バンヴァードの阿房宮
世界を変えなかった十三人

ポール・コリンズ
山田和子訳

十九世紀半ばににミシシッピ川流域の風景を描いた巨大パノラマ画でアメリカ、ヨーロッパを巡業、巨万の富と名声を得ながら今日まったく忘れられた画家、新発見のシェイクスピア劇の上演で大騒動を巻き起こした贋作者、トンデモ学説の元祖〈地球空洞説〉の提唱者、驚異の放射線 〈N線〉 の発見で科学界を震撼させた物理学者、でたらめの台湾語と奇怪な逸話満載の『台湾誌』 でロンドン社交界の寵児となった偽台湾人サルマナザール、幻のニューヨーク空圧式地下鉄計画の推進者、奇抜な衣装と演技で非難の嵐を呼んだロミオ役者、宇宙の全人口を算出した天文学者などが次々登場。
壮大な夢と傑出した才能をもちながら、すこしばかり運が悪かったのか、それとも何かが決定的に間違っていたのか、世界を変えることなく歴史から忘れられた偉人たちの数奇な人生をユーモアをまじえて紹介したポートレート集。

BANVARD’S FOLLY: Thirteen Tales of People Who Didn’t Change the World (2001)
◆白水社 2014年8月刊 本体3600円(税別) [amazon]
◆装丁=山田英春

◆四六判・上製・448頁

◇三浦しをん氏評(朝日新聞 9/28)
◇野崎六助氏評(日本経済新聞夕刊 9/3)
◇井上威朗氏評(WEB RONZA11/6)

本書目次

まえがき
1 バンヴァードの阿房宮 ジョン・バンヴァード
2 贋作は永遠に ウィリアム・ヘンリー・アイアランド
3 空洞地球と極地の穴 ジョン・クリーヴズ・シムズ
4 N線の目を持つ男 ルネ・ブロンロ
5 音で世界を語る ジャン-フランソワ・シュドル
6 種を蒔いた人 イーフレイム・ウェールズ・ブル
7 台湾人ロンドンに現わる ジョージ・サルマナザール
8 ニューヨーク空圧地下鉄道 アルフレッド・イーライ・ビーチ
9 死してもはや語ることなし マーティン・ファークワ・タッパー
10 ロミオに生涯を捧げて ロバート・コーツ
11 青色光狂騒曲 オーガスタス・J・プレゾントン
12 シェイクスピアの墓をあばく ディーリア・ベーコン
13 宇宙は知的生命でいっぱい トマス・ディック
謝辞
訳者あとがき
参考文献

歴史の脚注の奥に埋もれた人々。傑出した才能を持ちながら致命的な失敗を犯し、目のくらむような知の高みと名声の頂点へと昇りつめたのちに破滅と嘲笑のただ中へ、あるいはまったき忘却の淵へと転げ落ちた人々──そんな忘れ去られた偉人たちに、私はずっと惹かれつづけてきた。(「まえがき」 より)

ポール・コリンズ Paul Collins (1969- )
アメリカの作家・編集者。ペンシルヴェニア州パーキオメンヴィル生まれ。少年時代から本に埋もれて過ごし、大学卒業後は市民大学の講師などをしながら様々な雑誌にエッセーを寄稿。古書に関する厖大な知識をもとに書きあげた本書 『バンヴァードの阿房宮』 を2001年に発表する。他に古書の町ヘイ・オン・ワイに取材した 『古書の聖地』 (2003、晶文社)、『自閉症の君は世界一の息子だ』 (2004、青灯社)、19世紀ニューヨークの殺人事件と報道戦争を取り上げた 『世紀の殺人』 (2011) などの著作がある。忘れられた奇著の復刊叢書 《コリンズ・ライブラリー》 (マクスイーニーズ社) の選定・編集も担当している。