「成形肉を考える」

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食の安全を考える会 野本健司(2007/8 暫定版)

成形肉(結着肉)
結着効果のある食品添加物(カゼインNa、増粘剤、リン酸Na、トレハロース、マルトースなど)によって結着成形された肉のことをです。スーパーや肉屋などで生肉として販売することは禁止されていますが、肉加工食品としてなら生であっても販売できます。またファミレス、ファーストフード、弁当、焼肉店、しゃぶしゃぶ店など、外食産業での利用は全く問題ありません。ステーキ、しゃぶしゃぶ、焼肉、カツ、などに利用されますが、いずれもコストを下げるために行われるものですので、販売価格も安価なものほど多くなると思われます。

<牛ステーキ用、焼肉用、しゃぶしゃぶ用の成形肉>
下記に紹介するような方法で成形肉が作られますが、国産牛で作れば“国産牛”、オーストラリア産で作れば”オーストラリアビーフ”、松阪牛で作れば”松阪牛”と表示できます。

@牛横隔膜を数枚重ね、上部にだけ脂身をまいて結着剤でくっつけたものをステーキに。酵素添加物(大塚薬品工業:肉用ミオラなど)を使用してやわらかくし、保水性を向上させる植物たんぱくでジューシーさをプラスすることも出来ます。主に外食産業用です。
牛横隔膜はハラミとして焼肉では昔からよく食べられてきましたが、柔らかくするために酵素添加物を使用したり、厚切りハラミにするために重ねて結着剤でくっつけたりします。

A酵素添加物を注入してやわらかくした赤身の部位に牛脂などをインジェクションという注射針が針山のようになった機械で注入し、人工的にサシを入れることで、霜降り肉を作ります。必要に応じて上部にだけ脂身を結着剤でくっつけることでステーキらしさを演出します。しゃぶしゃぶやすき焼きにも使用されます。

B正肉と端肉と牛脂などを混合して結着剤などでくっつけ、サイコロステーキなどに。外食産業用にも流通しますが、一般スーパーでも肉加工品として「サイコロステーキ」や味付けされた「カルビ焼肉」のような名称で売られています。“成形肉”“結着肉”という表示があります。

C焼肉用の牛タンや豚タンは片側が厚みがあり、片側が薄い形状であるため、薄い側を折り返して結着剤でくっつけて、スライスしたときに大きさがあまり変わらないように成型します。

D焼肉用のカルビは骨に近い部位であるために、凹凸のある形状ですが、やはりカットしたときになるべく同じ形状になるように調整して、結着剤でくっつけます。


<成型肉の問題点>
肉の品質をごまかされる、知らずに添加物を摂取してしまうということもありますが、衛生的な面にも問題があります。肉はカットした部分が大気にさらされるため、大気中の菌が付着します。またカットを行った人間と接触するため、人間から菌が汚染する事もあります。ステーキではカットした部分は焼くため殺菌されるので、レアでも食べられます。たたきの場合で中は生でも周囲は焼きますので菌にさらされた部分は殺菌されます。しかし成型肉の場合、肉の中心部に菌にさらされた部分があるため、表面を焼いただけでは問題があるといえます。実際、スーパーなどで売られている成型肉のサイコロステーキなどには、しっかり加熱するように注意書きがありますが、ステーキという商品名であるために、ミディアムレアーなど自分好みの焼き加減で食べてしまう人も多いのではないでしょうか。ファミレス店でも成型肉のステーキの焼き加減を聞いてくるのを見かけますが、少なくともレアーやミディアムレアーはやめた方がよさそうですね。焼肉店で成型肉を使われると、各自で焼くのが基本スタイルなので大丈夫なのかな〜と思います。焼肉店でもよく見てみると、メニューなどに「よく焼きましょう」などの注意書きがさりげなく書かれていたりします。

ひき肉加工品の場合(ハンバーグ、餃子、シュウマイ、ミートボール)
正肉(消費者が思う普通の肉の部位)と端肉(くず肉)と豚脂(牛脂)を混ぜ、調味加工して製品化しますが、端肉は結着力が非常に弱いため、結着剤や増粘剤を添加して調整します。同時に増量のために植物たんぱく(大豆たんぱく)が混ぜられることも多く、肉の旨みが少なくなってしまうため、化学調味料やたんぱく加水分解物で旨み成分の補助をすることになります。
当然ですが正肉の割合が少ないほど原料コストが下げることができます。

端肉(くず肉)
牛や豚を解体する時に出る、切り落としのような半端な部分の肉と思ってはいけません。このような肉は通常のひき肉として流通しています。端肉は一般的に流通しない、つまり一般的に食用としない部分ということで、リンパ球、リンパ節、皮、心臓などの一般的でない内臓、豚の横隔膜※などという部分を指します。
※牛の横隔膜は、ハラミとして一般的に焼肉用に流通していますが、成形肉にも使われます。