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ファニー・クラドック『シャーロック・ホームズ家の料理読本』
シャーロック・ホームズが暮らす下宿の賄い方兼家政婦であったハドスン夫人が、引退後に彼とワトスンの好物のレシピを思い出とともに綴る。朝食・スープから魚料理・禽獣類の料理、臓物料理にお酒のレシピまで。パスティーシュ小説のようでありつつ、ヴィクトリア朝の食文化・風俗の貴重な記録としても楽しめる。成田篤彦訳
(朝日文庫 1430円)[amazon]

フィリップ・ロス『プロット・アゲンスト・アメリカ』
1940年、もしもヒトラーの友人で反ユダヤ主義者のリンドバーグが米大統領になっていたら!? フィリップ・ロスの歴史改変小説。柴田元幸訳
(集英社文庫 1760円)[amazon]

フランツ・カフカ『カフカの日記 1910-1923 新版
日記文学の金字塔を、カフカ没後100年の今年、新たに世に送る。常人ではわからないカフカの研ぎ澄まされた五感が捉えた日常、それを受け止めるカフカの心の世界、不眠と夢の描写、父との葛藤、フェリーツェはじめ女性への苦悩、ユダヤ人社会のことなど、そのすべてがカフカの文学に連なり、それ自体が文学になっている。新潮社版『決定版カフカ全集』第7巻(1992)を底本に新版で刊行。マックス・ブロート編/谷口茂訳
(みすず書房 5500円)[amazon]

ツェリン・ヤンキー『花と夢』
〈アジア文芸ライブラリー〉
ラサのナイトクラブで働きながら場末のアパートで身を寄せ合って暮らす四人の女性たちの共同生活と、やがて訪れる悲痛な運命……。家父長制やミソジニー、搾取、農村の困窮などの犠牲となり、傷を抱えながら生きる女性たちの姿を慈愛に満ちた筆致で描き出す。チベット発、シスターフッドの物語。星泉訳
(春秋社 2640円)[amazon]

ケヴィン・ブロックマイヤー『いろいろな幽霊』
〈海外文学セレクション〉
失恋した瞬間を永遠に繰り返す幽霊、雨となって降り注ぐ幽霊、方向音痴の幽霊、瞬間転送装置が生み出す幽霊……イタロ・カルヴィーノ短編賞受賞作家が贈る、時に切なく、時におかしく、そして時にはちょっと怖い幽霊たちの物語を100編収めた不思議な短編集。市田泉訳
(東京創元社 2640円)[amazon]

アシュリー・ウィーヴァー『金庫破りとスパイの鍵』
第二次大戦下のロンドンで、鍵のかかったカメオ付きのブレスレットをつけた女性の遺体が発見された。陸軍のラムゼイ少佐の依頼で、金庫破りのエリーはその錠を解錠する。カメオの中身と女性が毒殺されていたことから、彼女はスパイ活動に関わっていたと判明、エリーは少佐に協力し、殺人事件の犯人とドイツのスパイを探りだすことに。凄腕の金庫破りと堅物の青年少佐の活躍を描く人気シリーズ第二弾。辻早苗訳
(創元推理文庫 1320円)[amazon]

ジェフリー・アーチャー『遙かなる未踏峰 上・下
エヴェレスト初登頂を目指し、消息を絶った伝説の登山家マロリー。100年前の死の謎に迫る山岳小説。戸田裕之訳
(ハーパーBOOKS 980円/950円)[amazon]

イアン・ファーガソン&ウィル・ファーガソン『ミステリーしか読みません』
観客の前で、出演者が殺された。ミステリー劇が本物の殺人事件に――犯人は舞台と客席、どちらかにいる? 元“空手チョップ探偵”が謎に迫る。吉嶺英美訳
(ハーパーBOOKS 1470円)[amazon]

申京淑『父のところに行ってきた』
「私」は一人娘を事故で失い、頑なな心を持て余している女性作家。故郷に一人暮らしとなった父の世話を兄弟に頼まれ、老いた父に向き合うことになる。植民地時代から朝鮮戦争、南北分断、軍事独裁、民主化抗争まで、朝鮮半島の激動の時代を生きてきた父にあらためて寄り添い、「私」が分け入っていく父の記憶のひだ、父の人生の物語。姜信子・趙倫子訳
(アストラハウス 2640円)[amazon]

草生亜紀子『逃げても、逃げてもシェイクスピア 翻訳家・松岡和子の仕事
ソ連に11年抑留された父、女手一つで子供達を守り育てた母。自身の進学、結婚、子育て、介護、そして大切な人達との別れ――人生の経験すべてが、古典の一言一言に血を通わせていった。最初は苦手だったシェイクスピアのこと、蜷川幸雄らとの交流、一語へのこだわりを巡る役者との交感まですべてを明かす宝物のような一冊。
(新潮社 1980円)[amazon]

古橋信孝『ミステリーで読む平成時代 1989~2019年
バブルの崩壊、アメリカ同時多発テロ、リーマン・ショック、阪神淡路大震災……。行き場を失った平成時代を、社会や世相を反映することの多いミステリー作品を通して振り返る。
(平凡社新書 1210円)[amazon]

フランク・グルーバー『一本足のガチョウの秘密』
〈論創海外ミステリ〉
金髪美女、債務取立人、食料品王の息子、ゴロツキ。“ガチョウの貯金箱”に群がるアブナイ奴ら。相棒サムを拉致されて孤立無援となったジョニーは難局を切り抜けられるか? “笑撃”のクライマックスが待ち受ける〈ジョニー&サム〉シリーズ長編第13作。金井美子訳
(論創社 2640円)[amazon]

ライナー・マリア・リルケ/リザ・ハイゼ『若き女性への手紙 若き女性リザ・ハイゼからの手紙16通を含む
世界中の女性を勇気づけたリルケ「若き女性への手紙」。これまで割愛され、謎に包まれていた「若き女性」からの16通、2003年初公開されたリルケ最後の一信を加え、26通の手紙の全貌を本邦初紹介。往復書簡として読むことでリルケの内省、深い側面が見えてくる。安家達也訳
(未知谷 2200円)[amazon]

マルレーン・ハウスホーファー『人殺しは夕方やってきた マルレーン・ハウスホーファー短篇集
山中でサバイバル闘争を繰り広げる女性を描いた長篇『壁』で世界を震撼させた作家の知られざる短篇小説集。収録作はオーストリアの村で生まれ育った作者の少女時代を彷彿させる。共に暮らした人々や動物たち……そして、平和な暮らしを一変させる戦争の影。「さくらんぼ」「雌牛事件」「フォン・ガイエン氏の夜の出逢い」ほか、かなしみにユーモアをまぶした切なく心あたたまる作品集。松永美穂訳
(書肆侃侃房 2310円)[amazon]

カルロス・フランス『僕の目で君自身を見ることができたなら』
〈フィクションのエル・ドラード〉
19世紀半ば、南米大陸の調査旅行に同行した画家ルゲンダスは、チリに寄港した折に美しい貴婦人カルメンと邂逅する。お互いに惹かれ合い、一線を越えた二人の前に現れたのは、ビーグル号で航海中のチャールズ・ダーウィンだった。情熱的な画家と理性的な科学者、対照的な二人の男はアンデスの高みで対峙する。史実とフィクションを巧みに織り交ぜ、見事な想像力で《愛》を描きだす野心的長編。富田広樹訳
(水声社 4950円)

ジャック・ロンドン『ザ・ロード アメリカ放浪記
1892年アメリカ、16歳のジャック・ロンドンは初めて放浪の旅に出た。列車にタダ乗りして大陸を巡る旅は、苦しいながらも自由で、信じられない出来事の連続だった。無賃乗車や騙りの技術、刑務所でのサバイバル、警察との追跡劇、忘れがたいホーボー(放浪者)の仲間たち……『野性の呼び声』で知られる作家が、若き日の冒険を語る。生気に満ちた文体と鋭い視点が光る、アメリカ文学の隠れた名作。川本三郎訳
(ちくま文庫 968円)[amazon]

梶山季之『犯罪日誌』
昭和を代表するジャーナリストであり、流行作家でもあった奇才が描く〈色〉と〈金〉をめぐる〈復讐〉をモチーフしたミステリ短篇集。日下三蔵編
(ちくま文庫 1210円)[amazon]

何敬堯/魚儂『台湾の妖怪図鑑』
台湾の妖怪はどんな名前? どんな姿? どこで何をしているの? 台湾全土を渡り歩き地元の人や原住民に丁寧な聞き取りを続けてきた著者が、108の妖怪をイラストとともに解説。数百年の長寿妖怪から現代妖怪までが大集合。出雲阿里訳
(原書房 3960円)[amazon]

三上於菟吉/竹中英太郎『銀座事件』
昭和恐慌の時代、ブルジョアとプロレタリア、妖艶な人妻と不憫な美少女。対照的な世界の間で揺れながら殺人事件に巻き込まれていく主人公廣一と周囲の人々の物語。大衆小説の巨人三上於菟吉の長編探偵小説にして人情物語。昭和5年《主婦之友》連載。竹中英太郎が手掛けた挿絵、連載予告カット、装飾やタイトル文字をすべて収録。内容
MM PROJECT文庫 2400円)

ジェイン・オースティン『説得』
周囲の説得にあって若い海軍士官との婚約を破棄したアンは、八年ののち、出世して裕福になった元婚約者に再会する。よそよそしさと気まずさのなか、二人の胸のうちは穏やかではいられず……。大人の心情を細やかに描いた著者最後の長篇。廣野由美子訳
(光文社古典新訳文庫 1430円)[amazon]

ジャナ・デリオン『嵐にも負けず』
新町長シーリア就任のせいで、シンフルの町はいまだ落ち着かない。長年、行方不明だったシーリアの怪しい夫も現われ、不穏さは増すばかり。そんななか襲来したハリケーンはとんでもない置き土産を残していっていた……。今度は、偽札に殺人?! 破天荒すぎる老婦人ふたりの助けを借りて、フォーチュンは町と自分の窮地を救えるか? 好評〈ワニ町〉シリーズ第7弾。島村浩子訳
(創元推理文庫 1210円)[amazon]

《紙魚の手帖》 vol.16
朝倉宏景、君嶋彼方、砂村かいり、額賀澪で贈る読切特集「駅×旅」。堂場瞬一、新連載スタート。読切、赤野工作。芦辺拓、高田大介、連載最終回。創元ホラー長編賞選評掲載ほか。
(東京創元社 1540円)[amazon]

エドマンド・バーク『崇高と美の起源』
巨大で危険な対象がもたらす感動「崇高」は恐怖と緊張を喚起して神経を運動させる。一方「美」は身体全体の組織を弛緩させて快を生じ、「愛」の情念を生み出し、社交をも促進する。崇高と美は市民社会構成のための主要な社会的原理であるとし、19世紀ロマン派への道を拓いた美学史上に残る不朽の名著。大河内昌訳
(平凡社ライブラリー 1870円)[amazon]

『母娘短編小説集』利根川真紀編訳
連帯、葛藤、愛、裏切り──時を超え、世代を超えて繰り返される「母の娘」と「娘の母」の物語。19世紀末から20世紀末、アメリカの女性作家によって書かれた傑作9篇。シャーロット・ギルマン、エレン・グラスゴー、フラナリー・オコナー、ボビー・アン・メイスン他
(平凡社ライブラリー 1980円)[amazon]

スティーヴン・キング『ビリー・サマーズ 上・下
凄腕の殺し屋ビリーが受けた「最後の仕事」。なんと標的を待つために小説家を装うことに!? 巨匠の企みに満ちたクライム・ノベル。白石朗訳
(文藝春秋 各2970円)[amazon]

小林信彦『決定版 世界の喜劇人』
マルクス兄弟、チャップリン、キートン、ダニー・ケイ、ウディ・アレンらの珠玉ギャグ300超を徹底解説した伝説的名著を増補加筆。『決定版 日本の喜劇人』の著者が人生を賭して喜劇文化人類学へと昇華させた聖典。
(新潮社 3960円)[amazon]

『宇治拾遺物語』
「こぶとりじいさん」として知られる「奇怪な鬼に瘤を除去される」など、現在に通じる心の動きを見事に捉えた名訳33篇を収録。町田康 現代語訳
(河出文庫 880円)[amazon]

斎藤美奈子『挑発する少女小説』
若草物語、赤毛のアン、あしながおじさん、小公女、ハイジ、大草原の小さな家、長くつ下のピッピ……大人になって読む少女小説は、発見に満ちている。あの名作は今、何を教えてくれるのか?
(河出文庫 946円)[amazon]

《ナイトランド・クォータリー》vol.35
〈特集 永劫の戦い、終わりなき恐怖〉
マイクル・ムアコック、レイ・ブラッドベリ、トマス・M・ディッシュ、グスタフ・マイリンク、T・F・ポウイス、E・ホフマン・プライス他。
(アトリエサード 2090円)[amazon]

ダン・マクドーマン『ポケミス読者よ信ずるなかれ』
嵐により陸の孤島となった会員制クラブ。そこに居合わせた私立探偵。密室殺人。古今東西のミステリからの引用……。すべては本格ミステリの舞台として完璧かと思われた。しかし――。読者を待ち受けるものは困惑か狂喜か。これはミステリなのか、それとも……。田村義信訳
(ハヤカワ・ミステリ 2860円)[amazon]

カリン・スミノフ『ミレニアム7 鉤爪に捕らわれた女 上・下
娘の結婚式に出席するため、スウェーデン北部に向かうミカエル。しかし、町の有力者の結婚相手には好ましくない噂が付きまとっていた。そして、田舎町に潜んでいた陰謀が凄惨な暴力となって噴出したとき、彼とリスベットは再会を果たす。人気シリーズ再始動。山田文・久山葉子訳
(早川書房 各1980円)[amazon]

J・N・チェイニー&ジョナサン・P・プレイジー『戦士強制志願』
些細な交通違反で三年の兵役を科せられた新兵が、過酷な訓練と身体改変を受け、戦場へ向かう。敵は正体不明の異星人の戦闘メカ。金子浩訳
(ハヤカワ文庫SF 1738円)[amazon]


▼3月刊

『中国語現代文学案内 中国、台湾、香港ほか栗山千香子・上原かおり編
中国および台湾、香港、東南アジア等の代表的な中国語作家とその作品を紹介し、広い視点で中国語圏の現代文学を知ることができるよう編集した案内書。作家ごとの「作家ファイル」「邦訳リスト」も。
(ひつじ書房 3520円)[amazon]

ハン・ガン『別れを告げない』
〈エクス・リブリス〉
済州島4.3事件を背景に、いま生きる力を取り戻そうとする女性の友人同士の再生の物語。待望の最新長篇。斎藤真理子訳
(白水社 2750円)[amazon]

ベルトン・コッブ『善人は二度、牙を剝く』
〈論創海外ミステリ〉
闇夜に襲撃されるアーミテージ。凶弾に倒れるチェンバーズ。警官殺しも厭わない恐るべき“善人”が研ぎ澄まされた牙を剥く。上司のチェヴィオット・バーマン警部も登場する警察小説の傑作。菱山美穂訳
(論創社 2420円)[amazon]

『絶景本棚3』本の雑誌編集部編
本好きにとって人の本棚を眺めることこそ最良の喜びのひとつ。36人の本棚が一冊に集結。待望の第3弾。
(本の雑誌社 2530円)[amazon]

ジェイムズ・ホッグ『義とされた罪人の手記と告白』
17世紀末のスコットランド、領主コルウァンの二人の息子は両親の不和により別々に育てられた。厳格で狂信的な母親の下で大きくなった弟ロバートは、17歳の誕生日に出会った不思議な力を持つ人物に唆されるまま罪を重ねていく。そして兄ジョージとの運命的な対決へ……。目も眩むような重層する語りによって小説の可能性を極限まで追求し、ジッドやバタイユが絶賛、現代作家にも多大な影響を与えるゴシック最後の傑作。『悪の誘惑』改題。高橋和久訳
(白水Uブックス 2530円)[amazon]

アレン・エスケンス『あの夏が教えてくれた』
ボーディは田舎町で暮らす15歳の少年。静かすぎるその町で最近大事件が起きた。町最大の企業に勤める黒人女性が不審な失踪を遂げたのだ。思いがけない事件が、ボーディの日常に不穏な影を落とす――。現実に悩みながらも、少年は鮮やかに成長する。『償いの雪が降る』の著者による心震える青春ミステリ。務台夏子訳
(創元推理文庫 1386円)[amazon]

J・L・ブラックハースト『スリー・カード・マーダー』
被害者は空から降ってきた。落下したと思われたフラットの五階の部屋は無人で、玄関ドアは内側から釘と板で封じられていた。この不可解な密室殺人を捜査するのは、サセックス警察重大犯罪班のテス・フォックス警部補。しかし彼女は、現場の壁にダーツで止められていたチラシを見て愕然とする。それはかつて、妹を救うために自分が犯した殺人を示唆していた……。密室殺人×警察小説の新シリーズ開幕。三角和代訳
(創元推理文庫 1386円)[amazon]

篠田真由美/長沖充(絵・図)『ミステリな建築 建築なミステリ』
『悪魔が来りて笛を吹く』『髑髏城』『Yの悲劇』『ねじれた家』他、名作ミステリに登場する建物+実在する不思議な建築の謎をミステリ作家×1級建築士が図面で読み解く。『建築知識』連載を書籍化。
(エクスナレッジ 2200円)[amazon]

エドワード・アンダースン『夜の人々』
終身刑で収監中の青年ボウイは、囚人仲間二人とともに刑務所を脱獄する。早速、銀行を襲い犯行を重ねるなか、逃亡先でボウイが出会ったのは、仲間の遠縁の娘キーチー。二人は互いに惹かれ合っていくが、自動車事故現場で仲間の一人が警官を射殺し、誤報からボウイは殺人犯として追われることに……。堕ちていく青春像を活写してR・チャンドラーに激賞された、ノワール小説の原点。矢口誠訳
(新潮文庫 880円)[amazon]

安部公房『(霊媒の話より)題未定 安部公房初期短編集
太平洋戦争末期、満州で激動の日日を過ごした青年は、その時何を思い、何を未来に残したのか――。漂泊民の少年が定住を切望する19歳の処女作「(霊媒の話より)題未定」、2012年新たに原稿が発見された、精神病棟から抜け出した男を描く「天使」、「壁―S・カルマ氏の犯罪」に繫がる「キンドル氏とねこ」。やがて世界に名を馳せる安部文学、その揺籃にふさわしい清新な思想を示す初期短編11編。
(新潮文庫 825円)[amazon]

松本清張『空白の意匠 初期ミステリ傑作集 二
Q新聞広告部長・植木欣作はある日の自社の朝刊を広げて目を疑う。和同製薬の広告のすぐ上に、同社の新薬を注射された患者が中毒死した記事が出ていたのだ。広告代理店と編集部の板挟みになった植木は……。組織のなかで苦悩する管理職を描く表題作をはじめ、男女の恋情と打算を描く「一年半待て」「支払い過ぎた縁談」など初期の傑作8編を収録。日下三蔵編
(新潮文庫 825円)[amazon]

マイケル・エラード『バベルをこえて 多言語習得の達人をめぐる旅
18世紀後半から現代に至るまで、歴史の流れに翻弄され続ける「言葉を学ぶ」という営みを、超多言語習得者という存在の解明を通して捉えようとする一冊。社会学、文化人類学、脳神経科学、言語学、言語教育学の複数の観点から外国語を学ぶことの本質と、人間の能力の限界点に迫る。竹内理訳
(松柏社 4180円)[amazon]

ヤーン・エクストレム『ウナギの罠』
ウナギ漁のための小部屋のような仕掛け罠のなかで、地元の大地主の死体が発見された。入り口には外から錠がかけられ、鍵は被害者のポケットに――そう、完璧な密室殺人だったのだ。さらに遺体には一匹のウナギがからみついていた。被害者をめぐる複雑な人間関係、深まる謎また謎……。「スウェーデンのディクスン・カー」の不可能犯罪ミステリ。瑞木さやこ訳
(扶桑社ミステリー 1375円)[amazon]

ロバート・アーサー『幽霊を信じますか? ロバート・アーサー自選傑作集
キャリデイ館はまさに呪われた屋敷だった。そこへやって来たのは心霊現象専門家ニック・ディーン。もちろんこれはインチキで、今回もラジオ番組の収録だった。全国の聴取者が真に迫ったニックの放送に夢中になり、そして異変は起こった! 新時代のゴースト・ストーリーとなった表題作はじめ、全10篇を収録。『ガラスの橋』が話題を呼んだ短篇の名手によるホラー/ファンタジー集。
(扶桑社ミステリー 1320円)[amazon]

ガブリエル・ガルシア=マルケス『出会いはいつも八月』
音楽家の優しい夫との間に二人の子宝にも恵まれ、愛にあふれた結婚生活をおくるアナ。だが、アナには誰にも打ち明けられない秘密があった。年に一度、母親が埋葬されているカリブ海の島をおとずれるアナは、現地の男と一晩限りの関係を結ぶことを心待ちにしているのだ。アナが刹那的な関係から、そして男たちから得たものは――。ガルシア=マルケスが最期まで情熱を注いだ未完の傑作。旦敬介訳
(新潮社 2420円)[amazon]

『合作探偵小説コレクション 6 諏訪未亡人/猪狩殺人事件日下三蔵編
横溝正史参加作品6本&戦前の作品4本を収録。【収録作品】朝から夜中までの彼と彼女/諏訪未亡人/三太郎とヘナ子/探偵作家コンクール/毒環/病院横町の首縊りの家/楠田匡介の悪党ぶり/天賞堂金塊事件/五本の手紙/猪狩殺人事件
(春陽堂書店 4180円)[amazon]

マーガレット・アトウッド『マッドアダム 上・下
謎のウィルスにより人類はほぼ絶滅した。生き残ったのはトビーやゼブら一握りの人々と、人造人間クレイカー、そして残忍な凶悪犯たち。ゼブは荒廃した街で兄アダムの手がかりを探す。世界を破滅させたウィルスの正体は何だったのか──時間はゼブが若き天才クレイクに出逢った日に遡る。壮大な物語はクライマックスへ。三部作完結篇。林はる芽訳
(岩波書店 各3630円)[amazon]

《ミステリマガジン》5月号
特集 シャーロック・ホームズを演じる 内容
(早川書房 1320円)[amazon]

ジョージ・エリオット『ミドルマーチ 上・下
19世紀後半、イギリス地方都市を舞台に展開する人間模様、キリスト教と科学がせめぎあう時代相を凝視する女流作家の魂の軌跡。エリオット円熟期の名作。福永信哲訳
(彩流社 各8800円)[amazon]

小川公代『ゴシックと身体 想像力と解放の英文学
家父長制に抗う女たちが用いたものこそ、“ゴシック”の戦術だったのではないか。メアリ・シェリー、アン・ラドクリフ、メアリ・ウルストンクラフト、ゴドウィン、マチューリン、エミリー・ブロンテ、レ・ファニュら、英国のゴシック作家たちの作品を読み解く先に見えるものとは──。目次
(松柏社 2640円)[amazon]

福田安佐子『ゾンビの美学 植民地主義・ジェンダー・ポストヒューマン
『恐怖城』『私はゾンビと歩いた!』から、ジョージ・A・ロメロを経て『バイオハザード』『ワールド・ウォー・Z』まで、ヴードゥー呪術、噛みつき、ウィルス感染など、多様な原因で人間ならざるものへと変化し、およそ100年にもわたり増殖し続けるゾンビと作品の数々。ゾンビの歴史を通覧し、おもに植民地主義、ジェンダー、ポストヒューマニズムの視点から重要作を分析する。アガンベンの生権力論を援用し、ゾンビに現代および近未来の人間像をみる.。
(人文書院 4950円)[amazon]

阿部賢一『翻訳とパラテクスト ユングマン、アイスネル、クンデラ
19世紀初頭の民族再生運動のなかで、チェコ語の復興をめざし、芸術言語たらしめようとした、近代チェコ語の祖ユングマン。ナチスが政権を掌握しようとした時代、多民族と多言語のはざまで共生を目指したユダヤ系翻訳家アイスネル。冷戦下の社会主義時代における亡命作家クンデラ。ボヘミアにおける文芸翻訳の様相を翻訳研究の観点から明らかにする。
(人文書院 4950円)[amazon]

張國立『炒飯狙撃手』
イタリアの小さな炒飯店で腕を振るう台湾の潜伏工作員、小艾はある日命令を受け、ローマで標的の東洋人を射殺する。だが根城に戻ったところを何者かに襲撃され、命を狙われる身に。一方、定年退職を12日後に控えた刑事老伍は、台湾で発生した海軍士官と陸軍士官の連続不審死を追っていた。やがて遺体に彫られた“家”という刺青が二つの事件をつなげ――。背後に蠢く巨大な陰謀とは!? 台湾発の謀略スリラー。玉田誠訳
(ハーパーBOOKS 1390円)[amazon]

ゾラン・ジヴコヴィチ『本を読む女(ひと)
セルビアの幻想小説家が贈る「ゾラン・ジヴコヴィチ ファンタスチカ」第二弾。 読書を好み本を愛で果実を頬張る女性タマラさんの日常を彩る、ごく当たり前でときどき不穏な非日常を描く連作短編集。三門優祐訳
盛林堂ミステリアス文庫 1500円)[amazon]

〈絵本 ピーターラビット〉
ビアトリクス・ポター
 川上未映子訳
『ちっちゃなねずみふじんのおはなし』
早川書房 1540円)[amazon]
『アプリイ・ダプリイのわらべうた』
(早川書房 1430円)[amazon]
『セシリ・アセリのわらべうたのおはなし』
(早川書房 1430円)[amazon]

ウ・ダヨン『アリス、アリスと呼べば』
〈となりの国のものがたり〉
洗練された文体と神秘的なスタイルで注目される韓国文学の新鋭による短編集。夢と現実が交差する迷路のような物語は、私たちの目を世界の本質へと向ける。共生の感覚を回復させる魅惑的な8つの物語。ユン・ジヨン訳
(亜紀書房 2310円)[amazon]

呉貞姫『幼年の庭』
日常にひそむ不安や欲望。家族の中で抱く孤立感。生きあぐね、もがく女たち。現代女性文学の原点となった呉貞姫の作品集。朝鮮戦争を体験した著者の幼少期が反映された「幼年の庭」「中国人街」のほか、”三十代の内面の記録”という6編を収録。清水知佐子訳
(クオン 2420円)[amazon]

エドワード・バートン゠ライト『シャーロック・ホームズの護身術 バリツ 英国紳士がたしなむ幻の武術
ホームズがライヘンバッハの滝でモリアーティ教授と対決した際に披露した伝説の護身術「バリツ」。そのルーツといわれる19世紀英国で創始された武術「バーティツ」の全貌を当時の写真と共に解説。田内志文訳/新美智士監修
(平凡社 2420円)[amazon]

池上俊一『魔女狩りのヨーロッパ史』
15-18世紀、ヨーロッパ文明がまばゆい光を放ち始めたまさにそのとき、「魔女狩り」という底知れぬ闇が口を開いたのはなぜか。その起源・広がり・終焉、迫害の実態、魔女イメージを創り上げた人たち、女性への差別――進展著しい研究をふまえ、ヨーロッパの歴史を映し出す「鏡」としての魔女と魔女狩りを総合的に描く。
(岩波新書 1100円)[amazon]

松岡正剛『千夜千冊エディション 数学的』
古今東西の数学書を読み解く。「数」の概念の誕生から、微分の発明、幾何・代数をへて、カオス理論、そして情緒としての数学に至るまで。数学という、一見すると難解な世界を「言葉」としてとらえ、理解するための一冊。
(角川ソフィア文庫 1980円)[amazon]

チョ・ナムジュ『耳をすませば』
『82年生まれ、キム・ジヨン』著者のデビュー作。抜群の聴力を持つ少年がテレビ番組のサバイバルゲームに出場し……。著者インタビューも収録。小山内園子訳
(筑摩書房 1870円)[amazon]

下薗りさ・木田綾子編著『カフカふかふか とっておきの名場面集
魅力的なキャラがいっぱい登場し、出だしも面白い。描かれる世界は謎だらけ。そんなカフカ作品のふかふかエッセンスがこの一冊に。
(白水社 1980円)[amazon]

馬伯庸『両京十五日 2  天命』
皇帝暗殺まで残り七日。宿敵・梁興甫との交戦によって分断された皇太子一行は、陸路と水路に分かれて北京を目指す。追手の猛攻はさらに激しくなり、次々と倒れていく仲間たち。逃亡先で皇太子は敵対している白蓮教徒の男と出会い、衝撃の真実を告げられる……。齋藤正高・泊功訳
(ハヤカワ・ミステリ 2530円)[amazon]

アラン・パークス『悪魔が唾棄する街』
ロックスターの奇妙な死。少女連続失踪事件。上層部から捜査妨害を受けるハリー・マッコイは、解決のため自らを犠牲にするが……。吉野弘人訳
(ハヤカワ・ミステリ文庫 1848円)[amazon]

クロエ・コルマン『姉妹のように』
著者クロエの親族だったコルマン三姉妹は、幼くしてナチの強制収容所で亡くなり、その人生の物語は空白のまま。クロエは生存者や資料をあたるうちに、彼女たちと実の姉妹だったかのような別の三姉妹の存在を知る。第2回「日本の学生が選ぶゴンクール賞」受賞作。岩津航訳
(早川書房 2420円)[amazon]

カルロス・ルイス・サフォン『マリーナ バルセロナの亡霊たち
スペインの巨匠サフォン幻の初期作。霧の都バルセロナに潜む怪奇と真実とは。少年オスカルと少女マリーナの青春と冒険の物語。木村裕美訳
(集英社文庫 1100円)[amazon]

コーマック・マッカーシー『ステラ・マリス』
1972年。21歳の数学者アリシアは、自ら望んで精神科病棟へ入院した。医師に問われるままに彼女は語りはじめる――数学と死に魅せられた自身の人生、原爆の開発チームにいた父、早世した母、そして最愛の兄ボビー。静かな対話から孤高の魂の痛みが浮かび上がる。黒原敏行訳
(早川書房 3080円)[amazon]

コーマック・マッカーシー『通り過ぎゆく者』
1980年、ミシシッピ州。サルベージダイバーのボビーは深海に沈んだ飛行機に潜るが、それ以降、周囲に不穏な影が見え隠れしはじめる。亡き妹への思いを心の奥底に抱えたまま、彼は広大で無情な世界をさまようが……。アメリカ文学の巨匠が描く喪失と受容の物語。黒原敏行訳
(早川書房 4180円)[amazon]

ジル・マゴーン『騙し絵の檻 新装版
無実の叫びもむなしく、ビル・ホルトは冷酷な殺人犯として投獄された。それから16年後、仮釈放された彼は真犯人を捜し始める。自分を罠に嵌めたのは、誰だったのか? 次々に浮かび上がる疑惑と仮説。そして、終幕で明らかにされる驚愕の真相。2000年代の10年間に翻訳された海外本格ミステリの頂点に選ばれた、犯人当ての大傑作。中村有希訳
(創元推理文庫 1144円)[amazon]

ジュリアナ・グッドマン『夜明けを探す少女は』
シカゴの高校に通う黒人の少女ボーは、卒業を機にこの街を出ると決めていた。絵の才能を活かし、盗みも撃ち合いもないどこか遠くへ行くのだ。そんなある日、姉のカティアが不法侵入の疑いで警官に射殺された。ボーは姉の無実を証明するため、現場から消えた姉の恋人を探し始める。ひたむきな少女の調査行、そして成長と旅立ちを描く、MWA賞最終候補作。圷香織訳
(創元推理文庫 1386円)[amazon]

田村明一『ペータヘンの月世界旅行』
コガネ虫のズンゼマンが、失われた6本目の脚を求めて、ペータヘン・アネリーゼ兄妹と一緒に、月を目指し、天界を旅する児童向けSFファンタジー。 大正15年に慶文堂書店から刊行された作品を全挿絵入りで復刊。解説 北原尚彦
盛林堂ミステリアス文庫 2200円)[amazon]

長山靖生『SF少女マンガ全史 昭和黄金期を中心に
1970-80年代はSF少女マンガ黄金期だった。黄金時代を中心に、数多い名作を残してきた作家たちの歩みとその魅力を、SF評論の第一人者が語りつくす。
(筑摩選書 2200円)[amazon]

探偵小説の鬼 横溝正史 謎の骨格にロマンの衣を着せて 別冊太陽編集部編
〈別冊太陽〉
名探偵・金田一耕助を生んだ探偵小説家の実像に迫る決定版。仄暗い世界へと読者をいざなうその魅力の源泉を貴重な資料で探る。文=石坂浩二、小林信彦、有栖川有栖、柳家喬太郎 内容
(平凡社 2750円)[amazon]

《本の雑誌》4月号
〈特集 マジックリアリズムに酔い痴れて〉
『百年の孤独』文庫化 新潮社インタビュー、マジックリアリズム小説ガイド座談会ほか
(本の雑誌社 825円)[amazon]

清少納言『枕草子』
「この草子、目に見え心に思ふ事を」。鋭くて繊細、少し意地悪でパンクな清少納言の誕生。栄華を誇った中宮定子を支えた女房としての誇りと痛快な批評が、笑いや哀感と同居する。歯切れ良く引き締まる新訳で楽しむ、平安朝文学を代表する随筆集。解説、年譜のほかに、位階、装束、牛車、建物などの図版資料を含む、宮廷生活ガイド付き。佐々木和歌子 現代語訳
(光文社古典新訳文庫 1562円)[amazon]

キム・グミ『敬愛の心』
1999年に韓国・仁川で実際に起きたビヤホール火災事件を題材とした、著者初の長編小説。火災が起きたとき、店の主人が金を払えと言って出入口を塞ぎ、未成年者を中心に多くの犠牲者が出たことで大きな社会問題となった。ミシン会社に勤めるサンスとキョンエの関係を軸に、火災事件の関係者たちが悲劇の記憶を抱えて生きる様を描く。すんみ訳
(晶文社 2640円)[amazon]

スタニスワフ・レム『捜査・浴槽で発見された手記』
〈スタニスワフ・レム・コレクション〉
英国各地で起こる死体消失事件の捜査は難航を極める……メタ推理小説『捜査』、地球文明崩壊後の遺跡から出土した手記に記されていた記録――疑似SF的不条理小説『浴槽で発見された手記』の2篇を収録。久山宏一/芝田文乃訳◇解説 沼野充義
(国書刊行会 3190円)[amazon]

日影丈吉『ミステリー食事学』
「名探偵も大悪漢も、一週間も物を食わなかったら、追いつ追われつどころじゃない」ミステリファン垂涎の古今東西”グルメ”随筆。
(ちくま文庫 990円)[amazon]

マフムード・ダルウィーシュ『パレスチナ詩集』
パレスチナに生まれ、亡命を生きた大詩人ダルウィーシュ。惨事と野蛮に抗し、実存的な主題として同地に向きあった。敗者の声を詩に結実させた絶唱。四方田犬彦訳
(ちくま文庫 1540円)[amazon]

『江戸の戯作絵本3』小池正胤・宇田敏彦・中山右尚・棚橋正博編
まさかの展開、忠臣蔵は美談か? うさぎが死ぬとどうなる? 常識を覆す黄表紙作家の自由奔放さ。黄表紙作者の手にかかれば、あの忠臣蔵も――。井上ひさしがSF的と評した『莫切自根金生木』など、目を見張る名作17本を収録。
(ちくま文庫 1980円)[amazon]

レイモンド・チャンドラー『プレイバック』
調査対象の女性、そして消えた死体の謎……。緻密な構造、巧みなプロットとさりげなく埋め込まれた伏線の数々。フィリップ・マーロウの生き方を確かめたい。チャンドラーの遺作を新訳で。市川亮平訳
(小鳥遊書房 2090円)[amazon]

セコイア・ナガマツ『闇の中をどこまで高く』
未知のパンデミックに襲われ、世界は一変した。余命わずかな子供たちを安楽死させる遊園地で働くコメディアンの青年、亡くなった人々との短い別れを提供するホテルの従業員、地球を離れて新天地をめざす宇宙移民船……滅びの危機を経て緩やかに回復してゆく世界で、消えない喪失を抱えながら懸命に生きる人々の姿をオムニバス形式で描く。アーシュラ・K・ル=グイン賞特別賞受賞。金子浩訳
(東京創元社 3080円)[amazon]

イヴリン・スカイ『ダムゼル 運命を拓きし者』
貧しいイノフェ公国のプリンセス、エロディに、豊かな島国オーリア国の皇子から結婚の申し込みがあった。結婚と引き換えに国を援助してくれるというのだ。オーリア国に行ってみれば、皇子は素敵だし、豪華な婚礼衣装、贅沢な料理といいことづくめ。だがエロディは、どこか違和感を感じていた。そして結婚式の夜……。貧乏国のプリンセスが機知と勇気で運命を切り開く異世界ファンタジイ。杉田七重訳
(創元推理文庫 1430円)[amazon]

クォン・ナミ『翻訳に生きて死んで 日本文学翻訳家の波乱万丈ライフ
村上春樹、村上龍、恩田陸作品などを手がける韓国の人気翻訳家がつづる厳しくも楽しい翻訳人生。読解と翻訳の違い、翻訳料ウラ話など、翻訳家を目指す人へのアドバイスも満載。藤田麗子訳
(平凡社 2750円)[amazon]

レッド・ライリー『MI6英国秘密情報部スパイ技術読本』
監視から秘密の通信手段、身の回りのものによる自己防衛術、そして情報収集術から危機回避法まで、元エージェントが分かりやすい具体例とともに案内する。序文イアン・シャープ(007/ゴールデンアイ)。木下恵訳
(原書房 1980円)[amazon]

種村季弘『江戸東京《奇想》徘徊記 新装版
粋人による「最強」の江戸・東京の歩き方―― 不朽の名著を復刊。 博覧強記の人、種村季弘が、東京の裏町30を厳選して闊歩。ポストモダン臭一色になった東京のアスファルトを一枚一枚剥がすと、江戸や明治の名残が顔をのぞかせる。新装版に際し、森まゆみ「令和版・徘徊の手引き」を収録。 
(朝日文庫 1210円)[amazon]

ジョルジュ・シムノン『ロニョン刑事とネズミ』
〈論創海外ミステリ〉
死体が持っていた財布の15万フランを狙う浮浪者“ネズミ”。彼に不審を抱くパリ九区担当のロニョン刑事。遺失物扱いされた財布を巡り、それぞれの思惑が交叉する中、事態は思わぬ展開を見せ始める。花の都パリが併せ持つ仄暗い世界を描いた〈メグレ警視〉シリーズ番外編。宮嶋聡訳
(論創社 2200円)[amazon]

ジェンティル・スラリ『ボストン図書館の推理作家』
ハンナは作家志望のレオに助言を仰ぎ、四人の男女が図書館で起きた事件を追う推理小説を執筆していた。だがレオは暴走を始め……。不二淑子訳
(ハヤカワ・ミステリ文庫 1804円)[amazon]

ジェイムズ・S・マレイ/ダン・ウェアハウス『密航者』
連続殺人事件の陪審員を務めたマリアは休暇を取って船の旅へ出る。ところが船上で次々と人が殺され、怪しい影がマリアに迫り……。北野寿美枝訳
(ハヤカワ文庫NV 1496円)[amazon]

フランク・ハーバート『デューン 砂丘の子供たち 新訳版 上・下
緑化が進むアラキスで、アトレイデス家の双 子レトとガニーマは黄金の道の幻視を観る。 伝説的傑作《デューン》シリーズ第三部新訳。酒井昭伸訳
(ハヤカワ文庫SF 各1628円)[amazon]

レイ・ブラッドベリ『とうに夜半を過ぎて』
救急車のなかで交わされる会話の戦慄、チョコレート中毒の男が神父に語った懺悔……。SFの詩人が贈るとっておきの22篇。小笠原豊樹訳
(河出文庫 1210円)[amazon]

R・D・レイン『結ぼれ』
結ぼれ、絡みあい、こんがらがり、袋小路、支離滅裂、堂々めぐり、きずな――異才の精神科医が詩の言葉として書きつけた、人間を束縛する関係性の模様。「詩人」レインの原点たる寓話性に満ちた伝説の書。村上光彦訳
(河出文庫 891円)[amazon]

『日本霊異記・発心集』
平安初期に景戒によって善悪、奇跡や怪異などを描いた最古の説話集「日本霊異記」と、鎌倉初期の鴨長明による仏教説話「発心集」。古典新訳に定評のある詩人・伊藤比呂美が両作品から厳選した現代語訳。
(河出文庫 880円)[amazon]

戸矢学『鬼とはなにか まつろわぬ民か、縄文の神か
来訪神は、鬼の姿で現れ福音をもたらし、太古の土俗神たちも、異形の鬼として荒ぶる神となるが、転じて守護神となる。怨霊、鬼道、鬼門、伝説などから、鬼は神と捉える日本人の信仰心の原像に迫る。
(河出文庫 880円)[amazon]

ジリアン・マカリスター『ロング・プレイス、ロング・タイム』
愛する夫ケリー、18歳のひとり息子トッドと、平凡で幸せな生活を送っていた離婚弁護士のジェン。10月30日に日付が変わったばかりの深夜、その人生が一変する。帰宅したトッドがジェンとケリーの目の前で、見知らぬ男性を刺し殺したのだ。トッドは逮捕され、呆然としながら眠りについたジェンが目覚めると、カレンダーは10月28日の朝に戻っていた……。タイムリープ×ミステリ×家族小説。梅津かおり訳
(小学館文庫 1342円)[amazon]

J・M・G・ル・クレジオ『ブルターニュの歌』
毎年家族で夏の数カ月間を過ごした、思い出の地ブルターニュ。水のにおい、水の色、古城での祭り、土地の人々との交流……。そして、戦時下に生を享け、戦争と共に五年を過ごしたニース。母と祖母の庇護、兄との川での水浴、まばゆい日々の記憶……。ノーベル文学賞作家が初めて語る幼少年時代。中地義和訳
(作品社 2970円)[amazon]

奈良敏行『町の本屋という物語 定有堂書店の43年
鳥取の定有堂書店は、いかにして地域の文化拠点となり、日本中から本好きや書店員が足を運ぶ「聖地」となっていったのか。名店の店主が折に触れつづった言葉から、その軌跡が立ち現れる。〈本の力〉が疑われる今まさに、手に取るべき一冊。三砂慶明編
(作品社 2420円)[amazon]

レックス・スタウト『母親殺し』
〈論創海外ミステリ〉
世界一赤ん坊(ベビー)が苦手な探偵ネロ・ウルフと、世界一女性(ベビー)が得意な助手アーチー・グッドウィンが、捨て子(ベビー)に悩める美しい未亡人を救うために捜査に乗り出す。二人の行方に待ち受ける事件とは……。家族問題に切り込んだシリーズ後期作。鬼頭玲子訳
(論創社 2750円)[amazon]

リカルド・アドルフォ『死んでから俺にはいろんなことがあった』
郵便配達をしていた俺は故郷の「くに」から逃げてきた。妻のカルラと幼い息子とともに「島」で不法滞在している。買い物をした帰りに乗っていた地下鉄が故障で止まってしまい、右も左もわからない場所で降ろされてしまった一家。なんとか家にたどり着こうとあれこれ画策するが、やることなすことすべてが裏目に出て――。周囲から存在を認められず、無視され続ける移民の親子は、果たしてどうなるのか? 木下眞穂訳
(書肆侃侃房 2310円)[amazon]

ワシーリー・グロスマン『スターリングラード 
1942年4月のヒトラーとムッソリーニ会談から、主人公の一人クルイモフがヴォルガ川を渡ってスターリングラードへ入る9月まで、5カ月未満の物語。『人生と運命』の前編となる全3巻。チェーホフを思わせる詩情、人物と心理、情景の描写、戦争の現実が胸を打つ。文学史上の金字塔。園部哲訳
(白水社 5390円)[amazon]

林奕含『房思琪の初恋の楽園』
高級マンションに住む13歳の文学好きな美少女・房思琪は、憧れの国語教師から性的虐待を受ける関係に陥り……。台湾の実話に基づく衝撃作。泉京鹿訳
(白水Uブックス 1980円)[amazon]

リーナ・ボルツォーニ『すばらしい孤独 ルネサンス期の「読む技法」
著書は魂の肖像であり、読書は古の知性との対話だった。ペトラルカ、ボッカチョ、モンテーニュら、ルネサンスの人文主義者たちを読者という観点から捉え、彼らの読書行為と著作との関係を読み解こうとする試み。宮坂真紀訳
(白水社 6930円)[amazon]

ラーシュ・ケプレル『蜘蛛の巣の罠 上・下
連続殺人をほのめかす絵葉書を公安警察のサーガ・パウエルが受け取ってから三年が過ぎたある日、国家警察長官が突如失踪、後日遺体で発見される。現場には葉書の記述どおり残された純白の薬莢。それは殺人鬼が練りあげた計画の始まりを告げていた……。北欧が誇るクライム・シリーズ最新作。品川亮訳
(扶桑社ミステリー 各1320円)[amazon]

柯宗明『陳澄波を探して 消された台湾画家の謎
1984年、台北。駆け出しの画家、阿政のもとに奇妙な依頼が持ち込まれた。古い絵画の修復だが、作者は明かせないという。阿政が恋人の新聞記者、方燕と調査に乗り出すと、長い間歴史から抹消されていた画家・陳澄波の存在が浮かびあがり……。日本統治時代の台湾に生まれ、二・二八事件で幕を閉じた苦闘の生涯を描く歴史小説。栖来ひかり訳
(岩波書店 3300円)[amazon]


▼2月刊

ラッセル・カーク『幽霊のはなし』
アメリカの政治哲学者・歴史学者にして伝統的な怪奇小説の作者として知られるラッセル・カークの短篇集。荒廃した街に、古びた屋敷のなかに、不気味な幽鬼があらわれる。おびえる女、たたかう男。恐怖とロマンが織りなす傑作6編。横手拓治訳 【収録内容】イザヤおじさん/呪われた館/弔いの鐘/リトルエジプトの地下室/影を求め/ロストレイク
(彩流社 2750円)[amazon]

アントニイ・バークリー『最上階の殺人』
閑静な住宅街、四階建てフラットの最上階で高齢女性の絞殺死体が発見されたとの報を受け、モーズビー首席警部率いる捜査班は現場に急行した。室内の状況から警察は物盗りの犯行と断定、容疑者を絞り込んでいく。しかし警察に同行したロジャー・シェリンガムは、建物内に真犯人がいると睨み、被害者の姪を秘書に雇うと調査に乗り出す。探偵小説本来の謎解きの魅力と、才気溢れるユーモア、痛烈な批評精神が奇跡的な融合を果たしたシリーズ屈指の傑作。藤村裕美訳
(創元推理文庫 1100円)[amazon]

クイーム・マクドネル『有名すぎて尾行ができない』
平凡すぎる顔が特徴の青年ポールは、恋人のブリジット、元警官のバニーと探偵事務所を始めることに。早速訪れた依頼人の女性は、国中が注目する詐欺事件の被告三人組のひとりの愛人で、その男の浮気調査をしてほしいと言う。ポールは依頼を引き受けたが、相手を尾行しては見失っているうちに、またも殺人事件に巻きこまれてしまう。『平凡すぎて殺される』に続く、ノンストップ・ミステリ第2弾。青木悦子訳
(創元推理文庫 1430円)[amazon]

夏来健次編訳『ロンドン幽霊譚傑作集』

大英帝国が文化・産業ともに大発展を遂げたヴィクトリア朝は、シャーロック・ホームズが活躍、切り裂きジャックが暗躍した近代的犯罪の黎明期でもあった。その中心となったのは生者と死者が行き交う魔都ロンドンである――『月長石』のウィルキー・コリンズが描く、若くして夫を失った美貌の女性を巡る霊的愛憎譚「ザント夫人と幽霊」ほか、ケンジントン公園からロイヤル・オペラ・ハウスなどを舞台とした13のゴースト・ストーリー。本邦初訳多数。
(創元推理文庫 1210円)[amazon]

B・S・ジョンソン『老人ホーム 一夜の出来事

ある老人施設の一夜。八人の老人と、一人の寮母。いつもどおりの夕食と作業とお楽しみ会。老人たちは体力も知力もまちまちで、歩けない人、何もわからなくなっている人もいる。それぞれが、自分だけの世界にひきこもり、過去を思い現在を思う(あるいは何も思わず?)。それでも一夜の時は流れ、八人の行動と思考はシンクロしてはまた離れてゆく。独立した九章が同時に進行するスタイルで老いの真実、人間の真実を滑稽に、残酷に、浮き彫りにする実験的小説。青木純子訳
(創元ライブラリ 1540円)[amazon]

北上次郎『冒険小説論 近代ヒーロー像100年の変遷
スティーヴンスン『宝島』から始まり『水滸伝』を経由して『南総里見八犬伝』、そして戦後――英雄なき時代に繚乱する冒険小説のオデッセイアへ。洋の東西さえ越えて、著者は膨大な資料と文献を文字通り縦横無尽に渉猟する。ただ一心に、面白い小説を追い求めて。百年の文学史のなかで切り開かれた豊饒なる小説世界、その山嶺を闊達な筆致で踏破する一大評論。第77回日本推理作家協会賞受賞。
(創元推理文庫 1650円)[amazon]

マリ=フィリップ・ジョンシュレー『あなたの迷宮のなかへ カフカへの失われた愛の手紙
カフカの恋人として知られるチェコ人女性ミレナ。カフカから彼女への手紙は後に出版されたが、失われてしまったミレナからの手紙には何が書かれていたのか。作家への愛と情熱、父や夫との葛藤、そして自身の孤独と叫び。別離後もカフカを慕い続け、強制収容所で絶命した女性の魂を、現代の作家が甦らせる。村松潔訳
(新潮クレスト・ブックス 2640円)[amazon]

リチャード・ライト『地下で生きた男』
無実の殺人の罪を着せられて警察の拷問を受け、地下の世界に逃げ込んだ男の奇妙で理不尽な体験。20世紀黒人文学の先駆者として高い評価を受ける作家の、充実期の長篇小説、本邦初訳。重要な中短篇5作品を併録した、日本オリジナル編集。上岡伸雄訳
(作品社 3960円)[amazon]

ジャクリーン・バブリッツ『わたしの名前を消さないで』
18歳の誕生日に、現金と盗んだカメラだけを持ってニューヨークにやってきたアリス。わずか1ヶ月後、彼女は遺体となって発見される。一方、36歳のルビーはハドソン川で身元不明の遺体(アリス)を発見し、とり憑かれたようになってしまう。死んだアリスの意識は現世をさまよい、ルビーが自分の短い人生と悲劇的な死の謎を解き明かすことを切に願っていた。二人の女性の人生が交差するさまを、死んだ少女の視点から描いたミステリアスなサスペンス・ストーリー。宮脇裕子訳
(新潮文庫 1155円)[amazon]

安部公房『飛ぶ男』
《飛ぶ男》の出現。目撃者は3人。暴力団の男、男性不信の女、そしてとある中学教師……。突然の電話、窓の外に浮かぶ不可解な物体、2発の銃弾、女の来訪、妙な収集癖で満ちた部屋。安部公房が最後に創造した、不条理にしてユーモラスな世界とは。死後フロッピーディスクから見つかった遺作が文庫化。本作に繋がる「さまざまな父」を併録。
(新潮文庫 649円)[amazon]

『教科書の中の世界文学 消えた作品・残った作品25選秋草俊一郎・戸塚学編
1950年代以降に国語教科書に採録された外国文学作品から25編を厳選し、採録時にカットされた箇所も含めて収録。各年代の採録作品を通して,当時の世相や国語教育を取り巻く状況に触れた解説やコラムも必見。
(三省堂 2750円)[amazon]

ベヴ・ヴィンセント『スティーヴン・キング大全』
作家生活50周年、ホラーの帝王のコンプリートガイド。キング自身が提供したプライベート写真、手書き原稿、編集者との手紙等の図版を多数収録。風間賢二訳
(河出書房新社 5478円)[amazon]

チョン・ジア『父の革命日誌』
パルチザンとして闘争に身を捧げた父の突然の死。その葬儀には思いもよらない弔問客たちが訪れる。人生の複雑さを称える傑作長篇。橋本智保訳
(河出書房新社 2310円)[amazon]

アンナ・カヴァン『眠りの館』
昼の光を夜の魔法に変えて――夜の言葉で紡がれた、幻影が織りなす異色の自伝的小説。安野玲訳
(文遊社 2750円)[amazon]

ロイス・ローリー『ヴィンデビー・パズル』
1952年、北欧の湿地で見つかった少女の遺体はなにを物語るのか? 『ギヴァー』四部作で世界的に著名なストーリーテラーの最新作。考古学・法医人類学の最新知見と帝政期ローマの民族誌をくみあわせ、古代ゲルマン世界を生きた名も知れぬ「女子供」の歴史=物語を紡ぎだす。島津やよい訳
(新評論 2420円)[amazon]

ジョルジュ・ペレック『さまざまな空間 増補新版
あのベッドの狭さ、部屋の狭さ、冷めてしまった濃いお茶の舌に残る苦さ。机上から宇宙にいたるあらゆる空間を、言葉遊びやパロディを織り交ぜながら、ときに哲学的に、ときに遊び心たっぷりに綴る、奇妙で美しいエッセイ。塩塚秀一郎訳
(水声社 3850円)[honto]

《SFマガジン》4月号
特集 BLとSF 2
(早川書房 1320円)[amazon]

尾崎俊介『アメリカは自己啓発本でできている ベストセラーからひもとく
アメリカンドリームからスピリチュアルまで、建国の父フランクリン『自伝』から始まる自己啓発書のベストセラーから見えるアメリカ。
(平凡社 3080円)[amazon]

式水下流『特撮に見えたる妖怪』
妖怪をモチーフにしたキャラクターが登場する各年代の特撮作品を紹介。妖怪については、古典や民話、また同時代の児童向け雑誌や図鑑、関連資料から横断的に探り尽くす。資料編は、妖怪に関する特撮や映画などの映像作品と刊行物をまとめた年表、特撮作品別の登場妖怪一覧、妖怪別の特撮作品一覧の3つを収録。
(文学通信 2200円)[amazon]

オマル・ハイヤーム『トゥーサン版 ルバイヤート』フランツ・トゥーサン編
生と死と運命の瞑想、薔薇と盃の愉楽——聖書と並ぶ全世界的な古典『ルバイヤート』待望の新訳版。原作の感覚と感情を見事に伝えることを完璧な技量で成し遂げたと評される、吹きゆく微風のように軽やかな、フランツ・トゥーサンによる大胆かつ流麗なフランス語散文訳版からの初めての邦訳。全170首を完訳、挿絵も多数収録。高遠弘美訳
(国書刊行会 2860円)[amazon]

ウィリアム・シェイクスピア『新訳 テンペスト』
邪悪な弟に公爵位を奪われ、娘ミランダとともに島流しにされたプロスペローは、ナポリ王と弟への復讐を誓い、12年後、魔法で大嵐を起こし、彼らを載せた船を難破させて島に上陸させるが……。赦しと再生、そして植民地支配を描いたシェイクスピア最後の傑作。河合祥一郎訳
(角川文庫 968円)[amazon]

ホレイショ・アルジャー『ぼろ着のディック』
1800年代のニューヨーク。路上で暮らす靴磨きの少年ディックは、無一文から成功の階段をのぼり始める。主人公の勤勉、誠実、節約思考、向上意欲は、1867年の刊行以来アメリカ国民に立身出世のバイブルとして読まれてきた。畔柳和代訳
(角川文庫 1034円)[amazon]

ベン・マッキンタイアー『キム・フィルビー かくも親密な裏切り
伝説的スパイ、キム・フィルビーについては多くの書物が書かれ、数々の小説のモチーフともなってきたが、本書はまったく新たな視点――フィルビーと無二の親友だったMI6同僚のニコラス・エリオットとの関係に光を当てること――で、厚みのあるフィルビー像を描き出している。読めば読むほど、スパイ活動の知られざる実態とともに、人間心理の不可解さに驚愕すること必至。ジョン・ル・カレによる「あとがき」を付す。
(中公文庫 1650円)[amazon]

劉慈欣『三体』
文化大革命で父を惨殺され、人類に絶望した科学者・葉文潔。彼女がスカウトされた軍事基地では、人類の運命を左右するプロジェクトが進行していた。数十年後、科学者の連続自殺事件を追って謎の学術団体に潜入したナノテク素材の研究者・汪淼を、怪現象〈ゴースト・カウントダウン〉が襲う!そして、汪淼が入り込むVRゲーム『三体』の驚くべき真実とは? 大森望・光吉さくら・ワン チャイ訳/立原透耶監修
(ハヤカワ文庫SF 1210円)[amazon]

南伸坊『仙人の桃』
余白を楽しむ、大人のマンガ。奇妙でおかしな中国怪異の世界を描いた『仙人の壺』『李白の月』を合本、新作描き下ろし作品を収録。
(中央公論新社 3300円)[amazon]

保阪正康『松本清張の昭和史』
松本清張の膨大な仕事のなかでも、同時代史に取り組んだ『昭和史発掘』『日本の黒い霧』は重要な柱といえる。清張は、軍部をはじめとする国家権力、二・二六事件の将校たちにどのような眼差しをむけていたか。占領期に起きた不可解な事件をいかに捉えていたか。没後30年を経て、清張史観はいかに評価されるべきか。その核心を平易な文体で伝える。
(中央公論新社 2420円)[amazon]

アレックス・マイクリーディーズ『ザ・メイデンズ ギリシャ悲劇の殺人
セラピストのマリアナは、姪のゾーイに親友が殺されたと相談を受ける。犯人は大学教授のフォスカだと言い張るゾーイだったが……。坂本あおい訳
(ハヤカワ・ミステリ文庫 1870円)[amazon]

ローラ・パーセル『象られた闇』
ヴィクトリア朝バース。病を抱えながらも小さな切り絵店を営むアグネスに、不穏な影が迫る。彼女に肖像画を依頼した客が次々と謎の死を遂げているのだ。真相解明のためアグネスが縋ったのは、11歳の霊媒師パールだった。降霊会を繰り返す彼女を待つ運命とは――。国弘喜美代訳
(早川書房 4070円)[amazon]

エーリヒ・ケストナー『独裁者の学校』
「ところで俺は、替え玉何号なんでしょうか?」 暗殺された大統領の替え玉を養成する「独裁者の学校」。大臣たちは彼らを使い回して権力の座に居座ろうとするが、思わぬ政変が起きる。果たしてその行方は……。ナチ時代を生き抜いたケストナーが痛烈な皮肉で独裁体制のメカニズムを暴く。反骨の作家、渾身の戯曲。酒寄進一訳
(岩波文庫 715円)[amazon]

ベンハミン・ラバトゥッツ『恐るべき緑』
〈エクス・リブリス〉
科学の常識を塗り替えた学者たちの奇妙な人生と、それぞれに訪れた発見/啓示の瞬間。チリの新鋭による、前代未聞の〈科学小説〉。第二次大戦末期、ナチの高官らが所持した青酸カリと、青色顔料をめぐる歴史、第一次大戦の塹壕戦で用いられた毒ガス兵器の開発者の物語「プルシアン・ブルー」。初めてブラックホールの存在を示唆した天文学者の知られざる人生「シュヴァルツシルトの特異点」。不世出の数学者グロタンディークと、日本人数学者、望月新一の人生の交錯を空想する「核心中の核心」他。松本健二訳
(白水社 2750円)[amazon]

『読書アンケート2023 識者が選んだ、この一年の本
100名以上の有識者が、新刊・既刊を問わず、2023年に読んだ本のなかから印象深かったものを挙げる。
(みすず書房 880円)[amazon]

ルー・バーニー『7月のダークライド』
遊園地で働く青年ハードリーはある日、煙草の火傷痕の残る幼い姉弟を見かける。虐待を通報するも当局に相手にされなかった彼は、証拠を掴むため素人探偵まがいの調査を開始する。見えてきたのは裕福なのに荒れ果てた家と、弁護士の父親の背後にちらつく麻薬組織の影……。MWA賞受賞作家の瑞々しい青春ノワール。加賀山卓朗訳
(ハーパーBOOKS 予価1230円)[amazon]

フランチェスコ・コロンナ『ポリフィルス狂戀夢』
嗚乎ポリア、君何處にかあらむ!――龍や猛き獣に苛まれ乍らも宿命の女精(ファム・ファタール)を追い求め、独り彷徨うは廃墟か仙境か、将又不可思議な機械構造か。戀に病い愛に跪く男の地獄天國ないまぜとなっためくるめく内宇宙の道行きを描く冒険的ルネサンス文學の妖星、待望の刊行。高山宏訳
(東洋書林 8250円)[amazon] [honto]

馬伯庸『両京十五日 1 凶兆』
15世紀の中国、明の時代。北京から南京に遣わされた皇太子は爆発による襲撃に襲われる。さらに北京にいる皇帝も命を狙われていることを知った皇太子は、幾度と襲い掛かってくる刺客から逃れつつ、南京から北京へ向かう幾千里にもわたる決死行が始まる――。齋藤正高・泊功訳
(ハヤカワ・ミステリ 2420円) [amazon]

《MONKEY》vol.32 特集 いきものたち
イノシシ、カエル、イヌなど「いきもの」が登場する創作を集めた特集。 ジョン・アーヴィングの小説内小説の柴田元幸による新訳や、 岸本佐知子が本特集のために選び訳したステファニー・ヴォーンの短篇のほか、 伊藤比呂美や小山田浩子の書き下ろし作品から、長場雄の絵物語などを掲載。 さらに、トルーマン・カポーティ「夜の樹」を村上春樹による新訳で収録。
(スイッチパブリッシング 1320円)[amazon]

ヨハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテ『若きウェルテルの悩み』
ウェルテルは恋をした。許嫁のいるロッテに。故郷の友への手紙に綴るのは、ロッテと過ごす日々と溢れんばかりの生の喜び。その叶わぬ恋の行きつく先とは……。ドイツ文学、否、世界文学史に燦然と輝く青春文学の傑作。身悶え不可避の不朽の名作。酒寄進一訳
(光文社古典新訳文庫 858円)[amazon]

『幻想と怪奇15 霊魂の不滅 心霊小説傑作選
19世紀半ばから20世紀初頭までの、降霊術や輪廻転生などをテーマにした心霊小説傑作選。文豪の知られざる逸品から、パルプ・ファンタシーの埋もれた名作まで、多彩な霊魂の物語を、気鋭の作家陣の書き下ろしにともに。エドガー・ジェプスン、マージョリー・ボウエン、キプリング、ブラックウッド、シーベリー・クイン、リヒャルト・フォス、H・ジェイムズ他。牧原勝志(幻想と怪奇編集室) 編
(新紀元社 2420円)[amazon]

アガサ・クリスティ『二人で探偵を 新訳版
結婚して幸せな生活を送っていたトミーとタペンスは、上司の提案で〈国際探偵社〉の経営者になりすますことに。探偵社に持ちこまれる難事件、怪事件の数々を、トミーとタペンスは古今東西の名探偵の捜査法を真似て解決していく。野口百合子訳
(創元推理文庫 946円)[amazon]

ネレ・ノイハウス『友情よここで終われ』
著名な編集者ハイケが失踪した。彼女の家のドアには血の跡があり、二階には鎖でつながれた老人がいた。捜査が始まり、老人は彼女が介護していた父親だと判明、血痕はハイケのものと断定された。彼女に剽窃を暴露されたベストセラー作家が被疑者に浮かぶが……。出版業界をめぐる事件に刑事オリヴァー&ピアが挑む。酒寄進一訳
(創元推理文庫 1760円)[amazon]

ラヴィ・ティドハー『ロボットの夢の都市』
〈創元海外SF叢書〉
太陽系を巻き込んだ大戦争から数百年。宇宙への脱出を夢見るジャンク掘りの少年、それ自体がひとつの街になっている移動隊商宿で旅する少年、そして砂漠の巨大都市の片隅で見慣れぬロボットと出会った女性と警察官。彼らの運命がひとつにより合わさるとき、かつて一夜にしてひとつの都市を滅ぼしたことのある戦闘ロボットが、数世紀の眠りから目覚めて……世界幻想文学大賞作家が贈る、どこか懐かしい未来のSF物語。茂木健訳
(東京創元社 2640円)[amazon]

《紙魚の手帖》vol.15
貫井徳郎、待望の新連載『不等辺五角形』。伊吹亜門、今村昌弘、北山猛邦、白井智之が贈る最新短編。サマンサ・ミルズ、2023年ヒューゴー賞受賞作掲載。創立70周年記念企画スタートほか。
(東京創元社 1540円)[amazon]

片山廣子『片山廣子随筆集 ともしい日の記念』
つれづれから掬い上げた慎ましい日常の中にこそ揺らぎない生の本質が潜んでいる、とその人は知っていた。美しくゆかしい随筆と短歌を集めた一冊。早川茉莉編
(ちくま文庫 990円)[amazon]

青山南『本は眺めたり触ったりが楽しい』
積ん読したり、拾い読みしたり、歩いて読んだり、寝転んで読んだり、バスで読んだり。本はどう読んでもいい! 読書エッセイの名著。
(ちくま文庫 880円)[amazon]

種村季弘『種村季弘コレクション 驚異の函』
世界のからくりや不思議を語らせたら随一、教え子であり本書編者でもある諏訪哲史をして「日本の人文科学が世界に誇るべき〈知の無限迷宮〉の怪人」と言わしめた種村季弘──本書はその博覧強記のエッセンスをぎゅっと詰め込んだアンソロジーだ。「怪物の作り方」、「吸血鬼幻想」、「少女人形フランシーヌ」、「ケペニックの大尉」などの代表作はもちろん、著者の素顔が透けて見える自伝的随想・講演・読書論・対談まで網羅。没後20年、インチキと不寛容に満ちた現代に放つ文庫オリジナル。諏訪哲史編
(ちくま学芸文庫 1430円)[amazon]

『江戸の戯作絵本2』小池正胤・宇田敏彦・中山右尚・棚橋正博編
いじり倒すのが身上の黄表紙はお上にも一切忖度なし。幕府の改革政治も徹底的に茶化す始末。しかし自らも武士である作者たちは処罰されることに。江戸時代の黄表紙の傑作を集成。
(ちくま学芸文庫 1980円)[amazon]

『SFが読みたい! 2024年版』SFマガジン編集部編
年間ベストSF発表、ベスト1作家からのメッセージ、サブジャンル別ベスト、この一年のSF関連トピック、2024年の各出版社のSF書籍刊行予定、SF作家たちの最新予定「2024年のわたし」、SF関連書籍&DVD目録などでおくる恒例のガイドブック最新版。
(早川書房 1166円)[amazon]

片岡真伊『日本の小説の翻訳にまつわる特異な問題 文化の架橋者たちがみた「あいだ」
日本文学は「どうしても翻訳できない言葉」で書かれてきた、と大江健三郎は言う。事実、谷崎も川端も三島も、英訳時に改変され、省略され、時に誤読もされてきた。なぜそのまま翻訳することができないのか。どのような経緯で改変され、その結果、刊行された作品はどう受け止められたのか。1950-70年代の作家、翻訳者、編集者の異文化間の葛藤の根源を、米クノップフ社のアーカイヴ資料等をつぶさに検証し、初めて明らかにする。
(中公選書 2750円)[amazon]

西野嘉章『チェコ・アヴァンギャルド ブックデザインにみる文芸運動小史
20世紀初頭のプラハで生まれた躍動的な芸術交流を俯瞰、「生活とアート」の統合を目指した運動にチェコ・カルチャーの魅力を探る。
(平凡社ライブラリー 2420円)[amazon]

アヴラム・デイヴィッドスン『エステルハージ博士の事件簿』
架空の小国の難事件を博覧強記のエステルハージ博士が解決。唯一無二の異色作家による、ミステリ、幻想小説、怪奇小説を超えた傑作。世界幻想文学大賞受賞。池央耿訳/解説 殊能将之
(河出文庫 1320円)[amazon]

チョン・イヒョン『優しい暴力の時代』
いま韓国で「時代の記録者」といわれる屈指の作家による、代表作となる短篇集。絶望も希望も消費するいまを生きる人々の、生活の鎮魂歌。解斎藤真理子訳
(河出文庫 1210円)[amazon]

小泉八雲『怪談・骨董』
「耳なし芳一の話」「雪女」等を収める、小泉八雲(ラフカディオ・ハーン)の『怪談』『骨董』を、ハーン研究の第一人者が個人完訳。平川祐弘訳
(河出文庫 990円)[amazon]

サラ・パレツキー『コールド・リバー 上・下
ヴィクが救出した火傷を負った少女は病院から姿を消した。少女から渡されたものをよこせと、警察は執拗にヴィクに迫るが……。山本やよい訳
(ハヤカワ・ミステリ文庫 各1430円)[amazon]

カミラ・レックバリ/ヘンリック・フェキセウス『罪人たちの暗号 上・下
ミーナら特捜班を嘲笑うように連続する誘拐殺人。次の犯行はいつ? ストックホルムを舞台に犯人との頭脳戦が始まる。好評第二弾。富山クラーソン陽子訳
(文春文庫 各1375円)[amazon]

ロバート・ベイリー『ザ・ロング・サイド』
テネシー州プラスキ。高校のアメリカンフットボール・チーム〈ボブキャッツ〉がライバル校を相手に歴史的な勝利を収め、町中が熱狂した翌朝、バス置き場で死体が見つかった。被害者は地元の人気バンドの女性シンガー、容疑者は彼女の恋人で〈ボブキャッツ〉のスター選手。証拠はどれも決定的に見えたが……。弁護士ボーセフィス・ヘインズ・シリーズ完結篇。吉野弘人訳
(小学館文庫 1320円)[amazon]

前田恭二『文画双絶 畸人水島爾保布の生涯
谷崎潤一郎『人魚の嘆き・魔術師』の挿絵と装幀を手がけて日本のビアズレーとも呼ばれ、長谷川如是閑に大阪朝日新聞記者として迎えられ画・文で活躍、武林無想庵や佐藤春夫と交友、岡本一平らと漫文『東海道漫画紀行』を刊行。明治・大正・昭和にわたり、文学・美術の分野に大きな足跡を残しながら忘却の彼方に消し去られた畸人の魅力を、十年の歳月をかけて調べ上げ、執念と使命感を以て掘り起こす。
(白水社 15,400円)[amazon]

ライアン・ステック『燎原の死線』
米国海兵隊特殊部隊のマシュー・レッドは、FBIの要請で生物兵器専門家の捕獲作戦に参加するべく基地へと向かうが、その途上で謎の女に薬を盛られて意識を失う。レッド抜きで現地へ赴いた小隊は待伏せに遭って全滅。レッドは情報漏洩の廉で逮捕され、非名誉除隊の処分に。全てを奪われた男の復讐が今始まる。棚橋志行訳
(扶桑社ミステリー 各1430円)[amazon]


▼1月刊

芦辺拓/江戸川乱歩『乱歩殺人事件 「悪霊」ふたたび
謎めいた犯罪記録の手紙で語られるのは、美しい未亡人の死体が蔵の二階で発見された密室殺人、遺体の傍で見つかった不可解な記号、怪しげな人物が集う降霊会、そして新たに「又一人美しい人が死ぬ」という予告……。江戸川乱歩のいわくつきの中絶作『悪霊』(1933)を芦辺拓が書き継ぎ、完結させる。そして物語は更なる仕掛けへ。
(KADOKAWA 2090円)[amazon]

マルコ・バルツァーノ『この村にとどまる』
北イタリア、チロル地方、ドイツ語圏の一帯はムッソリーニの台頭によりイタリア語を強制され、ヒトラーの移住政策によって村は分断された。母語を愛し、言葉の力を信じるトリーナは、地下で子どもたちにドイツ語を教え、ダム建設に反対する夫とともに生きてゆくのだが……。イタリア文学界の最高峰、ストレーガ賞の最終候補作。関口英子訳
(新潮クレスト・ブックス 2365円)[amazon]

アイザック・バシェヴィス・シンガー『モスカット一族』
20世紀初頭のポーランド、ワルシャワのユダヤ人社会。実利に聡く独善的で気難しい絶対的な長がいた栄華から三世代を経て、伝統的家族社会は内部から崩壊していく。その間、ポーランド独立回復を目指す数度の蜂起、ロシア革命、第一次世界大戦と独立回復、ポーランド・ソヴィエト戦争、ナチスのポーランド侵攻、第二次世界大戦……と続く激動の時代、近代化と戦争に揺れる一族を描く大長編。大﨑ふみ子訳
(未知谷 6600円)[amazon]

フランク・グルーバー『レザー・デュークの秘密』
〈論創海外ミステリ〉
一文無しになった凸凹コンビが製革工場に就職。 出勤初日から殺人事件に遭遇し、“しぶしぶ”事件解決に乗り出すサム&ジョニー。そんな二人に忍び寄る怪しい影の正体とは……。命の危機に晒された二人の運命や如何に? 抱腹絶倒のユーモア・ミステリ。中川美帆子訳
(論創社 2640円)[amazon]

マイケル・ホーム『奇妙な捕虜』
〈論創海外ミステリ〉
ドイツ人捕虜を翻弄する数奇な運命(さだめ)。謀略の飛行機事故や英国空軍パイロット射殺事件が見え隠れする中、〈奇妙な捕虜〉の過去が徐々に明かされていく。クリストファー・ブッシュが別名義で書いた異色ミステリ。福森典子訳
(論創社 3740円)[amazon]

ホレス・マッコイ『屍衣にポケットはない』
地方紙『タイムズ・ガゼット』の人気記者ドーランは、報道より広告収入重視の社の体制と縁を切り、自ら雑誌を創刊。告発記事を次々発表することで報道の信義を貫き、多くの読者を獲得する。そんな彼に対し、古巣の新聞社からの圧力、資金難、告発された関係者による雑誌強奪騒動など、幾多の苦難が立ちはだかる――。真実のみを追究する記者の孤闘を描き、疾走する人間像を浮き彫りにする名作。田口俊樹訳
(新潮文庫 825円)[amazon]

『ドイツ・ヴァンパイア怪縁奇談集』森口大地 編訳
〈ルリユール叢書〉
ジョン・ポリドリ『ヴァンパイア』ブームのさなか、1820~30年代にかけて発表された、ラウパッハ『死者を起こすなかれ』、シュピンドラー『ヴァンパイアの花嫁』など、怪縁が織りなすドイツ・ヴァンパイア文学傑作短編集。本邦初訳。訳者解題「ヴァンパイア文学のネットワーク」。
(幻戯書房 4620円)[amazon]

ジョン・バカン/エドワード・ゴーリー絵『三十九階段』
アフリカ帰りの鉱山技師リチャード・ハネーは、ロンドンの生活に退屈しきっていた。しかし、たまたま知り合った男が殺され、国際的スパイ組織の陰謀に巻き込まれてしまう。世界大戦の危機をはらむ陰謀を阻止する手掛かりは、ただひとつ、「三十九階段」という言葉のみ。スパイ小説の原点ともいうべき古典名作を、エドワード・ゴーリーの10点のイラスト入りで贈る魅惑の一冊。小西宏訳
(東京創元社 1980円)[amazon]

大矢博子『クリスティを読む! ミステリの女王の名作入門講座
没後45年を経ても変わらぬ人気を保ち続ける、ミステリの女王アガサ・クリスティ。カルチャー講座「アガサ・クリスティを読む」の講師である書評家が、名探偵、舞台と時代、人間関係、そして騙しのテクニックに焦点を当て、各章でおすすめ作品を紹介しながら魅力を丁寧に語る。「読者をいかにミスリードするか」の章では、驚くべきテクニックをじっくり解説。この一冊でクリスティのすごさを実感できる、入門に最適な一冊。
(東京創元社 1980円)[amazon]

ジェレミー・ドロンフィールド『飛蝗の農場 新装版
ヨークシャーの荒れ野で農場を営むキャロルのもとに、奇妙な男が転がりこむ。不運な経緯から彼女は男に怪我を負わせ、回復までの宿を提供することにしたのだが、意識を取り戻した男は、過去の記憶がまるでないと言う。幻惑的な冒頭から忘れがたい結末まで、圧倒的な筆力で紡がれる悪夢と戦慄の謎物語。ミステリランキング1位に輝いた驚嘆のデビュー長編。越前敏弥訳
(創元推理文庫 1540円)[amazon]

ウィリアム・ブルワー『レッド・アロー』
デビュー作で思わぬ反響を呼んだ作家。次作の契約が決まるも原稿は一文字も進まず、前金は旅行に消えた。ある物理学者の回想録ゴーストライターの仕事が決まるも学者は失踪。このまま消えるかサイケデリック療法か。窮地に立たされた作家の精神世界を巡る長篇。上野元美訳
(早川書房 2970円)[amazon]

アン・ハーゲドーン『スリーパー・エージェント 潜伏工作員
オッペンハイマー率いる核開発計画施設に潜入した〈原爆スパイ〉の秘密。ソ連はなぜアメリカによる広島・長崎への投下からわずか4年という短期間で原爆を開発できたのか? その鍵を握るアメリカ生まれの赤軍スパイ、コードネーム〈デルマー〉は、いかにして最高機密取扱資格を得て〈マンハッタン計画〉に潜入したのか? 米国人ジャーナリストが秘密の生涯に迫る。MWA賞(犯罪実話部門)候補作。布施由紀子訳
(作品社 2970円)[amazon]

ユーリー・マムレーエフ『穴持たずども』
〈ロシア語文学のミノタウロスたち〉
1960年代のモスクワ郊外。殺人を重ねながら魂や死、彼岸の世界を追求する主人公フョードル。彼がねぐらとするレベジノエ村の共同住宅には、世界を不条理で満たさなければ気がすまない妹クラーワと、フォミチェフ家の人々、そこに「形而上派」の面々が合流、さらに敬虔なキリスト者ながら死の間際に鶏になってしまう老人やセクトに属さず独自の道を歩む去勢者らも加わり……。 社会主義体制下のソ連ロシアのアンダーグラウンドで息づいたもうひとつの精神世界。生と性、死と不死、世界、神、自我をめぐる「異常者」たちの物語。神秘主義やエゾテリスムを湛えるソ連地下文学の巨匠マムレーエフの怪作。松下隆志訳
(白水社 4180円)[amazon]

岡崎武志『昨日も今日も古本さんぽ 2015-2022
毎月未踏の古本屋に足を運び、新しい古本屋の誕生に歓喜し、時には老舗古書店の閉店の報にショックを受けながらも、古本屋探訪は今日も続く。 『日本古書通信』の連載8年間をまとめた古本屋探訪ルポの集大成。
盛林堂ミステリアス文庫 3000円)[amazon]

アン・スウェイト『秘密の花園の向こうへ  フランシス・ホジソン・バーネットの生涯
『小公子』『小公女』『秘密の花園』の作者バーネットの栄光と失意に満ちた波乱の生涯を辿った伝記。山内玲子訳
(国書刊行会 4180円)[amazon]

H・C・アンデルセン『夜ふけに読みたい 雪夜のアンデルセン童話』
人気「夜ふけに読みたいおとぎ話」シリーズ最新作はアンデルセン。古典童話の新訳をアーサー・ラッカムの美しい挿絵とともに。吉澤康子・和爾桃子訳
(平凡社 2420円)[amazon]

〈絵本 ピーターラビット〉
ビアトリクス・ポター
 川上未映子訳
『こぶたのロビンソンのおはなし』
早川書房 2090円)[amazon]
『いじのわるいうさぎのおはなし』
(早川書房 1430円)[amazon]

S・エリザベス『暗闇の美術 陰鬱でもの悲しく怪奇な作品集
目を背けたくなる人間の陰鬱さ、物悲しさ、怪奇さをテーマにした芸術作品ばかりを200点以上も紹介する、美しくもダークな芸術作品集。歴史的名画から現代アートまで、数世紀の時空を超えて厳選された「恐ろしいものやグロテスクなもの」が、見るものを強烈に引き込む。丁寧な作品解説とテキストがダークアートへの道案内となる、見始めたら止められない一書。
(求龍堂 3960円)[amazon]

《ミステリマガジン》3月号
特集=繚乱たる華文ミステリ
(早川書房 1320円)[amazon]

ジョアン・トンプキンス『内なる罪と光』
幼馴染のダニエルを殺し、自殺したジョナ。二人に何があったのか……。悲しみに沈む町に現れた謎の少女は妊娠しているようだった。矢島真理訳
(ハヤカワ・ミステリ文庫 1848円)[amazon]

紫金陳『検察官の遺言』
地下鉄で拘束された張弁護士のスーツケースには江検察官の遺体が入っていた。犯行を認めていた張は法廷で突如無罪を主張して……。大久保洋子訳
(ハヤカワ・ミステリ文庫 1232円)[amazon]

アガサ・クリスティー『ミス・マープルの名推理 火曜クラブ』
〈ハヤカワ・ジュニア・ブックス〉
作家に画家、警視総監……職業も年齢も様々な男女6人が推理合戦を楽しむ集まり「火曜クラブ」。ミス・マープルは、メンバーの中でも一番地味なふつうのおばあさん。でも推理力は誰にも負けない。13作品を収録した短篇集。矢沢聖子訳
(早川書房 1980円)[amazon]

劉慈欣『流浪地球』
地球の自転がストップし、人類は別の星系に移住する決断を下す。連合政府は地球エンジンを構築し、地球を太陽系から脱出させる計画を立案、実行に移す。こうして、悠久の旅が始まった。「流浪地球」他収録のSF短篇集。大森望・古市雅子訳
(角川文庫 1320円)[amazon]

土屋隆夫『推理小説作法 増補新版
推理小説とは何か? そしてその作法とは? 日常的な発想法のヒント、創作メモの取り方、プロット作り、ストーリイの構成……鮎川哲也とともに戦後の本格ミステリシーンを支えた巨匠による超実践的創作指南。多くの実作者、読者から支持を得てきた定評ある名著に、自身の作家人生をふりかえる晩年のインタビュー、エッセイを増補。
(中公文庫 1100円)[amazon]

アーネスト・ヘミングウェイ『老人と海』
老漁師サンティアーゴには、もう84日ものあいだ釣果がなかった。ある日、一人で漁に出た彼の綱に巨大なカジキがかかった。そこから、サンティアーゴとカジキの命を賭けた闘いが始まる。簡潔な文体と研ぎ澄まされた表現で、大いなる自然と自らの人生に対峙する男の姿を力強く描きだす、ヘミングウェイの傑作。越前敏弥訳
(角川文庫 770円)[amazon]

宮田登『新版 都市空間の怪異』
妖怪変化のイメージを作り出したのは、都市住民のこころである――民俗学者宮田登が、都市空間に潜む怪異に迫る。都市伝説からホラー小説まで、江戸から現代まで、都市怪異譚を知り尽くせ。
(角川ソフィア文庫 1320円)[amazon]

カイ・バード/マーティン・J・シャーウィン『オッペンハイマー 上・中・下
「原爆の父」と呼ばれた天才物理学者J・ロバート・オッペンハイマーの生涯を丹念に描くことで、人類にとって国家とは、科学とは、平和とは何かを問う。全米で絶賛された傑作評伝、文庫化。2006年ピュリッツァー賞受賞作。河邉俊彦訳
(ハヤカワ文庫NF 各1408円)[amazon]

森見登美彦『シャーロック・ホームズの凱旋』
「天から与えられた才能はどこへ消えた?」舞台はヴィクトリア朝京都。洛中洛外に名を轟かせた名探偵ホームズが……まさかの大スランプ!? 謎が謎を呼ぶ痛快無比な森見劇場、開幕。
(中央公論新社 1980円)[amazon]

火野葦平『比島民譚集 フィリピンの島々に伝わる話
可笑しくて悲しく、少し残酷。『麦と兵隊』の作家火野葦平がフィリピン従軍中、「比島の民情を知るため」仕事の合間を縫って民話を採集し翻訳した、近いけれど遠い島々に伝わる奇妙な話。1945年刊を復刊。挿画=川上澄生
(国書刊行会 2970円)[amazon]

マイケル・オンダーチェ『イギリス人の患者』
砂漠に墜落し燃え上がる飛行機から生き延びた男は顔も名前も失い、廃墟となった屋敷に辿り着いた。ひとり屋敷に残って男を看護する女性ハナは、彼の語る物語に惹かれていく。世界からとり残されたような場所にひとり、またひとりと訪れる、戦争の癒えぬ傷を負ったひとびと。それぞれの哀しみの源泉が美しい言葉で紡がれるとともに〈イギリス人の患者〉の秘密もまたゆるやかに、しかし抗いがたい必然性をもって解かれてゆく。ブッカー賞受賞作。土屋政雄訳
(創元文芸文庫 1320円)[amazon]

アーナルデュル・インドリダソン『悪い男』
レイキャヴィクのアパートの一室で、刃物で喉を切り裂かれた若い男の死体が発見された。男はレイプドラッグを所持しており、どうやら酒に酔った女性にクスリを飲ませて意識を失わせレイプをしていた常習犯らしいことがわかる。被害者に復讐されたのか? 犯罪捜査官エーレンデュルが行方不明のなか、部下のエリンボルクは現場に落ちていた一枚のスカーフの香りを頼りに捜査を進める。北欧ミステリの人気シリーズ第7弾。柳沢由実子訳
(東京創元社 2420円)[amazon]

アレッサンドロ・バルベーロ『ダンテ その生涯
詩人、騎士、政治家、外交使節、流浪の食客……。ダンテとは、いったい何者だったのか? イタリアを代表する歴史家が、中世という激動の時代を生きたダンテの人生を徹底的に分析した評伝。鈴木昭裕訳
(亜紀書房 3520円)[amazon]

小倉孝誠『ボヘミアンの文化史 ロマン主義からビート・ジェネレーションまで
オペラ『ラ・ボエーム』やミュージカル『レント』に登場する、自由を求め放浪する芸術集団。彼らの実態を19~20世紀の小説、詩、日記から辿り、その心性と美学を解明する。
(平凡社 3080円)[amazon]

ハインリヒ・フォン・クライスト『ミヒャエル・コールハース チリの地震 他一篇

領主の不正により飼い馬と妻を失った馬商人が、正義の回復を求め帝国をも巻き込む戦いを起こす「ミヒャエル・コールハース」など、日常の崩壊とそこで露わになる人間の本性が悲劇的運命へとなだれ込む3作品を収録。カフカをはじめ多くの作家を魅了したクライストの、言葉と世界の多層性を包摂する文体に挑んだ意欲的新訳。山口裕之訳
(岩波文庫 1001円)[amazon]

オクタビオ・パス『鷲か太陽か?』
ノーベル賞詩人オクタビオ・パスがパリに暮らした1940年代後半に創作した散文詩と、イメージとリズムの法則に支配された、夢のような味わいをもつ短篇。シュルレアリスムの正統的・批判的継承者として知られる巨匠による、研ぎ澄まされた詩的直観が鮮烈な印象を残す初期の代表作。1951年刊。野谷文昭訳
(岩波文庫 792円)[amazon]

《岩波文庫 重版再開》
エウリーピデース『ヒッポリュトス』
W・S・モーム『読書案内』


ヴィヴィアン・コンロイ『プロヴァンス邸の殺人』
伯爵邸で起きた殺人……犯人は招待客の中に? 令嬢が祖父から受け継いだのは莫大な財産と"探偵業"――トラベル令嬢ミステリー。西山志緒訳
(ハーパーBOOKS 1320円)[amazon]

ポール・ホールズ&ビン・ギャビー・フィッシャー『異常殺人 科学捜査官が追い詰めたシリアルキラーたち
不気味で凄惨な犯行現場に臨場し続ける科学捜査官は、密かに「最凶の連続強姦殺人鬼」を追っていた。10数人が殺害され、50人以上が凌辱された未解決事件。「犯人はまだ生きている」。40年間、警察を出し抜いてきたサディストをどう炙り出せるか。DNA解析の最新技術や犯罪捜査の複雑な力学も明かす驚愕のドキュメント。濱野大道訳
(新潮社 2860円)[amazon]

『江戸の戯作絵本1』小池正胤・宇田敏彦・中山右尚・棚橋正博編
江戸時代の黄表紙の傑作を集め、当時の版本のように見開きでレイアウトしつつ、現代文で読めるように訳と注を配置した黄表紙アンソロジーの決定版。江戸時代人の想像力が爆発する荒唐無稽なナンセンス文学を、当時一流の絵師による挿画とともに。
(ちくま学芸文庫 1870円)[amazon]

鶴見俊輔『ドグラ・マグラの世界/夢野久作 迷宮の住人
1962年に雑誌《思想の科学》に発表した評論「ドグラ・マグラの世界」により、戦後忘れられた存在となっていた夢野久作は「再発見」される。その後遺族との交流もあり、日記等の資料も読みこんだ上で書かれた作家・作品論『夢野久作 迷宮の住人』(1989)と併せて収録。
(講談社文芸文庫 2200円)[amazon]

S・S・ヴァン・ダイン『グリーン家殺人事件 新訳版
ニューヨーク市の一画に建つ古色蒼然たるグリーン屋敷に暮らす名門一族を惨劇が襲った。ある雪の夜、グリーン家の長女が射殺され、三女が銃創を負った状態で発見されたのだ。物取りの犯行とも思われたが、さらに第二の事件が発生し――。不可解な謎が横溢する難事件に挑む探偵ファイロ・ヴァンス。『僧正殺人事件』と並ぶシリーズ代表作が新訳で登場。日暮雅通訳
(創元推理文庫 1100円)[amazon]

ホリー・ジャクソン『受験生は謎解きに向かない』
高校生のピップに招待状が届いた。試験休み中、友人宅で架空の殺人の犯人当てゲームが開催されるという。舞台は1924年、孤島に建つ大富豪の館で、参加者は同級生とその兄の7人。開始早々、館の主が心臓を刺されて死亡しているのが発見される。勉強が気になって乗り気ではなかったピップだが、次第にゲームにのめり込んでいき……。『自由研究には向かない殺人』前日譚。服部京子訳
(創元推理文庫 880円)[amazon]

井原西鶴『好色五人女』
“お夏清十郎”や“八百屋お七”など、実際の事件をもとに西鶴が創り上げた極上のエンターテインメント小説五作品。恋愛不能の時代ともいうべき令和の世にこそ響く、性愛と「義」の物語。恋に賭ける女たちのリアルを、臨場感あふれる現代語訳で。田中貴子訳
(光文社古典新訳文庫 946円)[amazon]

山本一生『百間外伝 これくん風到来
見つけましたよ、初さん――。『百間、まだ死なざるや』に書き切れなかったことがこんなにも。長野初、谷中安規、森田草平、平山三郎、中村武志ら百間に最後まで付いていった人たち、百間から離れていった人たち。「日記読み魔」がそれぞれが放つ光を掬い上げ、気難しくて涙もろい不世出の文章家、内田百間の別の一面を浮かび上がらせる。猫のノラもクルも登場。
(中央公論新社 4180円)[amazon]

『合作探偵小説コレクション5 覆面の佳人/吉祥天女の像』日下三蔵編

横溝正史が参加した5作品、「覆面の佳人」「吉祥天女の像」「六大都市小説集」「越中島運転手殺し」「一九三二年」と、座談会1本を収録。
(春陽堂書店 4180円)[amazon]

J・D・サリンジャー『ナイン・ストーリーズ』
砂浜で男が少女に語る、ある魚の悲しい生態(『バナナフィッシュ日和』)、客船で天才少年に起きた出来事(『テディ』)。不確かな現実を綱渡りで生きる人々を描いた、アメリカ文学史に燦然と輝く9篇。柴田元幸訳
(河出文庫 891円)[amazon]

池央耿『翻訳万華鏡』
あらゆるジャンルの書を訳し、常に第一線で活躍してきた名訳者が初めて明かした、名訳が生まれる現場と翻訳の極意。唯一のエッセイ集。
(河出文庫 990円)[amazon]

ジャック・カー『トゥルー・ビリーバー ターミナル・リスト 2 上・下
復讐のためアメリカ国防長官を暗殺し逃亡者となった元SEALチーム7指揮官ジェイムズ・リースが、巨大テロ組織の黒幕に挑む。熊谷千寿訳
(ハヤカワ文庫NV 各1496円)[amazon]

デイヴィッド・ウェリントン『致死のパラダイス
上・下

連絡が絶えた植民星へ向かったサシャは、攻撃を受け、大破した船内で冷凍睡眠から目覚める。敵は感染性の狂気!? 最恐のSFホラー。中原尚哉訳
(ハヤカワ文庫SF 各1584円)[amazon]

ハビエル・セルカス『テラ・アルタの憎悪』
獄中でユゴーの『レ・ミゼラブル』と出会い、犯罪をやめ警察官となったメルチョールは、カタルーニャ州郊外の町テラ・アルタで、富豪夫妻殺人事件の捜査に当たる。夫妻は拷問の末に惨殺されていた。メルチョールは夫妻の事業には裏があることを直感するが……。白川貴子訳
(ハヤカワ・ミステリ 2530円)[amazon]

パオロ・ジョルダーノ『タスマニア』
地球の環境問題が深刻なのに、僕は不妊治療なんかに悩んでいる。逃げるよう参加した気候変動会議で会った物理学者とは、世界の終末に逃げるならタスマニアだと話した。そして僕は、何かに駆られて広島と長崎ヘ被爆者の取材に来た。伊人気作家による傑作私小説。飯田亮介訳
(早川書房 3410円)[amazon]

岡本綺堂『江戸に欠かせぬ創作ばなし 綺堂随筆
岡本綺堂は江戸のことばとどのように向き合ったのか。今も古びない創作論に、怪談話、貴重な寄席と芝居の記録を収録した名エッセイ集。『綺堂随筆 江戸のことば』改題再刊。
(河出文庫 990円)[amazon]

戸板康二『楽屋の蟹 中村雅楽と日常の謎
歌舞伎界の名優にして名探偵、中村雅楽が日常の謎に挑む。江戸川乱歩に見いだされた著者による味わい深い名推理の数々。直木賞受賞作「團十郎切腹事件」はじめ11編を精選。新保博久編
(河出文庫 1155円)[amazon]

スティーヴン・キング『アウトサイダー
 上・下
完璧な証拠で逮捕された少年惨殺事件の犯人。しかし彼には鉄壁のアリバイがあって──。事件の裏に隠れた恐ろしい存在とは。白石朗訳
(文春文庫 各1980円)[amazon]

デイヴィッド・グーディス『溝の中の月』
波止場で働くケリガンは妹をレイプし死に追いやった犯人を捜すことを誓う。酔いどれ、ならず者、失業者が溢れる荒んだ街で、ケリガンはアップタウンからやってくるプレイボーイのニュートンに狙いを定めるが、その美しい妹ロレッタと知り合ったことから、彼の心には思わぬ波風が立ち始める。ノワールの名手グーディスによる漆黒のサスペンスドラマ。真崎義博訳 ※電子書籍
(HM出版 1200円)[amazon]


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