リスボン大地震
世界を変えた巨大災害

ニコラス・シュラディ
山田和子訳

1755年11月1日、万聖節の朝、ポルトガルの首都リスボンを襲った大地震は、大航海時代以来交易都市として栄えたこの街を一瞬にして壊滅させた。市内各所で発生した火災は瓦礫と化した街を焼き尽くし、さらに大津波が人々を襲った。死者2万5千人以上、ヨーロッパ史上最大の地震災害である。しかし、首都壊滅の危機に国家の対応は素早く、国王ジョゼ一世から全権を委ねられた大臣カルヴァーリョは、直ちに消火活動、被災者の救援と食糧配布、遺体の処理、治安維持などの対策に着手し、その後新たな都市計画のもと首都再建に乗り出した。同時にこの国を支配していた教会・貴族勢力を排除して、ポルトガルの近代化が進められていく。地震の甚大な被害は忽ち各国に伝えられ、聖職者や思想家、科学者たちにも大きな衝撃を与え、様々な議論が沸騰した。一方に地震を人類に対する神の怒りの表れとみるキリスト教的な捉え方があり、一方では自然現象として原因を科学的に解明しようとする姿勢があり、近代地震学の誕生にもつながった。世界を変えた災害、リスボン大地震の実態と復興の足取りを史料を駆使して描き、社会・経済・科学・思想・宗教など広範囲に及んだ影響をたどる歴史ノンフィクション。

本文サンプル(第1章より)

◆ The Last Day; Wrath, Ruin and Reason in the Great Lsibon Earthquake of 1755
◆白水社 2023年8月刊 4180円(税別) [amazon]

◆装丁=山田英春
◆四六判・上製・296頁/口絵16頁

【目次】
謝 辞

第一章 万聖節の日
第二章 秩序の回復
第三章 被害の詳細
第四章 ポルトガルの変遷
第五章 名ばかりの黄金時代
第六章 説教師と哲学者
第七章 不死鳥のごとく
第八章 啓蒙主義と独裁
エピローグ
引用文献
参考文献
訳者あとがき
ニコラス・シュラディ
アメリカ合衆国コネティカット生まれ。ワシントンDCのジョージタウン大学で学位(哲学)取得後、著述活動を始め、《ニューヨーク・タイムズ・ブックレビュー》《フォーブス》《ナショナル・ジオグラフィック・トラベラー》他の雑誌・新聞に、文化、歴史、旅行、建築などの評論、エッセイ、書評を寄稿する。《アーキテクチュラル・ダイジェスト》には定期寄稿者として建築、都市計画、デザイン、美術に関する文章を寄せるとともに、多くのインタビューも行なっている。1986年からバルセロナ在住。主な著作に『巡礼の道での数々の冒険』(1999)、『斜めから見たピサの斜塔をめぐる物語』(2003)、『リスボン大地震』(2008)、小説『ルシアと運命の一族』(2020)などがある。