<闘いの現状−2006年1月>

多国籍企業トヨタと世界の労働者の厳しい闘いが続く
   フィリピン、日本、インド、フランスで!

フィリピントヨタ労組を支援する会

フィリピン政府、承認選挙(CE)を強行実施か!

 フィリピン政府は、フィリピントヨタの226名の組合員解雇、団体交渉拒否を世界の非難から救済するため、新たな団体交渉権獲得承認選挙(CE)に一歩踏み出した。
 フィリピン政府は、御用組合の選挙(CE)申請を昨年6月30日を承認していたが、通常であれば選挙承認の一ヶ月以内には確実に実施されている選挙(CE)は、フィリピン政府とトヨタの自信のなさのため、6ヶ月間放置されていた。しかし、今年1月17日とうとう選挙(CE)に向けた予備会議を開催した。今、トヨタとフィリピン政府は法律の装いをかなぐり捨てて強行突破しようとしている。

 むろんこの政府決定は法律違反である。フィリピン法では、団体交渉中であるか団体交渉が決裂して係争中である場合の承認選挙(CE)を認めていない。また、トヨタが選挙人名簿にまぎれ込ませている監督職には選挙資格はない。更に、トヨタが選挙人名簿から外している被解雇者は訴訟の結論が出るまでは会社従業員であり、選挙権がある。

 トヨタとトヨタから圧力を受けたフィリピン政府はこうした明らかな不法に目をつむり、強行しようとしている。彼等はフィリピントヨタ労組の団体交渉権を奪うために手段を選ばない。彼等は不法な手段で第二組合に団体交渉権を獲得させ、フィリピントヨタ労組の団体交渉権を認めた最高裁決定を踏みにじり、トヨタの4年間の団体交渉拒否を免罪し、233人の解雇と26人の刑事告訴を擁護しようとしている。
 フィリピントヨタ労組は、予備会議でトヨタと政府の不法に抵抗しつつ、選挙態勢に入っている。

 

国境を越えた多国籍企業トヨタの不当労働行為は裁かれるのか!

 全造船関東地協は日本トヨタの不当労働行為の救済を神奈川県労委に申し立てている。
そして、神奈川県労委は、2月上旬までには多国籍企業トヨタの世界的な責任を問うため審問に入るか、それともトヨタに媚びて本件申し立てを却下するかの入口の議論についての結論を下す。

神奈川県労委は審問に移る前提条件として、@フィリピンで起きている事件に日本法を適用する特段の理由があるのか、Aトヨタにフィリピン労働者に対する使用者性があるのか、という2点について全造船関東地協に釈明を求めた。

 私たちは、1月13日、@フィリピンでは多国籍企業トヨタに法律が適用されず、最高裁決定すら執行されないという特別の条件があること、A私たちはフィリピン国内だけの独立した事件の救済を申し立てているのではなく、日本の法人であるトヨタの国境を越えた不当労働行為の救済を求めていること、Bトヨタは34%の株券しか持っていないが、フィリピントヨタの会社定款やトヨタの多国籍企業戦略などを見れば、フィリピントヨタを完全に支配していることは明らかであること、を示した。
(*詳しくは「神奈川県労委への回答書」参照のこと)

 今、神奈川県労委は、フィリピン現地では裁けない、多国籍企業トヨタの国境を跨いだ不当労働行為を、多国籍企業の母国日本で裁くのか、それとも免罪するのかという岐路に立っている。私たちは多国籍企業トヨタの海外における犯罪を決してゆるさないし、世界の労働者もそれを決して許さないだろう。


インド・トヨタ、ストライキに対しロックアウト!

 インドの労働者も多国籍企業トヨタの不当労働行為に対する反撃を開始した。フィリピンの闘いは遂にインドに飛び火した。デカン高原の南部中央に位置する都市、バンガロール近郊のトヨタ・キルロスカル社で、1月6日、3人の労働者への解雇に抗議して2350人の労働者のうち1550人がストライキに入った。それに対抗して会社側は、8日、工場をロックアウトし、その後11日、管理職と800人の非組合員で操業を部分的に再開している。16日から州政府の仲介で労使交渉が再開されているはずであるが、新聞報道では、会社側は妥協しないと主張している。

 このストライキは間違いなくトヨタの組合を嫌悪した不当労働行為が発端である。トヨタはフィリピンの争議に懲りず、彼らのやり方をインドでも貫くつもりのようだ。トヨタがこの姿勢を貫く限り、間違いなく、トヨタに対する闘いは世界に広がる。


「トヨタウェイ」の核心=企業中心主義と普通の組合の排除

 日本のトヨタでは1962年の労使共同宣言以降「団体交渉」が行われたことがない。
交渉は労使協議会で行われている。そしてトヨタでは、実質的に下級職制が組合役員を強制的に担わされ、この二重の過重労働の中で在職死すら起きている(詳細は『賃金と社会保障』05・05上旬号猿田論文参照のこと)。そして労働者が会社の許可のない組合を作ろうとすると、トヨタは、世界の何処ででも必ず「私たちはトヨタの家族なのだから、チームメンバーなのだから、組合は必要ない。チームで話せばいい。」というのである。

 組合ができると、トヨタは「トヨタウェイ組合」にするため全力をあげる。しかし、それが不可能だと見なされた組合にはあらゆる不当労働行為を駆使した組合潰しの嵐がやってくる。こうした「企業中心主義=普通の組合の排除」が「トヨタ生産方式」「トヨタウェイ」の核心にある。

 トヨタ労組は今年賃上げを要求する。しかし1月13日、トヨタ労組は「グループ間の格差の是正を優先し、産別の統一要求はしない」ことを決めた。要するにトヨタ労組は、「産別の統一要求をすれば現状の格差は縮まらない」ことを口実に、企業中心主義丸出しでトヨタにおもねった要求を行うといっているのであり、他の労組の闘いを困難にしている。

 また、トヨタ労組は「グループ各社で期間従業員やパート労働者が3割を超えていることから」「組合員化を含め、対策の検討に乗り出すことを確認する。」(朝日新聞06.01.14)としている。彼らは永遠に「検討を確認」し続けるに違いない。

 何故ならば、期間労働者の組織化は、トヨタにとってもトヨタ労組にとっても、景気変動に伴う人員調整という極めて重要な機能を失うことを意味するからである。つまり、トヨタ労組はその企業、工場で働く労働者全体のための組織ではない。トヨタで約3分の一を占める非正規労働者の要求を捨て、3分の2程度の正規労働者の特権的地位を守るための組織である。そして一部労働者の特権的地位を擁護する組合は、最終的にはその一部労働者たちの利益すら守ることはできないし、守らない組合である。


非正規労働者と共に、発展途上国労働者と共に!

 連合は19日「パートの時間給について1%または10円以上の引き上げを求める方針を決めた。」、この要求を「連合傘下の産別組合に加盟する各企業の労組がそれぞれの会社側に求める。」(朝日新聞06.01.20)ことを決めた。

 これはこれまでの連合と比較すれば大きな一歩前進である。しかしこの要求は、少なくとも紙面から見る限り、トヨタ労組の13日決定に添うかたちで、非正規労働者の要求はパート労働者に限定され、トヨタなど自動車産業で多いフルタイムの期間労働者の要求が完全に抜けている。つまり、企業内に事実上の継続雇用労働者として組み込まれたパートだけが対象になり、雇用調整弁である期間限定労働者の要求が入っていない。

 第二の問題は、企業内の従業員の利益すら守ろうとしないのだから、連合のこの要求には請負や派遣労働者のような形式的に他の会社が雇用者になっている労働者、また構内・構外の下請企業で働く様々の雇用形態の労働者は全く視野に入っていない。つまり、ここには最も労働条件、生活条件が改善されねばならない労働者の要求がない。
 この要求では、労働者は企業の枠に閉じ込められ、特権労働者の枠に閉じ込められることになる。私達はこうした枠を打ち破らなければならない。

 今、私たちが直面していることは、日本においても請負労働者を含めれば50%前後にまで増加した非正規労働者、今急速に増大している発展途上国労働者の労働条件、生活条件を改善することなしに、自分たちの労働条件、生活条件を改善するどころか、維持すらできないということである。

 多国籍企業はグローバルに展開し、私たちに世界中の労働者と競争することを強制する。
それに対し、私たち世界の労働者が発展途上国の労働者の不安定で不法で劣悪な労働・生活条件を改善する力を持っていないために、日本など資本主義的先進国の労働者が彼らの闘いに十分助力してこなかったために、この発展途上国の劣悪な労働・生活条件が資本主義的先進諸国にも持ち込まれている。

 日本にも、すでに社会保健にも年金にも入れず、残業代が未払いで年休を行使出来ない労働者、さらには、年休を支給すらされず最低賃金も守られない、年3千、4千時間もの労働を強制される労働者を生みだし、労働者の底辺ですでに構造化されている。日本にもこのような不法がますます拡大しつつある。

 1990年代からの経験は、私たちが世界に目を向け、世界の労働者と国境を越えて団結しないならば、私達の労働・生活条件は益々劣悪なものになること、日本だけが、格差が少なく福祉が行き届いた社会であり続ける事はできないことを示している。


 世界中で不当労働行為を行う、多国籍企業トヨタへ抗議を!
 トヨタを救済・擁護する、フィリピン政府へ抗議を!
 フィリピントヨタ労組に支援を!


フランスCGTのNHKへの抗議文 (2006-01-16)