【オラフ・ステープルドン作品】

スターメイカー

オラフ・ステープルドン
浜口稔訳

肉体を離脱して精神だけの存在となった主人公は、地球を飛び立ち、時間と空間を超えて宇宙の彼方へと探索の旅に出る。棘皮人類、共棲人類、船人類、植物人類など、訪れた惑星世界で出会った独自の進化を遂げた奇妙な人類と諸文明の興亡、宇宙の生命の生成と流転、さらには至高の創造者〈スターメイカー〉との出会いまでを、壮大なスケールと驚くべきイマジネーションで描いた幻想の宇宙誌。そのあまりに冷たく美しいヴィジョンゆえに「耐えがたいほど壮麗な作品」(B・W・オールディス)と評された。
H・G・ウェルズの正統を継ぐSFの古典にして、いまなお凌駕するもののない孤高の名作。その影響はアーサー・C・クラーク(『2001年宇宙の旅』)、スタニスワフ・レム(『ソラリス』)らSF作家にとどまらず、哲学者バートランド・ラッセル、物理学者フリーマン・ダイソンなど、多方面に及ぶ。ボルヘス、ヴァージニア・ウルフをはじめ多くの作家に絶賛された伝説の作品を全面改訳で贈る。

◆ちくま文庫  2021年11月刊 1430円(税込)[amazon]
◆装幀=山田英春
◆国書刊行会 (1990) の改訳文庫化。

冒頭部の比類なき精神的昂揚感と飛翔感、ついに造物主と対面した際の絶叫するほどの衝撃、その後の内省から起ち上がる、あまりに静謐な瞑想的神話──このわずか一冊のなかには、宇宙のすべて、「わたし」のすべて、未来の光が詰まっている!──瀬名秀明

「ステープルドンの数百万年、数億年におよぶ、文明と全人類の興亡の展望は、わたしの全宇宙観を変えて、それからの作品の多くに影響を与えた」――アーサー・C・クラーク(『楽園の日々』)

「彼の作品を読むのは、高い山頂に立つのと似ている」 「『スターメイカー』は、まさしくSFの偉大で円熟した聖典の一つである」――ブライアン・W・オールディス(『十億の宴』)

「ステープルドンは自然科学者のごとく正確に、そして時として味気ないほど厳密に、架空の世界を構築し描き出す。彼の生物学的幻影の数々は、人間的な出来事に汚染されたりはしない。(中略) 『スターメイカー』はすばらしい小説であり、さらには世界の複数性とその劇的な歴史の、蓋然性と信憑性を備えた表現でもある」――ホルヘ・ルイス・ボルヘス(『序文つき序文集』)


オラフ・ステープルドン (1886-1950)
イギリスの作家、哲学者。初の著作『現代の倫理学』を発表した翌年、『最後にして最初の人類』(30)で注目を集め、『スターメイカー』(37)など、独自の哲学的思弁とヴィジョンに満ちた壮大な宇宙年代記は読書界に衝撃を与えた。他の代表作に『オッド・ジョン』『シリウス』(いずれもハヤカワ文庫)がある。