アニメ作家の35歳


アニメ作家は、実務経験、社会経験を積み、体力気力の充実した35歳頃、幅を取って30代後半に、名刺代わりになるような代表作をモノにすると言う。

そこで、生年の判明しているアニメ監督が、30代後半にどんな作品を作っていたか一覧にしてみた。
監督作品に限定したので、ビッグネームでも除外した人もいる。安彦良和の代表作を『クラッシャージョウ』('83年、安彦36歳)とするには抵抗があろう。

作品によっては、「構想○年制作○年」などという場合もあり、完成から公開まで時間がかかった場合もあるはずだが、とりあえず公開年で統一した。したがって、正確に何歳の時制作していたかは個別に検証が必要である。また世代分けは便宜的なもので厳密ではない。

作品のチョイスも含めて、概ね納得のいくラインナップになったのではないかと思うが、いかがだろう。

人名 作品名 公開年 年齢
昭和ヒトケタ 1932 長浜忠夫 『巨人の星』 1968 36
1934 おおすみ正秋 『ルパン三世』 1971 37
1935 高畑勲 『太陽の王子 ホルスの大冒険』 1968 33
戦中派 1936 笹川ひろし 『新造人間キャシャーン』 1973 37
1938 石黒昇 『宇宙戦艦ヤマト』 1974 36
1938 勝間田具治 『ゲッターロボ』 1974 36
1940 杉井ギサブロー 『ジャックと豆の木』 1974 34
1941 宮崎駿 『ルパン三世 カリオストロの城』 1979 38
1941 富野由悠季 『機動戦士ガンダム』 1979 38
1941 芝山努 『新・ど根性ガエル』 1981 40
1941 鳥海永行 『科学忍者隊ガッチャマン』 1972 31
1941 りんたろう 『銀河鉄道999』 1979 38
1943 神田武幸 『太陽の牙ダグラム』 1981 38
1943 高橋良輔 『太陽の牙ダグラム』 1981 38
1943 出崎統 劇場版『エースをねらえ!』 1979 36
団塊世代 1947 吉川惣司 『ルパン三世 ルパンVS複製人間』 1978 31
しらけ世代 1950 秋山勝仁 『ガルフォース』 1986 36
1950 川尻善昭 『妖獣都市』 1987 37
1951 押井守 『機動警察パトレイバー the Movie』 1989 38
1952 真下耕一 『未来警察ウラシマン』 1983 31
1953 髙山文彦 『機動戦士ガンダム0080 ポケットの中の戦争』 1989 36
1954 大友克洋 『AKIRA』 1988 34
1955 アミノテツロー 『疾風!アイアンリーガー』 1993 38
1955 なかむらたかし 『ロボットカーニバル』 1987 32
1955 中村隆太郎 『グスコーブドリの伝記』 1994 39
1955 西村純二 『らんま1/2 熱闘編』 1989 34
1956 大地丙太郎 『こどものおもちゃ』 1996 40
1956 平野俊貴 『魔法騎士レイアース』 1994 38
1956 谷田部勝義 『伝説の勇者ダ・ガーン』 1992 36
新人類世代 1957 今西隆志 『機動戦士ガンダム0083 STARDUST MEMORY』 1991 34
1957 渡部高志 『スレイヤーズ』 1995 38
1958 桜井弘明 『十兵衛ちゃん -ラブリー眼帯の秘密-』 1999 41
1958 望月智充 『きまぐれオレンジ☆ロード あの日にかえりたい』 1988 30
1958 出渕裕 『ラーゼフォン』 2002 44
1959 片山一良 『エルフを狩るモノたち』 1996 37
1959 原恵一 『クレヨンしんちゃん 暗黒タマタマ大追跡』 1997 38
1959 長岡康史 『星界の紋章』 1999 40
1959 本郷みつる 『クレヨンしんちゃん アクション仮面VSハイグレ魔王』 1993 34
1959 森本晃司  『MEMORIES EPISODE1 彼女の思いで』 1995 36
1959 浜崎博嗣 『TEXHNOLYZE』 2003 44
1960 庵野秀明 『新世紀エヴァンゲリオン』 1995 35
1960 梅津泰臣 『A KITE』 1998 38
1960 片渕須直 『アリーテ姫』 2000 40
1960 河森正治 『イーハトーブ幻想 KENJIの春』 1996 36
1960 佐藤順一 『美少女戦士セーラームーン』 1992 32
1960 西島克彦 『AIKa』 1997 37
1960 古橋一浩 『るろうに剣心 -明治剣客浪漫譚-』 1996 36
1961 飯田馬之介 『機動戦士ガンダム 第08MS小隊』 1996 35
1961 今川泰宏 『ジャイアントロボ THE ANIMATION 地球が静止する日』 1992 31
1961 岡村天斎 『MEMORIES EPISODE2 最臭兵器』 1995 34
1961 新房昭之 『The Soul Taker ~魂狩~』 2001 40
1961 高松信司 『機動新世紀ガンダムX』 1996 35
1962 赤根和樹 『天空のエスカフローネ』 1996 34
1962 神戸守 『Cosmic Baton Girl コメットさん☆』 2001 39
1963 北久保弘之 『BLOOD THE LAST VAMPIRE』 2000 37
1963 今 敏 『千年女優』 2002 39
1963 前田真宏 『青の6号』 1998 35
1964 幾原邦彦 『少女革命ウテナ』 1997 33
1964 小林治 『BECK』 2004 40
1964 佐藤竜雄 『学園戦記ムリョウ』 2001 37
1964 村瀬修功 『Witch Hunter ROBIN』 2002 38
1964 森田宏幸 『猫の恩返し』 2002 38
1964 ワタナベシンイチ 『エクセル・サーガ』 1999 35
1965 五十嵐卓哉 『桜蘭高校ホスト部』 2006 41
1965 大森貴弘 『恋風』 2004 39
1965 小林常夫 『美鳥の日々』 2004 39
1965 樋口真嗣 『ローレライ』 2005 40
1965 舛成孝二 『R.O.D - READ OR DIE-』 2001 36
1965 水島努 『ジャングルはいつもハレのちグゥ』 2001 36
1965 渡辺信一郎 『カウボーイビバップ』 1998 33
1965 湯浅政明  『マインド・ゲーム』 2004 39
1965 さとうけいいち 『鴉 -KARAS-』 2005 40
バブル期
就職世代
1966 石原立也 『AIR』 2005 39
1966 磯光雄 『電脳コイル』 2007 41
1966 大張正己 『銀装騎攻オーディアン』 2004 38
1966 沖浦啓之 『人狼』 2000 34
1966 神山健治 『攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX』 2002 36
1966 谷口悟朗 『プラネテス』 2003 37
1966 鶴巻和哉 『フリクリ』 2000 34
1966 錦織博 『あずまんが大王』 2002 36
1966 水島精二 『鋼の錬金術師』 2003 37
1966 増井壮一 『スクラップド・プリンセス』 2003 37
1966 渡辺歩 『ドラえもん のび太の恐竜2006』 2006 40
1966 宇田鋼之介 『ONE PIECE』 1999 33
1966 山本裕介 『N・H・Kにようこそ!』 2006 40
1967 浅香守生 『GUNSLINGER GIRL』 2003 36
1967 細田守 『時をかける少女』 2006 39
1967 安藤真裕 『ストレンヂア 無皇刃譚』 2007 40
1968 小池健 『アニマトリックス』「ワールド・レコード」 2003 35
1968 後藤圭二 『うた∽かた』 2004 36
1968 松尾衡 『ローゼンメイデン』 2004 36
1970 カサヰケンイチ 『ハチミツとクローバー』 2005 35
1970 京田知己 『交響詩篇エウレカセブン』 2005 35
1970 中村健治 『怪 ~ayakashi~』「化猫」 2006 36
1970 長濱博史 『蟲師』 2005 35
1970 尾石達也 『化物語』 2009 39
団塊ジュニア 1971 今石洋之 『天元突破グレンラガン』 2007 36
1971 入江泰浩 『鋼の錬金術師 FULLMETAL ALCHEMIST』 2009 38
1972 武本康弘  『涼宮ハルヒの憂鬱(2009年版)』 2009 37
1973 新海誠 『秒速5センチメートル』 2007 34
1973 あおきえい 『喰霊-零-』 2008 35
1974 山本寛 『かんなぎ』 2008 34
ポスト
団塊ジュニア
1976 長井龍雪 『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』 2011 35
1976 大沼心 『私がモテないのはどう考えてもお前らが悪い!』 2013 37
1976 荒木哲郎 『進撃の巨人』 2013 37
1976 細田直人 『はたらく魔王さま!』 2013 37
1976 中村亮介 『ねらわれた学園』 2012 36
1977 塩谷直義 『PSYCHO-PASS サイコパス』 2012 35
1977 山本沙代 『LUPIN the Third -峰不二子という女-』 2012 35
1978 藤田陽一 『銀魂』(第3期) 2012 34
1978 森田修平 『SHORT PEACE』「九十九」 2013 35
1978 伊藤智彦 『ソードアート・オンライン』 2012 34
1979 石立太一 『境界の彼方』 2013 34
1979 平尾隆之 『魔女っこ姉妹のヨヨとネネ』 2013 34
1979 京極尚彦 『ラブライブ!』 2013 34
1980 イシグロキョウヘイ 『四月は君の嘘』 2014 34
1980 出合小都美 『銀の匙 Silver Spoon』(第2期) 2014 34
1980 黒柳トシマサ 『少年ハリウッド』 2014 34
1980 吉浦康裕 『サカサマのパテマ』 2013 33
1981 いしづかあつこ 『ハナヤマタ』 2014 33
1984 山田尚子 『映画 聲の形』 2016 32
1985 松本理恵 『血界戦線』 2015 30


長浜忠夫、石黒昇、宮崎駿、富野由悠季、りんたろう、川尻善昭、庵野秀明などはまさに順当。
押井守は『天使のたまご』('84年、33歳)と迷ったが、一般性という点で『パトレイバー』にした。
代表作が多すぎて困るのが出崎統と佐藤順一。まあまあ異論のないところを選んでいると思うが。

中には20代で監督に抜擢され、30代後半は演出や脚本に専念して監督作が乏しいパターンも散見される。「全国を放浪していた」という杉井ギサブローは極端な例にしても、真下耕一、望月智充はこのパターン。片渕須直もそうかも。

浜崎博嗣、大地丙太郎、五十嵐卓哉などは遅咲き。意外なことに新房昭之も監督作は40代以降が中心で、現在の仕事量が嘘のようである。

今川泰宏、幾原邦彦、渡辺信一郎などは早熟の天才+寡作なタイプ。
改めて驚愕したのが、大友克洋がアニメ版『AKIRA』を発表したのが34歳の時、という事実。『童夢』やら『さよならにっぽん』やらのマンガ史に残る傑作を20代でモノしてたってことか!

河森正治には、あえて『イーハトーブ幻想 KENJIの春』を選んでみた。浅香守生は、世間的には『カードキャプターさくら』の人だろうが私の中では『GUNSLINGER GIRL』の監督である。細田守は『時かけ』以前にすでに定評があったが、満を持してメジャーデビュー。

松尾衡、カサヰケンイチ、京田知己、中村健治、長濱博史、尾石達也、今石洋之などはどんぴしゃり、という感じである。
個人的には、松尾は『紅』か『RED GARDEN』にしたかったが、代表作と言われたらこっちであろう。
長井龍雪も本当は『とらドラ!』にしたかったのだが、30代後半の縛りで『あの花』に。

とりわけ注目してほしいのが、この長井を筆頭とする70年代後半生まれの監督たち。近年、彼らが続々と代表作を発表している。

アニメ界の未来は明るい。

アクセス解析
レンタル掲示板