シリーズ「選食力up!」

無断転載禁止

シリーズ「選食力up!」は、旭化成ヘーベリアン倶楽部会員用Webサイトに連載したものです
選食力up! 1 連載期間:2009年 8月 〜 2010年 7月
選食力up! 2 連載期間:2010年10月 〜 2011年 9月

選食力up! 1

@ 野菜、果物
A 豆腐、納豆
B 牛肉、牛乳
C 成形肉、水増し肉
D ハム、加工肉
E 鮮魚、干物
F 調理用油
G お菓子
H 飲み物
I 調味料
J 外食
K 主食


@野菜、果物


日本の自給率が40%を割ったということをニュースなどでも度々聞くようになりました。しかしスーパーで実際に野菜を買うときに産地を見てみると、輸入農産物をそれほど多く目にしません。果物と日本ではほとんど栽培されていないアボカドのような作物を除いた、ナス、キュウリ、トマト、ジャガイモ、玉ネギ、ニンジン、長ネギ、大根、キャベツ、白菜、レタスといった一般的な野菜に限ってみると、その多くが国産品であることに気づくでしょう。お米もほぼ自給していますし、これで本当に自給率が40%を割ってるの?と感じてしまうほどです。実は輸入農産物のほとんどが加工食品と外食店で使われているために、スーパーなどでは目にすることが少ないのです。加工食品や外食店の自給率は数値以上に非常に低くなっていて、特に記載がない場合はほぼ輸入だと思ってよいくらいです。スーパーなどで素材を買って手作りするだけで、食卓の国内自給率はかなり上がるのです。

輸入農産物が全て危険ということは決してありませんが、基準値を超える残留農薬が検出されることもありますし、輸入量に対して抜き打ち検査を行う割合がとても少ないのも事実です。また、日本人は規格にとても厳しい国民で、規格にあわないものは輸入しません。そのため日本向け農産物は海外で普通に流通しているものに比べ、きれいで形や大きさが統一されていなければならないという制約があり、農薬の使用が多くなる一因にもなっているのです。さらに農薬を規制する法律は各国によって様々ですので、日本ではすでに使用禁止になっている農薬がまだ使用されている国もあることでしょう。

国産に比べ輸入農産物は輸送に時間がかかります。高級フルーツなどのごく一部は空輸されますが、ほとんどは長期間の船旅となってしまいます。時間がかかればカビ、虫食い、傷み、腐れなどが出やすくなるため、それらを防ぐためにポストハーベスト農薬というものが使用されることがよくあります。ポストハーベスト農薬は日本では禁止されている農薬で、輸入農産物に特有のものといえます。ポストハーベストの”ポスト”は” ××の後の”という意味で、”ポスト麻生”などという言い方と同じですね。”ハーベスト”は収穫という意味ですので、”ポストハーベスト”農薬とは収穫後に使われる農薬であることを意味します。日本では農薬としては使用禁止なので、輸入農産物に限り食品添加物扱いでその使用を認めている農薬なのです。通常の農薬は生育時に使われるため、雨が降ればある程度流れますし、食用としない部分を選んでかけられることもあります。日本ではほとんどの一般農薬に収穫前数日〜1週間程度の使用禁止期間が設けられています。しかしポストハーベスト農薬は収穫した後の作物そのものに直接かけられる農薬なのです。近年国産オレンジなどもずいぶん生産されるようになりましたが、当然のことながら季節以外には流通していません。通年同じ果物を求めるのはやめて、季節にはその季節の国産果物を食べたいものですね。

日本の野菜にはそれぞれ“旬”があります。旬には害虫や病気が出にくいため、農薬の使用が少なく、残留も少なくなります。ハウスなどで加温する必要もないため、省エネでもあります。そして旬の野菜は栄養価も高く、甘みも香りも強いのです。もちろん価格も安く流通量も多くなります。また夏野菜には体を冷やす効果があったり、冬野菜には体を温める効果があったりもします。様々な面から見て旬の野菜はよい事ばかりなのです。しかし現在はなんでも年中流通しているので旬を知らない人が増えていますね。旬を学ぶことは食の安全を考える上でもとても大切なことなのです。そしてなるべく近隣でとれた野菜を食べるようにしましょう。鮮度がよいことはもちろんですが、輸送時の環境負荷(フードマイレージ)を減らすこともできますね。

【今月の選食力Upポイント】
・なるべく国産の野菜を買って手作りしよう。
・旬を学んで、旬の野菜を選ぼう。
・なるべく地元の野菜を食べよう。
・果物はその季節毎の国産品を選ぼう。

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A豆腐、納豆

豆腐や納豆は良質なたんぱく質を多く含み、ミネラルや食物繊維も摂取できる優れた食品です。豆腐は豆乳を凝固剤で固めたものですが、製造工程で泡が出やすく、作業効率を上げるために消泡剤(グリセリン脂肪酸エステルなど)という添加物を使用することがあります。消泡剤は使用される物質によっては加工助剤という規定で表示されない場合もありますが、表示されている場合には避け、消泡剤不使用と明記しているものならさらに安心です。凝固剤としては主ににがり類(にがり、塩化マグネシウム含有物など)が使われていますが、海水から作られた天然のにがりも食品添加物のひとつになります。また、にがり類のかわりに化学合成品のグルコノデルタラクトンが使われることがあります。この物質は分解されてできるラクトン類に発ガン性の疑いがあり不安が残ります。グルコノデルタラクトンを使うと大豆が薄い豆乳でも固めることができるので、味も栄養価も低い豆腐となってしまいます。しかし凝固剤は”一括名表記”が許可されていて、物質名が併記されずに凝固剤とだけ書かれる場合もあり、こうなるとどの物質が使用されたかわかりません。凝固剤の物質名が併記されているもののなかから、にがり類を使用しているものを選びましょう。ちなみに一括名表記が許可されている食品添加物は、イーストフード、乳化剤、酸味料、苦味料、PH調整剤、膨張剤、かんすい、化学調味料、ガムベース、軟化剤、凝固剤、光沢剤、酵素、香料で、各々数種類〜数百種類の物質を一括名で表記することができます。

納豆は大豆を蒸して菌をまぶし、容器に入れて保温するだけでできるため、納豆自体はほぼ全てが無添加の優良な食品です。しかし付属するタレやからしには化学調味料や増粘剤などの食品添加物が使われていることが多いことは覚えておきましょう。これらに強い毒性はありませんが、化学調味料を使用していない商品もありますし、昔ながらに鰹節と醤油で食べるのもよいでしょう。薬味や鰹節を加えると風味だけでなく栄養価も高くなります。キムチや刻んだ漬物などを混ぜてみるのも面白いものです。

豆腐、納豆、味噌、醤油の原料となる大豆は、日本人にとって大変重要なものですが、国内自給率は5%しかなく、ほとんどを海外から輸入しています。最大の輸入国であるアメリカでは、大豆の作付面積のうち9割が遺伝子組み換え品種となっています。日本国内では遺伝子組み換え大豆の商用栽培は今のところ行われていないので、国産大豆なら非組み換え大豆となります。ほぼ輸入なので国産と明記されない場合は輸入大豆といってもよいでしょう。さらに「遺伝子組み換えでない」と明記されない場合は遺伝子組み換え大豆が混入している可能性が高いといえます。遺伝子組み換え作物の有害性や無害性についての専門家の意見は様々で、消費者としても判断に苦しむところです。自然には絶対存在し得ない植物なので、他の生き物や環境へ与える悪影響を懸念する専門家もいます。もし人体への影響がないとしても、このまま広がってよいものか考えさせられてしまいますね。輸入大豆にはポストハーベスト農薬(※@野菜、果物を参照)の心配もあります。

私たちが国産大豆を使用した食品を選んで買うようになると、国産大豆の需要が増えます。すると需要と供給の関係で価格は上がってしまい、その後で作付け量が増えていくことになるのです。そして収穫の時期になり供給量が増え、やっと需給バランスが取れて価格が安定してくるのです。他の作物にもついても言えることですが、国内生産者を応援して自給率を上げていくためには、たとえ少し価格が上がっても食べ続けていく時間が必要なのです。安全性だけでなく、国産大豆は輸入大豆に比べ糖分含有量が多く、甘みがあって美味しいということも消費者にとってのメリットですね。


【今月の選食力Upポイント】
・豆腐は消泡剤不使用を確認しよう。
・豆腐の凝固剤は”にがり”や”塩化マグネシウム”と明記されているものを選ぼう。
・国産大豆を使用した食品を食べて国内生産者を応援しよう。

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B牛肉、牛乳

BSE(牛海綿状脳症、通称は狂牛病)の発生以降、国産牛肉の人気が高まっていますが、そろそろ喉もと過ぎれば・・・という感じになっていませんか。脳や髄などの特定危険部位を食用とする習慣がない日本人にとっては、ヒトが感染する可能性は大変低いものでしたが、BSEの発生は日本政府や酪農家が飼料やトレーサビリティーについて問い直すきっかけになりました。そして日本ではすべての牛に個別認識タグがつけられ、何か問題が発生すれば生産から消費までを一頭毎に確認できるシステムが確立されたのです。BSEが広まった原因やメカニズムはまだ不明な部分が多いのですが、飼料に牛由来の肉骨粉を使用していたことが感染拡大の大きな要因といわれています。本来草を食べて育つ牛に、穀類や肉骨粉を含むハイカロリーな濃厚飼料を与えることで、早く成長させることができ、生産コストを抑えられるのです。普通に考えても草食動物に動物性のものを食べさせること自体、不自然なことに思えてなりませんね。現在日本では全ての家畜の飼料に牛由来の肉骨粉の使用が禁止されていますし、輸入することも禁止されています。
日本ではBSEの発生当初、消費者が安心できるように全頭検査が実施されました。しかしアメリカはこれを断固拒否したため、日本の消費者の不信を招きました。すでにアメリカ産牛肉の輸入は再開されていますが、ごく最近も禁止されている特定危険部位が混入する事件が発生していて、アメリカ産牛肉の生産管理やトレーサビリティーに不安が残ります。輸入牛肉の中ではトレーサビリティーが確保されているオーストラリア産牛肉や、牧草中心で肥育しているニュージーランド産牛肉のほうが安心感がありますね。

「牛乳は国産だ♪」というテレビCMを覚えている方も多いと思います。スーパーなどで牛乳として販売されているものは全てが国産です。自給率でみると牛乳は、お米や鶏卵と並ぶ超優秀な食品のひとつなのです。とはいえチーズ、粉乳、バターなどの乳加工品については、かなりの量が輸入されていることは覚えておきましょう。さて牛乳はメス牛から搾ります。哺乳動物ですからメス牛に妊娠や出産をさせないと乳を搾れません。そして生まれる子牛の半分はオス牛です。オス牛は肉牛農家で肥育され、牛肉として出荷されます。牛乳農家にとってこのオス牛も重要な収入源になっているのです。現在の牛乳の小売価格は安すぎるため、農家が出荷する乳価もとても低く、牛乳生産だけでは成り立たない状況です。そんな中で国産の牛肉が売れなくなると、牛乳農家のオス牛も売れなくなり、牛乳の生産にまで影響が出てくるのです。現在なんとか自給している、国産の新鮮な牛乳を飲み続けるためには、国産の牛肉も食べなければなりません。「新鮮な牛乳は飲みたいけれど、牛肉は安い外国産だけを食べる」というわけにはいかないのです。もし国産の生乳が足りなくなれば輸入するしかなくなります。ところが生乳を新鮮なまま輸入することはほぼ不可能なため、140度前後で超高温滅菌処理したLL(ロングライフ)牛乳、あるいは脱脂粉乳とバターを混ぜて牛乳に戻した加工乳、といった形での輸入になってしまうことでしょう。LL牛乳や加工乳は良質なホエータンパクや可溶性カルシウムが熱変性してしまいます。そして風味も大きく損なわれてしまうのです。遠くない将来「昔の牛乳は美味しかったな〜」なんてことにならないようにしたいものですね。現在売られている牛乳でも、同様の理由で殺菌方法が120〜130度2秒の“超高温殺菌”より、72度15秒の”パスチャライズド”や、63度30分の”低温殺菌”の方が、良質な栄養素が摂取でき、風味も優れているのです。牛乳は新鮮な生乳から必要最低限の殺菌処理で製造するのが一番良いのです。

日本ではホルスタインなどの乳用種と、黒毛和牛などの肉用種が生産されています。一般的には乳用種と、肉用種と乳用種の交配種の牛肉を「国産牛」、肉用種の牛肉を「和牛」と表示して販売されています。現在は牛乳農家でも肉用として出荷するオス牛の食味がよくなるよう、交配種を飼育することが多くなり、国産の牛肉のうち約半分を占めるようになりました。国産の中では比較的安価で食味も良い交配種はお得ですね。霜降り系の高級ブランド牛肉もよいですが、リーズナブルな赤身系の方がヘルシーでおすすめです。


【今月の選食力Upポイント】
・少し高くても安心で安全な日本の牛肉を食べよう。
・霜降り系より赤身系を選んでヘルシーに。
・牛乳は殺菌方法が72度15秒の”パスチャライズド”か、63度30分の”低温殺菌”と表示のあるものを選ぼう。

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C成型肉(結着肉)、水増し肉

皆さんは”成型肉”という言葉を聞いたことがありますか。O-157が発生したステーキ店の事件で初めて聞いた人も多いことでしょう。成型肉(または結着肉)はスーパーなどで精肉として販売することはできません。しかし加工食品としてなら販売することができます。一番よく見かけるのはサイコロステーキなどの商品名で売られているものです。商品には成型肉であることが必ず明記されますが、外食店では一切の表示義務がないのです。自主的に表示している店でも「やわらかビーフ」「カットビーフ」「霜降り加工」などと表記されている店もあります。わかりやすく「成型肉」という表記で統一してほしいものですね。

成型肉は大きく3つの種類に分類できます。ひとつめは固い部位の肉と牛脂を細かく切って結着成型したものです。一般的にはバラ肉、スネ肉、くず肉といった固い部位と牛脂を細かくカットし、カゼインNaやリン酸塩といった”結着剤”という食品添加物でくっつけてからカットします。外食店用や加工食品用としてサイコロ型、ステーキ型、とんカツ型など、いろいろな形に成型して使われています。同時に酵素添加剤で柔らかくすることもあります。これらは塊肉から切り出しただけの一般的な精肉とは食感が違うので、気をつけて食べると判別ができます。

ふたつめは固い部位や形が一定でない肉を酵素添加剤で柔らかくし、結着成型したものです。モモ肉、カルビ、タン、横隔膜(ハラミ)などをある程度の塊に切り分け、酵素添加剤と結着剤をまぶして、ステーキや焼き肉に適した型に入れて圧着してから、改めて切り出します。こうすることで金太郎飴のようにどこを切っても一定の形になるのです。食感はヒレ肉のような柔らかさにも自在に調整できます。また牛タンは先が細く根元が太いものですが、細い方を折り曲げてくっつけることで、やはり一定の大きさでカットできます。カルビも同様の理由で結着させることがあります。これらの成型肉を食べて判別することは難しいでしょう。韓国では肉に骨をくっつけた、”なんちゃって骨付きカルビ”を売っていた業者が、消費者を欺いたとして問題になったこともあります。

もうひとつは人工霜降りや水増しをするインジェクションという技術です。霜降り加工は安価な赤身の肉にインジェクターと呼ばれる、注射針がたくさん並んだ機械で牛脂を注入し、人工的にサシを作るものです。またインジェクターを使って肉や魚を増量することもあります。一般的には水、植物タンパク、結着剤、調味料などを注入して水増し状態にするのです。こうすることでコストダウンができるのと同時に、肉汁たっぷりのジューシーさを演出することができ、調味液に漬け込む時間も節約できるのです。特にパサつきやすい鶏ムネ肉のような部位でもジューシーにふっくら仕上げることができます。鶏の唐揚げなどを店頭で保温ケースに並べて販売する場合など、時間とともに水分が抜けてパサパサになってしまうのを防ぐこともできます。これらも食べて判別することはかなり難しいでしょう。

成型肉は、メーカーにとってはコストダウンでき一定の形の肉が得られるなどのメリットがありますが、成型肉特有の問題もあるのです。結着剤として使われるリン酸類は、骨を弱くしミネラルの吸収を阻害する性質があり、特に子供や女性は接種量を少なくしたい添加物です。また、たとえば牛肉ステーキの場合、塊肉から直接切り分けられた肉ならば、表面は空気中の雑菌に触れても、中は雑菌に触れていないため、レアやミディアムレアなどの焼き具合でも食べられます。しかし成型肉の場合、一旦空気中の雑菌にさらされた部分が内側にも存在することになってしまうため、中心部までしっかり火を通さないと食中毒を起こす危険性があるのです。成型肉には添加物の心配もありますが、一番の問題点は加熱に注意が必要だということなのです。特に客が焼きながら食べる店では要注意です。成型していることを表示し、よく焼くように注意書きがある良心的な焼き肉店もあります。スーパーで売られているサイコロステーキには必ずしっかり焼くよう注意書きがあります。商品名は”ステーキ”ですが、消費者が勝手にレアやミディアムレアなど、好みの焼き加減で食べてしまうことは厳禁なのです。

【今月の選食力Upポイント】
・レアやミディアムレアの焼き加減は、成型肉でないことが確認できる店だけにしよう。
・メニューに成型肉、霜降り加工、やわらかビーフ、カットビーフなどの表示があるものは中までしっかり加熱してもらおう。
・客が自分で焼いて食べる店では、焼き方に注意しよう。
・スーパーで売られている成型肉には必ず表示があるのでしっかり確認しよう。


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Dハム、加工肉

ハム、ベーコン、ソーセージなどの加工肉は、冷蔵庫などが無い時代から作られてきました。むしろ冷蔵保管や冷蔵輸送ができないからこそ生まれた保存食品で、塩蔵、乾燥、薫製という工程で、保存期間を長くした優れた保存食品なのです。そのため塩分を濃くし乾燥や薫製も強くする必要がありました。しかし冷蔵技術の発達と普及とともに、徐々に食味を優先するようになり、塩分は少なくなり、乾燥も弱めでジューシーな製造方法になってきたのです。いまでは塩分や糖分を控える消費者の傾向にメーカーがこたえる形で、梅干しやジャムのような保存食品までもが、要冷蔵になったり保存料が必要な食品になりつつあるのです。

現在売られているハムなどの原材料表示を見てみると、発色剤(亜硝酸Na)、リン酸塩、増粘剤、着色料、調味料(アミノ酸等)、くん液などの食品添加物が並んでいます。中でも発色剤(亜硝酸Na)は毒劇物に指定されていて、食品添加物の中でも毒性が強い物質です。そのため食品への使用量には制限が設けられています。発色剤には、食品中のアミノ酸類と結合したり、保存料ソルビン酸と反応して、いくつかの強い発がん性物質を生むという性質もあり、できるだけ避けたい添加物のひとつといえます。皆さんはもしハムに青酸カリやヒ素のような、知っている毒物が入っていたら、それがたとえ健康に一切影響を与えない量だとしても食べたくはないでしょう。少なくとも毒物が入っていないハムがあるならそちらを選ぶのではないでしょうか。発色剤も毒劇物なのに、気にせず食べてしまうのが不思議に思えてきますね。

発色剤を使わない加工肉類は、品名欄に”無塩せき”という表示がされますので、ぜひ覚えておきましょう。いくら”ドイツ伝統製法”の超高級手作りハムでも、発色剤が使用されているものがほとんどなのです。発色剤は保存の目的にも必須だという人もいますが、現在の日本の冷蔵設備や衛生管理の向上を考えると、少なくとも発色剤で保存性を高める必要はありません。その証拠に発色剤を使わない無塩せきハムも、他のハムと同様に売り場に並んでいますし、生協や自然食料品店でも通常のハムと同様に売られていて大きな問題はありません。このことから少なくとも現在の日本では、保存目的ではなく発色が目的で使われていると考えるべきでしょう。仮にもし体への影響が100%ないとしても、見た目をよくするためだけに、意図的に毒劇物を食品に入れる必要はないのではないでしょうか。

安いハム類には、インジェクター(成型肉の項参照)を使って増量されたものを多くみかけます。大豆タンパク、結着剤などの添加物、調味液などを注入して肉の重量を増量してコストダウンするのです。増量自体には安全性について大きな問題はありません。発色剤で発色するのは、肉の血の中の赤い成分と反応して加熱した後にも生肉の時の赤みが残るからです。しかし大豆タンパクには血の成分はないので、増量すると着色料を使用しなくてはならなくなります。よく使われる着色料はコチニールで、サボテンにつく寄生虫です。虫なので天然系の着色料なのですね。ラックやカルミンと書かれてもほぼ同様の虫ですので覚えておきましょう。強い毒性はありませんが、現物を見てしまうと、だれでも食べたくないと思うでしょう。増量すると肉の旨味も少なくなるため、調味料(アミノ酸等)などで旨味も補填しなければなりません。さらにコストダウンするために”くん液”が使われることもあります。これは薫製しなくても薫製の香りをつける添加物です。ハムは薫製するからこそハムなのです。薫製していなければ焼き豚か茹で豚ですよね。

私が子供のころは、ウインナーといえば真っ赤なものでしたが、今では自然な色合いのウインナーがすっかり主流になりました。これはメーカーが自主的にそうしてきたのではなく、だんだん売れなくなってきたからなのです。消費者の意識が変われば、メーカーが作るものも必ず変わるのです。肉を加熱すれば赤さは失われるのに、なぜハムは赤みのあるものという先入観を持っているのでしょうか。同様にタラコや紅しょうがは真っ赤なもの、などという消費者の先入観をそろそろ変えてみませんか。近年は自然な色合いの無塩せきの加工肉製品も徐々に増えてきています。一般的な中級ハムよりはやや高価ですが、高級ハムに比べればずっとリーズナブルな価格で手に入ります。大手スーパーや生協などで探せば必ず見つかりますよ。


【今月の選食力Upポイント】
・加工肉は”無塩せき”という表示のある商品を探してみよう。
・国産豚肉使用なら、より安心です。
・コチニールなどの着色料を使っていないものを選ぼう。


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E鮮魚、干物、タラコ

鮮魚の場合、輸入品には原産国名が、国産の場合には産地(県、海域など)が表示されています。干物、漬物、鰻の蒲焼など、20の加工食品群と一部の指定食品については原料原産地表示も始まっています。以前は輸入鰻を使って国内加工されたものは国産の鰻の蒲焼となり、原料の産地を表示する義務はありませんでしたが、この規定により原料の原産地も併記されることになりました。さて魚は世界中の様々な海域で様々な国の船が漁獲し、様々な国に水揚げされ原産国となります。海は世界中つながっていますし、広い海域を回遊する魚も多いため、天然魚について原産国表示を気にしてもしょうがないのかもしれません。一方で衛生管理、保管技術、流通技術には違いがあり、とりわけ寿司や刺し身を代表とする、古くから魚を生で食べる習慣がある日本の技術力はとても高いものです。魚を生食する文化のない国や、発展途上国に比べて、日本船の信頼度は高いといえるでしょう。ダイオキシンや水銀などの汚染は沿岸部ほど高くなるため、外洋で漁獲された魚のほうが汚染度は少なくなります。また養殖魚の場合、生簀は沿岸部や陸上にあって、ストレスからくる病気や、寄生虫の発生を防ぐために抗生物質や抗菌剤などが投与されることも多いのです。全身トロのマグロや、全身トロのサーモンは高カロリー給餌による養殖ならではのものです。魚は冷凍→解凍することで味が落ちてしまいます。日本漁船から水揚げされ、氷漬けで流通される天然魚は食味もすぐれているのです。

生息する海域に関係なく、汚染物質がたまりやすい魚と、そうでもない魚がいます。これは食物連鎖によって”生体濃縮”という現象がおこるからです。生体濃縮とは、汚染物質を吸収しているプランクトンを食べている小魚、その小魚を食べている中型の魚、その中型の魚を食べている大型の魚、というように食物連鎖を経るたびに、体内で汚染物質がどんどん濃縮されていくことを言います。さらに食用とするまでの生育期間が長いほど、有害物質が濃縮されます。しかし一概に大きい魚の汚染濃度が高いとも言えません。大型の魚でもプランクトンだけを餌にしている魚もいて、必ずしも食物連鎖の上位にいるとは限らないからです。しかしサンマ、アジ、イワシといった小型の魚は、そのほとんどが食物連鎖の下位にいるため、有害物質が生体濃縮されている度合いは低くなると考えられます。

鮮魚に比べ煮干しなどは鮮度の判断がつきにくいものです。煮干し類のような小さな干し魚の場合は、背中側に反ったものや、腹が割れたようなものは鮮度が低い原料を加工したものです。逆に鮮度が良い原料を使ったものは、お腹側に曲がっていて、腹が割れていません。またアジの開きのような干物には酸化防止剤が使用されることがありますが、バラ売りになると表示はされません。酸化防止剤の中には安全性に不安のあるBHAという物質もあるのです。酸化防止剤を使うと血合いの色が鮮やかな色になります。血合いがくすんだ色をしていれば酸化防止剤は使われていません。

加工された輸入の冷凍むきえびや冷凍ロールイカなどにはリン酸塩類が使用されることがあり、これらは表示されないこともあります。リン酸塩類はプリプリ感や退色防止のために使用されますが、カルシウムなどのミネラル類の吸収を阻害してしまう、骨を弱くする添加物なのです。特に子供や女性は接種量を少なくしたい添加物と言えるでしょう。エビは殻付きのものか、素性がはっきりしているものを選びたいものです。またタラコや明太子は合成着色料や発色剤(亜硝酸Na)を使わないものの流通量が少なく、残念ながら選択肢が少ない加工食品です。合成着色料と発色剤(亜硝酸Na)は、どちらも発がん性などに不安がある添加物です。さらに発色剤はタラコの中のアミノ酸と結合してニトロソアミンという強い発がん物質も生み出します。そして無着色タラコにもほぼ発色剤が使われているのです。どちらも使わないものは、一般スーパーにはなかなか出回らず、一部の生協、ネット通販、自然食品店などで流通しているだけです。もしタラコを頻繁に食べるのなら、ぜひ探してみましょう。


【今月の選食力Upポイント】
・鮮度の良い日本産の鮮魚を選ぼう。
・大型の魚より、アジ、サンマ、イワシなどの小型の外洋魚を食べよう。
・できる限り“養殖”より“天然”を選ぼう。
・なるべく“解凍”より“生”を選ぼう。
・煮干しは背中側に反ったり、腹が裂けたものは避けよう。
・開き類は血合いがくすんだ色のものを選ぼう。
・タラコは、発色剤を使っていないもので、さらに着色料も使わないのがベストです。


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F調理用油

調理用油の原料である大豆、菜種(キャノーラなど)、コーン、綿実は、いずれも遺伝子組み換え品種が開発され、作付量の大多数を占めるほどになっていますが、調理用油に遺伝子組み換え表示の義務はなく、購入時に組み換え作物を使用しているかどうかを判別することはできません。遺伝子組み換え品種が存在しない、ごま、オリーブ、紅花を含め、油脂原料のほとんどが輸入となっています。一番多く使われている大豆は、圧搾だけでは油分を絞りきることができないため、ノルマルヘキサンという有機溶剤で油を溶かし、その後加熱して溶剤を除去しています。この溶剤抽出法では99.9%の油分を抽出できるのです。絞りカスは脱脂加工大豆として醤油の原料に使われたり、大豆たんぱくとしてハムなどの増量剤にもなります。ノルマルヘキサンは聞きなれない物質ですがベンジンの主成分といえばわかりやすいでしょう。ノルマルヘキサンには強い神経毒性がありますが、製造工程で除去されるため、食品添加物の加工助剤という扱いで表示が免除になります。ノルマルヘキサンは有害な物質なので食品に残留してはいけません。消費者としてはごくわずかな残留がないか心配になりますが、溶剤抽出をしていない油であればそんな心配も一切ありませんね。菜種は溶剤抽出した製品もありますが”一番絞り”という表示がある商品は圧搾法だけで作られたものです。さらに精製時に薬品を使わない“湯洗い”という精製法の商品ならばなお安心です。ごま油やオリーブオイルは油脂含有率が高いため圧搾法でしか作られておらず、薬品を使った精製処理もされていないのでとても安心です。

ごま油にはセサミン(セサモール)という、とても強力な天然の抗酸化物質が含まれています。その効力は食品用の酸化防止剤としても使用されるほどです。この抗酸化作用が体内の酸化を防いでくれるため、老化防止効果も期待できるとても健康によい油なのです。ごま油とオリーブオイルは、酸化しにくく体に良いとされるオレイン酸などの多価不飽和脂肪酸を多く含んでいます。紅花に多く含まれるリノール酸は一価不飽和脂肪酸で、体には良いのですが酸化しやすいのが難点です。ごま油は炒ってから絞るのもので、一般的なごま油は少量でも強い香りがつくよう、強く炒ってから絞っています。これでは香りづけ用としてごく少量しか使えません。強く炒っていないナッツのような優しい香りのものを探して、メインの油として使いたいものです。炒り方が弱い製品は色も薄いのが特徴です。昔ながらの玉絞め一番絞りのものが最上級品です。香りを全く必要としないのなら、ほとんど炒らずに絞る太白と呼ばれる透明なごま油もあります。オリーブオイルは“エキストラバージン”と表示される良質な商品の中から自分好みの味のオリーブオイルを探してみましょう。

近年は添加物(乳化剤や消泡剤など)入りの油や化学合成油も数多く販売されるようになりました。これらの多くは “体脂肪になりにくい” “泡が出ない”“サラサラ感がある”などの付加価値をつけた商品です。どうせなら添加物を使用していない油を選びたいものです。特に化学合成油のジアシルグリセロールは、それ自体が食品添加物として使用されてきたものです。最近ではグリシドールという発がん物質を生成してしまう、グリシドール脂肪酸エステルという物質が、食用油の中で最も含有率が高いパーム油の100倍もの高濃度で含まれていることがわかり、販売自粛となった商品もあります。このような商品の中にはただ油を切り替えるだけで痩せそうなイメージ宣伝の商品もあります。普通の油なら少し量を控えるところを、特別な油だからと通常量で使っていたのでは、イメージ通りの効果は望めそうもありませんね。外食や加工食品を少なくし、野菜や海草をたっぷり摂り、間食をやめ、腹八分目を心がけることで健康は維持できます。不要な添加物を使用していない良質な油から、良質な栄養素を得ることがとても重要なのです。たとえ良質な油でも高カロリーな食品には変わりありません。使う量は少し控えめを心がけましょう。


【今月の選食力Upポイント】
・ごま油とオリーブオイルをもっと活用しよう。
・オリーブオイルはエキストラバージンを選ぼう。
・菜種油は一番絞り非遺伝子組み換えを選ぼう。
・乳化剤や消泡剤など、食品添加物が入った油は避けよう。
・化学合成油(ジアシルグリセロール)は避けよう。


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Gお菓子

日本の大手菓子メーカーが現在販売している子供向けの菓子類には、合成着色料や合成保存料などの毒性の強い添加物はほとんど使われていません。天然系の添加物なら安全ということではありませんが、少なくとも子供向けの商品だけでもこのような状況になってきたことは喜ばしいことです。特定アレルゲン表示(7つが義務)も始まりました。遺伝子組み換え原料を使用しないお菓子も多く見かけます。このように見ていくと子供向けのお菓子は、確かに安全性がアップしていると言えるでしょう。しかし子供は日本の大手菓子メーカーの子供向け商品だけを食べるわけではありません。大人向けの豆菓子、ミックスおかき、いか燻製のような商品には、依然として合成着色料、合成保存料、漂白剤などが一般的に使用されていて、ひと昔前から状況は変わっていません。また輸入菓子や駄菓子などには、まだまだ心配のある商品も多くありますので、原材料表示をよく確かめて買うようにしましょう。

チョコレートを作るには乳化剤と香料が必須です。乳化剤の中で安心なのは大豆レシチンですが、一括表記が許可されているので、ただ“乳化剤”とだけ表示されている商品もあり、どんな乳化剤がいくつ使用されたか知ることはできません。チョコレートの油脂分はカカオバターです。国際規格ではカカオバター以外の植物油脂を5%以上使うと、もうチョコレートとしては認められません。しかし日本ではそのような商品でもチョコレートとして販売されています。乳化剤に大豆レシチンを使っている、植物油脂を使用していないチョコレートを選びましょう。“クーベルチュール”は国際規格で最高品質のチョコレートに表示されるものです。“準チョコレート”は日本の規格で下位品質を示すものです。このような視点で選べばチョコレート類もそれほど心配なさそうなのですが、チョコレート部分以外には注意が必要なのです。色とりどりのコーティングや、生チョコ風の低価格商品などには様々な添加物が使われているのです。チョコレートはシンプルなものを選ぶのがよいでしょう。
菓子類の中で比較的安全性が高いのは、せんべい、クッキー・ビスケット、飴です。これらの菓子類に使用されている添加物は、せいぜい化学調味料、膨張剤、香料、甘味料といった程度だからです。ただしクリームサンドやチーズサンドなどの製品には骨を弱くするリン酸塩や、乳化剤といった添加物が使われることも多く、やはりシンプルな商品を選ぶことがポイントになります。

ケーキや和菓子などのうち、生菓子なのに全国流通するような商品は、保存性を高めたり餅類の柔らかさを保つ目的で、どうしても添加物が増えてしまいます。なるべく個人商店で製造されている生菓子を選ぶようにしましょう。個人商店で製造される生菓子でも、鮮やかな色の商品には合成着色料が使用されていることが多いため、フルーツ、抹茶、チョコレートなどの自然な色を生かしたものを選びたいものです。スポンジ類では、よりフワフワ食感を出すために乳化剤が使用されることがあります。使用されるのはショ糖脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステルなどで、実はこれらは洗剤の主成分なのです。実際にショ糖脂肪酸エステルが主成分の工場用洗剤も販売されています。洗剤なので泡がたつため“気泡剤”ともいわれます。スポンジ類の気泡力は卵の中の卵レシチンという天然の乳化成分ですが、気泡剤を使うと卵が少なくてもフワフワに膨らむのでコストダウンができるのです。

ガムなどに使われるキシリトールは、虫歯予防に効果があるというイメージがありますが、キシリトールに虫歯を予防する効果はありません。単に虫歯の原因を作らない甘味料なのです。ガムは主原料がガムベースという添加物です。これは石油から作られる合成ゴムが主成分で、やや心配もある物質なのです。これに糖類、甘味料、酸味料、香料といった添加物で味をつければガムの完成です。砂糖などを使わずに甘味料だけで甘味をつけたガムは添加物100%の食品となります。また甘味料として頻繁に使用されるソルビトール、トレハロース、キシリトールなどの糖アルコール類は、たくさん食べると腸障害を起こすものが多いのです。


【今月の選食力Upポイント】
・どんなお菓子でもシンプルなものを選びましょう。
・せんべい、クッキー・ビスケット、飴は比較的安全なお菓子です。
・駄菓子や輸入菓子は原材料表示をよく確認しましょう。
・手造りの生菓子でも色鮮やかなものは注意が必要です。

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H飲み物

一般的なジュース類は糖分の塊です。果汁の含有率にかかわらず糖度が10前後あるものがほとんどで、大雑把に言うと500mlのペットボトル一本で50gの糖が含まれていることになります。試しに砂糖50gを計ってみてください、誰もがその量に驚くことでしょう。実際にジュース類に使われている糖分の多くは、砂糖ではなく果糖ブドウ糖液糖などのブドウ糖の仲間です。ブドウ糖は砂糖に比べとてもあっさりしているので、糖度10でもべったりせず美味しく感じてしまうのです。大量の糖分を摂取すると血糖値は急激に上がり、摂取が終わると今度は反動で平常値以下にまで下がり、その後平常値に戻ります。この時の血糖値の落差が大きいほど精神不安定を起こし、キレる子供の原因のひとつともいわれています。血糖値が上がると攻撃的に、逆に低くなると鬱になりやすいのです。子供の精神への影響を考えると、糖分の取りすぎは要注意といえるでしょう。血糖値を一定に保つためには食物繊維が有効です。食事のときに食物繊維の多い食品を一緒に食べると効果的です。ご飯やパンも精白度が低いものほど血糖値は上がりにくくなります。果汁率の高いジュースも糖度は高いのですが、果物類の甘味成分である“果糖”は血糖値を上げにくい糖分なのです。しかも果汁率の高いジュースには食物繊維やビタミン類が含まれていて体に良いですね。ジュースは果汁70%以上を目安に選びましょう。国産ストレート果汁なら安全性も食味も優れています。

最近はカロリーオフやシュガーレス製品が多く出回っています。このような製品の多くは、食品添加物の甘味料で甘味を添加しています。キシリトール、ソルビトール、トレハロースなど多くの甘味料は腸に障害を起こすことがあり、特に小さな子供が大量に飲むことは避けたいものです。また合成甘味料(アスパルテーム、サッカリンなど)には、一部の専門家が脳腫瘍との因果関係を指摘している物質もあるため、どうせなら合成甘味料を使っていない飲料のほうが安心ですね。カロリー過多の現代人には、甘くしていない緑茶、紅茶、麦茶、ウーロン茶、コーヒーがノンカロリーでおすすめです。毒性を気にするほどのことはありませんが、お茶やコーヒーなどの飲料製品には合成のビタミンCが使われていたり、表示はされませんが抽出促進剤が使われているものもあります。やっぱり家で茶葉やコーヒー豆から煎れたものが味も香りも安全性もベストなのですね。

スポーツ飲料が「健康に良い」というイメージはまちがいです。スポーツ飲料は大汗をかいた時に、素早く脱水症状を防ぎ、不足したミネラル、ビタミン、エネルギーの補給ができるよう調合されている飲み物です。ですから飲むべき時はスポーツや真夏の屋外で大量の汗をかいた時で、水やお茶を飲むよりずっと効果的なのです。しかし普段からお茶代わりや水代りに飲んでしまっては、余分なカロリーを摂取してしまうだけなのです。畑仕事などの合間に、甘いお菓子とお茶と漬物や梅干しなどを食べる習慣がありますが、これはとっても理にかなった風景だったのですね。

ワインには酸化防止剤として亜硫酸塩が使われているものが多く、人によってはアレルギーや悪酔いの原因になります。近年は酸化防止剤無添加の国産ワインも増えてきました。ドイツではビール本来の風味を守るため、麦とホップ以外の原料を使うとビールとは呼べませんが、日本やアメリカでは遺伝子組み換えの可能性が高いコーンスターチを使った製品も多くなります。ビール風の発泡酒は日本でさえビールとは呼べず、リキュール類に分類されています。香料、苦味料、酸味料、着色料などの添加物を駆使して、まさにビール”風味”に仕上げているものすらあるのです。


【今月の選食力Upポイント】
・カロリーオフを目指すならお茶が一番です。
・甘いジュース類は天然果汁70%以上を目安に選ぼう。
・アスパルテーム、サッカリンなどの合成甘味料を避けよう。
・スポーツドリンクは大汗をかいた時にだけ飲もう。
・酸化防止剤無添加の国産ワインを探してみよう。
・麦とホップだけで作られた本物のビールを味わおう。


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I調味料

皆さんは“さ・し・す・せ・そ”をご存じですか? “さ“は砂糖、”し“は塩、”す“は酢、”せ“は醤油(せうゆ)、”そ“は味噌ですね。間違っても”そ“はソースではありません。そして調理の時に調味料を入れる順番もこの順が良いという意味ですね。しかし近年では“さ・し・す・せ・そ”が何のことかわからない人も増えているようです。すでに醤油は調味するための基礎調味料ではなく、刺身をつけたり豆腐にかけたりするといった使い方のテーブル調味料になりつつあります。昔に比べ手作りする人が少なくなってきたということもありますが、たとえ家で手作りしても“○○のたれ”“中華○×の素”“△△鍋の素”といった合わせ調味料が主流になってきたからです。いまは“メーカーの味”が“おふくろの味”なのですね。「12才までに慣れ親しんだ食べたものは、大人になっても必ず食べたくなる」という研究報告があります。これこそが“おふくろの味”といえるのでしょう。キャラクターなどで12才以下の子供をターゲットにしているファーストフード店もありますが、これは自社のハンバーガーを“おふくろの味”として、ずっと食べ続けてもらう賢い戦略と言えるでしょう。

ここ数年、不況の影響で家で食事をする家庭が増えてきました。何も考えずに食材を購入していても、外食に比べ野菜の摂取量が増え、添加物や農薬の心配が減り、家族の絆も強くなり、自給率向上にも貢献しています。家で手作りすることは、安全性の意味だけでなく良いことなのですね。そこでもう一歩進んで基礎調味料を使った調理を身につけましょう。せっかく手作りしていても、合わせ調味料類の多くに添加物が使われているのです。醤油などの色を濃くするカラメル色素、トロミや照りを出す増粘剤、うま味を増す調味料(アミノ酸等)、油脂分を分離させない乳化剤、退色防止やPH調整のリン酸塩、酸化防止剤のビタミンCなどがよく使われます。基礎調味料を使って手作りすれば、このような添加物すら食べずにすみ、一段階安全性をアップすることができるのです。基礎調味料、だし類、油類、粉類に加えて、スパイス、乾燥ハーブ、中華調味料など、作るたびに常備していけば、ほとんどの料理を家庭でも作れます。麻婆豆腐やエビチリなど案外簡単にできてしまいます。インターネットでレシピを検索したり図書館で料理本を探してみましょう。少し手間はかかりますが一度覚えてしまえば、安全で経済的で応用もできてとても便利です。その都度それぞれの“素”を用意する必要もありません。なにより各家庭の“おふくろの味”が復活します。美味しくできるか、上手にできるかということより、家庭の味であることを大切にしましょう。

調味料の選び方でも安全性や栄養価が変わります。精製度が低く茶色い粗糖類や、海水塩や岩塩などの荒塩には、ミネラル分が多く含まれていて料理の旨みやコクも増します。ただし三温糖はカラメル色素で着色している商品もあるので要注意です。醤油の原料として使われる脱脂加工大豆は溶剤抽出に不安が残るため、丸大豆が原料のものを選びましょう。国産大豆ならなお安心です。さしみ醤油やたまり醤油などには、化学調味料やカラメル色素を使用したものもあるので気をつけましょう。だし入り味噌のほとんどに化学調味料が使われています。味噌はだし入りを避けて国産大豆100%を選ぶと安心です。原材料表示は多い順に書かれています。一般的なだしの素製品を見ると、化学調味料が一番で、次いで塩が多く含まれていることがわかります。化学調味料は“調味料(アミノ酸等)”と表示されています。天然のだし類は風味がよくミネラル分も多く含まれていますが、化学調味料は旨みだけでミネラルも香りもありません。化学調味料を使うと強い塩分もしょっぱく感じなにくくなるので、塩分の摂りすぎも心配ですね。しかし塩分量を増やすと保存期間が長くなるため、メーカーにとっては良いことでもあるのです。


【今月の選食力Upポイント】
・調理技術や知識を身につけて手作りしよう。
・基礎調味料を使った料理でおふくろの味を復活させよう。
・基礎調味料類はしっかり選んでそろえよう。



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J外食

外食店では業務用の食材がよく使われます。一般向けの食材と一番違うところは、もちろん大容量であることです。植物油の一般向けの商品は大きくても1.5リットル程度ですが業務用では1斗缶(18リットル)です。工業用ともなればもっと大きな単位となります。しかし容量だけでなく内容も違う場合が多いのです。たとえば業務用の植物油は消泡剤としてシリコンが添加されているものがほとんどなのですが、一般向けの商品には入っていません。家庭では揚げものをしていて泡がたくさん出てくると、油が古くなって劣化したと判断して新しい油にかえますね。しかし消泡剤が添加された油では泡が出ず、古くなっても気にすることなく同じ油でどんどん揚げることができるのです。刺身のつけ醤油も、業務用では甘味料や化学調味料が添加されたものがよく使われています。安い刺身でも旨みが補助されておいしさがアップするという仕組みです。トマトや卵黄をあまり使っていないトマトケチャップやマヨネーズも業務用として流通していますが、それらしくするためには様々な添加物が使われているのです。

外食店では生鮮野菜も使いますが、加工された野菜も使用されます。カット野菜は各店舗で洗う、皮をむく、切るという必要がないため便利なのですが、塩素系漂白剤で殺菌処理されているものがほとんどです。塩素系漂白剤を使用すると、野菜のくすみがとれて色鮮やかになるのも利点なのです。消費者が品質をごまかされるという理由から、野菜類の色を鮮やかにするために漂白剤を使用することは禁止されていますが、殺菌目的なら同じ薬品が使用できるのです。また塩蔵野菜、冷凍野菜などにも添加物が使用されます。冷凍でスカスカの食感になる冷凍変性を防ぐためにはPH調整剤が使われます。中国産の塩蔵野菜には漂白殺菌剤として毒性が強い二酸化硫黄が使われていることもあります。業務用の山菜水煮などは、塩蔵輸入品を塩抜きしたものが多いのです。輸入現場で真っ白なナスやきゅうりを何度も確認していますが、漂白しておくと用途に合わせて様々な色に着色できるので便利なのです。水煮された野菜類もよく使われますが、長時間水に浸かっている間に栄養素が溶け出して栄養価がとても低くなっているのです。

多くの外食チェーン店はセンターキッチン方式を採用しています。一括調理して各店舗に配送するため、各店舗に調理技術のある従業員を置く必要がなく、素人でもプロの味を安定して提供できるからです。しかし調理してから提供するまでの期間が長くなるため、添加物の使用頻度が高くなるという問題も発生してきます。調味用の添加物以外に保存料、酸化防止剤、PH調整剤、リン酸塩、乳化剤といった添加物がよく使われています。外食店では原材料表示の義務がないため、お店で確認することはできません。外食店で「国産○○使用」「○○不使用」などの表示を見かけますが、もともと一切の表示義務がないため、店側が表示したい部分だけを表示していると思ったほうがよいでしょう。相次ぐ食品偽装事件をきっかけに、生鮮品に近い加工食品について原料原産地表示が始まっていますが、外食店ではそれもありません。スーパーのうなぎの蒲焼には加工原産国と原料原産地が表示されますが、外食店で食べるうな重には一切の表示義務もありません。現在、輸入食品の多くが加工用と外食用に使われています。スーパーで食材を購入するときに国産を選ぶ人も増えましたが、外食店では表示義務そのものがないのです。

外食するときは大手チェーン店よりは個人商店を選び、なるべくシンプルなメニューを選ぶと安全性はぐっとアップします。しかし一番重要なことは、いいかげんな外食をせず本当に食べたいものをしっかり選ぶことです。忙しい日に「まぁいいか」と手軽さだけで外食することは避けたいものです。そんな日は家でお茶漬けでも食べて簡単に済ませましょう。外食は回数を減らし、その分お金をかけて食べましょう。ちゃんと下調べして「この店のこれが食べたい!」とはっきり目的が持てる外食を心がけましょう。


【今月の選食力Upポイント】
・外食店は個人商店を選ぼう
・なるべくシンプルなメニューを選ぼう
・手軽さだけで外食するのはやめましょう
・本当に食べたい店をしっかり選んで外食しましょう


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K主食

私たち日本人の主食はコメです。小麦から作るパン、パスタ、うどん、ラーメンなどもたくさん食べていますが、小麦の自給率は14%程度しかありません。主食用米の自給率はほぼ100%で、今でも税金を投入して減反し続けているほど生産力があります。しかし94年に海外圧力でコメのミニマムアクセスが取り決められ、輸入義務ではありませんが一定以上の輸入枠を確保しなければならなくなりました。三笠フーズのカビ米混入事件で初めて知った人も多いと思いますが、ミニマムアクセス米は加工用途、食糧援助、備蓄米、あるいは廃棄となり、通常私たちがご飯として食べることはありません。日本は大凶作の年に政府の生産計画の甘さから政府備蓄が全く機能せず、急きょ海外から米を買いあさりました。その影響でコメを主食とする途上国ではコメの価格が高騰し、その国の貧困層がコメを購入できなくなるという悪影響まで出てしまったのです。日本はミニマムアクセス枠全量を輸入していますが、世界にこんな醜態をさらしたのではしかたないのかもしれません。生産力が十分あるコメでさえ、自国民が食べる最低限の食糧も確保できないという、本当にお粗末な国なのですから。

政府は自給率アップの重要政策のひとつとしてコメの需要増を働きかけています。これは自立国家としては当然のことですね。米粉を利用した食品の開発もそのひとつです。米粉パンなどはごく普通に目にするようになってきました。また全国の小中学校では米飯給食も徐々に増えてきていますが、米飯が週2日しかない学校もまだまだ存在するのです。コメが足らなくてパンを食べるなら理解できますが、減反しているほどのコメではなく、殆どを輸入に頼っている小麦を食べる理由などありません。いま納入しているパン業者へ悪影響を及ぼすという問題も発生しますが、国家の自立を左右する課題より優先されてはならないでしょう。私たちの食卓は様々な国の食文化を取り入れ、とてもバラエティーに富んでいます。給食以外でもパンはたくさん食べるでしょう。健康や食文化の面から考えても、せめて給食くらいは100%米飯の純和食にして、日本の食文化をしっかり学べるようにするべきでしょう。

外食などのご飯には炊飯添加剤という酵素系添加物がよく使用されます。毒性はほとんどないのですが、リン酸塩が含まれているため、骨を弱くしミネラルの吸収を阻害する作用があるのです。ご飯は炊き上がるとすぐに劣化が始まります。味が落ち変色しやすい食品なのです。ご飯の甘味はでんぷんが糖に変化して生まれますが、炊飯添加剤にはでんぷん分解酵素が含まれていて、炊きムラによって糖になりにくい部分ができてしまうのを防ぐため甘味が増すのです。またリン酸塩の退色防止効果で、時間がたっても白いままのご飯になります。さらに油脂分によって粒状感が増し、歩留りも良くなるし釜の洗浄も楽になるという、店にとってはとても有益な添加物なのです。そのため外食、弁当、おにぎり、寿司などを中心にとても広く使われているのです。ご飯も自宅で炊くのが一番安心なのですね。

1年間食品添加物を主な切り口として食品選びのポイントを解説してきました。添加物や農薬や産地を気にする人は多いのですが、その裏側には様々な問題があることにも気づいていただけたでしょうか。食糧自給、輸入、流通、そして政治の中にも食の安全を脅かす問題が潜んでいて、私たちが食品を購入するときに目にすることは、それらの結果に過ぎないということも多いのです。それでも、もし皆さんが安全な食べ物を食べたいと思うのなら、全く心配する必要はありません。私たちが少しでも安全な食事ができるよう考えて食品を選択することで、食環境は良くなっていくのです。消費者の食品を選択する力が、生産者、食品メーカー、流通業者だけでなく、政治にも影響を与えていくのです。しかし消費者の選択が食環境を悪化させてしまうことは、ずっと簡単だということも覚えておいて下さいね。

さて、今回でこの連載は一旦終了となります。現在続編を準備していますので、少しお休みをいただいて秋頃に連載を再開する予定です。お楽しみに。


【今月の選食力Upポイント】
・自給率向上と健康のために和食を見直そう。
・ご飯も家で炊くと安全性がUPします。
・行政に働きかけて米飯給食を増やそう。


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選食力up! 2

@ BSE、口蹄疫、鳥インフルエンザ
A シュガーレス と カロリーゼロ
B 原産国 と 原料原産地
C 発酵
D トクホ
E 無農薬、減省農薬
F サプリ、健康補助食品
G 
H 
I 
J 
K