【探偵小説の黄金時代】
The Golden Age of Murder (2015)

マーティン・エドワーズ
森英俊・白須清美訳

1928年、ロンドンのアントニー・バークリー邸で探偵作家を集めた晩餐会が催された。アガサ・クリスティー、ドロシー・L・セイヤーズ、ジョン・ロード、ロナルド・ノックス、H・C・ベイリー、ヘンリー・ウェイドなど、錚々たる顔ぶれのこの晩餐会はやがて恒例となり、探偵作家の親睦団体〈ディテクション・クラブ〉の設立に発展する。
G・K・チェスタトンを会長に戴き、28名が参加して1930年に発足した同クラブは、会員同士の交流を深めつつ、探偵作家が守るべきルールを定め、会員によるリレー小説の企画やラジオ出演など、精力的な活動を行なった。当時の有力作家が集ったこのディテクション・クラブこそ、大戦間英国の〈探偵小説黄金時代〉そのもの、といってよいだろう。
本書は、現在も続く同クラブの文書保管役に就任した作家マーティン・エドワーズが、文献資料と関係者への取材によって明らかにした〈ディテクション・クラブ〉草創期の歴史である。クラブ設立に至る経緯、頭蓋骨の「エリック」に誓いを立てる伝説的な入会儀式、名作誕生の内幕、現実の犯罪への関心、作家たちの知られざる私生活やゴシップなど、興味津津のエピソードを、小説家ならではの筆で生き生きと描きだしている。
クリスティーが英国情報部から大逆罪の疑いをかけられた話、セイヤーズが隠し通した個人的秘密、バークリーが弄んだ殺人の空想、ノックスが全英をパニックに陥れたラジオ放送、ミルワード・ケネディが名誉毀損で訴えられた事件、ダグラス・コールの秘かな情熱など、日本のミステリ・ファンが初めて知る新事実を満載。探偵小説を愛するすべての読者に捧げる最高の贈り物。貴重な写真を多数収載。
アメリカ探偵作家クラブ賞(評論評伝部門)受賞作
アガサ賞、H・R・F・キーティング賞、マカヴィティ賞受賞
イギリス推理作家協会賞候補作


◆国書刊行会 2018年10月刊 4600円(税別) [amazon]

◆装丁=山田英春
◆A5判・上製・464頁

【目次】
謝辞

  第一部 ありふれていない容疑者
第 1 章 暗闇の儀式
第 2 章 苦い罪
第 3 章 吊るされた女に関する話
第 4 章 サイレント・プールの謎
第 5 章 フェビアンの鼻面にボリシェヴィキの魂
第 6 章 犯罪学の拍車を着ける
第 7 章 自分を苦しめる術
  第二部 ゲームの規則
第 8 章 マフィアのお手本
第 9 章 菌類の物語と人生の意味
第10章 妻を始末する方法
第11章 もっとも意外な人物
第12章 世界一の広告
  第三部 逃避を求めて
第13章 「人命はなにより軽い」
第14章 戦争の残響
第15章 殺人、服装倒錯、そして空中ブランコでの自殺
第16章 魚袋の中の切断された頭部
第17章 「性的倒錯って聞いたことがあります?」
第18章 混乱を収拾する
第19章 金づまりということ
第20章 フロイトに傾倒するあまり、デモステネスをなおざりに
  第四部 警察への挑戦
第21章 ロンドン警視庁との知恵比べ
第22章 シュミーズがボイラーの後ろにあった理由
第23章 トレント本当に最後の事件
第24章 花崗岩の霊廟に埋葬された棺
  第五部 殺人の正当化
第25章 〈血と誇り〉の彫られた短剣
第26章 指先で世紀の大事件のへりにふれる
第27章 殺人者の蒐集
第28章 裁判官でも陪審員でもない、自分の良心
  第六部 最終ゲーム
第29章 地上最高のゲーム
第30章 有害な生き物の所業
第31章 猥褻と言えるほど露骨
第32二章 同業者からの衝撃
  第七部 謎を解く
第33章 殺人はいつまでも続く
付録 ディテクション・クラブの規則と規約
マーティン・エドワーズ (1955- )
イギリスのミステリ作家・評論家。〈湖水地方ミステリ〉シリーズなど約20冊の長編、50編以上の短編を発表。多数のアンソロジーを編纂、〈ブリティッシュ・ライブラリー・クライム・クラシックス〉シリーズの監修など、黄金時代探偵小説の復刊を精力的に進める。現在、ディテクション・クラブ会長および英国推理作家協会会長。本書『探偵小説の黄金時代』(2015)でアメリカ探偵作家クラブ賞他を受賞。