2月15日
◆1883年のこの日、中国人の天才的犯罪者、〈黄禍論〉のシンボルともいうべきフー・マンチュー博士の作者サックス・ローマーが、英国ワーウィックシャーで生まれる。「中国人は知能は優れているが道徳的観念はない人種」 といった滅茶苦茶な決め付けがなされていた時代の産物だが (こういう東洋人観は、たとえば少しあとのロバート・E・ハワードのヒロイック・ファンタジーなどにも露骨にあらわれている)、〈悪魔博士〉 フー・マンチューは科学・医学・物理学の世界的権威でオカルトの泰斗でもある大学者でありながら、東洋人による世界征服を夢見て秘密結社を組織して西洋=白人社会に戦いを挑む。1912年に開始されたこのシリーズは、20年代に映画化され、世界的大ヒットを飛ばした。なお、ローマーには 「チェリアピン」 という怪奇短篇の傑作もあって、『怪奇小説傑作集2』 (創元推理文庫) で読むことが出来る。
◆1899年のこの日、『薪小屋の秘密』 『黒い死』 のアントニイ・ギルバート、本名ルーシー・ビアトリス・マレスンがロンドンで生まれる。父親の失職により一家は困窮、ルーシーは速記タイピストとして働き始めた。やがて詩を書き、探偵小説に手を染めるが、アントニー・ギルバートという男性名を筆名に選んだのは、「犯罪小説を書く女性を信用しない人たちがまだ沢山いる」という考えからだった。宣伝用の資料を求められると、偽の経歴を作り上げ、髭を生やした年配の男性に扮した写真を撮った。自伝《Three-a-Penny》がある。タイトルはセイヤーズが彼女に語った「作家というのは私たちにはありふれたもの(Three-a-Penny)だけれど、ほかの人たちにとってはとてもわくわくする存在なのよ」という言葉から。