傑作が続いた。英国怪奇小説黄金時代の巨匠のひとり。その異次元的恐怖、幻視の描写はラヴクラフトはじめ多くの怪奇作家に影響を与えた。日本で最初にマッケンに注目したのが江戸川乱歩であり、最初の翻訳紹介者が平井呈一だった。