マーティン・イーデン

ジャック・ロンドン
辻井栄滋訳


二十世紀初めのアメリカ西海岸オークランド。労働者地区で生まれ育ったマーティン・イーデンは、船乗りとなり荒っぽい生活を送っていたが、上流階級の女性ルースに出会い、その美しさと知性に惹かれるとともに文学への関心に目覚める。生活をあらため、図書館で多くの本を読み、文法を学んだマーティンは作家を志し、海上での体験、小説や詩、評論を次々に書いて新聞や雑誌に送るが一向に売れず、彼が人生の真実をとらえたと思った作品はルースにも理解されない。生活は困窮、絶望にかられ文学を諦めかけたとき、彼の運命は一転する。『野性の呼び声』で世界的名声を獲得したジャック・ロンドンが、自らの体験をもとに書き上げた自伝的小説。労働者階級に生まれ、独学で自己向上を目指す若者の苦闘、その栄光と悲劇を圧倒的な熱量で描いて、多くの読者の心を揺さぶり続けてきた名作。

◆白水社/エクス・リブリス・クラシックス
◆2018年9月刊 3600円(税別)
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◆装丁=緒方修一

◆四六判・上製・480頁


ジャック・ロンドン Jack London (1876-1916)
アメリカの作家。サンフランシスコで生まれる。家計を助けるため少年時代から新聞配達や缶詰工場で働き、牡蠣泥棒で悪名を馳せた後、アザラシ猟の船に乗り込み、浮浪者(ホーボー)となり全米を放浪、ゴールドラッシュに沸くアラスカにも赴いた。やがて短篇や詩、記事、評論などの投稿を始め、『野性の呼び声』(1903)で一躍流行作家となる。アラスカや南洋を舞台にした作品、動物小説、社会小説、ボクシング物、SF、幻想小説、ルポルタージュなど、多彩な作品で世界的名声を得た。他の代表作に『海の狼』『白い牙』『鉄の踵』『マーティン・イーデン』、短篇に「火を熾す」「生の掟」「一枚のステーキ」「影と光」など。創作、旅行、農園経営と精力的な活動を続けたが、長年の過労と大酒で健康を害し、1916年に尿毒症と鎮痛薬モルヒネの過剰摂取により死去。