エラリー・クイーン 推理の芸術
Ellery Queen: The Art of Detection (2013)

フランシス・M・ネヴィンズ
飯城勇三訳

1929年、『ローマ帽子の謎』 で登場、「読者への挑戦」 を掲げ、題名に国名を冠した探偵小説シリーズで人気を博したエラリー・クイーンは、フレデリック・ダネイとマンフレッド・リーという従兄弟同士の合作作家だった。二人はバーナビー・ロスの別名義で 『Xの悲劇』 以下の四部作を発表、さらにミステリ専門誌 《EQMM》 を創刊、ラジオ・映画・TVにも進出して、40年以上にわたって活躍、「アメリカの探偵小説そのもの」 と評された。本書はクイーン研究の第一人者が資料や関係者の証言を収集し、偉大なミステリ作家のデビューから晩年までの軌跡をたどったエラリー・クイーン伝の決定版である。気質も志向も異なる二人が激しい応酬を繰り広げた合作の内幕をはじめ、二人のプライベートな横顔、スタージョン、アヴラム・デイヴィッドスンを起用した後期の代作者問題、1960年代に量産されたペーパーバック・オリジナルの真相など、初めて明らかとなる新情報を盛り込んだファン必読の評伝。詳細な書誌・邦訳リストを収録。図版多数。

「これは、今だから明かせる情報の多く加わった、クイーンへの、そしてミステリへの思いのこもった、確かな《愛》の書である。」――北村薫
「この増補版では作者のプライベートな側面が重視され、金銭事情やメディア社会学的な視点も加わって、より複雑で視野の広い本に生まれ変わった。(中略) どの章にも20世紀アメリカ大衆文化の光と影が刻みつけられている」――法月綸太郎氏評 (日本経済新聞 2/4)
「今回出たエラリー・クイーンの評伝は、そうした伝記ブームの流れの中でも、いわば真打ちあるいは名探偵の登場に等しい」 ――若島正氏評 (毎日新聞1/22)


◆国書刊行会 2016年11月刊 3960円(税込) [amazon] [honto]

◆栞=北村薫
◆装丁=水戸部功
◆四六判・上製 570頁・口絵12頁


【目次】

第1章 ブルックリン従兄弟の謎
第2章 エラリー一世登場
第3章 豊穣の年
第4章 長篇、短篇、そして雑誌
第5章 エラリー一世退場
第6章 新生EQ
第7章 どのようにして彼らはやってのけたのか?
第8章 エラリー電波を支配する
第9章 ソフトカバーとセルロイド
第10章 実り豊かな収穫の年
第11章 電波に還る
第12章 スミスという男
第13章 タイプライターの上の新しい血
第14章 最後の三十分
第15章 神は死に、猫が来るとき
第16章 カレンダーとキングたち
第17章 黄金と緋色とガラス
第18章 第三期の黄昏
第19章 アト・ランダム
第20章 幽霊(ゴースト)が忍び込む
第21章 幽霊(ゴースト)が増えていく
第22章 従兄弟たちに別れが訪れる
第23章 エラリーの時代の終わり
付録1 《EQMM》――ダネイの歳月
付録2 フレッド・ダネイと働いて遊んで
エラリ―・クイーン書誌

フランシス・M・ネヴィンズ
アメリカのミステリ作家・研究家・アンソロジスト。1943年、ニュージャージー州ベイヨンで生まれる。ニューヨーク大学卒業。元セントルイス大学法科大学院教授。『エラリイ・クイーンの世界』 (1974) でMWAエドガー特別賞、『コーネル・ウールリッチの生涯』 (1988) でMWA最優秀評伝・評論賞を受賞。『120時間の時計』 (1986) ほか数篇の長篇ミステリと短篇がある (以上、邦訳は早川書房)。『エラリー・クイーン 推理の芸術』 (2013) は長年のクイーン研究の集大成。



エラリー・クイーン 創作の秘密
往復書簡1947-1950年


ジョセフ・グッドリッチ編
飯城勇三訳

本格ミステリ作家〈エラリー・クイーン〉は、フレデリック・ダネイ、マンフレッド・B・リーの従兄弟同士の合作ユニットである。その創作方法は長く秘密にされてきたが、ダネイが詳細な梗概を書き、リーが小説的な肉付けを行なっていたことが後に明らかになった。志向も気質も違う二人は協力者であると同時にライヴァルでもあった。ダネイが練り上げた野心作『十日間の不思議』のプロットを、小説化担当のリーは気に入らず、二人は激しい議論を戦わせた。同じことが次作『九尾の猫』でも起こった。ダネイとリーの往復書簡は、二つの偉大な才能が作品の細部を巡って議論を重ね、時に激しい火花を散らして闘う様をまざまざと見せてくれる。その結果生まれた『十日間の不思議』『九尾の猫』『悪の起源』の三作品は、クイーン中期を代表する傑作となった。エラリー・クイーンの創作の秘密を、二人の往復書簡によって明らかにした貴重なドキュメント。

「この書簡集を夢中になって読み終えた今、私は、フレッドとマニーがこれだけ争っているのに本が完成して出版されたという事実を、信じることができない。しかし、二人がそれをやってのけたことを神に感謝しよう!」
                        ――ウィリアム・リンク(本書序文より)


「この十年で読んだ本の中で、ダントツでエキサイティングな内容だ」
             ――「三谷幸喜のありふれた生活」(朝日新聞夕刊 2021/7/1)


◆国書刊行会 2021年6月刊 3520円(税込)[amazon]

◆装丁=水戸部功
◆四六判・上製 360頁


【目次】
序  ウィリアム・リンク
EQのABC
クイーン年表
一九四七年 十日間の不思議は続く
一九四八年 猫が姿を見せる
一九四九年 「この黒人の役割」
一九五〇年 悪の起源
別れの言葉
最後の一撃
謝辞
訳者あとがき

ジョゼフ・グッドリッチ
ニューヨークを中心に活躍する劇作家・作家。2008年、戯曲『パニック』でMWA賞(最優秀脚本賞)を受賞。フレデリック・ダネイとマンフレッド・B・リーの往復書簡をまとめた本書(2011)はアガサ賞、アンソニー賞の候補作となった。短篇ミステリの執筆の他、エラリー・クイーン『災厄の町』舞台化(2016)の脚本も手掛けている。