女性専用車両 リプレイ
作:西田三郎
■4人の少女 ホームで見かけたときは、なんということのないふつうの女子中学生の4人組だった。 うち3人は体格がよく、背が高い。まあ今風の10代の女の子たちだ。 先生か生徒か…ここには居ない誰かの悪口で、とても盛り上がっている しかしその3人から少し離れたところに、頭ひとつ背の低いショートカットの少女が立っていた。 その子はとても大人しく、俯いては、時々チラチラと周囲を見回し、俯く。それを繰り返していた。 前髪の少し長い短髪。体つきはとっても痩せっぽちで、紺のスカートから伸びる脚は、友達(?)3人とは…全く違っている。 第二次性徴が見られない、というか、脹ら脛や太股に少し女らしい脂肪を纏っているほかの子たちとは違い、その子の脚は棒っきれのように細かった。 また、ほかの3人は紺色のハイソックスだが、その子だけはスニーカーソックスを穿いているらしく、踝あたりまでが剥き出しになっている。 その青白い脚が外気にさらされているのを見ると、何となく痛々しい感じがした。 その子は完全に他の3人に無視されているみたいだった。 ひとりだけ会話にも加わらず、しきりに周囲ばかり気にしている。 わたしは自分が彼女らと同じくらいの歳だった頃の自分を思いだした。 わたしも中学校のときは、ショートカットにしていて、性格は暗かった。性格は今でも暗いけど。 別にあからさまに仲間はずれにされるわけではないけども、集団の中ではいつもその存在を忘れさられてしまうのだ。そんなわたしだから、 そのショートカットのチビさんについ自分を投影してしまう。 やがて電車が入ってきた。 先頭車両は、女性専用車両である。 朝の通勤・通学ラッシュ時は酷く込み合う。この沿線は痴漢被害が多いことで有名なのだ。 わたしもよく狙われた。どこかで読んだけれども、痴漢は性格の暗そうな女性を狙う傾向があるらしい。 美人・ブスに関わりなくだ。わたしがそのどちらに属しているのかはわからないけど、性格の暗さは十代の頃からの筋金入りなので、 こればかりは直せそうもない。だからいつも女性専用車用を利用することにしていた。 お陰で、出勤前にくだらない気苦労を負わずに済むようにはなった。 わたしは4人の少女たちとともに、車輌に押し合いへし合いで詰め込まれていった。 彼女らの髪から、4人それぞれのいい香りが漂ってくる。 女性専用車両は、いつも花の香りがする。 ■弱いものいじめ さて、ぎゅうぎゅう詰めの電車が発車した。 わたしは少女たちの一団に押しつけられるような格好で、電車に揺られていた。 見ると、少女たちは、例の背の低いショートカットの子を取り囲むようにして立っている。 あれ、妙だな、とわたしは思った。 さっきまで無視されていたに等しいチビさんが、今は真ん中になっている。 チビさんを取り囲む3人の少女たちは、真ん中の彼女を見下ろすような形で、何か意味ありげな含み笑いを浮かべ、 お互い目で何かを合図し合っている。 非常にいやな感じがした。 これは……明らかにイジメの構図である。 わたしは幸運にも、少女時代にイジメられることはなかったが、わたしの周囲にもやはりイジメは存在した。 女同士のイジメは実にほの暗いというか、じわじわと真綿で首を絞める感じというか、 とにかく明確な暴力などを伴わないぶん、陰湿なのである。 チビさんは背の高い3人のいじめっ子に囲まれて、真っ赤になって俯いていた。 わたしは彼女に同情した……はじめて見た瞬間から、わたしは彼女に妙な親近感を覚えていた…… なんだか、ついつい昔の自分をだぶらせてしまう。 取り囲む3人の少女たちが、また目を見合わせて笑った。 3人の中でも特に可愛らしい、というか美人系の女の子は、チビさんの正面に立っている。 美人さんが、実に底意地の悪そうな笑みを浮かべた。 もともとの造りが美しいだけに、その意地悪さが強調されているような感じがする。 「ねえ……」美人さんがチビさんに言った「……どう?どんな気分?」 「………」チビさんはますます赤くなって、さらに縮こまっていくようだった。 「……楽しいでしょ?あんた結構、楽しんでるんじゃないの?」 「…………」チビさんは答えない。 「なんか言いなさいよ……ねえ、聞いてんの?」 「……はい」チビさんが初めて口を効いた。 蚊の鳴くような声だった。案外、ハスキーな声だ。 「…………どう?乗り心地は?悪くないでしょ?」 ……乗り心地?この電車のことだろうか?妙な質問だな、とわたしは思った。 「……めったに乗れないんだからね。あんた。あたしらに感謝しなさいよ」 「……はい」 「見てよ、こいつ。震えてるよ」チビさんの左に立ってるつり目の子が言った「恐いの?」 「………」 「ほら、聞いてんじゃん」チビさんの左側に立った、受け口の子が追い打ちをかける。 「………いいえ」 「……じゃあ、なんで震えてんのよ。うれしいから?あんまりうれしいから、震えてんの?」 「……そんな……」チビさんはほぼ泣き声だった。 「ほら」つり目が、チビさんにぎゅっと身体を押しつける。中学生にしては、立派な胸だった。 「あっ」チビさんが身を固くする。 「ほれ」反対側の受け口が、大して大きくない胸で押し返す。 「……どうよ?楽しい?」美人さんが俯いているチビさんの顎を、細い指で掴んでくっと持ち上げた。 「……楽しいでしょ?ほら、聞いてんの、楽しいでしょ?」 「……は、はい」顎を持ち上げながら、チビさんが怯えた目で美人さんの顔を見ている。 わたしはチビさんを可愛そうに思いながら……何か、別の胸騒ぎを感じていた。 なんだろう、この気分は。さっきまで、イジメられっ子のチビさんに素直に同情していたのに……。 多分、あの怯えた目がいけなかったのだろう。 「……こんな経験、なかなかできないんだからね……感謝してよ」と美人さん。 「……」チビさんは無言で頷いて見せた。 その間も、両側からつり目と受け口がグリグリとそれぞれの胸を、チビさんの身体に押しつけている。 なんだか、彼女らの顔が少し上気しているように見えた。二人の鼻息も、心なしか荒くなっているようだ。一体、なんなんだ。 二人に挟まれているチビさんは、ますます赤くなって震えていた。 ああ、なんだろう。この変な気分は。 わたしは彼女たちから目を離せなくなっていた。 「あっ……」美人さんが、視線を下に落として言った「……やだ、こいつ、勃ってるよ」 「ええ?」 「マジ? 」 つり目と受け口が慌ててチビさんの腰のあたりを見た。 勃ってる? どういうことだろう? チビさんはパニックに陥り、じたばたと暴れ始めた。 「こら、じっとしなさいよ」美人さんがぴしゃりと言う 「あんた、みんなに見られてもいいの?あんたの正体、バレちゃったらマズいよ?判ってる?」 「………」 「ほら隠さない」とつり目「見せなさいよ……」 チビさんは大人しくなった。つり目と受け口が、チビさんのスカートを引っ張ってじっくりとその前を見る。 わたしも何気ない素振りで……チビさんのスカート前を覗き込んだ。 何ということでしょう。 チビさんのスカートの前を、何か固くて細いものが持ち上げていたのだ。 ■変態くん 「うわっ……すっげー……」つり目が言う 「……あんた、何考えてんの?」と受け口。 「……ちょっと、勘弁してよ。これじゃあ、バレちゃうじゃない。なんとかしなさいよ。」 美人さんが俯こうとするチビさんの顎をまたくいっと持ち上げる 「……どうしたの……?……そんなにうれしいわけ?こういう趣味あったの?あんた」 チビさんは黙って被りを振った。 まったく事情は飲み込めなかったが……とにかくチビさんは、男の子らしい。 わたしも彼女……じゃなくて“彼”のスカートの前が出っ張っているのを見たときは、我が目を疑った。 チビさんは4人組の中では、美人さんの次くらいに可愛い。というか、女の子らしい。 肌も白く、きめ細やかで、切れ長の目に小さな鼻、小振りだけども瑞々しくふっくらした唇。 全体的な身体つきは驚くほど華奢で、体格のいい3人に囲まれているのを見ると、どう考えてもチビさんが男の子であるようには見えない。 わたしの頭は混乱した……いったい、どういう状況なのだ、これは。 「……ほら、変態、なんとか言いなさいよ」 「………ん」チビさんの肩がビクッと震えた。美人さんが正面から胸を、ぐっと押しつけたのだ。 それに倣うように、つり目と受け口もますますチビさんに身体を密着させる。 チビさんは塩をかけられたなめくじのように、どんどん萎んでいくようだった。 「……へーえ……そっかあ、あんた、可愛い顔してるけど、 変態くんだったんだね」 「……だって……」チビさん=変態くんがまた消え入りそうな声で言う。 「何が、“だって”よ。ほんっといやらしい。ほら、どんどん勃ってくよ。小さくしないと、周りの人にバレちゃうよ。バレちゃってもいいの?」 「…………」変態くんは固く目を閉じて、唇を引き締めていた。 ああ、そんな彼女……じゃなくて彼の表情を見ていると……わたしはますますへんな気分になっていった。 最初に彼女……じゃない、彼を目にしたときの、イジメられっ子への同情は跡形もなく消え失せていた。 まったくもって尋常ではないことだとはわかっているけれど…… なんだか、彼の悩ましげな表情はわたしの中に眠っていたいかがわしい感情を否応なしに亢ぶらせた。 その感情は、美人さんが、つり目が、受け口が、変態くんに対して抱いているものと同じ種類のものなのだろう。 つまり、わたしは彼女らに加わって変態くんをいじめたくなってしまったのだ。 しかし、そんなことは出来ないことは判っている。 だから、彼女らにもっと、彼をいじめてほしかった。 とことん彼を当惑させ、困らせてほしかった。 もっと真っ赤になって、屈辱に耐える彼の姿が見たくて仕様がなかった……。 改めて考えてみると、実に異常な心理状態だった。 こんな気分になったのは、はじめてのことである。. 突然、つり目が彼の耳元で、何やら囁いた。 変態くんはビクッと身を震わせる。或いは息を吹き込まれたのかも知れない。 つり目は逃げた変態くんの身体を引き寄せると、また耳元に口をつける。 変態くんは微かに震え、目を閉じながら、耳に与えられる刺激になんとか耐えている。 正面からは美人さんが彼のそんな反応を楽しむように注視していた。 で、受け口が何をしているのかと言うと……あれまあ、変態くんのブラウスの上から、 乳首の辺りを指で触れるか触れないかのような微妙なタッチで、いじくっているではないか。 彼女らの亢奮はまるでむせ返るようで……それぞれの荒い息づかいがこちらまで漂ってくるようだった。 彼女らの変態くんへのイジメが、別の段階にシフトチェンジしたことは明かだった。 わたしは人目もはばからず彼女らの一挙一同を見守っていた。 わたしのほかに彼女らに注目している人は居ないわしい。 なんだかお臍の下あたりが、むずむずと疼いた。 ■愛撫 「……やめて……やめて、下さい」ほとんど聞き取れないくらいの声で、変態くんが言う 「……こんなことするって、言ってなかったじゃないですか」 「しないとも言ってなかったでしょ」美人さんが冷たく言う「ほら、大人しくしとかなきゃ、周りの人に気づかれちゃうよ」 「……あっ………ちょっと………」 ブラウスの上から彼の乳首をいじっていた受け口が、彼のブラウスのボタンを二つばかり外したのだ。 すかさず手が入り込む………ちょっと大きめのブラウスの中で、受け口の手がなにか、たいへん怪しからん動きをしているのが見えた。 彼の耳元を息で責めていたつり目も負けてはいない。 あからさまに、下でぺろりと彼の耳を舐める。 「……ひっ」逃げる彼の頭を押さえつけ、耳たぶから耳の輪郭へと舌を這わせる……たいへんいやらしい。 まあ、遠目に見ると、友達とじゃれ合っている女子中学生たち、というくらいにしか見えないのだろうけど、 変態くんの狼狽と……被虐的な感覚はしっかりわたしに伝わってきた。 「なによ、身体ぴくぴくさせちゃって……気持ちいいの?……いやらしいんだ」美人さんがかなり熱の籠もった声で変態くんをからかう。 ぞっとするくらい色っぽい声だった「……ほら、こんなことめったにないんだから、もっと楽しみなさいよ……」 少なくとも美人さんは、この一団の中でいちばんいやらしくて、ませているのだろうな、とわたしは思った。 つり目と受け口は、すでに頬を真っ赤にしてハアハア言っている。まあ、あれくらいの年齢が一番、こうしたことに対する欲望に貪欲なものである。 わたしもあの年頃はそうだった。 四六時中いやらしいことを考えては、その考えが誰かほかの人に読みとられてやしないか、意味もなく不安になったりした。 そして毎晩、寝床ではオナニーを繰り返していた。その度に、わたしってなんていやらしい子なんだろう、とひとり自己嫌悪に陥ったりしたものだ。 まあ今は大人になって、誰だってそうして少女期の橋を渡るんだ、ということを知った訳だけれども…… それにして今、目の前で繰り広げられている光景はたいへん淫靡だった。最近の子どもは……で片づけられる問題ではない。 事情はよく飲み込めないが、この3人のリーダーは美人さんで、つり目と受け口は彼女の取り巻きなんだろう。 そして今、彼女らになぶられている少年は、彼女らの後輩かなにかだろうか? 彼は、恐らく美人さんが思いついたのであろう意地悪で、女子の制服を着て女性専用車両に乗ることを強制された。 しかし意外や意外、彼は女装させられて苛められることに悦びを感じる、マゾだったのだ…… って、だいたいそんなところなんだろう、と自分で納得した。 「やっ……!」まるでほんものの女の子のように、変態くんが短い悲鳴を上げる。 恐らく3人の中で一番意地悪なのであろうつり目が、彼のスカートの中に、後ろから手を突っ込んだのだ。 スカートの布地を、彼女の手が持ち上げ、それが蠢いているのが見える。 「お尻……すっごく柔らかい……ほんとに女の子みたいだよ」とつり目 「……や、やめて」 言いながら変態くんは、白く細い太股をすりあわせる。 「……えー?マジ?あたしも触っちゃお」受け口もスカートの中に手を突っ込んだ。 「……ひっ……そんな……」 右のお尻の肉は受け口が、左はつり目が、それぞれ受け持っているらしい。 変態くんは二人がかりで、じっくりとねちっこくお尻の肉をこね回されていた。 彼の腰が、いつしか円を描くようにゆっくりと動いている。 気持ちいいのだろうか?というか、自分が今陥れられているシチュエーションに亢奮しているのだろうか。 わたしの見る限りでは、多分後者のほうだった。 「腰振ってるよ、こいつ」受け口がからかう。 「ほんとだ……超がつく変態だね、こいつ」とつり目。 「あらあ……あんた、ますます前、出っっぱってきてない?」美人さんがスカートの前を見て言う 「……ちょっと、なんかあたしの太股に当たるんですけど……?なんとかしてくんない?」 「……だ……だって……だってこんな」変態くんが目に涙を溜めて美人さんに許しを乞う。 「……だって、何よ。ほんとは気持ちいいんでしょ? 気持ちいいなら気持ちいいって、ちゃんと言いなさいよ。ちゃんと言ったらやめてあげる」 「……む……」変態くんが固く目を閉じて顔を背ける。なんともそそる仕草だった。 「………もっとしてほしいんじゃない?こいつ」とつり目。 「スカートの中、むれむれだよ」と受け口。 変態くんのこめかみから、一滴汗が彼の頬を伝った。 いったいあの汗はどんな味がするのだろう、とわたしはとんでもない事を考えていた。 「どうなの?もっとしてほしいから黙ってんの?……そうでしょ?気持ちいいんでしょ? ……やっぱそうなんだ……どうする?……これみんなに、言いふらしちゃおっかなあ……」 「そ、それだけは……」と変態くん。 「ケータイで、撮っとけば?」つり目が言う。「それでみんなに転送すんの。どう?」 「………そんなの、こ、……困ります」変態くんはかなりの動揺を見せた。 「……動画で撮っとくのもいいかもね」と受け口。 ああ、人間というものは残酷なことを考え出すと、いくらでも酷いことを思いつくものだ。 でも、変態くんはそんな彼女らの酷い企みを聞かされながら、 ますます亢ぶらされ、なまめかしくなっていくようだった。 凄い、ほんもののマゾなのだ、彼は。 ■最後まで行っとく? 「えっ………ちょっと………そんな」変態くんが声を上げる。 見ているわたしも、同じことを言いそうになった。 なんと美人さんが、変態くんのスカートの前から手を差し入れたのである。 ビクッと彼の肩が跳ねた。 どうもスカートの中で……変態くんはあれを握られてしまったようだ。 美人さんが不敵に笑う。恐らく彼女は処女ではないな、とわたしはどうでもいいことを思った。 「……えー……なんだかすっごいんですけど」美人さんが、彼女にしがみつくようにしている変態くんに言い放つ 「……あんた、マジ変態だね。こんなことされて、こんなふうにはならないよ、普通の人は」 「……あっ……やっ………」変態くんが美人さんの胸に顔を埋めた。 美人さんの手は、彼のスカートのなかでゆっくり……実にゆっくり、上下運動をはじめた。 「ほら、嬉しいでしょ?」また美人さんが変態くんの顎を掴んで顔を上げさせる「気持ちいいんでしょ? 変態ちゃん」 「……ねえねえ、どうなってんの?」つり目が美人さんに聞く。 「……すっごいよ。なんか上向いちゃってるもの。びんびんってやつ?」と美人さん。 「……あんた、ほんとにやらしいんだ……こーんな可愛い顔して、ほんっと変態なんだから」 美人さんの手はまるで楽器でも奏でているかのように、優美に動いた。 いや、優美なんて表現、全然こんな変態行為に相応しくないのであるが、 彼女のような美少女が公衆の面前でそのようなことをしているという、そのあまりに異常な情景が、 わたしの頭の中の現実感を希薄なものにしていた。 「……あっ………いっ………」顎を掴まれて顔を背けられない変態くんが、涙をいっぱい溜めた目で、 しきりに美人さんに許しを乞うているのが判った。 「あれ〜……?なんだか、パンツ濡れてきたんですけど」と美人さん 「どうしてくれんのよ。あんたが履いてんの、あたしのパンツだよ、それ。勝手に汚さないでくれる?」 「……ええっマジ?」と受け口。 「……こいつ濡らしてんだ……ねえねえ、何で濡らせてんの?」 「………ん………」変態くんは固く目を閉じた。切れ長の瞳の端から、ひとしずく涙がこぼれた。 「あたしにも触らせてよ」とつり目 「いいよ」美人さんが変態くんのスカートに手を入れたまま言う。 つり目は片手で変態くんのお尻を撫でながら、もう片方の手をスカートの前に差し入れた。 「……やっ………そんな………やめて………」変態くんはすっかり“可愛そうな少女”になりきっている…… 彼の顔に嫌悪感はまったく見られず、そのかわりに熱い陶酔と亢奮、期待が見えた。 「ほんとだあ……こんなに固くなって、なんか先が濡れてる」 「……いかしちゃいなよ」受け口は変態くんのブラウスのボタンを上から三つまで外し、 差し入れた手で乳首を責めているらしかった 「やっぱこいつ、おかしいよ。乳首もピンピンだもの。すけべ」 「……ねえ、あんた、いきたい?」美人さんが変態くんに聞く「……最後までいっとく?」 「……や………やだ……」変態くんが被りを振る……本心ではないだろうけども。 「……あたしのパンツの中で、思いっきり出したいんじゃないの? ?どうなの?」 「………そんな………あっ」受け口が変態くんの乳首をつねったらしい。 「……正直に言いなさいよ。いかせてほしいんでしょ?」と受け口。 「……」変態くんは答えず、とにかく被りを振った。 「……ああ、なんだ。もっと苛めてほしいんだ……そうでしょ?すぐいっちゃったら、つまないもんねえ……」と美人さん 「そうだなあ……どうしていじめてあげようかなあ」 息も絶え絶えの彼の様子を満足げに眺めてから、美人さんは何かを考えてるような素振りをした。 そして何かを思いつき、つり目の耳に何かを囁いた。 「えっ……それ、えげつないって」とつり目。 「……いいじゃん、やったげなよ」と美人さん。 「何?何?」好奇心に胸躍らせたようすの受け口が、美人さんに耳打ちをしてもらう。「……それ最高。じゃ、それ、あたしがやるよ」 「……じゃあオッパイのほうはわたしが」とつり目。 3人のフォーメンションが交代した。 これから何が始まるんだろう……?わたしはドキドキしながら、事の成り行きを見守った。 変態くんも、“これから何をされるんだろう”って感じで不安と恐怖を装いながらも、期待しているのがわかった。 まったく、とんでもない変態くんだ。可愛い顔してすけべえなんだから。 つり目が変態くんのブラウスに手を入れて、また乳首をいじりはじめたらしい。 美人さんは変態くんの顔を固定して、残ったほうの手はまだスカートの中に差し入れたまま。 受け口は変態くんの後ろに回って、何か異常に興奮した顔でごそごそやっている。 「………」変態くんは黙って目を閉じていた……まるで裁きを待つ罪人だった「……あっ!!そんな………そんなの……」 突然、変態くんが飛び上がった。激しく腰を揺すっている。 「こら、じっとしなさい。周りの人に迷惑でしょ」と受け口。 「……でも……そんな……あっ」また彼の肩がビクンと跳ねる「……やだ……」 変態くんは観念したのか、静かになった。 「ねえ、どうなってる?」美人さんが受け口に聞く。 「……なーんか、すぼまってるみたい。でも、ヒクヒクしてる」 「………や、やめて」変態くんはマゾモードで受け口を省みる「お願いだから……ああっ」 美人さんがだしぬけに、彼のスカートに入れた手を激しく動かしたのだ。 「ねえねえ」美人さんが手の動きをまた元のゆっくりペースに戻す「今のでどうなった?」 「なんかますますすぼまったみたい……でも、なんか熱くなってるよ」と受け口。 「……あんた、そういう趣味もあったんだ……どうしようもないね、ホント」とつり目。 つまるところ変態くんは、受け口にお尻の穴をいじられているようだった。 わたしはもう、彼女らに気づかれるんじゃないかという不安などすっかり無くしていた。 まるで馬鹿みたいな顔で、ポカンと口を開けて見ていたのだろうと思う。 同じ事の繰り返しに過ぎないつまらない日常だが、今日はどこかの歯車が狂っているらしい。通勤電車の中で、こんなものを見られるとは。 わたしはじっとり背中に汗をかいていた。そして変態くんと同じように、太股をすり合わせていた。 自分のパンツの中が熱くなっているのが判った。 わたしは彼を責める3人の少女の加虐心を共有しながらも、責められっぱなしの変態くんの被虐心も同時に共有していた。 「……あ……あ……んっ……」美人さんの二の腕にすがりつく変態くんの指が震えている。 「……どうしたの?まだいっちゃっていいなんて言ってないよ」と美人さんがまた彼の顔を上げさせる 「……ていうか、あんた、あたしのパンツ汚すつもり…?勘弁してよ。我慢しなさいよ」 そう言いながらも美人さんは少しだけ激しめに前に差し入れた手を動かした。 「……あっ……ダメ………ダメだ……よ……」変態くんが腰を引く。 「……何がダメなのよ。こんなにしちゃって」美人さんは変態くんの腰を引き寄せ、またゆっくりと手を動かし始めた「ねえ、そっちはどう?」 「なんだか……」受け口が言う「こっちも濡れてきたみたい」 「ええ?本当?お尻も濡れるんだ……」とつり目 「ねえあんた」美人さんが言う「……どうなってんの?あんた。どこでそんなの覚えたの?」 「………お……お願い……」変態くんはもはや、土俵際のようだった「……ゆ……許して」 「……指、入れたげなよ」 美人さんが受け口に命じた 「……えー……」受け口は少し嫌そうな顔をしたが、少し考えてから、スカートに差し入れていない左手の一差し指を舐めた 「……さあ、お尻突き出して」 「……だっ………ダメですよ……そんなの……ああっ……」身を固くする変態くん「……はあっ」 「エロい声出してんじゃねーよ、この変態」美人さんがまた彼の顔を引き寄せる「ほら、もう我慢できないでしょ?……ねえ、どうなってる?」 「なんか……すごく熱くなって、指に吸い付いてくるよ」と受け口。 「マジ?……すっげー……やっぱほんものの変態だよね、こいつ」 美人さんの手はスカートの中で激しく動いていた。もはや情け容赦はなかった。 「……あ……んっ……ダメ………もう……ダメ……だ……よ……」 「……指、曲げちゃってよ」美人さんが受け口に言う。 「こう?」受け口が、美人さんにか、変態くんにかわからないが、そう聞いた。 「……あはっ……」変態くんがますます悩ましげな声を上げる。 「もう限界でしょ?」美人さんは紅潮した顔を、キスでも迫っているかのように変態くんの顔に近づけていた「……ほら」 「……あああああっ」 変態くんが、つま先で立ち、一瞬伸び上がった……そして、ぐったりと美人さんの胸に顔を埋めた。 「あ、……はあ……」真っ赤になった顔で、荒い息を吐いている。 変態くんの太股を見ると……白い粘液がふたつ、筋を作っていた。 ■一言では説明できない。 やがて電車が駅に到着し、わたしとその4人組は一緒に降りた。 変態くんはぐったりしており、3人に抱きかかえられるようにしてホームに引きずり出された。 わたしはすぐには改札へ続く階段を上らずに、彼女らを見ていた。 3人の少女は変態くんをベンチに座らせた。 まるで死んだかのように、変態くんはピクリとも動かなかった。 「……あー最高」美人さんが言った。 「……あんた、最低だね」とつり目。 「……どうしようもない変態だわ、こいつ」受け口も彼に言い放つ。 “おまえらだって相当な変態じゃねーか”とわたしは思いながら、少し離れたところで彼女らの様子を盗み見ていた。 美人さんは、学生カバンからポケットティ シュをひとつ取り出すと、変態くんの膝にぽとりと落とした。変態くんは、呆然としていて、まったくの無反応だった。 「あ、パンツと制服、返さなくていいから」と美人さん。 3人はケラケラとぐったりした彼を嘲笑った。 「じゃね」 美人さんはそう言うと、取り巻きのつり目と受け口を引き連れ、彼を置き去りにして、改札へ続く階段に向かった。 わたしは黙って、彼女らの後ろ姿を見つめていた。変態くんはピクリとも動かない。 しばらく見ていたけれど……あまりにも動かないので本当に死んでいるのではないかと不安になった。 わたしは彼に近づき、声を掛けた。 「大丈夫?」 変態くんが、うつろな目でわたしを見上げた。 改めて見ると……なんときれいな顔をしていることか。 まだ男性ホルモンは、彼からその中性的な美しさを奪い取ってはいない。 目は透き通っていて、唇はきれいだった。 多分、1年もすれば、彼の目は透明度を失い、きめ細やかな肌もにきびに犯され、唇は黒ずんでいくのだろう。 そうなれば、こんなに呆けた顔も、ただの馬鹿面にしか見えないようになる。 しかし今、この瞬間の彼の顔には、痴呆的な美すら感じることができる。 人生のうちで最も美しい時期を、彼は生きているのだ。 たとえ、変態であっても。 変態くんはわたしから目をそらせると、美人さんから投げ渡されたティッシュを取り上げ、2、3枚抜き取ると、白い内股を拭き始めた。 濃厚な精液は、なかなか拭いとれない様子だった。まるで夢遊病者のように、変態くんはその動作に没頭している。 わたしを無視して、ある程度まで拭き取ると、彼はゆらりと立ち上がった。 身長は、わたしの肩くらいまでしかなかった。 彼はわたしに振り向きもせずに、ふらふらと階段へ向かって歩き始めた。 「ねえ」わたしは彼の背中に声を掛けた。 彼は足を止め、わたしに振り向いた。 「なんですか……」低い声で……確かに男の子の声で、彼が聞く。 「一体、なんであんなことしてたの?」 変態くんは、無表情にわたしの顔を見て何か言いかけたけど、それを止めた。 そして暫く考えた末に、ポツリと言った。 「……一言では説明できません」 わたしもそれ以上は聞かないことにした。 そのまま彼は、足をひきずるようにして、駅の階段を上っていった。 踝のあたりまで剥き出しになった、彼の白い脚が見えなくなるまで、わたしはホームに立ちつくしていた。 おかげで会社に遅刻するところだった。(了) 2005/5/25
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