いや〜、かなり面白い傑作です。黒沢清がマインドコントールによる殺人事件を描いた、サイコサスペンスです。全編的に雰囲気が陰気で暗いです。
この映画でよかったと思うところは、役所広司演じる刑事が萩原聖人演じるサイコパスの巧みなマインドコントロールによって、徐々に操られていく過程を丁寧に描いている事です。刑事やその他の加害者は、他へのちょっとした恨みやコンプレックスをそのマインドコントロールによって増幅させられ、なんともなしに殺人をするのです。刑事も実は精神異常の妻を重荷に思っており、それをサイコパスに知られて相手のペースに乗って心を揺さぶられてしまい、徐々に冷静さを失っていく・・・。観客は刑事の視点で観ていますが、僕はこのサイコパスに操られているという擬似感覚に陥ってしまいました・・・。まあその辺の心理描写がとても良くて、観ている観客の方も不安になってきます。あと時々流れる重低音も不安にさせる要因になってる。
でもこんな賢いサイコパスに操られたら、俺やったらすぐにやってまうわ。この映画で怖いのは、ほぼ無意識に人を殺してしまっているところだなぁ。サイコパスを保護した警官なんかなんのためらいもなく部下殺してるやん!「CURE」っていう題名は、結局治療して恨みや重荷を取り除くっていうことだけど、こんなやり方で取り除くのはどうかと思う。やはり重荷やコンプレックスをバランスよく持ち続けるのが人間やし、人を殺して無くすっていうのは単純にアカンことやろ。
役所広司や萩原聖人の演技がとても良かった!役所広司は焦燥感、苛立ち、疲れを見事に表現してたし、萩原聖人も独特の存在感でサイコパスを上手く演じている。
でも最後のファミレスのシーンで、刑事は完全に疲れが取れた表情をしてる。これはやっぱりサイコパスが死んで事件が一件落着したことと妻がこの世からいなくなったことが理由として考えられる。その証拠に最後らへんに首がX字に裂かれた妻の死体が写っている。しかも怖いことに、最後にウェイトレスに暗示をかけてるやん!(ウェイトレスはナイフを取ってこれからまた事件を起こす事を暗示してる。)とにかくこわいねぇ、この映画。まあ、でも面白かったです。