ソーンダイク博士短篇全集 全3巻

R・オースティン・フリーマン
渕上痩平訳

国書刊行会

科学捜査と論理的推理で謎を解き明かす“あらゆる時代を通じて最高の法医学者探偵”ジョン・ソーンダイク博士の事件簿、シリーズ中短篇全42作品を完全新訳。初出誌等から挿絵・図版を収載した世界初の決定版全集。

◆四六変型・上製ジャケット装・本文500~570頁
◆装幀=山田英春
パンフレット(国書刊行会HP)

「再評価が遅すぎたとは言うまい。むしろ21世紀の翻訳で博士の活躍が読める幸運を喜ぶべきだ。(…)倒叙形式という試みを通じて、フリーマンは「犯人の論理」と「探偵の論理」を複眼的に処理する視点を手に入れた。解決の論理性とフェアプレイの急所をつかんだと言ってもいい。だからこの短篇全集は、文字通りの意味でModern Detective Storyの実験室なのである」――法月綸太郎

Ⅰ 歌う骨

科学捜査を駆使し、論理性を重視するソーンダイク博士の探偵譚は、《ピアスン》誌に連載されるやたちまち人気を博し、シャーロック・ホームズ最大のライヴァルと目されるに至った。列車内で発見された女性の死体の謎に挑むソーンダイク短篇第一作「青いスパンコール」、密室トリックで有名な「アルミニウムの短剣」、中国人の亡霊が出没する怪談仕立ての異色篇「清の高官の真珠」など8篇を収めた記念すべき第一短篇集『ジョン・ソーンダイクの事件記録』(1909)と、事件現場で採取した証拠から犯行を再構成するソーンダイクの手腕が際立つ名篇「オスカー・ブロドスキー事件」をはじめとする“倒叙”形式の発明で探偵小説史に不滅の輝きを放つ『歌う骨』(1912)の里程標的短篇集2冊を収録。付録エッセー「ソーンダイク博士をご紹介」。

◇2020年9月刊 3960円(税込)[amazon]

【収録内容】
ジョン・ソーンダイクの事件記録

まえがき
/鋲底靴の男/よそ者の鍵/博識な人類学者/青いスパンコール/モアブ語の暗号/清の高官の真珠/アルミニウムの短剣/深海からのメッセージ
歌う骨
まえがき/オスカー・ブロドスキー事件/練り上げた事前計画/船上犯罪の因果/ろくでなしのロマンス/前科者
付録 ソーンダイク博士をご紹介
解説 渕上瘦平



Ⅱ 青いスカラベ

ソーンダイク博士の初登場作として執筆され、後に長篇に改稿された単行本未収録の中篇「ニュー・イン三十一番地」、イングランド南西端、ウルフ・ロック灯台周辺の海域を舞台にした倒叙物「死者の手」をはじめ、短篇集『大いなる肖像画の謎』(1918)から「パーシヴァル・ブランドの替え玉」他の2篇、さらにヒエログリフの印影に隠された謎を解く宝探し暗号小説「青いスカラベ」、証拠に付着した埃の顕微鏡検査から強盗殺人犯を追及する「ニュージャージー・スフィンクス」、干し草の焼け跡で発見された頭蓋骨の謎に挑む「火葬の積み薪」など、第一次大戦後に再開されたシリーズ7篇をまとめた短篇集『ソーンダイク博士の事件簿』(1923)を収録。付録エッセー「探偵小説の技法」「『ソーンダイク博士の著名事件』まえがき」。

◇2020年12月刊 3850円(税込)[amazon]

【収録内容】
ニュー・イン三十一番地/死者の手
大いなる肖像画の謎
パーシヴァル・ブランドの替え玉/消えた金貸し
ソーンダイク博士の事件簿
白い足跡の事件/青いスカラベ/ニュージャージー・スフィンクス/試金石/人間をとる漁師/盗まれたインゴット/火葬の積み薪
付録1 『ソーンダイク博士の著名事件』まえがき
付録2 探偵小説の技法
解説 渕上瘦平


Ⅲ パズル・ロック

1920年代の探偵小説“黄金時代”に入り、さらに円熟味を増したソーンダイク探偵譚。短篇集『パズル・ロック』(1925)、『魔法の小箱』(1927)は、暗号、毒殺、アリバイ、バラバラ死体などの多彩なテーマを取り上げ、独創的なトリックやプロットの妙で読者を魅了する傑作が目白押し。「パズル・ロック」「バーナビー事件」「砂丘の謎」「ポンティング氏のアリバイ」「パンドラの箱」ほか全18篇を収録。付録エッセーはフリーマン研究家P・M・ストーンの「キングズ・ベンチ・ウォーク五A」。

◇2021年4月刊 4180円(税込) [amazon]

【収録内容】

パズル・ロック
パズル・ロック/緑のチェックのジャケット/ネブカドネツァル王の印章/フィリス・アネズリーの危難/疫病をまき散らす者/バーナビー事件/砂丘の謎/バーリング・コートの幽霊/謎の訪問者
魔法の小箱
魔法の小箱/箱の中身/巧妙な隠れみの/法廷の博物学者/ポンティング氏のアリバイ/パンドラの箱/巨獣の手がかり/急を救う病理学者/瓦礫で集めた情報
付録 キングズ・ベンチ・ウォーク五A番地 パーシヴァル・メイスン・ストーン
解説 渕上瘦平



R・オースティン・フリーマン (R. Austin Freeman, 1862-1943)
ロンドン生まれ。医師から作家に転身。1907年、法医学者ソーンダイク博士を探偵役とした長篇『赤い拇指紋』を発表。翌年、《ピアスン》誌に短篇シリーズを連載開始、科学捜査を駆使したソーンダイク探偵譚は人気を博し、また短篇集『歌う骨』(1912)は倒叙推理の嚆矢となった。〈ホームズのライヴァルたち〉の時代から大戦間の〈黄金時代〉まで長く活躍を続けた英国探偵小説界の巨匠。長篇代表作に『オシリスの眼』『キャッツ・アイ』『ポッターマック氏の失策』など。