〈グーテンベルク21〉による『死が二人をわかつまで』解説の無断掲載について


2018年7月31日、〈グーテンベルク21〉発行の電子書籍、ジョン・ディクスン・カー『死が二人をわかつまで』(仁賀克雄訳)において、当編集室の著作物が無断使用されていることが判明いたしました。
同電子書籍は、1996年に国書刊行会から刊行された《世界探偵小説全集》第11巻『死が二人をわかつまで』を底本としており、国書刊行会版の解説もそのまま収録されていました。
この解説は「橘かおる」名義となっておりますが、当時、国書刊行会の編集者として同書を企画・編集した藤原が筆名で執筆したものです。当方では〈グーテンベルク21〉から電子書籍化について連絡を受けた覚えはなく、当然、収録許可も出しておりません。
早速、〈グーテンベルク21〉に連絡を取り、無断使用について抗議したところ、以下の回答を得ました。

《ご指摘のとおり、この作品解説は、無断掲載ということに間違いありません。
 申し訳ありません。
 掲載にあたりましては当然、「橘かおる」氏と連絡をとり、許諾を得なければならなかったのですが、刊行元である国書刊行会とも連絡をとることなく、翻訳者の仁賀克雄氏とのみ連絡をとることで電子ブックを刊行いたしました経緯がありましたので、国書刊行会のほうへ問い合わせるのをためらったということがございます。
「橘かおる」 氏につきましてはもちろん、可能なかぎり手がかりをあたりましたが、探すことができず、そのまま掲載することで、お知り合いの方の何らかのお申し出を待つということになってしまいました。このだん、あらためてお詫びいたします。》


「可能なかぎり手がかりをあたりました」とありますが、真っ先に行なうべき底本の版元・国書刊行会への連絡をあえて避けている時点で、同社の説明には大きな疑問を感じざるを得ません。国書刊行会へ問い合わせればすぐに解説筆者の所在は判明したはずです。著者に連絡がつかないのなら、このケースでは収録を見合わせるべきかと思いますが、収録した上で「何らかの申し出を待つ」というのであれば、当該書籍に著者本人もしくは情報提供者への呼びかけを掲載するのが当然取るべき手段でしょう。しかし、そのような記載は一切ありませんでした。
(電子書籍は購入しないと中身を見ることができないので、たとえ呼びかけをしたとしても、それが関係者の目に触れる可能性は紙の本よりずっと低いのですが。実際、当編集室が無断使用に気づいたのも、たまたまgoogle検索で見覚えのある文章が目に留まり、現物を確認したからで、電子書籍の©2004という記載を信じるならば、実に14年もの間、気づかずにいたことになります)

同社からは謝罪と同時に、あらためて収録許可を打診されましたが、同社の出版姿勢、著作権に対する考え方への疑問、無断使用状態が長年にわたり放置されていたことを鑑み、当編集室ではこれを拒否しました。同時に、現在刊行されている〈グーテンベルク21〉発行の電子書籍『死が二人をわかつまで』から「解説」(橘かおる執筆)を即刻削除すること、無断掲載の事実を同社公式サイトおよびamazon等の当該書籍販売ページに明記することを求め、同社もこの申し入れを了承しました。

この件に関するご報告は以上です。


        2018年8月9日        藤原義也(藤原編集室)



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