バルトルシャイティス著作集
4巻

国書刊行会

◆菊判・上製ジャケット装
◆月報付き
◆カラー口絵・図版多数収載
◆装丁=高麗隆彦

1.アベラシオン

2.アナモルフォーズ

3.イシス探求

4.鏡

※本体価格(税別)表示


観相学、風景庭園、怪物、幻想の東洋、光学魔術……
奇怪なイメージ、不思議な事物の系譜を
驚異的な博引傍証と夥しい図版によって掘りおこす
異端の美術史家ユルギス・バルトルシャイティスの
代表的著作を集大成。夢想と逸脱の精神史

怪物、錯視、歪鏡といった一連の文化的周縁現象の研究により、〈逸脱〉 の視点からヨーロッパ文化史の書きかえを精力的に展開、その恐るべき博引傍証と、珍奇な図版の数々によって人々を驚倒せしめた、リトアニア出身の異端の美術史家ユルギス・バルトルシャイティス。ホッケ、カイヨワ、ブルトンらの霊感源となり、わが国では澁澤龍彦の先駆的紹介によってその名を知られながら、謎に包まれた生涯も相俟って、既に伝説的存在と化していたこの巨人の全貌がついに今明らかとなる。

ユルギス・バルトルシャイティス (1903-1988)
リトアニア生まれの美術史家。父親は有名な象徴派詩人・外交官。1920年代にパリに移住、中世ロマネスク装飾芸術の形態分析研究で注目を集め (『異形のロマネスク』 (講談社) は初期の形態研究の再刊本)、フランス美術史界の重鎮アンリ・フォシヨンの娘婿となる。50年代以降、『幻想の中世』(平凡社ライブラリー)、『アナモルフォーズ』 『アベラシオン』 『夢想と覚醒』 『イシス探求』 『鏡』 など、一連の綺想研究を発表、読書界にセンセーションを巻き起こし、多方面に大きな影響を与える。

1.アベラシオン 
  形態の伝説をめぐる4つのエッセー

種村季弘・巌谷國士訳

1991年5月刊 4500円 [amazon] 

動物と人間の類似性から人間性格を演繹する表徴解読の秘術、観相学の系譜を跡づける 「動物観相学」。岩石のなかにたちあらわれる聖書の光景、都市、人間や動物の図像――収集家を熱狂せしめた鉱物の奇蹟 「絵のある石」。ゴシックの大聖堂に鬱蒼たる森のヴィジョンをみ、自然回帰の神話を読みとく 「ゴシック建築のロマン」。庭園内に突如出現する奇怪なモニュメント、シナ・イスラムの寺院、怪物や神話的主題を配した幻想魔景。諸神混淆の風景庭園の諸相を追う 「庭園とイリュージョン風景」。形態の伝説をめぐる4つのエッセイを収録、近代合理主義から逸脱した偏奇なイメージの系譜を、博引傍証と夥しい図版によって掘りおこした驚異の書。

                     TOP

2.アナモルフォーズ 光学魔術

高山宏訳

1992年1月刊 5086円 [amazon] 品切

近代合理主義そのものの象徴とされる遠近法という視覚構造そのものが、一個の壮大な夢、奇怪千万なアベラシオンにほかならなかった。理性によって世界を一貫したヴィジョンに整合しさろうとする精神は、そもそもの出発点から、その方法を 〈遊び〉 へと逸脱させることで疑い、笑おうとする強烈な敵につきまとわれることになった。遠近法が諸学の中心的関心事となったルネッサンス期にあって、それを蝕む歪曲遠近法の研究や図像が、反ルネッサンス運動としてのマニエリスムにとっての中核的テーマとなる。その17世紀を中心にして、古くは古代ギリシア、遠くは中国にまで、怖るべき資料の博捜が始まる。固定化した視線の神話を破壊するアナモルフォーズ――歪んだ遠近法の系譜を追跡する逸脱の美術史。今世紀における復権を論じた新増補版に基づく完訳決定版。

                     TOP

3.イシス探求 ある神話の伝承をめぐる試論

有田忠郎訳

1992年11月刊 6000円 [amazon]

イシス――ナイル河畔に出現したこの女神は、オリエントからローマを含む地中海沿岸一帯に広まった大母神信仰の母胎であった。至高にして普遍の原理であるイシスは、また大旅行者でもあった。著者は、イシス信仰の痕跡を、フランス、イギリス、ゲルマニアなどヨーロッパ各地に、そして遥か中国・インドにまで求め、驚くべき展望、あるいはむしろ展望の逆転の中に、古代から中世、否、近世にまで至る、人間の信仰と想像力の大いなる角逐ないし協力を見る。幻想の東洋と西欧の夢想が交錯するあやかしの精神史。膨大な資料を渉猟し、美学、考古学、比較宗教学などを駆使して、神話の伝承の形で現れる知のパースペクティヴの転倒を試みた本書は、『アベラシオン』 『アナモルフォーズ』 に続いて、「逸脱の遠近法」 の三部作最後を飾る。

                      TOP

4.鏡 科学的伝説についての試論、啓示・SF・まやかし

谷川渥訳

1994年11月 6381円 [amazon]

物体としての鏡とその産業の歴史ではなく、さまざまな推論や詩や奇妙なヴィジョンを伴った、鏡の科学を取り扱う本書は、古代から光学上の見世物のために場所を提供していた博物館や 〈驚異の部屋〉 の歴史をはじめとして、天の鏡、神の鏡、アルキメデスの鏡、アレクサンドリアの灯台の鏡、ロードス島の巨像、ピュタゴラスの鏡、魔法の鏡といったテーマを順次採り上げながら、鏡の科学が、たんに現実の再生の科学であるばかりではなく、さかしまの世界を現出する幻視的な超現実主義の科学でもあることを、説得的に論証する。250枚の挿絵と写真によって飾られた本書は、また数々の貴重なテクストからなる一大アンソロジーたりえてもいる。著作集の最後を締めくくるにふさわしい、稀代の碩学ならではの著作である。

                       TOP