Zombiesの2枚
Begin Here Decca LK 4679 1965

 私のゾンビーズ初体験は「ふたりのシーズン」だった。ビートルズを聴き始めた頃、ラジオで頻繁にオンエアされていて、早速シングルを買った。革新的なリズムパターンとムーディな曲調で大好きになった。特にサビの部分は泣けた。後追いでこのグループの曲をGSがカバーしていたり、シングルヒットが多数あるのを知った。どれもキャッチーないい曲で、このグループが好きになった。そういうわけで、私にとってゾンビーズは、あくまでもシングルヒットメーカーだったし、アルバムを買う気にはならなかった。

 英盤を意識して集め始めた頃、ゾンビーズの英オリジナルアルバムは2枚しかなく、しかもオデッセイがリリースされた時はすでに解散状態だったと知った。英のファーストアルバムはシングルヒットがほとんど収録されていない。やたらと高い壁アイテムで買う気も起こらなかった。80年頃に出た米の2枚組編集盤 Time of The Zombies にはシングルも多数含まれていてずっとこれを聴いていた。いかにも60年代のビートグループといった古色蒼然とした音質で、こんなもんだよ 65年だもん...とずっと思っていた。
 



LK4679 cover back 


LK4679 label

 最初に聴いたときは土下座しそうになってしまった。大袈裟ではなく、あまりのリアルさに圧倒されてしまったのだ。実際に聴いてみるまではただのバカ高いレコードという認識しかなかった。しかし、一度聴いてしまうとこのバカ高いのが当然と思えてくるから怖い。必ずしも高いから音が良いというわけではないが、この盤に関しては高いだけのことはあるなと(笑)

 この時代のR&Bのアナログは素晴らしいものが多いが、その中でもこれはトップクラスの原盤衝撃度だと思う。衝撃度ではPPMのゴールドと互角かもしれない。強烈な音圧とリアリティに圧倒されてひれ伏してしまいそうだ。どうやったらこんな音が溝にできるのだろう?

 Deccaは50年代から半速カッティングをやっていたらしいが、それにしてもこの音圧は半端じゃない。この音圧なのに歪みを微塵も感じさせないのもすごい。fレンジ、dレンジともに広くはないが、全く不満はない。むしろ、これで正しいバランスなのだと思わせる説得力がある。こういうレコードを聴くと、今が21世紀で、ここが日本だということが信じられなくなる。約40年と10万キロの時空が目の前に瞬間移動してくるのだ。正しい再生環境+聴く人のイマジネーション+良質のレコードが揃えば時空を超えた「場」が現れる。これこそがオーディオの楽しみなのだと思う。そういうことを感じさせてくれるレコードだ。

 マトリクスは ARL-6709-1A,ARL-6710-1A
たぶんこれが初回?他に何枚か見たが、これしかないようだ。もっとも、この音だから二度と買わずにすみそうだ。レーベルの右側にはBIEM,MCB,GEMAなどの表記がある。なぜかB面はGEMAのかわりにMCFAとなっている。仕向け地別にいろんなのがあるのかもしれない。
 


   amazing shot!! (from back cover photo)

 Odessey And Oracle CBS 63280 1968

 オデッセイを単独で通して聴いたのは83年にリイシューされたCDだった。これを聴くと「ふたりのシーズン」とシングルのB面「フレンド・オブ・マイン」だけがヒットチューンで、他の曲はメロトロン、ハープシコードなどのキーボードとコーラスを中心に据えた黎明期のプログレッシヴ・ロックだった。曲も魅力的で、小ぢんまりとしたスケールを感じさせない(これがかえっていい雰囲気を出してる)アルバムを通して流れのある素晴らしい作品だった。いつかはオリジナルを聴きたいと思っていた。
 


Stereo sticker on back top 

UK Stereo label side 1

UK Stereo label side 2


UK MONO label side 1

UK MONO label side 2

Japanese 1st issue Sony SONP 50089
 

 これほどラミネートが美しく映えるジャケットもそうないだろう。デザインは同じだが、米盤と日本盤はアル・クーパーのライナーノート付き。曰く、「最近ロンドンで買ってきた40枚を全部聴いてみたが、これがダントツに光っていた」ということで、やはり英盤がオリジナルでよさそうだ。リイシューCDを聴いてから いつかオリジナルを聴いてみたいと思っていた。そして、ついに清水の舞台から飛び降りたつもりでstereo盤を買ってみた。予想通りの素晴らしい音質だった。やはりレコードは聴いてみないとわからない。コンピ盤やCDでは決して体験できない別次元のリアリティがある。これこそが鮮度というものだ。しかし、これマトリクスがSBPG63280A2/SBPG63280B2となっている。ひょっとするとA1/B1があるのかもしれないがこれまで見たことがない。

 で、やめておけばいいものを、どうしてもバカ高いmonoを聴いてみたい と思い始めたのが運のツキだった。この頃はステレオ移行期でもあり、モノは当たり外れが多い。特に英CBSのモノは良いものに当たったためしがないのでどうしたものかかなり考えた。しかし、やはり聴いてみたいという気持ちは抑えられない。一度買えば気が済むだろうと、他の欲しいものを後回しにしてついに買ってしまった!ダメなら売ろう 元手くらいはなんとか回収できるだろうと。(これが大誤算だったのだが)

 最初に入手したmonoはマトリクスが63280A1/63280B2というやつで、これがいい意味で予想を裏切ってmono盤の素晴らしい音が楽しめた。おまけにL+Rではないモノミックスなのだ。ジャケットは裏に金色のSTEREOシールが貼ってないだけ。ステレオと同じジャケット。レーベルはシワのあるザラっとしたもの。(ステレオはモノに比べると少し光沢がある)←→のステレオマークが無いのがモノレーベルの特徴だ。やっと入手したモノ盤でしばらくは安堵していた。もうバカ高いゾンビーズは打ち止めだ...

 数ヶ月後のある日、友人宅で「ふたりのシーズン」を聴いていたら「あれ?これステレオですね」・・え?うそ?なんで??・・・自分の家ではモノで聴いていたので気がつかなかった。今の今までいいモノだと思っていたのだ。よく聴いてみると、確かにステレオだ。分離の悪いステレオとかじゃなくて正真正銘のリアル!ステレオ。慌ててA面を聴き直してみると、こちらはモノ。じゃ何か?B面だけがステレオ??マトリクスはモノなのになんで?(ちなみにステレオ盤のマトリクスは全く違うのでプレスのときにスタンパーを間違えたわけではなさそうだ)やられた。どうなってんだ??ヤードバースの Little Game のうそモノじゃあるまいし...いい加減だな 英CBS。オデッセイモノは全部こうなのだろうか?

 恥をしのんで ebayで他のmonoを落札した人にメールで質問してみた。「すみません 教えてください あなたが落札されたコレはB面もモノなのでしょうか?実は私の盤はB面のマトリクスがB2なのですが、どういうわけかステレオカッティングなのですよ」すると、丁寧にお返事を頂いた。「マトリクスはA1/B1でB面も間違いなくモノ」ということだった。あ〜そうでしたか。どうもありがとう... 早速ショックと落胆で鬱になる。

 また買うのか... この中途半端なモノ盤もうかつに処分できそうにないし、(何気にこのウソステレオが結構いい音なのだ。カッティングレベルが通常のステレオよりも高く、芯の座ったドスの効いた音だ)こうなりゃA面のウソステレオも聴いてみたい(というのは冗談です)もういい。まともなモノを買って厄払いしよう。もう祟りとしか思えない。(レコードの買いすぎでバチが当たったのか...)

 というわけで、やっと買いました。63280A1/63280B1今度は両面とも無事にモノでした。「ふたりのシーズン」のステレオでは1コーラス目だけに出てくるオルガン(of season..の次とme easy..のあと2箇所)が2,3コーラス目にも出てくるのがモノミックスの特徴だ。

 ステレオから足掛け3年...しかしオデッセイで3枚とは...お店ならともかく、ほかに何人被害者?がいるのだろう..おかげでその間ほとんど何も買えなかったのだ。というわけで失われた3年がゾンビーズに集約されている。オデッセイ大誤算!だった...

 最後にモノかステレオか ということになると これは両方とも素晴らしい としか言えない。最初からステレオミックスダウンを意識して制作したようにも思えるし、モノだけ聴いているとこれはこれでよくまとまっている。音質はステレオの方が幾分レベルが控えめですっきりしている。モノは芯がしっかりしていてレベルも高い。勿体無いけど両方・・・ちなみに私、普段はステレオ盤を聴いています。フワーっと広がるメロトロンはステレオならではの魅力があります。

*米盤、日本盤には Time Of The Season The Zombies...の表記が追加されている。ジャケット裏にはアル・クーパーのコメント付き。日本盤のライナーノートは木崎義二さん 定価1800円。音?問題外です...
 


 
 

Digging the Records

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最終更新日: 2005年 11月23日 20時00分