2007年6月25日

〒100-8919
東京都千代田区霞ヶ関2-2-1
外務省経済局
OECD経済協力開発機構
室長 堤 尚広 殿

CC:OECD-TUAC

連絡先:237-0063 横須賀市追浜東町3-63-901 
  Tel/Fax 046-866-4930(担当:小嶋 武志)
全造船機械労働組合関東地方協議会
宇佐見 雄三
フィリピントヨタ労組を支援する会
共同代表 山際 正道

フィリピントヨタでの労働争議解決への対策促進に関する申入れ書(抗議文)

今回、私たちは貴職・ナショナルコンタクトポイント(以下NCP)の怠慢と不誠実な対応に厳重に抗議せざるを得ないことを告げなければなりません。
 今年4月2日に行った貴職との5度目の会談では、事前にTMPCWAのエド・クベロ委員長が質問状を提出し、NCPは3月30日付でTMPCWAに文書で回答しましたが、この文書の中でNCPは次ぎのように述べていました。

 NCPは、引き続き根気強く双方から意見を聴取していきますし、事情が許すならば問題の解決のために仲介の役割を提供して行く用意があります。

 ところが、会談の中でNCPは昨年の面談での「もう初期評価という段階ではないでしょう」という前言を翻して、驚くことに「現状はまだ初期調査段階で更なる検討段階に入るかどうかは決定していない」と私たちに語りました。それは、『OECD多国籍企業ガイドライン』違反提起の手続き上NCPが私達の訴を公式に取り上げるかどうかかを、未だに決めていないということを意味していたからでした。私達はそれに対して、単なるリップサーヴィスでなくて、初期調査段階から次のステップに「いつ決めるのか」と回答を迫りましたが、NCPは今後検討していくと私たちに答え、以降その後の結果は未だに私たちのところには届いて来ておりません。

 さて、本年5月末から6月初旬に掛けてエド・クベロTMPCWA委員長、早川寛全造船機械労組関東地協事務局長とフランスのTMPCWA支援者等合計3名がILO総会でのロビー活動の中で、他国の参加団体代表より日本NCPが既にこの問題に関して一定の結論を出していることを知らされました。

 すなわち、OECDに対する労働組合の窓口であり、OECDとその各種委員会に対するコンサルタント的な地位を持つ国際労働組合組織であるTUAC(OECD労働組合諮問委員会)が、自らのホームページ(http://www.tuac.org/)の中で、2007年4月までの各国のNCPに提起された事件(THE OECD GUIDELINES FOR MULTINATIONAL ENTERPRISES TUAC INTERNAL ANALYSSIS OF TREATMENT OF CASES RAISED WITH NATIONAL CONTACT POINTS FEBRUARY 2001 - APRIL 2007)
の処理についてTUACの内部分析(II  CASES ONGOING AS OF APRIL 2007)を公表していることを教えてくれました。そして、トヨタに関する内部分析(27ページのToyota Motor Corporation: March 2004)の最後にTUACが次ぎのように書いていることが判明しました。

・2006年7月に、TUAC事務局はフィリピン政府(労働雇用省)から、フィリピントヨタ社は上記の事実に対して異議を唱えている旨の書簡を受領した。

 ・NCPはフィリピン裁判所にかかっている事件が終結するまでは、いかなる処置も講じないと表明している。


私たちはこれを読んで、NCPがフィリピンの裁判所がフィリピントヨタの事件を最終決定する以前には決して私たちからの訴えを公式には取り上げないと表明していると理解しました。つまり私たちの訴えを店ざらしにすると言っているのです。

 ここでNCPが言っているフィリピンでの裁判とは団体交渉権と233名の解雇事件をさすものと思われます。団体交渉権の裁判は2001年にフィリピントヨタから高等裁判所に本訴と仮差止めがあり、同年高裁は仮差止めを認める判決を出し、2003年9月最高裁が仮差止め無効の判決を下しました。その間、高裁での本訴は開かれませんでした。しかし、トヨタはまだ本訴の裁判が確定していないことを理由に団体交渉を拒否し続けました。ところが、この本訴は最高裁での仮差止め無効判決の後も未だに止まったままです。つまりこの裁判が何時終結するかいつ開始されるのかの目途すら立っていないのです。同様に233名の解雇事件は2003年6月の高裁の解雇有効判決に対し組合側が最高裁に上訴していますがこれも何時結論が出るかの目途が立っていない状態です。TUACのホームページの記述通りであるとするならば、日本のNCPは今後10年或いは20年かかっても結論が出ないかもしれない判決を待ち続け何もしないと言うことに成りかねません。

 つまり、日本NCPはOECD(TUAC)に対しては「フィリピンの裁判所にかかっている事件の終結」を待つという報告をしておきながら、一方では私たちには「双方から意見を聴取」「解決のために仲介の役割を提供して行く」と言って、NCPの作業があたかも更なる検討段階に入っているかのごとき二枚舌を使っているわけです。

 最高裁が「TMPCWAの団体交渉権仮差止め無効」判決を下したため、フィリピントヨタ社は団交を拒否できない状態になったにもかかわらず、フィリピントヨタ社は無理やり高裁本訴の結論がでていないという理由をつけてTMPCWAとの団体交渉を拒否し続け ながら、じつはその間に会社の息のかかった新組合を組織し、労働雇用省に承認投票を実施させ、この組合を唯一交渉団体と認知してこれと労働協約を締結してしまっているではありませんか。日本NCPは、そのように経営側の既成事実づくりを許しておきながら、何時になるか分からないフィリピン裁判の終結までは私達の『OECDガイドライン』違反の申立てを永遠に初期調査段階に留め置き、公式には受理しないことにしようとしています。このようにトヨタと日本NCPの態度は基本的に同じであり、事実上トヨタを擁護しています。NCPはその上に私達にこの態度を隠してきたのであり、より悪辣であります。

 このような日本NCPの態度は『OECD多国籍企業ガイドライン』の精神に違反し、多くの日本の多国籍企業の違法行為に苦しめられている人々を欺瞞するものです。ここに私たちは貴職に対して、満腔の怒りを込めて厳重に抗議の意思を表明するものであります。即刻、私たちに次のステップ開始の時期を知らせるべきです。

 最後に上記ホームページのTUAC Submission to the Annual Meeting of National Contact Points Analyses of NCPs  June 2007 の中でのThe Japanese NCP についての批判的記述(5ページ参照)を貴職は先刻承知と思われますが、敢えて以下の通り記しておきます。

『NCPは並行訴訟手続が終結するまではいかなる措置を講じることも拒否している。TUACの見解としては、日本の雇用者の組織に迷惑を掛けるという危惧が、NCPを機能停止状態にさせている原因になっていると見受けられる。』

以上