藤原編集室(出店中)
注目の新刊 発売中

▼4月刊

会津信吾編『戦前日本モダンホラー傑作選 バビロンの吸血鬼』
昭和初期――人々が新奇な刺激と快楽を追い求めた時代に登場した、昔ながらの怪談とは趣を異にする新しいスタイルの怪奇小説、「昭和モダンホラー」21篇を、犯罪実話雑誌から少年誌まで、〈新青年〉誌以外から精選収録したアンソロジー。高垣眸、高田義一郎、角田喜久雄、妹尾アキ夫、阿部徳蔵、岩佐東一郎、他
(創元推理文庫 1430円)[amazon]

ダシール・ハメット『マルタの鷹 新訳版
私立探偵サム・スペードは、若い美女から妹の駆け落ち相手の見張りを依頼された。しかし、見張り役を買って出た相棒が、その夜射殺され、続いて問題の男も惨殺される。依頼人の女を追う謎の男、暗躍するギャング一味。「マルタの鷹」という金の彫像をめぐる血みどろの抗争に介入するスペードの活躍。非情を貫くハードボイルドの原点にして完成形の傑作。田口俊樹訳
(創元推理文庫 1100円)[amazon]

キャロル・グッドマン『骨と作家たち』
著名な作家でもあった大学教授が悲劇的な死を遂げてから25年。その追悼式の前日、教授の教え子たちが大学施設に一泊することになった。激しい吹雪。姿を見せないベストセラー作家の同級生。そして、ある部屋のベッドでカラスの死骸が発見されるという不穏な夜が明けると、階段の下で首の骨を折った死体が――。栗木さつき訳
(創元推理文庫 1496円)[amazon]

C・J・ボックス『暴風雪』
猟区管理官ジョー・ピケットは、英国の広告会社取締役の女性の行方不明事件の解決を命じられる。彼女は高級リゾート牧場に滞在し、帰国のため車で空港へと向かう途中、忽然と姿を消したという。ジョーは現地に向かい、盟友の鷹匠ネイトの協力を得て調査を始めるが……。謎とサスペンス横溢の人気シリーズ最新作。野口百合子訳
(創元推理文庫 1496円)[amazon]

ナオミ・オルダーマン『未来』
世界の終末を予測する未来予知デバイスをめぐって、テック企業の支配者たちとサバイバリストたちの壮大な情報戦がはじまる。安原和見訳
(河出書房新社 3256円)[amazon]

サミュエル・ベケット『エレウテリア』
〈新訳ベケット戯曲全集〉
自由でありたい若き芸術家のもとに、家族や恋人、観客までもが詰めかけて……喧々囂々の、恐るべき「茶番劇」。ベケット戯曲の原点。小野正嗣訳
(白水社 4290円)[amaozn]

『怪異・妖怪とは何か』小松和彦監修/廣田龍平・安井眞奈美編
〈怪異・妖怪学コレクション1〉
怪異・妖怪研究は今世紀に入っても大きな進展を遂げている。2000年以降発表のものを中心に、今後の研究に不可欠な重要論考を精選。妖怪概念や方法論、比較研究に焦点を当てる第1巻。
(河出書房新社 3300円)[amazon]

スイシンファー『スプリング・フレグランス夫人』
「スイシンファー」という筆名で、北米の中国人、中国系アメリカ人の物語を書き続けたイーディス・モウド・イートン。作者が生きた欧米社会の階級・人種・ジェンダーといった苛烈な差別/差異を乗り越えて、個人間の理解が促される「ハッピー・エンド」が、100年前の「アジア系アメリカ文学」の始まりを映し出す。22作を収録。里内克巳・松本ユキ訳
(小鳥遊書房 2970円)[amazon]

小田光雄『近代出版史探索外伝Ⅱ』
地方都市からの眼差をもって読書に専念してきた著者は、《矢牧一宏と七曜社/種村季弘『吸血鬼幻想』/近代社と日夏耽之介/つげ義春と若林書房『傑作漫画全集』》など、100余項の「本を読む」世界を展開。
(論創社 5500円)[amazon]

マリオ・プラーツ『セゴビアの奇跡 五角形の半島Ⅱ
〈碩学の旅〉
永遠の都ローマを知り尽くした碩学プラ―ツが、血と官能と死に彩られた国スペインを旅し、歓喜と絶望と愛のピカレスクを演じる何気ない広場や街路や佇まいに秘められた、時空を超えた深い歴史的意味と栄枯盛衰への哀悼と芸術的精華を語る珠玉のエッセイ集。伊藤博明・金山弘昌・新保淳乃訳
(ありな書房 3300円)[amazon]

デイヴィッド・ケーニッヒ『刑事コロンボとピーター・フォーク その誕生から終幕まで
脚本の妙、個性的な風貌、印象的なセリフでミステリファンの心をとらえて離さないドラマ「刑事コロンボ」。主演俳優ピーター・フォークについてのみならず、監督、脚本家などの証言をもとに、ドラマの舞台裏まで網羅した一冊。町田暁雄監修/白須清美訳
(原書房 2750円)[amazon]

《怪と幽》 vol.019
〈特集 アラマタ伝―帝都物語40周年―〉
荒俣宏×佐野史郎対談、荒俣宏ロングインタビュー、「帝都物語」最終話の構想、荒俣宏年表など。
(KADOKAWA 2200円)[amazon]

イ・サグ『巫女』
IT企業で働くハヨンは、隣人の騒音に何日も悩まされていた。精神的に限界を迎えたある日、わらにもすがる思いで人気巫女のサイト「巫女姉さん(ムーダンオンニ)」に助けを求めると……。寡黙で美しく、やや金に汚い巫女姉さんと、 理不尽に愛された小心者ハヨンが悪霊に立ち向かう11の物語。吉良佳奈江訳
(イースト・プレス 1870円)[amazon]

チャールズ・ウィリアムズ『ライオンの場所』
〈ドーキー・アーカイヴ〉
ロンドンに近い田舎町で、雌ライオンが見世物小屋から逃げ出した。友人と郊外を散策していた青年アンソニーは、雌ライオンが人を襲う瞬間を目撃する。しかしその直後、咆哮する獣は巨大な雄ライオンになっていた……。謎の導師によりプラトン的イデアが現世に召喚され、住人たちは己の本質を体現する〈天使〉に引き寄せられていく。侵食される現実世界を救おうとするアンソニーの前に現れる驚愕のヴィジョンとは――。C・S・ルイスを魅了し、T・S・エリオットに賞賛された希代の幻視者ウィリアムズによる〈神学的スリラー〉にして〈形而上学的ショッカー〉。横山茂雄訳
(国書刊行会 3080円)[amazon]

ユング゠シュティリング『心霊学の理論』
〈ルリユール叢書〉
ヴィルヘルム・グリム、フケー、C・G・ユングらを魅了し、人心を惑わす「危険な書」として発刊即、発禁となった禁断の書。霊界、幽体離脱、ドッペルゲンガー、テレパシー等々を克明に詳述したユング゠シュティリングの哲学的思索の総決算の書にして、スヴェーデンボリを超える心霊書。本邦初訳。牧原豊樹訳
(幻戯書房 5280円)[amazon]

ヘンリー・ジェイムズ『デイジー・ミラー/ほんもの』
〈ルリユール叢書〉
ヨーロッパにおける、アメリカ人女性の無垢で奔放な生を描き、〈国際テーマ〉の名作として文名を高めた短編「デイジー・ミラー」。画家とモデルと絵画の関係を寓話的に描き出す〈芸術もの〉の短編「ほんもの」。ヘンリー・ジェイムズの小説的リアリティの特性が浮かび上がる珠玉の2篇。齋藤昇訳
(幻戯書房 2970円)[amazon]

伊藤典夫『伊藤典夫評論集成』
1960年代より日本SF第一世代の最年少メンバーとして活躍、A・C・クラーク『2001年宇宙の旅』他、ヴォネガット、ブラッドベリ、ディレイニーなどの名翻訳で知られる、海外SF翻訳・評論の第一人者伊藤典夫、待望の初の著書にして決定版評論集成がついに刊行。SFマガジンの海外SF紹介コラム「SFスキャナー」を完全収録、同人誌「宇宙塵」への15歳時の初投稿から評論・エッセイ・書評・映画評・旅行記まで、あらゆる文章を集大成。内容
(国書刊行会 22,000円)[amazon]

『幻想と怪奇17 幽霊のいる暮らし
西洋怪談の古今の名作から幽霊屋敷ものを集成。アーサー・コナン・ドイル「ゴアズソープの幽霊屋敷」、A・ブラックウッド「真夜中」「私は如何にして幽霊に関心を持ったか」「囮」、A・E・コッパード「キストラックとお化け」、オーガスト・ダーレス「鏡板張りの部屋」、H・R・ウェイクフィールド「めでたい結末?」、メアリ・E・ウィルキンズ=フリーマン「寄る辺なき幽霊」、笹川吉晴「幽霊屋敷ホラー小説ガイド」、三橋暁「幽霊屋敷映画13選」他。牧原勝志(幻想と怪奇編集室)編
(新紀元社 2640円)[amazon]

スティーヴン・キング『フェアリー・テイル 上・下
ぼくの住む町には〈サイコハウス〉と呼ばれる不気味な屋敷がある。そこに住むのは偏屈な老人がひとり、閉ざされた門を越えると猛犬が襲ってくるという。ある日、悲しげに鳴く犬の声に気づいたぼくは、屋敷の主が梯子から転落して苦しんでいるのを発見した。 これがぼくとミスター・ボウディッチ(と、犬のレイダー)の出会いだった……。老人の遺した異世界への通路を抜け、少年は老犬を救うため奇怪な世界への旅に出る。巨匠の想像力が全面展開するファンタジー大作。白石朗訳
(文藝春秋 各4675円)[amazon]

チャールズ・ウィリアムズ『天界の戦い』
ロンドンの出版社で、殺害された男の死体が発見される。警察の捜査が難航するなか、社で刊行される原稿をめぐり、奇怪な人物たちが動きだす。キリストの遺物=聖杯が、じつは英国に実在する!? この至高の宝をめぐり、聖と邪の争闘がいまはじまる……。トールキン、C・S・ルイスらの文芸集団〈インクリングス〉に参加、T・S・エリオットにその作品を〈超自然的スリラー〉と評されたチャールズ・ウィリアムズの長篇第一作。風間賢二訳
(扶桑社ミステリー 1430円)[amazon]

《SFマガジン》6月号
大阪・関西万博/バーチャル大阪パビリオン特集
(早川書房 1540円)[amazon]

L・M・モンゴメリ『アンの青春』
16歳のアンは母校の教師になり、生徒たちに愛されたいと奮闘する。家ではマリラが引き取った双子の世話に大わらわ。そんな折、新しい友人ができる。ミス・ラベンダーという白髪の女性で、25年前に婚約者とケンカ別れして以来ずっと独身だ。若き日の失恋に今も苦しむ姿に、アンは……。ギルバートとの関係に進展が? 実は作者の夢が託された第2巻。河合祥一郎訳
(角川文庫 990円)[amazon]

L・M・モンゴメリ『アンの初恋』
いよいよ大学に進学したアン。青春を楽しみ、花開いていくアンに男の子たちは夢中。もちろん幼馴染のギルバートも。だけどアンは戸惑い、逃げだすばかり。ある雨の日、理想の王子様ロイと出会い、交際開始。なのにギルバートに恋人ができたと聞き、落ち着かなくなり……。本当の恋って何? アンが人生で最も重要な決断をする第3巻。河合祥一郎訳
(角川文庫 990円)[amazon]

菊地成孔『刑事コロンボ研究 上』
「刑事コロンボ」は1968年から2003年までの35年間、全69エピソードからなる、20世紀のTVドラマ史上、屈指の名番組である。本書は21世紀の批評話法によるこの番組の研究成果であり、新鮮にして最大級の賛辞と愛を送る方法を模索する実験は、転倒と迂回を芳醇に含む、つまりは倒叙形式の書である。稀代の異能批評家・菊地成孔による21世紀の「刑事コロンボ」研究。
(星海社新書 1650円)[amazon]

夢野久作『怪夢 夢野久作 狂気ト理知ノ傑作集
長山靖生編
 無意識を呼び覚ます夢の沃野を探り、悠久の真理に至る作品群。精神医学を踏まえた高濃度なモダニズム的色彩をご堪能あれ。【収録内容】鼻の審判・権威と使命・全霊の真相・万有進化と鼻(「鼻の表現」より)/線路微笑/怪夢/ビルヂング/縊死体/死後の恋/瓶詰地獄/郵便局・模範兵士(「いなか、の、じけん」より)/けむりを吐かぬ煙突/悪魔祈祷書/呑仙士/怪青年モセイ/恐ろしい東京
(小鳥遊書房 2420円)[amazon]

ジュンパ・ラヒリ『翻訳する私』
〈新潮クレスト・ブックス〉
ベンガル人の両親のもとロンドンで生まれ、アメリカで育った著者は、幼い頃から自らや家族のことを、頭のなかで常にベンガル語から英語に「翻訳」してきた。大人になってから習得した最愛の言語・イタリア語に見出した救い、創作のインスピレーションだった母の看取りなど、自身の半生をひもときながら綴られる、小説を書くことを鼓舞してくれる「翻訳」について考えたこと。小川高義訳
(新潮社 2145円)[amazon]

ナオミ・ザック『民主主義』
人種の哲学、フェミニズム哲学、災害の哲学などの仕事をしてきた哲学者による、民主主義入門。歴史的視座と現代的要請の交錯。オックスフォード大学出版局の入門書シリーズ。河野真太郎訳
(白水社 2640円)[amazon]

ジェフリー・アーチャー『追風に帆を上げよ』
〈クリフトン年代記〉
ふたつの一族に襲いかかる試練――豪華客船の行く末は? 幻の短編新訳を特別収録。戸田裕之訳
(ハーパーBOOKS 1470円)[amazon]

ジェフリー・アーチャー『剣より強し』
〈クリフトン年代記〉
稀代のストーリーテラーの真骨頂。東西冷戦下に巻き起こる事件――予測不可能の壮大なサーガ、衝撃の新展開。幻の短編新訳を特別収録。戸田裕之訳
(ハーパーBOOKS 1570円)[amazon]

H・P・ラヴクラフト『チャールズ・デクスター・ウォード事件』
チャールズ青年は何故、かくも奇怪なる変容を遂げたのか──時空を超える魔術小説にして背筋も凍るミステリ、三大長編のひとつ「チャールズ・デクスター・ウォード事件」。英国の廃修道院を舞台とする「壁の中の鼠」。「インスマスの影」後日譚として知られる「戸口にいたもの」。そして「潜み棲む恐怖」「レッド・フックの怪」「彼方より」の全6編。人類が決して見てはいけない光景を目撃してしまった作家ラヴクラフト。その魂をここに甦らせる傑作選。南條竹則訳
(新潮文庫 990円)[amazon]

ウィリアム・ショー『罪の水際』
心的外傷後ストレス障害で休職中の女性刑事アレックスが遭遇したのは、花嫁二人の同性婚パーティ。そこへ山刀を隠し持った中年女性が乱入し「人殺し!」と叫ぶ騒動を引き起こす。アレックスの介入によって事なきを得たが、これは複雑に入り組んだ悲劇の発端に過ぎなかった……。7年前の行方不明事件、夫婦惨殺、町民を巻き込んだ投資詐欺。‶イングランドの砂漠〟と呼ばれる町を舞台に複雑な人間ドラマを紡ぎだす、CWA賞最終候補作。玉木亨訳
(新潮文庫 1210円)[amazon]

C・S・ルイス『ナルニア国物語5 馬と少年』
ルーシーら四人きょうだいの治世であるナルニア黄金時代。奴隷として売り飛ばされる寸前で逃げ出したカロールメン国の少年シャスタは、しゃべる雄馬ブリー、旅の途中で出会った少女アラヴィスと雌馬フインとともに北の国ナルニアを目指す。道中、カロールメンの宮殿でナルニア侵攻の陰謀を耳にした二人と二頭は、危機を知らせるため北へとひた走る。いま、祖国の命運をかけた戦いが始まる。小澤身和子訳
(新潮文庫 781円)[amazon]

小林昌樹『立ち読みの歴史』
日本特有の習俗である「立ち読み」は、一体いつ、どこで始まったのか。その歴史を丹念に辿ると、江戸から明治にかけての「書物の近代化」、そして「読者」の誕生が見えてくる。国立国会図書館でレファレンス担当を15年務めた著者がその技術を尽くした野心作。
(ハヤカワ新書 1320円)[amazon]

山本周五郎『山本周五郎[未収録]時代小説集成』
「少年少女譚海」「講談雑誌」「新少年」などの雑誌に発表された人情譚、怪異譚、冒険譚――。山本周五郎のこれまで単行本に収録されなかった作品、流布版との異同の多い作品を一挙集成。長篇2作品、短篇19作品。末國善己編
(作品社 5940円)[amazon]

オズヴァルド・ルワット『水棲生物 水の底のアフリカ
家父長制と因習に縛られ、権力闘争が渦巻く国ザンブエナ。かつて教師として働いていたカトメは、野心的な政治家の妻として夫を支えるかたわら、親友のアーティスト、サミーの創作活動を支援していた。反体制的な表現者、そして同性愛者であるサミーの個展の幕開け、それは二人の運命の新たな扉でもあった。カメルーン出身のドキュメンタリー監督による、多くの文学賞に輝いた衝撃作。大林薫訳
(講談社 予価2970円)[amazon]

アン・クリーヴス『沈黙』
ガラス職人のイヴが首を切り裂かれた父の遺体を発見した。凶器はイヴが作った花瓶でマシュー警部は慎重に聞き込みを進めるが……。高山真由美訳
(ハヤカワ・ミステリ文庫 1925円)[amazon]

ノヴァイオレット・ブラワヨ『あたらしい名前』
ジンバブエで生まれ育った少女は、やがて「自由の国」アメリカへ。生々しい現実を子供の視点から軽やかに描いた傑作長篇を文庫化。谷崎由依訳
(ハヤカワepi文庫 1870円)[amazon]

レベッカ・ヤロス『フォース・ウィング2 鉄炎の竜たち 上・下
バスギアス大学の二年の騎手候補生になったヴァイオレット。だが愛するゼイデンは前線へ派遣されてしまい、竜の一頭は眠りから目覚めないでいる。仲間にも大きな秘密を抱えて悩む彼女を待ち受ける試練の数々……。彼女の選択に大陸全体の運命がかかっていた! 原島文世訳
(早川書房 各2420円)[amazon]

『カラー版 本ができるまで 増補版岩波書店編集部編
一緒に本作りの歴史を調べ、印刷、製本の現場を訪ねてみませんか。美しく、丈夫で読みやすい本を作るためにどんな工夫がされているのか……。印刷業界のデジタル移行期に刊行された初版から約20年。大きな変革を支えた技術者たちの声から当時を振り返りつつ、今なお引き継がれている本作りへのこだわりを紹介します。
(岩波ジュニア新書 1320円)[amazon]

アラン・マバンク『割れたグラス』
〈アフリカ文学の愉楽〉
コンゴ共和国の港湾都市のバー“ツケ払いお断り”の主人《頑固なカタツムリ》の依頼で、《割れたグラス》は常連客たちとの日々を一冊のノートに書き留めていく。何枚ものオムツを穿いた《パンパース男》、フランスかぶれの寝取られ《印刷屋》、誰よりも長く放尿できると豪語する《蛇口女》など、酔客たちの奇怪な逸話が次々に綴られ、やがて、《割れたグラス》は自身についても書きはじめるが……。現代アフリカ文学随一のヒップスター、アラン・マバンクの数々の文学賞に輝く代表作。桑田光平訳 内容
(国書刊行会 2860円)[amazon]

倉本知明『フォルモサ南方奇譚』
日本軍に切り落とされた亀神の首、城壁にかけられた三百年のマジナイ、湖に暮らす龍の母子、祖霊が眠る山に隠された黄金郷。無縁仏の怨霊に異神、義民に逆賊、西洋の「文明人」と原住民の頭目、帝国の支配に抗して蜂起した匪賊……。大国による支配の痕跡と土着の文化が絡み合う、神々の楽園・台湾のディープ・サウス。歴史と伝承の狭間にある数々の奇譚から、すでにないのにそこにある、台湾の「いま」へと迫る17章。各章末に怪談コラムを付す。目次
(春秋社 2750円)[amazon]

イスマイル・カダレ『砕かれた四月』
「生者とは、生の許しを受けた死者にすぎない」。20世紀初頭のアルバニア。高地を司る掟に従い死を待つ若い男と、土地を訪れた新妻とが、言葉も交わさぬままに運命を交錯させてゆく。平岡敦訳
(白水Uブックス 2310円)[amazon]

F・W・ニーチェ『偶像の黄昏/アンチクリスト ニーチェ・コレクション
キリスト教世界を痛烈に皮肉りながら「権力への意思」を説く、ニーチェ哲学の総括とも言える最晩年の重要作品が待望のUブックス化。西尾幹二訳
(白水Uブックス/思想の地平線 1980円)[amazon]

パトリック・モディアノ『血統書』
わたしは血統書をもっているようなふりをする一匹の犬なのだ――ノーベル賞作家モディアノの文学的自伝。「わたしはこれらのページを調書や履歴書を書くようにして記している。まちがいなくわたしのものではなかったひとつの人生にケリをつけるために」松崎之貞訳
(国書刊行会 2640円)[amazon]

アガサ・クリスティ『セヴン・ダイアルズ 新訳版
鉄鋼王に貸出し中のチムニーズ館に滞在中の若者の一人が死亡した。館の本来の主の娘バンドルは、若者の死に疑問を抱き調べ始める。その彼女の目の前でさらなる死が。被害者が残した「セヴン・ダイアルズ」という言葉は何を意味するのか? 『チムニーズ館の秘密』に続く冒険小説、バトル警視シリーズ。『七つのダイヤル』改題新訳。山田順子訳
(創元推理文庫 1034円)[amazon]

デボラ・ホプキンソン『こうしてぼくはスパイになった』
第2次世界大戦中のロンドン。13歳のバーティが拾ったノートは、イギリスに来て秘密諜報員の訓練を受けたフランス人女性のもので、後半は暗号化されていた。ノートを落とした少女エレノアに会ったバーティは、そのフランス人女性が失踪したことを知り、彼女の行方を探るため少女と共に暗号解読に挑むが……。児童文学作家が贈る、子どもたちの勇気と謎解きを描くミステリ。服部京子訳
(東京創元社 2530円)[amazon]

大友克洋全集7『APPLE PARADISE』
大友克洋が26-27歳の頃、1980-1981年に制作した作品を収録。「マンガ奇想天外」連載の表題作(初書籍収録)を中心に、4篇の短編漫画、1篇のショート漫画、全12篇からなるショート連作シリーズ。
(講談社 3500円)[amazon]

大友克洋全集13『AKIRA 2』
1983-1984年、29歳の頃の大友克洋が「ヤングマガジン」に連載していた『AKIRA』の第15~28回を発表時のままの形で収録。
(講談社 3500円)[amazon]

鴻巣友季子『ギンガムチェックと塩漬けライム 翻訳家が読み解く海外文学の名作
誰もが一度はふれたことのある古典的名著から、今こそ読むべき現代作家の“問題作”まで。著者の翻訳家としての歩みのなかで、思い出深い作品、折にふれて読み返す、大切な名著たちをここに紹介。NHKラジオテキスト「ラジオ英会話」の連載「名著への招待」を加筆書籍化。
(NHK出版 1980円)[amazon]

『芥川龍之介選 英米怪異・幻想譚』澤西祐典・柴田元幸 編
芥川が選んだ「新らしい英米の文芸」は、まさに当時の「世界文学」最前線であった。旧制高校の英語副読本として編まれたアンソロジー8巻より、22の短篇・エッセイを精選。ポーやビアス、スティーヴンソンから初邦訳の作家まで、芥川自身の作品にもつながる〈怪異・幻想〉の世界を、豪華訳者陣による翻訳で堪能する。
(岩波文庫 1573円)[amazon]

ゴットホルト・エフライム・レッシング『賢者ナータン』
キリスト教、イスラム教、ユダヤ教のうち、真の宗教はどれか? 舞台は十字軍時代のエルサレム。難題を突き付けられたユダヤ教徒の商人ナータンが「三つの指環」の寓意で示した和合の道は、人々を大きな奇蹟へと導く。寛容とはなにかを問う18世紀啓蒙思想家レッシングの代表作。分断の時代に読まれるべき古典。笠原賢介訳
(岩波文庫 1001円)[amazon]

《重版再開》
トオマス・マン『トオマス・マン短篇集』
(岩波文庫)

ミラン・クンデラ『誘拐された西欧、あるいは中欧の悲劇』
中欧のチェコに生まれたクンデラは20世紀後半の歴史と文学を「中欧」という視点から体現した作家。2023年の没後、作品の再検証の機運が高まるなか、クンデラが生涯をかけて探求した概念「中欧」と「小民族」を巡る両論考は作家の世界観を理解するための貴重な証言と言える。阿部賢一訳
(集英社新書 1045円)[amazon]

飯田一史『町の本屋はいかにしてつぶれてきたか  知られざる戦後書店抗争史
出版流通システムの中で、戦後の書店が直面してきた課題を多様な切り口から論じる。複合店化、大型書店の登場、ネット書店の台頭……「本屋」はこれからどうなるのか。
(平凡社新書 1320円)[amazon]

井村君江『妖精教授 最後の授業 魔法の世界』
日本の妖精学研究を50年以上牽引してきた「フェアリー・ゴッドマザー」井村君江が書き下ろす魔法研究の集大成エッセイ。図版多数。
(主婦の友社 3850円)[amazon]

ハインリヒ・ハイネ『アルマンゾル』
「本が焼かれるところでは、いずれ人も焼かれるのです」。ベルリンのベーベル広場にある、ナチス・ドイツの焚書追悼記念碑に刻まれたこの言葉は、ハイネの初期戯曲『アルマンゾル』に登場する台詞として知られる。15世紀末、レコンキスタ後のグラナダを舞台に、イスラム教徒の青年アルマンゾルと、キリスト教徒の恋人スレイマに生じた悲劇。1823年、高まりゆく反ユダヤ主義的空気のなかで書かれた重要作。今本幸平訳
(法政大学出版局 2970円)[amazon]

『吉原の怪談』髙木元・植朗子・渡辺豪・広坂朋信
〈江戸怪談を読む〉
蔦屋重三郎が江戸吉原で板元・耕書堂を始めて間もないころ出板した読本『〈青楼奇事〉烟花清談)』は、吉原の引手茶屋の亭主、駿河屋市右衛門による吉原遊廓の奇談集。その中から怪異趣味の強い話を精選抄録。あわせて『耳嚢』『半日閑話』等の江戸随筆から吉原遊女にまつわる怪談を紹介。
(白澤社 2200円)[amazon]

横尾忠則『横尾忠則2017-2025書評集』
朝日新聞で2009年から書評を続けている美術家の横尾忠則氏。これまでに取り上げた本のジャンルはアート系をメインとしながら多岐にわたる。書評には文字の回転や組み方、写真・絵との組み合わせによって表現するものも含まれ、そのビジュアルは新聞読者を驚かせてきた。創造の秘密から死後の世界まで――。『本を読むのが苦手な僕はこんなふうに本を読んできた』に続く書評集。
(光文社新書 1144円)[amazon]

ジョルジュ・シムノン『袋小路』
〈シムノン ロマン・デュール選集〉
白系ロシア人のウラディーミルは、金持ちのジャンヌ・パプリエ夫人が所有するヨットの船長兼愛人として無為な生活を送っていた。ジャンヌの娘エレーヌは、彼の親友ブリニには心を開くが、ウラディーミルには冷たく、軽蔑している。ウラディミールは嫉妬心からブリニを罪に陥れるが……。コート・ダジュールの太陽の下と冬のワルシャワを舞台に、罪と罰、友情、幸せとは何かを描く。臼井美子訳/瀬名秀明 解説
(東宣出版 2420円)[amazon]

山川方夫『目的をもたない意志 山川方夫エッセイ・コレクション 増補版
「『文学』は私にとり、まず私の存在のしかたであり、態度なのだ」。大江健三郎、サルトル、石原慎太郎、若尾文子、日劇、『去年マリエンバートで』、『キングコング対ゴジラ』……文学はもちろん映画や自由、恋愛まで作家がクールな文体で語るエッセイ集。新たな7篇のほか、妻・山川みどりによる作家との出会いや夫婦の生活をめぐるエッセイ4篇を増補した決定版。
(ちくま文庫 1100円)[amazon]

山崎佳代子『ベオグラード日誌 増補版
セルビア語と日本語の詩を読み書く毎日、街角で語られるNATO空爆の悲惨な記憶、難民のこどもたちとの触れ合い、各地の戦争や東日本大震災へ寄せられる人びとの言葉、友人たちとの親密な時間、そして別れ……セルビアの首都ベオグラードで詩人が記した、歓びと哀しみの日々のかけら。読売文学賞受賞の日記文学の傑作に新たに最近6年間をまとめた日誌を増補。
(ちくま文庫 1056円)[amazon]

E・M・シオラン『崩壊概論』
透徹した懐疑が矛盾の総体たる世界を熾烈なまでに問いただす。信念は解体され、拠って立つ基盤は崩壊する。未来に倦み、同時に言いようのない渇きに襲われながら、思想家は敗滅へと向かう人間の宿命を凝視する。繊細と皮肉、陶酔と幻滅、憤怒と倦怠、明視と錯乱……。不眠の夜々に咲いた断章群、それはまぎれもなく現代の黙示録だ。有田忠郎訳
(ちくま学芸文庫 1540円)[amazon]

『グローバル時代を生きる妖怪』安井眞奈美編
〈妖怪文化叢書〉
グローバル時代における「妖怪・怪異」を解明し、世界と比較するため、外国の妖怪研究者とともに妖怪を歴史化、理論化する方法を提示した画期的な妖怪研究。英語で発信するための英語・日本語用語集を付す。
(せりか書房 5500円)[amazon]

柳下惠美『イザドラ・ダンカン 美と魂の表現者
古い慣習をうちやぶり、舞踊に新たな革命を起こし、芸術としてのダンスを世に知らしめたイザドラ・ダンカン。20世紀を代表する数多くの芸術家・文化人たちにインスピレーションを与え、世界各地で公演活動を行う一方、子どもたちに美と自らの舞踊精神を伝えるため学校を創設し、教育に情熱を注いだ教育者でもあった。激動の時代を駆け抜けたイザドラ・ダンカンの生涯が、今、鮮やかに蘇る。
(国書刊行会 4180円)[amazon]

クライブ・カッスラー&グラハム・ブラウン『〈ファストアイス〉計画の災厄を食い止めろ 上・下
南氷洋で何者かに急襲された調査船には、全地球を揺るがす恐るべき秘密が隠されていた。異端の地球科学と激越な環境保護運動、巨大資本の欲望と第二次世界大戦の昏い影が交錯する、興奮の陰謀アクションスリラー。土屋晃訳
(扶桑社ミステリー 各1375円)[amazon]

ジャンリーコ・カロフィーリオ『過去は異国』
1989年、バーリ。憲兵隊のキーティ中尉は連続レイプ事件の捜査に頭を悩ませていた。一方、法学専攻の大学生ジョルジョの生活は、ある夜を境に一変する。パーティーで出会った男は謎めいた魅力を持ついかさまギャンブラーで、コンビを組んだジョルジョはすぐにポーカーで勝利をかさね、刺激的な日々の虜となる。だがそれは転落のはじまりでもあり……。イタリア・ミステリ界の巨匠円熟の一作。飯田亮介訳
(扶桑社ミステリー 1430円)[amazon]

《近代出版研究》第4号 特集「書物百般・紀田順一郎の世界」
今年卒寿(90歳)を迎える評論家・作家の紀田順一郎を大特集。「古本屋探偵」小説の誕生秘話に迫る1万字インタビュー、荒俣宏が60年余の師弟関係を振り返った書き下ろし「「博捜一代」隋聞記」をはじめ、長山靖生、大澤聡、南陀楼綾繁、東雅夫、鈴木宏宗らが明治物、教養・読書論、古書、アンソロジー、図書館など様々な側面を論じる。近代出版研究所 内容
(皓星社 3520円)[amazon]

ペン・シェパード『非在の街』
〈創元海外SF叢書〉
元地図学者見習いのネルは、高名な地図学者である父の死を知らされる。彼はなぜか、平凡な一枚の道路地図を大切に隠していた。だが、無価値なはずのその地図の複製は、あらゆる所蔵機関から失われていた。人を殺してでも手に入れたいその地図の正体は、隠された世界への招待状だった――。ミソピーイク賞候補の幻想小説。安原和見訳
(東京創元社3960円)[amazon]

シヴォーン・ダウド『ロンドン・アイの謎』
12歳の少年テッドはある日、姉といとこのサリムと共に巨大観覧車ロンドン・アイへ出かけた。チケット売り場に並んでいたところ、見知らぬ男がチケットを1枚だけくれたので、サリムは他の乗客に交じり、ひとりで観覧車のカプセルに乗りこんだ。だが一周して降りてきたカプセルに彼の姿はなかった。閉ざされた場所からなぜ、どのように消えてしまったのか。「ほかの人とはちがう」頭脳をもつ少年が謎に挑む傑作ミステリ。越前敏弥訳
(創元推理文庫 1100円)[amazon]

《紙魚の手帖》vol.22
蟬谷めぐ実、藤野恵美らの読切などで贈る、特集「作家と編集者」。寺地はるな、丸山正樹によるW新連載スタート。嶋津輝、松樹凛読み切り掲載ほか。
(東京創元社 1540円)[amazon]

ウェルギリウス『ウェルギリウス小品集』
『牧歌』『農耕詩』『アエネーイス』以前、詩人が若い頃に書いた作品の集成。古来Appendix Vergiliana(ウェルギリウス作品の拾遺・付録)として伝わるものの本邦初訳。高橋宏幸訳
(講談社学術文庫 1540円)[amazom]

ジャン=ジャック・ルソー『エミール 1』
思想家ルソーが小説の形式で書いた教育論。エミールという架空の人物を設定し、みずからの思想を盛り込んで、一人の人間を「自然」という偉大な教師のもとで自由な人間に育てる方法を論じた。現代にも通じる子育て物語。全3巻。斎藤悦則訳
(光文社古典新訳文庫 1760円)[amazon]

江戸川乱歩『偉大なる夢 戦前・戦中期防諜小説集8
「日の出」昭和18年11月号から「世紀の国策小説」と銘打ち連載された作品。オンデマンド出版
(大陸書館 2046円)[amazon]

ギーターンジャリ・シュリー『砂の境界』
夫を亡くし沈んでいたはずの母が、ある日突然起き上がる。ヒジュラーの友と時を過ごし、娘と旅する先はインド・パキスタンの国境線。カラスは喋り、路は目撃し、神話や哲学も語り出す。あらゆる境界を越え母は進む。 不可視化された女性の無限を描く、インド作家初邦訳。国際ブッカー賞受賞作。藤井美佳訳
(エトセトラブックス 2860円)[amazon]

マーカス・ハーン『ハマー・フィルム ポスターコレクション』
《吸血鬼ドラキュラ》《フランケンシュタインの逆襲》《怪奇ミイラ男》《蛇女の脅怖》《妖女ゴーゴン》《恐竜100万年》……いま、蘇るクラシックホラーの絶叫ポスター集。世界中にコレクターがいるハマー・フィルム・プロダクションの怪奇映画ポスターを300点以上収録。和田侑子訳
(グラフィック社 4290円)[amazon]

カミラ・レックバリ/ヘンリック・フェキセウス『奇術師の幻影』
地下鉄トンネル内で発見された白骨の山。やがて連続殺人と判明した事件は、法務大臣の失踪へと発展した。ストックホルム警察特捜班が奔走する中、たびたび犯罪捜査に関わってきたメンタリスト、ヴィンセントのもとにはパズルめいた挑戦状が頻々と届き、彼の過去を暴こうとする……。衝撃の結末の待つ三部作完結編。富山クラーソン陽子訳
(文春文庫 1650円)[amazon]

ジョナサン・クレーリー『知覚の宙吊り 注意、スペクタクル、近代化
アテンション・プリーズ! 労働から科学まで、近代において「注意」はいかにして主体に要請されてきたのか。マネ、スーラ、セザンヌの絵画を交え、その変遷を描き出す。視覚文化論の基本文献。岡田温司監訳/石谷治寛・大木美智子・橋本梓訳
(平凡社ライブラリー 3300円)[amazon]

現代語訳 中世稚児物語集』木村朗子 編訳
中世の寺院は仏道修行の場でもあり、漢籍などを修める学問の場でもあった。その寺院に学問、修行のために預けられた稚児は高僧や僧侶たちの寵愛の対象となったばかりではなく、神仏の顕現として聖なる存在とも見なされていた。その稚児と僧侶の恋愛模様を描いた「稚児物語」。11作品の現代語訳を収録。
(平凡社ライブラリー 2200円)[amazon]

ウィリアム・S・バロウズ『クィア』
麻薬中毒者リーは青年アラートンとともに南米へと旅に出る……笑いにまみれた孤独と喪失感、長らく封印されてきた告白的純愛小説。山形浩生・柳下毅一郎訳
(河出文庫 1100円)[amazon]

氷室冴子『マイ・ディア 親愛なる物語
『赤毛のアン』『八人のいとこ』『リンバロストの乙女』『少女パレアナ』……氷室冴子が少女小説への愛を綴った名エッセイ、待望の復刊。
(河出文庫 990円)[amazon]

倪雪婷編『宇宙墓碑 現代中国SFアンソロジー
惑星に建てられる宇宙飛行士の墓碑に魅せられた男を描く表題作など、現代中国を代表する作家の名品12作を収録したアンソロジー。立原透耶・阿井幸作・齊藤正高・大恵和実・根岸美聡訳
(ハヤカワ文庫SF 1980円)[amazon]

エミコ・ジーン『鎖された声』
20年前、妹が誘拐されて以来、刑事チェルシーは誘拐事件を憎んでいた。ある日、2年前に誘拐された少女エリーが帰ってくる。さらに一緒にさらわれた少女の死体が発見された。だが、エリーは事件について何も語らない。彼女はただの被害者なのか、それとも? 北綾子訳
(ハヤカワ・ミステリ 3080円)[amazon]

グレゴリー・マグワイア『ウィキッド・チャイルド』
オズの国の「悪い魔女」と呼ばれたエルファバの幼少期に起きた事件とは? 映画・ミュージカル『ウィキッド』ファン必読の前日譚。市ノ瀬美麗訳
(ハヤカワ文庫NV 1375円)[amazon]

イヴ・ラヴェ『迂回』
妻と関係修復のためにシチリア島タオルミーナを訪れたメルヴィルは、レンタカーで宿に向かう途中「何か」に衝突する。事実から目を背け、最悪の選択を重ねる男の行く末は。陰気で、不穏で、スリリング……ジョルジュ・シムノンの後継者と名高い著者が放つ怪作。加藤かおり訳
(早川書房 3080円)[amazon]

フィリップ・スーポー『パリの最後の夜』
〈シュルレアリスム叢書〉
1920年代の夜のパリ。謎の女ジョルジェットにいざなわれた語り手は、セーヌ河岸で犯罪を目撃する……。ジュルジェットはパリだ、パリの夜そのもの。幻想・神秘・偶然は、この娼婦のファムファタルの圏内でうごめく――。『ナジャ』と比べて味わいたい、パリとパリの女の驚異を描いたシュルレアリスム小説。初訳短篇『オラス・ピルエルの旅』『ニック・カーターの死』を併録。谷昌親訳
(国書刊行会 4180円)[amazon]

レオノーラ・キャリントン『石の扉 キャリントン中・短篇集
〈シュルレアリスム叢書〉
エルンストと出会いシュルレアリストになり、メキシコに渡り独自のシュルレアリスムを発展させたキャリントン。「〈石の扉〉よ、私を通して、外に出して」とリフレインする少女――占星術・錬金術・魔術が渾然となり、死者の国からハンガリー王を探す魂の遍歴の壮大なメタフィクション「石の扉」ほか、不気味で、残酷で、夢、ブラック・ユーモアの奇妙な世界20篇。野中雅代訳
(国書刊行会 4180円)[amazon]

アイザック・バシェヴィス・シンガー『ゴライの悪魔』
1648年、邪悪なコサックの首領とその配下により壊滅した辺境の町ゴライ。貧しくも敬虔な暮らしを再開した住民を偽メシアが翻弄する。そこへ悪魔が……。ノーベル賞作家シンガーの長篇第一作。大﨑ふみ子訳
(未知谷 2750円)[amazon]

トマス・ハヤン『タイヤル・バライ 本当の人
幽霊の対話は異なる時空を行き来しながら、この物語は進んでいく。死者たちの語らいに私たちは何を見るのか――民族の核心にある文化を直視し植民統治下に命を落としていった霊魂を救済する、台湾原住民文学の秀作。下村作次郎訳
(田畑書店 3080円)[amazon]

アルネ・ダール『円環』
高速道路を走行中のBMWが突然宙を舞い炎上した。死亡したのは大手製鉄会社幹部。さらに第二の爆破事件が。被害者はどちらも気温変動や環境破壊に関係していた。容疑者に挙げられたのは15年前に誘拐事件解決に失敗し退職した元警部。国家作戦局の主任警部宛てに彼からと思われる犯行予告の手紙が届いていたのだ。北欧ミステリ界のトップランナーが贈る驚愕の新シリーズ。矢島真理訳
(小学館文庫 1408円)[amazon]

メアリー・コラム『人生と夢と』
1920~50年代、アメリカの文芸誌、新聞に160篇を超える文芸評論や書評を寄せたアイルランド出身の作家メアリー・コラム。文芸復興運動の渦中にあったダブリンで出会った文学の〈師〉W・B・イェイツ、英国から独立する契機となったイースター蜂起の首領たち、T・S・エリオット、ジェイムズ・ジョイスらとの交流を描いて、20世紀初頭のアイルランド文学史を裏書きする文学的自伝・回想録。本邦初訳。多田稔監訳/三神弘子・小林広直訳
(幻戯書房 8360円)[amazon]

ピク・シュエン・フォン『ゴースト・フォレスト』
1997年、中国本土返還。家族のため香港で働き続けることを決意した父を残し、私たちはバンクーバーへ移住した。春節にだけ再会できる離ればなれの家族、それは〈宇宙飛行士の家族〉と呼ばれた。繊細で詩的な筆致で描く、ある家族の物語。神崎朗子訳
(左右社 3080円)[amazon]

ツヴェタン・トドロフ『ロシア革命と芸術家たち1917-41 芸術家の勝利
十月革命後、ロシア・アヴァンギャルド運動の旗手は共産主義といかに闘ったのか? マレーヴィチ伝が白眉な、思想家が語る文化史。赤塚若樹訳
(白水社 5940円)[amazon]

『名探偵と学ぶミステリ 推理小説アンソロジー&ガイド 杉江松恋編
評論家杉江松恋によるミステリをより面白く読むためのコラムと、辻真先や青崎有吾、斜線堂有紀など豪華作家陣7名によるホームズやルパン、ポアロなど世界各国の名探偵のパスティーシュ短篇を収録する、大人も子供も楽しく学べる必携ガイド&アンソロジー。
(早川書房 2200円)[amazon]

吉田昌志『泉鏡花年譜』
岩波書店版『新編 泉鏡花集』別巻二(2006)収録の「年譜」を素稿とし、その後の「補訂」を追加、従来の年譜を質量ともに凌駕する、現在最も詳細な泉鏡花年譜。
(昭和女子大学出版会 3960円)[amazon]


▼3月刊

澤西祐典『芥川龍之介における海外文学受容 旧蔵書越しに見える風景
芥川龍之介はどのような洋書を読み、どのように執筆に活かしていたのか。焼失した卒業論文(ウィリアム・モリス論)の正体、代表作「地獄変」の典拠、翻訳体験が芥川の文体へ与えた影響、旧蔵書に挟まれた押し花や書簡など、日本近代文学館等に残された芥川龍之介旧蔵書・洋書を手がかりに実証的に辿る。巻末には旧蔵書・洋書への書込み一覧・読書年譜付き。目次
(ひつじ書房 7920円)[amazon]

ジョージ・エリオット『フロス河の水車小屋 上・下
最愛の家族との牧歌的な生活を父の破産で失ったマギーは、やがて父の宿敵の息子や従妹の婚約者との間で運命の激流に飲みこまれていく。新訳決定版。小尾芙佐訳
(白水Uブックス 各2640円)[amazon]

有栖川有栖・北村薫・宮部みゆき編『選んで、語って、読書会 1』
誰もが一度は人生のなかで、忘れられない作品と出会ったことがあるはず。当代きっての読書家である三人が、それぞれの“とっておき”を時間をかけて選びぬいた、短編小説を読む愉しみの詰まったアンソロジー。井上ひさし、谷崎潤一郎、永井路子らの9編を収録。
(創元推理文庫 880円)[amazon]
有栖川有栖・北村薫・宮部みゆき編『選んで、語って、読書会 2』
安部公房、岡本綺堂、泉鏡花らの9編を収録。
(創元推理文庫 880円)[amazon]

クイーム・マクドネル『悪人すぎて憎めない』
バニー・マガリー刑事には、かつて最高の相棒がいた――1999年、ダブリンでは武装強盗が頻発していた。現金輸送車を襲う鮮やかな手口に、警察本部はカーター一味に目をつける。特捜班に入ったバニーと相棒のグリンゴは、一味を監視する業務につくが、ジャズ・シンガーの黒人女性シモーンと出会ったことで、全員の運命が思わぬほうへ変わりはじめ……。『平凡すぎて殺される』に連なるバニー過去編。青木悦子訳
(創元推理文庫 1496円)[amazon]

『地球の文学』山口裕之編
地球上のさまざまな場所で、文学がどのような生を営んでいるか。世界各地・各ジャンルの文学×地域研究の専門家による26篇が収められたエッセイ集。東京外国語大学発、地域研究者たちとめぐる文学の旅。
(東京外国語大学出版会 2200円)[amazon]

夢野久作『夢野久作の日記 新装版杉山龍丸編
夢野久作の現存する日記10冊(明治43、44、45、大正13、15、昭和2〜5、10)を、息子の杉山龍丸が編集。葦書房1976年刊を復刊。巻頭には、日記の原本や書斎などの写真を収録。日記には『ドグラ・マグラ』の制作過程などが記され、また資料として杉山家の戸籍謄本も掲載。限定復刊〈芳林堂書店と、10冊〉
(復刊ドットコム 6050円)

チェスター・ハイムズ『逃げろ逃げろ逃げろ!』
年の瀬のニューヨーク。白人警官ウォーカーは、路上に停めた愛車がないことに気づき、近くの食堂の黒人清掃員たちに盗まれたと思いこむ。なりゆきで清掃員を射殺してしまい、さらに証拠隠滅のために、もう一人も殺害する。だが、地下室にいた二人の同僚ジミーには逃げられ、そこから執拗な追跡と必死の逃走劇が始まった……。ノンストップで疾走し続ける極上のブラック・パルプ・ノワール。田村義進訳
(新潮文庫 880円)[amazon]

ワジディ・ムアワッド『灼熱の魂』
ある日を境に沈黙を続けていた母ナワル。彼女の死後、双子の姉弟ジャンヌとシモンは公証人から奇妙な遺言を伝えられる。姉は死別したはずの父を、弟は存在すら知らぬ兄を、それぞれ探し出して手紙を渡せというのだ。姉弟が知りえなかった母の生涯が明かされるにつれ、沈黙に隠された驚愕の事実が判明する――。戦争と因習、そして皮肉な運命に弄ばれた女性の壮絶なる過去を掘り起こす、人間という最大の謎(ミステリー)。レバノン生まれの劇作家による慟哭の黙示録。大林薫訳
(新潮文庫 880円)[amazon]

フィリップ・マーゴリン『銃を持つ花嫁』
人気写真家キャシー・モランの回顧展で、小説家志望のステイシーは展覧会の目玉であるモランの代表作に魅了される。この謎めいたモノクロ写真は、ウェディングドレス姿の女性が海に向かって立つさまを後ろから撮影したもの。女性の背中には六連発銃を握った手が回されていた。題して「銃を持つ花嫁」。写真に魅せられたステイシーは、撮影当時に起きた出来事を明らかにして小説にしようと考えるが……。一枚の写真に秘められた人間ドラマを追い、スリリングかつ重層的に描きあげたサスペンス。加賀山卓朗訳
(新潮文庫 1100円)[amazon]

アーネスト・ヘミングウェイ『河を渡って木立の中へ』
第二次大戦後数年を経たヴェネツィア。アメリカ陸軍大佐キャントウェルは、貴族の娘レナータと刹那の逢瀬を重ねる。彼の心の傷を癒すため戦争の真実を明かしてくれとせがむ恋人に、重い口を開いて語ったのは、凄惨な戦いの全貌と自らの判断ミスで多くの部下を殺してしまった悔恨の情だった……。年の離れた愛しい人、戦争の不条理、迫りくる終焉の時。著者自身を投影して描く愛と死の物語。高見浩訳
(新潮文庫 1045円)[amazon]

ウィリアム・ボールドウィン他『猫にご用心 知られざる猫文学の世界
猫たちの会話を理解しようと、ストリーマ氏は動物の言葉が分かるようになる秘薬を作り出すが……。人間たちの滑稽な姿が猫の目を通して描かれる16世紀英国の諷刺奇譚「猫にご用心」と、そこから派生した知られざる猫文学を集めたアンソロジー。大久保ゆう編訳
(soyogo books 2420円)[amazon]

西崎憲編『6月の本』
〈12か月の本〉
時代も場所もまったく異なる文学作品たちをつなぐテーマは〈12か月〉――〈6月〉をテーマに古今東西の小説・詩歌・随筆を集めたアンソロジー。谷崎潤一郎/北園克衛/安部公房/岡本かの子/泉鏡花/尾崎翠/岡本綺堂/アルチュール・ランボー 他 収録内容
(国書刊行会 3080円)[amazon]

荒俣宏『理科系の文学誌 新装版
「科学こそが幻想である」。ニュートンやJ・G・バラード、P・K・ディックなど、SF・幻想文学を科学の眼で読み解いた荒俣宏最初期の傑作を、40年の時を経て待望の復刊。 文学を科学の言葉で語り、SFのまやかしと限界と不誠実さを明かしつつ、その未知の可能性を探る。
(工作舎 3850円)[amazon]

久生十蘭『うすゆき抄 久生十蘭時代小説傑作選1
表題作「うすゆき抄」ほか、直木賞受賞作「鈴木主水」、「無月物語」「玉取物語」「重吉漂流紀聞」「新西遊記」「公用方秘録二件」「弘化花暦」を収録。最盛期の時代小説傑作選1。
(春陽文庫 1320円)[amazon]

久生十蘭『無惨やな 久生十蘭時代小説傑作選2
表題作「無惨やな」ほか、「三笠の月」「遣米日記」「亜墨利加討」「信乃と浜路」「藤九郎の島」「ひどい煙」「ボニン島物語」「呂宋の壺」「奥の海」を収録。最盛期の時代小説傑作選2。
(春陽文庫 1320円)[amazon]

和田忠彦『「見えない都市」を歩く 文学で旅するイタリア
カルヴィーノ、パヴェーゼ、N・ギンズブルク、エーコ、タブッキ、ウンベルト・サバ、ブッツァーティ、ジュンパ・ラヒリ、そして須賀敦子……イタリア文学の名作の数々を“街”という視点で編み直す。北はヴェネツィア、ミラノから、南はシチリア島まで、個性豊かなイタリアの各都市を訪ね、文学作品を手に歩くような視点で作家たちが遺した声と足跡をたどる、斬新かつ詩情豊かな文学ガイド。
(NHK出版 2200円)[amazon]

ローズ・シェファード『ヴィジュアル版 シャーロック・ホームズのロンドン探究 ヴィクトリア朝時代から現代まで
シャーロック・ホームズがワトスンとともに歩いたロンドンの街並みを様々な図版で「再現」。人々の生活や発展する都市の姿を、ヴィクトリア朝と現代を見比べながら「探索」したヴィジュアル百科。日暮雅通訳
(原書房 3960円)[amazon]

クラリッセ・リスペクトル『水の流れ』
いまこの瞬間の生を描くという不可能な試みが生み出した、比類なきイメージの奔流。リスペクトル文学の極北にして頂点がついに邦訳。福嶋伸洋訳
(河出書房新社 2640円)[amazon]

ショーン・タン『遠い町から来た話』
台所の戸棚で暮す小さな交換留学生、旧式の潜水服で町を彷徨う若い男。平凡だがどこか非現実的な遠い町で生まれた不思議な絵物語集。新装版。岸本佐知子訳
(河出書房新社 2640円)[amazon]

大橋洋一・三原芳秋編『文学理論の名著50』
文学理論とはなにか? ポストモダンからジェンダー批評まで、文学の新しい読み方を提示し、鮮烈な批評を切り開いてきた名著50冊を、新鋭古豪の研究者たちが徹底解説。
(平凡社 6930円)[amazon]

『エドワード・ゴーリー生誕100年特製BOXセット』
エドワード・ゴーリー生誕100年を記念し、『ギャシュリークラムのちびっ子たち』『うろんな客』『優雅に叱責する自転車』『キャッテゴーリー』を美麗セットBOXでお届け。柴田元幸訳
(河出書房新社 5390円)[amazon]

ジャネール・モネイ原作『ザ・メモリー・ライブラリアン 『ダーティー・コンピューター』にまつわる5つの話
シンガー・ソングライター、俳優のジャネール・モネイがアルバム《ダーティー・コンピューター》の世界観をベースに、5人の作家とコラボレーションし、世界が今まさに直面している分断の問題を描くSF短篇集。安達眞弓・押野素子・瀬尾具実子・ハーン小路恭子・山崎美紀訳
(ポプラ社 3520円)[amazon]

ペーター・マーギンター『男爵と魚』
〈オーストリア綺想小説コレクション〉
カワウソ党の陰謀で故国を追われた魚類学の大家クロイツ‐クヴェルハイム男爵は、ウィスキー樽の中で600年前から生きているスコットランドの先祖の加勢を得て、気球戦団と共にウィーン征伐に出発するが、途中で思わぬアクシデントに見舞われてしまう。博物学者-男爵の驚異と綺想に満ちた冒険の旅。垂野創一郎訳
(国書刊行会 4400円)[amazon]

夢野久作『猟奇歌 夢野久作歌集
故郷福岡で、のちに代表作となる幻魔怪奇探偵小説『ドグラ・マグラ』を執筆する合間に、夢野久作が手帳に綴り、雑誌に発表した短歌連作「猟奇歌」。発表以来、独自の言語感覚で静かに読者を魅了し続けてきたその本篇と、関連作品を初めて一冊にした文庫オリジナル。巻末エッセイ 寺山修司
(中公文庫 990円)[amazon]

田部隆次『小泉八雲 ラフカディオ・ヘルン
ギリシヤで生まれ、アイルランド、イギリス、フランス、アメリカ、仏領マルティニークを経て39歳で来日。横浜、松江、熊本、神戸、東京を巡り、46歳で没したその全生涯を、直弟子が綴る伝記。来日後、結婚して家族を持ち、日本の文化にふれて『知られぬ日本の面影』『怪談』『心』などの著作を紡ぎ出した姿が浮かび上がる。著者は八雲逝去直後から、小泉家の協力のもと、国内外の資料を蒐集して本書を完成させた。坪内逍遙、西田幾多郎らの序を収め、八雲夫人 小泉節子(セツ)「思い出の記」を収録。
(中公文庫 1320円)[amazon]

ルーベン・ファン・ルイク『悪魔崇拝とは何か 古代から現代まで
サタンは西洋の社会・文化にどのような影響を与えてきたのか。現代悪魔崇拝の起源を求めて、古代から現在に至るサタニズムの歴史を博捜。さらに、サタニズムに関する事実と虚構の両方を対象にし、それらの相互関係をも解明してゆく。藤原聖子監修/飯田陽子訳
(中央公論新社 9900円)[amazon]

張國立『炒飯狙撃手 弐 第3の銃弾』
選挙中に発生した現総統の暗殺未遂事件。罠に嵌められたスナイパーは、元刑事と真相を追う――。話題騒然、台湾発の謀略スリラー。玉田誠訳
(ハーパーBOOKS 1430円)[amazon]

近藤健児『世界文学全集万華鏡 文庫で読めない世界の名作
世界文学全集に収録され、かつ一度も文庫化されていない海外文学作品70点を厳選して紹介。河出書房「世界文学全集」や筑摩書房「世界文学大系」など35の全集をもとに、イギリス、ロシア、ドイツやラテンアメリカの作家の貴重な作品を案内する。内容
(青弓社 2640円)[amazon]

藤原征生『芥川也寸志とその時代 戦後日本映画産業と音楽家たち
『煙突の見える場所』『地獄門』『ぼんち』『八つ墓村』……日本の芸術文化の第一線で活躍し、数多の映画音楽も手がけた稀代の音楽家、芥川也寸志。團伊玖磨・黛敏郎と結成した「3人の会」での活動をはじめ、芥川が日本映画産業に残した偉大なる足跡を辿る。フィルモグラフィと主要ラジオ・テレビ作品一覧、略年譜を付す。
(国書刊行会 3300円)[amazon]

ライナー・マリア・リルケ『リルケ詩集』
あなたのお護りとなる詩がきっとある。──近代詩の巨人リルケの不朽の名作を、伝説の名訳で。リルケの全作品から詩人・文学者片山敏彦が選んだベストセレクションに、若松英輔の長編解説を付し、美麗な装丁で復刊。片山敏彦訳
(亜紀書房 2750円)[amazon]

L・M・モンゴメリ『新訳 赤毛のアン』
偏屈な年寄り兄妹マシューとマリラは、孤児院から働き手として男の子を引き取ることに。なのにやってきたのは、赤毛でそばかすの少女アン。自然豊かな美しい島を舞台に、夢見る少女が起こすおかしな騒動。泣いて笑ってキュンとする、世界中の少女が恋した名作を新訳・完訳で。アンが親しんだ英文学の徹底解説も掲載。河合祥一郎訳
(角川文庫 990円)[amazon]

ジョージ・チェスニー『ドーキングの戦い ある英国篤志隊員の回想録
ヨーロッパで勢力を拡大する隣国の大軍が、ついに英国本土へ侵攻。静かな田園地帯ドーキングは祖国の命運を賭けた決戦の地と化した。H・G・ウェルズ『宇宙戦争』にも影響を与えた架空戦記、侵攻小説の先駆的作品(1871)。深町悟訳
(国書刊行会 2640円)[amazon]

ヴィクトリア・ロイド=バーロウ『鳥の心臓の夏』
自閉スペクトラム症のサンデーは白いものしか口にしない。娘と二人ひっそりと暮らしている。ある夏の日、唐突に現れた自由奔放な隣人によって日常は侵され、娘は隣人に惹かれていく。自身も同じ特性をもつ著者のブッカー賞候補作。上杉隼人訳
(朝日新聞出版 3300円)[amazon]

西崎憲編『5月の本』
〈12か月の本〉
時代も場所もまったく異なる文学作品たちをつなぐテーマは〈12か月〉――〈5月〉をテーマに古今東西の小説・詩歌・随筆を集めたアンソロジー。三島由紀夫/寺田寅彦/小山いと子/萩原朔太郎/吉屋信子/江戸川乱歩/尾崎翠/レオノーラ・キャリントン 他 収録内容
(国書刊行会 3080円)[amazon]

アート・テイラー『ボニーとクライドにはなれないけれど』
コンビニ店員のルイーズは、学費のために強盗をしにきた青年デルと恋に落ちた。二人はデルの学位取得を契機に、まともな人生を始めることにする。不動産業を営むデルの姉を手伝うため車で旅に出たが、なぜか次々に事件や犯罪が起き、そのたびに新たな土地へ向かう羽目に。窃盗を疑われ、ワイン泥棒に加担し、教会では強盗の人質にされ……。デルとルイーズの安住の地とは? チャーミングな恋人たちを描く連作ミステリ短編集。東野さやか訳
(創元推理文庫 1496円)[amazon]

ジジ・パンディアン『読書会は危険? 〈秘密の階段建築社〉の事件簿
本を取るとひらく本棚や、レバーを引くと現れる秘密の部屋――そんな仕掛けを得意とする〈秘密の階段建築社〉。元イリュージョニストのテンペストが働くこの家業の最新の仕事は、ある家の地下室を改装して読書コーナーや読書会スペースを作ること。そして今宵その地下室で、種も仕掛けもある交霊会がひらかれる。だが明かりが点滅するなか、8人が囲むテーブルの中央に死体が忽然と……。シリーズ第2弾。鈴木美朋訳
(創元推理文庫 1430円)[amazon]

ユッシ・エーズラ・オールスン『特捜部Q カールの罪状 上・下
22年前から2年ごとに起こる不審死の共通点に気づいた特捜部Q。一方、カールが過去の未解決事件の重要参考人になっており……。特捜部Qが連続殺人事件の謎に挑む。吉田奈保子訳
(ハヤカワ・ミステリ文庫 各1408円)[amazon]

I・S・ベリー『アラブに冬を呼ぶスパイ』
CIA職員シェーンの最後の任務は中東バーレーンの反政府運動を探ること。だが、爆破テロが国王の自作自演である疑惑が浮上し……。奥村章子訳
(ハヤカワ文庫NV 1936円)[amazon]

劉慈欣『三体0 球状閃電』
謎の球電に魅せられた青年、陳(チェ)は研究を進めるうち思いも寄らぬプロジェクトに巻き込まれる。〈三体〉シリーズ衝撃の前日譚文庫化。大森望・光吉さくら・ワン チャイ訳
(ハヤカワ文庫SF 1430円)[amazon]

張愛玲『半生の絆』
中国で魯迅と並んで評価される、伝説の作家の代表作を新訳・文庫で刊行。一生ぶん続くことは叶わなかった、男女の恋の運命をめぐる傑作。濱田麻矢訳
(ハヤカワepi文庫 1892円)
[amazon]

千野帽子『青ひげ夫人と秘密の部屋 「見たな」の文学史
「あれ、この設定、前にどっかで読んだことがある」幼児の記憶のかけらを手に、文学理論家・千野帽子が、300年の謎を追って文学史に分け入る。そこでは作家たちが、「青ひげ」をお題とした果てしない“大喜利”を繰り広げていた。『ジェイン・エア』『レベッカ』『ねじの回転』『女の一生』から『美女と野獣』『オペラ座の怪人』『サイコ』『ソラリス』、さらには『こゝろ』、グリム童話、ハーレクイン・ロマンスまで、「実はすべて、〈青ひげ〉で読み解けます」
(光文社 3300円)[amazon]

斎藤守弘・中岡俊哉(文)/石原豪人(絵)’60年代ミステリー画報  世にもふしぎな事件』
「世にもふしぎな事件」は、1962年創刊の「少女フレンド」(講談社)で初年度より連載された、オカルト、SF、ホラーの要素を含む読物シリーズ。前半46話を斎藤守弘、後半36話を中岡俊哉が執筆。挿絵は石原豪人。昭和の怪奇読物の巨匠たちによる貴重な作品を初単行本化。
(復刊ドットコム 5500円)[amazon]

フリードリヒ・シュレーゲル『フリードリヒ・シュレーゲル 断章集』
「ロマンティックな文学のみがひとり無限であり、ひとり自由であり、そして詩人の恣意はいかなる法則の重圧も被らない」。フリードリヒ・シュレーゲルが「イロニー」「反省」などを用いて既存の価値観を打破し、「共同哲学」の樹立を試みた断章群は、ロマン派のマニフェストとして、近代の批評的精神の幕開けを告げる。武田利勝訳
(岩波文庫 1155円)[amazon]

《重版再開》
中世イギリス英雄叙事詩 ベーオウルフ』
プルタルコス『エジプト神イシスとオシリスの伝説について』

(岩波文庫)

ガブリエル・ガルシア=マルケス『物語の作り方 ガルシア=マルケスのシナリオ教室
おもしろい物語はどのようにして作るのか? いったい何がきっかけで物語は成長し、新たに生まれ変わるのか? ガルシア=マルケスとプロのシナリオライターの仲間たちがキューバに集結。視聴者に訴えかけるストーリーづくりの秘法を語り合う。稀代のストーリーテラー、ガルシア=マルケスによる、実践的〈物語の作り方〉道場。木村榮一訳
(岩波現代文庫 2079円)[amazon]

福嶋亮大『世界文学のアーキテクチャ』
18世紀以降「小説」が「世界文学」の中核を占めるようになる過程で何が起きていたのか。心的/社会事象を言語に変換するプログラムは資本主義に連動しながらいかに進化してきたのか。「世界文学」の起源を探り、その設計思想の変遷をひとつの物語として大胆に描き出す「冒険の書」。
(PLANETS 4620円)[amazon]

村田真一編訳『ウクライナ戯曲集』
19世紀末から20世紀初頭のウクライナ文学の特質をよく表し、現代にも通じる芸術的・社会文化的問題を鋭く提起するイヴァン・フランコ『盗まれた幸せ』、レーシャ・ウクラインカ『カッサンドラー』、ミハイリ・セメンコ『リリス』の3作品を本邦初紹介。内容
(国書刊行会 3080円)[amazon]

荒俣宏『妖精幻想詩画帖 荒俣宏幻想文学翻訳集成 欧米幻想ファンタジー精華1
半世紀にわたる幻想文学翻訳の集大成(全4巻)。第1巻は妖精詩とそれを飾った美しい妖精画をともに集めた、きらめく夢の玉手箱のような作品群。ロード・ダンセイニ、ジョージ・マクドナルド、ダンテ・ゲイブリエル・ロゼッティ、フィオナ・マクラウド、A・E・コッパードほかを収録。新訳あり。
(春陽堂書店 6600円)[amazon]

スチュアート・タートン『世界の終わりの最後の殺人』
奇怪な霧により滅びた地球。生存者の住む最後の島で殺人が発生、住民の記憶は消去されていた……。何重もの特殊設定で挑む本格ミステリ。三角和代訳
(文藝春秋 3190円)[amazon]

フローレンス・パリー・ハイド/エドワード・ゴーリー『ツリーホーンのたからもの』
ツリーホーンはマンガを14冊持っていて、それぞれ19回ずつ読んでいた。おこづかいをもらえたら、新しいのを買うんだ。でもおとうさんは貯金しろっていう。ただ貯めたって意味がないのに……。おとうさんは「金のなる木はない」っていうけど、庭に出てみたら、はっぱが1ドル札になっていた! 英国児童文学作家フローレンス・パリー・ハイドとエドワード・ゴーリーがタッグを組んだナンセンスで可愛い物語。三辺律子訳
(東京創元社 1980円)[amazon]

ロブ・ハート『パラドクス・ホテル』
過去へのタイムトラベルが実現した近未来。時間犯罪取締局の元調査官ジャニュアリーは、タイムトラベラー特有の病気である時間離脱症(アンスタック)を患い、時空港(タイムポート)併設ホテルの警備主任をしている。アンスタックの症状で未来や過去を幻視する彼女は、まだ殺されていない男の他殺体や、自らが銃殺されるシーンを幻視して調査を開始する。一方、ホテル内では時間の進み方が乱れるなどの異常な事態が頻発し……。茂木健訳
(創元SF文庫 1650円)[amazon]

アリストテレス『弁論術』
説得力のある言論の考察を通じ、説得の技術としての弁論術を論じた書。善や美、不正等の概念から説き、すぐれた洞察力で人間の感情と性格を分類して、比喩等の表現の技巧についても考察を深める。後世に多大な影響を与えた最強の説得術。相澤康隆訳
(光文社古典新訳文庫 1782円)[amazon]

ルクレティウス『事物の本性について・宇宙論』
万物の原理を知ることで心の安定を得よ――。エピクロスの原子論的宇宙観を伝える貴重な史料であり、後代にも絶大な影響を与えたラテン語詩の傑作。藤沢令夫・岩田義一訳
(ちくま学芸文庫 予価1760円)[amazon]

西崎憲編『4月の本』
〈12か月の本〉
時代も場所もまったく異なる文学作品たちをつなぐテーマは〈12か月〉――〈4月〉をテーマに古今東西の小説・詩歌・随筆を集めたアンソロジー。四季をあじわい、あの作品といま同じ季節を生きるよろこびをつくる本。シリーズ全12巻。太宰治/中井英夫/村山槐多/鏑木清方/吉田健一/宮沢賢治/久生十蘭/片山廣子 他 収録内容
(国書刊行会 3080円)[amazon]

林庭毅 『裏組織の脚本家』
台北・西門町にある浮木(フームー)という居酒屋には、闇の組織「ワラビ」のメンバーが潜伏している。屋根裏の小部屋「ワラビの部屋」に「新しい人生の台本」を抱えて入れば、人生を変えることができる。ただし、それには条件があった……。台湾発のSFファンタジー。明田川聡士訳
(書肆侃侃房 予価2310円)[amazon]

樋口尚文『砂の器 映画の魔性 監督野村芳太郎と松本清張映画
公開から半世紀を経た今も人気の映画「砂の器」。松本清張原作を大胆に映像化した脚本・監督・音楽家による仕掛けとは? 初公開秘蔵資料をもとに秘密に迫る。
(筑摩書房 2750円)[amazon]

耶止説夫『戦前・戦中期防諜小説集7 謎の曲馬団』
満人の少年を張学良の息子に仕立てようと目論む謀略団から、少年を奪回すべく立ち上がった奉天在住の日本人兄妹が、満洲5民族の子供たちからなる「大陸子供となり組」を結成する波乱万丈の物語。昭和18年に奉天で刊行された少年防諜冒険小説「謎の曲馬団」に、「青い汚点」「曲線街の謎」の2編を収録。オンデマンド出版
(大陸書館 1991円)[amazon]

東雅夫編『怪獣談 文豪怪獣作品集
ゴジラ、モスラ、ラドン……大怪獣が夢の饗宴。武田泰淳、香山滋、光瀬龍ら、怪獣と特撮映画を愛してやまない文豪たちによる小説、随筆のほか、東山魁夷×三島由紀夫による怪獣往復書簡も収録。怪獣文藝史上、不朽の名作の数々がここに集結。
(平凡社ライブラリー 2420円)[amazon]

スコット・フィッツジェラルド『ある作家の夕刻 フィッツジェラルド後期作品集
〈村上春樹 翻訳ライブラリー〉
作家としての窮状さえも、フィッツジェラルドは見事に小説に結実させていった。華やかな喧噪の日々から一転、三十代にして迎えた不遇の時代。そして早すぎる死を迎えるまで。多彩なスタイルの短篇小説と秀逸なエッセイをセレクト。揺るぎなく美しいその筆致を味わう、最後の十年間のベスト集。村上春樹訳
(中央公論新社 1650円)[amazon]

澁澤龍彦編『暗黒のメルヘン』
自分の気に入った幻想小説のアンソロジーを、好みのままに花束のように編んでみたい──澁澤龍彦が選りすぐった珠玉の小説16篇。怪奇幻想文学アンソロジーの金字塔的一冊。復刊
(河出文庫 1320円)[amazon]

伊藤彰彦『完全版 最後の角川春樹』
本と映画と音楽の融合、父 源義との闘争と和解、価値破壊と文化創造――破格の構想力によって社会を揺り動かした戦後最大の出版人、角川春樹の軌跡に迫る評伝の決定版。
(河出文庫 1430円)[amazon]

ファン・ジョンウン『誰でもない』
ハン・ガン以後最も注目される韓国作家が描き出す、現代を生きる私たちの日常という祈り。斎藤真理子訳
(河出文庫 1298円)[amazon]

スチュアート・タートン『名探偵と海の悪魔』
時は17世紀、 大海原を進む帆船で起こる怪事件。囚われの名探偵に代わり、屈強な助手と貴婦人が謎を追う。すべては悪魔の呪いか、あるいは――? 海洋冒険+怪奇小説+不可能犯罪。あまりに面白すぎる本格ミステリ巨編。三角和代訳
(文春文庫 1760円)[amazon]

ロブ・ハート『暗殺依存症』
引退した殺し屋のマークは、「暗殺依存症」患者の自助団体に参加し、「二度と人を殺さない」と誓うが、何者かに命を狙われ、襲撃されてしまう。敵の正体を探るため世界中を飛び回るマークのなかで、敵を殺してしまいたいという欲求がどんどん高まっていき……。渡辺義久訳
(ハヤカワ・ミステリ 2530円)[amazon]

A・R・トーレ『家族のなかの見知らぬ人』
仕事を失い、夫の浮気に絶望していたリリアン。彼女に魅力的な男性が接近してくる。妻の変化に気づいた夫は尾行を開始するが……。北野寿美枝訳
(ハヤカワ・ミステリ文庫 1738円)[amazon]

エドワード・アシュトン『ミッキー7 反物質ブルース』

宇宙開発で危険な仕事をこなす、使い捨て人間(エクスペンダブル)の役割から無事逃れることができたミッキーだったが、さらに新たな無茶ぶり仕事が!? 大谷真弓訳
(ハヤカワ文庫SF 1518円)[amazon]

ジャン=バティスト・アンドレア『彼女を見守る』
第一次大戦後、イタリア北西部にある村。貧しい家に生まれた石工の弟子、ミモ。村の城館に住む侯爵家の娘でありながら自立を望むヴィオラ。出会うはずのなかった二人は惹かれ合い、時に反発し、両大戦間の激動の時代を生き抜いていく。ゴンクール賞受賞作。澤田直訳
(早川書房 3630円)[amazon]

奈良敏行『本屋のパンセ 定有堂書店で考えたこと
本屋が詣でる本屋、鳥取・定有堂書店店主の人生の本200点超を一挙掲載。本から誘われた思索の軌跡。
(作品社 2420円)[amazon]

ファン・ボルム『毎日読みます』
「本を読みたいけど、読めない」現代の忙しい私たちは、いったいどんな本を読めばいいのだろうか? または、どうやったら本が読めるだろうか? 『ようこそ、ヒュナム洞書店へ』の著者が、具体的な方法と作品タイトルをもって贈る、やさしい読書エッセイ。焦燥感と罪悪感にかられるあなたの背中を、そっと押してくれる全53章。牧野美加訳
(集英社 1980円)[amazon]

パク・ミンギュ『ピンポン』
世界に「あちゃー」された男子中学生「釘」と「モアイ」は卓球に熱中し、人類存亡を賭けた試合に臨む。『カステラ』の韓国の鬼才が猛打する長篇。斎藤真理子訳
(白水Uブックス 2090円)[amazon]

リン・マー『ブリス・モンタージュ』
〈エクス・リブリス〉
中国出身の米国作家による第一短篇集。暴力と存在の孤独という主題が前作『断絶』より前景化され、観察と物語の凄みが際立つ8篇収録。藤井光訳
(白水社 3080円)[amazon]

ヴィトルト・シャブウォフスキ『厨房から見たロシア 包丁と鍋とおたまで帝国を築く方法
最後の皇帝一家と運命を共にした料理人、レーニン、スターリンの料理人から、サナトリウムの料理人だったプーチン大統領の祖父まで。旧ソ連構成諸国を縦横に巡り、「食」の視点からロシアという国を多面的に読み解くルポルタージュ。各章にレシピ付き。芝田文乃訳
(白水社 4180円)[amazon]

アガサ・クリスティー /チャールズ・オズボーン(小説化)『蜘蛛の巣 小説版
自宅の客間に突然現れた死体を前に、クラリッサは事件を隠し通すことを決意した。数時間後には外務省勤めの夫が要人を連れて帰ってくる。大事にするわけにはいかないのだ! だが、通報してもいないのに警察が現れ捜査が始まってしまった。しかも隠した死体は消えてしまい……。クリスティーの傑作戯曲をチャールズ・オズボーンが小説化。山本やよい訳
(早川書房/クリスティー文庫 1166円)[amazon]

ベルトルト・ブレヒト『ユリウス・カエサル氏の商売』
古代ローマ、ユリウス・カエサルの伝記を準備中の歴史学者は、元銀行家を訪ねて、カエサルの秘書だった奴隷の手記を調べ始めるが、やがて商売という視点を欠き、経済史観を踏まえぬ自分の誤りを思い知らされていく。岩淵達治訳
(あいんしゅりっと 2750円)[amazon]


▼2月刊

アントン・チェーホフ『ワーニャ伯父さん 四幕からなる田舎暮らしの情景
〈ロシア名作ライブラリー〉都会で大学教授をしていた年上の義理の弟に長年仕送りをつづけ、いまは退職して田舎にやってきた教授夫婦に生活のリズムも心もかき乱されるワーニャ伯父さん。身近な人たちと、そして自分自身と向きあうことはなんてむずかしいのか。平凡な日常の中に最も根本的な問題があるというチェーホフの問いかけがわたしたちの胸にひびく。安達紀子訳
(群像社 1100円)[amazon]

横溝正史『車井戸は何故軋る 横溝正史傑作短編集
ミステリ界の巨匠・横溝正史。デビュー短編「恐ろしき四月馬鹿(エイプリル・フール)」から没後発見された「空蟬処女(うつせみおとめ)」まで、ノンシリーズ、由利麟太郎シリーズ、金田一耕助シリーズから厳選した名作17編を、初出誌と初刊単行本を底本にして発表順に収めた珠玉の短編集。末國善己編
(東京創元社 3080円)[amazon]

マルク・ラーベ『19号室』
ベルリン国際映画祭の開会式場に悲鳴が響き渡った。予定外の映像が上映されたのだ。女性が何者かに襲われ、心臓を大きな釘でひと突きされていた。しかもその女性は市長の娘で、女優だと判明。この映像は本物か偽物か? トム・バビロン刑事は捜査を始めるが、臨床心理士ジータは映像内の壁に残されていた「19」の文字に戦慄する。殺されたかもしれない女性と自分には共通点がある――。シリーズ第2弾。酒寄進一訳
(創元推理文庫 1496円)[amazon]

アンドルー・クルミー『ミスター・ミー』
本に埋もれて暮らす書痴老人ミスター・ミーは、謎の書物、ロジェの『百科全書』の探索のためにパソコンを導入。ネットの海で老人が行き着いたのは、裸の女性が読む『フェランとミナール――ジャン=ジャック・ルソーと失われた時の探究』だった。18世紀の二人の浄書屋と謎めいた原稿の物語、ルソー専門家の恋物語、老人のネット奮闘記が、書物を軸に縒り合わされ、エッシャー的円環がそこに生まれる! 読書の楽しみ極まれり! 青木純子訳
(創元ライブラリ 1760円)[amazon]

ティム・オブライエン『虚言の国 アメリカ・ファンタスティカ
一流ジャーナリストからフェイクニュースの王に転落した中年男ボイド。カリフォルニアの田舎町でデパートの店長をしていた彼は銀行の窓口係アンジーに銃をつきつけ、奪った8万1千ドルと彼女を連れ逃避行に出る。仕切り屋で喋り通しのアンジーに閉口しつつアメリカを縦断するボイドと、彼をとりまく大富豪、悪徳警官、美人妻、殺人者――追う者追われる者が入り乱れ、嘘と疫病に乗って全米を疾走するが……。ティム・オブライエン20年ぶりの新作長篇。村上春樹訳
(ハーパーコリンズ・ジャパン 3630円)[amazon]

ガブリエル・ガルシア=マルケス『族長の秋』
無人の聖域に土足で踏みこんだ「われわれ」の目に映ったのは、ハゲタカに喰い荒らされた大統領の死体だった。国に何百年も君臨したが、誰も彼の顔すら見たことがなかった。生娘のようになめらかな手とヘルニアの巨大な睾丸を持ち、腹心の将軍を野菜詰めにしてオーブンで焼いて宴会の主菜にし、二千人の子供を船に載せてダイナマイトで爆殺したという独裁者――。政治権力の実相をグロテスクなまでに描いた異形の怪作。鼓直訳
(新潮文庫 1100円)[amazon]

C・S・ルイス『ナルニア国物語4 銀のいすと地底の国』
いじめっ子に追われ、体育館裏の扉から別世界へと飛び込んだユースティスとジル。ナルニアでは、懐かしい友カスピアンの息子であるリリアン王子が魔女にさらわれ、囚われの身となっていた。王子を助け出すため、ヌマヒョロリン族のドロナゲキとともに、アスランの「四つの道しるべ」を追う二人だったが――。巨人の橋、廃墟の都、暗闇の城、銀のいす。数々の困難を前に、いま友との絆が試される。小澤身和子訳
(新潮文庫 781円)[amazon]

ロバート・リテル『アマチュア』
アメリカ中央情報局の最高機密機関に属し、暗号の作成と解読に従事するチャーリー・ヘラー。シェイクスピア劇を愛する彼の平穏な日常は突然終わった。婚約者のサラがテロリストに殺されたのだ。「ぼくの生命を救う唯一のもの、それは奴らの死」。ヘラーは持ち慣れぬ武器を手に復讐を誓う。殺しの能力ゼロの「アマチュア」は、果たして引き金を引けるのか。『チャーリー・ヘラーの復讐』改題。北村太郎訳
(新潮文庫 1100円)[amazon]

ドロシー・ボワーズ『弔いの鐘は暁に響く』
〈論創海外ミステリ〉
「次に死ぬのはお前かもしれない」不気味な手紙は殺人の予告だったのか? 施錠された室内で発見された老婦人の絞殺死体。撲殺された無垢な娘。相次ぐ自殺。平和な町を襲う未曾有の事件に秘められた真相とは……。 ボワーズ最後の長編。友田葉子訳
(論創社 3850円)[amazon]

《ナイトランド・クォータリー》vol.38 仮面は語る 真実(まこと)と偽りの顔のあわいに
真実を隠すための仮面。仮面の表すものと本来の人物の、その狭間にあるものを探ってみよう。ラース・アンダーソン「ドミノ・レディがひと肌脱いだら」/M・ムアコック「亡霊戦団〜秘蔵の覆面博労物語〜」/アマル・エル=モフタール「ジョン・ホロウバックと魔女」/ブラム・ストーカー「ギベット・ヒル」/L・マリー・ウッド「次」/パウル・ブッソン「トルメントの宝石」/ヴィリ・ザイデル「春の仮面」/他
(アトリエサード 2280円)[amazon]

ジャミル・ジャン・コチャイ『きみはメタルギアソリッドV ファントムペインをプレイする
ビデオゲームのマップに入り込み、アフガニスタンの故郷で殺されようとしている叔父を救出に向かう少年。配達され続ける息子の肉片を縫い合わせていく母親。パレスチナの囚人解放を求めてYouTubeでハンガー・ストライキを拡散する大学生たち。サルに変身し反乱軍を率いることになった青年の数奇な運命……。9・11以後の瓦礫をさまよう亡霊を神話的な笑いで紡ぐ、新世代イスラム・マジックリアリズム短篇集。全米図書賞最終候補、O・ヘンリー賞受賞。矢倉喬士訳
(河出書房新社 2750円)[amazon]

パク・ソルメ『影犬は約束の時間を破らない』
ソウル、釜山、沖縄、旭川。治療としての〈冬眠〉が普及した世界の、眠る者と見守る者。やがて犬たちが、人々を外へと導いて――。世界とはぐれた心を結び直す冬眠小説集。斎藤真理子訳
(河出書房新社 2640円)[amazon]

新編 怪奇幻想の文学6 奇蹟』
海外幻想文学紹介の礎石を築き、長年にわたり先導してきた紀田順一郎・荒俣宏の監修のもと、新生『幻想と怪奇』の企画・編集者が、名作を全6巻に集大成するアンソロジー、ここに完結。古典はもとより、20世紀半ばの準古典作品までを新訳と名訳再録でおくる。本巻には、聖人伝説や天使の降臨、神々の顕現など、13作家による奇想と驚きに満ちた、神秘と奇蹟の物語を集めた。紀田順一郎・荒俣宏監修/牧原勝志編
(新紀元社 2750円)[amazon]

オリバー・ダークシャー『世界最古のロンドン古書店奇譚』
1761年創業のヘンリー・サザラン商会。ロンドンにある世界最古の古書店である(と主張)。個性強すぎる先輩店員たちに、もっと個性の強い常連客たち。貴重な稀覯本に開かずの戸棚、元店主の幽霊まで。近年、この由緒ある古書店に勤めはじめた青年が経験した奇妙な日々。秋山勝訳
(草思社 2860円)[amazon]

田中陽造『ゆきてかへらぬ 田中陽造自選シナリオ集
鈴木清順監督『ツィゴイネルワイゼン』、相米慎二監督『セーラー服と機関銃』で知られる名脚本家田中陽造、初の自選作品集。幻の傑作シナリオ『ゆきてかへらぬ』(根岸吉太郎監督)の映画化記念刊行。収録内容
(国書刊行会 4400円)[amazon]

フリードリヒ・マックス・ミュラー『比較神話学』
宗教学の祖マックス・ミュラーは、人類の始原を明かすため古代インド神話とギリシア神話の比較研究を始めた。神と自然現象は同一だったとし、近親相姦のような忌まわしい記述は、自然を古代言語で表現した名残だとした。こうした学説は合理的思考を求めた19世紀英国で歓迎され、神話は「古代世界の宗教」と位置づけられて後の宗教学へと繋がった。学問の曙光となった重要論文。『比較宗教学の誕生』(国書刊行会)収載の「比較神話学」の文庫化。
(角川ソフィア文庫 1364円)[amazon]

カーレド・ホッセイニ『君のためなら千回でも 上・下
平和な時代のアフガニスタン。裕福な家に生まれた僕は召使いのハッサンと兄弟のように育つ。父の愛に飢えていた僕に尽くすハッサン。1975年の凧合戦の日、「君のためなら千回でも!」と凧を追いかける彼を、僕は裏切り、人生を破壊してしまう。そして2001年911テロ直前の米国で、僕は一本の電話を受ける。それは償いの旅の始まりだった。感動の名著復刊。佐藤耕士訳
(角川文庫 各1100円)[amazon]

《ミステリマガジン》4月号
特集 21世紀翻訳ミステリベスト
内容
(早川書房 1320円)[amazon]

《SFマガジン》4月号
SF少女マンガ特集(監修 長山靖生)
再録:萩尾望都・大島弓子・坂田靖子/描き下ろし:永野のりこ・吟鳥子・白井弓子/作品ガイド・評論ほか 内容
(早川書房 1320円)[amazon]

シルビナ・オカンポ/アドルフォ・ビオイ・カサーレス『愛する者は憎む』
〈ルリユール叢書〉
海辺のホテルで起きた殺人事件。幻想的短編の名手シルビナ・オカンポと、その夫で『モレルの発明』の作者ビオイ・カサーレスが共作した唯一の長編小説。スペイン語圏に推理小説ブームを巻き起こすボルヘス/ビオイ・カサーレス監修の伝説的叢書〈第七圏〉から刊行された探偵小説を本邦初訳。寺尾隆吉訳
(幻戯書房 2970円)[amazon]

ネルソン・ロドリゲス『結婚式』
都会的な洗練のあるボサノヴァが流行する中で若者文化が花開き、行動も価値観も大きく変容していく60年代のリオデジャネイロを舞台に、上流階級の精神的な腐敗を危うさに満ちた筆致で描いた名品。旦敬介訳
(国書刊行会 3190円)[amazon]

イーユン・リー『水曜生まれの子』
表題作ほか11の短編を収録。喪失、孤独、秘密、愛情…深みのあるテーマを扱い、率直ゆえの辛辣さのなかにユーモアを感じる。篠森ゆりこ訳
(河出書房新社 2695円)[amazon]

エドワード・グレイ『フライ・フィッシング 英国式釣り師の心得
「私に専門家になろうという野心があるとしたら、釣りの楽しみについての専門家になりたい」(本文より)。人生を仕事・休養・リクリエイションから成ると捉え、何ものにも妨げられない時間の価値を説く。釣ることの技術と共に、その喜びを読者と分かち合い、「良き余暇のありよう」を伝える味わい深い名随筆(原著1899刊)。新たに原書挿絵を収録して復刊。西園寺公一訳
(中公文庫 1034円)[amazon]

マーク・オーランド『クリンゴン語辞典』
人類未踏の地、宇宙における冒険を描いたSFシリーズ《スター・トレック》。さまざまな種族が登場するうち、独自の文化をもつクリンゴン人の使う言語について、文法、発音、音韻、単語の意味などを解説した、唯一無二の書。茶月訳
(原書房 3080円)[amazon]

川崎賢子『左川ちか 青空に指跡をつけて』
左川ちかの詩の世界において、「馬」は発狂して山をかけ下り、「海」は天にあがる。乾いた抒情と躍動感に満ち、「緑」「太陽」「昆虫」「動物」「植物」といったモチーフが自在に変態するその作品は、読む者に常に新たな驚きをもたらす。神話化されたイメージを超えて、来るべき詩人左川ちかを多角的に読み解く。
(岩波書店 2970円)[amazon]

S・J・ショート『私があなたを殺すとき』
誰が“その男”を殺したのか? それは夫を亡くした4人の妻たちの、秘密クラブ――。ラスト1ページまで目が離せない心理サスペンス。片桐恵理子訳
(ハーパーBOOKS 1320円)[amazon]

時田郁子『詩人たちの自然誌 一九世紀初頭ドイツ語圏の文学と科学
四大元素、探検博物学、自動人形、動物磁気、ホムンクルス……近代ドイツ語文学において「科学」的事物はいかに探求され、作品に胚胎したか。動乱する19世紀初頭の自然科学的文脈を辿りつつ、ノヴァーリス、ホフマンらロマン派の小説、ゲーテ、シラーの諸作品、フンボルト、シャミッソーら探検博物者の詩的テクストを紐解く。ドイツ語文学に新たな読みの歓びをもたらす無二の論考。目次
(国書刊行会 3520円)[amazon]

ミシェル・ビュッシ『誰が星の王子さまを殺したのか?』
飛行機整備士ヌヴァンと探偵見習アンディはサン=テグジュペリの死の真相を探る旅に出るが……。世界的名著に隠された暗号とは? 平岡敦訳
(集英社文庫 1265円)[amazon]

竹内康浩『謎ときエドガー・アラン・ポー 知られざる未解決殺人事件
米文学史にその名を刻む天才作家にして「推理小説の始祖」ポー。彼はなぜ1844年に発表した短篇「犯人はお前だ」を最後に推理小説を書かなくなったのか? エドガー賞(評論・評伝部門)最終候補の〈文学探偵〉が辿り着いた世紀をまたいだ「発見」とは? 作家解釈をも揺るがす震撼の論考。
(新潮選書 1815円)[amazon]

D・M・ディヴァイン『こわされた少年』
イアン・プラットは16歳の高校生。霧の濃い水曜の午後、自転車で学校を出たのを最後に消息を絶った。当初は単なる家出と思われたが、姉の依頼でニコルソン警部の指揮のもと警察が捜索を開始する。かつて優等生だったが、ある時期から不良の仲間入りをし、不自然に金回りがよくなっていたイアン。いったい少年に何が起きたのか? 犯人当ての名手ディヴァインが読者の盲点を鮮やかに突く傑作本格ミステリ。野中千恵子訳
(創元推理文庫 1320円)[amazon]

エマ・スタイルズ『銃と助手席の歌』
高校を退学になった少女チャーリーは、ある盗みをきっかけに姉の恋人と争いになり、抵抗の果てに彼を殺してしまう。その場に居合わせた見知らぬ少女ナオの提案で、二人は死んだ男の車に乗り、死体を湖に捨て、ハイウェイを北へ走り出す。彼らの車を追ってくるのは何者か。ナオはなぜ死体処理に協力したのか。そして、車に積まれた大量の黄金はどこからきたのか――。やがて轟く銃声。オーストラリアを舞台に少女たちの闘いを描くクライムサスペンス。圷香織訳
(創元推理文庫 1430円)[amazon]

ジョーン・エイキン『月のケーキ』
月のケーキの材料は、桃にブランディにクリーム。タツノオトシゴの粉、グリーングラスツリー・カタツムリ……「月のケーキ」。幼い娘が想像したパームキンを宣伝に使ったスーパーマーケットの社長、だが実体のないパームキンがひとり歩きして……「パームキンがいちばん!」。魔女である祖母亡きあと城の守りを託された孫の計略は?「にぐるま城」。ガーディアン賞、エドガー賞受賞の名手による、幻想的で奇妙な13編。三辺律子訳
(創元推理文庫 1100円)[amazon]

H・P・ラヴクラフト『狂気の山脈にて 新訳クトゥルー神話コレクション 6
新訳クトゥルー神話コレクション第6巻は、怪死を遂げた貴族の来歴を辿る「故アーサー・ジャーミンとその家系にまつわる事実」、ミスカトニック大学の探検隊が人跡未踏の南極大陸に隠された忌まわしき地球の歴史と遭遇する大冒険譚「狂気の山脈にて」、 “悪魔の蠅”を凶器とする殺人を企んだ医学博士の恐るべき顛末「翅のある死」、イィスの“大いなる種族”の精神交換による地球侵略の一端が暴かれる「時間(とき)を超えてきた影」など、15篇+αを収録。森瀬繚訳
(星海社 2860円)[amazon]

『読書アンケート 2024 識者が選んだ、この一年の本みすず書房編
100名以上の有識者が、新刊・既刊を問わず、2024年に読んだ本のなかから印象深かったものを挙げる読書アンケート。
(みすず書房 880円)[amazon]

S・A・コスビー『闇より深き我が祈り』
白人の父と黒人の母を持つ私立探偵ネイサンは牧師殺害事件の調査に乗り出す。彼は事件の鍵を握るUSBを手に入れたことで命を狙われ……。加賀山卓朗訳
(ハヤカワ・ミステリ文庫 1430円)[amazon]

サリー・ルーニー『美しい世界はどこに』
人気作家のアリスはダブリンを離れて田舎に移り住み、倉庫作業員の男性と知り合う。アリスの親友アイリーンは恋人との別れから立ち直れずにダブリンで鬱々と暮らし、アリスと長文メールを交わすが……。社会の理想と現実の差に苦しむ若者たちを描いた長篇小説。山崎まどか訳
(早川書房 2970円)[amazon]

ニーシャ・J・トゥーリ『トライアル・オブ・ザ・サンクイーン 太陽妃への試練
過酷な牢獄から、豪華絢爛な宮殿へ! ロアは突然、妖精の王が開催する太陽妃選考会への参加を命じられる。王の伴侶の地位を得るため10人の候補者が4つの試練を戦うのだ。彼女を待ち構えているのは、死、それとも誘惑? 話題のロマンタジー・シリーズ開幕篇。月岡小穂訳
(早川書房 2750円)[amazon]

山形浩生『翻訳者の全技術』
文学・経済・ITなど多彩な分野に通暁し、累計150冊以上の訳書を持つ博覧強記の翻訳家が翻訳術から読書論、勉強法まで語る知的生産のすすめ。
(星海社新書 1430円)[amazon]

鹿島茂『古本屋の誕生 東京古書店史
「知と文化の集積地」はいかにして作られてきたか? 江戸時代の「書店」の誕生から、明治以降の東京古書界の変遷まで、本の街の歴史を詳細にたどる。
(草思社 2420円)[amazon]

アレクサンドル・ゲルツェン『過去と思索 6』
クリミア戦争に敗北したロシアに改革の時代が始まった時、亡命中のゲルツェンは言論活動を活発に続け、内外の反政府運動を助ける。その「自由な言葉」は、雑誌《北極星》によってロシアを遍く照らし、新聞《コロコル(鐘)》によって全土に鳴り響いた。彼は「流行児」となり、人生の絶頂期を迎える。(全7冊) 金子幸彦・長縄光男訳
(岩波文庫 1507円)[amazon]

《重版再開》
ニコライ・ゴーゴリ『死せる魂 上・中・下
(岩波文庫)

デイヴィッド・ダムロッシュ『ハーバード大学ダムロッシュ教授の世界文学講義』

世界文学とはなにか。国際的に活躍する文学研究の第一人者が古今東西縦横に、世界のあらゆる文学作品との比較の中で、日本文学の魅力を語る。今まで比較されることのなかった作家をあえて関連づけることによって文学の新たな可能性を見出し、刺激的な読書の世界へ誘う。沼野充義監訳/片山耕二郎・高橋知之・福間恵 訳
(東京大学出版会 3520円)[amazon]

《MONKEY》 vol. 35 特集 ポール・オースター 君に物語を語りたい
昨年惜しくも逝去した作家、ポール・オースター。その作品を紹介し続けてきた柴田元幸が贈る、作家が遺した声と物語。未邦訳作品の訳し下ろしや、全作品解説などを掲載。いま届けたい、作家ポール・オースターの軌跡。永久保存版特集。
(スイッチパブリッシング 2200円)[amazon]

岡本綺堂『旅情夢譚 妖異探偵小説集
木曽山中の旅館に泊まり合わせた男女学生達の間で起きた謎の毒殺、房総の海に浮かぶボート上での不可解な刺殺、シンガポールの農園で売れっ子芸妓と猿の死体が発見されたが……地方や海外などの旅先で出来した妖しく凄惨な13の殺人事件。「半七捕物帳」シリーズをはじめ怪談や人情物などエンタメ小説の源流となった岡本綺堂の傑作短篇集。
(光文社文庫 880円)[amazon]

鮎川哲也『絵のない絵本 鮎川哲也短編クロニクル1954-1965
目的のためなら殺人も辞さない身勝手で打算的な男、恵良三平の悪行の数々をブラックユーモア溢れる筆致で描いた表題作ほか、密室物、倒叙物、アリバイ崩しからジュブナイルまでヴァラエティ豊かな15編を収録。本格推理の巨匠のレアな短編を年代順に編集したシリーズ最終巻は『黒いトランク』発表前後に書かれた瑞々しい作品群。
(光文社文庫 1320円)[amazon]

トマス・ペイン『人間の権利』
『コモン・センス』でアメリカ独立を促したペインが、E・バークによるフランス革命批判に対して論駁したのが本書である。共和政擁護、王政批判だけでなく、近代的な社会福祉政策を提言するなど、国家による生存権への配慮を訴えた。角田安正訳
(光文社古典新訳文庫 1980円)[amazon]

R・F・クァン『バベル オックスフォード翻訳家革命秘史 上・下
二つの言語における単語の意味のずれから生じる翻訳の魔力を用いて、大英帝国が世界の覇権を握る19世紀。英語とは大きく異なる言語を求めて中国から連れてこられた少年ロビンは、オックスフォード大学の王立翻訳研究機関、通称バベルの新入生となり、言語のエキスパートになるための厳しい訓練を受ける。だが一方で、大英帝国に叛旗を翻す秘密結社があった。言葉の力を巡る本格ファンタジイ。ネビュラ賞、ローカス賞受賞。古沢嘉通訳
(東京創元社 3300円/2750円)[amazon]

《紙魚の手帖》vol.21
辻堂ゆめ、ミステリ長編新連載『その火を消し止めて』スタート。似鳥鶏、町田そのこ、溝渕久美子読み切り。2024年ヒューゴー賞短編部門候補作、宝樹「美食三品」掲載ほか。
(東京創元社 1540円)[amazon]

森瀬繚『ラヴクラフト語辞典 H·P·ラヴクラフトにまつわる言葉をイラストと豆知識で禍々しく読み解く
クトゥルー神話の生みの親、H・Pラヴクラフトにまつわる言葉、神々、クリーチャー、物品、地域、セリフ、関連する作品・人物など、彼が生み出した言葉、またそこから派生した言葉をイラストを交えて600語以上収録。イラスト 梶原陽輔
(誠文堂新光社 2200円)[amazon]

『SFが読みたい! 2025年版』SFマガジン編集部編
年間ベストSF発表、ベスト1作家からのメッセージ、サブジャンル別ベスト、この一年のSF関連トピック、2025年の各出版社のSF書籍刊行予定、SF作家たちによる最新予定「2025年のわたし」、SF関連書籍目録などでおくる恒例のSFガイドブック最新版。
(早川書房 1276円)[amazon]

トーマス・ジェームス・コブデン=サンダーソン『美しい書物/アーツ・アンド・クラフツ運動』
19世紀末イギリスで製本工房を開き、美しい書物をつくり、ウィリアム・モリスとともに装飾芸術を広めたことで知られているコブデン=サンダーソンの『美しい書物』『アーツ・アンド・クラフツ運動』の翻訳。機械製本が主流となるなか、手工芸として技法と理念を説き、書物修復にとっても参考となるテキスト。美しい書物の本を美しい造本で。野村悠里訳
(幻戯書房 予価3300円)[amazon]

『ロシア中世物語集』
『原初年代記』『イーゴリ軍記』など名高い作品を集成。各作品とロシア中世文学の特質・史的展開についての概説も付した類のない書。中村喜和編訳
(ちくま学芸文庫 予価1760円)[amazon]

D・H・ロレンス『海とサルデーニャ 紀行・イタリアの島
1921年1月、作家は妻を伴い、シチリアからサルデーニャへと旅立つ。躍動感溢れる筆致で描かれる孤高の島の自然と人々。五官を震わせる名紀行。武藤浩史訳
(ちくま学芸文庫 予価1540円)[amazon]

北村紗衣『増補 お砂糖とスパイスと爆発的な何か 不真面目な批評家によるフェミニスト批評入門
フェミニストの視点をもてば、作品はもっと面白くなる! 見たい映画とドラマと本と舞台がどんどん増える、刺激的な批評集が大幅増補で文庫化。
(ちくま文庫 予価990円)[amazon]

ナナ・クワメ・アジェイ=ブレニヤー『チェーンギャング・オールスターズ』
資本主義が進む近未来のアメリカで、刑務所の囚人たちに釈放をかけて殺し合いをさせる“スポーツ”が誕生した。サブスクリプション配信される彼らの死闘とその最期に、人々は熱狂し涙する――。『フライデー・ブラック』の著者が、人種差別や消費社会を痛烈に皮肉る、文芸×SF×エンタテインメントの衝撃長篇。池田真紀子訳
(集英社 3520円)[amazon]

蘭郁二郎『南海の毒盃 戦前・戦中期防諜小説集 6
戦時中、原子工業研究所に従事する研究者が殺人事件に巻き込まれる。しかしその被害者の女性の身元の謎が深まる中で、さらに怪死事件が相次ぐ。昭和18年刊の防諜探偵小説を復刊。オンデマンド出版
(大陸書館 予価2057円)[amazon]

イヴ・バビッツ『ブラック・スワンズ』
血眼で駐車場を探して、ロデオ・ドライヴをひやかして、アルゼンチンタンゴにハマって、ヴァンパイアみたいに美しい男とシャトー・マーモントに入り浸って、L.A.いち古いレストランで友達とブランチを食べて、しゃべって。華やかなりしL.A.の申し子で恋人。彼女のレンズを通したら、この街はひどく美しくてどうしようもなく愛おしい、故郷《ふるさと》だ。鋭い観察眼とキレのあるユーモアの作家、イヴ・バビッツがL.A.の友人たちをモデルに描いた短編集。山崎まどか訳
(左右社 3080円)[amazon]

ハーラン・コーベン『捜索者の血』
3歳の息子マシュウを殺した罪で終身刑に服するデイヴィッド。身に覚えのない罪だったが、喪失感と愛する者を守れなかった後悔から無実を訴えることなく刑に服していた。しかし面会に現れた元妻の妹が彼に見せた写真には、成長したマシュウの姿が写っていた。デイヴィッドは真実を突き止めるため、脱獄を決意するが……。田口俊樹訳
(小学館文庫 1331円)[amazon]

クローディア・グレイ『『高慢と偏見』殺人事件』
詐欺まがいの投資話でエマやアンから恨みを買うウィカムが、パーティの最中に殺された。キャサリンの娘とエリザベスの息子が嵐で閉ざされた館で起きた怪事件に挑む。『高慢と偏見』『エマ』『説得』……ジェイン・オースティン作品の登場人物が織りなす正統派ミステリ。不二淑子訳
(ハヤカワ・ミステリ 2970円)[amazon]

ジェス・Q・スタント『ミセス・ワンのティーハウスと謎の死体』
ミセス・ワンの中国茶専門店で男の死体が発見された。刑事ドラマが大好きなワンは、容疑者に中国茶を振る舞いながら勝手に聞き込みを始めてしまうが……。唐木田みゆき訳
(ハヤカワ・ミステリ文庫 1628円)[amazon]

A・J・ライアン『レッドリバー・セブン ワン・ミッション
記憶を失くした状態で、船内にいた見知らぬ7人の男女。戸惑う彼らの前で、突如船内ディスプレイにミッションが表示されて……!? 古沢嘉通訳
(ハヤカワ文庫SF 1650円)[amazon]

山本周五郎『山本周五郎[未収録]ミステリ集成』
「少年少女譚海」掲載の冒険譚から、「新少年」掲載の短篇ミステリ、「講談雑誌」掲載の艶笑譚まで――。文豪・山本周五郎による、これまでの全集/選集に収録されていなかったミステリを大集成。長篇3作品、短篇10作品、すべて単行本初収録。末國善己編
(作品社 5940円)[amazon]

ジャック・ケッチャム『冬の子 ジャック・ケッチャム短篇傑作選
ホラーの巨匠ジャック・ケッチャムは短篇小説の名手でもあった。『オフシーズン』と『襲撃者の夜』のあいだを埋める恐怖体験を描く表題作ほか、ある箱を覗いてから食事をいっさい採らなくなった息子の姿を描く「箱」と、ハロウィンの夜に子供たちを受け入れようとする女性の物語「行方知れず」のブラム・ストーカー賞短篇賞受賞作2作を含む、日本独自編集の全19篇。金子浩訳
(扶桑社ミステリー 1320円)[amazon]

スティーヴン・ハンター『フロント・サイト3 ファイヴ・ドールズ』
ホットスプリングズ市警は、女性の死体を切り刻み、内臓を抜き出す残虐な連続殺人事件に頭を悩ませていた。街のイメージのためなるべく内密に捜査してほしいという街のお偉方たちの希望に、市警本部長はベトナム帰りの元海兵隊軍曹にして天才的狙撃手ボブ・リー・スワガーを捜査班に招く。33歳のころのボブ・リーを探偵役に巨匠ハンターが新境地に挑む。中篇三部作最終章。棚橋志行訳
(扶桑社ミステリー 1375円)[amazon]


▼1月刊

髙橋大輔『日本の人魚伝説』
昔、若狭湾に臨む小浜で人魚の肉を食べ、永遠の若さを手にした少女がいたという。彼女は尼となり日本各地を遊行して800年生き、「八百比丘尼」と呼ばれた。彼女が食べた「人魚」とは一体何なのか。飛鳥時代以来の人魚出現記録を、現地取材と史料から精査し、「日本の人魚」の正体に迫る。
(草思社 2090円)[amazon]

ダニロ・キシュ『ボリス・ダヴィドヴィチのための墓 一つの共有の歴史をめぐる七つの章
ボルヘス『汚辱の世界史』への「対本」として――オマージュとして、かつアンチテーゼとして――構想された7つの連作短編集。スターリン時代の粛清に取材しながら、全体主義社会での個人の苦闘を描く。ユーゴスラヴィアの作家ダニロ・キシュの代表作。奥彩子訳
(松籟社 2200円)[amazon]

吉川一義『『失われた時を求めて』の謎 隠された構造を探る
『失われた時を求めて』は幾重もの謎に包まれている。──長篇はいかに誕生したのか? 対比されているのはスワン家とゲルマント家なのか? ヒロイン・アルベルチーヌはなぜ捉えどころがないのか? 「私」という一人称の仕掛けとは?──小説と批評を総合した希有なる作品の隠された構造を、草稿研究の先駆者が精緻に読み解く。
(岩波書店 7480円)[amazon]

フローレンス・パリー・ハイド/エドワード・ゴーリー『ツリーホーン、どんどん小さくなる』
さいしょはクローゼットの棚に手が届かなかった。つぎに服がぶかぶかになった。「思うんだけど、ぼくは縮んでるんじゃないかな」でも、おとうさんもおかあさんもあまり気にしていないみたい。お医者さんはそんな病気はないって言うし、学校の先生も解決してくれない。まだまだ縮み続けて……。英国の児童文学作家フローレンス・パリー・ハイドのナンセンスで可愛い物語に、エドワード・ゴーリーの挿絵40点を収録。三辺律子訳
(東京創元社 1980円)[amazon]

マルク・ラーベ『17の鍵』
早朝のベルリン大聖堂に深紅の血が降り注ぐ。丸天井の下には女性牧師が吊り下げられていた。殺人現場に駆けつけたトム・バビロン刑事は、さらに信じがたいものを目撃する。被害者の首にはカバーに「17」と刻まれた鍵がかけられていた。それはトムが少年の頃に川で見つけた死体のそばにあった鍵と同じもので、10歳で失踪した妹が持ちだしたままだった。なぜそれがここに? トムは臨床心理士のジータと捜査を始めるが……。本国でベストセラー、ドイツミステリ連続刊行第1弾。酒寄進一訳
(創元推理文庫 1430円)[amazon]

谷崎潤一郎『金と銀』
文豪谷崎潤一郎が大正期に書いた珠玉の探偵小説選。天才的な素質の画家・青野を殺すことによって、「銀」から「金」の存在となろうとする大川の姿を描く「金と銀」ほか、「AとBの話」「友田と松永の話」「青塚氏の話」「或る少年の怯れ」の全5編を収録。
(春陽堂文庫 1320円)[amazon]

佐藤春夫『更生記』
医学生の大場は、ある晩、自殺を図ろうとしている女性を保護する。大場から相談を受けた猪俣助教授は、彼女が心因性ヒステリーであることを見抜き、精神分析を用いて病因を解き明かしていく――。スリルと意外性に満ちた文豪の傑作推理、70年ぶりの文庫化。
(春陽堂文庫 1210円)[amazon]

ジェニファー・M・ギドリー『未来学』
預言者からSFまで、ルネサンス・啓蒙思想からテクノトピアまで、人類が夢見た未来を批判理論の観点から概観する、はじめての入門書。南龍太訳
(白水社 2640円)[amazon]

W・C・ライアン『真冬の訪問者』
1921年1月、アイルランド。第一次大戦帰還兵で現在は保険会社の損害査定人トムのもとに、元恋人のモードがIRAの襲撃を受けて殺されたという報が届く。保険会社から事件の調査を命じられたトムは、モードが王立アイルランド警察の男性二人と同乗していた車を襲撃されたことを知るが……。元恋人の幻影を追いつつ、祖国のために複雑な人間関係の只中に身を投じるクライム・ノヴェルにして、アイルランド独立戦争の実相を描出する歴史小説の一面ももつ大作ミステリ。土屋晃訳
(新潮文庫 1100円)[amazon]

ドナルド・E・ウェストレイク『うしろにご用心!』
故買屋アーニーの頼みで、大金持ちの投資家プレストンがペントハウスに秘蔵している美術品などを盗み出す計画を立てたドートマンダー。その頃、カリブ海のリゾート地にいたプレストンには謎の美女パムが近づいていた。彼女の目的は誘惑ではなく誘拐。投資家は海に飛び込んで脱出し、なんとか自宅に帰りつく。そんなこととは露知らず、ドートマンダーと仲間たちはプレストン宅に忍び込むが……。スラプスティック・ミステリの人気シリーズ復活。木村二郎訳
(新潮文庫 1155円)[amazon]

C・S・ルイス『ナルニア国物語3 夜明けのぼうけん号の航海』
夏休みをおじ夫婦の家で過ごしていたエドマンドとルーシーは、いとこのユースティス共々、絵に描かれた海の中へと引きずり込まれる。三人を助けたのは、かつてともに戦ったナルニアの王、カスピアンの帆船だった。追放された七人の貴族の行方を追う一行を待ち受けるのは、ふしぎな力を持つ島々。彼らは目的を果たしナルニアに帰還することができるのか。いま、世界の果てへの旅が始まる。小澤身和子訳
(新潮文庫 781円)[amazon]

岸本佐知子『死ぬまでに行きたい海』
思い出の場所やいつか行ってみたかったところ、そして記憶の中を旅してみると、思いがけず心を大きく動かされることを知る。ぼったくられたバリ島。父が生まれ育った丹波篠山。思っていたのと違ったYRP野比。幼馴染との経堂での奇妙な再会。出不精な著者が見つけた、懐かしさと新鮮さが入り混じる風景の数々は、なぜだか私たちを切なくさせる。翻訳の名手が贈る少し不思議なエッセイ集。
(新潮文庫 935円)[amazon]

ジョルジュ・シムノン『月射病』
〈シムノン ロマン・デュール選集〉
アフリカのフランス植民地ガボンに働きにやってきた青年ジョゼフは、到着間もなく、ホテルのオーナーの妻アデルに誘惑される。パーティーの夜に黒人ボーイが銃殺される事件が起き、ジョゼフはアデルを疑う。続いてアデルの夫も感染症で死に、彼女はジョゼフにジャングルで一緒に事業を始めるよう持ちかけるが……。“世界的作家”シムノンの未邦訳長篇選集刊行開始。大林薫訳/瀬名秀明 監修・解説
(東宣出版 2420円)[amazon]

赤松美和子『台湾文学の中心にあるもの』
政治、そして多様性、台湾では文学が現実に人と社会を動かし続けている。激動する歴史の中で、文学が社会を動かし、文学が人のパワーの根源となっている台湾。日本語で読める約50作品を紹介しながら、政治に翻弄されつつも、必死に格闘し、社会に介入してきた台湾文学を読み解き、その全貌を示す。
(イーストプレス 1980円)[amazon]

『夜ふけに読みたい 旅するイソップ物語』
人気海外民話シリーズ「夜ふけに読みたいおとぎ話」第10弾はイソップ童話第2弾。おなじみアーサー・ラッカムの美しい挿絵が満載。読み聞かせはもちろん、大人も楽しく読める。田野崎アンドレーア嵐・和邇桃子訳
(平凡社 2530円)[amazon]

フリードリヒ・ヘッベル『ニーベルンゲン 三部のドイツ悲劇
〈ルリユール叢書〉
フロイトやブレヒトにも影響を与えた、19世紀ドイツ最大の悲劇作家フリードリヒ・ヘッベル――中世叙事詩『ニーベルンゲンの歌』に忠実な劇作化が試みられ、ワーグナーの楽劇『ニーベルングの指輪』四部作と双璧をなすことになった、最後の観念劇とも言われるヘッベル晩年の大傑作。磯崎康太郎訳
(幻戯書房 5280円)[amazon]

ポープ・ブロック『ヤギの睾丸を移植した男 アメリカで最も危険な詐欺師ブリンクリーの天才人生
1920年代の米国で、ヤギの睾丸を人間に移植するインチキ回春治療で大成功した詐欺師、ジョン・ブリンクリー。全米有数のメディア王に成り上がり、遂に州知事選に挑む――天晴れ悪党の抱腹絶倒評伝。杉田七重訳
(国書刊行会 3190円)[amazon]

ジョン・B・トンプソン『ブック・ウォーズ デジタル革命と本の未来
原稿が書かれてから本が読者のもとに届くプロセスのすべてに、デジタル技術が及ぼす影響を描きつくす。21世紀のメディア論の決定版。久保美代子訳
(みすず書房 5940円)[amazon]

ロジャー・コーマン/ジム・ジェローム『私はいかにハリウッドで100本の映画をつくり、しかも10セントも損をしなかったか』
『アッシャー家の惨劇』などのポー原作映画、『リトル・ショップ・オブ・ホラーズ』『ワイルド・エンジェル』『金星人地球を征服』『血まみれギャングママ』その他、数々の低予算映画を成功させ、多くの若い才能を抜擢してきたロジャー・コーマン(2024年5月に98歳で死去)が撮影手法と人生哲学を語る痛快自伝。石上三登志・菅野彰子訳
(ハヤカワ文庫NF 2200円)[amazon]

呉明益『複眼人』
太平洋に浮かぶ神話的な島と、近未来の台湾。二つの島に巨大な「ゴミの島」が押し寄せる時、謎の「複眼人」が姿を現す――。世界14か国で翻訳。台湾現代文学の担い手による代表的長編。小栗山智訳
(角川文庫 1430円)[amazon]

ジェフリー・アーチャー『時のみぞ知る クリフトン年代記1
1920年代英国ブリストル――港町で暮らす貧しい少年ハリー・クリフトンは、ある天賦の才を認められ、名門校へ進学を果たす。裕福な学生たちのいじめに遭うなか、助けてくれたのは海運一族の息子で貴族階級のジャイルズ・バリントンだった。二人は無二の親友となるが、やがてハリーは戦死したはずの父の死の真相と、バリントン家と自身の因縁を知り――。100年にわたる壮大な物語。戸田裕之訳
(ハーパーBOOKS 1430円)[amazon]
ジェフリー・アーチャー『死もまた我等なり クリフトン年代記2
1939年。最愛の人との別れを経てイギリス軍の商船への入隊を果たしたハリーだったが、間もなく船がドイツに攻撃され沈没し、亡き同僚の名を借りてアメリカへ渡る。ところが上陸した途端に殺人罪で拘束され、本当の身分を証明する術もない。刑務所での過酷な生活が始まるなか、第二次大戦の足音はアメリカにも忍び寄り……。一方、ジャイルズは兵士として前線に赴くことに――。戸田裕之訳
(ハーパーBOOKS 1430円)[amazon]
ジェフリー・アーチャー『裁きの鐘は クリフトン年代記3
1945年。イギリスへの帰還を果たしたハリーは獄中で執筆した日記がベストセラーとなり、作家として成功を収めていた。ジャイルズもまた労働党庶民院議員となり前途洋々に思われたが、その矢先にジャイルズの母が他界し、二人の間に思いがけない争いの火種を残す。そんななか、ハリーたちに恨みを持つ長年の宿敵は、方途を尽くし新たな攻撃を仕掛けようとしていて――。戸田裕之訳
(ハーパーBOOKS 1430円)[amazon]

メアリー・スチュアート『誰も知らない昨日の噓』
〈論創海外ミステリ〉
英国の美しい田舎に現れた女は8年前に失踪した遺産相続人なのか? 蔦の木だけが知る「誰も知らない昨日の噓」とは? 謎めいた女の出現が〈ホワイトスカー牧場〉に波乱の渦を巻き起こす。M・スチュアートの浪漫サスペンス。木村浩美訳
(論創社 3960円)[amazon]

ダフネ・デュ・モーリア『スケープゴート』
人生に絶望していた英国人ジョンは、旅先のフランスで自分と瓜二つの男ジャンに出会う。引っ張られるまま飲んだ翌朝目覚めるとジャンの姿はなく、持ち物すべてが消えていた。呆然とするジョンは、彼をジャンと信じて疑わない運転手に家に連れていかれる。ジャンは伯爵だが所有する工場は経営難、家族間はぎくしゃくしていた。手探りでジャンになりすますジョンだったが……。名手による予測不能なサスペンス。務台夏子訳
(創元推理文庫 1606円)[amazon]

アンドレス・バルバ『きらめく共和国』
1994年、緑のジャングルと茶色い川を抱える亜熱帯の町に、理解不能な言葉を話す9歳から13歳の子どもたちの集団がどこからともなく現れた。その存在は徐々に大人たちの日常に罅を入れていき、やがてスーパー襲撃という大事件を起こす。そして数ヶ月後、32人の子どもたちは一斉に命を落とした――。現代スペインを代表する作家が描く、子どものかわいらしさと暴力性、野生と文明。恐るべき寓話が文庫化。宇野和美訳
(創元推理文庫 976円)[amazon]

沼野充義『ロシア文学を学びにアメリカへ? 増補版 屋根の上のバイリンガル
1980年代、ロシア文学を専攻していた著者は、ソ連ではなく米国へ飛んだ。ハーバード大で古代教会スラヴ語を習得し、街角でポーランド移民と交流。多様な文化を内包する「サラダボール」の国で得た体験と考察をユーモラスに綴る、ヌマノ教授の原点たるエッセイ。「ハーバード生活から三つのエピソード」他を新規収録。
(中公文庫 1100円)[amazon]

斎藤真理子『増補新版 韓国文学の中心にあるもの』
なぜハン・ガンは、アジア人女性として初めて、ノーベル文学賞を受賞したのか? 大きな話題を呼んだ元本(2022刊)に、この2年、激動する韓国文学の重要作の解説を加筆、40頁増の新版登場。韓国文学は、なぜこんなにも面白く、パワフルで魅力的なのか。その謎を解くキーは「戦争」にある。
(イースト・プレス 1980円)[amazon]

斎藤美奈子『ラスト1行でわかる名作300選』
漱石の『吾輩は猫である』や、サリンジャーの『ライ麦畑でつかまえて』の驚愕のラストとは? 時代を越えて愛されながら、意外と知られていない名作のエンディング。世界の文学300冊をお尻の一文から解説しつつ、文豪たちのセンスや生き方を鋭く批評する。斎藤美奈子流・切れ味抜群のブックガイド。『名作うしろ読み』『吾輩はライ麦畑の青い鳥 名作うしろ読み』を合本し、書き下ろし24本を増補。
(中央公論新社 2750円)[amazon]

森泉岳土/スタニスワフ・レム(原作)『ソラリス 上・下
ソラリス――この静謐なる惑星は意思を持った海に表面を覆われていた。心理学者ケルヴィンは、惑星の謎を解明するべく派遣されたのだが……。人間を超える知性とのコンタクトは可能なのか? 人気作家が名作SFをコミック化。
(ハヤカワ・コミックス 各1980円)[amazon]

チャン ガンミョン『罪と罰 上・下
22年前、美しい女子大生を殺したのは誰だったのか――ソウル警察庁凶悪捜査チームは再捜査を決定するがそこで見えてきた真実とは。オ ファスン訳/カン・バンファ監修
(ハヤカワ・ミステリ文庫 各1650円)[amazon]

デュナ『カウンターウェイト』
韓国の巨大企業が建設中の軌道エレベータに隠された世界を揺るがす機密を巡り、高軌道で微重力下戦闘を繰り広げるアクションSF。吉良佳奈江訳
(ハヤカワ文庫SF 1342円)[amazon]

ノヴァイオレット・ブラワヨ『動物工場』
アフリカにある動物たちの王国ジダダは、植民地支配から民を救った建国の父オールド・ホースの政権誕生40周年を迎えた。だが、ジダダの民たちは気づいている。この栄光の影で犠牲となる者たちの声を。ブッカー賞最終候補に選ばれたジンバブエ版『動物農場』。川副智子訳
(早川書房 4290円)[amazon]

シーグリッド・ヌーネス『ザ・ルーム・ネクスト・ドア』
学生時代の友人に再会した作家は、「最期の時間を一緒に過ごしてほしい」と頼まれる。友人は末期がんだった。そして、心の準備ができたら薬を飲んで死を選ぶという。思いがけぬ日々のなかで作家が見たものは――。全米図書賞受賞作家による感動作。映画化原作。桑原洋子訳
(早川書房 2420円)[amazon]

長谷川彰良『あたらしい近代服飾史の教科書 衣装の標本で見る、着るものの歴史と文化
衣服標本家として数百年前の衣服を分解して標本を作り、構造美や着心地を研究する著者が、フランス革命前後や1700年代半ばからの西洋の衣服がどのようなもので、どのように変化していったのかを豊富な写真を添えて解説。
(翔泳社 4620円)[amazon]

新編 イギリス名詩選』川本皓嗣編
ページを開けばきっと、声に出して読みたくなる――詩人たちの〈歌う喜び〉を感じさせてやまない、イギリスの名詩の数々。16世紀のスペンサーから20世紀後半のヒーニーまで、もっとも愛され親しまれている92篇を、英語の原詩・和訳ともに堪能できる対訳で編む。日本の読者の理解を支える注釈・解説も充実、待望の新編。
(岩波文庫 1276円)[amazon]

吉田広明『映画監督ドン・シーゲル』
『第十一号監房の暴動』『ボディ・スナッチャー/恐怖の街』『殺し屋ネルソン』『白い肌の異常な夜』『ダーティハリー』『突破口!』……40年にわたりハリウッドでアクション映画、犯罪映画を撮り続けた職人監督のキャリアと主題を詳細に辿る書き下ろし長篇評論。
(作品社 3520円)[amazon]

林海音『城東旧事』
1920年代の北京。伝統的な胡同に暮らす主人公の少女・英子が、子ども時代と別れを告げるまでを描く。「台湾文学の祖母」と称される林海音が幼少期を過ごした北京を舞台に、激しく変化する時代に翻弄されながら、ささやかな生活を送る人びとをあたたかく描く自伝的小説。
(行知学園 3300円)[amazon]

チョ・ナムジュ『彼女の名前は』
理不尽なことに勇敢に立ち上がる女性たち28の物語。『82年生まれ、キム・ジヨン』著者短編集。12頁分増補。小山内園子・すんみ訳
(ちくま文庫 946円)[amazon]

フランツ・グリルパルツァー『グリルパルツァー戯曲選』
19世紀オーストリア最高の劇作家と呼ばれるグリルパルツァーの代表作2篇、古代ペルシャで王に成り上がろうとした男の栄華と転落を描く「夢は人生」、死を前にして現世の愛を超越し、天命を取り戻す領主の娘をめぐる悲劇「リブッサ」(本邦初訳)を収録。
(水声社 4400円)

スタール夫人『コリーヌ あるいはイタリア
桂冠詩人コリーヌは、恋人の英国軍人オズワルドとともに、ローマ、ナポリ、遠くヴェネツィアまでも旅する。硬直した社会と、祖国への義務に阻まれ揺れ動く恋と苦悩を描く19世紀フランス小説。佐藤夏生訳
(水声社 5500円)

ジャネット・スケスリン・チャールズ『あの図書館の彼女たち』
1939年パリ。20歳のオディールはアメリカ図書館の司書に採用された。本好きな彼女は熱心に仕事に取り組み、女性館長や同僚、個性豊かな利用者たちとの絆を深めていく。やがてドイツとの戦争が始まり、図書館は病院や戦地の兵士に本を送るプロジェクトを開始する。しかしドイツ軍がパリを占領、ユダヤ人利用者に危機が……。人々に本を届け続けた図書館員たちの勇気と絆を描く感動作。文庫化。髙山祥子訳
(創元文芸文庫 1386円)[amazon]

渡辺啓助『沙漠の白鳥 戦前・戦中期防諜小説集 5
内蒙古を調査する大陸学術調査隊を妨害する共産匪などとの戦いを描いた冒険ミステリ(「日の出」掲載)。他に防諜小説「悪魔の刺繍」「紅薔薇団」の2編と、北京が舞台のミステリ小説「朱鶯春の皿」を収録。
(大陸書館 1980円)[amazon]

E・M・フォースター『ハワーズ・エンド』
20世紀初頭の英国。富裕な新興中産階級のウィルコックス家と、ドイツ系で教養に富む知識階級のシュレーゲル姉妹、そして貧しいバスト家の交流を通じ、格差を乗り越えようとする人々の困難や希望を描いたモダニズム文学の傑作。浦野郁訳
(光文社古典新訳文庫 2090円)[amazon]

『三田村鳶魚 江戸生活事典』稲垣史生編
「江戸学の祖」「江戸通の三大人」「最後の町学者」など、 数々の異名を持つ三田村鳶魚は 広範で多岐にわたる江戸文化・風俗の研究を遺した。その膨大な研究のうち市井町家の文化・風俗を中心に、 時代考証家・稲垣史生によって 事典形式に編纂されたのが本書である。 約3000項目を収める 江戸時代考証の基本書、待望の復刊。
(平凡社ライブラリー 2970円)[amazon]

エカ・クルニアワン『美は傷』
〈アジア文芸ライブラリー〉
ジャワ南部の港町に生まれた娼婦デウィ・アユとその一族を襲った悲劇。植民地統治、占領、独立、政変と弾圧といった暴力の歴史を軸に、伝説、神話、寓話などが渦巻く奇想天外な大河小説。世界35カ国以上で刊行されたマジックリアリズム文学の傑作。太田りべか訳
(春秋社 4400円)[amazon]

夢野久作『妖刀地獄』
幻想怪奇文学の巨匠・夢野久作による時代小説をすべて収録。復讐に向かう見目麗しい若侍との出会いから始まる表題作ほか全5編。新保博久編
(河出文庫 891円)[amazon]

馬伯庸『西遊記事変』
仙界の太白金星に住む李長庚は、観音菩薩の奸計によって天竺へと向かう三蔵法師に八十一の試練を与えることになった。だがそこには、仙界の大物たちが企てる隠された目的が見え隠れしていた。人間界も巻き込んだ壮大な計画の鍵は、孫悟空にあるというが……。齊藤正高訳
(ハヤカワ・ミステリ 2530円)[amazon]

ジョン・ブロウンロウ『エージェント17』
17は暗殺専門のエージェント。消えた16の後任として17になった彼の任務はとある作家の暗殺。どうやら作家の正体は16らしいが……。武藤陽生訳
(ハヤカワ文庫NV 1760円)[amazon]

レイラ・モトリー『夜の底を歩く』
1
7歳のキアラは、兄と二人暮らし。父は病死、母は獄中。ラッパーを夢見る兄のため、隣家の孤独な少年のため、彼女は職を探す。ある夜、思わぬことから、売春を始める。愛する者を心の支えとして働くキアラだったが、やがて街を揺るがす騒動に巻き込まれ……。井上里訳
(早川書房 3300円)[amazon]

ロバート・ベイリー『リッチ・ブラッド』
交通事故案件を専門とする弁護士ジェイソン・リッチは、離婚や家族関係の問題からアルコール依存症に陥っていた。リハビリから退院直後、夫殺害の容疑で逮捕された姉から弁護の依頼が。ジェイソンは葛藤しつつも弁護を引き受けるが、事件は想像以上に複雑で闇が深く――。リーガル・スリラーの名手の新シリーズ。吉野弘人訳
(小学館文庫 1320円)[amazon]

アーネスト・ヘミングウェイ『老人と海/殺し屋』
大いなる自然と人間の闘争を描く永遠の名作「老人と海」に、アメリカのハードボイルドにも影響を及ぼした名作短編「殺し屋」を併録。齋藤昇訳
(文春文庫 880円)[amazon]


Amazonのアソシエイトとして、藤原編集室は適格販売により収入を得ています。