<リコール問題>

                                                2010年3月12日

                                    フィリピントヨタ労組を支援する会

 今回のリコール問題についてロサンゼルスタイムスが全トヨタ労働組合と若月委員長に
取材を行い、2006年10月時点で既に全トヨタ労働組合がトヨタ自動車に「リコール
問題についての要請書」を提出していることを報道しました。
 その報道がきっかけとなり、米国国会下院「監視・政府改革委員会」タウンズ委員長が
北米トヨタ稲葉社長宛てに再び書簡を送りました。以下報告します。

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(1)タウンズ委員長の北米トヨタ稲葉社長宛て書簡

アメリカ合衆国国会下院第111国会

2010年3月8日

北米トヨタ自動車株式会社
社長兼最高経営責任者
稲葉 殿

拝啓

 今日のロスアンゼルス・タイムズの記事は、2006年の秋に、ベテランのトヨタ従業員た
ちがトヨタの上級経営陣に覚書を送り、トヨタ車の安全性にかんしてこれらの従業員が抱
いていた懸念を警告していたことを報じています。同紙が報じているところによれば、こ
の覚書は、トヨタはコストを引き下げ生産を増強するために危険な安全上の手抜きをして
いると信じると、当該従業員たち述べたとされています。当該従業員たちは、「安全な車
を生産するのに不可欠な手順」が「結局は無視されている」のではないかと懸念している
と述べたとされています。最後に、当該従業員たちは、「不作為は会社の生き残りに関わ
る大問題になる」可能性があると、トヨタに警告したとされています。

 遺憾ながら、同紙によれば、トヨタは当該従業員たちのメモを完全に無視し、まったく
回答しなかったと、彼らは述べたとされています。

 当該トヨタ従業員たちの安全にかんするメモは、今や驚くほど予知能力があったように
見受けられます。もしもトヨタの上級幹部たちが彼ら自身の従業員たちが提起した重要な
安全性にかんする懸念を無視したのであれば、それはトヨタの会社としての優先事項が何
であるのか、またその安全を尊重するという公約とは何なのかという疑問を呼ぶことにな
ります。

 監視・政府改革委員会は、アメリカ合衆国下院内の、「あらゆる事柄」に対して管轄権
を有する主幹委員会です。下院規則集の第]および第]T規則に基づき、本委員会は最近
の何百万台ものトヨタ車の、意図しない急加速に起因するリコールを取り巻く状況証拠の
調査を続行していきます。この調査の一環として、本委員会は、トヨタが自社の車の安全
性にかんする重要な警告を無視したのかどうかについて、調査していきます。

 本委員会のこの調査に資するため、ロサンゼルス・タイムズの記事に言及されている覚
書のコピーを、2010年3月10日水曜日の正午までに本委員会事務局に提出して下さい。提
出と検討を用意にするよう、同覚書を電子書式にてご提出頂ければ幸いです。

この要請について何かご質問がある場合は、本委員会の電話番号202−225-5051のジョン
・アーリントンまたはケビン・バーストウまでご連絡下さい。

敬具

(署 名)
委員長 
エドルファス・タウンズ

写: 監視・政府改革委員会少数派代表理事ダレル・アイサ議員

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(2)タウンズ委員長書簡にかんする下院委員会のプレス・リリース
http://oversight.house.gov/index.php?option=com_content&view=article&id=4828:reports-of-safety-complaints-memo-sparks-chairman-towns-toyota-inquiry&catid=3:press-releases&Itemid=49

2010年3月8日

安全性問題を指摘したメモにかんする報道は、タウンズ委員長のトヨタ調査に火をつけた
(Report of Safety Complaints Memo Sparks Chairman Towns' Toyota Inquiry)

トヨタ車の安全性にかんする従業員たちの懸念を列挙したとされるメモを検討したいと
(Wants to review alleged memo that catalogues employees' concern regarding
safety of Toyota vehicles)

ワシントン発 − エドルファス・「エド」・タウンズ委員長(ニューヨーク選出民主
党)は、2006年の秋に、ベテランのトヨタ従業員たちが作成しトヨタの上級経営陣に
覚書を送ったとされている、トヨタ車の安全性にかんしてこれらの従業員が抱いていた懸
念を警告したメモを検討したいと言っています。北米トヨタ稲葉社長宛ての書簡で、
タウンズ委員長は、トヨタはコストを引き下げ生産を増強するために危険な安全上の手抜
きをしているとトヨタの従業員たち述べたとされているメモを提出するよう、トヨタに要
請しています。この安全性にかんするメモは、今日、ロサンゼルス・タイムズで報道され
たものです。

 記事によれば、従業員たちは、「安全な車を生産するのに不可欠な手順」が「結局は無
視されている」のではないかと懸念していると述べたとされています。最後に、当該従業
員たちは、「不作為は会社の生き残りに関わる大問題になる」可能性があると、トヨタに
警告したとされています。タイムズの記事は、トヨタは当該従業員たちのメモを完全に無
視しまったく回答しなかったと、彼らは述べたと記しています。

 「もしもトヨタの上級幹部たちが彼ら自身の従業員たちが提起した重要な安全性にかん
する懸念を無視したのであれば、それはトヨタの会社としての優先事項が何であるのか、
またその安全を尊重するという公約とは何なのかという疑問を呼ぶことになります」と、
タウンズ委員長は書簡で述べています。

 下院監視・政府改革委員会は、最近の何百万台ものトヨタ車の、意図しない急加速に起
因するリコールを取り巻く状況証拠を調査をしていきます。この調査の一環として、委員
会は、トヨタが自社の車の安全性にかんする、例えば報道された安全性にかんするメモな
どの、重要な警告を無視したのかどうかについて、調査していきます。

 タウンズ委員長は、2010年1月に、トヨタ車の意図しない急加速問題にかんする委
員会の調査を開始しました。2010年2月24日、委員会は、トヨタのリコールに対す
る連邦政府の対応を検証し、そしてまた、トヨタ車の急加速問題の性質と、なにをそれに
かんして何がなされるべきかについてのより良い理解を得るために、「トヨタのアクセル
ペダル:公衆は危険にさらされているか?」と題する公聴会を開催しました。ごく最近、
タウンズ委員長は、トヨタが、訴訟における証拠開示命令に応えて提出するよう法的に要
求された記録を留保したと、元トヨタの上級弁護士が指摘したのに開示しなかったのでは
ないかと、トヨタを批判しました。タウンズ委員長は、2010年3月12日金曜日ま
で、この主張への回答時間を与えています。

 タウンズ委員長は、2010年3月10日水曜日までに、問題のメモを提出するよう稲
葉氏に要請しました。

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全トヨタ労働組合「リコール問題についての要請書」
http://www.katch.ne.jp/~atunion/recall.pdf

2006年10月3日

トヨタ自動車株式会社
代表取締役社長 渡辺捷昭 殿

全トヨタ労働組合
執行委員長 若月忠夫

リコール問題についての要請書

 2006年7月11日付新聞報道によると、トヨタ自動車がRV車の欠陥を認識しなが
ら約8年間リコールを届け出なかったため、5人負傷の交通事故が発生したことで、熊本
県警は業務上過失傷害容疑で社員の3人を書類送検しました。リコール問題に関してマス
コミは言うに及ばずトヨタ車愛用者も大きな関心を持っています。会社は責任者を追及す
るという警察の姿勢に対応することで問題を解消するのではなく将来を見据えて自主的な
問題解決に取り組まれることを強く望みます。

 トヨタ自動車では’00年から’05年までの5年間で届け出たリコール台数は500
万台を超え約45倍に増加していることが報道されています。05年には自動車メーカー
全体の約36%を占め他社に比べ増加傾向が際立っています。‘06年度に入っても7月
18日までの国土交通省届出は109万1863台となっています。

 なぜ急増しているのか、問題点の抽出を徹底的に行い、原因を見極め問題解決に当たら
ないと企業の存亡にかかわる重大な問題になる恐れがあります。

全トヨタ労働組合から見た問題点は、
(1)プラットホームの統廃合 (2)部品の共通化 (3)設計のデジタル化と外注化 (4)新車開発期
間の短縮による試作品の実験データ不足 (5)熟練技術者・技能者数の不足 (6)仕事量の増加
と長時間労働 (7)原価低減の目標管理の厳格化など設計から製造まで安価な部品製造が利
潤追求の第一でなかったのか検証してみる必要があります。

 国交省の資料によれば不具合発生要因は「設計7割、製造3割」で設計の占める割合が
大きくなっています。(トヨタ自動車の‘00〜’05年間で見ると「設計5割、製造5
割」となっている)

 競争の名のもとに、安全な車づくりに欠かせない過程が結果的に軽んじられて見切り発
車されているのではないかと危惧しています。

 技術者の現状は、恒常的な長時間労働・高負荷と成果主義人事制度になやまされ、しか
も慢性的人手不足のなかでストレスを強く感じながら、目前の仕事をこなすのが精一杯の
状態で豊かな発想が難しくなっている。

 そうした中で、技術者不足を補うために社外者活用が’01年は4000 人(24.9%)
だったのが、’04年は10000 人(43.9%)を超える状況になっています。このことは必
然的に、技術レベルを低下させ品質低下となって現れているのではないのか。

 製造現場においては、生産要員数の39.4%(12.168 人)「’04 年」が非正社員で
占められ、まさに製造工程は「素人」が担っているといっても過言ではありません。教育
・訓練を欠いた労働者の採用は安価な車造りになるかもしれませんが安全性を著しく犠牲
にするものです。

 そこには、従来プライドを持って高い品質を造り込んでいた「熟練工」といった優秀な
技能が不要とされ職場から排除されています。

 素人でも出来る仕事や生産工程となると、単純、簡素化された作業工程と化し、単なる
オペレーター業務となり、一つの部品が車のどの部分に使用され、どうゆう役割を果たし
ているのかも分からず、黙々と奴隷のように働かされているだけである。

 これまで述べてきた事態はリコールの直接的な原因であると共に結果でありこれらを生
み出したベースに2000年から3年間経営方針として取り組んだ「CCC21」(総原
価30%削減)の活動にあると考えています。消費者に安全な車を届けるということを名
実共に経営の基本にすえる必要があります。リコールからなにを学ぶか、このことが経営
者だけではなく全従業員に課せられている大きな課題であると思います。

そこで、全トヨタ労働組合は貴社に対して社会的責任を果たされるよう下記について説明
を求めます。この件については秋闘の団体交渉の議題にしますのでご承知おきください。

          記

1、熊本県警による社員逮捕に関する情報の正確な報告を求めます。
2、8月3日に国土交通省に「業務の改善報告書」を提出されましたがその内容の公開を
求めます。
3、安全性を最優先して開発期間の見直しと重要部門の充実を図ることを求めます。
4、設計から製造にいたるまで「安全な車造りを保証する」よう原価低減方法の見直しを
求めます。
5、技術部門、製造部門で非正社員の登用を増やし技術・技能の習熟を高めることを求め
ます。
6、関連企業と協調して総労働時間短縮(年間1800 時間)のプログラムを早急に作成
し、従業員が心身ともにリフレッシュできて誇りを持って仕事に打ち込める環境づくり
を求めます。
7、トヨタ関連企業における不祥事が相次いでおります。リコール問題解決とCSRの徹
底のために貴社が社会的責任を果たされることを求めます。

以上