ほかのページでは私はかなり理想主義的なことを書いているが、このページでは現実的なことを書こうと思う。私は現在の日本の社益中心で動く営利法人の方針にはかなり批判的であるし(正社員はストレスの溜まる状況におかれ、パート・アルバイト・派遣は低賃金で不安定な雇用条件で遣われる)また、商品として売れる個性はもてはやされる一方、「個」を圧殺し、個人と社会との関係に敵対的な関係を持ち込んだ現代の先進国の文明にも批判的である(渡辺京二先生の影響による)が、やはり特に若い人たちには、今の世の中でなんとかうまくやっていく方法を知っていてほしい。私が首相なら現代社会を徹底的に改革するのだが、残念ながら私は首相ではない。
まず、今の社会、特に受験、職業選択は一昔前の「根性主義」「努力主義」だけでは自分に最良の結果をもたらしてくれるわけではない。
今は「要領」の時代である。
それに加え、あらゆる計画はそれが失敗した時のことも考えて立てるべきである。
そして司法試験学校「伊藤塾」の伊藤真塾長は「楽しくなければ身につかないというのが、わたしの信条です」と書いている。今何かの勉強をしていて楽しくないという人は楽しい勉強のやり方やいい気分転換の方法などを工夫してみるとよい。それでも気分が晴れず、それが金銭的、人間関係的な問題によるものではない場合は鬱や神経症の疑いがあるので精神科、心療内科を訪れた方がよい。ただ、それらの医者にも藪医者は当然いるので評判を確かめて行くこと。
ほとんどの「試験」は一流・老舗の予備校・資格試験学校のしかも優れた指導実績を持つ講師の言う通り暗記し理解していけば合格率がかなり高まる。ただ、たしかに難しい試験には並みならぬ努力も必要だ。『司法試験機械的合格法』や『東京大学機械的合格法』を書いた柴田孝之LEC講師も、司法試験に受かるにはその人がこれまで行った最大の努力の1.3倍くらいの努力が必要だし、2年間で司法試験の受験計画を立てて受かるには講義を受ける時間などを除いて週24時間の勉強時間が必要と書いている。柴田講師のWebサイトはこちら。
しかし、その「並みならぬ努力」も目的(合格)を達成するための合理的な方法にもとづいたものでなければ、努力した時間に比例する結果は出ない。旧司法試験は受験生の勉強時間・受験期間を短・中・長と分けてみると「中」の人の合格率が意外に低い。短期間合格者は一流・老舗の司法試験学校のテキストを使い、講師が言う通りに勉強しているから受かる。受験期間が長期の合格者は法律の知識も豊富だが司法試験合格のために何が大切で何が不必要か気づいているので受かる。勉強時間・受験期間が「中」の人は知識が中途半端で司法試験に出るポイントを必ずしも押えていないので意外に受からない。
野球選手が余暇にゴルフをやり上達しすぎると、本業である野球のバッティングが下手になってしまうというのを聞いたことがあるだろうか。なまじ似たようなことをやると本来の目的が達せられなくなることがある。司法試験、公務員試験なども「学問」を学ぶように勉強すると努力しただけの結果が出ない。
試験というものは、大学別、資格試験別に出題形式がある程度決まっているし、それを時間以内に解かねばならないので、その形式に合った問題を多く解き、慣れ、できれば本番では頭も手も自動的に動くくらいが望ましい。そのためには、自分の受ける試験に出そうに無い形式の問題、出そうに無い知識を覚えるのに時間をかけるのは、試験までの日数が限られている以上、無駄であろう。そうした問題、知識は一度さらっと触れて記憶のどこかにある程度で良い。
井藤公量(いとう きみかず)弁護士は『新版 P&C方式「速攻」司法試験突破術』で試験一般についてこう書いている。まず、試験には制限時間や解答用紙の大きさという制約があり、それを越えて書かせる問題は出ない。2つめに、試験は多数の受験生の答案を短期間で採点するのだから、「様々な解答が正解となるようなそんな問題を出すはずがない。順位がつけられなくなるではないか」 彼はこうも書いている。司法試験の本番にもっとも近いのは「本試験の問題」であり、もっとも遠いのは学者の論文である。「本試験の問題」とは過去問であり、それに近いものが予備校演習本(優秀答案付論文問題集)、それに続くのが学者が書いた司法試験向け演習書、次が予備校基本書、学者の基本書と続く。当然もっとも近いものだけをやればいいというものではなく、司法試験向けに勉強するなら予備校基本書を読むことから始めなければならないだろう。
これは一般の試験にも言えるのではないか。自分が目指す大学の入試の本番にもっとも近いのはその大学入試の過去問に一流・老舗予備校が解答・解説をつけた本。次が〇〇大模試とその大学名を冠した一流予備校の模試。その次が〇〇大コースと銘打った一流予備校の講義。一流予備校やその講師の手による参考書・問題集。
しかし、勉強法や合格体験記などは、その勉強の仕方で本当に自分も試験に合格できるのかどうか疑ってみた方がよい。執筆者が人口のごく一部を占めるきわめて受験勉強向きな頭を持った、ようするに珍しいくらいの受験秀才かもしれない。普通の人がそれで受かるか疑ってみること。
佐藤俊樹著『不平等社会日本──さよなら総中流』(中公新書)の25ページには職業を大雑把に6つのカテゴリーに分類した記述がある。次の通りである。
(1)ホワイトカラー雇用上層:専門職と管理職の被雇用(法人企業の役員をふくむ)
(2)ホワイトカラー雇用下層:販売職と事務職の被雇用
(3)全自営:専門職と管理職と販売職と事務職と熟練職と半熟練職と非熟練職の自営(家族従業をふくむ)
(4)ブルーカラー雇用上層:熟練職の被雇用
(5)ブルーカラー雇用下層:半熟練職と非熟練職の被雇用
(6)農林水産業
自営と農林水産業を除く被雇用者の場合、やはり専門職か管理職になるのがいいし、同じ下層でも、ブルーカラー半熟練職と非熟練職(ようするに熟練を必要としない肉体作業)よりは販売職と事務職の方がいい、と私は思う。私は熟練を必要としない手作業(重労働はしたことがない)もやったし、写真屋の店員もやったが、それよりも事務職の方がいいと思う。
事務職は何といっても座って仕事ができるし飲み物をいつ飲もうがいつトイレに行こうが自由である。パソコンを使った仕事をすればそれが経歴になるから次も事務職に就くことができる。それに事務職をやっていると社会の仕組みがよく分かる。オフィスワークをやれば例えば会社というものが、利益と直結しない仕事をたくさんこなさなければいけないことが分かる。パソコンの調子が悪くなってOSやアプリケーションをインストールし直すのも仕事である。しかしまったく売上には結びつかない。
倉庫・出荷など手作業系の場合、まず仕事中は休まず手を動かすことが求められる。トイレは原則として休憩時に行く。このため水分をあまり取らないようにしようと考えたくなるが、人間は水分を一定限度まではどんどん取りどんどん出した方が身体のために良かったと記憶している。軍手・カッターナイフ・ボールペンを必要とすることが多いが、これは正社員は知らないがパート・アルバイトの場合自腹である。しかもたとえば私が本を段ボール箱に入れる作業をしていたときはゴムの滑り止め付きの薄手タイプの軍手を使っていたが1か月ほどでぼろぼろになって穴があいた。カッターナイフも刃を折ったり無くすことも多い。ボールペンは伝票に印をつけるときなどに使うが大体1か月くらいでインクが無くなって新しいのを買わねばならない。オフィスでは文房具は会社の予算から買ってあり机の中に入っている。作業系では飲み物は自販機で買うことになるが、オフィスでは湯沸室で無料でお茶やコーヒーが入れられる。これは毎日のことを考えると月額ではかなり大きい。私は作業系のアルバイトをしていたとき、ある所では上の階に冷水機があったので休憩時にはその階まで駆け上がって水を飲んでいた。また別の場所では夜寝る前に麦茶を沸かし朝氷とともに水筒に入れて持って行ったり、面倒な時はペットボトルに水道の水を入れ夜の間冷蔵庫で冷やして持って行っていた。
それに作業系は小さいが怪我をすることも多い。段ボールのふちなども触れる角度によっては簡単に皮膚が切れる。大出力の動力を使った装置の傍らでの作業、例えばコンベアなどライン作業の場合は大きな事故もたまにある。私が本を段ボール箱に入れる作業をしていたとき、同じ会社の別の作業場でラインに手を挟まれた人が手を切断するという事故があった。逆に仕事以外の場で足を骨折しても作業系は業務ができなくなってしまう。格闘技などを習う人にはリスクが高い。オフィスワークは指を骨折しない限りほとんど問題ない。
雇用形態の話だが、当然、非正規雇用(パート、アルバイト、派遣)よりは正規雇用(正社員)の方が良い。余暇が多い方が良いというなら正社員でも残業が少ないところを選べば良い。正社員の職になかなか採用されなければ、非正規雇用でも雇用保険、労災保険、有給休暇のあるところが良い。健康保険、年金もあればあった方が良い。派遣よりは職場と直接労働契約を結ぶパート、アルバイトの方が良いが、派遣会社は自分の特技・資格などを見て適切な職を紹介してくれるので、こちらからあれこれ探す手間が省けるというメリットはある。しかし、派遣は期限付き契約なので契約期限終了時に再契約してくれるかどうかは分からないという不安はある。特に小さい会社だとパートであっても正社員と同様、経営的視点に立つことが求められ、様々な仕事を任されたり、客先からのひとつの仕事を全面的に任されることもあるのでやりがいがあると言える(ただ、小さい会社だと顧客一つ一つが大切な客なので電話の応対などに関して厳しく注意されるし、小さなミスも厳しく叱責される。利益が少ない分、仕事にスピードを求められる。しかも小さい会社は給与が安い)。派遣だと限られた仕事を指示されてやるだけが普通である。しかし派遣でも上で書いたようにオフィスワークは肉体作業系よりかなりましな職場環境である。派遣でも事務系は書店・CDショップ・スーパーなどのアルバイトよりは時給が高い。
前日などに1日ごとに電話をして労働の予約をする「1日単位の派遣アルバイト」は短期間だけやるにはいいが1月以上継続してやるのは勧められない。予約の電話をしても「明日は仕事はありませんね」と言われることも多いので一人暮らしの人などは必要な生活費が出ないであろう。それにこの手の「1日単位の派遣アルバイト」は日給が5500円〜6000円超程度と安く、しかも交通費は別途支給されないのが普通である。第一、この手の「1日単位の派遣アルバイト」を続けても経歴の上でまったく有利にならない。
だから、よりましな事務系の職に採用されるために学生・生徒である大学・学校在籍中にパソコン技能、コミュニケーション能力を磨いておくのが得だろう。それについてはこのテキストの下の方の「パソコン能力・英語力」「日本語能力・コミュニケーション能力」の節に詳しく書いている。
非正規雇用の労働者の権利に関しては井上幸夫・笹山尚人著(2人とも弁護士)『フリーターの法律相談室──本人・家族・雇用者のために』(平凡社新書)が詳しい(と言うか、この本は労働法はパート、アルバイト、派遣を含めたあらゆる労働者に対して適用され、パート、アルバイト、派遣も労働法上、正社員と同じ権利があるという主旨で書かれている)。
前節に書いたのは、末端の仕事では熟練を要しない作業系よりはオフィスワークの方がましということで、やはり可能なら管理職・専門職や自分のやりたい仕事を目指した方がいいと思う。会社の歯車として一生を終えるのに比べて、医師や法曹(裁判官・検察官・弁護士)、弁理士などになった方がいいと思うし、サラリーマンになるよりは、それが好きでやりたいなら、たとえばマッサージ師・整体師になった方がいいと思う。作家、画家、イラストレーター、映画監督、俳優、ミュージシャンになりたいのならそれを目指せば良い。
作家を目指した人で作家になれたのは、作品を実際に書いた人のうち500人に1人だそうである。笠井潔著『国家民営化論──ラディカルな自由社会を構想する』(光文社知恵の森文庫)の280ページによれば作家の8割以上が単行本の販売冊数で1万部から3万部の間にあり、本の価格を1500円として印税収入は150万円から450万円となり、「大多数の作家は、雑誌の掲載料と印税を合わせて、かろうじて常識的な水準の生活ができるということだろう」と書いてある。
初めに書いたように「あらゆる計画はそれが失敗した時のことも考えて立てるべきである」 これは経済学者森嶋通夫(1923-2004)が戦争などの国家行為について述べていることであるが(『日本の選択』岩波同時代ライブラリー)個人の人生にも当てはまる。アレンジャー、キーボード奏者、そしてSF作家でもある難波弘之(1953年9月9日-)は学習院大学法学部卒である。ミュージシャンを目指すなら、作曲・編曲が出来て、楽器の腕は変拍子や転調を多用したものであっても譜面を渡されて初見で弾けるくらいなら、仮に自分のバンドで売れなくても作曲家、アレンジャー、スタジオミュージシャンとして仕事ができる。がそれでも万一のために自分の成績で入れるもっとも就職の良い大学を卒業しておく方がいいだろう。大学の就職の良さランキングは週刊誌が毎年記事にするので新聞の週刊誌の広告をよく見ておくとよい。私立文系なら明治、中央、立教、学習院くらいに入った方がよい。可能ならもちろん慶応義塾、早稲田、上智、ICUの方が良い。そして音楽は独学か、音楽学校のクラスに通い意地でも上に書いたようなレベルの音楽能力を得る。
サラリーマンなど普通の被雇用者で良いという人は、普通に進学し普通に就職するであろうが、今の世の中はできれば四年制大学を卒業した方が良い。似たような入試偏差値なら地方国公立より東京を含む首都圏4都県、大阪、京都、兵庫などの私立大学の方が就職は良い。ただ、理系の場合は偏差値、大学の知名度・歴史の古さも考慮すべきであるが、それと同等以上に学科・専攻が現在の社会で就職に結びつきやすいものであるか、設備や教育内容が充実しているかを見るべきである。予備校の講師から某高校は九州大学合格者を増やしたいがために就職の悪い九州大学の造船学科を大量に受験させたと聞いた。高校教師は表面上の合格実績を上げる目的で生徒に進学指導をすることが多いので注意が必要である。理系の場合、設備は国公立は予算が違うので大抵の場合、私立より良い。学科・専攻が就職に有利なものであり入試難易度が同じくらいなら国公立を選んだ方が良い場合が多いだろう。
これを読んでいる人で小・中学生で成績が悪い人がいたら、優れた勉強法の本を読んでその通りに合理的に勉強するのがいい。暗記だけでなく判断力も養成するために、例えば多湖輝著『頭の体操』などのパズルを解いてみるのも良いだろう。英語を学ぶようになっても母国語能力以上の外国語能力がつくはずがないから、小学生の内に日本語を読む・書く力を十分に養っておくべきだ。自分より2学年上を対象とした本が普通に読めることを目指すのがいいだろう。
有名な進学校である中高一貫校に進んだ方が難関大学に入れるようであるが、私立の有名高校・中高一貫校は多くが男女別学である。それが合っているかどうかはその人による。
どうしても成績が悪く大学進学校に行けないとき、普通高校か職業高校か迷うだろうが、教育方針や生徒の気質など雰囲気がいちばん自分に合いそうな高校に進学するのが良いと思う。大学進学校でなくても大学を受けていけないということはもちろんないので受験することを勧める。
上で挙げた柴田孝之著『東京大学機械的合格法』は東大だけでなく難関大学全般の受験に役立つ本らしいので、大学進学を考えている人は高校初期かもっと前(小中学生でも)に読んだ方がいいだろう。大学受験はやはり老舗である三大予備校、駿河台予備校、代々木ゼミナール、河合塾の講義を受けるのが良いと思う。英語重視の難関大学狙いならトフルゼミナールも評判が良いようだ。講義という形で勉強するのが苦手な人、上記予備校にアクセスし難い場所に住んでいる人は上記予備校の書籍、上記予備校の講師が書いた書籍を使って勉強するのが良い。今は衛星放送を使って講義を遠方でも受けられるところもあるようである。
予備校の講義を聞いてもまだ成績が上がらない人は積極的に講師室に質問に行くこと。国公立志望の人で予備校の講義を聞いたり書籍を使っても5教科を持て余している人は早めに私大専願に変えた方がいいだろう。
私は高校2年の時に成績が悪く、教師から大学をどこを受けるかということよりも今の成績を何とかしないとと言われたが、後に代ゼミの講師が、どんなに成績が悪い高校生でも志望大学は決めておくべきであると書いているのを読み、またその後の経験上からこの代ゼミの講師の見解が正しいと思う。私の高校は国公立受験中心の指導をしていたが、5教科を持て余していた高2の段階で私立文系専願に決めるべきであった。
私立文系と決めたら慶應、早稲田、上智、ICUの内、自分に肌が合いそうな大学を目標として勉強するのがいい(教育内容・大学の雰囲気などから考えてこの大学の他に目標としたい大学がある人はそれはそれでよい)。その方が向上心も生まれるし、より熱心に受験勉強に取り組むようになるであろう。
社会学者の宮台真司は東大博士課程修了だが、受験生時代、問題集の問題と解答・解説を左右に広げ見比べ、飽きたらたとえ15分でも他の科目に変えていたそうだ。誰にでも当てはまる勉強法ではないかもしれないが、この話を知った時私は「こんな勉強の仕方をしていいなんて高校の時に思いついていたら!」と思った。
私立文系に関してであるが、今はどうだか知らないが私の頃は、経験上、英語の長文の演習量が週に4問程度(予備校の国公立コースではそのペースだった)では慶應、早稲田、上智、ICUはおろか中央、明治、立教、学習院、青山学院にも受からないと判断し、その3倍の12問分の英文を1週間に学習することにしそれを実行した。1問分の英文と言っても長さに差があるが、B5で1ページくらいのことを指して言っている。また、過去に受けた模試の英語長文問題を26穴ファイルに綴じ、毎日できるだけファイルすべての英文を読むことにし実際に実行した。単語ノートを作り辞書で調べた単語は書き込んだ。単語ノートとはカード式の小さなものではなく、A5サイズの「単語帳」として売られているものを使った。論理構造を読み取る必要のある英文を理解するために、今は失ってしまって手元にないので分からないが、たしか駿台予備校の伊藤和夫講師が書いた『英文解釈教室』を精読した。副詞ひとつでも意味上は仮定法になる場合などが書いてあり役に立った。今は出題傾向が変わっているのでそのまま薦めることはできないが名著であったと思う。英熟語に関しては定評のある問題集を全ページ10回繰り返し解いてやっと身についた。さらに別の英熟語問題集全ページを2回解いた。
古文についてはまず、品詞の識別、いわゆる「この『む』の意味は次の選択肢のどれにあたるか」という設問の対策であるが、代々木ゼミナールの講師の手による品詞の識別だけで1冊書かれた参考書があったのでそれを読んで覚えた。次いで助動詞と敬語について学び、次に「古文単語300」といった単語集で単語を覚えながら長文問題集の演習をした。
社会は世界史を選択したが予備校の講義を受けた上で講義を録音したテープを聞きながら配布されたテキストを読んで復習した。問題集も何冊か学習した。その日にやった問題を答え合わせをしたあと同日中にもう一度解いた。
私立文系であっても特別受験向きの頭を持った人以外は、正しい方法でかなり意地になって勉強しないと有名大学合格は難しい。東大合格者であっても過去問を解いたことがなければ上智大学に落ちている人も多いと聞く。
上に書いたようにできるだけ就職の良い大学に行った方が良い。国公立なら旧七帝大、一橋、東京工大、神戸、筑波、東京外国語大学または医歯薬学部、私立なら慶応義塾、早稲田、上智、ICU、中央大の法学部(司法試験を目指す人の場合)、東京理科大である。これに準ずるのが、金沢大、広島大、熊本大、首都大学東京(旧・東京都立大学)、明治、中央(法学部以外)、立教、学習院、同志社、立命館だろう。前にも書いたが大学の就職ランキングは週刊誌が毎年記事にするのでそれを見ておくのを勧める。
河合塾は模擬試験の結果、どの偏差値帯(2.5刻み)で合格者と不合格者が半々になっているかを調べその合格率50%の偏差値帯をその大学の偏差値として春に発表している。秋に発表するのはその年の受験生の志望大学と偏差値の傾向を加味した大学の難易度の予測値である。ところが、合格率50%の偏差値帯が見つけられない大学がある。どんな偏差値でも合格率が80%以上の大学が。河合塾はそれらの大学をランキング・フリーの意味でFランク大学として公表した。
Fランク大学やそれに近い偏差値の大学と専門学校とどちらに進学したら良いかと聞かれると事は単純ではないので回答は難しい。お金はかかるが大学に行きながら専門学校に通うのが良いのではないか(専門学校は本科コースでなくとも必要な短期のコースを取ればよい)とも思うが、より良い方法はFランク大学や低偏差値大学でも専門学校的な教育、つまり、コンピュータ教育、英語教育、その他資格試験合格のための教育が充実している大学に行くことである。
大学に入ったらある程度の成績を目指すのはもちろんだが、就職活動を始める前までにパソコン能力、英語力を高めるべきだろう。特に上に挙げた一流大学に入れなかった場合ほどそうである。大学進学予定のない高校生も同じである。英語力はTOEFL(iBT)100〜110、またはそれ以上、TOEIC860〜900、またはそれ以上、実用英語検定1級、準1級合格を目標にすべきである。他にフランス語検定など他の言語検定にも受かっておくと良いだろう。
パソコンについてはメールアドレスの設定を自分で出来るようになることから始め、鐸木能光著『パソコンは買ったまま使うな!』(岩波アクティブ新書)を読み、書いてあることは一通り出来るようになった上で、Word, Excel, Access, PowerPointの操作ができるようにすべきだ(学生と教員はアカデミックパックと言って安く買えるパッケージがある)。少なくともWordとExcelにはMicrosoft公認の認定試験があり、初級と上級があるので上級の方に受かっておくのが望ましいだろう。WordやExcelのマクロが組めるくらいになったら、HTMLとスタイルシートを勉強し、Webページが自分で手打ちで作れるくらいになっておくと良い。それから何らかのプログラミング言語で一度は何かプログラムを書いてみることが望ましい。それが参考書に書いてあるソースコードそのままであっても、何もやらないよりは良い。
パソコンのOS・ハードウェア・ネットワークを扱った雑誌を毎月1冊は読み、それらに詳しくなっておくのが良い。そして一度はパソコンを自作するか、少なくともハードディスクの交換・増設、メモリの増設、周辺機器の増設くらいは経験した方がよい。企業は末端の事務職は女性を優先して採る傾向があるので男性求職者はパソコン技能において女性を上回っていなければ不利になる。Microsoftの代表的なアプリケーションの操作は当然出来るようになり、OS・ハードウェア・ネットワーク(セキュリティも含む)・コンピュータ言語においてある程度の能力を持ち、適切なフリーソフトを探してパソコンを使いやすくする能力などを高めておくべきだろう。コンピュータ、ネットワークの利用者側のための試験として「初級システムアドミニストレータ」その上級に「情報セキュリティアドミニストレータ」「上級システムアドミニストレータ」がある。
日本語の読み書き能力がないと見なされればホワイトカラーの採用は難しいだろう。採用されても入ってからが大変だ。漢字があまりに読めないと業務に支障をきたす。なので新聞の政治・経済・社会・文化面と社説は読むようにし、できれば週に1冊程度は評判になった「新書」を読むことを勧める。書く力をつけるために自分のWebサイト、ブログを始めるのもいい。
企業がもっとも重視することのひとつが、自分の言いたいことを人に分かるように説明できる能力や他人と適切に会話する能力である。これを鍛えるためには本やパソコンばかりに向かっていてはだめで、当然ながら人と接する必要がある。
サークルは部員が10人以上のところに入るか、または複数のサークルに所属するのがいいだろう。部員が5人程度で新入部員が入らない年があるようなサークルよりは人間関係を構築・維持する能力が高まる。公演、発表会、試合があるようなサークルは(それが年1回とかならいいが)自分の勉強のペースを崩される恐れがあると思う方が良い。
教授を囲んで討論する授業があるなら可能な限り数多く履修するべきだ。論理的な会話をする能力が養われる。
家の経済的事情で大学に進学できないというひとのために。入学時納付金は国民生活金融公庫の「国の教育ローン」が利用できるし、入学してからは日本学生支援機構(旧・日本育英会)の奨学金がある。
大卒者が就職するとき、現役と一浪ではほとんど有利不利はないが、二浪だとやや不利になる。留年は浪人よりもっとマイナスになる。三浪はさらにがくんと不利になる。二浪と三浪の差は一浪と二浪の差よりも大きいと思う。浪人・留年・転学などで現役入学留年無しの学生に比べ年齢が3つ以上上になると就職にかなり不利になる。だから医歯学部以外は二浪までにとどめるべきであろう。
体力がない人、体調を崩しやすい人は自分が働き続けられる職場かどうか調べて就職活動をすべきだろう。自分の先輩がその会社にいれば会って聞くといい。たとえば7時間眠らないとどうも身体の調子が悪いという人はそれが可能な職場かどうか早めに確かめるべきである。そうでない職場は自分にとって就職に適さないから筆記試験を受けたり面接を受けるのは時間の無駄である。
正社員であっても労働契約を守らない企業があることは事実である。入社前に支給すると言っていた住宅手当を出さないとか、ひどい場合は交通費が出ないというケースもある。その場合は転職することになるから、そのためにも在学中に職業能力(日本語・英語・パソコン・コミュニケーション)を高めておくべきである。
女性が働きやすい企業は男性にとっても働きやすい企業である。
雑誌、辞典の編集部、編集プロダクションは深夜までの残業、徹夜、泊まり込みが当たり前であると考えるべきだ。
あまりビジネスに関心がない人は公務員を目指し、2年生くらいからそのための勉強を始めるのがいい。都道府県の上級職がお勧め(中央官庁のように予算編成期に大変ということもないし)。だがもちろん中央官庁を目指そうという人はぜひ国家公務員試験を受けるべきだ。国家公務員、都道府県、市区町村と併願するのが良い。前にも書いたが、試験の目的にいちばん近いものはその試験の過去問であり、一流・老舗の資格試験学校の作ったテキスト・問題集である。公務員試験を受けても民間企業への就職活動と並行して行うのはもちろん自由であり、試験に落ちた時のことを考えて民間企業への就職活動は行うべきだ。公務員志望なら政府系の法人も選択肢に入れるのがいいだろう。
マニアっぽい人はそれ系の本を出している出版社を狙うといいだろう。話し方などが根暗ふうに見えても、その分野の知識と大卒レベルの一般教養・日本語の読み書き能力があればその手の出版社はそれほど不利にはならない。
大学院は基本的には、旧七帝大、一橋、東京工大、神戸、筑波、東京外国語大学、慶応義塾、早稲田、上智、ICU、(法科大学院なら中央大学も含む)の中でそこの教授がその分野で一流であるところに行くべきだ。絶対にどこかに受かる自信がなければ、就職活動も並行して行うべきである。仕事の比較的楽そうな会社に入り、入りたい大学院に受かったら年度末で辞めるという手もある。就職先も無く全部の大学院に落ちてしまった場合はいちばん行きたい大学院の研究生になるのがいいだろう。
どこにも属さないまま大学院浪人、資格試験浪人を続けるのは勧められない。結果として受からなかった場合だが、現在の日本の企業社会では25歳以上職歴無しは採用上極端に不利になる。正社員が拘束が強く勉強の妨げになると思うなら、経歴として評価されやすいパソコン・英語を使った事務系のパート、派遣をやりながら勉強をするべきだ。
2006年2月26日
2006年3月5日加筆
2006年7月23日修正
2008年8月6日加筆、修正