第二回RockDay
2008年6月8日
特集 プログレッシヴ・ロック


Give Me Take You/Duncan Browne
 後にメトロで知られるダンカン・ブラウンがImmediateから発表したファーストソロアルバム。このアルバムではガット弦の生ギターとヴォーカル、ストリングスが中心で、とても落ち着いた内容だ。若々しい新鋭のシンガー・ソングライターの作品といった趣きで、好きな人はたまらなく好きというレア盤によくあるパターンだ。メトロから遡って聴いた人も多いと思う。なぜかやたらと枚数が少なく、75年頃にはすでに幻の盤だった。レーベルがピンクの米盤はよく見るけどライラックレーベルと呼ばれる英オリジナルはかなりレアだと思う。後にCDや紙ジャケCDでもリイシュされたが、どれも盤起こしだった。Immediateの音源はオーナーのオールダムがマスターを保管しているらしいが、裁判が決着してなくて、現時点ではまともなリイシュは望めないようだ。音質はやはりというか、英盤が圧倒的に素晴らしい。

In The Region Of The Summer Stars/The Enid
 ロバート・ジョン・ゴドフリー率いるEnidのファーストアルバム。この人BJHのオーケストラの指揮者だったり、カリスマからソロアルバムを出していたが、その後、Enidを結成して現在も活動中だ。歌なしのシンフォニックなキーボード中心のインストバンドで、美しい曲調とダイナミックなアレンジで、固定ファンが多い。このファーストアルバムは、最初ドイツ系のBUKレーベルから発売されたが、EMIに権利が移った後、自主レーベルから再発された時にはデジタルリマスターのリミックス・リレコーディングが施されていた。ジャケットもW.アークルのイラストに変わっている。日本盤が発売された時は新バージョン音源と旧ジャケットという形だった。オリジナルのBUK盤は最初が白レーベルでDECCAプレス、次に黒いレーベルに変わってプレスもDeccaではなくなっている。Enidの人気が出てEMIから再発されたときはクリーム色のEMIレーベルになっていた。音質は最初のDECCAプレスのものが最高だ。鮮度、音色、ダイナミックさ どれを取っても、これを聴いてしまうと他のは聴く気にならなくなる。(オリジナルバージョンに拘らなければ新版の音質も大変素晴らしいと思う)先日エニドの紙ジャケのオマケとして作られたCDはやたら音がいいと評判だが、このBUK盤を板起こししたものらしい。

In A Glass House/Gentle Giant
 あのイエスも裸足で逃げ出すと評判のバカテク集団ジェントル・ジャイアントGGの6作目。邦題は「ガラスの家」レア度からいけばSimon Dupree名義のファーストだろうが、これは別にレアな盤というわけでもない。GGのアルバムは優秀録音が多く、オーディオ的にもっと評価されていいと思う。その中でも特異な音の締り具合を提示するこのアルバムはいいオーディオで聴いてみたいと思わせる盤だ。The Runnawayの冒頭、ガラスが割れる音のドライさ、響きを全て削ぎ落としたドラムや他の楽器の音はとてもヘンだ。このドラムを芯に驚異のアンサンブルで迫る演奏は正にプログレの王道と言いたくなる至芸である。一打、一音も外すことなく、淡々と繰り広げられる演奏は聴いている方がついてゆけない(笑。あまりに淡々と演奏するので、コミカルっぽい雰囲気さえ漂っている。近年最も再結成が期待されるバンドだが、シャルマンはATCOの社長になったしドラムのJohn Wethersは体を悪くして、もう叩けないということだ。残念だが、歳と病気には勝てない。しかし、彼の名演はこの盤にもしっかりと刻まれていて、永遠に色褪せることはない。

Air Cut/Curved Air
 新人としては英ワーナーと破格の条件で契約したプログレバンド。女性ヴォーカル、バイオリン、キーボード兼ギター、ドラム、ベースという ちょっと変わった編成のバンドだ。ソーニャ・クリスティナは後にバンドのメンバーになったポリスのスチュワート・コープランドと結婚している。(今は知らない) フランシス・モンクマンは王立音楽学校出身で、ハープシコード専攻。後のSKYの中心人物だし、Kate BushのLionheartでもいいプレイが聴ける。他のセッション、ソロも素晴らしいのが多く、私の好きなプレイヤーだ。このバンドはクリムゾンも使っているEMSのVCS3というシンセサイザーの音色とダリル・ウェイのヴァイオリン、ソーニャのヴォーカルが特徴的で、ユニークなバンドのカラーを作っている。この4thアルバムは権利の関係なのか、なぜかCD復刻されていない。3rdアルバム発表後、モンクマン、ウェイが脱退していて、ソーニャ以外の看板メンバーがいなくなって途方に暮れていたときに、当時17歳のエディ・ジョブソンを加えてレコーディングしたという、無茶苦茶なアルバムがこれなのだ。なので、ヤケッパチに毛の生えたような、ある意味エアらしくない、物凄い演奏が聴ける。ドラムもJim Russelに代わっていて、この人は山口百恵のイギリス録音のセッションでも名前を見ることができる。引き摺るような独特のドラミングはかなり私の好みだ。音もまたすごい。VCS3の重低音がこれでもかと入っていて、最初にPurple Speed Queenを聴いたときはスピーカーが壊れるかと思った。日本盤も優秀な音質だけど、英グリーンラベルの初盤は更に鮮度が加わって ひぇーーな音である。

Profondo Rosso/Goblin
 ここから何枚かはイタリアもの。ゴブリンはホラー映画「サスペリア」「ゾンビ」とかのサントラをやっていて、日本でもかなり知名度がある。元々はスタジオマンの集団で、作曲力、演奏力は確かだ。私はホラー映画は趣味じゃないので、キングから出たセカンドアルバムのRollerで初めて聴いた。最近になって、友人に勧められてこのアルバムのオリジナルを買ってみた。CDでは持っていたが、このイタリア盤のあまりの音の鮮烈さに参ってしまった。カッティングの時にリミッターかけるのを忘れたんじゃないの? というくらいストレートでダイナミックな音なのだ。これがあるからイタリア盤はやめられない(笑

Essere O Non Essere/IL Volo
 IL VoloはFormula 3解散後にラディウスとロレンツィに実力派のスタジオマンを加えて編成したスーパーバンドだ。これはその2作目。イタリアンロックの頂点と言われている名盤だ。キングから日本盤も出た。当時からものすごい演奏だな と思っていたが、イタリア盤を聴いてぶったまげた。ダイナミックさが日本盤とは雲泥の差で、もう勘弁してくれ〜 ってくらいの音なのだ。この差はいったいなんでしょうね?最近リマスターされたCDもなかなか素晴らしい音だ。以前2in1で出た日本盤CD(板起こし?)とは比べ物にならない。なのでオリジナルと聴き比べてみた。紙ジャケのCDは確かにこれだけ聴いていれば十分に素晴らしい音なのだ。しかし、オリジナル(実は白プロモ)を聴いてみると、うーーん これはーー まいったね というくらいの違いがあった。(これじゃなにもわからん(笑) CDでもStudioK'sのPCオーディオ+スーパクロックで聴くとまた違うのかもしれないので、一度試してみたいと思っている。なんせあそこのCD再生は異常なくらいの空間再現なのだ。リマスタCDの音がオリジナルLPと遜色なかったりすると、ちょっと考えないといけないな(爆

Aquile E Scoiattoli/Latte Miele
 ラテ・ミエーレといえば、10代でデビューしたキーボードトリオで、ローマ法王の前で演奏したこともあるという、ファーストアルバムが有名だが、これは一度解散したあとにドラマーだけがオリジナルメンバーで再結成した復帰1作目。レーベルはNew TrollsがらみのMagmaからだ。キングから日本盤も出た。1曲目が素晴らしくアコースティックな柔らかい印象的な曲で、日本盤でも十分に素晴らしい音だった。こうなるとオリジナルを聴いてみたくなるのがコレクターの性というもの。うーーん・・・そうか・・ やっぱりね という音だった(笑 ドラマーのアルフィオはテレビでタレント業に励む一方、後年New Trollsに参加する。前回の来日にも同行して素晴らしいドラムを聴かせてくれた。歌とリズム隊はイギリスのB級バンドよりもはるかに高水準だと思う。もっとも歌とリズムが悪いイタリアンロックはとても聴けたもんじゃないけど(笑

IL Paese Dei Balocchi/Same
 これもキングのユーロロックシリーズで出たものだ。これとかムゼオ・ローゼンバッハは当時からかなりのプレミアが付いてたと思う。日本盤を聴いて、これは私の趣味じゃないな と判断した。これならレアーレ・アカデミア・ムジカの方がまだ聴ける。アイデアは買うけど、とてもLP一枚聴いていられない。というわけで、長いことオリジナルを聴かずにいた。ある日、聴く機会があって、あまりに生々しいストリングスにびっくり。慌ててオリジナルを買って聴き直したという盤だ。高いだけのことはあるな と納得した(笑。これを言い出すと、好みでないイタリアンロックというのは多々あるのだが、怖くてオリジナルを聴けない(爆

L'Isola Di Niente/Premiata Forneria Marconi
 イタリアのロックバンドで英米にもひけを取らず、間違いなく世界水準にあると思わせるのがPFMだ。演奏力、曲、アレンジどれを取っても立派に世界に通用するレベルだと思う。グレグ・レイクが惚れ込んで英でマンティコアレーベルからワールドワイドに売り出したのもよくわかる。このアルバムは英語版とイタリア語版があって、英語版は「甦る世界」として日本盤も当時リアルタイムに発売されていた。当時来日していて、日本でもかなり人気があった。この3作目は基本トラックがイギリスで録音されたアルバムなので、ずっと英盤、日本盤を聴いていたが、このイタリア語版は英語版よりもさらに鮮度の高い音が聴ける。イタリア盤のファーストプレスはドイツプレスの盤という噂もあるようだが、音質はイタリアカッティングの方が鮮度が高い。ちなみに英語版では日本盤の方が英ファーストプレスよりも音が良いと感じる。この頃のKナンバーの英Warnerプレスはあまり音質が良くない傾向にあるようだ。

Four Moments/Sebastian Hardie
 英米以外のプログレで例外的に人気が出たのはイタリア勢を別にすればオランダのフォーカスとフランスのタイ・フォン、それにこのオーストラリアのセバスチャン・ハーディくらいじゃなかろうか。プロモーションの気合の無さでは定評のあるフォノグラムからリリースされたにも拘わらず、あれだけ人気が出たのは内容が良かったからだろう。曲のシンプルさ、泣きのギターときれいなメロは演歌の好きな日本人にぴったりはまったんだと思う。A面1曲、B面2曲という構成にも恐れ入ったが、品のいいキーボードとよく歌うギターは何度も聴いてしまう魅力がある。んで、オーストラリアのオリジナル盤はラミネートで見開きジャケットでとてもきれい。レーベルはPolydorだ。盤のマトリクスは機械打ちのものと、手書きのものがある。どちらが初回なのかよくわからないが、機械打ちの方が鮮度が高い。日本盤は何度か再発されたけど、やはり赤帯の初回盤が音がいい。それでもオーストラリア盤と比べるとかなり粗い音に感じる。レーベルはマーキュリーなのでアメリカ経由のマスターだったのかもしれない。

Brave/Marilion
 Fishがいた初期のマリリオンはあまりピンと来なかった。悪くはないけど、好みじゃないんだよな。2代目のホーガスになった以降の作品の方が好みに合う。その中でもこのBraveはプログレ史上に残る傑作だと思う。極論すればフロイドのThe Wallに匹敵する作品だ。壮大なスケールで繰り広げられる音世界はまさにプログレ。プログレ聴いててよかったー と思わせる満足度が得られる作品なんて、そうはあるもんじゃないよ。ここまで来るとアナログ盤にこだわる必要もないのだろうが、この2枚組のアナログは仕掛けがあって、最後の曲は針を落とす場所によって、違う曲が出てくるという凝ったものだ。まぁそれはおいといても、アナログならではの音表現がある。デジタル録音だからCDの方がいいだろう というのは一概に言えなくて、元のソースは24bitだったりするから、CDの16bitに詰め込んだものよりも、アナログにそのままカッティングした方が音が良い ということもある。おまけに、これは2枚組でゆったりカッティングしてある。CDと同じ作品を一枚のLPって無理がありますよね。ドナルド・フェイゲンのカマキリアドのアナログなんか80分近くを一枚だもん。泣けます。

Fields/same
 レア・バードのオルガン奏者がクリムゾンのリザードでドラムを叩いていたマクロッチ、ギターのアラン・バリーと組んだトリオ。当時日本盤も出ていた。ELPを期待するとあてが外れるが、古風なハモンドの響きがポップな曲調で楽しめる。今となっては却って新鮮に聴けるかもしれない。たまに聴きたくなるアルバムだ。この盤は音が異常だ。この低音はなんだ?CDにはこんな音入ってないよ。バスドラが鬼太鼓座の大太鼓みたいに聴こえる。最初にこれを聴いてしまったので、CDは面白くもなんともない(笑 カッティングの時に何かを間違ったのだろう。音量を上げて聴くと間違いなくウーファーがフルボトムしてしまいそうだ。溝を覗いてみて目が点になった。こんな溝トレースできるのかよ〜!! という音が楽しめる。

Samurai/same
 さて、このあたりから怪しげな盤がいろいろ出てくる。これ、サムライというイギリスのジャズ・ロックバンド。知ってる人しか知らないという、見たことはあるけど聴いたことねーよ という人も多いんじゃ?サムライといってもミッキー・カーチスではない。サムライ7でもない。レッキとした英正統(笑 のプログレだ。前身はWebというバンドで、後にGreensladeに入隊するデイヴ・ローソンがこのバンドの中心人物だ。この人、KBはうまいし、曲、アレンジでも才能を見せる。ヴォーカルは好き嫌いがあるけど、私は慣れた。(笑 このアルバムは演奏もしっかりしているし、曲、アレンジどれも B+ 級のちゃんと聴ける作品だ。ジャケットの印象ほどに内容はヘンじゃない。(これジョンとヨーコがモチーフらしいのだが、言われて あーそーなの と思ったくらいヘタな絵だ)ジャズ・ロック系が好きな人なら問題なく聴けると思う。以前中国系のリマスター重量盤という怪しげなカウンターフィットが出回っていたが、これは意外に悪くなかった。けど、やはりDeccaプレスのオリジナルは鮮度バリバリで やっぱこれだよねーという音だ。CDはまるでダメでした。

Thick As A Brick/Jethro Tull
 ジェズロ・タルはイギリスでは一時はツェッペリンに迫る人気のあったバンドだ。今でも活動をしている(かもしれない)。実はファーストアルバムのモノ盤を選定していたのだが、これに差替えた。このテスト盤を聴きたいというリクエストが多々あったからだ。作品自体は表裏合わせて一曲というコンセプトアルバムでジェラルド・ボストックという少年が書いた詩(ジャケットは賞を受けたことを報道する新聞がそのまま折りたたまれたもの)にイアン・アンダーソンが曲をつけた というもの。というのは大ウソで、これも話題作りにタルが仕掛けたジョークだったというのが20数年後のインタビューで発覚した。詩の内容はともかく、演奏は全盛期のタルが五臓六腑に染み渡る最強のアンサンブルが堪能できる。テストプレスの項にも書いたけど、このテスト盤は次元の違う音がする。オリジナルだろうが、24bitリマスターだろうが 勝手にやってろ(笑 という音なのだ。A面の頭に針を落とすのはいいけど、どこでやめるかが問題だ(笑

Love Over Gold/Dire Straits
 悲しきサルタンで一躍有名になったダイアー・ストレイツの異色のアルバム。人気絶頂の頃にこういうプログレのような(笑 ストーリー仕立てのアルバムを出した。このアルバムはプログレというよりもスプリングスティーンのThe Riverに近いコンセプトなのかもしれない。しかし、インストでは英伝統のプログレ的展開を見せるのはやはりイギリスのバンドならではだと思う。録音も素晴らしくいい。この後のMTVで大ヒットした Brothers In Arms からはデジタルレコーディングになるが、そういう意味でもアナログ最末期の素晴らしい音が楽しめる。日本盤もHiFiないい音だけど、英盤の方がより鮮度が高く、抜けがいい音がする。かけるならもちろん Genesis のThe Musical Box 的展開を見せるA1のTelegraph Roadだ。

Matching Mole/same
 ロバート・ワイアットがソフトマシーンを離れた後に結成したバンド。キャラバンを離れたデイヴ・シンクレア、クワイエト・サンのビル・マコーミクがいる。メンバーからしてもカンタベリー系に分類されるようだ。当然のようにジャージーなソフトマシーンのような曲が多いが、そんなことはどうでもよくて、このアルバムを選んだ理由はただひとつ。ワイアット不朽の傑作 Oh Caroline が入っているからだ。曲も歌詞もロバートの歌も演奏もアレンジも何もかもが最高の名曲。これを聴いて涙しない奴とは絶対友達になれない(笑

Arzachel/same
 Eggの3人にスティーヴ・ヒレッジを加えて、小遣い稼ぎにと、Deccaにバレないように本名を隠してこっそり出したこのアルバムの存在はかなり前から知っていた。大変なレア盤で、ものすごく高いらしい というのもいろんなところに書いてあった。レア度も手伝って、英最高のサイケレコードという伝説も生まれていた。なので、いつかは一度音を聴いてみたいと思っていた。ある日、友人がブートCDを持っているというので、念願叶って聴くことができた。内容以前に、噂通りのひでぇ音だなという印象だった。それ以来、深追いする気になれなかったが、dropoutから正規に再発されたCDを買って、これはやはりオリジナルを聴いてみるべきものだと思い直した。高くてもオリジナルが欲しいと思うようになった。デイヴ・スチュワート自身のライナーノートも面白くて、欲しい病に更に拍車がかかった。それから、なんとか買える資金を準備してやっと買った。かけてみると悪くない 悪くないどころか、一発録りの良い面があって、スタジオエコーや録音経路で生じたディストーションさえも計算されたかのような音に聴こえてしまうから困ったものだ。A2のオルガンソロの歪み具合は音溝からスピーカーに至る再生系までもが楽器の一部と思えるような音で、この雰囲気はCDでは絶対に出せないものだ。曲も演奏も素晴らしい。私は大曲のB面よりも、クラシカルな雰囲気のA1〜A3が好きだ。モント・キャンベルとヒレッジのダブルヴォーカルはこのアルバムならではだし、Eggにヒレッジのギターが絡むのもたまらんものがある。それに超低ジッター(笑 のドラムも凄すぎる。これが好きになると英最高のサイケレコードというのも納得できてしまうから怖い。この盤は英以外では米、フランス、ドイツ、スペイン、イタリアで当時発売されていたようだ。英盤はRCA配給なので、日本で出ていてもおかしくないのだが。(Julyでさえ日本盤があるのに)スペイン盤以外は聴いてみたが、やはり英盤が飛び抜けて鮮烈な音がする。イタリア盤は英盤よりも音がいい と売ってる店があるが、聴いてみればわかる。大ウソだった(笑

Vimana/Nova
 Novaはオザンナの残党が英のセッションマンを加えてイギリスで録音して4枚くらいのアルバムを発表している。これは2枚目。プロデュースはブランドXのロビン・ラムレー。バックがナラダ・マイケル・ウォルデンにパーシー・ジョーンズ、果てはフィル・コリンズなど、ほとんどブランドXの面々が全面的に参加している。音はナラダが入っていることもあって、ブランドXよりも更にメリハリの効いたスーパーフュージョンになっている。オザンナの二人がアコギや管楽器など、いい感じでアコースティックが絡むので透明感もある。果てるまで突っ走るような演奏も凄いが、録音がまた超〜素晴らしい。しいて言えば、ウィンダム・ヒル系のアコースティックな音と、マハヴィシュヌ・オーケストラのダイナミックさを兼ね備えた音だ。ジャケットも秀逸で音そのままのイメージになっている。これまで永いことCDでリイシュされなかったような気がする。と思ったらこの6月にリマスターCDが出るようだ。苦節32年(笑 これでやっと正当に評価されて陽の目を見るかもしれない。果たしてCDの音質やいかに?

Barracuda/Quantum Jump
 ここから先は時間の都合でオミットされるかもしれないが、とりあえず内容だけ。上のNovaのファーストアルバムをプロデュースしているのがQuantum JumpのRupert Hineだ。この人あちこちでプロデューサーとしてクレジットされていて、どれもいい出来に仕上げている。そのHineを中心に作ったバンドがこれ。これはセカンドアルバムで、いろんなスタイルの音楽が聴ける。その中でもタイトル曲のバラクーダはインストで静かな中にも冴えを感じさせるアレンジと演奏が楽しめる。他の曲は私的には趣味じゃないけど、この曲だけはよく聴いている。 この盤、最初はPYEのプレスで、レイトはDECCAになる。やはりというか、レイトプレスはDECCAと言えども(テストでさえも)ダメだった。

Tai Phong/same
 イギリス以外のユーロロックで有名どころ といえばまずこのタイ・フォンだろう。日本盤がワーナーから出た時はタイ・フーンになっていたと思う。これはファーストアルバムで、シングルヒットしたSister Janeが2曲目に入っている。ベトナム人が2人いて、良くも悪くも個性的だ。欧米人らしからぬ、演歌調のギターソロは日本人には結構はまる。2日くらいでさっさと録音したらしくて、デビュー作らしく、シンプルだけど思いの詰まった作品だと思う。B面は長い曲が2つ入っていて、こちらも聴き応えがあって私は好きだ。日本盤はシングルジャケットだけど、フランス盤は見開き。深いエンボスのかかったごりごりの紙質がオリジナルを感じさせる。フランス盤の音は柔らかいけど芯があるといった感じで、日本盤よりテープが一世代若いように聞えてしまうから困ったものだ。

Birds/Trace
 オランダのトレースはエクセプションのRick Van Der Lindenが作ったトリオで、3枚の作品を残した。これはセカンドアルバム。エクセプションはイギリスから来たザ・ナイスの公演を見て、これならオレにもできる(笑 ってんで始めたらしい。べートーヴェンの「運命」アレンジしたシングルを出したら、かなり売れたらしい。Rickはオルガン、ピアノが得意で、かなりうまい。リズム感もよくて、速いパッセージも楽々こなすタイプのキーボード奏者だ。このアルバムはドラムにイギリス人のイアン・モズレーが加わっていて、ファーストよりもいいリズムで楽しめる。一貫してに気分爽快な演奏だ。一曲だけだがカーヴド・エアのダリル・ウェイも参加している。曲はともかく、録音が素晴らしい。オランダ本家Phillipsの実力を見せつけるような鮮明な音だ。ロック系のアルバムでここまで明瞭な音色で録音されているものは少ないと思う。

Fools Meeting/Carol Grimes and Delivery
 グリムスはともかく、バックのDeliveryはハットフィールズ+スティーヴ・ミラー+ロイ・バビントン という生粋のカンタベリーの大物がついている。音的にもジャージーなジャズっぽい展開でカンタベリーの音を強く感じさせる。今ではそんなに高くないと思うが、ハットフィールズが話題になった頃はかなりいい値段がついたレア盤だった。ハットフィールズのファンなら一度は聴いてみたい盤だと思う。紙ジャケでも出たけど音はやはりLPの方が断然鮮度が高い。
 

Caravan/same
 Caravanの項に書いた通りだけど、オーディオ的にはステレオ、音楽的なバランスではモノがいい。ベースのフレージングがよくわかるのはモノだ。ステレオはボヨボヨでなんだかよくわからない。出音がストレートに出てくるステレオ盤の方が迫力がある。紙ジャケ大賞になったCDはモノ/ステレオ両方が収録されていて、超お買い得(笑 だけど、LPを聴いてしまうと、CDはmp3を聴いているようだ。リイシューのLPはどうしようもない音なのでこれなら紙ジャケの方がまだマシだ。
 

The Amazing Blondel/same
 フォークというよりは、リュートとバグパイプやクルムホルンのような古楽器を使った古風な音のフォークソングというべきか。とにかく個性的だ。アイランドレーベルに移籍してからのEvensongやFantasia Lindum の方が聴きやすくて名盤なのだと思う。こっちのBellレーベルから出たファーストアルバムは音よりもジャケットのエグさに尽きる。ワン公と、はべってるオネーチャンのコントラストがなんともいえない。それに臭そうな(たぶん)ブーツにヒゲヅラオヤジと、完全にミスマッチなリュートを持つグラドウィン 正直言うとジャケット欲しさに買ったようなものだ。(笑 音はとにかく高いカッティングレベルで強烈な音がする。盤はEMIのプレスだ。紙ジャケCDが出ているようだけど どんな音なんだろう? 
 

In The Court Of Crimson King/King Crimson
 プログレが好き という人だったらこのアルバムを聴いたことがない人はいないだろう。でも英オリジナルのピンク盤を聴いたことがある人はその中の1割もいないと思う。発掘テープのCDが出るまではLPもCDもサエない音のものしかなくて、そういうもんだと思ってた人が大半だろう。(だから発掘CDが出たときは大騒ぎになったのだ)私が最初に聴いたのは日本盤だった。凄い音でびっくりした。大半の人はこれがベースになっていると思う。英ピンクアイランド盤は飛び抜けて音がいい と言われていたので、聴いてみると なるほど全然違う。なんでもテープそのものが違うようなことを言われていた。なので、ちゃんと宮殿を聴くのならピンクレーベル盤以外は考えられない状況だった。しかし、2005年だったか、ヴァージンの倉庫で幻のマスターテープが発見されて、それを使ったCDが出た。(なんか出来過ぎた話だ)これまでのCDとは全く鮮度が違う。B面のMoonchildなんかレコードだとプチプチうるさいから これはもうCDの方が圧倒的に静かだ。古くからのファンの中には新CDはピンク盤を凌駕したという人も現れた。確かにそうかもしれない。しかし、良いオーディオで同じ条件で聴けば、一概にそうとも言えないこともわかった。鮮度に限って言えば私はピンク盤を採る。ピンク盤は聴き手に極度の緊張を強いる。これはそういうレコードだ。
 
 


The Dark Side Of The Moon/Pink Floyd
 狂気といえば、紙ジャケ探検隊でやった2001年の試聴会を忘れることはできない。あの時はまだソリッドブルーレーベル(SBT)の存在が知られていなかった。その後どんどん高騰し、当時10ポンドで買えた盤が今や200ポンドアイテムだ。売れたアルバムだけあって、初版のSBTでも数はかなりあるようだ。なのになんでこんなに高いのよ(笑 人気の半分はやはりその音の良さだろう。SBTはマトリクス両面2のほかに2/3やフォノグラムのコントラクトプレス、マトリクス末尾のないPYEプレス?らしき盤も存在する。その中でも両面2のSBTは鮮度という点では最高だ。カッティングレベルも3以降と比べると幾分高い。とにかく張りがあって押しの強い音がする。確かにこれに慣れてしまうと、その後のプレスは物足りなく感じる。私が普段聴いているのは両面3のEMIリムのものだ。これはもちろんSBTではない。しかし、うちの再生環境では3の方がバランス良く鳴る。高域の艶とか鮮度は2の方が上だが、低域の充実感は3の方がいい感じだ。
SBTの1/10以下の値段で買える3/3は超お買い得だと思うのだが。(笑
 


The Wall/Pink Floyd
 このアルバムはフロイドの威信をかけた(笑 超ハイファイ録音だ。TASのリストにはこれの日本盤が載っている。オリジナルはもちろん英盤だが、カッティングは英も米もTMLだ。米盤はともかく、英盤はTMLでカッティングしてマスター、マザーを作ったものを英に持ち込んでスタンパーを作ったと思われる。英盤のマトリクスは2/2/1/2が一番若いようだ。米カッティングなら英でつけたマトリクスはあまり関係ないように思われるが、やはり若いマトリクスの盤は鮮度の高い音がするから不思議だ。ランオフをよく見るとTML-M とかTML-Sという刻印がある。-Mとか-SはTMLのカッティングマシンの記号らしい。若いマトリクス2のものは-Mで、3になると-Sになったりしている。つまり、TMLのカッティングが新しくなると英のマトリクスも進む ということのようだ。TASに載ってるSONYの日本盤は日本での独自カッティングで、英盤がウェットだとするとシャープで乾いた感じの音だ。 こういう音が良く鳴る装置というのもあるのだろうと思う。私は英盤独特の湿った感じが好きなので、どちらかと言われると英盤になってしまう。このジメーっとした感じがこの作品には似合ってると思うからだ。

 
Stereo Pop Special 98 Pop Spectacular/Genesis
 このBBCのトランスクリプション盤はピーター在籍時最後のツアーの終盤 ロンドンウェンブリースタジアムで行われた伝説のライヴだ。完全版でないのが残念だが、どうしても聴きたければ会場録音の海賊盤が出回っているのでそちらをどうそ(笑 一曲目のWatcher Of The SkiesはGenesis史上最高の名演だと思う。ブロードウェイ全曲を演奏したあと、アンコールで演奏された曲だが、このオーラはすごい。特にフィル・コリンズは鬼神が乗り移ったような超絶プレイでリスナーを圧倒する。フィルにしても生涯最高の演奏ではないだろうか。当時NHKのFMで何度か放送されたが、その度にエアチェックして、テープが擦り切れるまで聴いた。これをエアチェックした海賊盤は数えきれないほど出ている。そのどれもがかなり良い音質なので、それで何が不満なのか(笑 ばかだねぇ。・・(笑 しかし、これを初めて聴いた時は、本当にいつお迎えが来てもいいような、極上の鮮度で圧倒された。やはりブートとは一味もふた味も違う(笑
この放送は当時流行っていた4ch録音で、どういうわけか、同じ年の2月に米のシュラインで録音された別の放送音源も4chなのだ。当時の4chブームを反映していて面白い。BBCはSONYのSQ、シュラインのは山水のQSで収録されている。似たような名前だが、マトリクスの方式が全く異なる互換性のないものだ。どちらも専用のデコーダーを通すとライヴならではの臨場感溢れるサラウンドが再現できる。
 
 

 
Stereo Pop Special 99 Pop Spectacular/Renaissance
 よく見るとこのルネサンスのBBC盤は先のGenesisと番号続きだったりする。放送プログラムも続けて行われたようだ。ああ、なんていい時代。体験してみたいな 75年のロンドン・・ なんて思ってたら、以前本を出されていた堀家さんのblogに75年当時のロンドンの様子が連載されているので、これを読んでトリップしてください。やはり生き証人の実体験は説得力がありますね。さて、こちらも全盛期のルネサンスの最高の演奏が楽しめる。アニーは調子こいてんのか(笑 ってくらい存在感のある見事な歌いっぷりだ。録音状態も素晴らしい。この盤は英BBCからシンガポールの放送局に送られたもので、廃棄されたものが市場に出回ったもののようだ。その後何人かのオーナーの手を経て今は私の許にある。こいつはうちの4chデコーダーに吸い寄せられてきたような気がする。ちゃんと4chで鳴らしてあげたので、こいつも本望だろう(笑

 
Close To The Edge/Yes K50012 test pressing
 最初に英オリジナルのA1/B1を聴いたときは本当に驚いた。今まで聴いていた「危機」とは比べ物にならない鮮明な音だった。歪感も少なくて、素晴らしく見晴らしのいい音だった。しかし、先日杉本さんからお借りしてきたこのテストプレスには上には上があることを思い知らされた。マトリクスは通常盤と同じだ。なのにここまで違うとは・・・鮮度というよりも、音の荒れ方というか、しっとりと落ち着きのある、とても静かで滑らかな音だ。まるで無風の摩周湖の湖面に真っ青な空が映っているような とでも言うか、濁りのない澄んだ音なのだ。なので音量を上げても全くうるさく感じないし、ヴォーカルや楽器のディテイルがくっきりと浮かび上がる。この音を聴いてしまうと、通常盤の1/1はもはや聴く気がしなくなった。A面はもちろんのこと、さらに驚いたのはB面だ。And You And I の12弦の美しさには溜息しか出ない。Siberian Khatruに至ってはこの曲はガチャガチャうるさくて、あまり好きじゃなかったが、ここまでしっとり鳴ると静かな美しい曲に思えてしまう(笑 冗談みたいな話だが、これが率直な感想だ。仮にこのマスターテープが完全な状態で保管されていたとしても、この盤以上の音が出るとは思えない。それくらい圧倒的な音だ。

 

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最終更新日: 2009年 4月20日 12時20分