発行所 | マリン企画 |
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(第1刷)発行年月日 | 2006年12月7日 |
所有刷数 | 初版 |
値段 | 4657円(+税) |
ページ数 | 367ページ |
概要 | 筒井良樹さんがアクアライフに掲載した連載記事などをまとめて出版したもの(全てではない)。 また筒井さんの自宅水槽部屋を紹介したお宅訪問記事や筒井さんに贈られた追悼分なども掲載されています。 |
グッピー飼育に関する事、品種毎の特徴や維持していく上で気をつける事、遺伝の話、歴史的な話などなどグッピーに関してこれだけ盛り沢山に詰め込まれている本は稀有なのではないでしょうか。
「連載記事をまとめた」という形なので、その当時に著者がどのようにグッピーに携わってきたのかが進行形で読める点もこの本の面白い所です。
もちろん時には間違った予測や意見を後で訂正する箇所もありましたし、また時には魔術的な「読み」によって謎をサッと解明してしまう事も度々あった事がわかります。
答えがわからないと人は自分なりに色々と予測したりするものですが、その思考の過程を知る事はけっこう勉強になったりします。
ましてやそれが偉大な先人の軌跡となれば尚さらでしょう。
グッピーと比べると量は少ないですが、メダカや改良卵胎生魚に関しての記事もあり、こちらも他に類を見ない内容で非常に革新的な内容になっています。
時には魚とは関係の無い話題に半分以上も費したり、肝心な事には触れずにそのまま記事が終わったりと脱線しまくる回もあるんですが、「その脱線も面白い」と思わせるだけの文章力と独特の世界観を持っているのが筒井さんの凄い所です。
アクアライフ1999年12月号に掲載された筒井さんの自宅訪問記事が掲載されています。
実はこの記事には筒井さんらしいユーモアが隠されている気がするんです。詳しくは私のブログのコチラに書いてありますので気になる方は見て下さい。
こういう「遊び心」に満ちた文章と仕掛けを作れるのが筒井さんらしさの一つではないでしょうか。
索引が無く、目次も不十分なので、何かを調べたいと思っても調べにくくて辟易してしまいます。
これは最大の問題点だと思います。
せめて目次だけでもしっかりと作り込むべきだったでしょう。
この連載記事がアクアライフに掲載されていた時は、まず写真のページがあってその後に記事が続くという形でした。
ただこの本を作るにあたってその写真と記事のページを離してしまったために非常に読みにくくなっています。
記事を読んでいて写真を確認したいのにわざわざ数十ページも前に遡らなくてはいけないのは苦痛ですらあります。
「グッピーのごく基本的な飼育の仕方が知りたい」という方は他の本を当たった方が良いでしょう。
遺伝の基本がわからずにグッピーの遺伝を勉強しようとこの本を手に取ろうとしている方はまず教科書を読み返すべきでしょう。
なぜならこの本にはそういった情報は書かれていないか、例え書かれていても体系的に書かれていないのでわかりにくいからです。
ただそれ以外のグッピーファン全てに「是非読んでみて」とお薦めできます。
値段は高い本ですが、私は敢えて「安い」と書かせて頂きます。
ところでこの本には「93年〜05年」当時の記事が載っているので「そんなに古い記事を読んでも・・・」と思う方もおられるかもしれません。
私も筒井さん以外の方の著作物なら、この本でなかったら同じように思うでしょう。
ただ筒井さんの記事に関してはそれが当てはまらないのです。
というのもそもそもこの本に書かれているような事、もしくはそれ以上の事を公に書いている人を私は知りません。
つまり内容的に唯一無二の存在なのです。
例え書いた時代が古くても、それに代わる本が無いのならその本が色褪せる事はないのです。
また「嘘や不正確な事は書きたくない」と公言していた筒井さんの記事だからこそ、事実だからこそ色褪せないものがあるのも確かでしょう。