11月26日
◆1876年のこの日、評論家・英文学者で、博文館で雑誌《太陽》を編集した長谷川天渓が新潟県に生まれる。文学史的には自然主義文学の推進役として知られる人物だが、森下雨村を指導し、その庇護者として《新青年》発刊にも大きな役割を果たしたという(しかし、やがて雨村は編集部を自分の人脈でかためていく)。「探偵小説の主人公」 「探偵小説の将来」のエッセイがあり、《新趣味》 懸賞応募の選者として甲賀三郎 「真珠塔の秘密」 を世に送り出した。また、1899年 (明治32) に 《少年世界》 に連載した 『鏡世界』 はルイス・キャロルの最初の邦訳といわれている。
◆1905年のこの日、劇作家イムリン・ウィリアムズがウェールズで生まれる。彼の最も有名な芝居 《Night Must Fall》 は、帽子の箱に生首を入れて持ちあるく青年の話。犯罪実話でも数冊の記念碑的作品を残している。
◆1922年のこの日、英国の考古学者ハワード・カーターが、エジプトのルクソール西岸、〈王家の谷〉の未盗掘の墓で、ツタンカーメン王の墓室に到達、黄金の棺を発見する。このニュースは世界中を駆け巡り、欧米ではエジプト・ブームが沸き起こった。発掘作業は1932年まで続き、1930年代にはヴァン・ダイン『甲虫殺人事件』(30)、クイーン『エジプト十字架の謎』(32)、クリスティー 『ナイルに死す』(37)などのエジプト・ミステリが書かれ、ユニヴァーサルの怪奇映画 《ミイラ再生》 (32) も大ヒットを記録した。王墓発掘後、出資者カーナヴォン卿をはじめ関係者が次々に不慮の死を遂げ、〈ファラオの呪い〉 が取り沙汰されたが、カーター自身は1939年に亡くなるまで長寿を全うしている。カーナヴォン卿らの原因不明の高熱死については、墓室内の黴に含まれていた病原菌を原因とする説が近年出されている。