注目の新刊 発売中![]() アンドレイ・プラトーノフ『幸福なモスクワ』 〈ロシア語文学のミノタウロスたち〉特異な世界観と言語観で生成するソ連社会を描いたプラトーノフ。共産主義を象るモスクワ・チェスノワと彼女をめぐる「幸福」の物語。執筆から半世紀を経て刊行された「未完」の長篇。池田嘉郎訳 (白水社 3300円)[amazon] ![]() J・M・クッツェー『ポーランドの人』 ショパン弾きの老ピアニストが旅先で出会ったベアトリスに一目惚れ、駆け落ちしようと迫るが…。究極の「男と女」を描く。くぼたのぞみ訳 (白水社 2750円)[amazon] ▼5月刊 ![]() 『迷いの谷 平井呈一怪談翻訳集成』A・ブラックウッド他 好古趣味と巧みな恐怖演出で近代怪奇小説の礎を築いたM・R・ジェイムズ。幽霊、魔女、異界など多様な題材に怪異のリアリズムを追求しつつ心理学的解釈を加えたアルジャーノン・ブラックウッド。『幽霊島』に続く平井呈一怪談翻訳集成第二集は、マッケンとあわせて英国怪奇小説の三羽烏と称される恐怖の名匠の傑作を中心に、その訳業の原点ともいうべき昭和初年の翻訳、コッパード「シルヴァ・サアカス」とホフマン「古城物語」、さらにラフカディオ・ハーンの怪奇文学講義を集成。付録として作家説や翻訳観が窺えるエッセーを収録。平井呈一訳 (創元推理文庫 1650円)[amazon] ![]() D・M・ディヴァイン『すり替えられた誘拐』 父親は大金持ち、本人は大学の講師と交際している札つきの問題児――そんな学生バーバラの誘拐計画が進行中だという怪しげな話が飛びこんできた。数日後、学生クラブ主催の集会中、彼女は本当に襲われた。ところが、この誘拐事件は思いもかけぬ展開を迎え、ついには殺人へ――謎解きミステリの職人ディヴァインのエッセンスが詰まった長編。中村有希訳 (創元推理文庫 1320円)[amazon] ![]() ディアナ・レイバーン『暗殺者たちに口紅を』 かつてはナチの残党を、現在は犯罪者を標的とする暗殺組織〈美術館〉。社会に害をなす者の抹殺に40年を捧げた60歳のビリーたち女性暗殺者4人は、引退の日を迎えた。記念にクルーズ旅行に出かけたところ、組織が彼女たちを裏切り者とみなし暗殺指令を出したと判明。生き延びるには知恵と暗殺術を駆使して反撃するしかない。殺すか殺されるかの危険な作戦の行方は――。西谷かおり訳 (創元推理文庫 1320円)[amazon] ![]() ロイス・マクマスター・ビジョルド『魔術師ペンリックの仮面祭』 庶子神祭目前の街ロディ。ペンリックは診療所から魔に憑かれて錯乱した若者を診て欲しいとの依頼を受け、魔を引き剥がす聖者とともに祝祭に湧く街に逃げた若者を追うが……「ロディの仮面祭」、海賊に囚われたペンリックが幼い姉妹と脱出を図る「ラスペイの姉妹」、軍で蔓延する疫病の原因を探る「ヴィルノックの医師」の中編3作を収録。ヒューゴー賞受賞シリーズ第三弾。鍛治靖子訳 (創元推理文庫 1760円)[amazon] ![]() ロス・トーマス『愚者の街 上・下』 壮絶な過去を持つ米国秘密情報部のエージェント、ダイは何者かに陥れられて投獄される。彼の出獄を待っていたのは、腐敗した南部の小さな街をさらに腐敗させ、再興させるという突拍子もない仕事だった。クライム・ノヴェルの巨匠畢生の大作。松本剛史訳 (新潮文庫 781円/825円)[amazon上・下] ![]() 『藤子・F・不二雄SF短編コンプリート・ワークス 2』 [amazon] 『藤子・F・不二雄SF短編コンプリート・ワークス 8』 [amazon] (小学館 各1111円) ![]() 『そして私たちの物語は世界の物語の一部となる インド北東部女性作家アンソロジー』ウルワシ・ブダリア編 バングラデシュ、ブータン、中国、ミャンマーに囲まれ、 さまざまな文化や慣習が隣り合うヒマラヤの辺境。きわ立ってユニークなインド北東部から届いた、 むかし霊たちが存在した頃のように語られる現代の寓話。女性たちが、物語の力をとり戻し、 自分たちの物語を語りはじめる。本邦初のインド北東部女性作家アンソロジー。中村唯監修 (国書刊行会 2640円)[amazon] ![]() エリー・ウィリアムズ『嘘つきのための辞書』 長大な辞書に紛れ込んだ「虚構の項目(マウントウィーゼル)」をめぐり、時代を越えて振り回される言語偏愛者たちの素っ頓狂な情熱。三辺律子訳 (河出書房新社 2750円)[amazon] ![]() 岩井宏實『日本の妖怪百科』 古来描かれてきた妖怪画の数々とともに、伝承や古典文学に現れたもののけの世界を探る。大判で好評の一冊を手に取りやすいサイズで。 (河出書房新社 2475円)[amazon] ![]() 塚本邦雄『ことば遊び悦覧記』 回文、折句、いろは歌、円形詩……古今東西の多彩な言語遊戯を、鬼才の解読・鑑賞とともに贈る。空前絶後のアンソロジー。新装版。 (河出書房新社 3135円)[amazon] ![]() レイモンド・チャンドラー『ザ・ロング・グッドバイ』 チャンドラーの名作を新訳。市川亮平訳 (小鳥遊書房 予価2860円)[amazon] ![]() エドワード・D・ホック『フランケンシュタインの工場』 〈奇想天外の本棚〉メキシコ、バハ・カリフォルニア沖の島に設立された国際低温工学研究所は、極秘裏にある実験計画を進めていた。冷凍保存した体から脳や臓器を取り出して移植し、人間を蘇らそうというのだ。疑念を抱いたコンピュータ検察局は、捜査員を手術の記録撮影技師として島に送り込むが、やがて島では手術のため集められた医師たちが次々に遺体となって発見される事件が……。特異な舞台設定で描くSFミステリ〈コンピュータ検察局シリーズ〉最終作。宮澤洋司訳 (国書刊行会 2860円)[amazon] ![]() アラン・ムーア(作)/ジェイセン・バロウス(画)『プロビデンス Act2』 奇書探求の旅をつづける新聞記者ロバート・ブラックは、ついにマンチェスターの大学で幻の本を手にする。謎の老婆のいる下宿、隕石調査官との出会い、聡明な少女との強烈なトラウマ体験、闇の生き物との対話、夢世界への旅、憧れの作家たちと自らの呪われた宿命……。宇宙的なヴィジョンによって時空を覆す究極のクトゥルーコミック。柳下毅一郎訳 (国書刊行会 3080円)[amazon] ![]() ウラジーミル・ソローキン『吹雪』 近未来のロシアを舞台に、ゾンビ化する感染症のワクチンを村に届けようと格闘する医師と御者。ミニ馬、謎の薬、巨人と小人……。不思議なガジェット満載の傑作長篇。松下隆志訳 (河出書房新社 3190円)[amazon] ![]() 山尾悠子『仮面物語 或は鏡の王国の記』 影盗み、迷路、自動人形、魔術師、ゴオレム、結晶体、石蚤、月……乱反射する鏡の王国の壮大な崩壊。目眩く傑作長編小説がついに復刊なる。著者20代の時に書き下ろされ、その後40年にわたってみずからの手で封印されていた伝説の問題作(1980初刊)。 (国書刊行会 3960円)[amazon] クエンティン・タランティーノ『その昔、ハリウッドで』 1969年、ハリウッド。俳優リック・ダルトンは人生の岐路に立っていた。キャリアが下り坂の彼に大物エージェントがイタリア製作のウェスタン映画に出ないかという話を持ちかけてきたのだ。悩みを抱えながらTVドラマの撮影に出かけたリックが現場で出会ったのは……。映画『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』を自ら小説化。これはノベライズに非ず。グルーヴィな語りで魅惑する傑作。田口俊樹訳 (文藝春秋 3026円)[amazon] 小野俊太郎『シェイクスピアの戦争』 シェイクスピアは戦争劇作家だった。出陣する君主、戦場の王侯貴族たち、動員された兵士たち、涙する女性、戦う女性、犠牲となる子ども、敗者としての亡霊たち……。あらゆる作品を覆っている「戦争」を直視せずにシェイクスピア劇を心底からは理解できない。『ハムレット』への北海帝国の影響を問い、マクベスやリチャード三世像を見直す。 (小鳥遊書房 3740円)[amazon] 〈絵本 ピーターラビット〉 ビアトリクス・ポター 川上未映子訳 『つまさきティミーのおはなし』 (早川書房 1540円)[amazon] 『まちねずみジョニーのおはなし』 (早川書房 1540円)[amazon] 国枝史郎『神州纐纈城』 ある春の夜、散歩していた武田信玄家臣、土屋庄三郎は、布売りの老人から燃え立つばかりの紅い布を買った。布を月光に照らして見えたものは、四歳の時に失踪した父、庄八郎の名。紅布に誘われて迷い込んだ富士の裾野で見た人間狩り集団、彼らの纏う経帷子の色が自分の紅布と同じ色と気付いた庄三郎は、さらに怪異の世界に入り込んでいく。神秘的な教団、超人的な人々、本栖湖に浮かぶ水城「纐纈城」……。三島由紀夫がその文章や現代性、芸術性を賞賛した伝奇小説の傑作。 (春陽文庫 1375円)[amazon] 山田風太郎『いだてん百里』 徳川幕府の金山総奉行・大久保長安は伊豆国天城峠にて、巨大な猪を一人で倒す女を目撃した。それこそは一日に四十里も山を駆けるという漂泊の山の民「撫衆」、美しき野生の姫「お狩さま」の姿であった──。 (春陽文庫 1210円)[amazon] レーシャ・ウクライーンカ『石の主(あるじ)』 西ウクライナ生まれの詩人がスペインのドン・ファン伝説を戯曲化。進歩派知識人の両親のもとで幼少期からウクライナ語の教育を受け、転地療養を通じてヨーロッパ各地の文化を吸収して十を越える言語を習得した女性作家が、世界文学における強いヒロインの系譜に連なる晩年の作品で、ウクライナ文学に輝きを与える。法木綾子訳 (群像社 1870円)[amazon] カレン・ラッセル『オレンジ色の世界』 赤ん坊を守るため悪魔に乳を与える母親、化石として発見された少女に恋をする少年……。幻想と現実を不穏に越境する、珠玉の作品集。松田青子訳 (河出書房新社 3080円)[amazon] キム・ボヨン『どれほど似ているか』 韓国発の世界的SF作家が上陸。タイムリープ、AI、サイボーグetc.社会批判とダイナミックな想像力が融合した珠玉の作品集。斎藤真理子訳 (河出書房新社 2530円)[amazon] ワイリー・サイファー『文学とテクノロジー 疎外されたヴィジョン』 〈書物復権〉実験室は19世紀が生んだもう一つの人工楽園だった。芸術に「科学の正確さ」を求めた自然主義者から、純粋な美を目指した象徴主義者、唯美主義者に至るまで、19世紀芸術家たちの多くは「方法」と「技術」に取り憑かれていた。近代における「方法の制覇」「視覚の専制」、それがもたらす距離と疎外の問題を論じて、文学史の革命的書き換えを成し遂げた名著。新装復刊。野島秀勝訳/高山宏解説 (白水社 6380円)[amazon] マルカム・ラウリー『火山の下』 〈書物復権〉故郷から遠く離れたメキシコの地で、酒に溺れていく元英国領事の悲喜劇的な一日を、美しくも破滅的な迫真の筆致で描く。清新な新訳。斎藤兆史監訳 (白水社 予価4180円)[amazon] マルグリット・ユルスナール『火 散文詩風短篇集』 〈書物復権〉神話や古代史の人物を主人公とする9篇の物語。古代ギリシアへの嗜好、古代的に美化された同性愛への偏愛などが瑞々しいかたちで読みとれる。多田智満子訳 (白水社 予価3520円)[amazon] アラン・ロブ=グリエ『弑逆者』 〈書物復権〉絶海の孤島では「眠る人魚の誘惑」が、工場では「王殺しの冒険」が物語られてゆく――ヌーヴォー・ロマンの第一人者の「原風景」を描いた処女作。平岡篤頼訳 (白水社 予価4180円)[amazon] 『文庫で読む100年の文学』沼野充義・松永美穂・阿部公彦・読売新聞文化部編 21世紀に読み継ぐべき文学をポケットに入れて――。第1次世界大戦直前から現代まで100年の海外文学60冊、日本文学40冊を、文庫で読めるものに限り厳選。現代文学の最前線に立つ作家、翻訳家、文学者ら53名が愛の記憶、歴史と社会、生命のきらめき、想像力の冒険のジャンルごとに解説する。来たるべき“世界文学全集”の提案。 (中公文庫 予価946円)[amazon] ドナルド・マイケル・クレイグ『モダンマジック』 「実際に機能する魔術」の習得を目指し、多くの図版とイラストを使って、基礎的な知識や訓練から数々の儀式、そして魔術道具のDIYまで解説。「黄金の夜明け」団、エノキアン、魔女術、タリズマン、召喚魔術、性魔術・錬金術、アストラル体投射、パスワーキング、ケイオスマジックなどの多様なトピックを実践的に取り上げる。〈現代のグリモワ〉ともいうべきマグナム・オーパス。婀聞マリス/折刃覇道/白鳥至珠/バザラダン/HierosPhoenix/Raven 訳 (国書刊行会 予価9680円)[amazon] 《ミステリマガジン》7月号 特集 アガサ・クリスティーの魔力(本邦初訳戯曲「見知らぬ人」他)/北上次郎追悼 内容 (早川書房 1320円)[amazon] 江戸川乱歩/藤田新策『乱歩えほん 押絵と旅する男』 奇才、藤田新策が描く、江戸川乱歩の世にも奇妙な物語。蜃気楼を見にいった私は、帰りの汽車の中で奇妙な絵をもつ異様な男に出会う。128年前、仮想空間の少女に恋した男の物語。 (あすなろ書房 2530円)[amazon] ジョルジュ・シムノン『サン・フォリアン教会の首吊り男 新訳版』 メグレが尾行した不審な男が拳銃で自殺した。事件の陰にちらつく異様な首吊男の絵の真相とは。シリーズ初期の傑作が新訳で登場。伊禮規与美訳 (ハヤカワ・ミステリ文庫 1276円)[amazon] アンデシュ・ルースルンド『三年間の陥穽 上・下』 三年前、同じ日に失踪した二人の少女。グレーンス警部は児童買春の証拠を手に、相棒ホフマンと最も危険な潜入捜査を行うが……。清水由貴子・下倉亮一訳 (ハヤカワ・ミステリ文庫 各1650円)[amazon上・下] シーラン・ジェイ・ジャオ『鋼鉄紅女』 巨大戦闘機械に男女ペアで乗り組み、メカ生物と戦う華夏の国。村娘の則天はそのパイロットに志願するが!? 英国SF協会賞受賞作。中原尚哉訳 (ハヤカワ文庫SF 1650円)[amazon] カート・ヴォネガット『キヴォーキアン先生、あなたに神のお恵みを』 臨死体験後、キヴォーキアン医師の力を借りて死者と会話ができるようになったわたしヴォネガットは、アシモフやヒトラー、シェイクスピアらに対しインタビューをこころみた――著者による死者への架空インタビュー集。ヴォネガット「への」インタビューも併録。浅倉久志・大森望訳 (早川書房 24200円)[amazon] 陳思宏『亡霊の地』 ベルリンで同性の恋人を殺した陳天宏は、刑期を終えて台湾の永靖に戻って来る。折しも中元節を迎えていた故郷では、死者の霊も舞い戻る。天宏の六人の姉と兄、両親や近隣の住民。生者と死者が台湾現代史と共に生の苦悩を語る、台湾文学賞、金鼎賞受賞の長篇。三須祐介訳 (早川書房 3850円)[amazon] マリアーナ・エンリケス『寝煙草の危険』 寝煙草の火で老婆が焼け死ぬ臭いで目覚める夜更け、庭から現れどこまでも付き纏う腐った赤ん坊の幽霊、愛するロック・スターの屍肉を貪る少女たち、死んだはずの虚ろな子供が大量に溢れ返る街……。アルゼンチンの〈ホラー・プリンセス〉エンリケスによる、12篇の恐怖の祭典が開幕。宮﨑真紀訳 (国書刊行会 4180円)[amazon] キャサリン・マキルウェイン『J・R・R・トールキン 自筆画とともにたどるその生涯と作品』 トールキンに関する著作(伝記、評伝、解説書など)を網羅。トールキンファンとして知っておくべきことが過不足なく納められ、また、 美しい水彩画や地図が見開きで掲載されている箇所は見応えがある。「トールキン百科」の決定版。山本史郎訳 (原書房 7480円)[amazon] ジョン・ハント『エベレスト登頂』 〈世界探検全集〉世界の最高峰エベレスト登頂こそ登山家の夢であった。その偉業を達成したハントが、息づまる筆緻で世紀の瞬間を伝える感動の名著。田辺主計・望月達夫訳 (河出書房新社 2750円)[amazon] イブン・バットゥータ『三大陸周遊記』 〈世界探検全集〉足掛け29年。モロッコから西アジア・インドを経て中国へ。14世紀の世界情勢を写す紀行文学の最高峰。前嶋信次訳 (河出書房新社 3025円)[amazon] 渡辺啓助『密林の医師』 昭和19年、春陽堂文庫出版株式会社から陸軍の慰問用として刊行された幻の短篇集『密林の医師』を復刊。解説=日下三蔵。同人出版 (盛林堂ミステリアス文庫 2200円)※文学フリマ東京36(5/21)で販売/通販受付開始 『アーカム・サンプラー書評集』 怪奇小説専門出版社アーカム・ハウスが1948-49年に発行した季刊誌から、ロバート・ブロック、オーガスト・ダーレスによる書評8本を訳出。三門優祐訳。同人出版 (盛林堂ミステリアス文庫 500円)※文学フリマ東京36(5/21)で販売/通販受付開始 《Re-ClaM》vol.10 特集=もう一つの”Q”、パトリック・クェンティン 内容 同人出版 (Re-ClaM事務局)※文学フリマ東京36(5/21)で販売/通販 盛林堂 《Re-ClaM eX》vol.4 Q・パトリック「出口なし」「待っていた女」「嫌われ者の女」を収録。三門優祐訳。同人出版 (Re-ClaM事務局)※文学フリマ東京36(5/21)で販売/通販 盛林堂 シャネル・ベンツ『おれの眼を撃った男は死んだ』 南北戦争で両親を亡くし、おじの家で虐待を受けていた少女は兄によって助けられ、外の世界へと足を踏み出す(「よくある西部の物語」)。裸足で列車を待つ少年は、刑務所の父を想いながら家から離れた町を目指す(「ジェイムズ三世」)。――無秩序な暴力に翻弄されながらも生きてゆく人々の息遣いが、気高く、美しく描き出される。O・ヘンリー賞受賞作を含む全10編、迫力に満ちた傑作短編集。高山真由美訳 (創元推理文庫 1320円)[amazon] ジュリー・ヴァスマー『シェフ探偵パールの事件簿』 海辺のリゾート地でシーフードレストランを経営するパールは副業で探偵をはじめたばかり。そんな彼女のもとに依頼人が。パールの友人の漁師に貸した金が返ってこないので、経済状態を探ってほしいというのだ。依頼は断ったものの、気になって友人の釣り船に行ってみたパールが見つけたのは、変わり果てた彼の姿だった。新米探偵パールが事件に挑むシリーズ第一弾。圷香織訳 (創元推理文庫 1320円)[amazon] ミシェル・ビュッシ『恐るべき太陽』 南の島に集まった人気作家と作家志望の女性5名が次々に死体で発見され……。騙りの天才ビュッシが放つ、クリスティへの挑戦作。 (集英社文庫 1815円)[amazon] ジュール・ヴェルヌ『シャーンドル・マーチャーシュ 地中海の冒険 上・下』 〈ルリユール叢書〉ハンガリー独立運動の道半ばにして斃れた仲間たちから「裁き」の使命を託されたシャーンドル・マーチャーシュ伯爵。果たして彼は、奸智に長けた仇敵たちを捕らえることができるのか。ヴェルヌの〈驚異の旅〉シリーズの中でも最大級のスケールを誇る海洋冒険物語。三枝大修訳 (幻戯書房 4620円/4070円)[amazon上・下] マルティン・レパ『時に囚われて』 マット・ヴァン・デン・ブリルは、妻子の影を求め、さ迷い歩く。愛の力と意識の奥底に隠された秘密が紡ぎだすミステリアスな物語。橋本ダナ訳 (柏艪舎 2200円)[amazon] ヴァシーム・カーン『チョプラ警部の思いがけない相続』 退職日の朝、チョプラ警部に想定外の事態が舞い込んだ。伯父からあろうことか“子象”を相続したのだ。しかも署に到着した警部を待っていたのは少年の水死体。検死解剖もせず事故として処理されたその死に違和感を覚えたチョプラは独自に調査を始めるが、それはインド裏社会をも巻きこむ大事件に発展し……。“元警部と子象”の異色探偵コンビ、最初の事件。インド、ムンバイを舞台にしたミステリ・シリーズ第一作。舩山むつみ訳 (ハーパーBOOKS 1120円)[amazon] マイケル・マン&メグ・ガーディナー『ヒート2』 1988年シカゴ。クリスは強盗団の仲間とメキシコの麻薬カルテルの現金貯蔵庫を狙っている。一方、殺人課の刑事ハナは高級住宅地を襲う連続強盗殺人を追っていた。7年後、LAの銀行強盗事件で男たちの運命が交錯する。米国、南米、アジアを跨ぐ犯罪組織の抗争を壮大なスケールで描く、映画『ヒート』続編。熊谷千寿訳 (ハーパーBOOKS 1590円)[amazon] ダヴィド・ラーゲルクランツ『闇の牢獄』 ストックホルムで起きたサッカー審判員撲殺事件。地域警官のミカエラは尋問の専門家で心理学者のハンス・レッケともに、被害者の裏の顔と、事件の奥に潜む外交機密に突き当たる。上流階級のレッケと移民のミカエラ。奇妙なコンビは時と国境を越え、真実に迫る。吉井智津訳 (KADOKAWA 2640円)[amazon] 大友克洋全集24『Animation AKIRA Layouts & Key Frames 2』 アニメ映画版『AKIRA』(1988)制作に使用された膨大な量のレイアウト、原画、原画修正の中から、原作者にして監督をも務めた大友克洋自身の手によって描かれたものを全3巻に集成。第2巻。 (講談社 7700円)[amazon] ジュリアン・グリーン『モイラ』 「君ほどは白からず……」──ジョゼフは白い肌に赤毛の18歳。人の心を騒がす美貌ながら、極度の潔癖さと信仰心ゆえに学生らしい気軽な会話を嫌悪し、好意を示す人たちと事あるたびに衝突する。孤独の中で、夢想にふける彼の前に運命の少女モイラが現れ……。1920年のヴァージニアを舞台に、端正な文章で綴るグリーンの代表作。石井洋二郎訳 (岩波文庫 1276円)[amazon] 大泉黒石『俺の自叙伝』 ロシア人を父に持ち、若くしてロシア、ヨーロッパを彷徨いトルストイの謦咳に接した。革命から逃れて日本に帰国、その後、東京の下層社会で極貧生活を送りながら旺盛な執筆活動を始める。才能を妬まれ虚言の作家と貶められ、文壇から追放された大正期のコスモポリタン作家が、生まれからデビューまで、数奇な人生を綴る。 (岩波文庫 1155円)[amazon] トーマス・ベルンハルト『息 一つの決断』 「自分の人生を生きるのだ。自分が生きたいように、生きたいだけ、ずっと。」──重篤な病に憑りつかれ、生死の境をさまよう主人公。自身と、そして家族のもとに現れた「死」を前にして、彼は何を見出したのか。ベルンハルト自伝五部作の第三作。今井敦訳 (松籟社 1870円)[amazon] ナイオ・マーシュ『闇が迫る マクベス殺人事件』 〈論創海外ミステリ〉シェイクスピア『マクベス』上演中に起きた殺人事件。 容疑者は関係者のみ。アレン警視が不可解な謎に挑む。シリーズ最終作 Light Thickens (1982)。丸山敬子訳 (論創社 3520円)[amazon] 《ナイトランド・クォータリー》vol.32 未知なる領域へ~テラ・インコグニタ テラ・インコグニタ、それは開拓されていない未知なる場所。さぁ、まだ見ぬ世界への冒険へ! 小説はロバート・E・ハワード、マイクル・ムアコック、ナンシー・A・コリンズ、パウル・シェーアバルト、E・リリー・ユー、A・メリット、粕谷知世、石神茉莉、花田一三六。他にマイクル・ムアコック インタビューなど。 (アトリエサード 1980円)[amazon] カーソン・マッカラーズ『マッカラーズ短篇集』 再評価が進むマッカラーズの短篇集。奇妙な片思いが連鎖する「悲しき酒場の唄」をはじめ、異質でクイアな存在が響きあう触発の物語8編を収録。ハーン小路恭子・西田実訳 (ちくま文庫 1100円)[amazon] ジョゼフ・カルメット『ブルゴーニュ公国の大公たち』 中世末期、ヨーロッパにおいて燦然たる文化的達成を遂げたブルゴーニュ公国。大公四人の生涯と事績を史料の博捜とともに描出した名著。田辺保訳 (ちくま学芸文庫 1980円)[amazon] ユン・ソングン『古本屋は奇談蒐集家』 ソウルに実在の古本屋は、お客が欲しい絶版本を探しながらその人生の物語を蒐集。お客が語るのは、奇妙でシュールで感動的な実話。清水博之訳 (河出書房新社 2640円)[amazon] 亀山郁夫『増補『罪と罰』ノート』 ラスコーリニコフを導いた「神の意志」とは何か? 繰り返される死のモチーフの正体とは? ドストエフスキー研究の第一人者が会話や情景描写を読み解き、『罪と罰』の謎に迫る。 (平凡社ライブラリー 1870円)[amazon] 泡坂妻夫『折鶴』 友禅差しの模様師・脇田は旅先で三味線弾きの芸妓・彩子と出会う。脇田は彼女に惹かれるが、彩子とその師匠の名新内語りが以前ある殺人事件に巻き込まれたことを知る、「忍火山恋唄」。縫箔の職人・田毎は自分の名前を騙る人物に悩まされていた。そんな折、パーティで元恋人の鶴子と再会するが、二人の再会が悲劇に繋がる「折鶴」など全4編。職人の世界を背景に、恋愛小説と本格ミステリを融合した名短編集。第16回泉鏡花文学賞受賞作。 (創元推理文庫 990円)[amazon] エディ・ロブソン『人類の知らない言葉』 近未来。人類はテレパシーを用いて会話する異星文明ロジアと接触し、友好的な関係を築いていた。リディアはニューヨークでロジ人の文化担当官フィッツの専属通訳を務めていたが、通訳の副作用で酩酊に似た状態になっている間に、フィッツが何者かに殺害されてしまう。重要容疑者にされたリディアは、事件の真相を突きとめるべく捜査をはじめるが……。茂木健訳 (創元SF文庫 1540円)[amazon] マリオ・プラーツ『パリの二つの相貌 建築と美術と音楽と』 〈碩学の旅Ⅰ〉永遠の都ローマを知り尽くした碩学が、芸術の都パリと折々のイタリアを逍遙し、何気ない広場や街路や佇まいに秘められた、深い歴史的意味と哀悼と芸術的精華を語る。第一部 パリの光景/第二部 イタリアの印象。伊藤博明・金山弘昌・新保淳乃訳 (ありな書房 2640円)[amazon] アントン・チェーホフ『ヴェーロチカ/六号室 チェーホフ傑作選』 世話になった屋敷の娘に告白されるもどうも心が動かない青年を描く「ヴェーロチカ」、精神科病棟の患者とおしゃべりを続けるうちに周囲との折り合いが悪くなる医師を描く「六号室」など、人間の内面を覗き込んだチェーホフ短篇小説の傑作選。浦雅春訳 (光文社古典新訳文庫 1342円)[amazon] A・E・W・メイスン『オパールの囚人』 〈論創海外ミステリ〉収穫祭に湧くボルドーでアノー警部&リカードの名コンビを待ち受ける怪事件。『薔薇荘にて』『矢の家』に続くアノー探偵譚長編第3作。金井美子訳 (論創社 3960円)[amazon] [honto] ヴァージニア・ハートマン『アオサギの娘』 スミソニアン博物館勤務の鳥類画家ロニはフロリダ州テネキーの実家で「ボイドの死について話したい」というメモをみつける。ロニの父ボイドは25年前に沼地で謎の溺死を遂げていた。ロニは父の死の真相を追うが、背後には湿地に囲まれた田舎町の大きな闇が……。国弘喜美代訳 (ハヤカワ・ミステリ 2970円)[amazon] N・R・ドーズ『空軍輸送部隊の殺人』 1940年7月、英国空軍基地で女性隊員だけを狙う連続殺人事件が発生。犯罪心理学の博士号を持つ飛行士エリザベスが事件に挑む。唐木田みゆき訳 (ハヤカワ・ミステリ文庫 1848円)[amazon] エルナン・ディアズ『TRUST―絆/わが人生/記憶にあること/未来―』 1930年代、NY。金融の寵児、アンドルー・べヴルをモデルにした小説『絆』が出版されたが本人はこれに猛反発。自伝を秘書に代筆させる。その後秘書は当時の回想録を記し、数十年後、アンドルーの妻の日記を発見するが――。視点の異なる四篇からなる実験的小説。井上里訳 (早川書房 3960円)[amazon] ハンナ・ティンティ『父を撃った12の銃弾 上・下』 父の身体に残る幾つもの弾傷。父の暗い過去と母の死の謎を追う少女を美しくリリカルに描いて圧倒的な感動を呼ぶ傑作青春ミステリー。松本剛史訳 (文春文庫 968円/9788円)[amazon上・下] ナオミ・オルダーマン『パワー』 ある日を世界中の女に強力な電流を放つ力が宿り、女が男を支配する社会が生まれた――。ベイリーズ賞受賞、究極のディストピア小説。安原和見訳 (河出文庫 1485円)[amazon] 平川祐弘『ダンテ『神曲』講義 上・下』 偉大なる詩人ダンテの遺した世界の大古典を、もっとも読みやすい日本語訳テキストをもとに読み解く。『神曲』が、いま生動する。 (河出文庫 各1540円)[amazon上・下] ティム・オブライエン『戦争に行った父から、愛する息子たちへ』 戦争の真実を伝え続けて著名な作家による、50歳を過ぎて生まれたふたりの息子と、いつか去り行くこの世界への、愛に満ちたメッセージ。上岡伸雄・野村幸輝訳 (作品社 2640円)[amazon] クレア・マッキントッシュ『ホステージ 人質』 長時間飛行による環境破壊への抗議デモが空港を取り囲み、物々しい雰囲気のなか、ロンドン‐シドニー直行便は353名の乗客を乗せ離陸した。まもなくCAのミナの手元に手紙が届き、そこには「従わなければ、娘は死ぬ」とあった。その頃、ロンドンの自宅では夫アダムと5歳の娘ソフィアに魔の手が忍び寄っていた。英国サスペンスの新女王が放つ、衝撃の航空パニックスリラー。高橋尚子訳 (小学館文庫 1375円)[amazon] ▼4月刊 ジュリアン・グラック『森のバルコニー』 ナチス侵攻前、森深い北仏アルデンヌに動員された兵士たちの、研ぎ澄まされた意識が捉えた終極の予兆――「現実への回帰」と見られ、「客観的手法への転回点」と評された傑作長篇。中島昭和訳 (文遊社 2750円)[amazon] コラム・マッキャン『無限角形 1001の砂漠の断章』 バッサムはパレスチナ人。ラミはイスラエル人。二人の住む世界は隔絶していた。だが、バッサムの娘がゴム弾の犠牲になり、ラミの娘が自殺テロに巻き込まれて亡くなったとき、二人の男の人生が交錯し始める――。実話に基づいて描かれる中東和平版千夜一夜物語。栩木玲子訳 (早川書房 4620円)[amazon] 安藤聡『なぜ英国は児童文学王国なのか ファンタジーの名作を読み解く』 なぜ英国は児童文学王国なのか? アリス、ナルニア国物語、パディントン、そしてハリー・ポッターまで、時代を超えてファンタジーの傑作が生まれる英国。名作誕生の背景に迫る。 (平凡社 4180円)[amazon] 小野俊太郎『シェイクスピア劇の登場人物も、 みんな人間関係に悩んでいる 作品から学ぶ言葉の力』 ハムレットもロミオもジュリエットもシャイロックもリチャード三世も、困った人間関係をどのように乗り越えようとしたのか? シェイクスピアが放つ「言葉の魔力」を作品の展開とともにじっくりと味わい、いざというときの参考にしよう。シェイクスピアが400年以上、人々を魅了し続ける秘密に迫る。 (小鳥遊書房 2420円)[amazon] ジョン・ディクスン・カー『幽霊屋敷 新訳版』 かつて老執事が怪死を遂げた「幽霊屋敷」ロングウッド・ハウスを購入した男が開いた幽霊パーティーの最中、不可解な殺人事件が発生する。現場に居合わせた被害者の妻がこう叫ぶ。「銃を手にした人は誰もいなかった。銃が勝手に壁からジャンプして、空中でとまって、夫を撃ったの」不可能犯罪の巨匠がその持ち味を発揮した、フェル博士シリーズの逸品。三角和代訳 (創元推理文庫 予価990円)[amazon] アシュリー・ウィーバー『金庫破りときどきスパイ』 第二次世界大戦下のロンドン。陸軍のラムゼイ少佐に捕まった金庫破りのエリーは、諜報作戦上の重要文書を回収するため、ある屋敷の金庫を解錠しろと命じられる。彼と一緒に屋敷に忍び込むと、金庫のそばには死体があり、文書は消えていた……。凄腕の女性金庫破りと堅物の青年将校、正反対の二人の波瀾万丈の冒険。辻早苗訳 (創元推理文庫 予価1320円)[amazon] 辻真先『仮題・中学殺人事件 新装版』 「この推理小説中に伏在する真犯人は、きみなんです」。冒頭の名フレーズが有名な本書は、牧薩次(ポテト)と可能キリコ(スーパー)の探偵コンビが活躍する記念すべきシリーズ第一作。辻真先の魅力のすべてが詰まった名作ミステリが新装版で登場。 (創元推理文庫 770円)[amazon] キャサリン・アーデン『塔の少女 〈冬の王〉2』 壮絶な戦いの末に熊を封じたワーシャだったが、その代償はあまりに大きかった。故郷に居場所を失った彼女は、冬の王に与えられた馬を供に男装をして旅に出た。盗賊討伐に向かうモスクワ大公の一行に期せずして加わることになったが、そこには数年前に家を出た兄の姿が。勇敢で聡明なワーシャは大公に気に入られるが……。運命に逆らい生きる少女の成長と戦いを描く、三部作第二弾。金原瑞人、野沢佳織訳 (創元推理文庫 1540円)[amazon] イバン・レピラ『深い穴に落ちてしまった』 ある日、深い穴に落ちてしまった兄弟。暗く湿った世界で、二人は木の根や虫を食べてでも生きようとするが、やがて弟が不思議な幻覚を見始めて……。なぜ兄弟は穴に落ちたのか? なぜ章番号は素数のみなのか? 幻覚に織り交ぜられた暗号とは? 謎と寓意に彩られた物語は、読後、驚愕と感動をもたらす。現代の大人に捧げる寓話。白川貴子訳 (創元推理文庫 770円)[amazon] ローラン・ビネ『HHhH――プラハ、1942年』 HHhHとは「ヒムラーの頭脳はハイドリヒと呼ばれる」を意味する符丁である。〈第三帝国で最も危険な男〉とも〈金髪の野獣〉とも呼ばれた、ユダヤ人大量虐殺の首謀者ハイドリヒ暗殺計画がプラハに潜入した二人の青年によって決行された。それに続くナチスの報復、青年たちの運命……。ナチスとは、いったい何だったのか? ハイドリヒとは何者だったのか? ビネは史実を題材に小説を書くことの本質を自らに、そして読者に問いかける。高橋啓訳 (創元文芸文庫 1430円)[amazon] ドナ・バーバ・ヒグエラ『最後の語り部』 13歳のペトラは家族と共に崩壊目前の地球を脱出し新天地を目指す植民船に乗る。物語を聞かせてくれた大好きなおばあちゃんを残して。目的地到着まで眠っているあいだに、ペトラの脳には膨大な民間伝承や神話がインストールされる。そしてまた家族一緒に暮らすはずだった。だが目覚めたとき……。過去の記憶と想像力を失った世界で物語を武器に戦う少女を描く、最後の語り部の物語。杉田七重訳 (東京創元社 3080円)[amazon] フランソワ・ヴィヨン『ヴィヨン全詩集』 中世ヨーロッパ最高の詩人、フランソワ・ヴィヨンの全詩集。『形見分け』『遺言書』『雑詩篇』──全編が待望の新訳なる。みずみずしい訳詩と詳細な註解解説とを合わせた画期的な一巻本。宮下志朗訳 (国書刊行会 10,780円)[amazon] 『新編 怪奇幻想の文学3 恐怖』 怪奇幻想文学の名作を一望するアンソロジー、第3巻は怪奇幻想文学の根幹をなす「恐怖」をテーマに、モーパッサンからロバート・ブロックまでの10作品を収録。紀田順一郎・荒俣宏 監修/牧原勝志編 【収録内容】「謎」モーパッサン/「死んだユダヤ人」エーヴェルス/「音のする家」M・P・シール/「木に愛された男」ブラックウッド/「顔」E・F・ベンスン/「丘からの眺め」M・R・ジェイムズ/「怪船マインツ詩篇号」ジャン・レー/「クロード・アーシュアの思念」C・ホール・トンプスン/「影にあたえし唇は」ロバート・ブロック/「とむらいの唄」チャールズ・ボーモント (新紀元社 2750円)[amazon] ディオドロス『アレクサンドロス大王の歴史』 アレクサンドロス大王伝、最後の未邦訳作品が、最新の研究結果をふまえた詳細かつ数多の註とともに遂に刊行。本書だけが伝える情報も多く、西洋古代史の新たな扉が開く。森谷公俊訳 (河出書房新社 7370円)[amazon] ケイレブ・アズマー・ネルソン『オープン・ウォーター』 「きみ」は写真家で、「彼女」はダンサー。2017年冬のサウスイースト・ロンドンで出逢ったふたりは、アフリカ系イギリス人のコミュニティやカルチャーのなかですぐに「一番の親友」になり、やがて恋人になる。注目の書き手が優しく詩情豊かに、芸術への愛を存分に込めて綴ったデビュー長編。下田明子訳 (左右社 2530円)[amazon] ジョゼ・エドゥアルド・アグアルーザ『過去を売る男』 〈エクス・リブリス〉語り手は古書店主の家に棲みついたヤモリ(前世はボルヘス)。現代アンゴラ作家のインディペンデント紙外国小説最優秀作品賞受賞作。木下眞穂訳 (白水社 予価2750円)[amazon] ダンティエル・W・モニーズ『ミルク・ブラッド・ヒート』 予期せぬ悲劇によって親友を失った黒人少女に去来したものとは? フロリダを舞台に描かれた心の闇と悲痛な赦しの瞬間。ロクサーヌ・ゲイらが激賞する黒人文学の新世代による衝撃の短篇集。押野素子訳 (河出書房新社 2695円)[amazon] 蔡駿『幽霊ホテルからの手紙』 バスで隣り合わせた血だらけの美しい女性から木の小箱を預かった作家の周旋は、「あの箱を届けて」という留守電のメッセージに従い、幽霊旅館を訪れるが……。〈中国のスティーヴン・キング〉と呼ばれる大ベストセラー作家が放つ、巧緻を極めたサスペンスホラー。舩山むつみ訳 (文藝春秋 2145円)[amazon] ドナルド・レイ・ポロック『悪魔はいつもそこに』 戦後まもないオハイオ州南部の田舎町。病弱な母親の死後、父親も喉をかき切り後追い自殺し、祖母に引き取られたアーヴィンは、義妹レノラとともに育つ。狂信的だった亡父にまつわるトラウマを抱えながら家族を守ろうと懸命にもがく彼の運命は、欲望にまみれた牧師、殺人鬼夫婦、悪徳保安官らの思惑と絡み合い、暴力の連鎖へと引きずり込まれていく。狂信と暴力をまとった、慟哭の黙示録。熊谷千寿訳 (新潮文庫 990円)[amazon] サンダー・コラールト『ある犬の飼い主の一日』 中年男ヘンクは、離婚して老犬と暮らすICUのベテラン看護師。かわいい姪の誕生日の朝、散歩中、へばってしまった老犬を介抱してくれた女性がいた。その名はミア。恋などというものからは遠ざかって生きてきたヘンクだが、久々にときめいている自分を発見する。戸惑う彼の背中を、17歳の姪がどんと押す。人生の辛苦をさまざまに経験してきた男が、生きるよろこびを取り戻していくさまを描いたオランダのベストセラー長篇。長山さき訳 (新潮クレスト・ブックス 予価2145円)[amazon] エドワード・ゴーリー『どんどん変に… エドワード・ゴーリー・インタビュー集成』 毛皮のコートとテニスシューズ姿でバレエ鑑賞。映画は1日3本、『源氏物語』とネコを愛し、生涯独身を貫いた作家の秘密満載の一冊。カレン・ウィルキン編/小山太一・宮本朋子訳 復刊 (河出書房新社 2750円)[amazon] サッシャ・ロスチャイルド『ブラッドシュガー』 30歳、臨床心理士。幸せな新婚生活を送っていたルビーだが、ある日糖尿病を患う夫が夜間低血糖で急死。ほどなく、ひとりの刑事が訪ねてくる。ルビーが夫を殺害したと疑っているのだ。彼女の近くでは四人の人間が亡くなっていた。大陪審の審理がはじまり、彼女はサイコパスとして連日トップニュースを飾ることに――。久野郁子訳 (KADOKAWA 2420円)[amazon] 《怪と幽》vol.013 第一特集「怪奇大特撮」。第二特集「民俗写真家 芳賀日出男」。 (KAODOKAWA 2200円)[amazon] ニーナ・デ・グラモン『アガサ・クリスティー失踪事件』 1926年。36歳の新進作家アガサは、愛人ナンと再婚するという夫アーチーと大喧嘩の果てに失踪する。警察の捜索隊が組織されるが一向に行方は知れない。一方、アガサから夫を略奪したナンにはある秘密があった。11日間の失踪中、アガサとナンに何が起こったのか? 世界で最も有名なミステリ作家の実際の失踪事件をもとに描かれた衝撃のサスペンス。山本やよい訳 (早川書房 2970円)[amazon] グレッグ・ベア『鏖戦(おうせん)/凍月(いてづき)』 遠未来、変貌した人類が異星人と果てしのない戦いを繰り広げるさまを壮大なスケールと美しいヴィジョンで描く「鏖戦」。月コロニーでの、壮絶かつ衝撃的な実験を描いた「凍月」。2022年11月に逝去したベアを追悼する、ハードSFの代表中篇2篇を収録した一冊。酒井昭伸・小野田和子訳 (早川書房 3190円)[amazon] トマス・H・クック『緋色の記憶 新版』 村にやってきた美しい美術教師。悲劇はここから始まった。老弁護士の回想で語られる事件の真相とは? 傑作ミステリがついに復刊。鴻巣友季子訳 (ハヤカワ・ミステリ文庫 1650円)[amazon] デイヴィッド・ギルマン『イングリッシュマン 復讐のロシア』 マネーロンダリングを内偵中のMI6局員がロンドンで殺された。依頼を受けた外人部隊元兵士は、ロシア最深部の刑務所に潜入する。黒木章人訳 (ハヤカワ文庫NV 1672円)[amazon] ヴァレリー・ペラン『あなたを想う花 上・下』 ヴィオレットはブルゴーニュの小さな町の墓地管理人。墓参者がいなくなった墓まできれいに手入れしている。ある時、一緒の墓に入ると決めた男女の存在が、彼女の人生を大きく揺るがすことに。別れの場所で輝く生を描く感動の長篇。高野優・三本松里佳訳 (早川書房 各1980円)[amazon上・下] キャサリン・レイヴン『キツネとわたし ふしぎな友情』 毎日16時15分になると、彼女の家の前には一匹の野生の〈キツネ〉がやってくる。生物学者であれば動物を擬人化してはならないはずなのに、彼女は徐々に友情を感じ始めていた。その出会いと別れを通じてモンタナ州の豊かな自然が精緻に描かれる、傑作エッセイ。梅田智世訳 (早川書房 3630円)[amazon] 《SFマガジン》6月号 〈特集 藤子・F・不二雄のSF短編〉 (早川書房 1320円)[amazon] ジェフリー・アーチャー『ロスノフスキ家の娘 上・下』 祖国ポーランドを追われ、無一文でアメリカの地に辿り着いたアベル・ロスノフスキは不撓不屈の精神で、一代でホテル王国を築き上げた。その一人娘フロレンティナは一流の教育を受けて才気煥発に育ち、当然父親の後を継ぐものと思われた。だが、父の宿敵ケインの息子との出会いがふたつの一族の運命を狂わせる。ベストセラー『ケインとアベル』の姉妹編。原書改訂版を初邦訳。戸田裕之訳 (ハーパーBOOKS 1080円/1000円)[amazon上・下] アベル・カンタン『エタンプの預言者』 65歳、元タレント歴史学者。リベラルで、しがらみのないインテリのつもりだった。まちがえた選択をし続けて65年。どうやら俺は、社会から取り残されたらしい。ゴンクール賞最終候補、現代社会への痛烈な批判を込めた注目作。中村佳子訳 (KADOKAWA 2640円)[amazon] ポール・ギャリコ『ミセス・ハリス、ニューヨークへ行く』 ロンドンで家政婦をしている61歳のハリスおばさんと親友バターフィールドおばさん。お隣のヘンリー少年が里親に殴られていると知り、実の父がいる米国へ連れて行きたいと願うが、貧しい二人には無理だった。ところが得意先の社長夫妻のニューヨーク転勤に同行することになりチャンス到来。無謀にも少年を密航させようとする。亀山龍樹訳 (角川文庫 1188円)[amazon] 小倉孝保『中世ラテン語の辞書を編む 100年かけてやる仕事』 英国は2013年、準国家プロジェクトとして『英国古文献における中世ラテン語辞書』を完成。プロジェクト始動は第一次世界大戦前夜の1913年。辞書の完成までに費やされた時間は百年。ラテン語の言葉の豊かさと歴史、現代日本で辞書を編む学者や編集者へのインタビューを通じて、文化的活動の価値までを描き出すノンフィクション。 (角川ソフィア文庫 1144円)[amazon] 松岡正剛『千夜千冊エディション 昭和の作家力』 「思い出す」には近すぎる――「昭和」は総じて痛ましく、その言葉の群れはたいてい過剰に陶冶されていた。詩、文学、大衆小説に注ぎ込まれたその熱は、激動のうねりを浴びて変化しながら一時代を築いていく。あまりに多様、あまりに孤独、あまりに熱っぽい。文学作品から引き出す新たな昭和像。 (角川ソフィア文庫 1870円)[amazon] ジュール・ヴェルヌ『エクトール・セルヴァダック』 〈ジュール・ヴェルヌ〈驚異の旅〉コレクション〉大晦日の夜、アルジェリア駐在のフランス陸軍士官エクトール・セルヴァダックは、従卒とともに、尋常でない衝撃を受けて気を失う。意識を取り戻した彼らは、西と東が逆転、一日の長さが半減し、重力が六分の一となり、誰もいない孤島にいた……。彗星の一撃によって地球もろとも宇宙空間に運び去られたセルヴァダック一行の、パラレルワールドで展開される太陽系ロビンソン漂流記。〈驚異の旅〉の転換点を刻する問題作、初の完訳。石橋正孝訳 (インスクリプト 5720円)[amazon] ダニエル・ハーン『新版オックスフォード世界児童文学百科』 1983年の初版から、総合的に改訂、更新。 900 を超える新しい項目で、最新の情報を網羅した第2版(2015)。新しい作家や挿絵画家が紹介され、マンガ、ファンフィクション、非印刷物出版などの開発についての記事と、賞や受賞者に関する追加情報を加えた全面改訂版。白井澄子・西村醇子・水間千恵 監訳 (原書房 13,200円)[amazon] イ・コンニム『殺したい子』 校舎裏で殺された女子生徒、容疑者は“親友”とされる一人の少女。食い違う18の証言、やがて浮かび上がる戦慄の真実。矢島暁子訳 (アストラハウス 1870円)[amazon] 高橋和久『別の地図 英文学的小旅行のために』 訳者によるオーウェル『一九八四年』論、絵解きによる18世紀英文学史、フォースター再評価、20世紀末読書案内……メジャーからマイナーまでの幅広い小説批評、そして社会批評を存分に味わえる贅沢な一冊。学問、大学と政治の問題も深刻極まる中、過去に遡り現在を見直す。目次 (松柏社 2420円)[amazon] 楊双子『台湾漫遊鉄道のふたり』 1938年、講演旅行で日本統治下の台湾へ渡る作家青山千鶴子と、現地で出会う通訳担当の台湾人王千鶴。二人の“千鶴”は台湾縦貫鉄道に乗り、各地へ遠征する。日台女ふたり鉄道旅。出会って、恋して、台湾を食べつくす。気鋭の台湾作家によるシスター“フード”小説。三浦裕子訳 (中央公論新社 2200円)[amazon] 長尾宗典『帝国図書館 近代日本の「知」の物語』 近代国家への道を歩み出した明治日本。国家の「知」を支えるべく国立の図書館、帝国図書館が作られた。しかし、「東洋一」を目指すも慢性的な予算不足、書庫は狭隘で資料を満足に保管できなかった。戦時には資料の疎開にも苦しんだ。帝国図書館に人々はどのような思いを抱いて通ったのか。その前身の書籍館から、1949年に国立国会図書館へ統合されるまでの80年の歴史を活写する。 (中公新書 1012円)[amazon] 高木彬光『妖説地獄谷 上・下』 天保13年、ある春の宵、旗本の次男坊早乙女主計は、高名な女侠人魚のお富と出会う。それは先の知れぬ宿命劇の始まりであった。次々と現れる謎を追いかけるうちに見えてきたのは、この江戸に渦巻く巨大な陰謀……。推理小説界の巨匠、高木彬光の伝奇時代長篇。 (春陽文庫 各1210円)[amazon上・下] ショーン・タン『アライバル Paperback Edition』 世界中に衝撃を与えた「文字のない物語」。知らない土地に移り住み、新たな人生を歩む人間を、魅力的なイラストで綴った感動の絵本。 (河出書房新社 1980円)[amazon] 『英国古典推理小説集』佐々木徹編訳 「殺人があったのは二十二年前の今日――」。ディケンズ『バーナビー・ラッジ』とポーによるその書評、英国最初の長篇推理小説と言える「ノッティング・ヒルの謎」を含む、古典的傑作8編を収録(半数が本邦初訳)。読み進むにつれて、推理小説という形式の洗練されていく過程がおのずと浮かび上がる画期的な選集。【収録内容】『バーナビー・ラッジ』(第一章より)ディケンズ、(付)ポーによる書評/「有罪か無罪か」ウォーターズ/「七番の謎」ヘンリー・ウッド夫人/「誰がゼビディーを殺したか」W・コリンズ/「引き抜かれた短剣」キャサリン・ルイーザ・パーキス/「イズリアル・ガウの名誉」チェスタトン/「オターモゥル氏の手」トマス・バーク/ノッティング・ヒルの謎」チャールズ・フィーリクス (岩波文庫 予価1430円)[amazon] デイヴィッド・ガーネット『狐になった奥様』 テブリック氏の夫人シルヴィアはまだ23歳、立ち居振る舞いは上品で人並み優れた美形。いつものように二人で散歩に出かけるが、突然、夫人が狐に変身してしまう。内面は以前のままだった夫人が次第に野生化していき……。復刊 (岩波文庫 627円) エドワード・ゴーリー『薄紫のレオタード』 ゴーリーがこよなく愛したニューヨーク・シティ・バレエへの思いが詰まった幸せな絵本。小さな姪っ子・甥っ子とのバレエ団訪問。柴田元幸訳 (河出書房新社 1210円)[amazon] 四方田犬彦『大泉黒石 わが故郷は世界文学』 「俺は国際的の居候」と嘯く大正時代の作家、大泉黒石。ロシア人を父に持ち、複数語に堪能なコスモポリタンだった。『中央公論』連載の『俺の自叙伝』で一世を風靡するが、才能を妬まれ、虚言家だと罵られ文壇追放、忘れられた作家となる。国家も民族も飛び越え、人間性の普遍へと向かおうとした異端の文学者が、今、蘇る。 (岩波書店 2750円)[amazon] ボブ・ディラン『ソングの哲学』 ディランが66の曲を選びポピュラー音楽の奥義を明かす。詞の世界にきみを導く抒情的散文、社会や制度に切り込む精緻な楽曲分析、150点余の豊富な図版──突っ走る詩人/世界的な文学者による音楽批評の到達点。神秘的にして闊達自在、辛辣にして深遠。アメリカの内奥に分け入り、うたのなかに存在の意味、時の超越を透かし見る。佐藤良明訳 (岩波書店 4180円)[amazon] プラトン『ゴルギアス』 当時を代表するソフィストであるゴルギアス、その弟子ポロス、気鋭の政治家カリクレス、ソクラテスの崇拝者カイレポンの四人を相手にしてソクラテスが対話を展開する。中心的な主題は「弁論術とは何か」。プラトン初期対話篇の代表作、練達の訳者による新訳。三嶋輝夫訳 (講談社学術文庫 1298円)[amazon] 笹沢佐保『アリバイの唄』 〈有栖川有栖選 必読! Selection〉タクシードライバー夜明日出夫。ある晩乗せたカップルの女が三週間後に殺害され……前代未聞の大トリックを暴く。 (徳間文庫 990円)[amazon] 梶龍雄『若きウェルテルの怪死』 〈梶龍雄 驚愕ミステリ大発掘コレクション〉飲み屋で金谷老人から、旧制二高時代の日記を預かった編集者の私。日記は金谷の友人の睡眠薬自殺から始まっていた……。 (徳間文庫 1045円)[amazon] 半村良『不可触領域/軍靴の響き』 〈半村良“21世紀”セレクション 【陰謀と政治】編〉現代社会へ警鐘を鳴らす傑作「不可触領域」、戦争の危機が近付く恐怖を描いた長編「軍靴の響き」に短編を併録したセレクション。 (徳間文庫 1078円)[amazon] 池上英洋『錬金術の歴史 秘めたるわざの思想と図像』 錬金術は古代より人類が追求した見果てぬ夢だった。完全性と永遠性を象徴する金の性質から、錬金術は不老不死の思想とも結びつく。本書ではエジプトの冶金術から中国の錬丹術、アラビアの錬金術を経てルネサンス期に隆盛を見た西洋錬金術の歩みを、摩訶不思議な奥義書の図像とともに紐解いていく。 (創元社 2750円)[amazon] 井原西鶴『好色一代男』 江戸時代を代表する俳諧師西鶴による大ベストセラー読み物「浮世草子」。上方で生まれた世之介。7歳にして恋を知り、島原、新町、吉原に長崎、宮島の廓へと、数々の恋愛(男も女も)を重ね、色道を極めようとする54年間を描いた一代記。中嶋隆訳 (光文社古典新訳文庫 1210円)[amazon] トム・ミード『死と奇術師』 1936年、ロンドン。高名な心理学者リーズ博士が、自宅の書斎で何者かに殺されているのが発見された。現場は密室状態。凶器も見つからず、死の直前に博士を訪れた謎の男の正体もわからなかった。この不可能犯罪に、元奇術師の探偵ジョセフ・スペクターが挑む。中山宥訳 (ハヤカワ・ミステリ 1980円)[amazon] ヘザー・ヤング『円周率の日に先生は死んだ』 はずれの丘で数学教師の焼死体が見つかった。第一発見者は11歳の教え子。生前教師と 親しかった彼は何かを隠しているようで……。不二淑子訳 (ハヤカワ・ミステリ文庫 1870円)[amazon] フランク・ハーバート『デューン 砂漠の救世主 新訳版 上・下』 ポールが星間帝国の玉座について12年。ベネ ・ゲセリットや航宙ギルドらが陰謀をたくらむが……。壮大な未来叙事詩第二部を新訳で。酒井昭伸訳 (ハヤカワ文庫SF 各924円)[amazon上・下] パオロ・コニェッティ『狼の幸せ』 人生に疲れた40歳のファウストは、長年暮らしたミラノを離れてイタリアンアルプス近くのレストランで働き始める。山に囲まれ次第に人間らしさをとりもどしていたとき、狼たちが山からおりてきていた。ストレーガ賞受賞作家が描く、人生やり直し山岳小説。飯田亮介訳 (早川書房 2640円)[amazon] ヘニング・マンケル『スウェーディッシュ・ブーツ』 一人孤島に住む、元医師のフレデリックは、就寝中の火事ですべてを失う。その後警察の調べで原因が放火であったことが判明、さらに自分の家に火を付けたと疑いをかけられてしまう。そんなとき、離れて住む娘のルイースから、パリで警察に捕まっているので助けて欲しいという電話が入る。フレデリックは単身パリに向かうが……。CWAインターナショナルダガー賞を受賞した、北欧ミステリの帝王最後の作品。柳沢由実子訳 (東京創元社 2860円)[amazon] ディーマ・アルザヤット『マナートの娘たち』 死んだ弟の遺体を清める姉の述懐を情感豊かに紡ぐ「浄め(グスル)」。アラブ系移民2世の「わたし」と、破天荒な人生をおくった伯母の物語に、窓から飛び降りた若い女と女神の邂逅を描く幻想的な文章を織り込んだ「マナートの娘たち」。新聞記事や公文書、手紙、SNS投稿など多彩な媒体のコラージュで、シリア系移民夫婦のリンチ事件を核にアメリカという国家に潜む暴力性や人間の本質を示す傑作「アリゲーター」など全9編。現代アメリカ文学注目作家のデビュー短編集。小竹由美子訳 (東京創元社 2420円)[amazon] 《紙魚の手帖》 vol.10 桜庭一樹、新連載『名探偵の有害性』スタート。乾ルカ、近藤史恵、笹原千波、白尾悠、雛倉さりえなど豪華執筆陣で贈る読切特集「舞台!」。宮澤伊織、読切短編掲載ほか。 (東京創元社 1540円)[amazon] ルイズ・ブルックス『ハリウッドのルル』 サイレント時代の映画界で活躍、グレタ・ガルボ、ディートリッヒと並び称される伝説の女優、ルイズ・ブルックスが、〈自由な精神の権化〉たる自らの人生を軽やかに語った自伝的エッセイ(1982年刊)。“宿命の女”ルルを演じて神話的存在となった代表作『パンドラの箱』ほか主演映画の舞台裏、ハリウッド・スターや映画監督との交友、そして魑魅魍魎が跋扈するハリウッド・バビロンの〈天国と地獄〉を闊達な文章で綴る。美麗写真多数収録。序文=ウィリアム・ショーン 解説=ロッテ・H・アイスナー、ケネス・タイナン/宮本高晴訳 (国書刊行会 3520円)[amazon] ダグ・ジョンストン『ダークマター スケルフ家の探偵たち』 エディンバラで100年続き、10年前から探偵業も営むスルフ葬儀社。当主ジムの葬儀の直後、70歳の妻ドロシーは夫のある秘密を知ってしまう。45歳バツイチの娘ジェニーは解雇通告を受け、20歳の孫娘ハナはフラットメイトが突然失踪し衝撃を受ける。三世代の悩める女たちは、それぞれの「案件」を解決しようと行動に出るが……。美しい街を舞台に繰り広げられるブラックユーモア・ミステリー。菅原美保訳 (小学館文庫 1320円)[amazon] 『藤子・F・不二雄SF短編コンプリート・ワークス 1』 [amazon] 『藤子・F・不二雄SF短編コンプリート・ワークス 7』 [amazon] (小学館 各1111円) 若島正『盤上のパラダイス』 マニアたちが熱愛する雑誌『詰将棋パラダイス』初代編集長の豪放磊落な生き様と、そこに集う数奇な人々の群像を活写した「愛の物語」。作品完成に命をかける詰将棋作家、暗い森の中をさまよう解答者、悪魔のような検討者、天才棋士から病中の老爺まで。詰将棋界の第一人者が描く、笑いと涙の詰まった天国にいちばん近い島。単行本版に大幅に加筆した決定版。図面多数。 (河出文庫 1089円)[amazon] 山前譲編『文豪たちの妙な旅 ミステリ・アンソロジー』 日本文学史に名を残す文豪が書いた「変な旅」を集めたアンソロジー。旅には不思議がつきもの、ミステリー感漂う異色の9篇を収録。【収録内容】「夜航船」徳田秋聲/「天鵞絨」石川啄木/「温泉宿」林芙美子/「島からの帰途」田山花袋/「幻影の都市」室生犀星/「二人の青木愛三郎」 宇野浩二/「エトランジェ」堀辰雄/「虎狩」中島敦/「猫町」萩原朔太郎 (河出文庫 979円)[amazon] シモーヌ・ド・ボーヴォワール『決定版 第二の性Ⅱ 体験 上・下』 Ⅰ巻の「事実と神話」をもとに、現代の女たちの生を、さまざまな文学作品や神話、精神分析を渉猟しつつ分析する。上巻は子ども時代、娘時代から、性の入門、同性愛の女、結婚した女まで。下巻は母親、売春婦、熟年期から老年期へ、ナルシシストの女、恋する女、そして解放まで。『第二の性』を原文で読み直す会=訳 (河出文庫 1320円)[amazon上・下] ベルトラン・マルシャル『サロメ 詩と散文のはざまに――ボードレール・マラルメ・フローベール・ユイスマンス』 ヨーロッパ世紀末における《宿命の女(ファム・ファタル)》の代表的存在であり、文学・絵画・オペラ・舞台、彫刻、バレエとあらゆる芸術分野で表象された《サロメ》。近代の偉大な文学者たちのテクストを対象として、サロメ流行の根底にあった歴史的命題を浮かび上がらせる、マラルメ研究の泰斗による《サロメ》批評。大鐘敦子・原大地訳 (水声社 6050円)[honto] バーナード・ゴットフリード『アントンが飛ばした鳩 ホロコーストをめぐる30の物語』 ポーランドでの平穏な子供時代から死と隣り合わせのナチス支配下の日々、悲喜交々の戦後を、写真家の精緻な目で綴る記録文学の傑作。柴田元幸・広岡杏子訳 (白水社 3850円)[amazon] 『ギリシャSF傑作選 ノヴァ・ヘラス』フランチェスカ・T・バルビニ/ フランチェスコ・ヴァルソ編 ギリシャは世界初のSFが書かれた国でもある。そして「SFというジャンルは、長い歳月の果てにようやく発祥の地にもどって受け入れられた」(「はじめに」)。現代ギリシャSFアンソロジー。ヴァッソ・クリストウ他。中村融他訳 (竹書房文庫 1430円)[amazon] セバスチャン・フィツェック『座席ナンバー7Aの恐怖』 脅迫される精神科医、誘拐犯を追う女医。犯人は機内にいるのか、それとも……。ショック満載、息もつかせぬドイツ最強のサスペンス。酒寄進一訳 (文春文庫 1166円)[amazon] アンドレ・ジッド『地の糧』 君はすっかり読んでしまったら、この本を捨ててくれ給え。そして外へ出給え――。語り手は、青年ナタナエルに語りかける。「善か悪か懸念せずに愛すること」「賢者とはよろずのことに驚嘆する人を言う」「未来のうちに過去を再現しようと努めてはならぬ」。二十代のジッドが綴った本書は、欲望を肯定し情熱的に生きることを賛美する言葉の宝庫である。若者らの魂を揺さぶり続ける青春の書。今日出海訳 (新潮文庫 605円)[amazon] ヴィトルト・シャブウォフスキ『独裁者の料理人 厨房から覗いた政権の舞台裏と食卓』 歴史の重要な瞬間に彼らは何を目にしたか?五人の独裁者に仕えた料理人たちの悲喜こもごもの人生。登場する独裁者はサダム・フセイン(イラク)、イディ・アミン(ウガンダ)、エンヴェル・ホッジャ(アルバニア)、フィデル・カストロ(キューバ)、ポル・ポト(カンボジア)。2021年度グルマン世界料理本賞受賞作。芝田文乃訳 (白水社 3300円)[amazon] 『ブラジル文学短篇傑作集』 20世紀ブラジル社会の活力と喧騒を伝える短篇小説集。少女の視点から世界の残酷さとシングル・マザーの寄る辺なさを綴った「タチという名の少女」をはじめ、「明かりの消えた人生」「白い丘の家」など全12篇を収録。岐部雅之編 (水声社 2200円)[honto] ▼3月刊 アンガス・フレッチャー『文學の実効 精神に奇跡をもたらす25の発明』 文学作品が人間の心に作用するとき、我々の脳内では実際に何かしらの変化が起きているのだろうか。神経科学と文学の学位を持ち、スタンフォード大学でシェイクスピアを教える著者が、文学が生み出した「人を救済する25の発明」と、その効能を解説。山田美明訳 (CCCメディアハウス 4950円)[amazon] シャロン・ドデュア・オトゥ『アーダの空間』 〈エクス・リブリス〉〈Ada〉という同じ名前を持つ4人の女――1459年、アフリカの海浜の村で、赤子を失って悲嘆に暮れる若い母アダー。1848年のロンドンで、ディケンズと逢瀬を重ねる伯爵夫人で数学者のエイダ。1945年、ドイツの強制収容所で慰安婦をさせられているポーランド人のアダ。そして2019年、現代のベルリンで、差別に苦しみながらアパート探しを続ける大学生アーダ。500年の時空を超えた輪廻転生の壮大な物語。鈴木仁子訳 (白水社 3960円)[amazon] ロジェ・グルニエ『長い物語のためのいくつかの短いお話』 カフェレストランの楽団で毎晩同じような演奏を繰り返している男が、ふと出会った娼婦を必死に探す「チェロ奏者」、人生を振り返り、自分を処罰すべく自殺しようとした老人の結末「ある受刑者」、通信社で働く〈わたし〉が元同僚の男を見かけて後を付ける「サンドイッチマン」。〈彼〉と初恋相手の美少女との交わりを、両者の人生の軌跡とともに描く「長い物語のための短いお話」ほか、心に沁み入る全13篇。人生の旨味と苦味と可笑しみを洒脱な筆致で描く、著者92歳の到達点。宮下志朗訳 (白水社 2860円)[amazon] フランツ・アントン・メスマー『メスメリズム 磁気的セラピー』 催眠学、暗示療法の祖、メスマーの生涯と学説。スピリチュアル・サイコロジーの概略も紹介している基本文献。待望の本邦初訳。 ギルバート・フランカウ序論。 広本勝也訳 (鳥影社 1980円)[amazon] ジャスパー・フォード『クォークビーストの歌』 魔力が衰えた世界の物語。魔法マネジメント会社の社長代理ジェニファーは、国王の陰謀でライバル会社との魔法対決に挑むことに。対決の方法は、どちらが先に橋を修理できるか。魔術界の未来はジェニファーたちの双肩にかかっているのだが……。ないとうふみこ訳 (竹書房文庫 1430円)[amazon] ローラン・ビネ 『文明交錯』 インカ帝国が滅びたのは、鉄、銃、馬、抗体を持たなかったからだと言われている。では、それらを彼らが持っていたとしたら世界はどう変わっただろうか? スペインがインカをではなく、インカがスペインを征服したとしたら、ヨーロッパ全体はどう変わったのか? という架空の逆転世界を描いた、大胆かつスリリングな歴史改変小説。橘明美訳 (東京創元社 3300円)[amazon] ジェイムズ・ホワイト『生存の図式』 第二次世界大戦中、連合国輸送船団のタンカーがUボートに沈められた。だが船内は生存可能な状況が保たれており、生き延びた男女五人は海中に閉じこめられたまま生活を始める。一方、はるか恒星間をゆく異星人の巨大な移民船団があった。彼らは冷凍睡眠のもと、十数世代かけて居住可能な惑星を目指している。ふたつの物語が交互に語られる本格SF長編。伊藤典夫訳 (創元SF文庫 1100円)[amazon] 『合作探偵小説コレクション3 空中紳士/南方の秘宝』 江戸川乱歩、小酒井不木、国枝史郎、長谷川伸、土師清二、平山蘆江が参加した〈耽綺社〉同人作品集。『空中紳士』『ジャズ結婚曲』『南方の秘宝』『白頭の巨人』『意外な告白』『残されたる一人』に、資料篇として座談会他を収録。日下三蔵編 (春陽堂書店 4180円)[amazon] ペーター・ハントケ『カスパー』 生まれてから16年間地下室に閉じ込められ、一切の人間的な営みから隔離されて育った孤児である少年が突然、文明社会の中に投げ込まれたとき……。19世紀初の実在人物カスパー・ハウザーを現代を生きる孤独な個人として甦らせた比類なき「言葉の拷問劇」(1968年初演)。40年ぶりの新訳。池田信雄訳 (論創社 1980円)[amazon] ![]() ジョン・ウェブスター『悪魔の訴訟 またのタイトル、女が法に訴える時、悪魔が忙し』 「ああ、嫉妬心、何としばしば、訴訟という形で地獄から悪魔を呼び出したことか!」企み、勘違い、すれ違い、裏切り、嘘……結婚と財産をめぐり、それぞれの思惑が交差する。シェイクスピアの次世代、新時代に登場した劇作家、ジョン・ウェブスター最後の単独作品で唯一の悲喜劇、本邦初訳。吉中孝志訳 (小鳥遊書房 3190円)[amazon] ジェームズ・マルコム・ライマー/トマス・ペケット・プレスト『吸血鬼ヴァーニー 或いは血の饗宴 1』 〈奇想天外の本棚〉真夜中、嵐の吹きすさぶなか古屋敷の寝室でひとり眠る美しい少女フローラを襲う黒い影。むき出しの牙、長い鉤爪、怪物は少女の頚を引き寄せ、その牙をたてる――。週刊形式で出版され、19世紀英国の読者大衆を熱狂させた恐怖読物《ペニー・ドレッドフル》最高最大の吸血鬼小説、待望の全訳刊行開始。三浦玲子・森沢くみ子訳 (国書刊行会 2750円)[amazon] ウィリアム・トレヴァー『ディンマスの子供たち』 〈ウィリアム・トレヴァー・コレクション〉その少年はすべてを目撃していた――イングランドの架空の港町ディンマス、人々は複雑な事情がありながらも平和な生活を営んでいる。しかし、一人の少年によって人々の意識の裏に潜む欲望・願望・夢が暴き出されていく。平凡な海辺の町を丸ごと描いて、読む者を戦慄させるトレヴァー初期の衝撃作。宮脇孝雄訳 (国書刊行会 3080円)[amazon] 木越俊介『知と奇でめぐる近世地誌 名所図会と諸国奇談』 ブックレット〈書物をひらく〉地域への関心が多様な地誌、名所図会や諸国奇談を生み出した近世後期、各地の今と歴史に向かう視線は妖異や奇譚をどう扱ったか。その仕方に知のありかとその変容を読みとる。 (平凡社 1100円)[amazon] 正木香子『タイポグラフィ・ブギー・バック』 活版や写植からデジタルフォントへ、文字印刷が急激な変化を遂げた平成の30年間。雑誌、マンガ、CD、テレビ……多様なメディアの書体の変遷から時代を読み解く。 (平凡社 1980円)[amazon] 尹芷汐『社会派ミステリー・ブーム 日中大衆化社会と〈事件の物語〉』 犯罪・非行・スキャンダル――事件を描いた物語の流行から〈生きた戦後史〉が浮かびあがる。 松本清張や水上勉、森村誠一などの社会派ミステリー作品は、日本でブームを起こし、その後中国など海外でも流行。その根底にあるものとは何か。映像化作品や関連する〈事件〉の報道、同時代の言説など、多角的なアプローチでブームの構造的解明をめざす。目次 (花鳥社 4950円)[amazon] ピーター・トーネマン『古代ローマ人は皇帝の夢を見たか アルテミドロス『夢判断の書』を読む』 類例のない貴重な記録を同時代の社会・文化・宗教に位置づけながら、当時の人々の希望と不安、その前提となった価値観を読み解く。藤井崇・藤井千絵訳 (白水社 4180円)[amazon] ジョスリン・ゴドウィン『キルヒャーの世界図鑑 よみがえる普遍の夢 新装版』 中国文明エジプト起源説、地下世界論、暗号論、作曲コンピュータや幻燈器の発明など、17世紀のイエズス会学僧アタナシウス・キルヒャーの多方面にわたる業績を、その著書から収集した綺想に満ちた図像で紹介、奔放な想像力の世界を再生したロングセラー。1986年の邦訳初版から図像を全面リマスター&20ページ増補。川島昭夫訳 (工作舎 3520円)[amazon] 紫金陳『知能犯の時空トリック』 計画停電の夜、県検察院のトップが殺害された。周囲の監視カメラがシャットダウンする間隙を突いた犯行。唯一の目撃証言が指し示した容疑者は――地域の人々から愛されるベテラン警官、葉援朝だった――。前作『知能犯之罠』を上回る狡猾な計画犯と捜査陣の頭脳戦、その果てにある壮絶な人間ドラマ。阿井幸作訳 (行舟文化 1650円)[amazon] 『アーカム・ハウスの本』三門優祐・小野純一編 1939年、オーガスト・ダーレスとドナルド・ワンドレイが設立した怪奇小説専門出版社アーカム・ハウス。同社刊行書籍(1939-2010)の装画・装幀者・頁数・初版部数・価格・収録作品等のデータを収録した一冊。邦訳情報、書影(モノクロ)も掲載。 (盛林堂ミステリアス文庫 1500円) クリス・ゴスデン『魔術の歴史 氷河期から現在まで』 魔術はあらゆる時代、あらゆる場所に見出せる。4万年以上の歴史のなかで、人類と世界との関係をあらためて解きほぐし、いまこそ構築すべき魔術・宗教・科学の関係を明らかにする。「魔術」が持つ新しい可能性をみはるかす、壮大にして革新的な魔術論。松田哲也訳 (青土社 4620円)[amazon] 《ミステリマガジン》5月号 〈特集=モリアーティ教授 ホームズ永遠の宿敵〉 内容 (早川書房 1320円)[amazon] ジェラール・ショーヴィ『科学捜査とエドモン・ロカール フランスのシャーロック・ホームズと呼ばれた男』 ロカールがいなければ、「CSI」シリーズも「科捜研の女」も誕生しなかったかもしれない? 20世紀初めのフランスで犯罪研究所を設立し、現在の科捜研の礎を作った犯罪学者エドモン・ロカールの生涯を描く一冊。大津登志子訳 (鳥影社 2860円)[amazon] アリ・スミス『五月 その他の短篇』 植物に恋する〈私〉、バグパイプの楽隊に付きまとわれる老女、思いもつかない奇譚……ユーモアと不思議に満ちた傑作短篇集。岸本佐知子訳 (河出書房新社 2200円)[amazon] ジェイムズ・スティーヴンズ『月かげ』 「ジョイスの分身」にして20世紀アイルランドの知られざる巨匠が描く冷酷な人間ドラマ。気鋭の翻訳者の手で現代に蘇る奇蹟の8編。阿部大樹訳 (河出書房新社 2420円)[amazon] 〈絵本 ピーターラビット〉 ビアトリクス・ポター 川上未映子訳 『はりねずみティギーのおはなし』 (早川書房 1540円)[amazon] 『あひるのジマイマのおはなし』 (早川書房 予価1540円)[amazon] 『モペットちゃんのおはなし』 (早川書房 予価1430円)[amazon] 橘外男『橘外男海外伝奇集 人を呼ぶ湖』 帝国主義と植民地支配が未だ続く20世紀、世界各地で起こった異妖なる事件の数々。近代社会と人間心理の暗部を破格のイマジネーションで描き続けた鬼才による、異国を舞台にした怪奇と幻想のベスト・セレクション全8篇。【収録作品】 令嬢エミーラの日記/聖コルソ島復讐奇譚/鬼畜の作家の告白書/マトモッソ渓谷/ムズターグ山/殺人鬼と刑事/雪原に旅する男/人を呼ぶ湖 (中公文庫 1100円)[amazon] 谷口江里也『ジャック・カロを知っていますか? バロックの時代に銅版画のあらゆる可能性を展開したジャック・カロとその作品をめぐる随想』 16世紀末、フランスで生まれ、 17歳でローマ、20歳でフィレンツェへ移り、メディチ家の注文を受けながら生涯で1500点近くの版画を制作した銅版画家ジャック・カロ。 作品と共に激動の人生とその想像力・創造力を辿る。図版127点。 (未知谷 4400円)[amazon] イレーヌ・ネミロフスキー『誤解』 愛されずして愛す。眠れずしてベッドにいる。来るのが分からずして待つ。人を殺すのはこの三つ。どうしたの? 何を考えてるの? 私を愛してないの? フランス最南西部の避暑地アンダイエとパリ、若い恋の一部始終。最初の長篇作品。芝盛行訳 (未知谷 2420円)[amazon] ジェイムズ・リーバンクス『羊飼いの想い イギリス湖水地方のこれまでとこれから』 暖かな陽の光、きらめく小川、鮮やかな緑に輝く牧場。持続可能な手法で羊たちを養い、豊かな土地と生活を子供たちへと継承するための方法を、今日も探し続ける。オックスフォード大卒の羊飼いがイギリス湖水地方の理想と現実を描く、『羊飼いの暮らし』続篇。濱野大道訳 (早川書房 2750円)[amazon] アン・クリーヴス『哀惜』 海岸で発見された男性の死体。彼の死に隠された真相とは? 小さな町に起きた奇妙で複雑な事件に、刑事マシュー・ヴェンが挑む。高山真由美訳 (ハヤカワ・ミステリ文庫 予価1738円)[amazon] ローリー・エリザベス・フリン『あの夜、わたしたちの罪』 同窓会に出席したアムは脅迫文を受け取る。学生時代に犯した罪を誰かが暴こうとしている? 衝撃の結末に驚愕必至のサスペンス。山田佳世訳 (ハヤカワ・ミステリ文庫 1892円)[amazon] コーマック・マッカーシー『ノー・カントリー・フォー・オールド・メン』 ヴェトナム帰還兵モスがメキシコ国境付近で発見した死体と大金が、更なる殺戮を呼ぶ。〈国境三部作〉後の衝撃作。黒原敏行訳 (ハヤカワepi文庫 1650円)[amazon] オリヴィー・ブレイク『アトラス6 上・下』 世界最高の秘密結社に加入するための5つの椅子をかけて6人が争う! シャイな物理術師、蠱惑的なテレパス……勝ち残るのは誰か。佐田千織訳 (ハヤカワ文庫FT 各1320円)[amazon上・下] フランク・シェッツィング『深海のYrr 新版 3・4』 未曾有の危機が世界中の海で続く。その謎を探る科学者たちが目にした、想像を絶する真実とは? 海洋SFサスペンス大作を新版で。北川和代訳 (ハヤカワ文庫NV 各1100円)[amazon3・4] ブランドン・テイラー『その輝きを僕は知らない』 名門大学で生物化学の博士課程を目指す院生のウォレスは、南部出身の黒人でゲイ。ある夏、表向きはストレートの白人の同級生との出会いが、彼の中に眠っていた感情、痛み、渇きを呼び起こす。米国のミレニアル世代のリアルな葛藤を描く、ブッカー賞最終候補作。関麻衣子訳 (早川書房 3630円)[amazon] ロイ・チャップマン・アンドリュース『恐竜探検記』 〈世界探検全集〉世界初の恐竜卵の化石発見に成功。生物進化の歴史解明に大きく貢献した探検隊の、労苦と感動を伝える名著。斎藤常正監修/加藤順訳 (河出書房新社 2750円)[amazon] エドガー・アラン・ポー『ポー傑作選3 Xだらけの社説 ブラックユーモア編』 ポーの真骨頂はブラックユーモアにあり。いがみあう新聞社同士の奇妙な論争を描く「Xだらけの社説」。大言壮語が嵩じて地獄の門が開く「悪魔に首を賭けるな」。ありえないはずのことが起きる科学トリック「一週間に日曜が三度」。ダークな風刺小説や謎かけ詩、創作論など知られざる名作を23編収録。。「ポーを読み解く人名辞典」「ポーの文学闘争」など巻末付録110頁。河合祥一郎訳 (角川文庫 990円)[amazon] 東雅夫編『アンソロジー 死神』 全人類にとって永遠の謎である死。冥界へと導く、ミステリアスな存在である死神は、落語や漫画、文学の世界でもさまざまに暗躍してきた。円朝の創作落語の元になったとされるグリム童話「死神の名づけ親」。アラルコン「背の高い女」、小山内薫「色の褪めた女」。織田作之助の未完の名作から、水木しげる「死神のささやき」、つのだじろう「死神の涙」まで。時代やジャンルを超えた傑作が集結。 (角川ソフィア文庫 1144円)[amazon] C・S・ルイス『新訳ナルニア物語6 魔術師のおい』 ディゴリーはお隣の少女ポリーと、おじの書斎で不思議な指輪をみつける。実はおじは魔術師で、異世界に行ける魔法の指輪を作ったのだ。指輪に触れた二人は異世界に送り込まれ……。ナルニアの始まりが描かれる第6巻。河合祥一郎訳 (角川文庫 858円)[amazon] 高橋巌『神秘学講義』 シュタイナー研究の第一人者による「神秘学」入門の名講義、初文庫化。【目次】第一章 現実世界から超現実世界へ/第二章 霊的感覚論――霊・魂・体の問題/第三章 神秘学における理性と感性/第四章 秘儀とその行法――アポロン的とディオニュソス的/第五章 ユングと神秘学/第六章 ブラヴァツキー――近代精神と神秘学 (角川ソフィア文庫 1276円)[amazon] マット・ラフ『ラヴクラフト・カントリー』 朝鮮戦争から帰還した黒人兵士ターナーは、SFやホラーを愛読する変わり者だ。彼は父親が謎の白人青年に拉致されたと知り、出版社を営む伯父と幼馴染を伴って、父が連れ去られた地図にない街アーダムを目指す。かの地で待ち受けていたのは、魔術師タイタス・ブレイスホワイトが創設した秘密結社だった――南北戦争前夜から二百年にわたるアメリカの闇の歴史と魔術的闘争を描いた傑作。TVドラマ原作。茂木健訳 (創元推理文庫 1760円)[amazon] メリーナ・マーケッタ『ヴァイオレットだけが知っている』 ロンドンの警察官ビッシュの娘が乗ったバスが爆破され、フランスへのバス・ツアーに参加した子供たちが大勢巻きこまれた。娘は無事だったが重傷者多数、数人が死亡。さらに、ツアー参加者の一人が、かつて23人を殺害した爆弾犯の孫だと判明する。その17歳の少女ヴァイオレットは事情聴取のあと姿を消してしまう。謎に満ちた追跡サスペンス。小林浩子訳 (創元推理文庫 1430円)[amazon] ウィリアム・ダルリンプル、アニタ・アナンド『コ・イ・ヌール なぜ英国王室はそのダイヤモンドの呪いを恐れたのか』 現在は英国王室の王冠で光り輝く、コ・イ・ヌール(光の山)と呼ばれる巨大なダイヤモンド。ムガル王国の皇帝やシク王国の君主など、さまざまな者の手を経て、英国王室が所有するに至ったその宝石は、富と力と子孫繁栄をもたらす物として崇められると同時に、数多くの悲劇や凄惨な出来事を巻き起こしてきた。世界一有名なダイヤの数奇な歴史を追う傑作ノンフィクション。杉田七重訳 (創元ライブラリ 1210円)[amazon] ポール・トレンブレイ終末の訪問者』 休日を楽しむ家族を襲った 4人の訪問者。彼らは正気とは思えない究極の“選択”を迫る――「世界の終わりを止めるために、ひとり犠牲者を選べ」と。彼らは何者で、なぜ世界は終末を迎えることになるのか? ブラム・ストーカー賞/ローカス賞(ホラー部門) 受賞作。M・ナイト・シャマラン映画化。入間眞訳 (竹書房文庫 1320円)[amazon] 『マナ・タブー・供犠 英国初期人類学宗教論集』 〈シリーズ 宗教学再考〉ヴィクトリア時代が開く、宗教への扉。植民地支配を背景にもたらされた非ヨーロッパ圏からの情報は進化論的発想と結びつき宗教の起源=本質が議論された。英国初期人類学者の最重要宗教論を集成。江川純一・山﨑亮 監修。W・ロバートソン・スミス「供犠」/J・G・フレイザー「タブー」「トーテミズム」/R・H・コドリントン『メラネシア人――その人類学的・民俗学的研究』(抄)/R・R・マレット『宗教への閾』 (国書刊行会 6820円)[amazon] アンリ・トロワイヤ『モーパッサン伝』 19世紀フランス文壇において、自由を求め、自立した芸術家として数々の名作を遺したギィ・ド・モーパッサン。母親から芸術家になるべく育てられた青年時代、フロベールとの邂逅から作家として名を馳せてから43歳で夭折するまで、短くも激しい生涯を駆け抜けた作家の人生を稀代の伝記作家が描く。足立和彦訳 (水声社 5500円)[honto] 澤井繁男『魔術師列伝 魔術師デッラ・ポルタから錬金術師ニュートンまで』 中世と近代のはざまに躍動した魔術師と錬金術師たちの人物伝。複雑で難解とされてきた魔術的世界観と錬金術的宇宙観を、豊富な図版と明晰な解説で読み解く。 (平凡社 3080円)[amazon] デイヴィッド・マクロスキー『弔いのダマスカス』 シリアのダマスカスでCIA局員が惨殺された。弔いのため、若き局員サムはアサド政権に近いある女性をリクルートするが……。元CIA分析官が中東と欧州を股にかけ描くスパイスリラーの新機軸。堤朝子訳 (ハーパーBOOKS 1430円)[amazon] ライリー・セイガー『夜を生き延びろ』 連続殺人犯かもしれない男と二人きりで深夜のドライブ。アクセル全開でハイウェイを駆け抜ける、極上のノンストップ・サスペンス。鈴木恵訳 (集英社文庫 1430円)[amazon] 『ダライ・ラマ六世恋愛詩集』 ダライ・ラマ6世(1683-1706)ツァンヤン・ギャンツォは、ダライ・ラマの化身とされながら、自ら還俗して、恋に明け暮れ詩を詠う若者となった。23歳で数奇な生涯を終える。彼の残した六音節四行のリズム感溢れる詩は、今もチベットの人々に広く愛唱され親しまれている。慕情、逢瀬、再会の誓い、様々な恋愛詩から100篇を精選。今枝由郎・海老原志穂 編訳 (岩波文庫 550円)[amazon] ハーン小路恭子『アメリカン・クライシス 危機の時代の物語のかたち』 分断のシステムに抗い続ける物語はどんな〈かたち〉をしている? 人種、ジェンダー、階級などのアイデンティティの諸相が交差する中で生まれ、醸成されてきた〈アメリカ的危機〉の感覚がフィクションや視覚文化の中でいかに具現化されているのかを明らかにする。 (小鳥遊書房 2640円)[amazon] デボラ・クロンビー『警視の慟哭』 警視庁から所轄署へ異動させられたキンケイド警視は、警察内部の闇の存在から目をつけられていることを知る。一方、妻のジェマはロンドンで、高級住宅に囲まれ外部からの侵入が困難な庭園で若い女性の死体が発見された事件に駆り出される。過去からの因縁と悪意を解きほぐした末に待つ驚愕の真相とは? シリーズ第17作。西田佳子訳 (講談社文庫 1210円)[amazon] 垂水千恵『台湾文学というポリフォニー 往還する日台の想像力』 植民地時代から現代まで、台湾は日本人作家の想像力をどのように刺激したか。また台湾人作家はどのように日本を捉え描いてきたか。日本語プロレタリア作家、楊逵の葛藤から、戦後の邱永漢の亡命文学、あるいは日影丈吉、丸谷才一における台湾表象など、複雑に絡み合う台湾と日本の関係を、双方の文学を通じて読み解く。 (岩波書店 3850円)[amazon] アルベール・カミュ『転落』 アムステルダムのいかがわしいバーで、馴れ馴れしく話しかけてくるフランス人の男。元は順風満帆な人生を送る弁護士だったらしいが、いまではみすぼらしい格好で酒場に入り浸っている。五日にわたって一人称で語られる彼の半生とは? 前山悠訳 (光文社古典新訳文庫 990円)[amazon] 鮎川哲也『マーキュリーの靴 鮎川哲也「三番館」全集2』 本格推理の巨匠がライフワークとして書き続けた安楽椅子探偵シリーズ、その全短編を発表年代順に収録。「三番館」全集第2集。 (光文社文庫 1210円)[amazon] 久生十蘭『肌色の月 探偵くらぶ』 宇野久美子はアパートを引き払い、和歌山に帰ると周りに告げていた。しかし、それは自身をこの世から消し去る演出だった。死に場所に選んだ湖に向かうべく伊東で列車を降りるが、予想外の雨。濡れた彼女に声をかけた紳士の誘いを断り切れず、車に乗ると――。絶筆となった表題作を始め、多彩なジャンルで活躍した著者のミステリ傑作集。日下三蔵編 (光文社文庫 1210円)[amazon] スタニスワフ・レム『火星からの来訪者 知られざるレム初期作品集』 〈スタニスワフ・レム・コレクション〉アメリカに落下した隕石らしきものは火星から飛来したロケットだった――レムの本当のデビュー作とも言うべき本格的SF中篇『火星からの来訪者』、収容所へのユダヤ人移送の決定的瞬間を描いた「ライハルト作戦」、広島への原爆投下を主題とした「ヒロシマの男」ほか、レムがまだ20歳代だった時期に書かれた、いずれも本邦初訳となる初期作品集。沼野充義・芝田文乃・木原槙子訳 (国書刊行会 2970円)[amazon] エリン・モーゲンスターン『地下図書館の海』 大学院生ザカリーが図書館で出会った、著者名の記されていない本。そこには誰も知るはずのない自らの少年時代の不思議な体験が記されていた。本の秘密を追う彼は謎の男に導かれて魔法の扉をくぐり、何処とも知れない地下に広がる〈星のない海〉の岸辺にある、物語で満ちた空間にたどりつく。めくるめく書物の魅力を巡る本格ファンタジイ。市田泉訳 (東京創元社 3740円)[amazon] ピーター・トレメイン『昏き聖母 上・下』 巡礼の旅に出ていたフィデルマは、友人の修道士エイダルフが殺人罪で捕らえられたとの手紙を受け取り、急ぎラーハン王国に向かった。そこはフィデルマの兄が治めるモアンとはもめ事の絶えない隣国で、エイダルフは12歳の少女に対する暴行と殺人の容疑で捕まったらしい。処刑は翌朝と告げられたフィデルマは、なんとか延期すべく事件の捜査を始めるが……。人気シリーズ最新作。田村美佐子訳 (創元推理文庫 各1100円)[amazon上・下] 大場正明『サバービアの憂鬱 「郊外」の誕生とその爆発的発展の過程』 米国において郊外住宅地の生活が、ある時期に、国民感情と結びつくかたちで大きな発展を遂げ、明確なイメージを持って定着するようになったサバービア(郊外住宅地と文化)――。郊外文化論の先駆的名著が30年ぶりに復刊。 (角川新書 1980円)[amazon] レックス・スタウト『ネロ・ウルフの災難 激怒編』 〈論創海外ミステリ〉ネロ・ウルフ、激怒す! 秘密主義のFBI、背信行為を働く弁護士、食べ物を冒瀆する犯罪者。怒りに燃える巨漢の名探偵は三つの難事件を解き明かせるか? 日本独自編纂の短編集シリーズ最終巻。鬼頭玲子編訳 (論創社 3080円)[amazon] 山川方夫『お守り・軍国歌謡集』 地方勤務から4年ぶりに本社に戻った妻帯者で事なかれ主義の男が、同期の女性に翻弄される「帰任」。憧れの団地に入居したものの、その画一性に疲れ果て、極端な行動を取ろうとする「お守り」。下宿の外から聞こえてくる女性の軍歌に二人の男が惑わされる「軍国歌謡集」など全11篇。早世した天才作家の珠玉の作品集。 (小学館 P+D BOOKS 880円)[amazon] 湯本豪一『日本幻獣図説』 河童、鬼、天狗、人魚、龍、雷獣、そして予言獣。異界からやってきた「不可思議な生き物」は、多くの日本人を魅きつけ、ある時は恐れられ、ある時は敬われながら伝承されてきた。江戸時代から明治時代を中心に、各地の絵図・ミイラ・報道記事を通して、妖怪という名前には収まらない奇想天外な生き物たちのめくるめく世界に迫る。絵図を多数収録。 (講談社学術文庫 1210円)[amazon] 宮田登『江戸のはやり神』 お地蔵さん、お稲荷さん、七福神、エエジャナイカ――熱狂的信仰対象となった「はやり神」は、時に爆発的に流行し、不要になれば棄てられ、廃れていった。民衆は、なぜ、どのように流行神を生み出したのか。多様な事例から近世の流行神の特徴や機能を解明し、背景にある日本人の心理や宗教意識の構造に迫る。 (法蔵館文庫 1320円)[amazon] 小松和彦『神々の精神史』 童子が富をもたらす龍宮童子、竈神や座敷ワラシ。酒呑童子などの怪物退治と異類婚。秩序をゆさぶる、ものくさ太郎。山中他界の隠れ里伝承。禁忌を犯す伊弉冉・伊弉諾の屍愛譚など、民話や昔話、お伽草子、記紀神話の構造分析を通して〈カミ〉と〈他界〉の背後にある日本文化の深層に踏みこんでいく。のちの憑霊研究、他界研究、異人研究、そして妖怪学へと展開する小松民俗学の原点。 (法蔵館文庫 1540円)[amazon] 『現代SF小説ガイドブック 可能性の文学』 池澤春菜 監修 未来を先取りし、社会のあり方を見直すあらたな見方を提供し、ときには娯楽として、ときにはディープな思弁として様々な思考実験をわたしたちに提供してきた「可能性の文学」であるSF。19世紀から現在にまで至るSFの歴史から、「いま読むべき」SFを厳選して紹介。 (Pヴァイン 1980円)[amazon] マックス・ブルックス『モンスター・パニック!』 火山噴火で取り残された村で起きた惨劇とは? 闇に葬られた事件が著者の取材から浮かびあがる。偽ドキュメンタリー形式の衝撃作。浜野アキオ訳 (文藝春秋 2860円)[amazon] マシューベイカー『アメリカへようこそ』 合衆国から独立したテキサスの町「アメリカ」を舞台に変わり者の住人たちが繰り広げる一大騒動。表題作をはじめファンタジー、ホラー、ディストピア、SF、ミステリ等、ジャンルを横断する圧倒的想像力で描く13篇。全米注目作家のSF短篇集。田内志文訳 (KADOKAWA 2750円)[amazon] ジーン・ハンフ・コレリッツ『盗作小説』 小説講師として才能のない生徒の面倒を見る作家ジェイコブ。中でも反抗的な生徒エヴァンの存在は、いまの彼の立場をより惨めなものにさせていた。ある日、エヴァンが死んでしまう。彼が遺したプロットは普段の彼からは考えられないほど完璧だった。そして……。鈴木恵訳 (ハヤカワ・ミステリ 2750円)[amazon] 劉慈欣『円』 三百万の軍隊を用いた驚異の人間計算機により十万桁まで円周率を求めようとする「円」など全13篇を収録した短篇集、待望の文庫化。大森望・ 泊功・ 齊藤正高訳 (ハヤカワ文庫SF 1210円)[amazon] クララ・デュポン=モノ『うけいれるには』 フランスの地方に暮らす幸せな一家。ある日、第三子が重い障がいを抱えていることが分かった。長男はかいがいしく第三子の世話に明け暮れるが、長女は彼の存在に徹底的に反発する。障がいのある子どもが誕生した家庭の心の変化を、静謐な筆致で描く感動長篇。松本百合子訳 (早川書房 1980円)[amazon] シルヴィア・ビーチ『シェイクスピア・アンド・カンパニイ書店』 『ユリシーズ』の出版者として名高い、パリ・オデオン通りにあった伝説的書店の主人が綴る世界文学の舞台裏の歴史的メモワール。中山末喜訳 (河出文庫 1430円)[amazon] シモーヌ・ド・ボーヴォワール『決定版 第二の性Ⅰ 事実と神話』 神話、文学、生物学、精神分析など、男に支配されてきた女の歴史を紐解きながら、その自由な可能性を提示する画期的名著。『第二の性』を原文で読み直す会=訳 (河出文庫 1485円)[amazon] 岡本綺堂『江戸の思い出 綺堂随筆』 江戸歌舞伎の夢を懐かしむ「島原の夢」、維新の変化に取り残された人々を活写する「西郷星」「ゆず湯」。綺堂の魅力を集めた随筆選。 (河出文庫 990円)[amazon] ヨルン・リーエル・ホルスト『警部ヴィスティング 疑念』 ヴィスティング警部の自宅に届いた差出人不明の封書。中には12―1569/99と数字だけが書かれた一枚の紙。数字は事件番号で、隣接する警察署の管内で1999年に起きた1569号事件を意味していた。17歳のトーネ・ヴァーテランが行方不明となり、2日後に絞殺体で発見された。体内から検出された精液のDNA型が元恋人のものと一致し、男は逮捕され禁固17年の刑を受けていたのだが……。中谷友紀子訳 (小学館文庫 1188円)[amazon] 山田風太郎『白浪五人帖』 宝暦五年。花吹雪ちる京都町奉行所に、芝居じみた派手な衣装の男がフラリと現れた。その男こそは、徳川時代最大の盗賊、日本左衛門。全国的な捜索にも捕捉されなかった大盗が自首してきたことに、奉行所は騒然となった――。 (春陽文庫 1188円)[amazon] フランク・シェッツィング『深海のYrr 新版 1・2』 世界中で次々と起こる海難事故。牙をむく奇怪な海の生物たち。科学者がその謎に挑む!? 海洋SFサスペンス超大作を新版で刊行。全4巻(3・4巻は3月刊)。北川和代訳 (ハヤカワ文庫NV 各1100円)[amazon1・2] エミール・ゾラ『ボヌール・デ・ダム百貨店』 ゾラが24年をかけて完成させた「ルーゴン=マッカール叢書」(全20巻)の一作『ボヌール・デ・ダム百貨店』は、消費社会を〈贅沢・労働・恋愛〉の視座から描いた先駆的作品。伊藤桂子訳(新版) (論創社 4180円)[amazon] 『幻想と怪奇13 H・P・ラヴクラフトと友人たち アーカムハウスの残照』 〈クトゥルー神話〉の創造者H・P・ラヴクラフトの死後、その作品を後世に遺すため出版社を興したのは二人の友人――オーガスト・ダーレスとドナルド・ワンドレイだった。彼らが1939年に設立した〈アーカムハウス〉は、やがて怪奇幻想文学の牙城となり、多くの作家の作品を出版していく。ラヴクラフトからラムジー・キャンベルまで、〈アーカムハウス〉作家の作品を集め、世にも稀なこの怪奇・幻想専門出版社の業績を一望する。内容 (新紀元社 2420円)[amazon] ミシェル・エルベール&ウジェーヌ・ヴィル『禁じられた館』 飲食産業で成功した富豪がマルシュノワール館に引っ越してくる。これまでの所有者には常に災いがつきまとった曰く付きの館だ。舞い込む脅迫状。果たして雨の夜、謎の男の来訪を受けた直後、館の主は変わり果てた姿で発見される。1930年代フランスの不可能犯罪ミステリ。小林晋訳 (扶桑社ミステリー 1210円)[amazon] グレッチェン・マクニール『孤島の十人』 休暇で孤島に集まった十人。家族に内緒で参加したメグは驚愕する。親友のため恋を断念した憧れの相手が来ている。嵐が襲う中、怨恨を示す動画が発見され、ついに犠牲者が! 完全に孤立した状況下、十人は次々命を落としていく……孤島の別荘ではじまる恐怖の殺人劇。『そして誰もいなくなった』×『スクリーム』の異色作。河井直子訳 (扶桑社ミステリー 1430円)[amazon] ヨン・コーレ・ラーケ『氷原のハデス 上・下』 特殊部隊の元狙撃手アナ・アウネは除隊後、科学者のザカリアッセンと共に北極遠征に参加した。ある夜、照明弾を目撃した二人は、中国の極地研究基地が発した救難信号と判断し、暴風雪のなかその基地へ向かうが、彼らを迎えたのは、何者かに殺されたと思しき十数体の凍結死体だった……。ノルウェーの新星が放つ極寒のスリラー。遠藤宏昭訳 (扶桑社ミステリー 1210円/1155円)[amazon上・下] W・G・ゼーバルト『鄙の宿 新装版』 〈ゼーバルト・コレクション〉ジャン=ジャック・ルソー、ローベルト・ヴァルザーなど「魂の近親者」であった作家と作品への共感。鈴木仁子訳 (白水社 3960円)[amazon] 白岩英樹『講義 アメリカの思想と文学 分断を乗り越える「声」を聴く』 私たちはなぜ学ぶのか? そしてどう生きるべきか? エマソンからホイットマン、アンダーソンまで米文学を通して考える白熱授業。 (白水社 2420円)[amazon] リディア・ケイン『ふたつの心臓を持つ少女』 1850年、ニューヨーク。医者の解剖に使われる珍しい死体を狙う少女コーラ。実は、彼女自身は2つの心臓を持っていたが、そのことを秘密にしていた……。桐谷知未訳 (竹書房文庫 1430円)[amazon] レアード・ハント『インディアナ、インディアナ』 「切れぎれの回想、現在のノアの心理、オーパルからの手紙、ノアの父ヴァージルや母ルービーをめぐる一連の奇妙な逸話……。それらすべてが、文章教室的規範から逸脱することを恐れない自在の文章で語られることによって、この作品を、昨今の小説には稀な、とても美しい小説にしている」(訳者)。復刊。柴田元幸訳 (Twilight 2310円)[amazon] ベルンハルト・シュリンク『別れの色彩』 年齢を重ねた今だからわかる、あの日の別れへの後悔、そしてその本当の意味を――。男と女、親と子、友だち、隣人。『朗読者』で世界中の読者を魅了したドイツの人気作家が、「人生の秋」を迎えた自らの心象風景にも重ねて、さまざまな人々のあの日への思いを綴る。色調豊かな紅葉の山々を渡り歩くかのような味わいに包まれる短篇集。松永美穂訳 (新潮クレスト・ブックス 2310円)[amazon] チョ・ナムジュ『私たちが記したもの』 大ベストセラー『82年生まれ、キム・ジヨン』の著者が、女性たちの今を描く。10代の初恋、子育ての悩み、80歳前後の姉妹の老境まで、全世代を応援する短編集。小山内園子・すんみ訳 (筑摩書房 1760円)[amazon] 冬木糸一『SF超入門 「これから何が起こるのか」を知るための教養』 メタバース AI 不死・医療 ジェンダー 地震 感染症 気候変動……この1冊で、未来の全てがわかる!イーロン・マスクの愛読書『銀河ヒッチハイクガイド』、最新の話題作『三体』など、古典から現代までベスト56冊(シリーズ)を厳選した初のビジネスパーソン向け入門書。 (ダイヤモンド社 1980円)[amazon] ▼2月刊 ハン・スーイン『慕情 上・下』 世界的に大ヒットしたハリウッド映画「慕情」の原作。国共内戦によって大陸を追われた外国人や資本家、多数の難民が流入した香港の様子が詳細に描かれる。深町眞理子訳。オンデマンド出版 (大陸書館 1826円/ 1870円)[amazon上・下] 《別冊太陽 江戸川乱歩 日本探偵小説の父》 戸川安宣監修 明智小五郎の生みの親であり、怪しい魅力の作品を多く残した「日本探偵小説の父」の決定版。豪華執筆陣が作品を語るエッセイや人となりに迫る評伝を収録し、乱歩世界を解剖する。 (平凡社 2970円)[amazon] アガサ・クリスティ『秘密組織 新訳版』 第一次世界大戦が終わり、平和が訪れたロンドンで再会した幼馴染みのトミーとタペンス。仕事のない二人は、〈若き冒険家商会〉を設立し、仕事募集の広告を出そうと相談していた。たまたまそれを聞いていた男がタペンスに怪しげな仕事を持ちかけ、二人は英国の危機に関わる秘密文書争奪戦に巻きこまれて……。トミー&タペンス初登場作を新訳で。野口百合子訳 (創元推理文庫 990円)[amazon] ピエール・バイヤール『シャーロック・ホームズの誤謬』 『アクロイドを殺したのはだれか』の批評家バイヤールがシャーロック・ホームズに挑戦。長編『バスカヴィル家の犬』におけるホームズ推理の疑問点、矛盾点を指摘。事件の真相に迫るのみならず、探偵と作家の関係を分析した知的スリルに満ちた文学批評、待望の文庫化。平岡敦訳 (創元ライブラリ 1210円)[amazon] リディア・デイヴィス『サミュエル・ジョンソンが怒っている』 『分解する』『ほとんど記憶のない女』につづく、三作目の短編集。鋭敏な知性と感覚によって彫琢された珠玉の56編。岸本佐知子訳 (白水Uブックス 1980円)[amazon] ルッツ・ザイラー『クルーゾー』 〈エクス・リブリス〉人生の活路を求め、若者は東西の国境地帯に浮かぶ島へ。きつい労働、カリスマ的な男との出会いで知る真の自由と友情。大人の冒険小説。金志成訳 (白水社 4400円)[amazon] フアン・ホセ・サエール『グロサ』 1961年10月23日の朝、二人の青年アンヘル・レトとマテマティコが〈街〉の目抜き通り21ブロックを一時間ほど共に散歩する。両者とも出席が叶わなかった詩人ワシントンの誕生日会の詳細を耳にしたマテマティコは、散歩のさなかその真相をレトに語って聞かせるが……。「同一の場所、同一の一度ひとたび」を語り明かそうと試みる、ひとつの広大な物語世界。 (水声社 3300円)[honto] クリスチアナ・ブランド『濃霧は危険』 〈奇想天外の本棚〉荒れ地で知り合ったビルとパッチ。二人はビルが手に入れた暗号文書を解読しながら、残忍な悪党たちとの、追いつ追われつの冒険へと踏み出してゆく。すべての少年少女に贈る傑作ジュヴナイル。宮脇裕子訳 (国書刊行会 2530円)[amazon] ウラジーミル・ソローキン『ロマン』 19世紀末のロシア。首都で優秀な弁護士だった青年ロマンは、画家として第二の人生を歩むため故郷の村へ戻った。旧友や親類に囲まれた素晴らしく愉快な日々。都会では忘れていた人間としての生活に、彼は大きな喜びを感じる。そして、やがて彼は運命の女性にめぐり会う。「現代文学のモンスター」の異名をとる作者が19世紀ロシア文学の精髄を戯画化しながら描く、衝撃のスプラッター・ノヴェル。望月哲男訳。国書刊行会創業50周年記念復刊 (国書刊行会 5940円)[amazon] レイナルド・アレナス『夜明け前のセレスティーノ』 母親は井戸に飛びこみ、祖父は自分を殺そうとする。少年の目に鮮やかに映しだされる、現実と未分化なもう一つの世界。亡霊が出没し神秘的な出来事が日常的なキューバの寒村を舞台に、少年と分身セレスティーノが生きる想像の世界。「少年期を、そしてキューバの生活を描いた最も美しい小説の一つ」(C・フェンテス)。安藤哲行訳。国書刊行会創業50周年記念復刊 (国書刊行会 2860円)[amazon] トマス・エスペダル『歩くこと、または飼いならされずに詩的な人生を生きる術』 「自分の人生を、主導権をもって歩き続けるとはどんなことか?」北欧における“世界文学の道先案内人”が「歩くこと」の本質に迫る。枇谷玲子訳 (河出書房新社 2915円)[amazon] ドロレス・ヒッチェンズ『はなればなれに』 22歳の前科者スキップとエディは天涯孤独の17歳の娘カレンと出会う。彼女が身を寄せる未亡人宅を頻繁に訪れる男はカジノ関係者で莫大な現金を屋敷に保管しているという。二人はその金を奪う計画を立てるが、元ギャングのスキップの叔父に嗅ぎつけられ、プロの犯罪者仲間を計画に加えたときから、すべての歯車が狂い始める。ゴダール映画原作の犯罪小説。矢口誠訳 (新潮文庫 825円)[amazon] 逢坂剛『鏡影劇場 上・下』 マドリードの古本屋で手に入れた古楽譜の裏には、19世紀ドイツの文豪ホフマンの行動が事細かに綴られていた。筆者不明の報告書の解読を進めるうちに、現代の日本にまで繋がる奇妙な因縁が浮かび上がる。 (新潮文庫 各1100円)[amazon上・下] 《SFマガジン》4月号 津原泰水追悼特集 (早川書房 1320円)[amazon] 北園克衛『北園克衛1920年代実験小説集成 20's』 小説か詩か暗号か。ギムゲニスト、シュルレアリスム。埋もれていた実験小説27篇を収録。北園克衛の画を装画として本文やカバー、表紙などに14点使用。加藤仁編 (幻戯書房 4070円)[amazon] トマス・ハーディ『恋の霊 ある気質の描写』 〈ルリユール叢書〉斬新な構成、独特な心理描写で、彫刻家である主人公の、三代にわたる女性への愛情が赤裸に描かれる――唯美主義、ダーウィニズムの思想を取り込み、〈性愛と芸術〉の関係を探究し続けた英国ヴィクトリア朝の詩人・小説家トマス・ハーディが最後に著したロマンス・ファンタジー。南協子訳 (幻戯書房 3520円)[amazon] 仁木悦子編『不思議の国の猫たち CATS IN WONDERLAND』 生涯、猫を愛した「日本のクリスティー」仁木悦子による本邦初の猫文学アンソロジー(1980年・立風書房刊)を待望の復刊! ミステリー、SF、童話、純文学、落語、漫画の各界の豪華執筆陣による、ミステリアスな12匹の猫の物語。装丁・イラスト=和田誠。 (Gakken 1980円)[amazon] タン・トゥアンエン『夕霧花園』 第二次世界大戦中の日本とマレーシアの歴史(日本のマレーシア侵略と占領)とともに描かれるラブストーリー。マレーシア作家によるブッカー賞候補作。宮崎一郎訳 (彩流社 3850円)[amazon] 夢野久作『人間レコード 夢野久作怪奇暗黒傑作選』 下関に到着した連絡船から、みすぼらしい老人が降り立った。 ハハハ。イヨイヨ人間レコードを使いおったわい――。 老人には前代未聞の人体実験が施されていた。 美しく、妖しく、甘やかな短編の数々。 (角川文庫 748円)[amazon] S・J・ベネット『エリザベス女王の事件簿 バッキンガム宮殿の三匹の犬』 英国のEU離脱で沸く2016年。バッキンガム宮殿の屋内プールで王室家政婦が不慮の死を遂げる。最初は事故死とされたが殺人の線が浮上し、女王は秘書官補ロージーとともに秘密裏に捜査に乗り出す。謎を解く鍵は、70年前に寄贈された女王お気に入りの悪趣味な絵画? 現実と創作が交叉する世界最高齢の国王ミステリ第2弾。芹澤恵訳 (角川文庫 1870円)[amazon] ハインリヒ・シュリーマン『古代への情熱』 ドイツに生まれたシュリーマンは、経済的な理由から大学を諦め、雑貨屋などを転々としたのち、商人として大成功をおさめる。その資金を元手に、トロヤ発掘へ邁進し、遂には世紀の発見へと至った。考古・歴史のロマンへ、世界中を駆り立てた名著。池内紀訳 (角川ソフィア文庫 1056円)[amazon] 松岡正剛『千冊千夜エディション 源氏と漱石』 平安の「源氏物語」から明治の「夏目漱石」に至るまで、日本文学はどのように伝統を引き継ぎ、どのように近代化を取り入れ、どのように変化してきたか。「源氏」と「漱石」を結んで浮かび上がる、日本の近代化と伝統。 (角川ソフィア文庫 1815円)[amazon] 限界研編『現代ミステリとは何か 二〇一〇年代の探偵作家たち』 ゲームやネット文化など周辺ジャンルと過去の遺産をともに取り込みながらも、独自の拡大と発展を続けるミステリ。特殊設定ミステリや異能バトルミステリといった2010年代の潮流を踏まえ、発展を牽引する代表作家を論じ尽くす。蔓葉信博、孔田多紀、片上平二郎、坂嶋竜ほか、批評家10名が執筆。 (南雲堂 3300円)[amazon] スウェン・ヘディン『ゴビ砂漠探検記』 〈世界探検全集〉荒涼たるゴビ砂漠、東西の文明をつないだシルク・ロードを縦横に踏査し、中央アジアの探検史に不朽の足跡を残したヘディンの名著。梅棹忠夫訳 (河出書房新社 2750円)[amazon] ジョルジュ・シムノン『メグレと若い女の死 新訳版』 真夜中のパリで見つかった奇妙な女性の死体。司法警察局のメグレは事件の捜査にあたるが……人間心理を追求する名作の新訳。平岡敦訳 (ハヤカワ・ミステリ文庫 1122円)[amazon] 陸秋槎『ガーンズバック変換』 ネットへの視覚的なアクセスを遮断する規制が敷かれた香川県からやってきた女子高生の大阪観光サイバーパンクの表題作、百合SFアンソロジーや『異常論文』へ書き下ろしとして発表された短篇群など、『元年春之祭』著者による知性と感情を揺さぶる小説全8篇。稲村文吾・大久保洋子訳 (早川書房 2310円)[amazon] ジョン・ル・カレ『スパイはいまも謀略の地に』 MI6の中年情報部員ナットは引退を前にロシア関連のお荷物部署に左遷される。進退をかけて事案にあたる彼を待ち受ける罠とは? 加賀山卓朗訳 (ハヤカワ文庫NV 1408円)[amazon] スザンヌ・パーマー『巡航船〈ヴェネチアの剣〉奪還!』 捜し屋ファーガソンは盗難宇宙船の「回収」を依頼され、辺境のコロニーにやってくる。犯罪組織のボス相手に彼がくりだす奇策は!? 月岡小穂訳 (ハヤカワ文庫SF 1760円)[amazon] シオドラ・ゴス『メアリ・ジキルと怪物淑女たちの欧州旅行2 ブダペスト篇』 囚われの令嬢ルシンダ・ヴァン・ヘルシングを助け出すため、ウィーンヘとわたったメアリ・ジキルらモンスター娘たち。だがまたも彼女たちの前に錬金術師教会に属するマッド・サイエンティストたちが立ちはだかり……!? 三部作の第二部完結篇。原島文世訳 (新☆ハヤカワ・SF・シリーズ 2640円)[amazon] マリーケ・ルカス・ライネフェルト『不快な夜』 オランダの酪農家一家に育った10歳のヤスは、クリスマスの晩餐用に殺されるかもしれない自分のウサギの代わりに兄が死にますようにと神に祈る。その祈りが現実となった時、不穏な空想の闇がヤスを襲う。史上最年少でのブッカー国際賞受賞作。國森由美子訳 (早川書房 2970円)[amazon] ローレン・オイラー『偽者(フェイクアカウント)』 恋人がSNSで有名な陰謀論者だと知った「わたし」。2つのかけ離れた言動のどちらが彼の本当の姿なのだろうか。「わたし」が本心を問い質そうとした直前に、彼が事故死したという報せが届く。彼の謎を追いかけるうちに「わたし」は、衝撃の事実に直面する。岩瀬徳子訳 (早川書房 3190円)[amazon] マアザ・メンギステ『影の王』 1935年、エチオピア。孤児になった少女ヒルトは、将軍キダネとアステル夫妻の家にお手伝いとしてかくまわれる。そんな中、ムッソリーニ率いるイタリア軍侵攻の足音が近づいてきており……。武器を手にして祖国を守った、知られざるエチオピアの女性兵士たちの物語。粟飯原文子訳 (早川書房 4070円)[amazon] 田村隆一『ぼくのミステリ・マップ 推理評論・エッセイ集成』 戦後詩をリードした『荒地』派詩人にして、早川書房の初期編集長兼翻訳者として海外ミステリ隆盛の礎を築いた田村隆一のミステリ論集成。自身の編集者時代を回想し、ポーからロス・マクドナルドまでミステリ史を辿りながらガイドするロング・インタビュー(旧版『ミステリーの料理事典』『殺人は面白い』所収)を中心に、翻訳を手がけた名作の解説、クリスティとの架空対談、江戸川乱歩や植草甚一の回想、早川書房出身者の生島治郎・都筑道夫との対談など、単著初収録作含め精選し大幅増補した決定版。 (中公文庫 1320円)[amazon] ルイ・クペールス『慈悲の糸』 大正時代、5か月にわたって日本を旅したオランダを代表する世界的な作家が、各地で見聞・採集した民話・神話・伝承や絵画などから広げたイメージをもとに描いた物語、全30話。國森由美子訳 (作品社 2860円)[amazon] ミゲル・デリーベス『無垢なる聖人』 この上なく貧しいスペイン、カスティリャ地方の厳しい自然の中で懸命に生きる人間の姿を浮かび上がらせ、映画化もされた作品。喜多延鷹訳 (彩流社 2970円)[amazon] マウリツィオ・デ・ジョバンニ『寒波 P分署捜査班』 11月の朝、P分署に二重殺人発生の報がはいる。被害者は同じ部屋に住む20代の兄妹。仲の良い二人を誰がなぜ殺したのか。ロヤコーノ警部とディ・ナルド巡査長補は捜査を開始する。いっぽう、中学生が家族に虐待されているらしいとの訴えを受け、ロマーノとアラゴーナは学校に赴くが……。ナポリを舞台にした〈21世紀の87分署〉シリーズ。直良和美訳 (創元推理文庫 1210円)[amazon] 泡坂妻夫『ダイヤル7をまわす時』 戸根市で対立する暴力団・北浦組と大門組。ある日、北浦組の組長が殺害された。しかも殺害現場で犯人が電話を使った痕跡が見つかる。犯人はどこに電話を掛けたのか? 「読者への挑戦」付きの犯人当て「ダイヤル7」。船上で起きた殺人事件。犯人はなぜ死体をトランプで装飾したのか? 「芍薬に孔雀」など7編。ミステリの楽しみに満ちた傑作短編集。 (創元推理文庫 968円)[amazon] ハン・ジョンウォン『詩と散策』 散歩を愛し、猫と一緒に暮らす詩人ハン・ジョンウォンが綴るエッセイ。雪の降る日や澄んだ明け方に、ひとり静かに読みたい珠玉の25編。橋本智保訳 (書肆侃侃房 1760円)[amazon] A・P・ド・マンディアルグ『汚れた歳月』 悪夢とエロスが混淆した〈奇態なイメージ〉が炸裂する、極彩色の「幻象綺譚集」26篇。第二次世界大戦下のモナコ隠遁中に書かれた、驚異のヴィジョンと世界終末のデジャヴュ。作家としての地歩を固めた記念碑的作品。レオノール・フィニ挿画。松本完治訳。内容 (エディション・イレーヌ 3080円)[amazon] [honto] Max Allan Collins & James L. Traylor《Spillane: King of Pulp Fiction》 第二次大戦後、マイク・ハマー・シリーズで一世を風靡したミステリ作家ミッキー・スピレインの伝記。 (Mysterious Press)[amazon] ウラジーミル・ソローキン『愛』 唐突に開始される殺戮、あまりにグロテスクな描写、頻出する尿と糞と屁……。「現代ロシア文学のモンスター」と異名をとる作家が、日常と狂気の境界を破壊して造形する、タブーなき「愛」のかたち。亀井郁夫訳。国書刊行会創業50周年記念復刊 (国書刊行会 2860円)[amazon] 廣野由美子・桑山智成『変容するシェイクスピア ラム姉弟から黒澤明まで』 元々は舞台の台本として書かれたシェイクスピア作品は、いかに形を変えて世界に広まったのか? 児童文学や映画等、翻案作品を詳細に分析し、多様な魅力に迫る。 (筑摩選書 1760円)[amazon] S・A・コスビー『頬に哀しみを刻め』 殺人罪で服役した黒人のアイク。出所後庭師として地道に働き、小さな会社を経営する彼は、ある日警察から息子が殺害されたと告げられる。白人の夫とともに顔を撃ち抜かれたのだ。一向に捜査が進まぬなか、息子たちの墓が差別主義者によって破壊され、アイクは息子の夫の父親で酒浸りのバディ・リーと犯人捜しに乗り出す。MWA賞最終候補作。加賀山卓朗訳 (ハーパーBOOKS 1320円)[amazon] マイケル・グラント『GONE ゴーン Ⅴ 暗闇』 15歳以上が消えた町に「終末の日」が訪れる――。〈バリア〉の外に待ち受けていたものとは……。ついにすべての謎が明らかに! 巨編シリーズ、クライマックス。片桐恵理子訳 (ハーパーBOOKS 1520円)[amazon] マイケル・グラント『GONE ゴーン Ⅵ 夜明け』 奇妙な〈バリア〉のなかに閉じこめられた少年少女。壮絶サバイバルの果てに、彼らを待つ運命は――。シリーズ完結。片桐恵理子訳 (ハーパーBOOKS 1460円)[amazon] ウィリアム・シェイクスピア『冬物語』 「カミロ、お前は見なかったのか?――おれの妻は浮気女だと」。王妃の密通という〈物語〉にふと心とらわれたシチリア王は、猛烈な嫉妬を抱き……。人は心の〈冬〉をいかに生き延びるのか。円熟した筆が物語を自在に操り、悲喜劇交錯するドラマを描く、シェイクスピア晩年の傑作。 清新な翻訳が原文の豊かなリズムを伝える。桑山智成訳 (岩波文庫 935円)[amazon] 《MONKEY》 vol.29 特集=天才のB面 誰もが知る天才たちの知られざる一面に焦点を当てる。 フランツ・カフカのドローイングやソール・ライターの絵画作品。 さらに、レイモンド・チャンドラーが秘書へ宛てた手紙を村上春樹の訳し下ろしで収録。第二特集はバリー・ユアグロー。柴田元幸=編集 (スイッチ・パブリッシング 1320円)[amazon] 東雅夫編『山怪実話大全 岳人奇談傑作選』 山の裏側を垣間見る未曾有のアンソロジー。登山者たちが実話として綴った異界の「山」の物語、文庫化。 (ヤマケイ文庫 990円)[amazon] スヴェン・リンドクヴィスト『「すべての野蛮人を絶滅せよ」 『闇の奥』とヨーロッパの大量虐殺』 コンラッド『闇の奥』の登場人物クルツの「すべての野蛮人たちを絶滅せよ」ということばに取り憑かれた著者は、18世紀後半以降のヨーロッパの探検家、宣教師、政治家、歴史家たちがアフリカに残した負の遺産をたどる旅に出る。スウェーデンの国民的作家の代表作、待望の邦訳。ヘレンハルメ美穂訳 (青土社 2860円)[amazon] ハリエット・ビーチャー・ストウ『アンクル・トムの小屋 上・下』 シェルビー家に所有され比較的平穏に暮らしていた奴隷たち。しかし主人の経済的困窮のために売られていき……。白人の都合に人生を翻弄される奴隷たちの悲劇を通して、アメリカ合衆国の黒人差別と奴隷制度の非人道性を告発した歴史的書物。土屋京子訳 (光文社古典新訳文庫 各1364円)[amazon上・下] フェルディナント・フォン・シーラッハ『珈琲と煙草』 異様な罪を犯した人間たちの物語。幼少期の体験を描く自伝的エッセイ。社会のさまざまな出来事についての観察とメモ。法の観念と人間の尊厳、芸術についての論考。作家としての物語へのアプローチの仕方……。数ページずつ綴られる断片的な文章は、たがいに絡みあい、複雑で芳醇な文学世界を構築する。現代ドイツを代表する作家による最もパーソナルで先鋭的な作品集。酒寄進一訳 (東京創元社 1760円)[amazon] N・K・ジェミシン『輝石の空』 古代絶滅文明が遺した巨大な力を用い、数百年ごとに文明を滅ぼしてきた〈第五の季節〉を永久に終わらせ世界を救おうとする母。同じ力を用いて、憎しみに満ちた世界を破壊しようとする娘。地球の裏側にある古代文明の遺跡都市をめぐり、それぞれの最後の旅がはじまる。3年連続ヒューゴー賞長編部門受賞の三部作完結編。小野田和子訳 (創元SF文庫 1650円)[amazon] エリカ・ルース・ノイバウアー『メナハウス・ホテルの殺人』 若くして寡婦となったジェーンは、叔母の付き添いでエジプトのカイロに滞在していた。異国の地での優雅なバカンス。だがホテルの客室で若い女性客が殺害され、第一発見者となったジェーンは、地元警察に疑われる羽目になってしまう。アガサ賞デビュー長編賞受賞作。山田順子訳 (創元推理文庫 1254円)[amazon] 《紙魚の手帖》vol.09 今村昌弘による、明智恭介の活躍を描くシリーズ最新短編。夕木春央、君嶋彼方、川野芽生、斧田小夜、床品美帆など注目新鋭の短編を掲載、特集「2023早春・若手作家の宴」ほか。 (東京創元社 1540円)[amazon] 『チェコSF短編小説集2 カレル・チャペック賞の作家たち』 ペレストロイカの自由な風のもと、ファンの熱い想いから創設された「カレル・チャペック賞」。アシモフもディックも知らぬまま書かれた、その応募作を中心とする独創的な13編。ヤロスラフ・オルシャjr/ズデニェク・ランパス/平野清美 編 (平凡社ライブラリー 2090円)[amazon] チョ・ナムジュ『82年生まれ、キム・ジヨン』 キム・ジヨンの半生を克明に振り返り、女性が出会う差別を描き絶大な共感を得たミリオンセラー、ついに文庫化。斎藤真理子訳 (ちくま文庫 748円)[amazon] 山川方夫『長くて短い一年 山川方夫ショートショート集成』 純文学から〈ショートショート〉への応答。山川方夫のショートショートをまとめた決定版作品集の第2弾。初文庫化作品も収録。日下三蔵編 (ちくま文庫 1100円)[amazon] ギュスターヴ・フローベール『三つの物語/十一月』 フローベール存命中に発表された最後の作品であり、読者・批評家から大好評を博した「三つの物語」。18歳のフローベールがピレネー、コルシカ旅行の途中で知り合った女性との恋をもとに描き、『感情教育』の母胎となったと言われる自伝的作品「十一月」。蓮實重彦訳 (講談社文芸文庫 2420円)[amazon] ヨハネス・ハルトリープ『禁術全書 すべての禁じられた術と邪信と魔術の書』 15世紀ドイツの民間に伝わる魔術のありようを最も詳しく記した『禁術全書』(1455-56)を全文翻訳。キリスト教徒が邪信や悪魔から身を守るための術を説く〈警告の書〉として書かれた経緯を持ちながらも、魔術の実践法を記した〈魔導書〉としても貴重な歴史的資料を、詳しい訳註や解説とともに解き明かす。藤井明彦 翻訳・註解・解説/安齋利沙 註解補佐 (国書刊行会 4620円)[amazon] ウォルター・デ・ラ・メア作品集3『まぼろしの顔』 デ・ラ・メア作品集全3巻(牧神社、1976)が待望の復刊。第3巻は「ミス・ジマイマ」「盗人」「ピクニック」「まぼろしの顔」を収録。脇明子=訳/橋本治=挿絵 (東洋書林 2640円)[amazon] [honto] ゾラン・ジヴコヴィチ『図書館』 〈ゾラン・ジヴコヴィチ ファンタスチカ〉本にまつわる不条理な物語がつまった一冊。渦巻栗訳 (盛林堂ミステリアス文庫 1500円) 『SFが読みたい!2023年版』S‐Fマガジン編集部編 年間ベストSF発表、ベスト1作家からのメッセージ、サブジャンル別ベスト、この一年のSF関連トピック、2023年の各出版社のSF書籍刊行予定、SF作家たちの最新予定、SF関連書籍&DVD目録などでおくる恒例のガイドブック最新版。 (早川書房 1100円)[amazon] モニーク・ロフェイ『マーメイド・オブ・ブラックコンチ』 カリブ海に浮かぶブラックコンチ島の漁師デイヴィッドは人魚アイカイアと出会い、伝説の存在である彼女に惹かれていく──人魚と人間の邂逅をとおして70年代カリブ海地域の混沌と活況を描いた傑作。2020年英国コスタ賞受賞。岩瀬徳子訳 (左右社 2970円)[amazon] 大石慎三郎『天明の浅間山大噴火 日本のポンペイ・鎌原村発掘』 天明3年(1783)旧暦7月、浅間山は空前絶後の大爆発を起こす。大地は鳴動し、噴煙は天を突き、火砕流・溶岩流が麓の村々を焼き尽くし埋め尽くした。この未曽有の事態に、人々はいかに対したのか。史料と埋没集落・鎌原村の発掘調査から、当時の村の社会状況、噴火の被害の実態、そして人々が生きた現実を再現する歴史ドキュメント。 (講談社学術文庫 924円)[amazon] 高津春繁『ギリシア・ローマの文学』 叙事詩人ホメロス、勝利歌のピンダロス、悲劇詩人エウリピデス、雄弁術のキケロ、修辞学のセネカ、ローマ最大の詩人ウェルギリウス……。この時代の文学は、何よりもまず音の技芸だった。ホメロスやサッポーは歌であり、プラトンの対話編は巧みな話術である。二千年以上読み継がれてきた西洋の古典は、どのような背景から生まれたのか。膨大な作品と共に、歴史上の傑作を時系列で解説し、文学史を一望する。 (講談社学術文庫 1639円)[amazon] 笹沢左保『後ろ姿の聖像 もしもお前が振り向いたなら』 〈有栖川有栖 必読!Selection〉ドキュメント風の冒頭部から、落涙必至の結末まで、謎と不運に翻弄されながら一つの信念を貫く魂の遍歴。超技巧のミステリ。 (徳間文庫 836円)[amazon] 梶龍雄『清里高原殺人別荘』 〈梶龍雄 驚愕ミステリ大発掘コレクション〉雪の別荘には“魔”が潜んでいた。黄金期本格ミステリの興奮をあなたに。クリスティをも彷彿させる極上の殺人劇。 (徳間文庫 847円)[amazon] ヴァシーム・カーン『帝国の亡霊、そして殺人』 インドが共和国になる寸前の1949年12月31日。外交官のジェームズ卿が殺された。捜査に当たるのはインド初の女性警部ペルシス・ワディア。独立運動の遺恨と共和国化の混沌の只中のムンバイを舞台に、女性警部の活躍を描く英国推理作家協会賞受賞の歴史ミステリ。田村義進訳 (ハヤカワ・ミステリ 2530円)[amazon] アンドレアス・フェーア『急斜面』 おじの遺灰を撒くべくヴァルベルク山へ登ったクロイトナー上級巡査は、山頂近くのレストランで出会った女性とスキーで下山する途中、夏のハイキングコースに迷い込み、ベンチに坐る雪だるまを見つける。クロイトナーがその膝の辺りを払うと中からスキーパンツが――雪に塗れた女性の死体だったのだ。シリーズ第4作。酒寄進一訳 (小学館文庫 1188円)[amazon] ロバート・ベイリー『噓と聖域』 街の実業家によるレイプ事件の裁判に臨もうとしていた検事長のヘレンは、裁判の直前に元夫の殺人容疑で逮捕されてしまう。事件の背後には38年間明かされることのなかった禁忌があった……。吉野弘人訳 (小学館文庫 1188円)[amazon] ニコラ・デスティエンヌ・ドルヴ『エッフェル塔 創造者の愛』 19世紀末、パリ。「鉄の魔術師」エッフェルが挑むかつてない高さの塔の建設の裏に隠された、彼を支えた女性との隠された悲恋。田中裕子訳 (ハヤカワ文庫NV 1342円)[amazon] 種村季弘編『ドラキュラ ドラキュラ 吸血鬼小説集』 メリメ「グヅラ(抄)」、ジョン・ポリドリ「吸血鬼」、ホフマン「吸血鬼の女」、ヴェルヌ「カルパチアの城」、シュオッブ「吸血鳥」、コナン・ドイル「サセックスの吸血鬼」、アルトマン「ドラキュラ ドラキュラ」など、稀代の愛好家が吸血鬼小説の名品11篇を精選したアンソロジー、新装版。 (河出文庫 968円)[amazon] ハン・ガン『すべての白いものたちの』 アジア唯一のブッカー賞受賞作家の代表作がついに文庫化。ワルシャワと朝鮮半島をむすぶ、はかなくも偉大ないのちの物語。斎藤真理子訳 (河出文庫 935円)[amazon] えのころ工房『シャーロック・ホームズ人物解剖図巻』 長編『緋色の研究』『四つの署名』、短編集『シャーロック・ホームズの冒険』までに登場する総勢約250人の人物を完全ヴィジュアル化。コナン・ドイルが書いた彼らの姿を知ることで、物語に隠された謎が見えてくる。 (エクスナレッジ 1980円)[amazon] アラン・マバンク『もうすぐ二〇歳』 1970年代終り頃の コンゴの大都市ボワント=ノワ ール。ランボー『地獄の季節』を愛読し、ブラッサンスを愛聴する少年ミシェルの周りに起こる数々の波瀾、ユーモラスな出来事、不思議な経験を淡々と暖かい眼差しで描く、幼年・青春の思い出を下敷きにした自伝小説。藤沢満子・石上健二訳 (晶文社 2970円)[amazon] ラーシュ・ケプレル『鏡の男 上・下』 ある雨の朝、ストックホルムの公園でジャングルジムに吊された少女の遺体が発見された。現場に駆けつけた国家警察刑事ヨーナ・リンナは遺体の顔を一目見て驚愕する。彼女は5年前の誘拐事件で行方不明となった被害者だったのだ……。人気シリーズ最新作。品川亮訳 (扶桑社ミステリー 各1210円)[amazon上・下] ジョー・ネッター『ブッカケ・ゾンビ』 美しい妻と娘に囲まれ、満ち足りた生活を送る男には、やめられない悪癖があった。エロ動画だ。そんなある日、憧れのセクシー女優が主演するAVがこの町で撮影され、エキストラ男優を募集しているというニュースが。しかし、撮影現場の墓地で起きたのはゾンビの襲撃だった。食人集団も現れ地獄と化した町を行く彼の運命は? 超絶エログロ・ホラー。風間賢二訳 (扶桑社ミステリー 1320円)[amazon] シャーリー・アン・ウィリアムズ『デッサ・ローズ』 妊娠中の身を賭して、奴隷隊の反乱に加わった黒人の少女デッサ。逃亡奴隷たちをかくまい、彼らとともに旅に出る白人女性ルース。19世紀アメリカの奴隷制度を描く黒人文学の重要作。藤平育子訳 (作品社 2970円)[amazon] ナギーブ・マフフーズ『ミダック横町』 ミダック横町が過ぎ去りし時代の偉大なる遺産で、かつてはカイロの街に真珠のごとく光り輝いたであろうことは間違いない。1940年代カイロの下町に生きる個性豊かな人々の姿を軽妙に描く、ノーベル文学賞作家による円熟の傑作長編。香戸精一訳 (作品社 2970円)[amazon] ヨハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテ『若きヴェルターの悩み/タウリスのイフィゲーニエ』 人生の意味に取り憑かれて破滅する知的アウトローの魂の叫びが響き渡る、21世紀のヴェルター。神話的運命の固い絆を解く「人間」的誠実を謳いあげ、しかしその裏面に虚しき愛の漂流を予感させる「タウリスのイフィゲーニエ」を併録。大宮勘一郎訳 (作品社 3960円)[amazon] 《みすず》1・2月号 読書アンケート特集 (みすず書房) ▼1月刊 G・K・チェスタトン『マンアライヴ』 大風の吹き荒れる午後、ロンドンの下宿に住まう三人の男と下宿の女主人の姪ダイアナ、その友人の女相続人ロザマンドは、庭に飛び込んできた奇妙な男イノセント・スミスと対面する。新たな下宿人となった彼が巻き起こす騒動を巡って開かれた私的法廷の行方は? 巨匠チェスタトン幻の長編、待望の新訳。南條竹則訳 (創元推理文庫 902円)[amazon] ピーター・スワンソン『だからダスティンは死んだ』 ボストン郊外に越してきた版画家ヘンと夫のロイドは、隣の夫婦マシューとマイラの家に招待された。食事後にマシューの書斎に入ったとき、ヘンは2年半前に起きた殺人事件で犯人が被害者宅から持ち去ったとされる置き物を目にする。マシューは殺人犯だと確信したヘンは、彼について調べはじめるが……。息もつかせぬ超絶サスペンス。務台夏子訳 (創元推理文庫 1210円)[amazon] リン・トラス『図書館司書と不死の猫』 元図書館司書のわたしは海辺のコテージで休暇をすごしていた。そのメールを読んだのは退屈した嵐の晩のこと。添付のフォルダには、1匹の猫にまつわる信じがたい情報がおさめられていた。猫は人間の言葉をしゃべり、自らの数奇な半生を語っていた――。ブラックな微笑を誘う、奇妙な物語。玉木亨訳 (創元推理文庫 990円)[amazon] エドワード・ケアリー『望楼館追想』 かつては大邸宅だったが、今や年月に埋もれたかのような古い集合住宅、望楼館。住んでいるのは自身から逃れたいと望む孤独な人間ばかり。語り手のフランシスは、常に白い手袋をはめ、他人が愛した〈物〉を蒐集し、秘密の博物館に展示している。だが、望楼館に新しい住人が入ってきたことで、彼らの過去が揺り起こされる。鬼才ケアリーの比類なき傑作、ここに復活。古屋美登里訳 (創元文芸文庫 1760円)[amazon] エドワード・ドルニック『ヒエログリフを解け ロゼッタストーンに挑んだ英仏ふたりの天才と究極の解読レース』 千年以上、誰も読むことができなかった古代エジプトの謎の文字ヒエログリフ。解読のきっかけは、ナポレオンのエジプト遠征で発見された黒い石板ロゼッタストーン。そして、イギリスとフランスの二人の天才学者が解読レースに名乗りをあげたことだった。未知の言語を解読するプロセスをスリリングに描いたノンフィクション。杉田七重訳 (東京創元社 2970円)[amazon] ドン・ベントレー『奪還のベイルート 上・下』 テルアヴィヴのカフェで任務遂行中、何者かに襲われたアメリカ人母子を救った大統領子息ジャック・ライアン・ジュニア。狙われたのは物理学者の母親の研究技術であることが判明。イラン、中国、ロシアそれぞれの思惑で動く何者かが黒幕と思われた。執拗な襲撃の末に拉致された母子を救うため、単身敵地へと乗り込むジュニアを狡猾な罠が待ち受けていた。軍事謀略サスペンス。村上和久訳 (新潮文庫 各781円)[amazon上・下] リディア・デイヴィス『分解する』 ある女との短命に終わった情事を、男が費用対効果の観点から総括しようとする「分解する」。救いのない不動産に全財産をつぎ込んだ男が、理想の家屋の設計の幻想を若い猟師と共有していく様を描いた「設計図」。語学講座のテキストの裏で不穏な自体が進行していく「フランス語講座その1――Le Meutre」……。「アメリカ文学の小さな巨人」のデビュー短編集、待望の復刊。長さもスタイルも多様な短編34作を収録。岸本佐知子訳 (白水Uブックス 1870円)[amazon] 閻連科『四書』 黄河のほとり、第九十九更生区。知識人たちはここで「こども」に監督され、再教育を受ける。解放を夢みて狂騒的な鉄鋼農業生産に突き進む彼らを、やがて無謀な政策の果ての大飢饉が襲い……。不条理な政治に翻弄される人間の痛ましくも聖なる苦闘を、「四つの書」の形式で語る。大躍進時代を彷彿とする歴史の暗部に挑んだ意欲作。桑島道夫訳 (岩波書店 3630円)[amazon] 押川春浪『押川春浪幽霊小説集』 明治時代に冒険小説というジャンルの先駆者として活躍し、日本SFの祖とされた押川春浪の作品から、とくに幽霊を題材にした「万国幽霊怪話」「幽霊旅館」「黄金の腕輪」「南極の怪事」「幽霊小家」の5篇を収録。当時の読者が夢中で読み耽った、西洋趣味と怪奇趣味がふんだんに散りばめられたキッチュな味わいを楽しむ。巻末に押川春浪関係年譜を付す。内容 (国書刊行会 2640円)[amazon] ジョエル・タウンズリー・ロジャーズ『恐ろしく奇妙な夜』 〈奇想天外の本棚〉「人形は死を告げる」「つなわたりの密室」「殺人者」「殺しの時間」「わたしはふたつの死に憑かれ」「恐ろしく奇妙な夜」の6編を収録、『赤い右手』の作者ジョエル・タウンズリー・ロジャーズ中短編傑作集。夏来健次訳 (国書刊行会 2640円)[amazon] アレクサンドル・グリーン『真紅の帆』(電子書籍) 〈小学館世界J文学館〉夢見がちな少女アッソーリは、旅の老人に告げられた「いつか真紅の帆の船に乗った王子が、おまえを迎えにくるだろう」という言葉を信じ続ける。一方、資産家の息子グレイは船長に憧れて15歳で家を飛び出し、厳しい船乗り生活に耐えて20歳で自分の船を持つが……。ロマンティズム溢れる傑作。沼野充義訳/金子國義挿絵 (小学館 880円)[amazon] ミシェル・ビュトール『レペルトワールⅢ [1968]』 騙し絵か非゠騙し絵か(ホルバイン、カラヴァッジョ)、小説の地理学(ルソー)とポルノグラフィ(ディドロ)、毒薬/霊薬としての言葉(ユゴー))、連作としての絵画と文学(北斎、バルザック、モネ)、キュビスムの技法(ピカソ、アポリネール)、「正方形とその住人」(モンドリアン)、記憶の多角形(ブルトン)、「宇宙から来た色」(M・ロスコ)、考古学、場所、オペラ等々、文芸×美術を自在に旋回する、アクロバティックな創作゠批評の饗宴。石橋正孝監訳 (幻戯書房 6160円)[amazon] 小川公代『ケアする惑星』 『アンネの日記』、『おいしいごはんが食べられますように』、ヴァージニア・ウルフ、オスカー・ワイルド、ジェイン・オースティン、ルイス・キャロル、チャールズ・ディケンズ……。『ケアの倫理とエンパワメント』で注目された英文学者が、ケアをめぐる現代の事象を文学と自在に切り結び語る論考。 (講談社 1760円)[amazon] 《ミステリマガジン》3月号 〈特集:ジョルジュ・シムノン生誕120周年〉短篇「車椅子の頑固者」「メグレと消えたミニアチュア」「猟犬」他、瀬名秀明「ジョルジュ・シムノン作品の魅力」、「シムノン、大いに語る」、小山正「メグレと寡黙な人間観察者たち~ジョルジュ・シムノンの映像世界」他。目次 (早川書房 1320円)[amazon] チャック・パラニューク『インヴェンション・オブ・サウンド』 「全世界の人々が同時に発する悲鳴」の録音を目指すハリウッドの音響技師ミッツィ、児童ポルノサイトで行方不明の娘を探し続けるフォスター。二人の狂妄が陰謀の国アメリカに最悪の事件を起こす――『ファイト・クラブ』の著者が2020年代の世界へと捧げる爆弾。池田真紀子訳 (早川書房 2420円)[amazon] シオドラ・ゴス『メアリ・ジキルと怪物淑女たちの欧州旅行1 ウィーン篇』 ヴィクトリア朝ロンドンで暮らすメアリ・ジキルら、特異な能力をもつ“モンスター娘”こと〈アテナ・クラブ〉の令嬢たちに、ヴァン・ヘルシング教授の娘ルシンダから救助を求める手紙が届く。彼女たちは一路ウィーンへ! 大陸で繰り広げられる華麗な大冒険。原島文世(翻訳) (新☆ハヤカワ・SF・シリーズ 2640円)[amazon] チョヨプ・キム『地球の果ての温室で』 謎の蔓草モスバナの異常繁殖地を調査する植物学者のアヨンは、そこで青い光が見えたという噂に心惹かれる。幼い日に不思議な老婆の温室で見た記憶と一致したからだ。アヨンはモスバナの正体を追ううち、かつての世界的大厄災時代を生き抜いた女性の存在を知る。カン・バンファ訳 (早川書房 2200円)[amazon] ウォルター・デ・ラ・メア作品集2『アーモンドの樹』 デ・ラ・メア作品集全3巻(牧神社、1976)が待望の復刊。第2巻は「アーモンドの樹」「鉢」「姫君」「はじまり」の全4篇を収録。脇明子=訳/橋本治=挿絵 (東洋書林 2640円)[amazon] [honto] 小栗虫太郎『黒死館殺人事件・完全犯罪』 黒死館当主の自殺後、屋敷の住人に次々と殺人事件が襲いかかる。刑事弁護士法水麟太郎は博覧強記の知識で事件を解決に導いていく。長篇『黒死館殺人事件』に、デビュー作「完全犯罪」を併録。 (角川文庫 924円)[amazon] 江戸川乱歩『魔術師』 宝石王の命を狙う凶賊「魔術師」は、不気味な横笛の音とともに完璧な警戒態勢の中、予告場所に煙のように出没する。明智小五郎はこの強敵に打ち勝つことができるか……。長篇『魔術師』ほか、「黒手組」収録。 (角川文庫 748円)[amazon] キム・チュイ『満ち足りた人生』 ベトナムで孤児だったマンは、育ての母に導かれ、モントリオールでベトナム料理店を営む男性と結ばれる。子供にも恵まれて生活は順調に思われたが、マンはどこか満たされない様子だった。しかし、レシピ本の成功を機に訪れたフランスで一人のシェフと出会い、彼女は感情を少しずつ顕わにしてゆく……。関未玲訳 (彩流社 2420円)[amazon] カトリオナ・ウォード『ニードレス通りの果ての家』 暗い森の家に住む男。過去に囚われた女。レコーダーに吹き込まれた声の主。様々な語りが反響する物語は、秘密が明かされる度にその相貌を変え、恐るべき真相へ至る。巨匠S・キングらが激賞。異常な展開が読者を打ちのめす、英国幻想文学大賞受賞の傑作ホラー。中谷友紀子訳 (早川書房 3080円)[amazon] エリザ・スア・デュサパン『ソクチョの冬』 冬になると旅行客がほとんどやって来ない避暑地、ソクチョの小さな旅館でわたしは働いている。ある日、フランス人のバンドデシネ作家が旅館にやって来る。彼の中に、わたしは未だ見ぬフランス人の父と父の国への憧憬を重ねるが――。男女の一期一会を描く長篇。原正人訳 (早川書房 2640円)[amazon] テス・シャープ『詐欺師はもう嘘をつかない』 詐欺師の母親の元でノーラは何度も名前を変え、その度に人を騙す方法を学んできた。ある日、彼女は友人と強盗事件に巻き込まれ……。服部京子訳 (ハヤカワ・ミステリ文庫 1628円)[amazon] カミール・デアンジェリス『ボーンズ・アンド・オール』 好きになった相手を食べ殺してしまう16歳の孤独な少女は、父親を捜す旅に出て同類の少年に出会う。衝撃のカニバリズム・ロマンス。川野靖子訳 (ハヤカワ文庫NV 1056円)[amazon] エドワード・アシュトン『ミッキー7』 宇宙開発で危険な仕事をこなすために生み出 された「使い捨て人間(エクスペンダブル)」ミッキー。すでに六度の 死を経験した彼の身に思いがけないことが!? 大谷真弓訳 (ハヤカワ文庫SF 1210円)[amazon] チャン・リュジン『月まで行こう』 大手製菓会社に勤めるタへ、ウンサン、チソン。20代後半、独身、経済的余裕のない一人暮らし、と共通点が多い。あるとき、ウンサンが仮想通貨投資を始め、タへとチソンも始めることに。通貨価格のアップダウンとともに自らの人生を見つめる彼女たちは――。韓国のベストセラー小説。バーチ美和訳 (光文社 1980円)[amazon] 山尾悠子『迷宮遊覧飛行』 迷宮的作家・山尾悠子の足跡を辿る500頁。泉鏡花・澁澤龍彦・ボルヘス・デルヴォーなど、偏愛する作家や画家をめぐる文章、自作解説、回想、掌篇小説など全80余編。20代の若書きから現在に至るまで、初のエッセイ集成。書き下ろしの「読書遍歴」も収録。目次 (国書刊行会 3520円)[amazon] マンゴ・パーク『ニジェール探検行』 〈世界探検全集〉ニジェール川の水源と河口を探るべくアフリカへ旅立ったマンゴ・パーク。酷暑と猛獣の恐怖に耐え西アフリカ奥地を踏査。探検の終焉間近に、現地民の襲撃により落命した悲劇の探検家の手記。森本哲郎・廣瀬裕子訳 (河出書房新社 2970円)[amazon] イーヴリン・ウォー『無条件降伏 誉れの剣Ⅲ』 激戦地クレタ島脱出から2年、ガイ・クラウチバック大尉はロンドンで無為な日々を送っていた。旅団の戦友たちが次々に戦地に向かうなか、年齢を理由にひとり後に残されたガイは、開戦時に抱いた崇高な大義を見失いつつあったが……。自身の軍隊体験をもとに、戦争の醜悪さと滑稽さ、古き理想の崩壊を描いたウォー最後の傑作《誉れの剣》三部作、最終巻。小山太一訳 (白水社 4620円)[amazon] ペ・スア『遠きにありて、ウルは遅れるだろう』 〈エクス・リブリス〉午後四時にベッドで目を覚ました「私」は、旅館の一室におり、存在を規定する記憶がすべて消えていることを知る。椅子には黒い服を着た同行者が座って本を読んでいた。同行者も、自分の存在を規定する記憶をすべて失っていることに気づく。巫女に会い、「ウル」と名付けられた私は、感覚と予感をもとに、様々なものにいざなわれ、自分が何者であるのかを夢幻的に探っていく。「韓国文学史で前例なき異端の作家」と評価される著者の待望の邦訳書。斎藤真理子訳 (白水社 2200円)[amazon] チェ・ウニョン『明るい夜』 〈ものがたりはやさし〉夫の不倫で結婚生活に終止符を打ち、ソウルでの暮らしを清算した私は、長く絶縁状態にあった祖母と思いがけなく再会を果たす。家父長制に翻弄されながらも植民地支配や戦争の時代を生き抜いた曾祖母や祖母、そして母、私へとつながる、温かく強靱な女性たちの百年の物語。古川綾子訳 (亜紀書房 2420円)[amazon] ベルトン・コッブ『善意の代償』 〈論創海外ミステリ〉下宿屋〈ストレトフィールド・ロッジ〉を見舞う悲劇。完全犯罪の誤算とは……。越権捜査に踏み切ったキティー巡査は難局を切り抜けられるか? 菱山美穂訳 (論創社 2200円)[amazon] カリン・スローター『忘れられた少女 上・下』 ゴミ置き場で発見された少女の遺体。40年前の未解決事件の犯人は、わたしの父親なのか――新米保安官補が因縁の事件に挑む。田辺千幸訳 (ハーパーBOOKS 各980円)[amazon上・下] クォン・ナミ『ひとりだから楽しい仕事 日本と韓国、ふたつの言語を生きる翻訳家の生活』 村上春樹、三浦しをん、小川糸ら日本文学の韓国語翻訳を手がける著者のエッセイ集。日本小説ブームの思い出、翻訳料事情、誤訳の恐怖……翻訳家人生をユーモアたっぷりに綴る。藤田麗子訳 (平凡社 2640円)[amazon] パット・バーカー『女たちの沈黙』 リュルネソスの王妃ブリセイスは、敗戦後、奴隷となった。その主は、家族と同胞を滅ぼした英雄アキレウス。彼女に与えられた選択肢は、服従か死か。だが、彼女が選んだのは――。英国の戦争文学の旗手が、黙殺されてきた女たちの声で『イリアス』を語り直す。北村みちよ訳 (早川書房 3960円)[amazon] オリヴィエ・トリュック『白夜に沈む死 上・下』 石油景気に湧く沿岸の町。町に侵入するトナカイをめぐり所有者と住人とのトラブルが絶えないなか、トナカイ所有者の青年がトナカイの移動中に死亡、数日後同じ場所で市長が死体で見つかる。腑に落ちないものを感じたトナカイ警察のクレメットとニーナだったが……。日の沈まない夏の北極圏、北欧三国にまたがり活躍する特殊警察コンビが事件を追う。久山葉子訳 (創元推理文庫 各1210円)[amazon上・下] アマンダ・ブロック『父から娘への7つのおとぎ話』 幼い頃に両親が離婚したレベッカは、父のレオに20年近く会っていない。ある日、男性記者が取材でレオの行方を尋ねてきた。レオはBBCの子ども番組に出演していた人気俳優だったが、レベッカは父が書いたというおとぎ話を手がかりに彼を探そうとする。7つの奇妙な物語と想像力のきらめきが導く、心温まる家族小説。吉澤康子訳 (東京創元社 2750円)[amazon] 山田英春『ストーンヘンジ 巨石文化の歴史と謎』 いったい誰が、何のためにつくったのか? 100以上のブリテン諸島の巨石遺跡を巡った著者が、その歴史と謎を整理し、魅力を語る。カラー図版多数。 (筑摩選書 2200円)[amazon] ヤン・ポトツキ『サラゴサ手稿 下』 「サラバンドを学べ、息子よ」──なぜ父は息子に幾何学を学ぶのを禁じるのか。新大陸メキシコで繰り広げられる荘厳で悲劇的な愛の物語。ゴメレス一族の秘密はついに明らかになり、地下空間に下り立った主人公アルフォンソが六十一日めに目にしたものは? ポーランドの鬼才ポトツキによる幻の物語、初めての全訳、全3冊完結。畑浩一郎訳 (岩波文庫 1177円)[amazon] 《ナイトランド・クォータリー》vol.31 〈往方の王、永遠の王~アーサー・ペンドラゴンとは何者だったのか〉これまで日本語で紹介されてこなかった作品を中心に、ホラーや幻想文学を軸として、アーサー王伝説を様々な角度から捉え直す。トマス・ラヴ・ピーコック、トマス・マロリー、アレクサンダー・レルネット=ホレーニア、マイクル・ムアコック他。内容 (アトリエサード 2200円)[amazon] ユーン・ハ・リー『蘇りし銃』 暦法改新から9年。ジェダオは自らの不死を維持しようとするクジェンの手によって蘇り、彼のもとで艦隊を率いて出撃する。一方、チェリスは姿をくらまし、六連合の復活を阻止しクジェンの野望を挫くべく独自の動きを見せていた。それぞれのの思惑が交錯する中、いよいよ最終決戦が迫る。ローカス賞受賞三部作完結編。赤尾秀子訳 (創元SF文庫 1650円)[amazon] シルヴァン・テッソン『シベリアの森のなかで』 冒険家でゴンクール賞作家のテッソンが、シベリアの奥地バイカル湖畔の小屋で半年を過ごした。冬の気温はマイナス32度、村からの距離は120km、小屋は標高2000mの山々の裾にあり、窓からは湖岸が見える。隠遁生活に彩りを与えるのは、雪と森と湖、野生動物、ロシア人猟師たちとの出会い、そして読書。孤独と内省のなかで自然と向き合い、人生の豊かさを見つめ直す、現代版『森の生活』。メディシス賞受賞。 (みすず書房 3960円)[amazon] アルベルト・モラヴィア『同調者』 マルチェッロが殺人を犯したのは13歳のとき。以来、正常であろうと努め、果てはファシズム政権下の政治警察の一員に。人並みな結婚を目前にある暗殺計画に関わるが、そこで思わぬ感情の昂ぶりを感じ……。著者円熟期の代表作。関口英子訳 (光文社古典新訳文庫 1606円)[amazon] フョードル・ドストエフスキー 『未成年 3』 物語は一気に加速する。〈ぼく〉は臨終の床にある戸籍上の親マカールと出会い、その数奇な放浪譚と信仰心から清冽な印象を受けて「復活」に向かう。謎の手紙をめぐる陰謀、実父ヴェルシーロフとの熱く長い会話、そしてついに驚愕の事件が……。亀山郁夫訳 (光文社古典新訳文庫 1540円)[amazon] ディーノ・ブッツァーティ『ブッツァーティのジロ帯同記 1949年、コッピ対バルタリのジロ・ディ・イタリアを追う』 「イタリアのカフカ」とも称される作家ディーノ・ブッツァーティによる まるで連載短篇小説のようなジロ・ディ・イタリア(自転車レース)帯同記、しかも 史上もっとも有名な伝説的なジロの記録でもあり、 第二次大戦直後イタリア全国の様子も窺える貴重なテキスト。安家達也訳 (未知谷 2420円)[amazon] エリン・フラナガン『鹿狩りの季節』 1985年、ネブラスカ州ガンスラム。鹿狩りの季節に少女が失踪した。血の付いたトラックに乗っていたことから知的障害のある青年ハルに容疑が。彼の養父母は無実を証明するため事件の調査を始めるが、その背後には小さな村の複雑すぎる人間関係が隠されていた……。矢島真理訳 (ハヤカワ・ミステリ 2420円)[amazon] ステイシー・ウィリンガム『すべての罪は沼地に眠る』 クロエが12歳の夏、父はルイジアナ州の湿地で6人の少女を殺した。20年後、同じ手口の連続殺人事件が起きる。模倣犯の目的とは? 大谷瑠璃子訳 (ハヤカワ・ミステリ文庫 1782円)[amazon] サリー・ルーニー『ノーマル・ピープル』 マリアンは、お手伝いの息子コネルとは幼馴染。惹かれ合い、周囲に内緒で付き合い始めるが、高校卒業前に別れてしまう。だが同じ大学に通うことになり……。劣等感や社会格差、すれ違いで引き裂かれた男女の恋愛の機微を描く、全世界100万部超の傑作小説。山崎まどか訳 (早川書房 2860円)[amazon] スー・ブラック『死体解剖有資格者 法人類学者が見た生と死との距離』 法人類学・法解剖学の世界的権威、英国BBC Two局「長期未解決怪事件ファイル:歴史上のコールドケース」の進行役、ブラック教授が綴る、個人識別技術と身元鑑定にまつわるミステリー風回顧録。倉骨彰訳/横田淳監修 (草思社 4180円)[amazon] エリザベート・ヘルマン『最終法廷 ヨアヒム・フェルナウ弁護士』 名門大学の法学部を出ながら、破産寸前の法律事務所を共同経営する弁護士ヨアヒム・フェルナウ。ある日、ヨアヒムが窃盗罪で弁護を担当したホームレスの若者が、裁判所の前で老女に銃撃される。ホームレスはとっさに逃げるが、老女はその場で発作を起こして倒れてしまう。ホームズは老女と面識がなく、なぜ彼が撃たれたか分からなかった。ドイツで770万人が視聴した超人気ドラマの原作。浅井晶子訳 (小学館文庫 1452円)[amazon] 橋本治『完本 チャンバラ時代劇講座 1・2』 文学、メディア、芸能等の歴史を横断する、橋本治にしか書けないアクロバティックなチャンバラ映画論にして、優れた近代日本大衆史。原稿枚数1400枚に及ぶ渾身の大著が遂に文庫化。 (河出文庫 1210円/1430円)[amazon 1・2] 有吉佐和子『女二人のニューギニア』 文化人類学者で友人の畑中幸子が滞在する、数年前に発見されたシシミン族のニューギニアの奥地を訪ねた滞在記。想像を絶する出来事の連続と抱腹絶倒の二人の丁々発止。有吉ファン必読。 (河出文庫 990円)[amazon] スティーヴン・キング/オーウェン・キング『眠れる美女たち 上・下』 「オーロラ病」が世界中に蔓延し、女たちは次々と眠りについていく。しかしドゥーリングの町には唯一、病の影響を受けない女がいた。白石朗訳 (文春文庫 各1749円)[amazon上・下] |