Pentangleを掘る
The Pentangle Transatlantic TRA162 1968

 英国史上最強の一枚。そして、音質の素晴らしさでは全世界で発売されたアナログレコードの5本の指に入る名録音盤でもある。内容は正に驚異的。アコースティックギターとジャズのリズムセクション、英国最高級の女性ヴォーカルの組み合わせはジャンルの限界を超えた名演奏となった。サードあたりからフツーのフォークグループになってしまうが、初期のペンタングルは正にジャンルを超えた超絶バンドなのだ。

 A面トップの Let No Man Steel Your Thyme この一曲でこのグループの凄さがわかる。B面最後まで聴き終えた頃には溜息しか出ない。こうも理想的に5人のコンビネーションが融合してしまったのは奇跡だ。わざとらしさが全くなく、英フォークとジャズが全く自然に最高のセッションをしているのだ。それに加え、ヴォーカルの存在感も凄い。声質、音程の正確さ、歌唱力どれも全く非の打ち所がない。完璧だ。これを聴かずに音楽もレコードは語れない。絶対に。
 


UK 1st issue label (w/o Shel Talmy)


UK cover front (2nd issue)

UK cover front(1st issue)

Back notes (UK 2nd issue)

Back notes (UK 1st issue)

 日本では初回に日本ビクター、東芝、日本コロムビアと3回にわたってリリースされた。初回盤はマニア垂涎の全面オビ仕様だ。

 英盤は初回のものはpurple/whiteレーベルでTransatlanticとしては2回目のデザインのものがこのアルバムでは使われている。

 初回のマトリクスはTRA162-A2/STRA162-B1 だ。CBS系のマトリクスでサードアルバムまでがCBS系でその後はEMIに移行する。

 初回のレーベルにはグループ名の下に
Shel Talmy Productionのクレジットがない。
TRA162-A2/STRA162-B1 でもShel Talmyのクレジットが付いているものもあるが、
マトリクスがTRA162-A2/STRA162-B2以降になると全てShel Talmyが付く。
purple/whiteレーベルではA3/B2まで確認されている。

 同じマトリクスでもShel Talmyなしレーベルの方が盤が若いプレスなのか音質が良い傾向にある。

 次のカラーレーベル以降になるとマトリクスが1Cから新たに切り直される。

 ジャケットはシングルスリーヴでラミネート仕様。(ラミネートがジャケ裏まであるものと、背中折り返しで止まっているものがある)

 問題はジャケ表下のメンバーの名前が一行おきに黒と色文字で書かれているが、多くは肌色(薄いブラウン)なのだが青文字のものが存在する。これはジャケットの紙質も異なり、よく見ると裏のクレジットの文字のフォントも微妙に違う。青のジャケットは文字が微妙に細い。フォントが違うとなると、当然版も別ということになる。やはり、そうなると青文字のが初回ジャケットということか?

 肌色のものはカラーレーベルに至るまで同じなので、この青文字ジャケットが初回のものではないかと思われる。

 音質も心なしかこれが一番良いように感じられる。鮮度が際立って高いのだ。

 CDは何度かリリースされたが、今回の紙ジャケット仕様は英CASTLEのリマスターと同じものだ。ボーナストラックは大変貴重で魅力的な内容だ。

 音質はCDだけ聴いている分にはこれで十分楽しめる。元の音質が優秀なのでCDでも作品の素晴らしさは十分伝わる。

 ファーストプレスのオリジナル盤は次元が違う音だ。生楽器系のものはCDの弱さを感じてしまう。CDがDVDのテレビ大の映像付きの音を聴いているようなイメージだとすると、アナログオリジナルは目前に等身大のグループが見えるようだ。生々しさでは雲泥の差がある。
 

 Sweet Child Transatlantic TRA178 1969

 セカンドアルバムにして2枚組。さらにライヴとスタジオ録音のカップリングという前代未聞の大作。ライヴの選曲は意図的にファーストの曲を減らしたものでオリジナル盤には一曲しか収録されていない。再発されたCDのボーナストラックにはこの時オミットされたファーストの曲が4曲も含まれていて、聴き応え十分だ。

 内容はライヴ、スタジオともに素晴らしい。ライヴでの演奏は何度聴いても興奮する。次の音を紡ぎ出す様が聴き手にも緊張感が伝わってくる。これこそライヴの醍醐味だ。各個人のパートもほどよくフューチャーされていて、改めて各人の技量にも唸ってしまう。よくフェアポートと比較されるが、同じフォーク畑で比較することなど全く無意味だ。フェアポートも好きだが、それは素朴さ、ひらめきの輝きといったもので、ペンタングルの凄さとは次元の異なることなのだ。技量、アプローチともに格が違うとしか言いようがない。
 


UK 1st issue label


inner cover (flip back)


 ジャケットはJethro Tull This Wasと同じ内側にフリップバックが付いたもので、表はラミネート。2枚組みだけあって、重厚感のあるデザインだ。レーベルはファーストと同じくwhite/purpleタイプのものでプレスによって紫の濃いものと、朱色に近いものがある。どちらが初回かは不明だ。工場とかロットの違いなのかもしれない。セカンドレーベルはカラー/白黒タイプになる。都合4〜5枚を見比べてみたが、レーベルやマトリクスが同じでも印刷のレイアウトが微妙に異なるものがあり、どれが初回か特定できていない。

 いすれにしても音質に大差はなく、white/purpleであれば、どれもオリジナルとして問題ないと思う。
マトリクスはTRA178A1/B2/A2-C/B2-D
 
 


    Papersleeve CD cover inner
        (non flip back)
 
 

 

Basket Of Light Transatlantic TRA205 1969
 BBCのテレビドラマの主題歌として使われたA1(シングルもカットされた)を初め、ポップな感覚に溢れたアルバム。ペンタングル史上最大のヒットアルバムらしい。そのせいか、2種類のジャケットとカッティングが存在し、どちらも一長一短というややこしいアイテムだ。相変わらず素晴らしく鮮明な録音で、生楽器の美しい音色を堪能できる。トラッドとポップチューンを織り交ぜた傑作だ。

UK 1st issue label(CBS matrix)


UK 2nd issue label(EMI matrix)


UK 1st issue

UK 2nd issue

inside G/F (AVPAK logo)


 このアルバムは初回レーベルで2種類のプレス、ジャケットが存在する。
盤のマトリクスがCBS系のものとEMIのものがある。Transatlanticの流れからCBSのものが初回と思われる。音質もCBSの方が加工臭が少なく、鮮度が高いものだ。一方EMIのものは鮮度は幾分後退するものの、中高域を多少強調したエッジの効いた音色で、装置によってはこちらの方が良く聞こえるかもしれない。どちらのプレスも歴代の日本盤と比べると圧倒的に鮮明な音質だ。マトリクスはCBSがSTRA205A1/B1
EMIはTRA205 A-1/B-1 となっている。

 コーティングなしのジャケットは扉が袋状になっていないペラ紙の見開きのものと、袋がなく、AVPAK製のピンクのビニール袋を見開きの中に張りつけてあるものが存在する。このAVPAKは最悪だ。袋の接着剤がレコードに侵入して盤のエッジがダメになってしまう。このジャケットだと9割方ダメだ。CollosseumのLiveもこのAVPAK製だが、盤が溶けていないものを探すのに10枚以上買い続けた。

 ただ、このAVPAKのジャケットにはCBSマトリクスの初回盤が入っていることが多く、厄介だ。これが初回なのかもしれないが、最初から手抜き(たぶんこちらの方がコストが安い?)ジャケットだったとは思えないので、何とも言えない。

 袋の見開きジャケットでCBSの初回盤もあるので、探すならこちらの方が安全かもしれない。
 
 


  silver(metal/w label) disk
 


  Papersleeve CD inner
   (よくできてる!)


 

Crule Sister Transatlantic TRA228 1970
 全曲トラッドで英フォークを代表する名作。ストーリー性のある歌詞が印象的なA1、ジャッキーが必殺の無伴奏で歌うA2、ジョンがリードヴォーカルを取るA3、タイトルチューンの名曲A4、B面全てを使ったJack O'rionどれもが傑作の条件を全て満たしている最高の名演揃いだ。ジャズ色を全く感じさせない作品だが、これはこれでPentangleの力量をまざまさと見せつける。

UK 1st issue label

 


 white/purpleレーベルが初回、ジャケットはコーティングのないBasket of Lightと同じ仕様の見開きジャケット。
とにかくキレイなジャケットが少ない。薄いクリーム色なのでヨゴレが付きやすい。
反面、盤は何故か綺麗なものが多い。

 ジャケットはBasketと同じく、表紙がペラ紙でレコードを入れる部分だけ袋状のもの。

 盤のマトリクスはEMIのもので、
TRA228 A1U/B1U
音質は歴代の日本盤と比べるとやはり鮮度が高い。日本盤の東芝のものは高域がかなり強調されていて、特異な音になっている。Led Zeppelin の聖なる館のようだ。


          inner G/F credit
 


Reflection Transatlantic TRA240 1971
 Transatlanticsでの4作目で最後の作品となった。メンバーの不和がそのまま内容に現れていると言われるが、それでもPentangleは凄い。コンテンポラリーフォークの傑作とも言える。そんな中でトラッドの2曲が逆に光っているのも見逃せない。
Johnがエレクトリックギターを多用し、アコースティックバンドのカラーが後退している。

UK 1st issue label side A


UK 1st issue label side B
 


 このアルバムからレーベルは表Red Rimカラーレーベルになる。ジャケットはまっとうなゲートフォールドで内側まで全面コーティング仕様。インナーバックにクレジットが印刷されている。ジャケットに予算を食われて、インナーはかなり節約した感じ。
マトリクスはTRA240A-1G/B-1G

 紙ジャケットにもインナーバッグが付いているが、中央上のロゴはオミットされている。残念!
 


      innner bag with credit


初回日本盤に付いていた楽譜(TAB譜)
 


Solomon's Seal Warner/Kinney K44197 1972
 スゴ腕(働かせ過ぎ)のマネージャーと縁を切って、心気一転レコード会社も新たにワーナーと契約しての第一弾。暗いと評判の内容だが、これも素晴らしいペンタングルの作品だ。

 このマスターテープは紛失したということで、永いこと再発されることはなかった。CDに至っては去年アビーロードのARTリマスターでやっと陽の目を見た。(どのテープを使ったのだろう?)内容は暗いと言われながらもPentangleならではのアンサンブルは健在。選曲も素晴らしい。
 


UK 1st issue label


lyric sheet(front)


 ジャケットは粗い紙質の灰色のもの。日本盤は同じような色で、米盤は白いエンボス。英盤には歌詞カードが付く。

 音質は英オリジナルが群を抜いて素晴らしい。これを聴いてしまうと日本盤、米盤では全く物足りない。レンジたっぷり、音色も艶やかでテープジェネレーションが2つくらい違う感じがする。George Peckhamのサインがあり、マトリクスはCBSに戻ってK44197A4/B4で これしかないようだ。

 紙ジャケットは紙の質感もよく出ていて、歌詞カードも完璧。うーん。すごい。
 
 
 
 
 
 
 


        lyric sheet (back)
 

おまけ


Pentangle Volume One Transatlantic TRA602 1980
 1980年に出たデジタルリマスターのベスト盤。ジャケットは絹目のテクスチャー。カッティングは最新のDMMだ。これはカッティングしたラッカーから直接スタンパを起こすことが可能で、音質が良いとされている。黒いレーベルもかっこいい。音は残念ながら気の抜けたほのぼのとしたもの。がっくり・・



日本ビクターがトランスアトランティックのシリーズ発売に
先駆けて出したプロモキット。箱に入って
大変気合の入った作りになっている。
ジャケットには本物のスコッチフェルトが入っている。
ペンタングル、ジョン、バートのソロから選曲されている。
このシリーズはほとんど楽譜が付き、大変人気があった。
 

更におまけ Bert and John の不幸


Bert And John Transatlantic TRA144 1966
 このアルバムがなかったらPentangleもなかったに違いない。二人の名ギタリストによる歴史的名演である。今なら超絶スーパーギターデュオといったところ。
録音も素晴らしい。叩きつけるピッキングで弦が飛んできそうな音だ。あああ快感・・ 元の録音が優秀なので日本盤も悪くなかったが、やはりオリジナルにはかなわない。しかし、まさかこんなことになるとは・・・

最初に初回盤と思ったもの
"AND"が緑色


今度こそ初回!・・
"AND"が茶色


モノレーベル盤
ANDは茶色だが背景も茶色だった・・


ジャケ裏の上部比較
上から3rd,2nd,MONO


お馴染みのpurple/whiteレーベル
(stereo)
 

ヒョウタンpurple/white
(mono)


 いやー参った。最初に聴いた日本盤(東芝)から数えて いったい何枚目だろう?

東芝
日本コロンビア
英カラーレーベル
日本VICTOR
英 purple/whiteレーベル

 これで終わりのはずだった。この間、日本盤歴代3種も制覇してしまった。

 ラミネートの紫/白レーベルを手に入れたときは ああこれで終わった。もう買わなくてすむ と安心していたが、これが不幸の入口だったとは・・

 最後(この時点では)に買った英オリジナルらしきものはジャケットがオリジナルではない という不幸の情報が。(というか、見てしまったのだ)なんとタイトルのANDの色が茶色なのだ!これが初回だというのだ。これには参った。買うしかないか。しばらくして入手した。聴いてみると心なしか音質が良い気がする。あー参った参った。上には上があったのね・・やっとこれで終わったか。

 しかし、幸せは永くは続かなかった。つい最近 一世代前のレーベルの盤をebayで発見してしまったのだ。この時の驚きはもう大変なもので、あまりのショックにしばらく鬱になったほどだった。この時期までこのレーベルがあるとは・・何かの間違い?セラーが盤を取り違えて写真を撮ったんじゃ とか妄想しているうちにリストから写真が削除されてしまった!

 あ、やはり間違いだったか?セラーが気がついて引っ込めたのだろうか?質問を出してみるが返事がない。おまけにこのセラーPaypalはだめ cashしか受け付けない。

うーーーーん ど う し よ う ・・・・

 悩んでいても仕方がない。落とそう。落として見るまでは鬱から逃れることはできそうにない。

 えーい・・ズドン 落ちた。ゲゲ、40ポンド! た、高い。普通なら20ポンドしないアルバムなのだが、ここまで張ったやつは最初の写真を見た猛者に違いない。
あーよかった。あとはカネを工面して送るだけだ。安眠と引き換えなら安いもんだ。

 結局cashが手に入らず、ドル、ポンド、ユーロを混ぜてなんとかこれで勘弁してくれ と頼んで無理矢理送った。

 と、ぶつぶつ言われたが、やっと今日届いた。恐る恐る開けてみると、やはりあのヒョウタンレーベルだ。やはり・・・

 無理して買ってよかった・・これで安心して眠れる。ん??まてよ ジャケットが違う!!明らかに色が違う。そうかこれが本当の初回盤なのか。もうこれだけやられると何が出ても受け入れてしまう。

 一応音聴いてみよう。その前にマトリクスを確認。これまで初回と思っていたものはSTRAから始まるCBS系のもの。white/purpleではこれしか見たことがない。しかし、今回のものはバートのファーストと同じTRAの大きな字で枝番号のない古いタイプのものだ。これはどう考えてもこちらが古い。音も違うはずだ。で、聴いてみた。

 ★☆!!凄い音なのだ。これまで超絶録音と思っていたCBSマトリクスの盤をはるかに凌ぐ強烈な音。カッティングレベルも3〜5dBくらい高い。どうやったらこんな音が出るのだ? 試しにCBSを聴いてみる。気の抜けたような大人しい音・・
けど、左右の分離いいなこれ・・??
え? 分離がいい???

 まてよ、もう一度ヒョウタンを聴いてみる。なんと、モノ! mono。ここで はたと気がついた。ヒョウタンレーベルは全部モノだ。考えてみればそうだ。何故気がつかなかったのだろう。まさかこのアルバムにモノがあるとは・・参った。
レーベルが問題じゃなかった。mono。これが答えだったのだ。(もうイヤ・・)

 改めてよく見るとANDが緑のジャケットの裏右下にはステレオのWARNINGが記載されていた。(茶色にはなし)

 Transatlanticでステレオとモノが並売されているのがあるとは今まで知らなかった。(どこにもMONOなんて書いてないのだ)こうなると他のステレオ盤もモノがある可能性が出てきた。これはヤバイ・・

 あとは The Pentangleのモノ これだけは出てきてほしくない。噂ではあるかもしれないという・・・これまで何枚かそれらしいのを見かけたがどれもただのステレオだった。monoがあったらきっとすごい音なんだろうな。けど、あったら困る!

2005年11月03日追記
John Renbourn Another Monday TRA149にもmonoが発見された。レーベルは通常の紫白だったが、ヒョウタンがあるかもしれない

 

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最終更新日: 2005年11月03日 20時30分