赤星たみこ、「わたしは趣味のエコロジスト」 室田武×赤星たみこ
メディアファクトリー 1993年10月25日発行 1,000円
むろた たけし 一橋大学経済学部教授(数理経済学)。1943年生まれ。1967年京都大学理学部卒業。大阪大学大学院経済学研究科修士課程修了。ミネソタ大学大学院Ph.D.。
あかぼし たみこ 漫画家。1957年生まれ。1979年デビュー。
タイトルからわかるように出来るところから気軽にエコロジカルなことをやっていくことを提案している。室田武氏は現代の過剰消費社会を批判して江戸時代にまで戻る必要はなく1950年代のようなくらしをすればいいと言う。1950年代半ばのエネルギー消費水準は現在の5分の1かもっと少ないくらいだった。
「森を枯らす酸性雨の正体は、窒素酸化物である。その70パーセントが車から排出される。そして、大気を汚染する二酸化炭素のうちの20パーセントが、やはり車の排気ガスが原因である。 車は走っているだけでも、反エコロジー的な物体なのだ」と今様の生活をしている人には厳しいことも書かれている。
2003年7月23日
ボーダーライン──青少年の心の病い 町沢静夫
丸善ライブラリー 1997年4月20日発行 720円
まちざわ しずお 1945年生まれ。東京大学文学部心理学科卒業、横浜市立大学医学部卒業。精神科医、医学博士。
ボーダーライン(境界性人格障害)とは衝動性、自殺の素振り、激しい感情の変動、強い怒り、愛情飢餓の強さを主な特徴とする症候群、人格傾向であり、精神医学、心理臨床の対象である。境界例ともいう。著者のデータによれば80パーセント以上のボーダーラインに自殺未遂があり、死に至る自殺は鬱病より率が高い。表面的には明るいように見えることがあるがその下には白けた虚無感がある。他人や自分に対する評価の高さ・低さが急転しやすいという特徴がある。衝動性が高いので能力の割に学業や仕事ができず、仕事を転々として社会的地位が上がらず、自分に対して投げやりになり、自分のイメージがはっきりしないということになる。
関連サイト 境界例と自己愛の障害からの回復
2003年7月13日
日本の山を殺すな!──破壊されゆく山岳環境 石川徹也
宝島社新書 1999年12月24日発行 660円
日本の林野行政に対する疑問が述べられている。
山小屋のトイレの処理、山岳自動車道の存在による山のオーバーユース、立山が1日の入山者数を制限すべき状態にあること、北アルプス南部島々谷砂防ダムによる渓流環境の激変、年間200万人におよぶ上高地への過剰な観光客を背景とした生態系破壊の護岸工事など豊富な実例から問題を浮かび上がらせる。
2003年7月13日
小説・倫理学講義 笹澤豊
講談社現代新書 1997年11月20日発行 660円
ささざわ ゆたか 1950年生まれ。東京大学文学部卒業。文学博士(筑波大学)。
明啓大学の長嶋教授失踪から物語は始まる。小説の中の会話が倫理学問答になっている。民主主義の仕組みから環境問題、不倫の是非まで話題は幅広い。
2003年7月11日
終わりよければすべてよし 森嶋通夫
朝日新聞社 2001年2月5日発行 1,800円
2ちゃんねるで森嶋氏は『マルクスの経済学』を書いたためにノーベル経済学賞受賞を逃したというのを見たことがある。それが真実であるかどうかは当然わからない。この本では森嶋氏がイギリスで教鞭を執り始めてからのことが述べられている。文化勲章受賞時の昭和天皇との短い会話が書かれている。
2003年7月1日
智にはたらけば角が立つ 森嶋通夫
朝日新聞社 1999年3月25日発行 1,800円
森嶋氏が日本の大学で学生・教官として過ごした期間のことが述べられている。「和を尊ぶ」日本的慣行と著者が衝突したエピソードが大幅なページを割いて書かれている。宗教色の無い人前式で行われた結婚時の話もある。
2003年7月1日
血にコクリコの花咲けば 森嶋通夫
朝日新聞社 1997年4月25日発行 1,800円
もりしま みちお 1923年生まれ。2004年没。1946年京都大学経済学部卒。京大助教授(1951年辞任)、大阪大学教授(1969年辞任)、University of Essex の Keynes Visiting Professor, London School of Economics and Political Science の Sir John Hicks Professor of Economics を歴任。大阪大学、ロンドン大学の名誉教授。
著者の海軍体験を述べながら日本政府が国民全員が同一の主義主張の元に行動することを強いていたこと(明治期に形成された国体観念が、個人の主義主張・行動原則の不可侵を明示していなかったことが昭和時代の軍部の暴走を招いたとしている)、そしてさらにはその傾向が戦後の日本社会にも見られることを指摘している。
2003年7月1日
「弱者」とはだれか 小浜逸郎
PHP新書 1999年8月4日発行 657円
こはま いつお 1947年生まれ。横浜国立大学工学部卒業。批評家。
マスコミ、日常会話で特定のカテゴリー弱者(老人、子ども、女性…)が聖化されていること、そのことに疑義をとなえることのタブーへの違和感には小浜氏の見解に私も共感する。たとえば「足を踏んだ者には、踏まれた者の痛みはわからない」という言い方がその場での感情的な表現としてはともかく一般的真理であるかのように主張されることへの反発を私も感じる。私はある言動が差別であるかどうかの判断が「差別された」と主張する人の言葉のみにゆだねられるのではなく、客観的な基準があるはずだと考える。
小浜氏と私がおそらく見解が異なる点は私が不器用な人間、ビジネス能力の無い人間はやはり弱者であり、何らかの法律・行政的保護が必要であると考えていることであろう。
2003年6月29日
紛争の心理学[融合の炎のワーク] A.ミンデル
講談社現代新書 永沢哲 監修 青木聡 訳 2001年9月20日発行 "Sitting in the Fire"(1995年)の抄訳 700円
著者 アーノルド・ミンデル Arnold Mindell 1940年生まれ。マサチューセッツ工科大学大学院修士課程修了(理論物理学)。ユニオン大学院ph.D(臨床心理学)プロセス指向心理学の創始者。
監修 ながさわ てつ 1957年生まれ。東京大学法学部卒。著書に『野生のブッダ』など。
翻訳 あおき あきら 1968年生まれ。上智大学大学院文学研究科心理学専攻博士課程満期退学。大正大学助教授。臨床心理士。ミンデルに師事。
心理療法家アーノルド・ミンデルは民族紛争、人種差別から虐待までさまざまな人間関係の対立・紛争を扱う。彼は政治学と心理学を夫婦のようなものだと言う。対立・混乱などあらゆる出来事はそれ自体知恵を持っている変化と成長の兆しであると考える。その鍵は集団・個人にひそむ隠れたメッセージに絶えず自覚的であることにある。この本では北アイルランドのベルファストでのワーク、ソ連崩壊後のロシア人と東ヨーロッパ人との国際会議などのケースが挙げられている。
2003年6月25日
日本の自然保護[尾瀬から白保、そして21世紀へ] 石川徹也
平凡社新書 2001年9月19日発行 780円
いしかわ てつや 1963年生まれ。ジャーナリスト。早稲田大学卒業後、88年から東京(中日)新聞記者。「山を考えるジャーナリストの会」代表。
日本の自然保護運動史(公害問題、ごみ問題などの都市問題はのぞく)を扱っている。「山と森林の自然保護」「川の自然保護」「海の自然保護」にそれぞれ1章があてられている。
1970年代以降、欧米ではそれまでの人間のための自然保護という視点から、自然そのもののための自然保護へという視点が出てきた。私は人間が自然環境を破壊していることを痛々しく感じている。入山者が多すぎるために山の環境が破壊されている実態もある。だが、今後何とか人間と自然が共生できる道が開ける可能性の端緒が見えはじめていると考えている。
2003年6月23日