トヨタの挑戦状に世界の労働者とともに闘いの準備を!
                            2006年4月1日
                               フィリピントヨタ労組を支援する会
                               全造船機械労働組合関東地方協議会

IMF トヨタ労組マニラ会議とトヨタの挑戦状

 3月16日フィリピンマニラで国際金属労連(IMF)本部とその傘下の南アフリカ、イギリス、オーストラリア、タイのトヨタの労働組合と日本からのIMF・JC、自動車総連、フィリピンから全造船機械労働組合関東地方協議会所属のフィリピントヨタ労組(TMPCWA)が参加してフィリピントヨタ問題についての会議が行われた。このトヨタ労組会議は次の点を決定した。
(1) 被解雇者の原職復帰を最重要課題とすること
(2) IMF傘下の世界のトヨタ工場で経営に対し圧力を強めること
(3) フィリピントヨタが原職復帰を拒否する場合は世界的なキャンペーンを実施する

 17日にはフィリピントヨタに対するIMF(本部とIMF・JC)、フィリピントヨタ労組との交渉が行われ、フィリピントヨタは被解雇者の原職復帰について3月中に回答することを約束したが、3月28日の回答は原職復帰拒否だった。トヨタは世界の労働者に挑戦状を突きつけた。

トヨタの最後通牒的な提案

 IMFは昨年8月以来のフィリピントヨタとフィリピントヨタ労組の交渉を仲介してきた。ところが、フィリピントヨタは今年2月3日、4日にフィリピントヨタ労組に対し最後通牒的な提案を行い、フィリピントヨタ労組はこれを拒否した。このフィリピントヨタの強硬な態度は2月16日の第2回承認投票(CE)で御用組合(TMPCLO)が勝利するという確信に裏付けられていた。しかし、フィリピントヨタとフィリピン政府の手によって不法に強行されたフィリピントヨタ団体交渉権獲得の第2回承認投票(CE)で、労働雇用省(DOLE)はまだ投票結果についての公式見解を発表していないが、御用組合は被解雇者と監督職の未開票分を含む有効投票数の過半数にならなかった。この事態を受けて、IMFのイニシアチブでマニラ労組会議とフィリピントヨタとの交渉が行われた。

フィリピントヨタの最初で最終的提案とは次の内容のものだった。
(1) 被解雇者は会社側の『解雇』が正当であったと認め、
  イ)退職金に若干加算された金額を受け取り、
  ロ)試験を通過した者はトヨタの自動車機械工の研修を受けることができる。
(2) 研修を終了してトヨタ認定機械工として認められた者はフィリピントヨタの海外を含めた
  就職斡旋を受けることができる。 

TMPCWAの反撃とTMPCLOの御用組合宣言

それに対してフィリピントヨタ労組は、この御用組合と会社側が推し進める承認投票(CE)がフィリピン法に反したものであり、延期されるべきであると高等裁判所へ訴えていた。そしてこの無効な承認投票(CE)でも御用組合が勝利できなかった事をふまえて、フィリピントヨタ労組は「現在もフィリピントヨタ労組が唯一の団体交渉権を持つ労働組合であり、会社はフィリピントヨタ労組と団体交渉を行うべきである」という署名活動を行い、3月17日時点で現役労働者336名、解雇者87名の署名を得ている。つまりフィリピントヨタ労組は工場で承認投票結果よりも約100人多い署名を得ており、実際はフィリピントヨタ労組が職場でも多数派である。

 実はトヨタ労組マニラ会議の前後IMFは御用組合(TMPCLO)に働きかけを行っている。
そこでIMFとフィリピントヨタ労組は、(1)被解雇者の原職復帰を最優先課題とし、その後に、(2)TMPCWAとTMPCLOのブリッジでの労働協約交渉、もしくは、(1)TMPCWAとTMPCLOのブリッジで被解雇者の原職復帰を最優先課題とし、その後に、(2)ブリッジでの労働協約交渉、という提案を行った。

 それに対してTMPCLOは、(1)TMPCLO単独での団体交渉権の獲得、(2)TMPCLOの会社との労働協約交渉、(3)被解雇者の原職復帰要求の順で優先すべきだと主張したが、この時点では最終回答を保留した。しかしTMPCLOは、フィリピントヨタのIMFへの原職復帰拒否回答と同じ時期に、TMPCWAとのブリッジを正式に拒否するとともに被解雇者の原職復帰要求をも正式に拒否した。TMPCLOは自分たちが原職復帰要求を拒否したことで自ら御用組合だと宣言したのだということに全く無自覚である。それは彼らが会社によって作られた資本の下僕であるからである。

そしてこの会社と御用組合の『原職復帰拒否』と時期を同じくして、フィリピントヨタと御用組合は承認投票(CE)での未開票監督職票の開票を要求し始めている。2000年の投票では労働雇用省(DOLE)は投票当事者フィリピントヨタ労組との合意で監督者票を未開票のまま有効投票から除いたが、今回フィリピン政府労働雇用省(DOLE)はすでにフィリピントヨタに肩入れして不法な承認投票(CE)を実施しており、このトヨタの新たな不当な要求をフィリピントヨタ労組の反対にもかかわらず一方的に受け入れる可能性が皆無ではない。私達はフィリピン政府を厳しく監視していくことが必要である。

多国籍企業のグローバル化とIMFの『国際枠組協約』

 1980年代以後とりわけ1990年代に多国籍企業のグローバル化によって多国籍企業の世界市場における競争が激烈に行われるようになった。多国籍企業が世界に展開する海外子会社、とりわけ発展途上国の海外子会社は国際的な基準では容認されない様々な不法行為、組合潰しなどを行ってきた。実際は、多国籍企業本国がこれらの不法行為、組合つぶしを指示し承認を与え、それを受け入れるよう直接間接発展途上国政府に圧力をかけながら、多国籍企業本国はその責任を全て海外子会社に押しつけ責任を回避してきた。また、多国籍企業本国でも例えば日本国内では1990年代の国内・ASEANバブル崩壊の中でグローバルな企業競争に対応するためにとして民間企業の分社化、リストラ、アウトソーシング、公共企業・公務業務の民営化、労働市場を含めた規制緩和が実施され、日本にも若年労働者の失業率の上昇、非正規労働者化、正規労働者の年功序列から職能給・成果型賃金への転換が進められ、残業未払いから実質的な奴隷労働まで不法状態が蔓延する事態が生み出されている。

 こうした多国籍企業の動向に危機感を持った国際金属労連(IMF)は1997年経済のグローバル化の中で勤労者の基本的権利を確保するために、ILOの「三者宣言」などに基づいて多国籍企業との国際的な企業行動規範を結んでいくことを決定し、2005年までに多国籍企業40社(直接的適用労働者数348万人)と『国際枠組協約』を結んでいっている。だが、この協約を結んでいるのは基本的にヨーロッパ企業だけであり、アメリカ企業も含まれているが協約を結んでいるのはアメリカのヨーロッパ企業である。つまりアメリカとアジアの多国籍企業との協約は空白になっている。IMF・JCは2000年から2003年にこの問題をめぐって経営と協議したことがあるが、「協約になじまない」「経営が責任を持って中核的な労働基準を守っていけば良い」と一蹴され、この問題を事実上棚上げにしてしまっている。アジアでは韓国民主労総のIMF傘下労組が現在もこの課題に取り組んでいる。

国際金属労連(IMF)
国際産別組織(GUF)の一つで、世界100ヶ国、200組織、2500万人の金属労働者を組織する。日本金属労協(IMF-JC)は1964年にIMFに参加しており、自動車総連、基幹労連、電機連合、JAM、全電線の5産別200万人が参加している。

世界の政労使の焦点になった、フィリピントヨタ団交拒否、233名解雇

 それに対しトヨタは日本を代表し、新自由主義の本拠アメリカ販売市場を最大のドル箱にする、製造業世界一の多国籍企業である。この世界中に資本を展開するトヨタには様々な傾向の労働組合があるが、IMFにはヨーロッパ型の組合とIMF・JCのような日本型労使協調の組合とが同居しており、アメリカではウオールマートと同じく組合を作らせていない。つまりトヨタはアメリカでは新自由主義者の路線に従っており、日本と東南アジアでは日本型の労使協調路線を追求している。そしてヨーロッパでもIMFの『国際枠組協約』を拒否してきた。

 そこに2000年フィリピントヨタ問題が起き、2003年ILOの場でフィリピントヨタ問題が世界中の政労使の目の前にさらされることになった。
 これに対するIMFの態度は明確である。IMFはフィリピントヨタ労組を擁護するILO勧告を支持している。IMFはこのアジアを代表する多国籍企業トヨタに「中核的な国際的な労働規範」を守らせ、アジアにおける『国際枠組協定』締結の突破口にすべく、今フィリピントヨタ労組とともに闘おうとしている。

それに対してトヨタはIMFとの全面的な対決路線を決定した。彼らは恥ずかしげもなく自分達はILOの見解にしたがっていると主張している。彼らは問題が何処から発生したかということを隠蔽している。問題はフィリピントヨタ労組が2000年3月の承認投票(CE)で勝利したにもかかわらず、フィリピントヨタが団体交渉を拒否したことである。トヨタのやり方は多国籍企業の途上国での組合つぶしの典型的パターンである。
 それは、(1)多国籍企業が労働組合または団体交渉権を認めない、(2)それに抗議して労働組合が抗議行動を行う、(3)この抗議行動を理由に会社と政府が労働組合を弾圧する、というものである。
フィリピントヨタのやり方は絵に描いたようにこのパターンにしたがっている。裁かれねばならないのは労働組合を嫌って団体交渉を拒否したトヨタである。それへの抗議へ233名の解雇と26人の刑事告訴で答えたトヨタである。労働組合破壊に狂奔している多国籍企業トヨタである。


世界の労働者とともに

フィリピントヨタ労組と私達は今回の承認投票(CE)は無効であり、フィリピントヨタ労組が唯一の団体交渉権をもつ組合であると考えている。しかし私達の闘いは、今回のフィリピントヨタとフィリピントヨタ政府の承認投票(CE)の強行によって、会社と政府が『フィリピントヨタ労組の団体交渉権はなくなった』と主張する論拠を得たという点で、これまで以上に困難な状況におかれることになった。しかし同時に、フィリピントヨタ労組は6年の闘いの中で被解雇者にも現役労働者にも強固な中核を作り上げ、闘いを発展させてきたのである。そして彼らと私達はフィリピントヨタ争議をフィリピンばかりでなく、フィリピン−日本の枠組を超えた多国籍企業の世界における責任を問う政労使の一大焦点に押し出したのである。

グローバルな多国籍企業トヨタはトヨタが今後とも世界で反労働組合活動を続ける事を宣言した。私達に挑戦状をたたきつけた。

私達はIMF・JCがトヨタ労組マニラ会議の決定にしたがって日本でもトヨタに実際に圧力をかけ、多国籍企業トヨタの不正で不法な行為を告発し改めさせるこのキャンペーンを実際に組織することを求める。そして私達はIMF・JCの態度がどうであれ多国籍企業トヨタの本拠地日本で世界の労働者に恥ずかしくない闘いを準備する。

全ての闘う仲間に絶大な協力を要請したい!