| 12月4日 ◆1872年のこの日(5日とも)、大西洋をジブラルタルに向かうイギリスの帆船デイ・グラチア号が、サンタ・マリア島から約590キロの地点で漂流中の船メアリー・セレスト号を発見する。乗り移って調査すると、船には誰もいなかった。(直前まで人がいたかのように、食堂のテーブルには食べかけの料理がそのまま残っていた、というのは後から作られた話らしい)。船長以下、10人の乗員は何処へ消えたのか。 ◆1903年のこの日、『幻の女』 『黒衣の花嫁』 など、サスペンス小説の名作で知られるコーネル・ウールリッチ、別名ウィリアム・アイリッシュがニューヨークで生まれる。フランシス・ネヴィンズ・ジュニアの大部な評伝 『コーネル・ウールリッチの生涯』 (早川書房) も邦訳が出た。ウールリッチの作品は映像と縁が深く、ロバート・シオドマク監督の 《幻の女》、トリュフォー監督/ジャンヌ・モロー主演の 《黒衣の花嫁》、ジャン=ポール・ベルモンド主演の 《暗くなるまでこの恋を》 (原作 『暗闇へのワルツ』。《ポワゾン》 として再映画化もされた) などが有名だし、《夜は千の目を持つ》、《妄執の影》、《親分 (ボス)》 (原作 「シンデレラとギャング」)、《くちづけはタンゴの後で》 (原作 『死者との結婚』) といった作もあるが、最高傑作はやはりヒッチコックの 《裏窓》 だろう。そもそも彼がプロの作家になることに踏み切ったのも、ミステリ作家デビュー前に書いていた都会的な恋愛小説 『Children of the Ritz』 (1927) が雑誌の1万ドル懸賞を獲得、《歓楽地帯》 (1929) として映画化されたのがきっかけで、ウールリッチはこれを機に大学を中退してハリウッドに移り、映画脚本や小説の執筆に専念し始めた。日本でも 《死者との結婚》 (高橋治監督)、《夜の罠》 (富本壮吉監督)、《ああ爆弾》 (岡本喜八監督)、《夢一族 ザ・らいばる》(久世光彦監督) などの映画化があり、TVでも 《幻の女》 《黒衣の花嫁》 などがドラマ化された。また、 これも映画になった山本周五郎 『五辧の椿』 が 『黒衣の花嫁』 の換骨奪胎であることもよく知られている。 ◆2008年のこの日、SF・ホラー関係のコレクターとして有名なフォレスト・J・アッカーマンが、ロサンゼルスの自宅で心不全のため死去。享年92。アッカーマンが編集を担当した1958年創刊の雑誌 《フェイマス・モンスターズ・オブ・フィルムランド》 は怪奇SF映画のスチールや情報、モンスター・グッズの広告を満載、初版15万部をたちまち売り切った。少年時代のスティーヴン・キングやスピルバーグ、ジョー・ダンテも同誌の熱烈な愛読者だったという。 |