▼3月刊
深町悟 『「侵攻小説」 というプロパガンダ装置の誕生』
1871年に英国で誕生した 「侵攻小説」。その後世界に広まったこのジャンルは 「未来戦記」 「架空戦記」 「IF戦記」 などの名称で日本でも親しまれている。本書はそのオリジナルとして知られる 『ドーキングの戦い』 に加え、未だ研究のなされてこなかった数々の作品を取り上げ、そのジャンルの英国での受容を論じる。目次
(溪水社 3080円)[amazon]
『二〇世紀 「英国」 小説の展開』 高橋和久・丹治愛編
20世紀英国小説研究の新しい傾向を踏まえつつ、「小説を読む」意味を問い直す。ヘンリー・ジェイムズ、コンラッド、ウォーからファウルズ、クッツェー、カズオ・イシグロまで、重要な作家の作品論を、幅広い世代の18人の論者が展開する。目次
(松柏社5280円)[amazon]
トーマス・ブルスィヒ 『太陽通り ゾンネンアレー』
まだ東西ドイツがあった頃のお話。15歳の男の子ミヒャエルは太陽通り(ゾンネンアレー)の「ベルリンの壁」近くに住んでいる。太陽通りは西ベルリンから長く続く道で、最後の60メートルだけが東ベルリンにある。あとちょっとで西側に住めたのに、とミヒャは思う。ミヒャと、彼をとりまくおかしな人々による「ベルリンの壁コメディー」。浅井晶子訳
(三修社 2200円)
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フェデリーコ・ヴィットーレ・ナルデッリ 『ピランデッロ秘密の素顔』
20世紀前半のイタリアを代表する小説家、劇作家ピランデッロの、亡命中のパリでの3カ月にわたるインタビューをもとに書き上げられた、半ば自伝とも言いうる詳細な伝記。斎藤泰弘訳
(水声社 4400円)[honto]
ビアトリス・ホーネガー『茶の世界史 中国の霊薬から世界の飲み物へ 新装版』
その一杯を味わいながら繙きたい――ポスト・コロニアルな問題意識とお茶への愛とに裏打ちされた豊穣な東西文化史。平田紀之訳
(白水社 予3520円)
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香住春吾 『地獄横丁』
ミステリ作家・脚本家・放送作家である香住春吾の中篇スリラー小説を初の書籍化。表題作以外にも、単行本未収録となっている短篇5編を収録。
(
盛林堂ミステリアス文庫 2500円)
城崎龍子 『ハルピンお龍行状記 姿なき脅迫者』
城崎龍子(潮寒二)の女スリ「ハルピンお龍」シリーズを初集成。善渡爾宗衛編
(我刊我書房 6000円) 取扱=
盛林堂
ヒュー・ロフティング 『ドリトル先生アフリカへ行く』
ドリトル先生シリーズ100周年改訂新版 (原書のユーモアや面白さはそのままに、現代の見地から見ると問題のある表現などを改めたもの)。金原瑞人・藤嶋桂子訳
(竹書房 1540円)[amazon]
西崎憲 『未知の鳥類がやってくるまで』
「行列」 「開閉式」 「東京の鈴木」 などに書き下ろし 「未知の鳥類がやってくるまで」 を加えた全10作の短篇集。SF的、幻想的、審美的味わいと本をめぐる物語。
(筑摩書房 1870円)
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一柳廣孝 『怪異の表象空間 メディア・オカルト・サブカルチャー』
日本の近現代は怪異とどう向き合ってきたのか。明治期の怪談の流行から1970年代のオカルトブーム、そして現代のポップカルチャーまで、21世紀になってもなおその領域を拡大し続ける「闇」の領域――怪異が紡いできた近現代日本の文化表象を多角的視座から探究。
目次
(国書刊行会3960円)
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木場貴俊 『怪異をつくる 日本近世怪異文化史』
人がいなければ、怪異は怪異にはならない。では誰が何を 「あやしい」 と認定して怪異になったのか。つまり、怪異はどうつくられてきたのか。その様々なありさまを、当時の 「知」 の体系に照らし描く。近世の怪異をつくった第一人者、林羅山からはじまり、政治、本草学、語彙、民衆の怪異認識、化物絵、ウブメ、河童、大坂、古賀侗庵の全10章プラス補論3章。
(文学通信 3080円)
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ユーディット・シャランスキー 『失われたいくつかの物の目録』
解体された東ドイツの宮殿、絶滅種のトラ、太平洋に沈んだ島、老いたグレタ・ガルボ……自然や芸術作品が雄弁に語り始める夢の目録。細井直子訳
(河出書房新社 3190円)
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クライブ・カッスラー/グラハム・ブラウン 『気象兵器の嵐を打ち払え 上・下』
インド洋で発見された焼けただれた漂流船は、水温調査をしていたNUMA(国立海中海洋機関)の双胴船だった。真相究明にモルディブへ向かったオースチンらNUMA特別出動班は、船体の燃え滓の中に異常な物体を大量に見つける。〈NUMAファイル〉シリーズ第10弾。土屋晃訳
(扶桑社ミステリー 各990円)[amazon
上・
下]
寺尾隆吉 『100人の作家で知る ラテンアメリカ文学ガイドブック』
ラテンアメリカ出身の作家は数多く日本で紹介され、作品も多く邦訳されている。しかし、その一方でそうした作家や作品をまとめて紹介した媒体はほとんど存在していない。19~21世紀の代表的な作家100人と、作家の代表作を紹介し、ラテンアメリカ文学を読む人への指針となるハンドブック。
(勉誠出版 3080円)
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《ミステリマガジン》 5月号
〈特集=ハヤカワ・ジュニア・ミステリ創刊〉
目次
(早川書房 1320円)
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テレツィア・モーラ 『よそ者たちの愛』
〈エクス・リブリス〉 この世界になじめずに都市の片隅で不器用に生きる人びと。どこにでも、誰のなかにも存在する<よそ者>たちの様々な思いを描く短篇集。鈴木仁子訳
(白水社 3190円)
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ジェスミン・ウォード 『歌え、葬られぬ者たちよ、歌え』
アメリカ南部で困難を生き抜く家族の絆の物語であり、臓腑に響く力強いロードノヴェルでありながら、生者ならぬものが跳梁するマジックリアリズム的手法がちりばめられた、壮大で美しく澄みわたる叙事詩。現代アメリカ文学を代表する長篇小説。全米図書賞受賞。石川由美子訳
(作品社 2860円)
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イ・ジン 『ギター・ブギー・シャッフル』
〈韓国文学セレクション〉 朝鮮戦争の傷跡が残る1960年代初頭のソウル。戦争で孤児となった主人公キム・ヒョンの心の友は、米軍のラジオ局から流れてくる最新のポップスだった。どん底の生活を続けていたヒョンは偶然の積み重ねで、憧れの龍山(ヨンサン)米軍基地内のクラブステージにギタリストとして立つことに……。李眞・岡裕美訳
(新泉社 2200円)
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横溝正史 『蝶々殺人事件』
原さくら歌劇団の主宰者、原さくらが 「蝶々夫人」 の大阪公演を前に突然、姿を消した。数日後、数多くの艶聞をまきちらしプリマドンナとして君臨していたさくらの死体は、バラと砂と共にコントラバスの中から発見される。由利麟太郎&三津木俊助シリーズ。表題作他「蜘蛛と百合」「薔薇と鬱金香」を収録。
(角川文庫 946円)
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アリ・スミス 『秋』
分断が進む世界で小説に何ができるのか。新時代の希望を描く「EU離脱後」小説。EU離脱に揺れるイギリスのとある施設で眠る謎の老人と、彼を見舞う若い美術史家の女。かつて隣人同士だった二人の人生は、六〇年代に早世した女性アーティストを介して再び交錯し――不協和音が響く現代に、生きることの意味を改めて問いかける。『両方になる』で読者を驚かせた著者による、奇想とユーモアに満ちた話題作。
木原善彦訳
(新潮社クレスト・ブックス 2200円)
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泡坂妻夫 『宝引の辰 捕者帳 第二巻 凧をみる武士』
日本推理作家協会賞、直木賞受賞に輝く著者の代表的な捕者小説。本書には1993~1995年に発表された旅差道中、夜光亭の一夜、忍び半弓、雛の宵宮、面影蛍、幽霊大夫、とんぼ玉異聞の短編7編と、中編の凧をみる武士を作品発表順に収録。
オンデマンド出版
(捕物出版 1804円)
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チョン・セラン 『保健室のアン・ウニョン先生』
養護教諭のアン・ウニョンが新しく赴任した私立M高校。この学校には原因不明の怪奇現象や不思議な出来事がつぎつぎと起こる。霊能力を持つ彼女はBB弾の銃とレインボーカラーの剣を手に、同僚の漢文教師ホン・インピョとさまざまな謎や邪悪なものたちに立ち向かう。『フィフティ・ピープル』の若き旗手が放つ、奇想天外な物語。斎藤真理子訳
(亜紀書房 1760円)
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ダン・フェスパーマン 『隠れ家の女』
聞いてはいけない工作員たちの会話を録音してしまったCIA女性職員ヘレンに命の危険が迫る。ミステリの興趣溢れるスパイ小説。東野さやか訳
(集英社文庫 1540円)
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エルンスト・ユンガー 『エウメスヴィル あるアナークの手記』
〈叢書・エクリチュールの冒険〉 後の架空の都市国家に生きる一青年の任務と日常に仮託して、来たるべき人間と社会の趨勢を描いた、ユンガーの知られざる長篇小説。『大理石の断崖の上で』『ヘリオーポリス』に続く本作で、ユンガーはついに、独裁者たちが巨大な森へと消失する未来を幻視する。稀代の魔術的リアリストが描く、異形のSF世界。田尻三千夫訳
(月曜社 3850円)
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岡田鯱彦 『薫大将と匂の宮』
身体から不思議な芳香をはなつ薫大将と、源氏の孫にあたる匂の宮――源氏の亡き後、二人の貴公子の織りなす物語が 『源氏物語』 でも名高き「宇治十帖」である。その「宇治十帖」を最後に未完とされていたこの物語には、幻の続編が存在した。貴公子たちの恋の鞘当てが招く、美しき姫君たちの死。平安の宮中を震撼させる怪事に、紫式部と清少納言が推理を競う。推理作家にして古典文学者、ふたつの顔を持つ著者のみが書き得た絢爛たる王朝推理絵巻が、いま甦る。「艶説清少納言」
「「六条の御息所」 誕生」 他、関連短編とエッセイを併録。
(創元推理文庫 1100円)
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小森収編 『短編ミステリの二百年 2』
短編ミステリの歴史をさぐるアンソロジー第二巻は、1920~50年代の都会小説、ハードボイルド/私立探偵小説、謎解きミステリの逸品を通して、進化と発展の過程を概観。ハメット、チャンドラー、スタウト、アリンガム、クリスピン、ヴィカーズらの11短編を新訳で収録。猪俣美江子他訳
収録内容
(創元推理文庫 1540円)
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アーナルデュル・インドリダソン 『湖の男』
干上がった湖の底で発見された白骨。頭蓋骨には穴があき、壊れたソ連製の盗聴器が体に結びつけられている。エーレンデュルらの調査はひとつの失踪事件に行き当たった。農機具のセールスマンが婚約者を残し消息を絶ったのだ。男は偽名を使っていた。男は何者で、何故消されたのか? 北欧ミステリ大作。柳沢由実子訳
(創元推理文庫 1496円)
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ケン・リュウ編 『月の光 現代中国SFアンソロジー』
『三体』著者、劉慈欣による表題作ほか、現代の北京でSNS産業のエリートのひとりとして生きる主人公の狂乱を描いた、『荒潮』著者の陳楸帆による「開光」など、14作家16篇を収録。最先端の現代中国SFを収録した、ケン・リュウ編によるアンソロジー第2弾.
(新☆ハヤカワ・SF・シリーズ 2420円)
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アリソン・ゲイリン 『もし今夜ぼくが死んだら、』
自殺をほのめかす少年。彼に何が起こったのか――時は遡り、4人の登場人物の視点から、嘘と秘密に満ちた5日間が描かれる。奥村章子訳
(ハヤカワ・ミステリ文庫 1386円)
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アガサ・クリスティー 『名探偵ポアロ オリエント急行の殺人』
〈ハヤカワ・ジュニア・ミステリ〉 豪華列車内で事件がおきた。殺されたのは金持ちの男。世界一の名探偵ポアロが調査することに。犯人は乗客の誰かにまちがいない。だが全員にアリバイがある。はたしてポアロの推理は……。クリスティーの傑作を、ルビと挿絵つき、完訳で贈る。小学5・6年生から。山本やよい訳
(早川書房 1430円)
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アガサ・クリスティー 『そして誰もいなくなった』
〈ハヤカワ・ジュニア・ミステリ〉 なぞの人物に招待された十人の男女が孤島の邸宅に集まったとき、おそるべき殺人ゲームがはじまる。童謡の歌詞どおりに一人また一人と殺されてゆく。犯人は誰か?
そして生き残るのは……? クリスティーの傑作を、ルビと挿絵つき、完訳で贈る。小学5・6年生から。青木久恵訳
(早川書房 1430円)
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ダニエル・アレンソン 『地球防衛戦線1 スカム襲来』
異星人の攻撃により人口の6割が死亡した地球を舞台に、絶望的な状態の中、果敢に戦いを挑む若き兵士たちの死闘を描く戦争SF。金子浩訳
(ハヤカワ文庫SF 1100円)
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ニコラス・アーヴィング/A・J・タタ 『狙撃手リーパー ゴースト・ターゲット』
久々に帰国した凄腕スナイパーを待っていたのは、所在不明になった彼自身の銃を使った連続狙撃事件だった。アクション・スリラー。公手成幸訳
(ハヤカワ文庫NV 1254円)
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『オカルト伝説 人を魅了する世界の不思議な話』 ナショナル ジオグラフィック編
世界各地のオカルト伝説を紹介し、人間の生活とどのように絡み合って来たのか、古代から中世、現代へと歴史を辿りながら明らかにする。魔法や幽霊、UFOなどを現代の科学的知識によって、ただ単に種明かしするのではなく、それらの現象を生み出した社会背景、人間の心理などを分析して、オカルト伝説とは何かを考察する。
(日経ナショナルジオグラフィック社 1540円)
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ジェラール・ド・ネルヴァル 『火の娘たち』
「その美しい夏の朝かぎり、ぼくらは花婿と花嫁だった」──パリの女優の面影が呼び覚ます、故郷ヴァロワの日々。金髪のアドリエンヌ、黒髪のシルヴィの回想は、過去と現在、夢とうつつ、光と闇とを往還する。小説・戯曲・翻案・詩を一つに編み上げた、幻想の作家ネルヴァル珠玉の作品集。その魔術的魅惑を爽やかな訳文で伝える。野崎歓訳
(岩波文庫 1386円)
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福井健策 『改訂版 著作権とは何か 文化と創造のゆくえ』
著作権はどのような場合に生まれ、具体的にどのようなことができ、そもそも何のために存在するのか。著作権を専門とする弁護士が、その基礎や考え方をシェイクスピア、ディズニー、手塚治虫などの豊富な実例でわかりやすく解説。著作権保護期間など最近の状況を盛り込んだ、ロングセラーの増補版。
(集英社新書 902円)
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式場隆三郎 『二笑亭綺譚』
精神科医・式場隆三郎が実在した奇妙な建築「二笑亭」と、その主人の人生を詳らかに描いた 『二笑亭綺譚』 が、式場が熱望した木村荘八の挿絵(未発表)と、発見された当時の資料をあわせ新装版として蘇る。『決定版
二笑亭綺譚』(今野書房、昭和40年)の章立てを一部変更して採録し、書下ろしを加えて構成。
(中西出版 3300円)
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ハン・スンウォン 『月光色のチマ』
〈韓国文学の源流シリーズ〉 日本による植民統治時代に生まれ、露草のように美しく生きた気丈な母チョモン。半島南部のとある海辺風景をバックに、激動の時代の約一世紀を強く生き抜いた母の生涯を叙情あふれる筆致で描く傑作長編。井手俊作訳
(書肆侃侃房 2420円)
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デヴィッド・コープ 『深層地下4階』
貸倉庫の夜勤シフトについた前科持ちのティーケイクは、壁の奥に隠された深層地下階の図面パネルを発見する。それは40年前、小さな町を全滅させるほどに進化した寄生体が極秘に封印されている場所だった……。異色スリラー。伊賀由宇介訳
(ハーパーBOOKS 1200円)
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J・D・バーカー 『嗤う猿』
「見ざる、聞かざる、言わざる」 になぞらえ猟奇殺人を繰り返した“四猿"が忽然と姿をくらましてから4カ月――シカゴを震撼させる新たな事件が発生した。公園の池で凍った少女の死体が発見されたが、体には拷問の跡や不可解な点が見られ、その奇怪な手口に世間は“四猿の再来"と騒ぎ立てる。『悪の猿』
に続くシリーズ第2弾。富永和子訳
(ハーパーBOOKS 1360円)
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瀬川裕司 『映画講義 ロマンティック・コメディ』
ロマンティック・コメディは時代とともにいかに変化してきたか。物語のパターンの読み解き、登場人物の特徴など、魅力の源泉に迫る。
(平凡社新書 1012円)
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チャールズ・ディケンズ 『オリバー・ツイスト』
イギリスの地方都市の救貧院で育った孤児オリバー・ツイストは、ロンドンの犯罪社会に巻き込まれたり、温厚な紳士の庇護を受けたり、様々な運命の変転を経験しながら、やがて自らの出自の謎を知る……。文豪ディケンズの代表作。挿絵多数。唐戸信嘉訳
(光文社古典新訳文庫 1760円)
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新章文子 『沈黙の家』
男女の愛憎と微妙な心理を巧みに配した長編サスペンスに加え、レトリックが冴える傑作短編3編を収録。いずれも初文庫化。
(光文社文庫 1078円)
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『飛鳥高探偵小説選Ⅴ』
〈論創ミステリ叢書〉 長編「ガラスの檻」を巻頭に、デビュー直後の短編「湖」から断筆直前の単行本未収録中編「プルタバの流れ」まで全16作を収録。日本推理小説文壇最長老、飛鳥高の探偵小説集第5弾にして集大成。
(論創社 4400円)[amazon]
キャロル・オコンネル 『修道女の薔薇』
消えた修道女を捜してほしい、マロリーのもとに一件の訴えが持ち込まれる。同じとき、彼女の甥と思われる盲目の少年も姿を消していた。数日後、修道女は意外なところで発見される。市長邸の正面階段に積まれた四体の死体、その中に彼女もいたのだ。その頃少年は、ある男のもとに囚われていた。一方殺害事件を追うマロリーは……。氷の天使、マロリー・シリーズ。務台夏子訳
(創元推理文庫 1628円)[amazon]
ユーン・ハ・リー 『ナインフォックスの覚醒』
物理法則を超越する科学体系〈暦法〉を駆使する星間大国〈六連合〉の若き女性軍人にして数学の天才チェリスは、伝説の戦術家ジェダオの精神をその身に憑依させ、艦隊を率いて巨大宇宙都市要塞の攻略に向かう。2017年ローカス賞受賞、ヒューゴー賞・ネビュラ賞候補の本格宇宙SF。赤尾秀子訳
(創元SF文庫 1210円)[amazon]
桑野隆 『改訂版 バフチン カーニヴァル・対話・笑い』
じつは哲学、言語学、記号論等々をまたぐ領域横断的な知のあり方が本領のバフチン。全体像をあますところなく描く最良の入門書。
(平凡社ライブラリー 1760円)[amazon]
ヴィクトール・ユゴー 『レ・ミゼラブル 第四部 プリュメ通りの牧歌とサン・ドニ通りの叙事詩』
七月革命後の混迷のパリを舞台に物語は核心部へ。コゼットとの愛を育みつつ反政府秘密結社員として活動を続けるマリユスは……。西永良成訳
(平凡社ライブラリー 1980円)[amazon]
稲垣足穂 『稲垣足穂詩文集』
「詩的要素は多い」と認めつつ、「詩人」のレッテルを否定した稲垣足穂。それでも、詩やコントというべき独創的作品が数多く大正期の前衛詩誌に発表され、若い詩人たちに影響を与えた。1920-30年代を中心に晩年までの作品集に、詩論やエッセイを併載し、日本文学の異才の“詩性”を剔出する。中野嘉一編
(講談社文芸文庫 2420円)[amazon]
山尾悠子 『翼と宝冠』
小説と人形が織りなす奇蹟の幻想譚 『小鳥たち』 外伝。小鳥の侍女のさいしょの始まり。プロローグにしてコーダ。物語はこの侍女の譚をもって完結する。山尾悠子の新作書き下ろし、豆本にてリリース。
(ステュディオ・パラボリカ 2200円)[amazon]
カルメン・マリア・マチャド 『彼女の体とその他の断片』
首にリボンを巻いている妻の秘密、セックスをリスト化しながら迎える終末、食べられない手術を受けた私の体、消えゆく女たちが憑く先は……。大胆奔放な想像力と緻密なストーリーテーリングで「身体」を書き換える新しい文学、クィアでストレンジな全8篇収録の短篇集。小澤英実・小澤身和子・岸本佐知子・松田青子訳
(エトセトラブックス 2640円)[amazon]
エリカ・ダイアン・ラパポート 『お買い物は楽しむため 近現代イギリスの消費文化とジェンダー』
中・上流階級の女性の娯楽、社交生活、政治の拠点となったロンドンのウェストエンド。百貨店の誕生から、既婚女性財産法、フェミニストの運動、演劇と女性のショッピング、ショーウィンドウを破壊した女性参政権運動まで。19世紀~20世紀初めのロンドンで、女性たちがどのように「家庭」から「街」に飛び出し、ショッピングを楽しむようになったのかを明らかにする。目次
(彩流社 5280円)[amazon]
都筑道夫 『悪意銀行』
洒落た会話と何重にも仕掛けられる罠、激烈な銃撃戦(死者多数)とちょっぴりのお色気、そして結末は完全予測不能。近藤・土方シリーズ第二弾が復活。日下三蔵編
(ちくま文庫 880円)[amazon]
恩田陸 『土曜日は灰色の馬』
顔は知らない、見たこともない。けれど、おはなしの神様はたしかにいる――。恩田陸が眺める世界を堪能できる、傑作エッセイを待望の文庫化。
(ちくま文庫 792円)[amazon]
西山けい子 『エドガー・アラン・ポー 極限の体験、リアルとの出会い』
19世紀前半の作家でありながら、今なお読者を魅了してやまないエドガー・アラン・ポー。その魅力を、怪奇小説、探偵小説の祖というだけでなく、多様な作品を取り上げて、常に境界を超出してリアルに出会おうとする現代的作家資質に見出す。
(新曜社 3520円)[amazon]
小野俊太郎 『「クマのプーさん」 の世界』
誰でも名前は知っている世界一有名なクマ。『クマのプーさん』 と 『プー横丁の家』 を精読。「正典」とされる二作品の各章の「あらすじ」を整理しながら、各章ごとに鍵になるテーマを順に読解していく。また、「プー物語」の他の作品への影響関係などにも迫る。目次
(小鳥遊書房 2640円)[amazon]
二上洋一 『銀の宝珠 二上洋一童話集』
ミステリ評論家・少年小説研究家、二上洋一氏の初の小説集。蔵書整理中に発見された大学時代にノートに書かれた作品を集成。
(
盛林堂ミステリアス文庫 1500円)
レスコフ作品集2 『髪結いの芸術家』
ロシア・ウラル地方の鉱山で発見されて皇帝の名を与えられた宝石「アレクサンドライト」、妖しい光を放つチェコの紅柘榴石。神秘的な石に魅せられた人間が誘い込まれる物語とは…。冷酷な地主にさからえないおかかえ劇団の女優と腕のいい美容師「髪結いの芸術家」が命がけの駆け落ちをはかったその先に待ち受けていた運命とは…。物語作家として名高いレスコフの持ち味が存分に発揮された新訳作品集。
(群像社 1100円)
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レスコフ作品集1 『左利き』
ある日突然現れたかと思えばふいに姿を消してまた帰ってくる「じゃこう牛」というあだ名の男。世の中をさかなでするような遍歴を繰り返すこの不思議な男はどこへ向かうのか…。ロシアの皇帝から与えられた課題を「左利き」の職人が見事な腕前で成し遂げて先進国イギリスの鼻をあかしたかと思いきや、その技巧が思いがけない展開を呼びこんで…。ロシアにはこんな人間が必ずいる、そんな主人公を次々と生み出すレスコフの実話と見まがう物語。
(群像社 1100円)
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フランク・グルーバー 『ポンコツ競走馬の秘密』
〈論創海外ミステリ〉 伸るか反るかの大博打! 狙うは大穴、一攫千金。駄馬の馬主になったお気楽ジョニー、競馬界に進出か? 駄馬の馬主になったお気楽ジョニーは奇禍に見舞われ、ギャングの包囲網を逃れながら殺人犯の汚名を晴らすハメに……。ドタバタ喜劇の真骨頂、〈ジョニー&サム〉シリーズ第6作。冨田ひろみ訳
(論創社 2420円)[amazon]
M・R・ラインハート 『憑りつかれた老婦人』
〈論創海外ミステリ〉 閉め切った部屋に出没する蝙蝠の謎。それは老婦人の妄想か? パットン警視の要請により看護婦探偵ミス・ピンカートンが調査に乗り出す。金井真弓訳
(論創社 3080円)[amazon]
アレックス・リーヴ 『ハーフムーン街の殺人』
19世紀末のロンドン、病院の解剖医助手レオ・スタンホープは、牧師の娘として生まれながら15歳で家を出て、男として生きてきたトランスジェンダーだった。娼婦のマリアと恋人になることを夢見ていたが、マリアは殺され、レオは容疑者として連行されてしまう。突然、「上からの命令」で釈放されたレオの真犯人探索が始まる。CWAヒストリカル・ダガー賞最終候補作。満園真木訳
(小学館文庫 1045円)[amazon]
クリスティーン・ベル 『不協和音 GRIEVANCE』
最愛の夫デズを亡くした二児の母リリーのもとに、夫の過去の恋人を名乗る者から妙なお悔やみの手紙が届く。リリーは心を乱されるが、その後もエスカレートする手紙と共に不穏な出来事が続く。追い詰められていく彼女を待ち受けていたのは……。国際スリラー作家協会賞受賞作。大谷瑠璃子訳
(小学館文庫 1034円)[amazon]
種村季弘編 『ドイツ怪談集』
死んだ男が歩き回る村、知らない男が写りこむ家族写真、話し出す髑髏……ドイツで紡がれた暗黒と幻想の傑作怪談集、待望の新装復刊。
(河出文庫 1100円)[amazon]
ジョゼ・サラマーゴ 『白の闇』
ある日突然失明する原因不明の「白い病」。一人視力の残る女性の視点で語られる悪の連鎖。ノーベル賞作家の究極のディストピア小説。雨沢泰訳
(河出文庫 1430円)[amazon]
ミラン・クンデラ 『邂逅 クンデラ文学・芸術評論集』
ラブレー、ドストエフスキー、セリーヌ、ガルシア=マルケス、フェリーニ……愛する小説、絵画、音楽、映画を論じた、決定版評論集。西永良成訳
(河出文庫 1540円)[amazon]
ブラッドリー・ハーパー 『探偵コナン・ドイル』
19世紀英国。作家・医者のコナン・ドイルは 〈名探偵シャーロック・ホームズ〉 シリーズ第1作 『緋色の研究』 が思ったように売れず落ち込んでいた。そこにホームズのモデルにしたベル博士が、巷を騒がす連続殺人鬼の事件を一緒に調査しないかと誘ってきて……。府川由美恵訳
(ハヤカワ・ミステリ 1980円)[amazon]
ディーリア・オーエンズ 『ザリガニの鳴くところ』
ノースカロライナ州の湿地で村の青年チェイスの死体が発見された。人々は真っ先に、「湿地の少女」 と呼ばれているカイアを疑う。6歳のときからたったひとりで生き延びてきたカイアは、果たして犯人なのか?
不気味な殺人事件の顚末と少女の成長が絡み合う長篇。友廣純訳
(早川書房 2090円)[amazon]
フィリップ・K・ディック 『タイタンのゲーム・プレーヤー』
星間戦争に敗北し、タイタンの生物に支配された地球。人口が激減したこの世界では、自らの土地を賭けた〈ゲーム〉が流行していた。大森望訳
(ハヤカワ文庫SF 1496円)[amazon]
ピーター・シェーファー 『ピーター・シェーファー 1 ピサロ/アマデウス』
パルコ劇場オープニング作品として話題の『ピサロ』、アカデミー賞受賞作の原作『アマデウス』の傑作2篇。
(ハヤカワ演劇文庫 2090円)[amazon]
サマル・ヤズベク 『無の国の門 引き裂かれた祖国シリアへの旅』
祖国を逃れた作家が一時帰還し、反体制派の人々の苦悩と挫折に耳を傾ける。記録する行為を通じて内戦という過酷な現実と向き合う労作。柳谷あゆみ訳
(白水社 3520円)[amazon]
池上俊一 『ヨーロッパ中世の想像界』
西洋中世の人々が生きた豊穣なる世界——。動植物や人間から、四大や宇宙、天使や魔女、仲間と他者、さらには楽園と煉獄まで、文学・図像・伝説・夢を彩る広大な想像界を縦横無尽に論じ、その全体構造を解明する。心性史・社会史を刷新する「イマジネールの歴史学」の集大成。目次
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