2013年2月28日
トヨタ自動車株式会社
代表取締役社長 豊田 章男 殿

                  フィリピントヨタ労組(TMPCWA)     委員長    エド・クベロ
                  フィリピントヨタ労組を支援する会      共同代表  山際 正道
                  フィリピントヨタ労組を支援する愛知の会 共同代表  田中 九思雄

フィリピントヨタにおける労働争議の解決に向けての抗議ならびに申入れ

 不当に解雇された組合員達が、貴殿のフィリピンでのトヨタ子会社によって行われた不当解雇に対して、今やすでに12年目に達した闘いを続けていることに貴殿の注意を促すために、我々はこの書状を送ります。この争議は、社会的公平性と真の正義を追求し、現地レベルおよび国際レベル、もちろん日本を含めた全世界の支援者たちによって闘いは続いています。

 この争議のために、貴殿の子会社であるフィリピントヨタ社が組合の主導者および組合員に対して起こしたでっち上げ刑事事件を未解決のままに裁判を永遠に続け、そしてあわよくば勝訴しようとするために、なりふり構わない不正な企みを用いていることは極めて明確なことです。数年前、争議に関して最高裁判所より、貴殿の子会社にとって有利な判決が下されたにも拘わらず、この刑事裁判はパラニャッケ市のメトロポリタン・トライアル・コート(首都圏事実審裁判所)第78支部において、今尚10年以上も引き延ばされて来ています。

 これらの刑事裁判では、いくつかの極めて信じがたいことが起こっています。我々は、貴殿に披露する真実の話に是非とも、耳を傾けるようにお願いします。我々は、この事実が世界の主要企業としての貴社のよい企業統治のために役立つであろうと信じています。

 昨年の2012年8月1日に、これらの刑事事件のうちの1件について公判が行われ、そこで裁判所はTMPCWAの全被告組合員に保釈保証書を更新せよ、従わない場合は逮捕すると命じました。裁判所のラムゼイ・ドミンゴ・G・ピチャイ裁判長は明らかにトヨタの弁護士にそそのかされて、この更新命令を発令しました。トヨタの弁護士が裁判長を誘導して全被告に金銭的嫌がらせをしようと図ったのです。

 しかし、我々は既に2006年3月6日付の、同じ裁判所(別の裁判官による)によって発令された、「保釈保証書は事件が終結するまで有効である」と述べた、以前の裁判所命令があることを知っていたために、トヨタ弁護士と裁判長のこれらの行為は、我々にとって非常に不可解なものでした。2006年の命令の内容は、被告である解雇されたTMPCWAの組合員達に保証書の更新と保証料を支払う必要はないことを意味するものにほかならないからです。

 更に重要なことは、上記の2006年の裁判所命令は2004年7月20日付でフィリピン最高裁判所の裁判官全員によって決定された、フィリピン最高裁判所の規則に基づいて出されたものでありしかもその最高裁規則は現在も有効に存在しているのです。

 TMPCWAからこのような指摘追及をうけた裁判所は、自己の不利を認めざるをえなくなったためか、2012年10月10日の公判において、保釈保証書更新命令を正式に撤回することなくうやむやにしたまま次回公判期日を2013年2月11日に指定すると共に告訴人への証人尋問を行うことを決定しました。

 ところが2月11日の公判期日が来て被告組合員が仕事を休んで出廷すると、こんどは当の告訴人が見当たらないということで、公判期日がまたも3ヶ月以上も先の5月20日に延期再指定されたのです。いうまでもなく告訴人とはトヨタによって仕立てられた人物であり、事前になんら届出をすることもなく当日の公判が開廷されるその時になってトヨタ側弁護士から「見当たらないので」と言ってくる不出廷とは、一体全体どういうことなのでしょうか。我々はまたまた大きな疑念を抱かざるをえません。

 これらすべての事実は、本件刑事裁判がきわめて長期間にわたって違法不当かつ疑惑に満ちたやり方で進められていることを意味します。公式な法廷で、白昼公然と世界の主要企業であるトヨタともあろうものが、大胆にもこのような不正なことをするとは、誰にとっても極めて信じがたいことです。もし貴殿が上で述べたことが真実ではないと思われるのでしたら、貴殿自身でフィリピンのトヨタ弁護士に相談または、質問してみて下さい。それこそが貴殿の「ゲンチゲンブツ」(何事も現場を見て判断する)の信念に適うことになるでしょう。

 他方でフィリピントヨタ社は、「財政的援助」と称する、計算根拠も明らかにしないわずかばかりのカネを解雇者組合員に対して個別に、「すべての請求権を放棄する」旨の書類に署名するのと引換えに渡してTMPCWA潰しを進めています。トヨタは、そのカネを受取った当該組合員署名の権利放棄書をそのコピーさえ本人に渡さずに取り上げ、あげく「もっと他の組合員にこのカネを受取らせるようにしたら更に追加のカネをやる」とそそのかしているのです。

 刑事裁判を一審だけで10年以上にもわたって引っ張るなどということは、それ自体人権侵害であると言わざるをえません。告訴人さえ無断で出廷しない刑事裁判は一刻も早く取下げるべきです。それと同時に誠実かつ真剣に労働争議の解決を図るべきであり、そのためには組合員を個別に落とすなどいう陰険で姑息なやり方を止め、組合の団結権を認めて組合とまともな交渉を持つべきです。こうしたことは既にILOから何度も勧告されていることです。貴殿がゲンチゲンブツ(何事も現場を見て判断する)の信念を語っている一方で、我々に対応している本社の幹部諸氏は相も変わらず「現地のことは現地で」と嘯いて一向に真剣な態度を示しません。これはダブルスタンダード、二枚舌の欺瞞ではないのでしょうか。

 我々はトヨタ子会社を含めた貴社の傲慢な非人道的態度を強く非難すると同時に広く世界の世論に訴えて、何としてでも勝利します。
 
 貴殿がこれ以上時間を無駄にせず、フィリピントヨタにおける労働争議を心から誠意を持って解決するよう再考されることを強く要求します。

                                                            以上