フィリピントヨタの御用組合とフィリピン政府の御用組合勝利宣言!  

                                            2006年5月15日

                                       フィリピントヨタ労組を支援する会

TMPCLOの御用組合宣言

 トヨタはこの争議が始まって以来、フィリピン現地の地域右翼的労働組合、フィリピントヨタの監督職御用組合と一緒にあらゆる便宜供与を行って一般職御用組合を育成してきた。この御用組合の実態を紹介するため文書を二つ紹介したい。

 IMFはこの御用組合に対して3月26日行われたトヨタ労組マニラ会議の前にフィリピントヨタ労組と御用組合(TMPCLO)に働きかけを行っている。そこでIMFとフィリピントヨタ労組(TMPCWA)は、(1)被解雇者の原職復帰を最優先課題とし、その後に、(2)フィリピントヨタ労組と御用組合のブリッジでの労働協約交渉を行うか、(1)フィリピントヨタ労組と御用組合のブリッジで被解雇者の原職復帰を最優先課題とし、その後に、(2)ブリッジでの労働協約交渉を行う、という提案を行った。

 それに対して御用組合は、(1)御用組合単独での団体交渉権の獲得、(2)御用組合の会社との労働協約交渉、(3)被解雇者の原職復帰要求の順で優先すべきだと主張したが、この時点では最終回答を保留した。
 しかし御用組合は、フィリピントヨタのIMFへの原職復帰拒否回答と時を同じくして、(1)フィリピントヨタ労組とのブリッジを正式に拒否し、(2)被解雇者の原職復帰要求をも正式に拒否した。
それが第一の文書である。

 御用組合は最高裁判所が原職復帰を認めたならば原職復帰を要求するといっているが、これは経営陣の見解を引き写したもので、会社への現在の被解雇者の原職復帰要求を否定するものに外ならない。
彼等の実態は第二の文書「ビラ」でより明快に分かる。
 彼らはそこで「労働者の原職復帰。もし原職復帰が不可能ならば、関係する労働者に対し適当な補償が払われるべきである。」という2003年ILO勧告を引用し、「経営陣が適当な補償を申し出ているというのに、IMFとTMPCWAはなぜ依然として原職復帰を主張するのか?」と、フィリピントヨタ経営陣を擁護し、被解雇者を貶めている。

 233人解雇の直接の理由とされたのは労働雇用省の公聴会会場前の集会に参加するため会社を欠勤したことであったが、ILO勧告は、(1)それはフィリピントヨタが団交交渉を拒否することによって引き起こされたものであること、(2)この公聴会の集会に組合員が参加するに当たって事前に申し出が行われていることをあげ、(3)233人の解雇のような処分は行われた行為に対して不釣合いなものであるとした上で、(4)上記の引用文「労働者の原職復帰。もし原職復帰が不可能ならば、関係する労働者に対し適当な補償が払われるべきである。」のように述べたのである。

 この御用組合のビラはフィリピントヨタの労働組合敵視、労働組合潰しに全くふれないで、フィリピントヨタ労組と被解雇者を貶めている。トヨタがフィリピンで育成している御用組合がどれほどひどいかを知るため、ぜひともこのビラを読むことを勧めたい。彼等には、彼等が原職復帰の要求を拒否したことで、自分が労働者の利益を投げ捨てて自身で御用組合だと宣言したのだということを決して理解出来ない。それは彼らが会社によって作られた資本の下僕であるからである。


フィリピン政府が承認投票(CE)での御用組合の勝利を宣言

 労働雇用省DOLEは4月5日フィリピントヨタ、御用組合、フィリピントヨタ労組に対する異例の調査を行った。その目的は、フィリピントヨタと御用組の要求を受けて未開票監督職票の開票のためのお膳立てをすることにあった。そのため、労働雇用省DOLEはフィリピントヨタ労組の意見を無視し、彼等の開票反対の意思を書類に記載しない方針を貫こうとした。労働雇用省とフィリピントヨタ労組の激しい攻防の中で、労働雇用省DOLEは最終的にフィリピントヨタ労組の開票反対の意思を記載せざるをえなかった。そのため、労働雇用省はこの未開票分を開票することが不可能になった。

 ところがその2日後の4月7日(4月11日付命令・ホームページ掲載)、労働雇用省DOLEは明確な根拠、最終有効投票数を示すことなく、御用組合の勝利と御用組合の一般従業員組合としての唯一の団体交渉権獲得を宣言した。

 しかし、この命令は御用組合が勝利したと明確に書かれているが、その理由、根拠についての明確な記述がない。4月5日の調査で、労働雇用省DOLEは未開票監督職票の開票が不可能になった。それでDOLEは無理矢理未開票監督職票を有効投票数から排除して、御用組合の投票数を有効投票数の過半数にしたらしいことがほのめかされているだけである。むろん御用組合の勝利の根拠が明示されていない理由がある。会社側も御用組合も監督職を選挙人名簿に載せるように積極的に主張し、投票結果を見て未開票監督職票の開票を要求したのである。そして、フィリピントヨタ労組はこの時点で開票に反対したが、この票の排除を要求してはいない。つまり、労働雇用省DOLEは当事者の意思を無視して誰も要求していない未開票監督職票121票の有効投票数からの削除を行ったのである。彼等は当事者の意思を否定していることを明らかにしたくなかったため、投票の内どれが有効投票であるかも、有効投票数がどれだけになったかも記載しないまま、御用組合の勝利を宣言した。このようにフィリピン政府はフィリピンの承認投票(CE)手続きを全く無視して無理矢理御用組合を一般職従業員の唯一の団体交渉権組合にしたのである。

 かくて、フィリピントヨタとフィリピン政府は、最高裁判決も無視し、2000年3月以来6年間も団体交渉を拒否したまま、新たな団体交渉権を持つ労働組合を選ぶ承認投票(CE)を労使が裁判係争中であるにもかかわらず強行し、この不法で不公正な投票の有効投票数を示すこともなく御用組合の勝利を宣言すると言う、二重三重の法違反の上に、これまでフィリピントヨタ労組から団体交渉権を剥奪し、御用組合に団体交渉権を与えた。 フィリピントヨタが育成してきた御用組合が団体交渉権を獲得したという点では、多国籍企業トヨタは今フィリピンで大きな勝利を収めた。

しかし、このような国際労働規範はむろんフィリピン現地法を無視したやり方は後で大きな付けとなって跳ね返ってくることを、フィリピントヨタは覚悟しておくべきである。