硫黄島からの手紙
LETTERS FROM IWO JIMA
ワーナー・ブラザーズ
2006年アメリカ映画、141分
<ストーリー>
戦況が悪化の一途をたどる1944年6月、アメリカ留学の経験を持ち、西洋の軍事力も知り尽くしている陸軍中将の栗林忠道が、本土防衛の最後の砦ともいうべき硫黄島へ。指揮官に着任した彼は、長年の場当たり的な作戦を変更し、西郷ら部下に対する理不尽な体罰も戒めるなど、作戦の近代化に着手する。
<キャスト>
渡辺謙、二宮和也、伊原剛志、加瀬亮、中村獅童、裕木奈江
<スタッフ>
監督、製作:クリント・イーストウッド
製作:スティーブン・スピルバーグ
原案:ポール・ハギス
音楽:カイル・イーストウッド、マイケル・スティーブンス
<レビュー>
「硫黄島からの手紙」を観た。この映画は、「ミリオン・ダラー・ベイビー」でアカデミー賞監督賞を受賞したクリント・イーストウッドが監督・製作した「父親たちの星条旗」の姉妹作品である。「父親たちの星条旗」は第2次世界大戦下における硫黄島での激戦をアメリカ側の視点で描いた作品で、「硫黄島からの手紙」は日本の視点で描いたものになる。実際に、日本の豪華俳優陣が多数出演しており、全編日本語である。アメリカ人のイーストウッドが日本の視点をどう表現するかかとても興味深い作品である。
物語の主人公は、栗林忠道という実在の人物である。彼は他の軍人とは一線を画す人間で、見たところ誠実で冷静、そして知的な印象を受けた。また劇中では部下が体罰を食らっているのを止めに入り、限られた部下を粗末に扱わないようにと、その上官に指導したりもするという現実的な一面も持つ。栗林は戦争前にアメリカに留学しており、アメリカの戦力の凄さを理解していた。そのためこの硫黄島の戦いに日本は勝ち目がないということを悟りながらも、日本への忠誠心から戦いに挑んでいくことになる。栗林のほかにも、この映画の視点となる陸軍兵(これまた戦争に無益さをとても感じている若者)や日本に対する忠誠心から無茶な戦いを挑んでいく将軍など、バラエティに富んだキャラクターが出てきて、色んな面から硫黄島での戦いを見ることができる。
僕がこの映画で感じたことは、やはり戦争の悲惨さそのものである。ヒトとヒトが殺しあうというのがいかに狂気の沙汰かを、迫力の戦闘シーンでまざまざと見せつけてくれる。特に、日本兵が戦況悪化から手榴弾を使って絶命していくのは、ホントに衝撃的だ。しかし逆に考えると、陰気なシーンが続くので観ていてとても暗い気持ちになる。まあそれは戦争映画だから致し方ないが。
日米共に譲れない土地だったため、この硫黄島決戦は総力戦だったそうだ。1945年2月18日、米軍の上陸作戦から始まった戦いは、米軍約3万3000人、日本軍約2万2000人がつぎ込まれた。日本軍司令官の栗林中将が当初米軍が予定していた日数を1カ月以上も延ばし、36日間に及ぶ戦いとなった。結果、米軍は死者約6800人、負傷者約2万6000人という過去最高の損害を被った。また日本軍も死者約2万1000人を数え、ほぼ全滅に近い状態で戦闘を終えた。やはり戦史に残る死闘であったようだ。
ところでなにやらこの映画はゴールデン・グローブ賞外国語映画賞を取ったそうだ。凄いなぁ、というか一応ハリウッド製作だけど外国語映画になるらしい。しかも栗林を演じた渡辺謙や日本兵を演じた二宮和也にもアカデミー賞獲得の期待がかかる。果たして受賞はどうなることやら?とりあえずこの映画は各賞をにぎわせてるらしい。
とりあえず賞の話はおいといて、この映画は戦争に対してまっすぐに視線を充てており、戦争で亡くなった兵士達を真摯な態度で描いている。それはアメリカ兵に限らず日本兵に対しても、である。この人たちのおかげで今の日本、そして自分があるんだなぁ、と実感させられる映画だ。
<評価>
8点(満点10点)
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