藤原編集室(出店中)
注目の新刊 発売中


新編 イギリス名詩選』川本皓嗣編
ページを開けばきっと、声に出して読みたくなる――詩人たちの〈歌う喜び〉を感じさせてやまない、イギリスの名詩の数々。16世紀のスペンサーから20世紀後半のヒーニーまで、もっとも愛され親しまれている92篇を、英語の原詩・和訳ともに堪能できる対訳で編む。日本の読者の理解を支える注釈・解説も充実、待望の新編。
(岩波文庫 1276円)[amazon]

吉田広明『映画監督ドン・シーゲル』
『第十一号監房の暴動』『ボディ・スナッチャー/恐怖の街』『殺し屋ネルソン』『白い肌の異常な夜』『ダーティハリー』『突破口!』……40年にわたりハリウッドでアクション映画、犯罪映画を撮り続けた職人監督のキャリアと主題を詳細に辿る書き下ろし長篇評論。
(作品社 3520円)[amazon]

林海音『城東旧事』
1920年代の北京。伝統的な胡同に暮らす主人公の少女・英子が、子ども時代と別れを告げるまでを描く。「台湾文学の祖母」と称される林海音が幼少期を過ごした北京を舞台に、激しく変化する時代に翻弄されながら、ささやかな生活を送る人びとをあたたかく描く自伝的小説。
(行知学園 3300円)[amazon]

チョ・ナムジュ『彼女の名前は』
理不尽なことに勇敢に立ち上がる女性たち28の物語。『82年生まれ、キム・ジヨン』著者短編集。12頁分増補。小山内園子・すんみ訳
(ちくま文庫 946円)[amazon]

フランツ・グリルパルツァー『グリルパルツァー戯曲選』
19世紀オーストリア最高の劇作家と呼ばれるグリルパルツァーの代表作2篇、古代ペルシャで王に成り上がろうとした男の栄華と転落を描く「夢は人生」、死を前にして現世の愛を超越し、天命を取り戻す領主の娘をめぐる悲劇「リブッサ」(本邦初訳)を収録。
(水声社 4400円)

スタール夫人『コリーヌ あるいはイタリア
桂冠詩人コリーヌは、恋人の英国軍人オズワルドとともに、ローマ、ナポリ、遠くヴェネツィアまでも旅する。硬直した社会と、祖国への義務に阻まれ揺れ動く恋と苦悩を描く19世紀フランス小説。佐藤夏生訳
(水声社 5500円)

ジャネット・スケスリン・チャールズ『あの図書館の彼女たち』
1939年パリ。20歳のオディールはアメリカ図書館の司書に採用された。本好きな彼女は熱心に仕事に取り組み、女性館長や同僚、個性豊かな利用者たちとの絆を深めていく。やがてドイツとの戦争が始まり、図書館は病院や戦地の兵士に本を送るプロジェクトを開始する。しかしドイツ軍がパリを占領、ユダヤ人利用者に危機が……。人々に本を届け続けた図書館員たちの勇気と絆を描く感動作。文庫化。髙山祥子訳
(創元文芸文庫 1386円)[amazon]

渡辺啓助『沙漠の白鳥 戦前・戦中期防諜小説集 5
内蒙古を調査する大陸学術調査隊を妨害する共産匪などとの戦いを描いた冒険ミステリ(「日の出」掲載)。他に防諜小説「悪魔の刺繍」「紅薔薇団」の2編と、北京が舞台のミステリ小説「朱鶯春の皿」を収録。
(大陸書館 1980円)[amazon]

E・M・フォースター『ハワーズ・エンド』
20世紀初頭の英国。富裕な新興中産階級のウィルコックス家と、ドイツ系で教養に富む知識階級のシュレーゲル姉妹、そして貧しいバスト家の交流を通じ、格差を乗り越えようとする人々の困難や希望を描いたモダニズム文学の傑作。浦野郁訳
(光文社古典新訳文庫 2090円)[amazon]

『三田村鳶魚 江戸生活事典』稲垣史生編
「江戸学の祖」「江戸通の三大人」「最後の町学者」など、 数々の異名を持つ三田村鳶魚は 広範で多岐にわたる江戸文化・風俗の研究を遺した。その膨大な研究のうち市井町家の文化・風俗を中心に、 時代考証家・稲垣史生によって 事典形式に編纂されたのが本書である。 約3000項目を収める 江戸時代考証の基本書、待望の復刊。
(平凡社ライブラリー 2970円)[amazon]

エカ・クルニアワン『美は傷』
〈アジア文芸ライブラリー〉
ジャワ南部の港町に生まれた娼婦デウィ・アユとその一族を襲った悲劇。植民地統治、占領、独立、政変と弾圧といった暴力の歴史を軸に、伝説、神話、寓話などが渦巻く奇想天外な大河小説。世界35カ国以上で刊行されたマジックリアリズム文学の傑作。太田りべか訳
(春秋社 4400円)[amazon]

夢野久作『妖刀地獄』
幻想怪奇文学の巨匠・夢野久作による時代小説をすべて収録。復讐に向かう見目麗しい若侍との出会いから始まる表題作ほか全5編。新保博久編
(河出文庫 891円)[amazon]

馬伯庸『西遊記事変』
仙界の太白金星に住む李長庚は、観音菩薩の奸計によって天竺へと向かう三蔵法師に八十一の試練を与えることになった。だがそこには、仙界の大物たちが企てる隠された目的が見え隠れしていた。人間界も巻き込んだ壮大な計画の鍵は、孫悟空にあるというが……。齊藤正高訳
(ハヤカワ・ミステリ 2530円)[amazon]

ジョン・ブロウンロウ『エージェント17』
17は暗殺専門のエージェント。消えた16の後任として17になった彼の任務はとある作家の暗殺。どうやら作家の正体は16らしいが……。武藤陽生訳
(ハヤカワ文庫NV 1760円)[amazon]

レイラ・モトリー『夜の底を歩く』
1
7歳のキアラは、兄と二人暮らし。父は病死、母は獄中。ラッパーを夢見る兄のため、隣家の孤独な少年のため、彼女は職を探す。ある夜、思わぬことから、売春を始める。愛する者を心の支えとして働くキアラだったが、やがて街を揺るがす騒動に巻き込まれ……。井上里訳
(早川書房 3300円)[amazon]

ロバート・ベイリー『リッチ・ブラッド』
交通事故案件を専門とする弁護士ジェイソン・リッチは、離婚や家族関係の問題からアルコール依存症に陥っていた。リハビリから退院直後、夫殺害の容疑で逮捕された姉から弁護の依頼が。ジェイソンは葛藤しつつも弁護を引き受けるが、事件は想像以上に複雑で闇が深く――。リーガル・スリラーの名手の新シリーズ。吉野弘人訳
(小学館文庫 1320円)[amazon]

アーネスト・ヘミングウェイ『老人と海/殺し屋』
大いなる自然と人間の闘争を描く永遠の名作「老人と海」に、アメリカのハードボイルドにも影響を及ぼした名作短編「殺し屋」を併録。齋藤昇訳
(文春文庫 880円)[amazon]


▼2024年12月刊

レオニード・アンドレーエフ『紅の笑み・七人の死刑囚』
日露戦争か、人々が殺し合い発狂し、やがて累々たる死体の上に赤い笑いが漂う。帰還した兄、感染する弟……「紅の笑み」。五人のテロリストと殺人犯と強盗――七人の死刑宣告から執行に至るまで、心理、生理、肉体の状況を克明に……「七人の死刑囚」。20世紀初め、革命の時代に生きたロシア作家の2作品。徳弘康好訳
(未知谷 2860円)[amazon]

『怪異から妖怪へ』東アジア恠異学会編
「妖怪」はなぜ生まれたか。「怪異」の情報は拡散・増殖し、新たな解釈が生み出され、変容していく。怪異学から見る「妖怪」の成り立ちを解き明かす。
(文学通信 1870円)[amazon]

阿部正路『日本の妖怪たち 妖怪出現略年表・妖怪分布地図付
妖怪とは人間にとってどのような存在なのか――。歴史、風俗、伝説にあらわれ、日本人の心に明滅した妖怪の諸相を生き生きと描く。妖怪出現年表・妖怪分布地図附。
(角川ソフィア文庫 1386円)[amazon]

《ユリイカ》1月号 特集=ハン・ガン
2024年ノーベル文学賞受賞記念。傷をつくるのも癒すのも同じ人間であるということを、 ハン・ガンは果てしないスペクトラムとして物語の中に描き出す。数々の名作によって導き出されてきた他者への愛が、惨たらしい暴力の中にある人間の生の儚さを照らす灯として、いま世界中で必要とされている。ハン・ガンの苛烈かつ静謐な作品風景に迫り、さまざまな痛みと回復の過程を見つめる。 目次
(青土社 1760円)[amazon]

アンドリュー・ウィルソン『パトリシア・ハイスミスの華麗なる人生』
生まれながらに背徳と残虐、愛への渇望に苦しむ。「愛される」よりも「愛する」を選んだ孤独の女性作家。生誕100年を迎え、いま明らかにされる苦悩と野心、ゆがんだ愛。母親への愛憎のすべては小説作品の中に埋め込まれた――。トルーマン・カポーティが絶賛した才能、20世紀を代表する作家パトリシア・ハイスミス。残された膨大な日記と手紙をもとに、謎のベールに包まれたミステリ作家の全貌に迫る決定版伝記。MWA賞(評論・伝記部門)受賞。柿沼瑛子訳
(書肆侃侃房 7480円)[amazon]

H・C・ベイリー『フォーチュン氏説明する』
英国探偵小説黄金時代に人気を博した美食家の医師探偵レジナルド・フォーチュン・シリーズ第6短篇集 Mr. Fortune Expalins (1931) を全訳。小林晋訳。同人出版。
(ROM叢書 1980円)取扱=盛林堂

レオ・ブルース『狂ったシナリオ』
拳銃自殺したという国会議員の甥は、殺人の告白を録音テープに残していた。いったい誰を殺したというのか? 議員の要請を受けた学校長の依頼で、歴史教師キャロラス・ディーンが捜査を進めると……。シリーズ第10作 Die All, Die Merrily(1961)。小林晋訳。同人出版。
(ROM叢書 1760円)取扱=盛林堂

南陀楼綾繁『書庫をあるく アーカイブの隠れた魅力
全国各地の図書館・資料館の、利用者が普段は入ることができない閉架書庫に足を踏み入れ、そこで出会った本や資料を紹介するとともに、書庫内を知り尽くす館員の皆さんに、資料の管理や活用について取材を重ね、図書館・資料館の魅力の源泉に迫る。
(皓星社 2530円)[amazon]

T・キングフィッシャー『死者を動かすもの』
アレックス・イーストンは小国ガラシアの退役軍人。旧友マデリン・アッシャーから手紙をもらい、アッシャー家の館を訪ねてきた。小さな沼のほとりに建つ館は陰気で憂鬱で、久しぶりに会ったマデリンの双子の兄ロデリックは、痩せ衰えひどい有様、マデリンは病が重いのに、夜、夢遊病者のように歩き回る。そして悲劇が……。ヒューゴー賞受賞作家がポオ「アッシャー家の崩壊」に捧げた傑作ゴシックホラー。永島憲江訳
(創元推理文庫 1100円)[amazon]

シャルロッテ・リンク『罪なくして 上・下
故郷ヨークシャーに戻り、スカボロー署のケイレブ警部の下で働くことに決めたケイト・リンヴィルは、スカボローに向かう列車内で、女性を狙った銃撃事件に巻き込まれる。そして、自転車で通勤中に女性教師が同じ銃で狙われ、彼女は半身麻痺となる。二つの事件の被害者にはまったく接点がなかった。事件の驚くべき真相とは? 過去にあったある隠された事件と、絡み合う人間関係。それぞれの苦しみ。ドイツミステリの傑作。浅井晶子訳
(創元推理文庫 各1320円)[amazon]

シヴォーン・ダウド『すばやい澄んだ叫び』
1984年。アイルランドの小さな村で、15歳の少女シェルは孤独な毎日を送っていた。母親を病気で亡くして以来、酒浸りの父と反抗的な弟、幼い妹の世話に明け暮れていたのだ。そんなとき、幼なじみの少年に誘われて深い関係になってしまう。やがて妊娠に気づき、誰にも相談できずに悩みつづけて……。「助けて」と声をあげることができなかった少女の苦難と成長を、切なくも美しい筆致で描く。カーネギー賞受賞作家の伝説的デビュー作。宮坂宏美訳
(東京創元社 2750円)[amazon]

スティーヴン・ハンター『フロント・サイト2 ジョニー・チューズデイ』
1
945年2月、メリーランド州チェスターフィールド。タバコ農場の大地主タプスコット夫妻が頭取オークリーと会っていた時、銀行を4人組の強盗が襲った。抵抗しようとしたオークリーは命を落とし、一味は車で逃走する。2年後、ひとりの男がチェスターフィールドに住む元看護兵のニックという黒人を訪ねてきて、銀行強盗事件の調査に協力するよう要請する。ノワールと西部劇の伝統を継承した快作。棚橋志行訳
(扶桑社ミステリー 10円)[amazon]

《SFマガジン》2月号
「2025オールタイム・ベストSF」アンケート結果発表
(早川書房 1320円)[amazon]

C・S・ルイス『ナルニア国物語2 カスピアン王子と魔法の角笛』
ナルニアからの帰還より一年後。ルーシーら四人のきょうだいは寄宿学校へ向かう途中、不思議な角笛の力によって別世界へと呼び戻される。そこは、異国の侵略に遭いかつての輝きを失った1300年後のナルニアだった。四人は、正統な王の血を引くカスピアンやドワーフのトランプキンらと共に略奪王ミラーズに戦いを挑む。王国に平和を取り戻すことはできるのか。いま、いにしえの魔法が蘇る。小澤身和子訳
(新潮文庫 781円)[amazon]

コリン・フォーブス『戦車兵の栄光 マチルダ単騎行
ドイツ軍が西方電撃戦を展開した1940年5月。イギリス海外派遣軍のバーンズ軍曹らを乗せた新鋭戦車マチルダは、ベルギーで取り残され、孤立無援の単独行を開始することに。大自然との闘い、敵軍との遭遇。襲い掛かる試練をはねのけ、戦車はたった一輛で英仏海峡を目指す。大地を駆け抜け、バーンズが最後に得た〝勝利〟とは──。第二次大戦に従軍した人気作家が描く、王道の冒険小説。村上和久訳
(新潮文庫 1045円)[amazon]

ディージャ・フィルヨー『チャーチ・レディの秘密の生活』
毎週月曜に訪れる愛人の牧師のため母はピーチ・コブラーを作り、オリヴィアは彼を神と信じる。牧師夫人に恋焦がれる少女ジャエルとその日記を盗み読む曾祖母。母を献身的に介護するも名前を呼ばれない娘──自らの欲望に従うこと、教会、母娘の葛藤を親密に描き、全米を魅了した4世代・9つの彼女たちの物語。最注目アフリカ系アメリカ人作家による初短篇集。押野素子訳
(勁草書房 2640円)[amazon]

カリン・スローター『報いのウィル』
隔絶された山奥のロッジを旅行で訪れた捜査官ウィルはめった刺しにされた血塗れの女性を発見する。被害者はロッジを経営する一族の娘マーシー。犯人は彼女の家族と4組の宿泊客の中にいるに違いない。マーシーは家族各々と揉めていたうえ、宿泊客の素性も怪しい。誰もが嘘をつくなか、ウィルは真相を追うが……。
(ハーパーBOOKS 1640円)[amazon]

周浩暉『7人殺される』
高層マンションの一室から女性の遺体が発見された。さらに、被害者の元恋人で傲慢な金持ちの息子が局部から大量出血し死亡する。いずれの現場にも直前に宅配便が届き、その差出人が次の被害者になると読んだ刑事羅飛は事件を防ごうとするが、それを嘲笑うかのように次々に犠牲者が――。凄烈な社会派警察小説。阿井幸作訳
(ハーパーBOOKS 1700円)[amazon]


北村洋『淀川長治 「映画の伝道師」と日本のモダン
俳優でもなく監督でもないが、この人なくして映画は語れない――。『日曜洋画劇場』の解説で人気を博した「サヨナラおじさん」こと淀川長治。映画会社の宣伝員、雑誌編集者、批評家など、いくつもの顔をもつこの人物は何者だったのか。膨大な資料を博捜し、多様な価値観を包摂する変革者=映画人の思想・仕事・人生を描きあげる。目次
(名古屋大学出版会 4950円)[amazon]

梅崎春生『十一郎会事件 梅崎春生ミステリ短篇集
「桜島」を始めとする兵隊小説で戦後派を代表する作家、梅崎春生は、幼少期から探偵小説に耽溺し、実作も手がけた。複数のアンソロジーに採られた、梅崎ミステリを代表するユーモアタッチの表題作。元特攻兵の主題をハードボイルド的手法で描く「小さな町にて」。戦後文学史上の奇書『柾它希(まさたけ)家の人々』の著者・根本茂男にまつわる実録「不思議な男」。ほか、全集未収録作品を多数含む、様々な技巧を凝らしたミステリ短篇を初めて一冊にセレクトした文庫オリジナル。
(中公文庫 1100円)[amazon]

ジョン・グリシャム『狙われた楽園』
フィッツジェラルドの直筆原稿盗難事件から数年後、カミーノ・アイランドの名物書店店主ブルース・ケーブルは相も変わらず精力的に店を切り盛りしている。あのときブルースを追い詰めたマーサーは新作小説を発表。夏のブック・ツアーの締めくくりに「ベイ・ブックス」を訪れる予定だ。そんなとき、巨大ハリケーンの接近で全島民に避難命令が出され、暴風の中で遺体となった島在住の作家が発見された。独立系書店の店主が作家の不審死の謎を追う、本好きのためのミステリ。話題作『「グレート・ギャツビー」を追え』続編。星野真理訳
(中公文庫 1430円)[amazon]

マックス・ブロート『ユダヤ人の女たち』
〈ルリユール叢書〉
親友フランツ・カフカの遺言に逆らい、遺稿を守って亡命、カフカ全集を編纂した作家・翻訳家マックス・ブロート。1910年代チェコのギムナジウムに通うドイツ系ユダヤ人青年の恋愛と蹉跌を赤裸に描く、ブロートの自伝的小説。本邦初訳。中村寿訳
(幻戯書房 4620円)[amazon]

ミシェル・ビュトール『レペルトワールIV』
文学の優位性を否定し、断片のエクリチュールにより文学の閾を超え、諸芸術の対等性へ。ビュトール流「旅学(イテロロジー)」は、言語からイメージへ、イメージから言語へと自由に行き来しながら創作゠批評を展開する。「絵画のなかの言葉」を皮切りに、絵画の文学性、文学の絵画性を交錯させる絢爛たる論理の一大円舞。境界を攪乱し、自らの歴史的厚みを開示する評論集第四弾。石橋正孝監訳
(幻戯書房 6930円)[amazon]

オラフ・オラフソン『TOUCH/タッチ』
2020年、アイスランド。パンデミックの影響でレストランを畳んだクリストファーのもとに一通のメールが届いた。差出人は50年前に突如姿を消した元恋人ミコ。あの日、彼女はなぜ自分のもとを去ったのか。彼女への想いと悲恋の傷を抱え、彼は日本へ向かう。川野靖子訳
(早川書房 2970円)[amazon]

ロバート・ハンプソン『評伝ジョウゼフ・コンラッド 女性・アメリカ・フランス
没後百年、支配的な価値基準のもとで繰り返されてきた「船乗り」「海洋小説の作家」というコンラッド像が覆される時機が来た──。過小評価されてきた〈女性が主人公の後期作品群〉〈フランスが舞台の晩年の歴史小説群〉〈コンラッドの商業的成功に寄与した北米市場〉に光をあてると、孤高の前衛文学の旗手とされきた作家の別の顔が見えてくる。山本薫訳
(松柏社 3300円)[amazon]

『アメリカン・マスターピース 戦後篇』
〈柴田元幸翻訳叢書〉
時はまさに「短篇小説の黄金時代」。 重要作家が次々と登場する、1950年代前後の傑作10篇を収録。 “名作中の名作”でアメリカ文学史をたどる、シリーズ第3弾。S・ジャクスン「くじ」/サリンジャー「バナナフィッシュ日和」/ナボコフ「記号と象徴」/ポール・ボウルズ「あんたはあたしじゃない」/フラナリー・オコナー「善人はなかなかいない」/P・K・ディック「プリザビング・マシン」/ティリー・オルセン「あたしはここに立ってアイロンをかけていて」/ボールドウィン「サニーのブルース」/ジャック・フィニイ「愛の手紙」/マラマッド「白痴が先」
(スイッチパブリッシング 2970円)[amazon]

ラヌルフ・ファインズ『極地探検家 シャクルトンの生涯』
南極遠征に3度挑戦した探検家シャクルトン。生い立ちから3度目の遠征に向かう航海の途上で急逝までの行動と社会的背景、家族、恋愛と結婚、人間関係、夫婦関係、成功と失敗、弱点と強さ、活躍と挫折など、知られざるシャクルトン像を描き出す。小林政子訳
(国書刊行会 4180円)[amazon]

《怪と幽》vol.018
〈特集 幽玄鉄道〉 鉄道好き作家・有栖川有栖との旅企画、一穂ミチによる新作怪談、澤村伊智×田辺青蛙の探訪企画など。
(KADOKAWA 2200円)[amazon]

小野俊太郎『P・K・ディックの迷宮世界 世界を修理した作家
悪夢のような迷宮を味わい、悲惨な展開を読んだ後で感じる「温もり」はどこから生じるのか。初期の中短編、『宇宙の眼』『高い城の男』『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』『流れよわが涙、と警官は言った』、そして『ヴァリス』を中心に、全作品にわたって通底する「ディック常数」の魅力に迫る。目次
(小鳥遊書房 2750円)[amazon]

アントニイ・バークリー『地下室の殺人』
新居に越してきた新婚夫妻が地下室の床下から掘り出したのは、若い女性の腐乱死体だった。被害者の身元さえつかめぬ事件に、スコットランド・ヤードは全力をあげて捜査を開始する……モーズビー首席警部による「被害者探し」と、名探偵ロジャー・シェリンガムの原稿がもたらす新たな展開。探偵小説の可能性を追求しつづけるバークリーが、作中作を用いてプロット上の実験を試みた、『最上階の殺人』と双璧をなす円熟期の傑作。佐藤弓生訳
(創元推理文庫 1100円)[amazon]

S・J・ローザン『ファミリー・ビジネス』
チャイナタウンのギャング団のボスは所有する古い建物を堅気の姪に遺していた。そこは再開発計画でタワーマンション建設予定の場所で、この遺贈が騒動の火種になることは必至だ。私立探偵のリディアは相棒ビルと、事態の落着まで姪の護衛を務めることになるが、ボスの葬儀が終わった矢先、幹部のひとりが殺されてしまう。現代ハードボイルド〈リディア&ビル〉シリーズ。直良和美訳
(創元推理文庫 1430円)[amazon]

ジェイムズ・H・シュミッツ『惑星カレスの魔女 新版
商業宇宙船のパウサート船長は、他人のもめごとに首を突っ込み、つい幼い奴隷三姉妹を助けてしまったのが運のつき。よりによって惑星カレスから来た魔女だったとは! 禁断の星と接触したせいで恋人も故郷も失い……行き場をなくした船長が、ちび魔女三姉妹とともに巻き起こす、銀河系規模の大騒動。ユーモア・スペースオペラの決定版。ヒューゴー賞候補作。鎌田三平訳
(創元SF文庫 1100円)[amazon]

フランシス・ハーディング『ささやきの島』
マイロの父は死者の魂を船に乗せて送り届ける渡し守をしていた。島の住人は死者が出るとその靴を渡し守のところにもっていく。そうしないと死者が島中をさまよい歩いてしまうのだ。ある日領主の娘が亡くなった。領主は渡し守から娘の靴を取りもどし、魔術師の闇の業で娘を蘇らせようとする。マイロの父は殺され、死者の魂を送り届けられるのは怖がりのマイロだけ。マイロは船を出すが……。『嘘の木』著者による傑作YAファンタジイ。児玉敦子訳
(東京創元社 2420円)[amazon]

ポール・アルテ『白い女の謎』
英国の小村に君臨する名門リチャーズ家は、三つの事件に揺れていた。当主マチューが若い女秘書を後妻に迎えると言い出したこと、アフガンで戦死したと思われていた長女の夫の帰還。そして神出鬼没の《白い女》の霊。「白い女は出会った者の命を奪う」という村の言い伝え通りに怪死事件が発生し、マチューが狙われる。事件の背後には妖しい女占い師の姿が――名探偵オーウェン・バーンズ・シリーズ最新作。平岡敦訳
(行舟文化 1650円)[amazon]

マーク・グリーニー『暗殺者の矜持 上・下
世界で続発する人工知能研究者の暗殺事件。そんななか、中米で逃亡生活を送るジェントリーとゾーヤはAI無人兵器の襲撃を受ける。伏見威蕃訳
(ハヤカワ文庫NV 各1430円)[amazon]

ジョー・ネスボ『失墜の王国』
主人公ロイの住む山間の村。彼の弟カールは、新妻シャノンとともに村をリゾート地へする計画を携えて帰ってきた。リゾート化計画は、村を豊かにするためだとカールは言う。だがロイは、弟の本心は村を支配することにあると察していた。そこに殺人事件が起こり……。鈴木恵訳
(早川書房 3740円)[amazon]

劉慈欣『時間移民 劉慈欣短篇集2
巨大冷蔵庫で八千万人を未来へ送る計画を描く「時間移民」、『三体』でも活躍した天才理論物理学者、丁儀を襲った衝撃を描く「朝聞道」など全13篇を収録。世界的ベストセラー作家、劉慈欣の卓越した想像力が味わえる『円』に続く日本オリジナル短篇集第二弾。 大森望・光吉さくら・ワン チャイ訳
(早川書房 2420円)[amazon]

法月綸太郎・新保博久『死体置場で待ち合わせ 新保博久・法月綸太郎 往復書簡
「モルグ街の殺人」の定説の疑問、クリスティー失踪の真相、 芥川龍之介「藪の中」の推理、坂口安吾『復員殺人事件』解決編への挑戦、さらには多重推理、特殊設定など“ミステリの現在”を読み解く。いつまでも終わらない大好きなミステリの話。坂口安吾の幻の短篇「盗まれた一萬円」を書籍初収録。
(光文社 3520円)[amazon]

橋本麻里/山本貴光『図書館を建てる、図書館で暮らす 本のための家づくり
図書館に住みたい。そんな思いを建築家に託し、2019年末に建ちあがったのは、5万冊の本を収める家〈森の図書館〉。2人の施主が、普請のプロセスや、そこで過ごした5年間をつづり、デジタル全盛のいま、あえて大量の紙の本に囲まれ、生きてゆく意味をさぐる。書架の写真はもちろん、建築家の寄稿や図面類も多数収録。
(新潮社 3630円)[amazon]

ポール・サン・ブリス『モナ・リザのニスを剥ぐ』
ルーヴルの至宝を500年前の素顔に戻せ! 古きを愛する学芸員オレリアンは、実利優先のヤリ手新館長ダフネに無茶ぶりされた修復プロジェクトの旅に出る。国家をも巻き込む大騒動の末、姿を現したモナ・リザの本来の顔とは? 視覚情報に溢れたSNS時代に、美とは何か、本物とは何かを問いかける絶品アート小説。吉田洋之訳
(新潮クレスト・ブックス 2640円)[amazon]

コンスタンディノス・カヴァフィス『カヴァフィス詩集』
アレクサンドリアの孤高のギリシャ語詩人、コンスタンティノス・カヴァフィス。歴史を題材にしたアイロニーの色調、同性愛者としての官能と哀愁。訳者が丹精を込めて日本語にしてきた全154詩を収録。池澤夏樹訳
(岩波文庫 1364円)[amazon]

アレクサンドル・ゲルツェン『過去と思索 5』
1851年12月2日、大統領ルイ・ナポレオンがクーデタを起こし、翌年には皇帝につく。家族の悲劇に相次いで見舞われたゲルツェンは失意のままロンドンへ。「48年」が日々遠のいて行く中で、革命の夢をなおも追い求める亡命者たち。支援を続けながらも、彼らを見つめるゲルツェンの目は冷え冷えとしている。(全7冊) 金子幸彦・長縄光男訳
(岩波文庫 1573円)[amazon]

ヘルベルト・ローゼンドルファー『廃墟建築家』
〈オーストリア綺想小説コレクション〉
世界の終わりを目の当たりにした語り手は、廃墟建築家の設計した葉巻形の巨大地下シェルターに誘いこまれる。そこで彼が夢みるのは、カストラートの七人の姪が代わる代わる語る不思議な物語。もしかしたらこちらが現実で、葉巻シェルターのほうが夢ではあるまいか。『サラゴサ手稿』風の語りの入れ子構造を持ちながら、次々繰りだされる挿話の渦は、その枠さえなしくずしに解消してしまう。音楽への愛にあ
ふれ、オーストリア・バロックの粋をこらした魔術的遠近法。垂野創一郎訳 内容
(国書刊行会 4620円)[amazon]

吉永進一『霊的近代の興隆 霊術・民間精神療法
〈吉永進一セレクション1〉
日本の精神療法の流行は、グローバル化の一端であった。欧米の思想界に渦巻く〈精妙な流体〉が太平洋を渡って日本に流れ込み、呪術の近代化が始まる。宗教学の〈余白〉を彩る、斯界のニッチ産業。栗田英彦編
(国書刊行会 3960円)[amazon]

吉永進一『洗脳・陰謀論・UFOカルト』
〈吉永進一セレクション2〉
近現代日本のオカルト思想の概略を実体験も交えてたどる論文とインタビュー、そして洗脳、虚偽記憶、陰謀論、UFOカルトに関する論文を収める。「宗教雑学王」による、「類似宗教」研究の集大成。横山茂雄編
(国書刊行会 3960円)[amazon]

ショーン・バイセル『ブックセラーズ・ダイアリー2 スコットランドの古書店の日々ふたたび
ひょんなことから雇い入れた新しい店員や、別れたパートナーへの想い、天敵アマゾンやキンドルへのうらみつらみ――古書店主のぼやきと日常は今日も続く。世界的ベストセラー『ブックセラーズ・ダイアリー』第二弾。阿部将大訳
(原書房 2970円)[amazon]

ショーン・タン『クリーチャー 絵、スケッチ、そしてエッセイ
絵本やグラフィックノベルの作者、画家、デザイナー、さらに映画製作者と多才な活動を続けるショーン・タンが、子どもの時に最初に描いたものがクリーチャー(生きもの)だった。25年間の作品群から、初公開のドローイングや絵画を厳選した、これまでの軌跡をたどる一冊。岸本佐知子訳
(求龍堂 6930円)[amazon]

パトリシア・コーンウェル『憤怒 上・下
大統領暗殺計画に絡む事件の真相。前代未聞の殺害方法とは!? 「検死官」シリーズ第26作。池田真紀子訳
(講談社文庫 各1320円)[amazon]

ラムジー・キャンベル『グラーキの黙示3』
英国のセヴァン・ヴァレーに根を張るカルト教団の聖典が『グラーキの黙示録』のタイトルで無許諾出版されてから、150年近くの歳月が流れた。ブリチェスター大学のアーキビスト、フェアマンは、この伝説的な書物の“唯一現存する写本”を大学に収蔵するべく、英国北部の町に赴くが……。邪神カルト物語の終着点。森瀬繚訳
サウザンブックス 1980円)[amazon]

レックス・スタウト『シャンパンは死の香り』
〈論創海外ミステリ〉
パーティー会場で不可解な毒殺事件が発生。誰が、何故、どうやって被害者に“毒入りシャンパンを飲ませた”のか? 容疑者は11人。名探偵ネロ・ウルフが真相究明に挑む。渕上痩平訳
(論創社 2530円)[amazon]

ダナ・モーズリー『夏の窓辺は死の香り』
〈論創海外ミステリ〉
蒸し暑い真夏の午後。キャサリン・ペティグリューは暑さを紛らわせるためにウィスキーを飲み、酔った勢いで見知らぬ青年に色目を使うような行為をしてしまう。この軽率な振る舞いにより彼女は悲劇の渦中へと身を投じることに……。金井真弓訳
(論創社 2420円)[amazon]

諏訪部浩一『チャンドラー講義』
「孤独」な探偵マーロウを通して浮かび上がる、「自分の居場所」を探し続けたチャンドラーの人生。〈マーロウ〉シリーズにおける「ハードボイルド」のイメージのゆらぎに着目し、伝記的情報とともにレイモンド・チャンドラーの成長と変化、実存に迫る画期的挑戦。詩やエッセイ、パルプ作家時代の短編から映画シナリオまで徹底分析。
(講談社 2860円)[amazon]

ジョン・チーヴァー『チーヴァー短篇選集』
繊細で、不条理で、静かな緊張感に満ちた世界を描いた、短篇小説の巨匠による最良の15篇。ピュリッツァー賞、全米批評家協会賞。川本三郎訳
(ちくま文庫 1210円)[amazon]

明星聖子『ほんとうのカフカ』
ザムザが「変身」したのは「虫」なのか? 『城』の冒頭でKが到着したのは「村」なのか? 『審判』という表題は『訴訟』とすべきか? 死後出版の『城』『審判』は確定稿がないため、ほんとうの構成も、順序も、結末も推測するしかない。ドイツ語原文の編集事情を紹介しつつ、カフカのテクストに含まれる錯綜した問題を分かりやすく伝え、日本語訳の問題を検証する。
(講談社選書メチエ 2255円)[amazon]

プラトン『ティマイオス』
神による宇宙の製作とさまざまな自然学的理論が論じられる後期対話篇。土屋睦廣訳
(講談社学術文庫 1375円)[amazon]

ジェイムズ・P・ホーガン『ミネルヴァ計画』
ハント博士を驚愕の事態が襲う。並行宇宙の自分自身から通信が入ってきたのだ。地球人とテューリアンは協力し、マルチヴァースを横切る時空間移動の可能性を探る。一方、かつてクーデターに失敗して逃亡し、5万年前の惑星ミネルヴァ近傍に再実体化したジェヴレン人独裁者ブローヒリオは、ひそかに再起を図っていた……。『星を継ぐもの』に始まるシリーズ第5弾にして最終巻。内田昌之訳
(創元SF文庫 1540円)[amazon]

《紙魚の手帖》vol.20
本邦初訳短編やコラムなどで贈る、アン・クリーヴス特集。川野芽生、田中啓文、酉島伝法、町田そのこ読切掲載。特別企画、川出正樹『ミステリ・ライブラリ・インヴェスティゲ―ション』出張版ほか。
(東京創元社 1540円)[amazon]

井原西鶴『世間胸算用』
一年の収支決算日である大晦日その日の事件を軸に、貧乏に追われる庶民の悲喜劇を描いた「連作短編小説」。六軒の裏長屋住人のその日暮らし、正月飾りのことで息子を叱る隠居婆、亭主の入れ替わりで借金取りから逃れようとするもの、絶望にたえる貧者とその女房の夫婦愛など。落語のようなオチを交え、無名の人々の滑稽さや可笑しさを、愛情にみちたまなざしで掬い取った傑作をリアルにストレートに伝える関西弁での現代語訳。中嶋隆訳
(光文社古典新訳文庫 1078円)[amazon]

チェーザレ・ザヴァッティーニ『ぼくのことをたくさん話そう』
眠れぬ夜の寝床に霊が現れ、ぼくの手を取り、天国や煉獄など「あの世」への旅にいざなう……。映画『自転車泥棒』『ひまわり』等で知られる20世紀イタリアを代表する脚本家が、掌編の技法で紡いでいく、ユーモラスで機知に富んだ物語。石田聖子訳
(光文社古典新訳文庫 1056円)[amazon]

ロジーナ・ハリソン『おだまり、ローズ 子爵夫人付きメイドの回想
アスター子爵夫人は社交界の花形で英国初の女性下院議員、おまけにエキセントリック! 型破りな貴婦人に仕えた型破りなメイドの回想録。新井潤美監修/新井雅代訳
(白水Uブックス 2090円)[amazon]

森下雨村『謎の暗号 戦前・戦中期防諜小説集4
「新青年」初代編集長の森下雨村は、多くの翻訳、少年向け小説も手掛けた。本書は昭和8年「少年倶楽部」連載、米国から帰国した東郷富士夫少年が警視庁の特高外事課で働き、在日スパイ団の摘発を行う連作。少年向け防諜冒険小説の嚆矢ともいうべき作品。
(大陸書館 2035円)[amazon]

『2025本格ミステリ・ベスト10』 探偵小説研究会編
特集は2000年代クォータリー・ベスト本格ミステリ・ランキング発表。ベテランから新勢力までしのぎを削った激動の25年から読み巧者が厳選。二大インタビューは青崎有吾、潮谷験。
(原書房 1210円)[amazon]

ロジャー・ゼラズニイ『ロードマークス』
過去、未来を自在に行き来できる〈道〉を疾走する一台のピックアップトラック。そのドライバー、レッド・ドラキーンを暗殺すべく、〈黒の十殺〉が追いかける、緊迫のロードノベル。『わが名はコンラッド』『光の王』他で60年代アメリカSF界を牽引した作家ロジャー・ゼラズニイの傑作を新訳。映画化。植草昌実訳
(新紀元社 2200円)[amazon]

渡辺京二『夢ひらく彼方へ ファンタジーの周辺
『逝きし世の面影』の作者は真の読書人としてこよなくファンタジー小説を愛した。知識と考察をあまねく注ぎ今を生きる人々に学びの楽しさを説く傑作評論。『ナルニア物語』『指輪物語』『ゲド戦記』を読み解く。
(平凡社ライブラリー 2420円)[amazon]

加賀山卓朗/♪Akira『警察・スパイ組織 解剖図鑑』
海外エンタメ小説や映像作品に登場する警察や諜報組織、さまざまな機関を、 第一線で活躍する翻訳家がわかりやすく解説。アメリカとイギリスを中心に北欧・韓国もカバー、日本との違いまで。警察やスパイ組織の仕組みや成り立ちからそれぞれの国の社会背景まで見えてくる、読み物としても充実の一冊。
(エクスナレッジ 1870円)[amazon]

『このミステリーがすごい! 2025年版』
2024年の国内&海外のミステリー小説ランキング・ベスト20、人気作家の新刊情報&特別エッセイ。〔対談〕辻村深月×湊かなえ/道尾秀介×加藤隆生(SCRAP代表)、ゲーム✕ミステリー特集他。
(宝島社 900円)[amazon]

『おすすめ文庫王国2025』
本の雑誌が選ぶ2024年度文庫ベストテン/私の2024年度文庫ベスト3/読者アンケート 私の文庫ベスト1/ジャンル別ベストテン/SF大将2024年文庫篇/文庫レーベルアンケート 新刊予告2025/他
(本の雑誌社 880円)[amazon]

海野十三『盗まれた脳髄 帆村荘六のトンデモ大推理
日本SFの先駆者が生み出した名探偵帆村荘六が活躍する推理譚から精選した傑作集。筒井康隆によるオマージュ作品を特別収録。新保博久編
(河出文庫 1210円)[amazon]

諏訪哲史『偏愛蔵書室』
芥川賞作家が自身の偏愛する本100冊を味読耽読した、著者の文学的自叙伝にして危険な言語芸術入門。伝説の奇書(国書刊行会、2014)ついに文庫化。
(河出文庫 1320円)[amazon]

ビリー・ワイルダー/I・A・L・ダイアモンド『アパートの鍵貸します』
〈論創海外ミステリ〉
映画史に輝く名画の傑作シナリオを初の完訳。縦横に張り巡らされた伏線が相互に重なり繋がり合う、クロスワードパズルのような緊密な構成。三谷幸喜が〈ワイルダー映画〉の魅力を存分に語るインタビューと解説を併録。町田暁雄訳
(論創社 3300円)[amazon]

《週刊文春》12/12号
〈ミステリーベスト10(2024)〉アンケート
(文藝春秋 510円)

H・G・ウェルズ『モダン・ユートピア』
〈叢書・エクリチュールの冒険〉
実現しうる理想社会か、行きすぎた管理社会か――シリウスの彼方に位置するもうひとつの地球で、優秀なサムライたちが営む世界統一国家の様相を描いた実験的小説 A Modern Utopia(1905)の完訳。小澤正人訳
(月曜社 3740円)[amazon]

真田啓介『真田啓介ミステリ論集 古典探偵小説の愉しみⅠ フェアプレイの文学 増補版
真田啓介ミステリ評論の集大成にして〈クラシック・ミステリ・ルネサンス〉30年史の証言。第Ⅰ巻にはアントニイ・バークリーと「英国余裕派」作家をメインテーマとした精細緻密な論文を収録。第74回日本推理作家協会賞(評論・研究部門)受賞。目次
(論創社 5280円)[amazon]

真田啓介『真田啓介ミステリ論集 古典探偵小説の愉しみⅡ 悪人たちの肖像 増補版
第Ⅱ巻には英米作家論のほか、江戸川乱歩や横溝正史から狩久まで昭和時代を彩る日本作家に係る論考を収録。第74回日本推理作家協会賞(評論・研究部門)受賞。目次
(論創社 5280円)[amazon]

ジョン・スティール『鼠の島』
香港返還まで残り2年に迫った1995年、香港の犯罪組織はニューヨークへと活動の拠点を移そうとしていた。マフィアとのつながりを持つ刑事バークは、組織潜入のために香港からニューヨークへとやってきた。だが、ある日、彼は自身の過去を知る人物と出会い……。青木創訳
(ハヤカワ・ミステリ 2750円)[amazon]

アリス・エリオット・ダーク『フェローシップ岬』
児童作家のアグネスと親友のポリーには、80年にわたる思い出、お互いに理解できない男たちへの愛憎、心の奥底で分かち合う秘密があった。そこへ若い女性編集者のモードが現れたとき、二人が長年沈黙し続けてきた、この岬で暮らす人々の過去が明らかになる。金井真弓訳
(早川書房 4950円)[amazon]

唐福睿『台北裁判』
台湾の少数民族アミ族殺害事件で、ある少年が逮捕された。アミ族の公選弁護人バオは、反対を押し切り彼の冤罪を晴らそうとするが……。よしだかおり訳
(ハヤカワ・ミステリ文庫 2035円)[amazon]

エルヴェ ル・テリエ『異常(アノマリー)
殺し屋、売れない作家、軍人の妻、がんを告知された男ほかを乗せた飛行機が乱気流に遭遇。乗客は奇跡的に生還したかに見えたが。加藤かおり訳
(ハヤカワepi文庫 1320円)[amazon]

ニック・ハーカウェイ『タイタン・ノワール』
殺されたのは壮年にしか見えない90代の巨大な男……。探偵キャルは若返り処置タイタン化の開発者一族をめぐる闇に巻きこまれる。酒井昭伸訳
(ハヤカワ文庫SF 1958円)[amazon]

『物語ることの反撃 パレスチナ・ガザ作品集リフアト・アル=アルイール編
2023年12月、イスラエル軍の空爆によって命を落としたパレスチナの詩人、リフアト・アルアライール。忘却に抗うため、そして想像力によってあたらしい現実を立ち上げるため、彼が私たちに届けた、ガザの若き作家たちによる23篇。暴力と占領に物語ることで抵抗する、魂の作品集。藤井光訳
(河出書房新社 2992円)[amazon]

ジーン・シェパード『ワンダ・ヒッキーの最高にステキな思い出の夜』
先生への初恋、喧嘩ゴマの決闘、プロムの夜のステキな思い出……少年時代のノスタルジアにあふれたユーモア小説の名手、本邦初の作品集。若島正編訳/浅倉久志訳
(河出書房新社 2970円)[amazon]

スティーヴン・ハンター『フロント・サイト1 シティ・オブ・ミート
染田屋茂訳
(扶桑社ミステリー 1326円)[amazon]

『密書の行衛 コナン・ドイル少年少女翻案集北原尚彦編
大正期・昭和初期に刊行された、コナン・ドイル翻訳史研究においてほとんど知られていない作品を一冊にして刊行。 『シャーロック・ホームズの生還』収録作「第二のしみ」の翻案「探偵闇闘 密書の行衛」と、勇将ジェラール物の翻案「敵の少女」を収録。
盛林堂ミステリアス文庫 1100円)

《Re-ClaM》vol.13
〈特集 エラリイ・クイーンズ・ホール・オブ・フェイム~短編ミステリ名誉の殿堂~〉読者アンケート/ロイ・ヴィカーズ、ローレンス・G・ブロックマン、マット・テイラーの短篇翻訳/原書レビュー/他。同人誌
(Re-ClaM編集部 1100円)取扱=盛林堂


▼11月刊

田中千惠子編『西洋文学にみる魔術の系譜』
フィチーノ、ヘルメス主義、中世北欧のルーン魔術、中世ロマンスからドイツ・ロマン派、フリーメイソン、ブルワー=リットン、レヴィ、キャロル、フランス19世紀文学、そしてユングまで――西洋文学のなかの魔術の系譜を浮き彫りにし、古代から現代まで、魔術の隠された〈知の歴史〉を文化越境・領域横断的に炙りだす論集。目次
小鳥遊書房 2860円)[amazon]

E・T・A・ホフマン『牡猫ムルの人生観』
祖先に『長靴をはいた猫』を持ち、捨てられた子猫時代にある魔術師に助けられ、ドイツ語を習得した牡猫ムル。羽根ペンで自伝を書くようになると、近くにあった『クライスラー伝』のページを破っては、吸い取り紙として挟み込んでいたため、編集人ホフマンがその原稿を出版社に渡して、出来上がってみると、ムルの自伝は『クライスラー伝』とのつぎはぎの二重構造の作品になっていた! しかも『クライスラー伝』の部分は犯罪小説仕立て、という奇怪な物語。酒寄進一訳
(東京創元社 3960円)[amazon]

イム・ソヌ『光っていません』
事故で2年間寝たきりの恋人を見舞い続ける“私”の前に、分身を名乗る幽霊が現れる。自分そっくりな幽霊が一向に姿を消さないため、“私”は仕方なく一緒に暮らし始めるが……(「幽霊の心で」)。人をクラゲにする変種のクラゲが大量発生する。社会に動揺が走るなか、“私”は自らクラゲになりたがる人を見届ける仕事につく(「光っていません」)。閉塞感に満ちた日常を送る人々に解放感をもたらす、韓国発の8つの奇妙な物語。小山内園子訳
(東京創元社 2310円)[amazon]

ニコラ・グリフィス『折れざる槍』
妖精の谷と怖れられる地で育った少女がいた。母は少女の名を隠し、二人は洞穴でひっそりと暮らしていた。だが日ごとに成長し、力強く、素早くなった少女は、広い世界への憧れが抑えきれず、王アルトゥルスの戦士団に加わるべく旅立った……。ネビュラ賞受賞作家が、アーサー王伝説群のパーシヴァルの物語を独自の視点で語り直した鮮烈な作品。市田泉訳
(創元推理文庫 1100円)[amazon]

レイ・ブラッドベリ『10月はたそがれの国 新訳版
ポオの衣鉢をつぐ幻想文学の第一人者、SFの叙情詩人ブラッドベリの名声を確立した『闇のカーニヴァル』全14編に、さらに5つの新作を加えた珠玉の作品集。後期のSFファンタジーを中心とした短編と異なり、ここには怪異と幻想と夢魔の世界がなまなましく息づいている。ジョー・マグナイニの挿絵12枚を付して贈る新訳決定版。中村融訳
(創元SF文庫 1650円)[amazon]

スーネ・デ ・スーザ・シュミット=マスン『カレン・ブリクセン/イサク・ディネセンについての小さな本』
二つの作家名で知られ、英語とデンマーク語の二言語で作品を発表し、ヘミングウェイに自分よりもノーベル文学賞を受賞するのにふさわしいと言わしめたカレン・ブリクセン/イサク・ディネセンについてのブック・ガイド。枇谷玲子訳
(子ども時代 2200円)[amazon]

シャーロット・ゴードン『メアリ・シェリー 『フランケンシュタイン』から〈共感の共同体〉へ 
『フランケンシュタイン』を書いた16歳の少女――メアリ・シェリーはなぜ忘却されたのか。怪物の影に隠れた激動の人生を丹念に辿る。父ウィリアム・ゴドウィンと母メアリ・ウルストンクラフトの出会いに始まり、産褥熱による母の死、流産、夫パーシー・シェリーの死、一人息子をめぐる義父との協議など数々の苦難、『フランケンシュタイン』以降の思想と行動も瑞々しい筆致で描かれる。女性作家として、あるいはシングルマザーとして直面した問題意識がいかに形成され、作品として結実したか、余すことなく論じた記念碑的名著。小川公代訳
(白水社 2420円)[amazon]

ポール・オースター『4 3 2 1』
1947年、ユダヤ系の家庭に生まれたアーチボルド・ファーガソンの、驚くべき仕掛けに満ちた成長物語。ドジャースLA移転、ケネディ暗殺、ベトナム反戦運動。50~70年代のアメリカを生きる若者の姿を、緻密で独創的な四重奏で描く。「この本を書くために一生待ち続けていたような気がする」というポール・オースターの、作家人生の総決算となる大長篇。柴田元幸訳
(新潮社 7150円)[amazon]

ダーチャ・マライーニ『わたしの人生』
文化人類学者の父に連れられ、1938年に2歳で来日した著者は、1943年、両親がムッソリーニ政権への忠誠を拒否したため、家族と共に終戦まで名古屋で抑留される。警官による屈辱的で厳しい監視、飢餓による心身の衰弱、苦境のなかで父母が与えてくれたささやかな楽しみ、乳母など優しくしてくれた日本人との思い出、そしてファシズムへの憤り……。イタリアを代表する作家が、七十余年の時を経て、現代への警告の気持ちを込めて綴ったメモワール。望月紀子訳
(新潮社 2145円)[amazon]

C・S・ルイス『ナルニア国物語1 ライオンと魔女』
古い屋敷を探検していた四人きょうだいの末っ子ルーシーは衣装だんすから別世界ナルニアに迷い込む。そこは白い魔女が支配する常冬の国だった。「人間の世界から来た四人の王と女王により魔女は滅ぼされる」という伝説のためルーシーらは追われる身となるが――。ナルニアは光を取り戻すことができるのか。美しい挿画と読みやすい新訳で贈るファンタジーの最高峰。小澤身和子訳
(新潮文庫 693円)[amazon]

玖月晞『少年の君』
大学受験を控えた陳念は、いじめを苦に自殺した同級生に代わって、次なる標的となってしまう。辛い日々のなか、集団暴行を受ける不良少年・北野を見かける。彼を救おうとする陳念だったが、不良少年たちに強引に北野とキスをさせられる羽目に。最悪の始まりから二人の孤独な魂は惹かれ合ってゆくが、更なる暴力が陳念を底なしの闇へと追いつめ……中国でベストセラーとなった慟哭の純愛物語。泉京鹿訳
(新潮文庫 1265円)[amazon]

飯城勇三『名探偵ガイド』
〈名探偵〉――それは本格ミステリの核心である〈推理〉を象徴する存在。オーギュスト・デュパンから始まる海外50名+明智小五郎から始まる国内100名の名探偵をセレクト、総勢150名の名探偵による〈推理法〉と〈事件との関わり〉を検証する。〈名探偵〉の歴史を辿る本格ミステリガイド。
(星海社新書 1430円)[amazon]

ピップ・ウィリアムズ『ジェリコの製本職人』
第一次世界大戦下の英国。オックスフォードの製本所で働く女工ペギーは、大学で学ぶことを夢見ていたが、労働階級には学問は手の届かない高嶺の花だ。戦争は激化し、街に難民が押し寄せ、社会は変わっていく。ペギーは障害のある妹への責任やベルギー負傷兵との恋に悩みながら、大学を目指す。若く貧しい女工の挑戦、戦争と銃後のリアル、そして当時の製本工場を活写した、本への愛があふれる珠玉の物語。最所篤子訳
(小学館 3520円)[amazon]

ダヴィド・ラーゲルクランツ『記憶の虜囚』
14年前、金融界で華々しく活躍しながら、忽然と失踪したクレア。焼死体で見つかり死亡宣告されたはずの彼女が、ある写真に写り込んでいたという。移民街で育った警官ミカエラは、貴族で心理学者のレッケとともに、クレア生存の謎を捜査することに――。北欧ノワールの最先端。岡本由香子訳
(KADOKAWA 2860円)[amazon]

パク・ソリョン『コミック・ヘブンへようこそ』
〈I am I am I am〉
24時間営業の地下マンガ喫茶での夜勤中に絶体絶命の危機を経験し(「コミック・ヘブンへようこそ」)、がん患者がかつらを探しに行き(「秋夕目前」)、つらい毎日を送る売れない俳優に奇跡が起こり(「ほとんど永遠に近いレスリー・チャンの全盛期」)、兵役中のボーイフレンドを待つ女性たちが集まったインターネットコミュニティに没頭することもある(「IDはラバーシュー」)。温かい視線とユーモアを交えながら、SF、ホラー、コメディまで、韓国文学界の新鋭作家が放つ傑作短編集。渡辺麻土香訳
(晶文社 2200円)[amazon]

『エリザベス・ボウエンの短篇を読む』エリザベス・ボウエン研究会編
20世紀英国文壇を代表するアングロ・アイリッシュの作家ボウエン。生涯約100篇の短篇をものした幻想的作品の名手を、12人の論者が多面的に浮き彫りにする意欲的試み。ボウエン自身による優れた短篇論3本を併録。目次
(国書刊行会 4180円)[amazon]

久生十蘭『アヴオグルの夢 玲瓏無惨傑作小説集
悪辣・卑賤・強欲・執着・姑息。人間の暗部を冷徹な視線と怜悧な計算で描き、幻想を写実する。「アヴオグルの夢」「黒い手帳」「黄泉から」「予言」「無月物語」「母子像」他。長山靖生編。目次
(小鳥遊書房 3740円)[amazon]

夢野久作『暗黒公使』

元警視庁の鬼刑事、狭山九郎太のもとを訪れた美少年、呉井嬢次。狭山の助手希望で亜米利加からやって来た呉井は、所属するバード・ストーン曲馬団と一緒に来日したというのだが……。大正時代の帝都東京を震撼させた「暗黒公使事件」の顚末。
(春陽文庫 1320円)[amazon]

小栗虫太郎『女人果』
欧州へ向かう汽船穂高丸に某国のスパイが乗り込んでいるとの無電が届いた。ニ等航海士の西塔はその正体を探る中、社長令嬢の世話係、吹江伸子が船室で自殺を図っているのを発見する。伸子の手記には恐ろしい陰謀に翻弄された彼女の半生が綴られていた。女性たちの恋と復讐の物語の奇怪な顚末とは――?
(春陽文庫 1265円)[amazon]

小栗虫太郎『夢殿殺人事件』
栃木の尼寺・寂光庵の夢殿とよばれる密室にて殺人事件が起きる。死体は体中の血を全て抜かれ、両肘と両腰に梵字型の傷が刻まれていた……。(「夢殿殺人事件」)。刑事弁護士・法水麟太郎が活躍する短編集。
(角川文庫 770円)[amazon]

《ミステリマガジン》1月号
特集 ミステリが読みたい!2025年版
(早川書房 1320円)[amazon]

エヴァン・ダーラ『失われたスクラップブック』
〈ルリユール叢書〉
“ポスト・ギャディス”と目され、リチャード・パワーズが正体とも噂された、トマス・ピンチョン以上に謎めく、ポスト・ポストモダン作家エヴァン・ダーラ。“読まれざる傑作”として話題となった、ピリオドなしの、無数にして無名の語りで綴られる大長編の奇書がついに本邦初訳。木原善彦訳
(幻戯書房 5720円)[amazon]

川崎賢子『キネマと文人 『カリガリ博士』で読む日本近代文学
パンデミックと大震災の時代、革命と戦争の時代に映画『カリガリ博士』は愛され、恐れられ、語られた。佐藤春夫、江戸川乱歩、谷崎潤一郎、内田百閒、芥川龍之介、夢野久作、尾崎翠、稲垣足穂ら、近代日本の文学者は『カリガリ博士』の何に魅せられ、何を汲みとったのか。目次
(国書刊行会 4400円)[amazon]

マリーズ・コンデ『心は泣いたり笑ったり マリーズ・コンデの少女時代
ニュー・アカデミー文学賞を受賞した、世界に誇るフランコフォン作家マリーズ・コンデの少女時代のメモワール。今年4月に他界した作家への追悼出版。くぼたのぞみ訳
(白水Uブックス 2200円)[amazon]

ベルナール・ミニエ『黒い谷』
ピレネー山中で男性の惨殺体が見つかった。死体の傍には謎の記号が描かれた石が残されていた。8年前に拉致された元恋人を追って村を訪れていた刑事セルヴァズは、以前にもこの地で同様の手口の殺しが起きていたと聞き、拉致事件との関連を調べ始める。その矢先、何者かによって道が寸断され、一行は村に閉じこめられることに……。閉ざされた山村で次々に起きる連続殺人事件。人気警察小説シリーズ最新刊。青木智美訳
(ハーパーBOOKS 1680円)[amazon]

チョン・セラン『J・J・J三姉弟の世にも平凡な超能力』
科学者のジェイン、アラブの建設現場で働くジェウク、年の離れた高校生の末っ子ジェフンの三姉弟。海でのバカンスから戻ると突然、超能力を持ったことに気がつく。身に覚えのない、しかも〝超〟というにはあまりにもビミョーな〝能力〟に戸惑う三人。そして、「誰かを救え」というメッセージと小包が届く。いったい誰を……どうやって救えと!? 古川綾子訳
(亜紀書房 1760円)[amazon]

セオドア・ドライサー『アメリカの悲劇 
上流階級のソンドラとの恋とその名声に目がくらみ、意図せずとはいえ女工ロバータを見殺しにした、青年クラウド。事件発覚を契機に、水面下では政治、メディア、法廷が動き出す。そして、ついにその審判の時がきた――。平凡な若者が落ち込んだ苦境を通じて、近代アメリカ社会の闇を克明に描き出す、アメリカ自然主義文学の先駆的傑作。村上淳彦訳
(花伝社 3300円)[amazon]

イ・ソス『ヘルプ・ミー・シスター』
スギョンは30代、わけあって失業中。同居の家族は「個人投資家」の夫と、スギョンの父と母、さらに甥っ子が2人(高校生と小学生)。6人家族で、金を稼いでくる大人が1人もいないなんて。韓国で反響を巻き起こした「ハイパーリアリズム小説」。古川綾子訳
(アストラハウス 2200円)[amazon]

D・M・ディヴァイン『ロイストン事件』
「おまえの助けが要る。たった今、きわめて重大と思われるあることがわかった。おまえの義弟のデレクは――」勘当されて以来四年ぶりに実家を訪ねたマークが見つけた、父パトリックの手紙の下書きは何を意味しているのか。当の父は死体となり新聞社で発見される。どうやら父はロイストン事件の再調査をしていたらしい。それは教師をめぐるスキャンダルで、弁護士として事件に関わったマークは、父の意向に逆らって義弟を告発したために勘当されたのだった。父を殺した犯人を突き止めようと、マークの推理が始まる。巧手ディヴァインの第三長編。野中千恵子訳
(創元推理文庫 1100円)[amazon]


ジャニス・ハレット『アルパートンの天使たち』
18年前に起きたカルト教団《アルパートンの天使》集団自殺事件の謎……犯罪ノンフィクション作家がつかんだ、衝撃の真相とは!?
(集英社文庫 2090円)[amazon]

フランツ・カフカ『カフカ俳句』
カフカの短い言葉は俳句のよう――「鳥籠が鳥を探しにいった」「体の真ん中に毛糸玉がある感じ」等、20世紀の文豪がのこした断片80首を、自由律俳句のように味わう鮮烈なカフカ入門。カフカの短い断片を新たに訳し下ろし、小宇宙のような深みを楽しめる解説つき。時代や場所を越え、カフカの世界を縦横無尽に感じられる一冊。頭木弘樹編訳
(中央公論新社 1925円)[amazon]

ヘルマン・ブロッホ『誘惑者 上・下
「誘惑者」に浸透されていく村人たちと、侵されることのないひとりの老婆。やがて語り手である田舎医師も眩惑されていき、ついには宗教的儀式である出来事が。田舎医師を通して描かれる、村人たちの空想な熱狂と荘厳にそびえ立つ山々の様子。ブロッホ没後に遺稿から編纂された長編小説。古井由吉訳
(あいんしゅりっと 各3190円)[amazon]

ミーティ・シュロフ-シャー『テンプル・ヒルの作家探偵』
ムンバイ、テンプル・ヒル。作家ラディは親友の父親が死体となって書斎で発見されたことを知る。ラディは調査に乗り出すが……。国弘喜美代訳
(ハヤカワ・ミステリ文庫 1650円)[amazon]

江波『銀河之心1 天垂星防衛 上・下
宇宙を旅する流浪者の李約素(リー・ユエスー)は、銀河を支配する〈雷電ファミリー〉の巨大宇宙船を発見し、そこで冷凍睡眠状態の男を救出するが!? 中原尚哉・光吉さくら・ワン チャイ訳
(ハヤカワ文庫SF 各1485円)[amazon]

ジェイムズ・リー・バーク『破れざる旗の下に』
南北戦争下のルイジアナ。戦場での過酷な体験に苛まれ、伯父の農園で無為な日々を送る外科医のウェイド。殺人容疑を掛けられ、ウェイドの助けを借りて農園から脱走した奴隷女性のハンナ。さまざまな運命に翻弄される彼らが、最後にたどり着いた真実とは――。本年度エドガー賞最優秀長篇賞受賞作。山中朝晶訳
(早川書房 2860円)[amazon]

ヘリオドロス『エティオピア物語 下』
「汝 紅玉を身にまとわば 火勢恐るるにたらず」──神々に導かれるかのように、苦難の旅を続ける二人。死者の蘇り、都市の水攻め、暴れ牛との格闘など、語りの妙技で物語りの渦中に読者を引きこむ、古代小説の最高峰。下田立行訳
(岩波文庫 1001円)[amazon]

ジョン・スタインベック『チャーリーとの旅 アメリカを探して
「かくして、わたしは気がついたのだ、自分の国を知らない、と」時は1960年、大統領選挙の直前。ロシナンテと名づけたトラックに乗り、老プードル一匹を相棒に全国をめぐる旅に出た作家は、どんな〈アメリカ〉を見たのか? 青山南訳
(岩波文庫 1364円)[amazon]

フリードリヒ・ヘッベル戯曲 ニーベルンゲン』
「最後のもっとも激しい戦いが始まるのだ。愛するもの同士が、首を絞めあう戦いがな。」ジークフリート、ブリュンヒルト、トロイのハーゲン…。運命のいたずらか、王たちの嫁取り騒動は英雄の暗殺、そして骨肉相食む復讐に至る。中世ドイツの英雄叙事詩をリアリズムの悲劇へ昇華させた、ヘッベル晩年の最高傑作。香田芳樹訳
(岩波文庫 1155円)[amazon]

ジェイムズ・フェニモア・クーパー『モヒカン族最後の戦士 一七五七年の物語
開拓時代を描く連作「レザーストッキング物語」のうち、もっとも広く読まれ、映画や演劇などさまざまなアダプテーションを生み出したアメリカ文学の古典的名作(1826)が200年の時を経て蘇る完全版新訳。冒険ロマンスの香り高い本作の内奥には、今にもつながる西欧植民地主義が北米先住民に加えた甚大な損害が活写されている。村上淳彦訳
(小鳥遊書房 3520円)[amazon]

大橋由香子『翻訳する女たち 中村妙子・深町眞理子・小尾芙佐・松岡享子
大人になる前に戦争を経験し、翻訳者も編集者も男性ばかりだった出版界に飛び込み、半世紀以上も翻訳を続けてきた女性たちがいる。児童書から文学、ミステリまで、数々の名訳を残す中村妙子、深町眞理子、小尾芙佐、松岡享子――丁寧なインタビューをもとに4人の翻訳家の人生をつづった、光文社WEB「“不実な美女”たち」の書籍化。単行本書き下ろしとして、フェミニズムの思想とことばを紹介してきた、加地永都子、寺崎あきこ、大島かおりの章を新収録。
(エトセトラブックス 2640円)[amazon]

ヘレン・ライリー『欲得ずくの殺人』
〈論創海外ミステリ〉
丘陵地帯に居を構える繊維王の一家。愛憎の人間模様による波乱を内包した生活が続く中、家長と家政婦が殺害され、若き弁護士に容疑がかけられた。《もしも知ってさえいたら)》派の知られざる実力派の長篇初紹介。清水裕子訳
(論創社 2640円)[amazon]

アンドレイ・サプコフスキ『ウィッチャー 嵐の季節』
鋼と銀の剣を持ち、怪物と闘うウィッチャーのゲラルト。だが、その二本の剣を何者かに奪われた!? 人気ゲーム原作シリーズ最新作。川野靖子訳
(ハヤカワ文庫FT 1650円)[amazon]

リチャード・オースティン・フリーマン『ヘレン・ヴァードンの告白』
ヘレン・ヴァードンは、ある日、父親の書斎のドア越しに、父とオトウェイの激しい口論を耳にした。その後、自殺とも他殺とも断定できない状況でオトウェイが死亡。すべてがヘレンに不利な状況下で、真相を究明すべくソーンダイク博士が乗り出す。Helen Vardon's Confession (1922)。松本真一訳
(風詠社 2200円)[amazon]

ルイジ・ピランデッロ『ピランデッロ戯曲集 Ⅲ』
無意識に犯した罪に慄き、自罰の欲求から破滅へと進む心理劇『どうしてそうなったのか分からない』、劇団の受難を描きファシスト政権の芸術別紙を諷刺する未完の遺作『山の巨人たち』を収録。全3巻完結。斎藤泰弘編訳
(水声社 4400円)[e-hon]

チョン・サングク『偶像の涙』
〈韓国文学ショートショート きむ ふなセレクション〉
心の平和を望み、孤独になりたくない「僕」らが畏怖するのは、ただの乱暴者なのか、それとも孤高の存在なのか。暴力で周囲を威圧する不良グループのリーダー・ギピョ、クラスの秩序を保とうとする担任教師、そして級長ヒョンウ。各者の対立と葛藤を見守る高校二年生のユデ。学校を舞台にしたアイロニカルな物語。金子博昭訳
(クオン 1320円)[amazon]

宋知炫『夏にあたしたちが食べるもの』
〈韓国文学ショートショート きむ ふなセレクション〉
三十歳を過ぎ、ミュージシャンの夢を諦めた「あたし」。ある日、育ての親であるおばから自分が経営する編み物店の店番をしてほしいと頼まれやむなく帰郷する。都会を離れ、希望もやる気も失いつつあった主人公が故郷で見つけたものは。金子博昭訳
(クオン 1320円)[amazon]

四方田犬彦『ゴダール、ジャン=リュック』
「わたしはいつも、独りで書いてきた。独りでゴダールを観てきたのだ」。半世紀近くにわたるゴダールとの歩みをまとめた「喪の作業」。
(白水社 9900円)[amazon]

ノーマン・ベロウ『幻想三重奏』
〈論創海外ミステリ〉
人が消え、部屋も消え、路地まで消えた……。悪夢のような消失事件は悪霊による心霊現象か、それとも犯罪者の巧妙なトリックか? 〈L・C・スミス警部〉シリーズの第一作。松尾恭子訳
(論創社 3740円)[amazon]

ガブリエル・ガルシア・マルケス『悪い時』
十月の雨の朝、静かな町で起きた殺人事件にはあるビラが関係していた。ビラの内容は住民たちの疑心暗鬼を生み、息苦しく不気味な雰囲気が町全体を覆っていく……。「暴力時代」後のコロンビア社会を描く、死体と腐臭と謎に満ちた物語。寺尾隆吉訳
(光文社古典新訳文庫 1100円)[amazon]

フランツ・カフカ『城』
ある冬の夜ふけ、測量士Kは深い雪のなかに横たわる村に到着する。城から依頼された仕事だったが、城に近づこうにもいっこうにたどり着けず……。奇妙な、喜劇的ともいえるリアルな日常を描いた最後の未完の長編。史的批判版からの新訳。丘沢静也訳
(光文社古典新訳文庫 1562円)[amazon]

鮎川哲也『占魚亭夜話 鮎川哲也短編クロニクル1959~1968
光文社文庫未収録のレアな短編作品を年代順にコレクションする「鮎川哲也短編クロニクル」シリーズ第二弾。著者の全盛期ともいえる'60年代の傑作12編を収録。そして、著者宅に原稿のまま眠っていた幻の短編「占魚亭夜話」を初めて文庫に収録。時の流れに埋もれた逸品を掘り起こした本格ミステリー集。
(光文社文庫 1320円)[amazon]

吉田亮人(写真)・矢萩多聞(文)『はたらく製本所』
〈写真絵本 はたらく〉
埼玉県にある製本所「松岳社」ではたらく笠井瑠美子さんの一日。紙を折る人、切る人、あわせる人、綴る人、運ぶ人……製本工場はおおきないきものみたい。『広辞苑』から『はてしない物語』まで数多くの本をつくってきた製本所の静かなドラマ。
(創元社 2420円)[amazon]
吉田亮人(写真)・矢萩多聞(文)『はたらく図書館』
〈写真絵本 はたらく〉
奈良の図書館「奈良県立図書情報館」。図書館の仕事ってのんびりしてそう、と思ったらおおまちがい。書庫から本を取り出して、返ってこない本をさいそくして壊れた本を直すこともある。司書は毎日大忙し、いきつくひまもありません。図書館の知られざる裏側を覗きます。
(創元社 2420円)[amazon]

北村紗衣『女の子が死にたくなる前に見ておくべきサバイバルのためのガールズ洋画100選』
あのヒロインみたいになれたらいいな、私と同じだな、私とは違うけどステキだな……。映画を見ることで、女性であること、少数派であること、自分自身でいることの楽しさに気づける。もっと楽しく生きる準備をするために、あなたを待っている映画がきっとある。クラシックな名作から近年の話題作まで、労働問題、恋愛とセックス、フェミニズム、クィア、人種、民族など、多様な視点から厳選した100本の映画ガイド。
(書肆侃侃房 1980円)[amazon]

ペーター・ハントケ『ハントケ・コレクション 2 反復/作家の午後
第2巻は転換期である80年代の代表作を収録。スロヴェニアへの旅を描いた自伝的色彩が濃い長篇『反復』と、その「小さな後奏曲」と呼ばれる中篇『作家の午後』を併録。阿部卓也訳
(法政大学出版局 4400円)[amazon]

小山内園子『〈弱さ〉から読み解く韓国現代文学』
どの作品も、〈弱さ〉を正面から描いているから――。数々の作品の翻訳を手掛けるなかで、「なぜ韓国現代文学に魅せられるのか」を自らに問い、たどり着いたのが、この答えだった。〈弱さ〉とは、自らの意志とは関係なく選択肢を奪われた状態のこと。その視点で、『82年生まれ、キム・ジヨン』をはじめとする多彩な13の作品を読み解き、その魅力を掘り下げる。NHKラジオ講座の書籍化。
(NHK出版 1870円)[amazon]

山中峯太郎『戦前・戦中期防諜小説集3 祖国の鐘』
中日両国の父母の間に生まれた少女が反日謀略団に拉致され、その現場を目撃した日本人兄姉が救出をめざす。『敵中横断三百里』『亜細亜の曙』の人気作家が、昭和11年に少女雑誌「少女の友」に連載開始した防諜冒険小説。
(大陸書館 2189円)[amazon]

フアン・ガブリエル・バスケス『歌、燃えあがる炎のために』
〈フィクションの楽しみ〉
数奇な運命をたどり作家のもとに届いた手紙、忘却された真実を伝える写真、愛憎きわまった読者からの手紙、匿名の暴力に曝される失踪劇、理由なき殺人を生き延びた男の撮る映画、伝説的ヴォーカリストの最後の録音、自由を求めて生きた女性の評伝――こぼれ落ちた記憶に息吹を与え、物語を歌い上げる9作品。久野量一訳
(水声社 3300円)

C・A・ラーマー『ライルズ山荘の殺人 マーダー・ミステリ・ブッククラブ
〈マーダー・ミステリ・ブッククラブ〉に新メンバー四人が加わった。顔合わせを兼ねた読書会の課題は『そして誰もいなくなった』、過去にタイムスリップしたかのような山荘に泊まりこみで行うのだ。ところが現地に到着した翌朝支配人が他殺死体で発見され、さらに電話線が切断され外部とは連絡がとれず、山荘の周囲では山火事が起き……。読書会どころではない事態に、ブッククラブの面々はどう立ち向かう? シリーズ第4弾。高橋恭美子訳
(創元推理文庫 1540円)[amazon]

ベッキー・チェンバーズ『ロボットとわたしの不思議な旅』
ロボットたちと人類が平和裏にたもとを分かってから幾歳月。村々を巡っては悩みを抱えた人々にお茶を淹れる〈喫茶僧〉のデックスは、文明社会を離れ、大自然の中へ向かう。そこで出会ったのは、一台の古びたロボットだった。人間たちに好奇心をもつ奇妙なロボット・モスキャップと共に、デックスは長い旅に出る。心に染み入る優しさに満ちた、ヒューゴー賞、ローカス賞受賞作。細美瑤子訳
(創元SF文庫 1320円)[amazon]


C・J・レイ『ロンドンの姉妹、思い出のパリへ行く』
2022年ロンドン。99歳のジョゼフィーンと97歳のペニーの姉妹。第二次世界大戦中、姉は海軍婦人部隊に、妹は応急看護婦部隊に所属していた。戦時中の働きに対して、姉妹に勲章が授与されることになり、ペニーはこの機会に、1939年のパリで出会ったユダヤ人青年をめぐる事件と、その思い出を清算することにする。パリでの勲章授与式に向け、秘密のミッションが始まる。“いつも機嫌良く”を合い言葉に、激動の時代をたくましく生きる最高の姉妹を描いた感動作。髙山祥子訳
(東京創元社 3080円)[amazon]


生島治郎『悪意のきれっぱし 増補版
日本ハードボイルドの第一人者による1980年代に流行するサイコサスペンスの先駆的な作品群をまとめたクールとユーモアが共存する異色短篇集。日下三蔵編
(ちくま文庫 1320円)[amazon]

カール・タウベ『アステカ・マヤの神話』
写本や発掘調査・古代文字解読から、メソ・アメリカの伝統文化に今日も生き続ける神話解釈を紹介。第一人者による密度の濃い入門書。藤田美砂子訳
(ちくま学芸文庫 1320円)[amazon]

松浦友久『中国名詩集 美の歳月
中国古典詩は抒情の器としてその適正の高さを示す。本書は「詠懐」から「自適」まで十二のテーマに分類し、珠玉の名詩を精選。
(ちくま学芸文庫 1980円)[amazon]

ヘンリック・イプセン『野がも』
酔狂のままに書かれた傑作戯曲。「これは悲喜劇なのだ」(イプセン)。毛利三彌訳
(論創社 1760円)[amazon]

高橋輝次『戦前モダニズム出版社探検』
出版史のジャングルを探索する 大正末期から昭和初期にかけて、西欧の新しい文学・芸術思潮の影響を受けたモダニズム文学を支えた出版社と、その周辺を逍遥する古本エッセイ集。
(論創社 3300円)[amazon]

《ナイトランド・クォータリー》vol.37
〈特集 吟遊詩人と物語の生まれるところ〉
エレン・カシュナー「ユニコーンの仮面劇」、マイクル・ムアコック「最後の呼び声」、O・R・メリング「偉大なる旅人たちへの讃歌(抄)」、W・B・イェイツ「最後の吟唱詩人」、ラフカディオ・ハーン「耳なし芳一の話」、ルードルフ・カスナー「中世の夢」、ヌグヴィク、ニトクク他「ニヴフ幻想民譚集」、ヴィルヘルム・マティーセン「レクイエム」カリーナ・ビセット「二人姉妹、伝承歌の再詠」他
(アトリエサード 2164円)[amazon]

アレクサンドル・デュマ『新訳 モンテ・クリスト伯 5』
自責に苛まれる復讐者エドモン・ダンテス。水平線に消えゆく船を見守る子どもたち。ただ絶望だけが残されるのか……。かつて船乗りだった男の、長い長い復讐の旅が終わる。西永良彦役
(平凡社ライブラリー 1980円)[amazon]

アンドリュー・クラヴァン『聖夜の嘘』
クリスマス間近のある夜、湖畔の町で若い司書のジェニファーが殺された。容疑者は交際相手のトラヴィスで、犯行を認めていた。彼をよく知る地元弁護士のヴィクトリアは、犯行を信じられず、友人の大学教授キャメロンに無実を証明してほしいと調査を依頼する。羽田詩津子訳
(ハヤカワ・ミステリ 2640円)[amazon]

ブリジット・ジロー『生き急ぐ』
バイク事故で夫を亡くした作家は、20年後、思い出の家を手放す今、再び問いに向き合う。もしも、あのとき別の選択をしていたら事故は避けられたのか? 悲劇の日までの二十数年にわたる結婚生活の「あのとき」の数々を見つめ直す。ゴンクール賞受賞の感動作。加藤かおり訳
(早川書房 2640円)[amazon]

キム・チョヨプ『派遣者たち』
地下都市に暮らすタリンは、もはや人が住めなくなった地上へ行くことを切望していた。師匠のイエフが地上の素晴らしい夕焼けの美しさや夜空を横切る星の輝きを教えたから。だがタリンは地上へ行ける"派遣者"になるための試験の直前、不思議な幻聴を体験する。カン・バンファ訳
(早川書房 2970円)[amazon]

チョン・セラン『私たちのテラスで、終わりを迎えようとする世界に乾杯』
仕事はぼちぼちで、海外旅行なんて行けないけれど、ルームメイトと乾杯する小さなテラスはある──『フィフティ・ピープル』のチョン・セランが、明るい未来が見えない世界だからこそ、ささやかな希望を失わずに生きる人々をおかしみをもって描く掌篇小説集。すんみ訳
(早川書房 2530円)[amazon]

レベッカ・ブラウン『天国ではなく、どこかよそで』
「三匹の子ぶた」を踏まえた「豚たち」、「赤ずきんちゃん」を踏まえた「おばあさまの家に」をはじめ、ピノキオ、ヘンゼルとグレーテルなど、さまざまな伝統的物語やキャラクターを、レベッカ流に夢見なおした物語集。柴田元幸訳
(twililight 2200円)[amazon]

ジェスミン・ウォード『降りていこう』
奴隷の境遇に生まれた少女は、祖母から、そして母から伝えられた知識と勇気を胸に、自由を目指す――。40歳の若さで全米図書賞を二度受賞した、アメリカ現代文学最重要の作家が新境地を開く、二度目の受賞後初の長篇小説。石川由美子訳
(作品社 2970円)[amazon]

ジェフリー・ディーヴァー『魔の山 上・下
誰もが嘘をついている――少年を洗脳して自殺させたカルトグループに潜入したコルター。山中の村で進行する犯罪計画の正体とは? 池田真紀子訳
(文春文庫 各1210円)[amazon]

米澤穂信『米澤屋書店』
魅力的な謎を次々と生み出す米澤穂信。その頭の中にあるものは?  彼を形作った本たちを一挙公開。素顔が垣間見える脚註も大幅加筆。
(文春文庫 1012円)[amazon]

上田秋成/円城塔訳『雨月物語』
江戸の上田秋成が超絶技巧を駆使した怪異奇談集の傑作を、現代の円城塔による史上最高の現代語訳でおくる。「菊花の約」他、全9編。
(河出文庫 880円)[amazon]

池澤夏樹/池澤春菜『ぜんぶ本の話』
「本は人間と同じように生きものなんだから。人とつきあうように本とつきあうことができる」はじめて読んだ本をおぼえていますか? ページをめくればあふれだす、しあわせな時間と家族の思い出。文学者の父と声優・作家の娘が語りあう児童文学、SF、ミステリーのたのしみと本とのつきあいかた。そしてあかされる家族三代の物語。「読むよろこび」に満ちた極上の読書ガイド。
(毎日文庫 935円)[amazon]

井波律子『中国ミステリー探訪 千年の事件簿から
中国におけるミステリー作品は、ホームズやルパンの登場より1500年以上前に誕生しており、世界最古のミステリー文学にして、現代でも十分通用するトリックに満ちているといわれる。中国文学においてミステリー作品はどのような変遷を遂げてきたのか、無類のミステリー好きであった中国文学者が大いなる好奇心と豊富な学識から解き明かす。
(潮文庫 1320円)[amazon]

ジェイク・ラマー『ヴァイパーズ・ドリーム』
1961年、ニューヨークのハーレムで最も怖れられる麻薬密売人クライドはその日、自身が犯した殺人を後悔していた。自責の念のなか、ジャズ界の庇護者パノニカから「3つの願い」を訊かれ、彼の思索は遠い過去へと跳ぶ。1936年にトランペッターを志し田舎から大都会に出て、そして愛する歌姫に出会ってからの日々へと……。1930年代から60年代、激動の時代を舞台にした虚実混交のノワール。CWA歴史ミステリ賞受賞作。加賀山卓朗訳
(扶桑社ミステリー 1320円)[amazon]

トム・クランシー/スティーヴ・ピチェニック『ブラック・オーダー破壊指令 上・下

アメリカ全土で相次ぐ殺傷事件と爆破テロ。「分断」の時代にあるべき「正義」とは? ノンストップ・ミリタリー・サスペンス。
(扶桑社ミステリー 各1122円)[amazon]

大友克洋全集『Animation AKIRA Layouts & Key Frames 3』
アニメ映画版『AKIRA』(1988)製作に使用された膨大な量のレイアウト、原画、原画修正の中から、原作者・監督の大友克洋自身の手によって描かれたものを、全3巻に集成。最終巻。
(講談社 9900円)[amazon]


▼10月刊

ジル・ペイトン・ウォルシュ『貧乏カレッジの困った遺産』
ケンブリッジ大学の貧乏学寮セント・アガサ・カレッジの卒業生で、国際的大企業の経営者が事故死したという報が、学寮付き保健師イモージェンのもとに入ってきた。けれど彼は数か月前、イモージェンに命を狙われていると打ち明けていて――。『ウィンダム図書館の奇妙な事件』に始まる〈イモージェン・クワイ〉シリーズ第3弾。猪俣美江子訳
(創元推理文庫 1210円)[amazon]

陳柔縉『高雄港の娘』

〈アジア文芸ライブラリー〉
日本統治時代、台湾南部の高雄で生まれた孫愛雪。戦後の政治的弾圧で父と夫は国を去り、やがて愛雪も夫を追って日本へ。「良妻賢母」の価値観を教え込まれた愛雪は、家の仕事をこなし、独立運動に奔走する夫を支えながら、自らも実業家として道を切り拓く。そして晩年、家族を陥れた意外な真実を知る。実在の人物をモデルとしつつ、虚構を交えながら女性の視点で台湾の現代史を問い直す歴史小説。田中美帆訳
(春秋社 2750円)[amazon]

エドワード・ゴーリー『ウィローデールの手押し車 または ブラックドールの帰還
ゴーリー自身と従妹を彷彿させる三人が、手押し車で冒険に出る。行く先々で遭遇する謎のキャラクターと言葉。三人の運命やいかに。柴田元幸訳
(河出書房新社 1540円)[amazon]

ウィリアム・シェイクスピア『真訳シェイクスピア傑作選 ロミオとジュリエット・お気に召すまま・冬物語・十二夜・テンペスト
イギリス史研究を基に、作品の背景にある史実や風俗を読み解いた訳で、話題となった『真訳シェイクスピア四大悲劇』に続く第2弾。戯曲執筆時の世界観を再現した5作品を収録。石井美樹子訳
(河出書房新社 5280円)[amazon]

ジョン・グリシャム『告発者 上・下
フロリダ州司法審査会に、マクドーヴァー判事がマフィアと組み、無実の人間に死刑判決を下したという情報が寄せられた。不当判決は他にもあり、見返りに多額の賄賂を受け取っているという。 調査官のレイシーが捜査を進めると、先住民が経営するカジノとの関係が見えてきた。だが、調査に向かった居留地では思いもかけない出来事が待っていて……グリシャム作品の新ヒロイン、颯爽と登場。白石朗訳
(新潮文庫 各990円)[amazon]

ルイーザ・メイ・オールコット『若草物語』
マーチ家の四姉妹に出征した父から手紙が届いた。勇気をもっておのれの内なる敵と戦い、美しい心を持ちなさい――。厳しくも優しい母親に見守られ、喧嘩と失敗を繰り返しながら成長していく姉妹。父危篤の報が届くと、父のもとに向かう切符代を用立てるため、次女ジョーは自慢の長い髪を切って売るのだが……。すべての女性を励まし続け、永遠に瑞々しい名作。小山太一訳
(新潮文庫 1100円)[amazon]

ジーン・ウェブスター『おちゃめなパティ』
アメリカの女子寄宿学校で暮らすパティは好奇心旺盛で正義感の強い女の子。ある日、同級生と学外の英国人との恋の噂が学園中を騒がせる。毎週届くスミレの花束。でも、その恋人って実在するの? 疑問を持ったパティは、親友のコニーとプリシラと共にあるいたずらを仕掛ける。果たして恋人の正体とは? 『あしながおじさん』のウェブスターがおくる永遠の少女小説。三角和代訳
(新潮文庫 825円)[amazon]

『合作探偵小説コレクション8 京都殺人旅行/闇からの招待』
島田一男、鷲尾三郎、岡田鯱彦、大下宇陀児、木々高太郎、水谷準、大谷羊太郎、鮎川哲也、斎藤栄、山村美紗、小林久三、西村京太郎らが参加した昭和20-50年代の9作品を収めた戦後傑作集2。全8巻完結。日下三蔵編
(春陽堂書店 4180円)[amazon]

都筑道夫『魔海風雲録』
豊臣から徳川へ時代が動こうとしている中、木曽の山中では、山大名・紅面夜叉の隠し財産をめぐり陰謀が渦巻いていた。
(春陽文庫 990円)[amazon]

イーディス・ウォートン『ウォートン怪談集』
〈小さな海外文学〉
複雑さとリーダビリティのバランスが絶妙な怪談集。「小間使の呼び鈴」「夜の勝利」「ミス・メアリ・パスク」の全3篇。柴田元幸訳
葉々社 1430円)
トマス・ハーディ『ロングパドル人間模様』
〈小さな海外文学〉
『ロングパドル人間模様』は、『人生の小さな皮肉』という短篇集に収録された「短篇集内短篇集」。ユーモア満載の愉快小説集。柴田元幸訳
葉々社 1430円)

武田崇元/横山茂雄『霊的最前線に立て! オカルト・アンダーグラウンド全史
オカルト・ブームの立役者にしてスピリチュアル業界の影の支配者武田崇元と、UFOからナチスまで学術的オカルト研究の先駆者横山茂雄(稲生平太郎)が、オカルトの全歴史を語り尽くす。霊統は異なる二人が知られざるオカルト・ムーヴメントの辺境最深部を掘り起こす、前人未到空前絶後の超濃厚対談がついに実現。目次
(国書刊行会 3960円)[amazon]

神山重彦『物語要素事典』
古今東西の文学、映画、演劇、落語、昔話、歌舞伎、神話、マンガ、都市伝説――あらゆる物語の核心を縦横無尽に照らし出す無類の大事典。あまのじゃく、宇宙人、ウロボロス、時間旅行、手毬唄、人形、密室、未来記、無限…… 1,135に及ぶ物語要素別に、延べ 11,000 超の作品の筋書きを紹介。人類の創り出してきた世界のアイデアをあまねく拾い上げる、小宇宙のごとき至上の目録。
(国書刊行会 28,600円)[amazon]

《ユリイカ》11月号 特集=松岡正剛―1944-2024―
編集者の、編集の知とはなにか、松岡正剛の仕事は場所と媒体を作るために費やされた。松岡正剛は自身を含むあらゆる名前を概念としてタペストリー(=アンソロジー)を紡いだ。【対談】荒俣宏×高山宏/【座談会】十川治江×田辺澄江×米澤敬/【対談再録】杉浦康平×松岡正剛/他 目次
(青土社 1980円)[amazon]

西田茂雄(写真)・古川順弘(文)『宝と夢と幻と ソロモンの秘宝を追いつづけた男、宮中要春の残影
「剣山には古代イスラエルの王ソロモンの秘宝が埋まっている」という怪説を信じて、昭和30年代から約20年間、剣山の山頂に泊まり込み秘宝発掘に挑みつづけた孤高の男がいた。その男の名は宮中要春。彼はなぜ「ソロモンの秘宝」に憑かれ、無謀な発掘を始めたのか。そして、その挑戦はどのような終幕を迎えたのか。宮中の姿を追った写真家・西田茂雄が遺した貴重な写真100枚とともに、ひたすら夢を追いつづけた求道者がたどった衝撃の軌跡を明らかにする。
(国書刊行会 2640円)[amazon]

ローレンス・ブロック『マット・スカダー わが探偵人生』
父と母、幼い弟の死。警官時代の相棒との逸話。はじめて犯罪者を射殺した日。復讐者との因縁。そして少女を死なせてしまったあの日――。記憶を探りながら諦念を交え静かに語る最後のマット・スカダー。80歳を超えたマット・スカダーが自らの探偵人生を振り返りながら、著者ブロックに語りだすメタフィクション。田口俊樹訳
(二見書房 2750円)[amazon]

アン・クイン『スリー』
〈ルリユール叢書〉
B・S・ジョンソンらと並び、1960年代イギリスで実験小説を発表し、女性であることの困難にも向き合った前衛作家アン・クイン。行方不明の少女が遺したテープと日記帳が夫婦二人の日常を軋ませ、次第に蝕んでいく――作者の自伝的要素も組み込まれた奇妙な長編小説。本邦初訳。西野方子訳
(幻戯書房 3520円)[amazon]

ロドルフ・テプフェール『ジュネーヴ短編集』
〈ルリユール叢書〉
手書きの文字と線画を組み合わせ、コマ割マンガの創始者となったジュネーヴの作家ロドルフ・テプフェール――諧謔精神あふれる半自伝的小説「伯父の書斎」、アルプスの風土をスイスことばで描いた冒険譚「アンテルヌ峠」など珠玉の全8篇をテプフェール自身の挿絵つきで収録。本邦初訳。加藤一輝訳
(幻戯書房 4950円)[amazon]

佐藤利明『P.C.L.映画の時代 ニッポン娯楽映画の源流 1932–1937
震災復興とモダン都市TOKYO、女性の社会進出、サラリーマンの悲哀、花形スタアのトーキー映画進出、最新のジャズや流行歌に彩られた華やかなミュージカル……銀幕を輝かせた「新しい」娯楽映画たち。戦前ニッポン・トーキーの発明・普及とともに産声をあげた新興映画スタジオ「P.C.L.映画製作所」が手掛けた数々の画期的作品のほぼ全作品を詳説。
(フィルムアート社 7480円)[amazon]

宮野村子『夢をまねく手 他二十一篇
ミステリ作家・宮野村子(叢子)の単行本未収録作品集第5弾。宮野村子が1950年から1962年までのあいだに発表した、ジュニアミステリ・懸賞推理物を中心に表題作「夢をまねく手」を含む 22篇を収録。
盛林堂ミステリアス文庫 3300円)

ケリー・リンク『白猫・黒犬』
親切な白猫の大麻農園(『白猫の離婚』)、妖精の婚約者が眠る地獄の底(『地下のプリンス・ハット』)、主人だけは絶対に入れてはいけない家(『スキンダーのヴェール』)……。夢と幻想、誘惑と謎に満ちた摩訶不思議な物語。変幻自在の物語の魔術師、ケリー・リンクの7つの童話を基にした万華鏡のような新作短篇集、2024年ローカス賞(短篇集)受賞作。金子ゆき子訳
(集英社 2970円)[amazon]

《SFマガジン》12月号
特集 ラテンアメリカSF
(早川書房 1320円)[amazon]

ヒュー・ロフティング『ドリトル先生と秘密の湖』
秘密の湖にすむ世界最古の生き物どろがおが地震で生きうめに。先生と動物たちは彼を助けるためにファンティッポ王国に旅立つ。そこでワニのジムと再会し、奇想天外な救出作戦に乗り出す。どろがおが目の当たりにした「ノアの箱舟」の真実が明らかに。人が動物を、動物が人を命がけで救う大感動の第10巻。河合祥一郎訳
(角川文庫 1430円)[amazon]

アイザック・ウォールトン&チャールズ・コットン『釣魚大全 思索する人のレクリエーション
17世紀イギリス、清教徒革命が起き、シェイクスピアが活躍した時代。1653年に書かれ、以来、世界中の釣人に読み継がれてきた名著、完全版。刊行当時の図版や当地の写真を収録。霜田俊憲訳
(未知谷 6600円)[amazon]

ジェフリー・アーチャー『狙われた英国の薔薇 ロンドン警視庁王室警護本部
警部ウィリアム・ウォーウィックはロンドン警視庁内で王室警護を担う部署の腐敗を暴く極秘指令を受ける。一方、ウィリアムの腹心ロスは、ダイアナ皇太子妃の専属身辺警護官に任命される。やがて華やかな任務の陰で、国家を揺るがす陰謀が差し迫り――。シリーズ最新作。戸田裕之訳
(ハーパーBOOKS 1320円)[amazom]

『幻想と怪奇16 ホラー×ミステリ-ホームズのライヴァルたち・怪奇篇』
怪奇事件に挑む名探偵を描いた物語は数多い。「ホームズのライヴァルたち」の時代を中心に、ミステリとホラー、双方の愉しみを味わえる作品を収録。A・マッケン、E・A・ポー、H・R・ウェイクフィールド他。欧米以外の幻想文学の紡ぎ手たちを紹介する〈現代世界幻想文学選〉第一回はシリアの短編作家、ムスタファー・タジュディーン・ムーサー。牧原勝志編
(新紀元社 2530円)[amazon]

韓松『無限病院』
平凡な男・楊偉(ヤン・ウェイ)は、出張先のC市のホテルでミネラルウォーターを飲んだところ腹痛で倒れ病院に連れ込まれる。そこは巨大で得体のしれない不気味な迷宮だった。『三体』著者劉慈欣も瞠目する、中国SF四天王の一角・韓松が放つ不条理SF《病院》三部作開幕篇。山田和子訳
(早川書房 3410円)[amazon]

笠井潔『大量死と探偵小説』
第一次世界大戦における「大量死=匿名の死」への抵抗こそが、死と生の「必然性」への希求としての「探偵小説」を興隆させたのではないか。今もなおミステリ評論シーンに刺激を与え続ける「大量死理論」。笠井潔の打ち立てた理論群を一冊に集成。
(星海社新書 1485円)[amazon]

ミヒャエル・エンデ/シオーナ・チェッカレッリ(絵)『モモ 絵本版
町のはずれ、こわれかけた野外劇場に住んでいるという女の子。モモに話を聞いてもらうと、自分のしたいことがはっきりとわかったり、間違いに気づいたりします。やがて鳴かなくなったカナリアや、雨や風までがモモに話をし……。名作刊行50周年記念の絵本版。松永美穂訳
(光文社 1980円)[amazon]

杉江松恋『日本の犯罪小説』

昭和の頃、小説の中の犯罪者は、固定観念を打ち砕く革命家のようでもあった。激しい怒りと、震えるような苛立ちが彼らを突き動かしていた。作家たちは、彼らに何を仮託していたのか。そして、社会の変化と成熟は、犯罪小説をどう変容させたのか。大藪春彦、江戸川乱歩、松本清張、阿佐田哲也、池波正太郎、小池真理子、宮部みゆき……18人の作家の創作の秘密に、「犯罪」のキーワードから迫る、迫真の文学評論。
(光文社 予価2420円)[amazon]

キャロル・ローレンス『クレオパトラの短剣』
1880年、ニューヨーク。ヘラルド紙の唯一の女性記者であるエリザベスと友人のカルロッタは、ミイラのように包まれた女性の遺体を発見する。彼女の記事は話題となり、新たな遺体が発見される度に読者を魅了する。しかし、犯人もすべての記事を読んでおり……。中山宥訳
(ハヤカワ・ミステリ 3190円)[amazon]

トム・スタンデージ『謎のチェス指し人形「ターク」』

18世紀のウィーンにチェスを指す自動人形(オートマトン)が現れた。あまりに優れた性能のためたちまちヨーロッパ中で話題になるが、その真相は? 服部桂訳
(ハヤカワ文庫NF 1320円)[amazon]

リース・ボウエン『恋のスケッチはヴェネツィアで』
大伯母の最期の言葉は「ヴェネツィア」だった。遺品のスケッチブックと3本の鍵の謎を解くため、キャロラインは水の都へ向かう。矢島真理訳
(ハヤカワ・ミステリ文庫 1980円)[amazon]

レティシア・コロンバニ『三つ編み』
インド、イタリア、カナダで過酷な運命を懸命に生きる3人の女性。彼女たちが闘いを選ぶとき、つながるはずのない物語が交差する。齋藤可津子訳
(ハヤカワepi文庫 1078円)[amazon]

クレア・キーガン『ほんのささやかなこと』
1985年、アイルランドの小さな町。寒さが厳しくなり石炭の販売に忙しいビル・ファーロングは、町が見て見ぬふりをしていた女子修道院の〝秘密″を目撃し――優しく静謐な文体で多くの読者に愛される現代アイルランド文学の旗手が贈る、史実に基づいた傑作中篇。鴻巣友季子訳
(早川書房 2420円)[amazon]

ダニエル・トゥルッソーニ『ゴッド・パズル 神の暗号
逮捕以来、一言も話さずに奇妙なパズルを作り続ける殺人鬼ジェス。パズル作家のマイクは、彼女のパズルを解き明かすように警察に依頼される。だがそのパズルには、想像もつかないほどに大きな秘密が隠されていた。それは、世界を根底から覆しかねないもので……。廣瀬麻微・武居ちひろ訳
(早川書房 3300円)[amazon]

ラウラ・フェルナンデス『ミセス・ポッターとクリスマスの町 上・下
なぜか年中、雪に閉ざされた町キンバリー・クラーク・ウェイマスは、児童小説の聖地巡礼の地として有名。だが、観光の目玉である関連グッズ店の店主ビリーが店を閉めて引っ越そうとしたことで、不動産業者や作家や探偵やプロの幽霊を巻きこみ、町は大騒動に! 宮崎真紀訳
(早川書房 各3190円)[amazon]

ピーター・ニコルス『狂人たちの世界一周 最も過酷なヨットレースに挑んだ男たち
1968年、5000ポンドの賞金を賭けて、無寄港世界一周ヨットレースが開催された。海軍少佐、商船船長、船乗り、素人のビジネスマンなど様々な経歴の9人が出場。最終的にただ1人がゴール、残りの8人は脱落、遭難、失踪するという異様な結果となった。男たちは、史上最長の、最も孤独な航海になぜ旅立ったのか? 絶望の淵へと追われた彼らの運命は? 成功と破滅を分けたものとは? 成功と破滅に翻弄された彼らの運命に迫る、傑作ノンフィクション。園部哲訳
(国書刊行会 3080円)[amazon]

江戸川乱歩『江戸川乱歩トリック論集』
戦後、江戸川乱歩は海外作品を渉猟し、独自のトリック研究に没頭した。物理トリックは本当に出尽くしたのか。これからのミステリが進むべき道とは……。全推理ファン必読の名篇「類別トリック集成」、およびその随筆版『探偵小説の「謎」』ほか、乱歩のトリック論を精選して一冊に。横溝正史との対談「探偵小説を語る」、中島河太郎・山村正夫による「トリック分類表」を併録。
(中公文庫 1430円)[amazon]

『外国語を届ける書店』白水社編集部編
ひとつの言語に特化した専門書店。その書店員はどんな思いで本を届けているのか。九つの専門書店に尋ねたインタビュー集。レ・シャピートル(フランス語)、ナウカ・ジャパン(ロシア語)、セルバンテス書店(スペイン語)、ミランフ洋書店(スペイン語)、チェルビアット絵本店(イタリア語)、内山書店(中国語)、東方書店(中国語)、キタプチ(トルコ語、アラビア語)、チェッコリ(韓国語)
(白水社 2200円)[amazon]

城昌幸『みすてりい』
江戸川乱歩が「人生の怪奇を宝石のように拾い歩く詩人」と評した、詩人にして探偵作家・城昌幸の掌篇傑作選。たった四頁に人生の悲哀が淡彩画の筆致で描かれる「ママゴト」、自殺した男の残した企みが読者にも忘れ難いイメージを残す「スタイリスト」など、自選集『みすてりい』全篇を乱歩の跋文を含め完全収録。秘密結社に追われる男たちの運命を描いたデビュー作「脱走人に絡る話」とその続篇「仮面舞踏会」、城左門名義の散文詩的作品等を増補。
(創元推理文庫 1100円)[amazon]

城昌幸『のすたるじあ』
女が語った美しい故郷の風景とは? 哀切極まる真相が胸を打つ「エルドラドオ」。中世錬金術師の甦りの秘薬をめぐる奇譚「復活の霊液」他、星新一がショートショートの先駆者と仰いだ城昌幸の傑作選『のすたるじあ』(牧神社)を完全収録。第Ⅱ部には、酒場の主人が語る数奇な運命譚「面白い話」、ナイル河畔に出没する魔性の民の恐怖と誘惑を描く「吸血鬼」、ドッペルゲンガー譚「うら表」など、書籍初収録を含む珠玉の短篇を収める。
(創元推理文庫 1100円)[amazon]

ジョン・コナリー『キャクストン私設図書館』
〈キャクストン私設図書館&書物保管庫〉には、ハムレット、シャーロック・ホームズなど名作の登場人物たちが実体化して住んでいる。この図書館を訪れた読書好きのバージャー氏は、やがて物語の世界を揺るがす大事件を引き起こし……。表題作ほか、同図書館で語り継がれるホームズの逸話や、異世界冒険譚『失われたものたちの本』のスピンオフ短編など全4作品を収録。「本」と「物語」がテーマの作品集。田内志文訳
(創元推理文庫 1320円)[amazon]

メグ・シェイファー『時計島に願いを』
ルーシーは児童書のベストセラー〈時計島〉シリーズの作家からの招待状を受けとった幸運なひとりだった。作家が住む時計島には彼女を含め四人の男女が招待されていた。作家の出す問題に答えて優勝した者がシリーズ最新作に関するすべての権利を得られるというのだ。ルーシーはゲームを勝ち抜き、教え子のクリストファーを養子に迎えるという夢を叶えることができるのか。心躍るハートウォーミングな物語。杉田七重訳
(東京創元社 3740円)[amazon]

カルロ・ヴェッチェ『カテリーナの微笑 レオナルド・ダ・ヴィンチの母
天才の母はカフカス出身の女奴隷だった。身体、自由、未来を奪われた少女の人生。新発見史料に基づく、イタリア発、話題の歴史小説。日高健一郎訳
(みすず書房 5940円)[amazon]

アンドルー・ライセット『シャーロック・ホームズの世界 大図鑑』
ホームズとドイルの共通点と相違点とは何か。世界的に最も評価の高い「ドイル伝」の著者による徹底分析。初公開の写真や図版もオールカラーで多数掲載。独自の多角的アプローチの決定版。日暮雅通訳
(河出書房新社 4950円)[amazon]

ヘリオドロス『エティオピア物語 
今しもうららかな一日が明けようとする朝、ナイル河口の丘の上から盗賊一味が見たものは、財物満載の無人の船、生々しい死体の山、そして手負いの凜々しい若者と、そばに寄り添う女神の如き美貌の娘であった――。古代ギリシア小説の最高峰、映画さながらの波瀾万丈のストーリーが展開する恋愛冒険小説巨編。(全2冊)下田立行訳
(岩波文庫 1001円)[amazon]

アレクサンドル・ゲルツェン『過去と思索 4』
1948年6月、共和派政府によるパリ民衆への大弾圧が起きた。その血塗られた惨劇は、ゲルツェンの思索を新しい境位に導いた。専制支配はペテルブルクだけではない。パリにもある。西欧への幻想は消えたのだ。金子幸彦・長縄光男訳
(岩波文庫 1650円)[amazon]

《MONKEY》vol.34 特集 ここにもっといいものがある
柴田元幸 責任編集
 翻訳家・岸本佐知子と柴田元幸が、いまいちばん訳したい創作をあつめた海外文学作品特集の第2弾。2人が選んで訳した英語圏の作家6名による、珠玉の8作品をお届け。
(スイッチパブリッシング 1320円)[amazon]

斎藤真理子『在日コリアン翻訳者の群像』
故国・朝鮮を離れ、日本に居を定めた在日コリアンたち。なぜ彼らは故国の文学の翻訳に、これほどの情熱を注いだか? 翻訳者の役割という、ともすると忘れられがちな先人たちの仕事に目を注ぐセミナー形式による講義。
編集グループSURE 2640円)

『パットゥパーットゥ 古代タミルの「十の長詩」
〈東洋文庫〉
紀元1~3世紀にインド亜大陸の南端で花開いたタミル古代文化。3世紀ころのタミル文化圏を紹介する「旅行案内書」かつ恋愛文学・英雄文学としての要素も持った詩文集。高橋孝信訳
(平凡社 3300円)[amazon]

ジャナ・デリオン『町の悪魔を捕まえろ』
先の事件で心に傷を負ったフォーチュン。それでもシンフルは平常どおり――なのに、またもや事件が。町の中年女性がネットのロマンス詐欺にあったのだ。犯人は町の住民とふんだフォーチュンとスーパーおば(あ)さまふたりは、義憤にかられて立ちあがった。さらに町一番の善人に悲惨な出来事が……。シンフルのパワフルトリオが懲りずに大暴れ、好評シリーズ第8弾。島村浩子訳
(創元推理文庫 1254円)[amazon]

マーサ・ウェルズ『システム・クラッシュ マーダーボット・ダイアリー
ある理由で大量殺人を犯したことがある暴走人型警備ユニットの“弊機”は、植民惑星での異星遺物汚染事件に巻き込まれるが、ARTこと探査船ペリヘリオン号の協力もあり、窮地を脱する。だがこの惑星を狙う冷酷な企業は、いまだ諦めてはいなかった。しかも弊機は原因不明の異常事態に襲われ……。大人気シリーズ、待望の第4弾。ローカス賞受賞作。中原尚哉訳
(創元SF文庫 1210円)[amazon]

《紙魚の手帖》vol.19
第34回鮎川哲也賞選評、および第2回創元ミステリ短編賞選評&受賞作・歳内沙都「桜越しに空を撮る」掲載。本邦初訳短編や既刊紹介コラムなどで贈る、ジョン・コナリーのミニ特集。本誌初登場・古矢永塔子や、注目の気鋭・嶋津輝が贈る読み切り掲載。新野剛志『粒と棘』連載最終回ほか。
(東京創元社 1540円)[amazon]

フリードリヒ・ニーチェ『善悪の彼岸』
「愛によってなされることは、いつも善悪の彼岸で起きる」「怪物とたたかう者は、そのとき自分が怪物にならないよう用心するがいい。長いあいだ奈落をのぞいていると、奈落のほうもお前をのぞき込む」――新訳でよみがえった晴れやかなニーチェが贈る、人間への比類なき応援歌。丘沢静也訳
(講談社学術文庫 1518円)[amazon]

海野十三『戦前・戦中期防諜小説集2 謎の要塞写真』
SF、科学小説、探偵小説で知られる海野十三は、戦中期には多数のスパイ小説、防諜小説も執筆した。「謎の要塞写真」「第三メーク・アップ」「盲光線事件」「秘密伝令百十九号」「声の双生児」「大空の戦慄」「要塞地帯」「血に染った石油伝票」「或る機密写真事件」「誰がスパイか」「やどかりの秘密」の11編を収録。
(大陸書館 2090円)[amazon]

アンドレイ・クルコフ『灰色のミツバチ』
ロシアとのあいだに設けられた緩衝地帯《グレーゾーン》。狙撃兵と地雷に囲まれた小さな村には、もう誰も残っていなかった。取り残されたように暮らし続ける中年男ふたりを除いて──。戦禍のウクライナを舞台に、『ペンギンの憂鬱』の著者が描く寓話的物語。沼野恭子訳
(左右社 4400円)[amazon]

ジェローム・ルブリ『魔女の檻』
羊を殺して頓死した男の事件を皮切りに頻発する凶事。二年前モンモール村で起きた惨劇の真相は? 反則ギリギリ仏産ミステリの衝撃。坂田雪子・青木智美訳
(文春文庫 1650円)[amazon]


ミハル・アイヴァス『もうひとつの街』
プラハの古書店で見つけた菫色の本に導かれ、〈私〉は魚が街路を泳ぎ悪魔のような動物が徘徊する〈もうひとつの街〉に迷い込む……。阿部賢一訳
(河出文庫 1210円)[amazon]

スティーヴン・キング『トム・ゴードンに恋した少女』
ハイキング中に家族とはぐれた9歳の少女。「何か」が潜む森の中、必死で生き抜く姿を描いた壮絶なサバイバル小説が全面改稿で甦る。池田真紀子訳
(河出文庫 990円)[amazon]

レイ・ブラッドベリ『塵よりよみがえり 新装版
万聖節前夜── 十月屋敷では、魔力をもつ一族の集会がはじまる。ファンタジーの巨匠が五十五年の歳月をかけて紡いだ伝説の作品。中村融訳
(河出文庫 1100円)[amazon]

チャールズ・ブコウスキー『詩人と女たち』
5
0歳の作家の元に、次々と女性が現れる。酒場と競馬場と朗読会を巡り、彼女たちとベッドを共にする。偉大なアウトローの最高傑作。中川五郎訳
(河出文庫 予価1650円)[amazon]

ジョン・スタインベック『赤い小馬/銀の翼で スタインベック傑作選
農家の少年が動物の生と死に向き合いながら成長していく、自伝的中篇「赤い小馬」のほか、名高い短篇「菊」「白いウズラ」「蛇」「朝めし」「装具」「正義の執行者」、さらに2014年に発見された幻の掌篇「銀の翼で」を本邦初訳として収録。芹澤恵訳
(光文社古典新訳文庫 1364円)[amazon]

E・T・A・ホフマン『ネコのムル君の人生観 
読み書きを習得し、自伝を執筆するネコのムル。美猫のミースミースと恋愛、結婚、そして離婚したムルは、ネコ学生組合に入り、歌で喝采を浴びる。そして、ミースミースの浮気相手との決闘、友人ムチウスの死などを経験したのち、上流階級のイヌたちのサロンを体験するなど、修業時代から成熟期までが描かれる。一方、修道院に入るよう院長に勧められたクライスラーは、異国から来た僧キプリアヌスと対決することになる。鈴木芳子訳
(光文社古典新訳文庫 1540円)[amazon]

アレクサンドル・デュマ『新訳 モンテ・クリスト伯 4』
まだ幸福になれるのかと自問する復讐者エドモン・ダンテス。怨敵を次々と襲う不幸の数々。嗚咽と痙攣の中で放たれる弾丸の行方はいかに……。物語はいよいよ佳境へ。西永良和訳
(平凡社ライブラリー 2090円)[amazon]

キム・チョヨプ『わたしたちが光の速さで進めないなら』
廃止予定の宇宙停留所には家族の星へ帰るため長年出航を待つ老婆がいた……少数者に寄り添う心温まる未来を描く短篇集、文庫化。カン・バンファ/ユン・ジヨン訳
(ハヤカワ文庫NV 1100円)[amazon]

マリオン・メッシーナ『窒息の街』
これはオーレリーの18歳から20歳までの悪戦苦闘の記録。優秀な成績で大学に入った彼女を待っていたのは、平等とは名ばかりの階級社会が押しつけてくる、平板で息もできない退屈の日々だった。メディアが報じない現代フランス社会の現実に肉薄するデビュー作。手束紀子訳
(早川書房 2970円)[amazon]


ピエール・ヴェリー『アヴリルの相続人 パリの少年探偵団2
〈論創海外ミステリ〉
名探偵ドミニック少年を悩ませる新たな謎はミステリアスな遺言書。アヴリル家の先祖が残した巨額の財産を手にするのは誰だ? 〈パリの少年探偵団〉シリーズ続篇。塚原史訳
(論創社 2200円)[amazon]

鄭執『ハリネズミ・モンテカルロ食人記・森の中の林』
鄭執は作家・脚本家・映像作家として活躍する中国の若きクリエイター。80後(バーリンホウ)世代の旗手。初邦訳となる本書には、中国東北部の中核都市である故郷・瀋陽の街から、あるいは鬱々と・あるいは劇的に・あるいは飄々と逃奔する青年を主人公とする、三つの物語を収録。関根謙訳
(アストラハウス 2420円)[amazon]

立野井一恵『新しい、美しい日本の図書館』
全国で続々と図書館が誕生している。サードプレイスとしての図書館や有名建築家の手掛けた図書館、図書館以外の施設も含まれた複合型の図書館など、ユニークな取り組みも。2000年以降に建てられた図書館のなかから、絶対に行ってほしい45の図書館を厳選して紹介。
(エクスナレッジ 1980円)[amazon]

アルベルト・マンゲル『すてきなモンスター 文学作品に登場するわが友人たち
ドラキュラ、アリス、赤ずきん、ファウスト、スーパーマン……古今東西の伝説や文学作品に描かれた登場人物たちをめぐる、『図書館 愛書家の楽園』の著者による最新エッセイ集。著者が子供の頃から心惹かれてきた童話、小説、神話、伝承に登場するモンスター=異形の、もしくは人間離れした、あるいは一筋縄ではいかないキャラクターたちと、その背後に広がる驚くべき文学世界が綴られる。野中邦子訳
(白水社 2970円)[amazon]


▼9月刊

ナイオ・マーシュ『楽員に弔花を』
〈論創海外ミステリ〉
リボルバーは彼を狙って確かに発砲された。しかし、それは空包の筈だった……。夜間公演の余興を一転して惨劇に変えた恐るべき罠。誰が、何故、どのように仕組んだのか。夫婦揃って演奏会場を訪れていたロデリック・アレン主任警部が不可解な事件に挑む。シリーズ第15作。渕上痩平訳
(論創社 3960円)[amazon]

ジョージ・メレディス『ビーチャムの生涯』
メレディスは『エゴイスト』で人間性に潜むエゴを徹底的に糾弾するするに先んじて、作者自らが最も愛していたとされる登場人物を創造していた。それが本書の主人公ビーチャムである。夏目漱石が影響を受けた知られざる近代英文学の傑作。菊池勝也訳
(松柏社 8800円)[amazon]

ヴァージニア・ウルフ『灯台へ』
「ええ、いいですとも。あした、晴れるようならね」スコットランドの小さな島の別荘で、哲学者ラムジー氏の妻は末息子に約束した。少年は夜通し輝くあの夢の塔に行けると胸を躍らせる。そして10年の時が過ぎ、第一次大戦で一家は息子の一人を失い、再び別荘に集う――。たった二日間の出来事だけで愛のゆるぎない力を描き出すことによって文学史を永遠に塗り替え、女性作家の地歩をも確立した英文学の傑作。鴻巣友季子訳
(新潮文庫 935円)[amazon]

J・D・サリンジャー『このサンドイッチ、マヨネーズ忘れてる ハプワース16、1924年』
ああ、人生って、目を見開いてさえいれば、心躍る楽しいことに出会えるんだね――。「バナナフィッシュにうってつけの日」で自殺したグラース家の長兄シーモアが、七歳のときに家族に宛てて書いていた手紙「ハプワース」。『ライ麦畑でつかまえて』以前にホールデンを描いていた短編たち。死まで続いた長い長い沈黙の前に、サリンジャーが生への祈りをこめて遺した9編。金原瑞人訳
(新潮文庫 781円)[amazon]

『タナトスの蒐集匣 耽美幻想作品集
泉鏡花、谷崎潤一郎、小栗虫太郎、太宰治ほか名だたる文豪達による良識や想像力を越えた怪作10篇。【収録作品】坂口安吾「桜の森の満開の下」/芥川龍之介「影」/江戸川乱歩「芋虫」/泉鏡花「浮舟」/折口信夫「身毒丸」/小栗虫太郎「白蟻」/谷崎潤一郎「刺青」/夢野久作「瓶詰地獄」/太宰治「駈込み訴え」/夏目漱石「夢十夜」
(新潮文庫 737円)[amazon]

ジョージ・オーウェル『一九八四』
主人公ウィンストンは、ビッグ・ブラザーと党が支配する、戦時下の超管理社会オセアニアの真実省で、公式の歴史改変を担当していたが……。現在のハイテク監視社会、情報操作とフェイクニュースによる大衆支配、戦争やテロを口実にした社会的自由の制約、密告と労働改造所や矯正収容所の思考操作、社会階級の固定化と格差社会、その他現代社会のあらゆる側面が恐ろしいほどの密度で詰め込まれた傑作。山形浩生訳
(講談社 1980円)[amazon]

アラン・フラド『リスボンのブック・スパイ』
第二次世界大戦下、ニューヨーク公共図書館で働くマリアは、戦略分析のため枢軸国の書籍を収集する任務を受けて、リスボンに旅立った。同地では書店を営む青年ティアゴが、書類偽造の天才ローザとともに秘密のユダヤ人避難活動を行っていた。戦時下のリスボンを舞台に、本を愛する者たちの戦いを描く傑作長編。髙山祥子訳
(東京創元社 2750円)[amazon]

R・J・エロリー『弟、去りし日に』
保安官のヴィクターの元に弟の訃報が届いた。彼は車で何度も轢き殺されたという。弟とは約12年間会っていなかったが、唯一の肉親となった弟の10歳の娘から、真相を調べてほしいと頼まれたヴィクターは、捜査中の少女殺人事件を追いつつ、弟の死の謎へ踏み込んでいくが……。実力派作家による心揺さぶるミステリ。吉野弘人訳
(創元推理文庫 1650円)[amazon]

ジャン=クリストフ・グランジェ『ミゼレーレ 上・下
パリの教会で聖歌隊指揮者が不審死を遂げた。来合わせた元刑事と、薬物依存症で休職中の若い刑事が捜査に加わる。聖歌隊の少年が容疑者として浮かび、死んだ指揮者の性的嗜好などが明らかになっていくが、殺された男はピノチェト圧制下のチリからの亡命者だった。ナチスが研究していた謎の兵器、南米のカルト教団……二人のはぐれ者刑事の過去が複雑に絡み合う傑作ミステリ。平岡敦訳
(創元推理文庫 各1430円)[amazon]

フランソワ=アンリ・デゼラブル『傷ついた世界の歩き方 イラン縦断記
〈エクス・リブリス〉
女性、命、自由! デモの怒号が響くテヘランで、ニコラ・ブーヴィエの名著を辿り直す冒険が始まる。テヘランからエスファハーン、ペルセポリスを経てザーヘダーン、サッゲズに至る縦断記は、傷ついた世界を生きる者のため「世界の傷口」に命がけでペンを差し入れる新しい紀行文学。アカデミー・フランセーズ賞受賞の作家の日本デビュー作。森晶羽訳
(白水社 2970円)[amazon]

ズビグニェフ・ヘルベルト『ヘルベルト詩集』
人間の罪に対する全面的抗議と人間への信頼を結晶させた、厳しくも簡潔な表現で知られる20世紀ポーランドを代表する詩人ヘルベルト(1924-98)の詩を、9冊の詩集から精選。関口時正編訳
(未知谷 3300円)[amazon]

イーディス・ウォートン『ビロードの耳あて イーディス・ウォートン綺譚集
欲しいのは、変化、休息、人生。女性初のピューリッツァー賞作家であり、19世紀末から20世紀にかけてのアメリカ文学史上に名高い、短編の名手ウォートンによる、本邦初訳を含む待望の作品集。予想もつかない展開と結末。豊かな教養と想像力が生んだ極上の14作。中野善夫訳 【収録内容】 満ち足りた人生/夜の勝利/鏡/ビロードの耳当て/一瓶のペリエ/眼/肖像画/ミス・メアリ・パスク/ヴェネツィアの夜/旅/あとになって/動く指/惑わされて/閉ざされたドア/〈幼子らしさの谷〉と、その他の寓意画
(国書刊行会 5280円)[amazon]

ジェレミー・ドロンフィールド『アウシュヴィッツの父と息子に』
移送される父を追い、自らアウシュヴィッツ行きを志願した息子。引き裂かれる6人の家族、それぞれの運命、そして、すべてを乗り越える親子の絆。『飛蝗の農場』作者による感動のノンフィクション。越前敏弥訳
(河出書房新社 3190円)[amazon]

アンデシュ・デ・ラ・モット『山の王 上・下
資産家の娘が失踪した事件を追うマルメ警察警部レオ・アスカー。だがある日、上層部の横槍で担当を外されてしまう。異動先は変人ばかりが集う謎の部署だった……。スウェーデン警察小説。井上舞・下倉亮一訳
(扶桑社ミステリー 各1375円)[amazon]

アグラヤ・ヴェテラニー『その子どもはなぜ、おかゆのなかで煮えているのか』

ピエロの父、首つりの母、踊り子の私。わが家の鍋は煮えたぎる。伝説の夭逝作家が唯一遺した、故郷なき世界文学。16カ国で翻訳。松永美穂訳
(河出書房新社 2750円)[amazon]

横溝正史『死仮面』
「八つ墓村」事件を解決した金田一耕助は、岡山県警の磯川警部から、殺人容疑者の女が腐乱死体で発見され、現場に石膏のデスマスクが残されていた奇妙な事件の話を聞く。やがて舞台は東京へ移り……。幻の第4回を初出誌から収録した入手困難のオリジナル版、待望の復刊。著者直筆の訂正入り草稿25頁も収録。初文庫化短篇「黄金の花びら」を併録。解説 山口直孝・日下三蔵
(春陽文庫 1100円)[amazon]

甲賀三郎『盲目の目撃者』
戦前、江戸川乱歩と人気を二分した本格派の重鎮の中篇傑作集。 「盲目の目撃者」「山荘の殺人事件」「隠れた手」を収録。付録として横溝正史のエッセイ「好敵手甲賀・大下」。解説 日下三蔵
(春陽文庫 1045円)[amazon]

カーソン・マッカラーズ『哀しいカフェのバラード』
さびれた南部の町で暮らすアミーリアは、言い寄る男に見向きもせず、独身で日用品店を営んでいる。ある日彼女のもとに背中の曲がった小汚い男が現われた。町中が噂するなか、どういうわけか彼女はこの小男に惚れこみ、同居してカフェを始める。そこにアミーリアの元夫が刑務所を出て帰還。奇妙な三角関係の行方は――。村上春樹訳/山本容子画
(新潮社 2420円)[amazon]

ウィリアム・フォークナー『響きと怒り』
出奔した長女への三兄弟の激しい想いを、アメリカ南部の凋落する名家の悲劇を軸に痛ましくも美しく描く。最高傑作を画期的新訳で。桐山大介訳
(河出書房新社 3960円)[amazon]

ルシア・ベルリン『楽園の夕べ ルシア・ベルリン作品集
『掃除婦のための手引き書』『すべての月、すべての年』に続く待望の短編集。岸本佐知子訳
(講談社 2860円)[amazon]

ジョージ・ソーンダーズ『ソーンダーズ先生の小説教室 ロシア文学に学ぶ書くこと、読むこと、生きること
現代アメリカ文学を代表する作家ジョージ・ソーンダーズが、ロシア文学の巨人たちと寄り添い、悩み、格闘する。チェーホフ、ツルゲーネフ、トルストイ、ゴーゴリ──珠玉の短編小説7本を通じて、物語の読み方と書き方、そして人生の意味に迫る、刺激に満ちた楽しい創作講座。秋草俊一郎・柳田麻里訳
(フィルムアート社 3630円)[amazon]

川口則弘『文芸記者がいた!』
日本に新聞が誕生して150年、文学と密接に関わり、長きにわたって併走してきた文芸記者の仕事と生き様を追い、文学をめぐる環境がどう変わってきたかを探る、まったく新しい文学史。
(本の雑誌社 1980円)[amazon]

アガサ・クリスティー(チャールズ・オズボーン小説化)『招かれざる客 小説版
11月の寒々とした晩。南ウェールズの霧深い田舎道で車が脱輪し、男は近くの大きな屋敷に助けを求めた。だが、そこには車椅子に座った屋敷の当主の射殺体が。そして傍らには当主の若く美しい妻が銃を握って立っていた。果たして妻が犯人なのか? どんでん返し連打の名作戯曲をチャールズ・オズボーンが小説化。羽田詩津子訳
(早川書房/クリスティー文庫 1144円)[amazon]

《ミステリマガジン》11月号
〈特集 世界のジョン・ディクスン・カー〉
ジョン・ディクスン・カー「運命の銃弾」(本邦初訳)、ヤーン・エクストレム、ポール・アルテ、孫沁文、[資料と研究]小山正
(早川書房 1320円)[amazon]

《創元推理文庫 復刊フェア》
フランシス・アイルズ『レディに捧げる殺人物語』 [amazon]
ヒラリー・ウォー『この町の誰かが』
[amazon]
F・W・クロフツ『フレンチ警部の多忙な休暇』
[amazon]
ドロシー・L・セイヤーズ『死体をどうぞ』
[amazon]
ビル・S・バリンジャー『煙で描いた肖像画』
[amazon]
パーシヴァル・ワイルド『検死審問
 インクエスト[amazon]
倉阪鬼一郎・南條竹則・西崎憲編訳『淑やかな悪夢
 英米女流怪談集 [amazon]
創元SF文庫
ジェイムズ・P・ホーガン『時間泥棒』
[amazon]
内容

喜志哲雄『ミュージカル映画が《最高》であった頃』
ミュージカル映画の始祖『ジャズ・シンガー』から、フレッド・アステア、ジーン・ケリー、ジュディ・ガーランドの傑作の数々、そして『シカゴ』『イントゥ・ザ・ウッズ』『ラ・ラ・ランド』といったミュージカル映画の未来を担う作品まで――1960年代より本場ブロードウェイで舞台・映画を観続けてきた筋金入りの演劇研究家が〈ミュージカル映画の黄金時代〉を語りつくす。目次
(国書刊行会 3300円)[amazon]

サマンタ・シュウェブリン『救出の距離』
アルゼンチンの片田舎の診察室で死にかけている女アマンダ、その横にたたずむ謎の少年ダビ。彼女はなぜ死にかけているのか、ふたりは対話を通してその記憶を探っていく。すべては熱に浮かされているアマンダの妄想なのか、ダビはそこにいるのかいないのか、そして愛する娘はどこに行ってしまったのか……。〈スパニッシュ・ホラー文芸〉を牽引する作家による、めくるめく愛の悪夢がいまここに。シャーリイ・ジャクスン賞中長篇部門受賞作&国際ブッカー賞最終候補作。宮﨑真紀訳
(国書刊行会 3300円)[amazon]

トーマス・ベルンハルト『石灰工場』
廃墟となった石灰工場でコンラートはなぜ妻を射殺したのか。1981年にベルンハルト初訳書として刊行された伝説的な衝撃作を新訳。飯島雄太郎訳
(河出書房新社 3245円)[amazon]

T・S・アーサー『酒場での十夜 私がそこで見たこと
酒が原因で人間関係、家庭、やがて村全体が崩壊していく10年を描いた怪作。1800年代アメリカ。小さな村シーダヴィルを訪れた語り手は、居酒屋兼宿屋「鎌と麦束亭」を定宿とする。村を訪れるたびに、酒によって人々が蝕まれていく様子を目撃し、やがては殺人事件に遭遇。自分の身すらも危険にさらされる。禁酒法制定前のアメリカの文化を伝える貴重な作品(1854刊)。森岡裕一訳
(角川文庫 1100円)[amazon]

ウィリアム・シェイクスピア『新訳 ハムレット 増補改訂版
父王を亡くした王子ハムレットは、母を娶って王座を奪った叔父を憎む。ある夜、父の亡霊から、自分は叔父に毒殺されたと聞かされるが、はたしてそれは真実か? 迷いつつも気がふれたふりをして復讐の時を待つが……。日本初、原文のリズムとライムを全訳した驚異の新訳。最新研究を反映し増補改訂。 テキストF版に基づき、Q版との違いも全て注記した決定版。河合祥一郎訳
(角川文庫 726円)[amazon]

パウロ・コエーリョ『マクトゥーブ An Inspirational Companion to The Alchemist
『アルケミスト』に感動したひとへ――。神はそのペンとインクを、目標に向かって進む私たちを助けるために使う。パウロ・コエーリョが、自らの運命を変えた「教え」を特別に明かした人生の知恵。木下眞穂訳
(角川文庫 968円)[amazon]

三宅博司『アルベール・カミュ 生きることへの愛
世界の美しさと、人間の苦しみと――双方に忠実であろうとしつつ、生きる意味を探求し続けた作家、カミュ。『異邦人』『ペスト』をはじめとする作品は、時をこえて私たち自身の生をも映し出している。アルジェリアでの出生から不慮の死まで、生涯に沿ってテクストをよみとく。「不条理」の先に作家は何を見ていたのか?
(岩波新書 1056円)[amazon]

セオドア・ドライサー『アメリカの悲劇 上』
第一次大戦後のカンザスシティ。貧しい家庭から抜け出し幸福な都会生活を夢みる青年クライドは、伯父の会社に就職。女工ロバータと恋に落ちるも、さらに社交界の令嬢ソンドラからも目をかけられ……。貧困と差別、性の在り方、資本家と労働者など、現代に繋がるアメリカ社会の断面を浮き彫りにしながら、その中に生きる人々の苦闘を描く。1920年代アメリカ文学の傑作。村上淳彦訳
(花伝社 3300円)[amazon]

コリン・オサリヴァン『サニー』
夫が遺した最先端の家事ロボット。それは従順で賢くて完璧なはずだった。恐るべきマニュアルを知るまでは……。日本を舞台に描く話題のダークスリラー。堤朝子訳
(ハーパーBOOKS 1280円)[amazon]

ケイト・クイン/ジェイニー・チャン『不死鳥は夜に羽ばたく』
1906年。サンフランシスコを訪れた売れないオペラ歌手ジェマは、実業家に美声を買われ、千載一遇の好機を手に入れる。一方、チャイナタウン育ちのスーリンは結婚から逃れるため街から逃げ出そうとしていた。やがて行方不明の友人を捜す二人は、隠された陰謀を知ってしまう。そのとき街を大災害が襲い――。全米ベストセラー作家か贈るシスターフッド・ミステリー。加藤洋子訳
(ハーパーBOOKS 1370円)[amazon]

江戸川乱歩『江戸川乱歩座談』
戦前、孤高の「人嫌い」として知られた江戸川乱歩は、戦後、日本探偵小説界の名ホストとして活躍した。森下雨村・横溝正史ら雑誌「新青年」の立役者たちから、小林秀雄・幸田文ら文壇の著名人まで――探偵小説の魅力を共に語り尽くす、夢の饗宴。乱歩の参加した主要な座談・対談をセレクトした文庫オリジナル。
(中公文庫 1430円)[amazon]

カレス・ルービン『ターングラス 鏡映しの殺人
1881年イギリス、エセックスのターングラス館で起こった毒殺事件。事件解明の鍵は、館に監禁された女性が持つ一冊の本にあるという。一方、1939年アメリカ、カリフォルニアでは推理作家が奇妙な死を遂げる。彼は、死ぬ間際に58年前の毒殺事件の物語を書いていた――。越前敏弥訳
(早川書房 2750円)[amazon]

マーガレット・アトウッド『老いぼれを燃やせ』
高齢者を口減らしすべく介護施設をつぎつぎ襲撃する若者と、待ち受ける老婦人を描く表題作。4人の夫を看取ってきた女性と、"運命の相手"との再会を描く「岩のマットレス」。復讐譚、ゴシックホラー、社会批評など、バラエティに富んだ9篇を収めた傑作短篇集。鴻巣友季子訳
(早川書房 3080円)[amazon]

クレマンス・ミシャロン『寡黙な同居人』
家族思いなエイダンは実は連続殺人犯で、次の獲物、レイチェルを監禁している。彼女はエイダンの娘に近づき、逃亡の機会を探るが――。高山真由美訳
(ハヤカワ・ミステリ文庫 1848円)[amazon]

エラリー・クイーン『Zの悲劇 新訳版
Yの悲劇』の事件から十年後。サム警視は退職し、愛娘ペイシェンスと私立探偵を開業していた。ある依頼で滞在中の町で、関係者の上院議員が殺害される。あらゆる状況証拠がひとりの男を指している難事件に、名探偵ドルリー・レーンの出馬を請うことに……。〈レーン四部作〉新訳版。中村有希訳
(創元推理文庫 990円)[amazon]

エリカ・ルース・ノイバウアー『豪華客船オリンピック号の殺人』
実は英国政府のエージェントであるレドヴァースの依頼で、夫婦のふりをして豪華客船オリンピック号に乗り込んだジェーン。目的はドイツのスパイを探し出すことだ。ジェーンは初めての捜査(?)にやる気満々だったが、乗客の女性が新婚の夫が消えてしまったと騒ぎはじめた。船長はとりあおうとしなかったが、ジェーンは乗船前に女性が夫といるところを見ていた……。好評シリーズ第三弾。山田順子訳
(創元推理文庫 1386円)[amazon]

『日中競作唐代SFアンソロジー 長安ラッパー李白』大恵和実編
豪華絢爛、大唐帝国を魔改造せよ――ラッパー李白が、怪獣パンダが、キチン質の李世民が、空海が、三蔵法師が大暴れ。日本と中国の8作家が織り成す、国境を越えた奇跡のアンソロジー。円城塔・十三不塔・立原透耶・灰都とおり・梁清散・李夏・羽南音・祝佳音
(中央公論新社 2750円)[amazon]

ジャン・スタロバンスキー『ルソー 透明と障害 新装版
ルソーがその全生涯を賭して実現しようとしたのは、純粋な自我の確立とその他者による承認、それにもとづく人間相互のトータルな理解と交流であった。それこそまさに精神の〈透明〉であり、ルソーはこの欲求を疎外する一切の〈障害〉に対立し、透明なるものを復権しようとする。その作品群に分け入り、〈透明〉をキイ概念として、精巧かつ詳細な内面的伝記を構成したルソー研究の画期作。山路昭訳
(みすず書房 5170円)[amazon]

ベルトルト・ブレヒト『セツアンの善人/三文オペラ』
架空の都市セツアンを舞台に、貧困と不正義に満ちた社会で善良であり続けることの難しさを描いた寓意劇『セツアンの善人』と、女王陛下の戴冠式を目前にしたロンドンを舞台に、ギャングと乞食と売春婦たちが繰り広げるドタバタ音楽劇『三文オペラ』を収録。『三文オペラ』は、初演当時の空気を色濃く残す1928年初版からの翻訳。酒寄進一訳
(東宣出版 2420円)[amazon]

『種村季弘・異端断片集 綺想の美術廻廊』
種村季弘没後20年。 異端の美学のその先に、世界の真実を見据えてきた〈知の巨人〉の「吸血鬼」「化身」「怪物」「魔術」をめぐる珠玉の言葉と、 現代作家21名の綺想世界との時空を超えた邂逅が、 かつてない美術廻廊を錬成する。齋藤靖朗監修
(芸術新聞社 3630円)[amazon]

渡辺温『あゝ華族樣だよと私は噓を吐くのであつた』 編・絵 YOUCHAN
【収録内容】影 Ein Märchen/少女/赤い煙突/どぶ鼠/可哀相な姉/風舩美人/勝敗/あゝ華族樣だよと私は噓を吐くのであつた/兵隊の死/父を失ふ話/シルクハツト/足——A PARABLE/繪姿/オング君の說/古都にて/夏の夜語 (本文表記は旧字旧仮名)解説 長山靖生
盛林堂ミステリアス文庫 3000円)[amazon]

トンマーゾ・ピンチョ『ぼくがエイリアンだったころ』
灰色の空をしたアメリカ西海岸の街アバディーン。大人への不信感から、九歳の時に眠ることをやめた青年ホーマー・B・エイリアンソンは、ある夜、橋のたもとでカートと名乗るミュージシャンに出会う。身を削りながら自らの音楽表現を追求するカートと、別世界の恋人を求めて旅に出るホーマー。間違って地球に飛ばされてきた別世界の子供たちがたどり着く先とは――。イタリアのポストモダン文学の奇才トンマーゾ・ピンチョの代表作。二宮大輔訳
こどばのたび社 1980円)[Book Cellar]

ホルヘ・ルイス・ボルヘス/アドルフォ・ビオイ=カサーレス『ドン・イシドロ・パロディ 六つの難事件』
黄道十二宮を用いた加入儀礼の最中に宗派の指導者が殺され、容疑をかけられた新聞記者。急行列車内で起きたダイヤ窃盗と殺人事件に巻き込まれた舞台俳優。雲南の至聖所から盗まれた宝石を追ってブエノスアイレスへやって来た中国人魔術師の探索行……。身に覚えのない殺人の罪で収監中の元理髪店主イシドロ・パロディが、面会人が持ち込む数々の難事件を解き明かす探偵小説連作集。木村榮一訳
(白水Uブックス 1980円)[amazon]

近藤瑞木『江戸の怪談 近世怪異文芸論考
怪談は怪異への懐疑という逆境に耐え、鍛えられ、しぶとく生き続けた――。最も怪談書の流行した18世紀。神秘への感受性はどのように醸成されていったのか。江戸の怪談を新たに見出し、知られざるその世界を切り開く。【内容】儒者・神職の怪談/百物語・怪談会という「場」/怪談仲間とハナシのネットワーク/妖怪画の技法/怪談とメディア/怪談の文体/「実話」と「虚構」
(文学通信 3080円)[amazon]

ルシア・ベルリン『すべての月、すべての年 ルシア・ベルリン作品集
中学でスペイン語を教える新米女性教師が、聡明な不良少年のティムにとことん振り回される(「エル・ティム」)。夫を失った傷を癒やすために訪れたメキシコの小さな漁村で、女がダイビングを通じて新たな自分と出会う(「すべての月、すべての年」)。世界中で驚きと喜びをもって迎えられた、至高の短篇集。岸本佐知子訳
(講談社文庫 1100円)[amazon]

パク・サノ『君をさがして』
魅力的な女性アランに淡い恋心を抱く学生ソヌ。ある日、アランは娘ヨヌをのこし、忽然と姿を消してしまう。それから10年以上が経過するもアランの行方を追い続けるソヌのもとに、アランそっくりな女性ジアが現れるが……。韓国の著名な英米ミステリ翻訳家の初長編小説。柳美佐訳
(マガジンハウス 1760円)[amazon]

ジョエル・タウンズリー・ロジャーズ『止まった時計』
〈ジョエル・タウンズリー・ロジャーズ・コレクション〉
絶世の美人女優として一世を風靡したニーナ・ワンドレイが自宅で命を狙われ、瀕死の重傷を負った。稀代の異才による、過去と現在が入り乱れる眩惑的サスペンス。世紀の怪作『赤い右手』をも凌ぐ傑作。夏来健次訳 内容
(国書刊行会 2640円)[amazon]

遠山明子編訳『ドイツロマン派怪奇幻想傑作集』
18世紀末に興隆したドイツロマン派は、不合理なものを尊び、豊かな想像力を駆使して、怪奇幻想の物語を数多く紡ぎだした。ティーク「金髪のエックベルト」、フケー「絞首台の小男」、コンテッサ「死の天使」、アルニム「世襲領主たち」、ホフマン「砂男」など9篇を収録。
(創元推理文庫 1320円)[amazon]

アンソニー・ホロヴィッツ『死はすぐそばに』
テムズ川沿いの高級住宅地で、金融業界のやり手がクロスボウの矢を喉に突き立てられて殺された。昔の英国の村を思わせる理想的な環境を乱す新参者の被害者には、住人全員が我慢を重ねてきていた。誰もが動機を持っている難事件に、警察は探偵ホーソーンを招聘するが……。〈ホーソーン&ホロヴィッツ〉シリーズ最新刊。山田蘭訳
(創元推理文庫 1210円)[amazon]

E・T・A・ホフマン『ネコのムル君の人生観 上
人語を解するネコのムルが執筆した回想録と、架空の音楽家クライスラーの伝記とが交差するホフマンの長編代表作。ムルは飼い主の先生の書物から文字をおぼえ、書斎の本を読み漁って知識を蓄え書くことを習得する。そして、「ドイツ教養小説」の定型にしたがった自伝を記そうとするのだが、そのとき、楽長クライスラーの伝記を吸い取り紙や下書きに使ってしまい……。豊富な訳注と抜群に読みやすい訳文でホフマンの世界を堪能する。鈴木芳子訳
(光文社古典新訳文庫 1540円)[amazon]

レイチェル・カーソン『沈黙の春』
化学薬品の乱用で自然(生態系)が破壊され、人間をも蝕んでいくその恐ろしさを最初に告発した生物学者レイチェル・カーソンの代表作。残留農薬の問題をいち早く指摘し、社会に大きな影響を与えた。歴史を変えた世紀のベストセラーの新訳。渡辺政隆訳
(光文社古典新訳文庫 1210円)[amazon]

古川弘子『翻訳をジェンダーする』
翻訳小説の女性達は原文以上に「女らしい」言葉で訳されている。翻訳と社会と私達の密接な関係を読みとき、女性の声を伝えるフェミニスト翻訳の可能性を探る。
(ちくまプリマー新書 990円)[amazon]

ダルトン・トランボ『新訳 ジョニーは戦場へ行った』
第一次世界大戦中、仏戦線での砲撃により、視覚・聴覚・味覚・嗅覚と四肢を失った青年ジョー。すべてを奪われ、後悔の中で絶望に囚われた彼が、ふたたび世界と繋がるために見つけた希望とは? 赤狩りでハリウッドから追放されながら、数々の名作を生み出した脚本家トランボが第二次世界大戦中に発表した反戦小説、待望の新訳。波多野理彩子訳
(角川新書 1496円)[amazon]

マルセル・プルースト『『失われた時を求めて』名文選』
繊細複雑な文章と、その長さで文学史にそびえ立つ『失われた時を求めて』。岩波文庫版を全訳した編者が、生と死/愛と性/認識と忘却など、八つのテーマで選び抜いた断章は、あらすじを知らずとも、どの頁からでも気軽に楽しめる。人間と社会の深層をえぐる箴言と散文詩のような珠玉の文章には、世界の見方を一新する言葉が煌めく。吉川一義編訳
(岩波書店 3080円)[amazon]

甲賀三郎『戦前・戦中期防諜小説集1 雪原の謀略』
(大陸書館 2200円)[amazon]

陳舜臣『桃源亭へようこそ 中国料理店店主・陶展文の事件簿
神戸で中国料理店「桃源亭」を経営する華僑・陶展文。拳法の達人であり、漢方医としての顔も持つ。今は店を節子の甥にまかせ、悠々自適の身だ。華僑探偵、陶展文シリーズ全短篇6作に加え、料理ミステリ「幻の百花双瞳」を収録。
(徳間文庫 990円)[amazon]

チャールズ・R・ダーウィン『完訳 ビーグル号航海記 下』
南米最南端を回って、チリの大地震を経験したダーウィンは、進化論に結実する貴重な観察をしたガラパゴス諸島へ向かう。波瀾の博物探検はクライマックスへ。詳しい訳注付き。荒俣宏訳
(平凡社ライブラリー 2200円)[amazon]

アレクサンドル・デュマ『新訳 モンテ・クリスト伯 3』
舞台はパリへ。伯爵が連れた美しい謎のギリシャ人女性は誰なのか。カヴァルカンティとは誰なのか。さまざまな人を巻き込み華やかな社交界を背景に巧妙に仕掛けられる復讐の罠。西永良和訳
(平凡社ライブラリー 1980円)[amazon]

ステファン・テメルソン『缶詰サーディンの謎』
〈ドーキー・アーカイヴ〉
一人の文豪が列車の中で頓死する。残された妻と愛人は恋人同士になりスペインのマヨルカ島に移住、そこに女占い師と息子の天才少年、下半身不随の哲学教師とその妻子が現れ、さらにポーランドの将軍の老いた娘やキャプテン・カサノヴァなど多彩な人物が入り乱れ、誰も予想できないラストへ……。ポーランドの前衛作家による奇妙奇天烈な哲学ノヴェル。大久保譲訳
(国書刊行会 3080円)[amazon]

スティーヴン・キング『コロラド・キッド 他二篇』
市販されなかったレアな表題作、長く絶版だった『ライディング・ザ・ブレット』、新作『浮かびゆく男』を収録した日本オリジナル中篇集。高山真由美・白石朗訳
(文春文庫 1760円)[amazon]

ローレンス・ブロック『エイレングラフ弁護士の事件簿』
エラリイ・クイーンが気に入って雑誌に掲載した第一作「エイレングラフの弁護」から38年。アメリカン・ミステリーの巨匠ブロック(『八百万の死にざま』)がじっくり書き継いだシリーズ短編を完全収録。本邦初訳もふくむ全12編。これぞ珠玉。ブラック・ユーモアとヒネリとキレが絶妙にブレンドされた短編ミステリー集。田村義進訳
(文春文庫 1210円)[amazon]

リチャード・コールズ『殺人は夕礼拝の前に』
英国の田舎町チャンプトンの司祭ダニエルは悩んでいた。教会のトイレ設置をめぐって住民が真っ二つに割れてしまったのだ。そんななか裕福な地元の名士が夜の教会で殺された。住民をまとめあげ、犯人を突き止めるには司祭が適任だ。狡猾な犯人にダニエルが挑む。西谷かおり訳
(ハヤカワ・ミステリ 2860円)[amazon]

レベッカ・ヤロス『フォース・ウィング 第四騎竜団の戦姫  上・下
20歳のヴァイオレットは竜の騎手となるため軍事大学に入学する。だがそこは、入学者の大半が命を落とす危険な場所だった! そんななか彼女は、所属する第四騎竜団(フォース・ウィング)の冷酷な団長ゼイデンに強く惹かれていく。極限状態の恋と、竜との絆、そして命がけの戦い――。原島文世訳
(早川書房 各2090円)[amazon]

ヨン・フォッセ『三部作(トリロギーエン)
アスレは不毛な海岸地帯の街をさまよっていた。妊娠中のアリーダを連れ、住居と仕事を探していたのだ。だが、お互いだけが家族の17歳を助けてくれる者はいない。決死の思いの選択は、やがて家族の生に影を落とす。ノルウェーのノーベル賞作家による連作短篇集。岡本健志・安藤佳子訳
(早川書房 3245円)[amazon]

ヨン・フォッセ『ヨン・フォッセ 1』
『人形の家』のイプセンの妻の十代、中年、老年を同時に登場させ独白させる『スザンナ』をはじめ、3作を収録した待望の戯曲集。
(ハヤカワ演劇文庫 2420円)[amazon]

『古井由吉翻訳集成 ムージル・リルケ篇
神秘主義、象徴主義の極北を、論理と音韻が共振れする日本語に移した圧倒的訳業。ロベルト・ムージル「愛の完成」「静かなヴェロニカの誘惑」(世界文学全集版「解説」、岩波文庫版「訳者からの言葉」を併録)。ライナー・マリア・リルケ「ドゥイノの悲歌」(『詩への小路』で試みられた散文訳「ドゥイノ・エレギー訳文」全十歌を収録)。
(草思社 2860円)[amazon]

エミーネ・セヴギ・エヅダマ『母の舌』
〈エクス・リブリス〉
「移民文学の母」と称され、20カ国以上で刊行されるトルコ出身のドイツ語作家、初の邦訳。ビューヒナー賞受賞。細井直子訳
(白水社 2860円)[amazon]


▼8月刊

松永美穂『世界中の翻訳者に愛される場所』
それは、シュトラーレンの「翻訳者の家」。「あなたがどの国から来ても、どんな言語の翻訳者でも、ここはあなたを受け入れます。じっくりと翻訳に専念していってください」ドイツの果ての町で、翻訳者のためのユニークな場所と出会った著者による、トランスレーター・イン・レジデンスのすすめ。
(青土社 2200円)[amazon]

ヤン・ポトツキ『サラゴサ手稿 
異本『サラゴサ手稿』全3巻完結。第42日―第66日。巻末に訳者による「ヤン・ポトツキについて」を収録。工藤幸雄訳
(創元ライブラリ 1320円)[amazon]

アシュリィ・エルストン『ほんとうの名前は教えない』
生きるため、他人になりすましてきた“わたし”。今回はボスから、エヴィという女の経歴を使い、ある男の裏稼業について調べろと指令を受けた。偶然を装って男と出会い、調査を続けていたある日、状況が一変する。パーティで出会った女性が、自分そっくりの外見で、自分の本名を名乗り、自分の経験を語ってきたのだ――。〈ニューヨーク・タイムズ〉ベストセラー第1位のサスペンス。法村里絵訳
(創元推理文庫 1540円)[amazon]

アン・クレア『雪山書店と嘘つきな死体 クリスティ書店の事件簿
故郷の雪山に帰ってきたエリーは、姉と看板猫とともにミステリ好きの集う書店、ブック・シャレーを切り盛りしていた。ある日、山腹と麓をつなぐゴンドラ内で男の刺殺体が発見される。男は直前に書店を訪れ、クリスティ『春にして君を離れ』の初版本を残しており、時を同じくして店からは従業員の女性が姿を消した。ふたつの事件には関係が? 新ミステリシリーズ。谷泰子訳
(創元推理文庫 1540円)[amazon]

シェーン・バウアー『ドキュメント民営刑務所』
身分を隠し、刑務官としてアメリカの民営刑務所に潜入したジャーナリストの著者が見たのは、信じられない世界だった――。民営刑務所の暗部を暴く傑作ノンフィクション。満園真木訳
(創元ライブラリ 1430円)[amazon]

ビル・ブライソン『アメリカを変えた夏 1927年』
リンドバーグが飛び、アル・カポネが暗躍し、ベーブ・ルースが打つ。情熱と楽天主義と悪徳に満ちた「大国」の姿を色彩豊かに活写。伊藤真訳
(白水社 4400円)[amazon]

荒巻義雄・巽孝之編『SF評論入門』
21世紀現在、世界はSF化してしまった。荒巻義雄の言う「SFする思考」は新しい日常の随所に浸透している。ならばSF評論は、いかにSF的現在を、そして現在 SFを語りうるか。古典から現代SFまで多くのテクストに対峙しつつ、SF評論家たちの来るべきSFのヴィジョンを透視する力作論考12篇を結集。内容
(小鳥遊書房 4180円)[amazon]

大友克洋全集6『G…‥』
大友克洋が25-26歳の頃、1979-1980年にかけて制作した2つの中編シリーズ連載『G…‥』『聖者が街にやって来る』を中心に、7篇の短編漫画と見開き連作ショート漫画を収録した作品集。
(講談社 3500円)[amazon]

大友克洋全集12『AKIRA 1』
1982年《ヤングマガジン》で連載開始した『AKIRA』第1~14回を発表時のままの形で収録。連載当時以来、目にする機会が失われていたLIVEな連載版『AKIRA』。
(講談社 3500円)[amazon]

森瀬繚『クトゥルー神話解体新書 2』
第1・第2世代のクトゥルー神話物語において重要な役割を担う主な人物を紹介。クトゥルー神話物語と縁の深い土地とその登場作品、概要などについて地図入りで説明。
(コアマガジン 2200円)[amazon]

《怪と幽》vol.017
第一特集 怪を語る/第二特集 真・女神転生Ⅴ Vengeance
(KADOKAWA 2200円)[amazon]

斎藤真理子『隣の国の人々と出会う 韓国語と日本語のあいだ
〈あいだで考える〉
いま、韓国の文学、音楽、ドラマや映画に惹かれ、その社会や言語に関心を持つ人はますます増えている。本書では、著者が韓国語(朝鮮語)を学び始めた背景、この言語の魅力、痛みの連続である現代史と文学の役割、在日コリアンと言語のかかわりなどを、文学翻訳の豊かな経験から親しみやすく語る。文字、音、声、翻訳、沈黙など、多様な観点から言葉の表れを捉え、朝鮮半島と日本の人々のあいだを考える一冊。
(創元社 予価1540円)[amazon]

ブライアン・エヴンソン『英日バイリンガル 現代ゴシック小説の書き方』
エドガー・アラン・ポー、ウィリアム・フォークナーから始まり、内田百閒、伊藤潤二、柴崎友香、『鬼滅の刃』までのゴシック、ホラーの作品世界を、現代アメリカの最重要ゴシック作家のひとりブライアン・エヴンソンが語り尽くす。書き下ろしを含むゴシック小説4篇(うち3篇は本邦初公開)と、訳者・柴田元幸との対談も収録。完全英日バイリンガル本。柴田元幸 訳・註 内容
(研究社 2420円)[amazon]

アンジェラ・カーター『英雄と悪党との狭間で』
〈論創海外ミステリ〉
終末感漂う近未来、家族を失った少女は共同体の“外側に存在する世界”で新たな価値観を知るのだが……。サマセット・モーム賞受賞作家による〈形而上小説〉。井伊順彦訳
(論創社 2750円)[amazon]

ヨン・フォッセ『朝と夕』
いた漁師ヨハネスのすべてが同じで、まったく異なる一日がはじまる……フィヨルドの風景に誕生の日と死の一日を描き出した、神秘的で神話的な幻想譚。「言葉で表せないものに声を与えた」としてノーベル文学賞を受賞したヨン・フォッセの珠玉の小品。伊達朱実訳
(国書刊行会 2420円)[amazon]

ジェイムズ・ジョイス『フィネガンズ・ウェイク Ⅰ・Ⅱ』
『ユリシーズ』に続いて死の間際まで書き継がれ、20世紀最大の文学的事件とされる大傑作。人間の意識と歴史・神話の重層的物語。柳瀬尚紀訳
(河出書房新社 6930円)[amazon]
ジェイムズ・ジョイス『フィネガンズ・ウェイク Ⅲ・Ⅳ』
海に流れこむアナ・リディアの美しい独白で夢の言語は閉じられる。数千年の人類の歴史を一夜の夢に凝縮した抱腹絶倒の円環的物語。柳瀬尚紀訳
(河出書房新社 5390円)[amazon]
ジェイムズ・ジョイス『フィネガンズ・ウェイク Ⅰ・Ⅱ/Ⅲ・Ⅳセット』
全2巻・セット函入
(河出書房新社 11,000円)[amazon]

アダニーヤ・シブリー『とるに足りない細部』
1949年8月、ナクバ(大災厄)渦中のパレスチナ/イスラエルで起きたレイプ殺人と、現代でその痕跡を辿るパレスチナ人女性。二つの時代における極限状況下の〈日常〉を抉る傑作中篇。山本薫訳
(河出書房新社 2200円)[amazon]

ポール・ヴァレリー『メランジュ 詩と散文
〈ルリユール叢書〉
定型韻文詩、自由韻文詩、自由詩、散文、散文詩を混在させ、挿絵とテクストを混淆させた詩人ヴァレリーの精神としての書物――「雑纂」「断章」の文学ジャンルの系譜を、新たな書法(エクリチュール)で切り開く〈散文と詩の混淆(メランジュ)〉。ヴァレリー自身の手による銅版画挿絵入り初版本新訳の決定版。鳥山定嗣訳
(幻戯書房 3960円)[amazon]

ブラニスラヴ・ヌシッチ『不審人物 故人 自叙伝』
〈ルリユール叢書〉
激動の時代のバルカンで、諷刺と喜劇で鋭い批判精神をふるった作家ブラニスラヴ・ヌシッチ――官僚制度を揶揄するゴーゴリものの喜劇『不審人物』、姓とアイデンティティの関係を問う晩年作の喜劇『故人』の本邦初訳2篇と、作家の人生喜劇を綴った「自叙伝」を収録。奥彩子・田中一生訳
(幻戯書房 3850円)[amazon]

香川雅信『妖怪を名づける 鬼魅の名は
〈歴史文化ライブラリー〉髪切虫、雪女、姥が火……。中世までごく限られた種類にとどまっていた妖怪が、江戸時代に急激に増加したのはなぜか。その背景には「怪異」の変容と、新たな文芸である俳諧の興隆があった。諸国で怪談・奇談を集め、妖怪を創造した俳人たちの情報ネットワークから、江戸の「妖怪爆発」の謎に迫る。
(吉川弘文館 1980円)[amazon]

エーリヒ・ケストナー『ケストナーの戦争日記 1941-1945
「決めたぞ。戦時下の日常で起きた重要なことを、きょうからひとつひとつ書き残すことにする。」(1941年1月16日)――戦時下に密かにつづられた日記。第三帝国の下劣さ、馬鹿らしさを批判し、空襲や迫害など戦争の中の日常を鋭い観察眼で描いたこの記録から、今わたしたちは何を読み取ることができるだろうか。酒寄進一訳
(岩波書店 5060円)[amazon]

若島正『詰将棋の誕生 『詰むや詰まざるや』を読み解く
詰将棋史上に燦然と輝く二大棋書、伊藤宗看『将棋無双』と伊藤看寿『将棋図巧』。詰将棋が独自の世界を構築することになった名作を、現代最高の詰将棋作家が読み解く。
(平凡社 3520円)[amazon]

オスカー・ワイルド『新訳 ドリアン・グレイの肖像』
純真な青年ドリアンは天使のような美貌を買われ、肖像画のモデルになる。それは素晴らしい出来になるが、快楽主義者ヘンリー卿に若さが有限だと気づかされ絶望。「永遠に若いのが僕で、年をとるのがこの絵なら、魂だって差し出す!」以来、青年に代わり、絵が年老いていく。現実と虚構、同性愛の記号が交差する異端の名作。徹底解説91頁。最新研究を反映した新訳。河合祥一郎訳
(角川文庫 1034円)[amazon]

リズ・ニュージェント『サリー・ダイヤモンドの数奇な人生』
幼少期の記憶がない「変わり者」サリー。父が死んだ日、過去が彼女を見つけ出す。ホロヴィッツ絶賛のダークミステリー。能田優訳
(ハーパーBOOKS 1520円)[amazon]

ペトロニーユ・ロスタニャ『あんたを殺したかった』
男を殺し、死体を焼いたと言って若い女が出頭してきた。レイプされそうになり反撃したという。ヴェルサイユ警察のドゥギール警視は“被疑者”ローラの自白に従い捜査を開始するが、死体はおろか犯罪の形跡すら見つからない。正当防衛か、冷酷な計画殺人か?……。フランス、コニャック・ミステリー大賞受賞作。池畑奈央子監訳/山本怜奈訳
(ハーパーBOOKS 1080円)[amazon]

《SFマガジン》10月号
ファッション&美容SF特集
(早川書房 1320円)[amazon]

チェ・ジニョン『ディア・マイ・シスター』
となりの国のものがたり〉親戚の男から性暴力を受けた高校生のジェヤ。絶望に陥りながらも告発するが、周囲の大人たちの態度は冷たい。性被害を受けた女性に対する偏見とそれを許容してしまう歪んだ社会……。他者に起きた暴力に無関心でいることが、どれだけ暴力に加担することになるのか。性暴力がもたらす恐れと怒りを日記形式で切々とつづった、隣にいる“あなた”に届けたい物語。すんみ訳
(亜紀書房 2200円)[amazon]

カイ・チェン・トム『危険なトランスガールのおしゃべりメモワール』
〈IamIamIam〉
カンフーの達人で病的な嘘つきのあたしは、生まれ育った町と家族から逃げ出し、行き着いた「奇跡通り」で様々なトランスたちと出会う。やがて殺されたトランスジェンダー女性の仇を討つことを使命とするガールギャングに入り、ストリートで大暴れ。待ち受ける困難を前に、彼女は新しい家族を守り、痛みを癒し、自分の中の真実を見つけることができるのか? 野中モモ訳
(晶文社 2530円)[amazon]

エヴァ・ドーラン『終着点』
ロンドンの集合住宅の一室。ひとりの女性、ひとつの死体。見知らぬ男に襲われ、身を守るために殺してしまったと彼女は語る。警察は呼ばれず、死体は壊れたエレベーターシャフトに隠蔽された――謎多き事件が冒頭で描かれたのち、過去へ遡る章と未来へ進む章が交互に置かれ、物語はたくらみに満ちた「始まり」と、すべてが暴かれる「終わり」に向けて疾走する。英国ミステリ界の俊英が放つ衝撃作。玉木亨訳
(創元推理文庫 1540円)[amazon]

サイモン・モックラー『極夜の灰』
1
967年末。精神科医のジャックは陸軍医療センターで、顔と両手を包帯で覆われた男の話を聞いていた。北極圏にある極秘基地での火災の調査を依頼されたのだ。隊員2名が死亡、重度の火傷を負ったコナーは唯一の生存者だという。火災現場で発見された遺体は、一方はかろうじて人間の形を残していたが、もう一方は灰と骨と歯の塊だった。なぜ燃焼度に大きな差が出たのか。謎が渦巻く衝撃のミステリ長編。冨田ひろみ訳
(創元推理文庫 1430円)[amazon]

トニー・リー・モラル『ヒッチコックとストーリーボード 9 つの傑作から解き明かす画面づくりの秘密
サスペンスの巨匠、アルフレッド・ヒッチコック。人々を驚愕させた名シーンは、いかに構想され、映像化されたのか? 膨大な未公開資料から、ソール・バス、サルバドール・ダリ、ヘンリー・バムステッドら、偉大な協力者たちとの共同作業を掘り起こし、映画史に残る傑作群の舞台裏を解き明かす。上條葉月訳
(フィルムアート社 3960円)[amazon]

エマ・トルジュ『血の魔術書と姉妹たち』
血で記された古代の魔法本を代々守護してきた家に生まれた異母姉妹のエスターとジョアンナ。離ればなれになっていた姉妹は父の死をきっかけに再会し、想像を遙かに超える危険な魔法の世界に足を踏み入れる。本と血と姉妹をめぐるドラマティック・ファンタジー。田辺千幸訳
(早川書房 3410円)[amazon]

M・W・クレイヴン『ボタニストの殺人 上・下
押し花を受け取った著名人が連続で殺される事件が起きた。捜査に挑むポーだったが、彼の同僚の病理学者が殺人容疑で逮捕され……。東野さやか訳
(ハヤカワ・ミステリ文庫 各990円)[amazon]

ジョン・ル・カレ『ナイロビの蜂 上・下
英国外務省勤務のジャスティンは妻とともにナイロビに赴任したが、ある日、妻の死体が発見される。その背景には国際的陰謀が……。加賀山卓朗訳
(ハヤカワ文庫NV 各1496円)[amazon]

リリア・アセンヌ『透明都市』
2029年、パリで「新革命」が起きた。暴力の可視化と予防のため、あらゆる建物をガラス張りに改装し市民が監視し合う都市計画が締結されたのだ。――20年後、犯罪が激減したパリで裕福な一家3人が忽然と消えた。理想都市で起きた奇怪な事件の裏に潜む真実とは。齋藤可津子訳
(早川書房 2420円)[amazon]

E・M・フォースター『小説の諸相』
ストーリーとプロットの違いは? 平面的人物と立体的人物の役割とは? 小説の未来はどうなるのか? のちにイギリス文学界の長老となった著者が、小説をかたちづくる諸要素とその魅力を、独自の観点からユーモアたっぷりに語る。1927年の初刊以来、世界中の小説家・読者に読み継がれてきた、愉しい名講義にして小説論の古典。中野康司訳
(中公文庫 1320円)[amazon]

阿津川辰海『阿津川辰海 読書日記 ぼくのミステリー紀行〈七転八倒編〉
「本格ミステリ大賞」を受賞した前作からさらにボリュームアップ。ジェフリー・ディーヴァ―のどんでん返しの秘密を体系的に分類・総括した回や、青崎有吾『地雷グリコ』に触発されてギャンブル・ミステリーを総まとめした回など、若手屈指の本読み作家が大好きな作家&作品を存分に語り尽くした偏愛度マックスのミステリーガイド。
(光文社 3080円)[amazon]

サラ・A・クリスマン『ヴィクトリア朝 淑女の流儀 紳士のたしなみ』
19世紀に大ベストセラーとなったエチケット指南書『ヒルの手引き』から、ヴィクトリア朝時代の常識や振る舞いを案内。現代人でも「役に立つ」ユニークな歴史読み物。100年経っても変わらない対人関係の難しさがユーモアとともに浮かび上がる。大間知知子訳
(原書房 2640円)[amazon]

カルロ・ギンズブルグ『自由は脆い』
ファシズムはテクノロジーによって再作動される。大衆操作は古くて新しい歴史なのだ。ソーシャルメディアがフェイク・ニュースをまき散らすのはたやすいが、立証には重荷がのしかかる。それでも歴史認識は解毒剤になるだろう。欧米では右翼が台頭し、大衆の催眠術操作や世俗化した宗教の利用が再帰している。ITが世界を覆う不透明な転換期に新しい文献学を実践する歴史家の論考集。上村忠男訳
(みすず書房 5940円)[amazon]

ジェイムズ・ボールドウィン『ジョヴァンニの部屋』
生誕100年記念復刊。同性愛をテーマに内なる自己との出会いの衝撃を描いた、米国で再注目される黒人作家の代表作。大橋吉之輔訳/金原瑞人解説
(白水Uブックス 2310円)[amazon]

デーリン・ニグリオファ『喉に棲むあるひとりの幽霊』
18世紀、殺害された夫の死体を発見した貴婦人アイリーン・ドブ・ニコネルは、その血を手ですくって飲み、深い悲しみから哀歌を歌った。アイリーン・ドブの詩は何世紀にもわたって旅をし、三人の子どもと夫とともに暮らす、ある母親のもとにたどり着く。やがて彼女の日常を詩が侵食し始める――。アイルランドの俊英詩人による、鮮烈な散文デビュー作。ジェイムズ・テイト・ブラック記念賞ほか受賞。吉田育未訳
(作品社 2970円)[amazon]

カレン・ピアース『料理からたどるアガサ・クリスティー 作品とその時代
ミステリの女王が大切にした食事。作中の晩餐会で、登場人物の故郷の味として、殺人の凶器として登場する料理から見えてくるものは。富原まさ江訳
(原書房 2530円)[amazon]

アガサ・クリスティ『チムニーズ館の秘密 新訳版
偶然出会った友人からバルカン半島の小国の元首相の手記をロンドンの出版社に届けて欲しいと頼まれたケイド。冒険心をくすぐられ引き受けたが、実は友人からの頼み事はもうひとつあった。有名な大邸宅チムニーズ館に滞在中の婦人に、あるものを届けて欲しいというのだ。折しもチムニーズ荘では政府の高官や経済界の大物が集まるなか殺人事件が発生、ケイドも巻き込まれるが……。ミステリの女王の冒険活劇。山田順子訳
(創元推理文庫 1034円)[amazon]

《紙魚の手帖》vol.18
彩瀬まる、飛浩隆、松崎有理ら豪華執筆陣が集う、恒例夏のSF特集号。第15回創元SF短編賞受賞作・選評掲載。
(東京創元社 1540円)[amazon]

ガリレオ・ガリレイ『新科学論議
ニュートンの『プリンキピア』に先立つこと半世紀、自由落下や加速度運動など、物理の基本法則を実証的に記述した本書は、近代物理学の幕開けを告げる画期的な著作となった。下巻では、幾何学を縦横に駆使し、自然の背後にひそむ数学的な規則性を明るみに出す。ガリレオ以前に誰も知りえなかった真理が初めて記される。田中一郎訳
(岩波文庫 1001円)[amazon]

アレクサンドル・ゲルツェン『過去と思索 3』
ニコライ一世治下のロシアはその帝政史上、言論統制の最も厳しい時代だったが、皮肉にも、思想の世界には稀に見る豊饒な果実をもたらした。「西欧主義」と「スラブ主義」の論争で、ゲルツェンは主役の一人であった。金子幸彦・長縄光男訳
(岩波文庫 1507円)[amazon]

トマス・パヴェル『小説列伝』
古代ギリシアから20世紀に至る西欧小説史を、理想/規範と個人の対立という不変のテーマをめぐる物語創作の無数の試行錯誤として捉え直し、50篇を超える代表的〈小説〉を新しい視点で読み解く。千野帽子訳 内容
(水声社 4950円)

クロード・ビショワ/ミシェル・ブリックス『ネルヴァル伝』
ジャーナリズムが勃興した19世紀フランスにおいて、旅行記、劇評、戯曲、評伝、風刺文など、多方面で活躍したロマン主義の詩人ネルヴァル。この《幻想文学》の巨人は一方で、文芸をとりまく時代のメディアに深く関わっていた。作家の出生から自死にいたるまで、新発見の資料を渉猟し、その謎多き人生に迫る。田口亜紀・辻川慶子・畑浩一郎訳
(水声社 8800円)

《本の雑誌》9月号
〈特集:河出書房新社を探検しよう!〉
(本の雑誌社 990円)[amazon]

吉田ルイ子『ハーレムの熱い日々』
黒人差別への抗議が広がる60年代NYCハーレムに暮らし、人間としての誇りや優しさを柔らかな眼差しでとらえた名ルポルタージュ。
(ちくま文庫 990円)[amazon]

ジョージ・スタイナー『師弟のまじわり』
師と弟子という対関係が生んできた数々のドラマ。その美しさと醜さはわれわれに何を告げるのか。稀代の批評家が〈教育〉の諸相と深奥へ光をあてる。高田康成訳
(ちくま学芸文庫 1540円)[amazon]

菅原邦城『概説 北欧神話』
世界観、種族、神々とその道具。馴染みあるが掴みづらい北欧神話の全体像を原資料に忠実に提示する。入門者から専門家まで必携の名著。
(ちくま学芸文庫 1650円)[amazon]

『19世紀ロシア奇譚集』
屋敷に棲みつく霊と住人たちの関わりをユーモラスに描くヴェリトマン「家じゃない、おもちゃだ!」、ある女性に愛されたいために悪魔に魂を売った男の真実が悲しいバラトゥインスキー「指輪」、列車で同席した五等官がわたしに特定の駅で降りろと勧めるアンフィテアトロフ「乗り合わせた男」、悲劇的な最期を遂げた歌い手の秘密に迫るにつれ……トゥルゲーネフの心理ホラー「クララ・ミーリチ――死後」など7篇。リアリズム礼賛の蔭で忘却されてきた怪奇幻想の豊饒な世界。高橋知之編訳 収録内容
(光文社古典新訳文庫 1210円)[amazon]

チャールズ・R・ダーウィン『完訳 ビーグル号航海記
進化論の原点となった大旅行の記録。未知の大陸でであう奇妙な動植物や、地質・気象、人々の暮らし──若きダーウィンの探検を、わかりやすい訳文で。荒俣宏訳
(平凡社ライブラリー 2200円)[amazon]

アレクサンドル・デュマ『新訳 モンテ・クリスト伯 2』
姦計により無実の罪で逮捕されたエドモン・ダンテス。自分を陥れた敵を捕らえるための緻密な情報収集と入念な計画──巨万の富を得、モンテ・クリスト伯となった彼の復讐が始まる。西永良和訳
(平凡社ライブラリー 2090円)[amazon]

コリン・ソルター『世界を変えた100の小説 上・下
文学史上の金字塔、ファンタジー、SF、ミステリ、現代のベストセラーまで、世界の文化・芸術・思想に大きな影響を与えた代表的な100人の作家とその最も重要と考えられる小説作品を集め、書影や関連図版とともに紹介する。角敦子訳
(原書房 各2640円)[amazon]

チャールズ・ブコウスキー『死をポケットに入れて』
書いて書いて、飲んで、競馬場に入り浸る。日常を手がかりに、生と死、詩と小説、職業と貧乏などの鋭い思考を晩年に綴った散文集。ロバート・クラム画。中川五郎訳
(河出文庫 891円)[amazon]

エド・マクベイン『キングの身代金 新訳版
87分署の面々が少年の取り違え誘拐事件を追う。ハリウッド・リメイク決定の映画《天国と地獄》の原作にもなった警察小説の傑作が新訳で登場。
(ハヤカワ・ミステリ文庫 1298円)[amazon]

陸秋槎『喪服の似合う少女』
女性私立探偵・劉雅弦の元へやってきた女学生・葛令儀。彼女は劉に、友人の岑樹萱を見つけてほしいと依頼する。劉は調査を始めるが、岑樹萱を深く知っている者は、一人もいなかった。さらに劉は調査の中で死体を見つけ、殺人容疑で警察に逮捕されてしまう……。大久保洋子訳
(ハヤカワ・ミステリ 2090円)[amazon]

陳思宏『二階のいい人』
〈台湾文学コレクション〉
ベルリンの弟の家にやってきた台湾の高校教師。不慣れな外国に戸惑う日々の合間、彼女は美容院を営んだ亡母の顧客名簿をめくり、古い記憶をたどる。貧しい一家は母の裏の商売のおかげで生き延びたのだが――。疎外感を抱き生きてきた女性が出会うひと夏の物語。白水紀子訳
(早川書房 3410円)[amazon]

ロバート・E・ハワード『愛蔵版 英雄コナン全集4 覇王篇
ヒロイック・ファンタジーの原点、英雄コナンの冒険を集成した決定版全集。40代なかばを迎えたコナンが絶対絶命の危機から立ち上がるシリーズ唯一の長篇『龍の刻』、短編「不死鳥の剣」「真紅の城砦」、および資料を収録。全4巻完結。中村融訳
(新紀元社 2420円)[amazon]

ケン・フォレット『光の鎧 
上・中・下
18世紀末の英国。小作農トレスコーは、収獲作業中、地主の息子の不注意から荷馬車の下敷きになり、死んでしまう。地主のリディック一族から賠償金もなく、まだ6歳の一人息子キットはリディック家の使用人として働くことに……。労働問題、侵略と戦争、市民と国家。現代にも当てはまるテーマに巨匠フォレットが絢爛たる筆致で挑む。キングズブリッジ・シリーズ堂々の完結編。戸田裕之訳
(光文社文庫 各1320円)[amazon]

《BRUTUS》 8月15日号 もっと怖いもの見たさ。
恐怖を知り尽くした145人に尋ねた「あなたが本当に怖いもの」。
(マガジンハウス 840円)[amazon]


▼7月刊

A・J・クローニン『城砦 上・下
医師の仕事に情熱を燃やす若き医師アンドルーが様々な苦難に立ち向かう半生を描いた名作。夏川草介訳
(日経BP 各1980円)[amazon]

マリオ・プラーツ『ピクチャレスクなスペイン 五角形の半島Ⅰ
〈碩学の旅〉
永遠の都ローマを知り尽くした碩学が、血と官能と死に彩られた国スペインを旅し、歓喜と絶望と愛をまとったマハたちの行く何気ない広場や街路や佇まいに秘められた、時空を超えた深い歴史的意味と栄枯盛衰への哀悼と芸術的精華を語る、珠玉のエッセー集。伊藤博明・金山弘昌・新保淳乃訳
(ありな書房 3300円)[amazon]

イ・ヨンド『涙を呑む鳥1 ナガの心臓 上・下
人間、ナガ、トッケビ、レコンの四種族が暮らす大陸。その南方に暮らすナガの少年リュンは、死の際の友に託された使命を果たすべく北へ旅に出る。そして彼を守るため三人の仲間が集まった……。〈ドラゴンラージャ〉著者による本格ファンタジイ、シリーズ開幕。小西直子訳
(早川書房 各2640円)[上

ロス・トーマス『狂った宴』
選挙コンサルタントのシャルテルは、大手広告代理店DDTのアップショーとともに、英連邦から独立間近のアフリカの小国アルバーティア初の国家元首選挙に駆り出される。資源に恵まれながら腐敗したこの国で、DDTに有益な人物を当選させるため、二人は汚い手段を駆使してでも選挙キャンペーンを成功させようとするが……。アフリカ諸国の政治的カオスを活写し暴力描写に溢れたクライマックスが印象的な、ロス・トーマスの初期傑作、本邦初訳。松本剛史訳
(新潮文庫 1100円)[amazon]

ジョージ・ドーズ・グリーン『サヴァナの王国』
ジョージア州サヴァナの春の夜、ホームレスの青年が殺害され、考古学者である連れの黒人女性が拉致された。遺体が発見されたのは全焼した空き家で、所有者の土地開発業者グスマンが殺人と放火の罪で逮捕され、探偵事務所を営む老婦人モルガナに真相解明を依頼する。やがて明らかになっていったのは、思いもよらない「歴史の大きな闇」だった――。CWAゴールド・ダガー受賞の南部ゴシック・ミステリー。棚橋志行訳
(新潮文庫 1210円)[amazon]

別冊太陽 呪術の世界』
日本史の底流で脈々と受け継がれ育まれてきた呪術。時に表舞台で政治を動かし、時に抜き難く私たちの心を支配する呪術とは何か。その歴史を古代から現代までたどる。小松和彦監修
(平凡社 2750円)[amazon]

黒川正剛『図説 魔女狩り 増補改訂版
〈ふくろうの本〉
中世末から近世、ヨーロッパを狂瀾の坩堝と化した魔女狩り。なぜ5万人もが犠牲となったのか? 魔女とは何なのか? 当時の社会・文化を読み解き、歴史の闇を照らし出す。増補改訂版。
(河出書房新社 2310円)[amazon]

ワシーリー・グロスマン『スターリングラード 
『人生と運命』の前編となる全3巻。チェーホフを思わせる詩情、人物と心理、情景の描写、戦争の現実が胸を打つ。文学史上の金字塔。園部哲訳
(白水社 5390円)[amazon]

石松夢人『月世界旅行』
主人公の雲井太郎さんと月形行雄さんの二人が月世界を漫遊するジュール・ヴェルヌの『月世界旅行』とも違った大正期の児童向け冒険SF。大正6年に三盟舎書店から刊行された作品を復刊。
盛林堂ミステリアス文庫 1500円)[amazon]

ジジ・パンディアン『壁から死体? 〈秘密の階段建築社〉の事件簿
“ひらけごま”と唱えると現れる秘密の読書室や、秘密の花園に通じるドアが隠された柱時計。だれもが一度は夢見た仕掛けに特化した工務店〈秘密の階段建築社〉。ラスヴェガスから帰郷した元イリュージョニストのテンペスト・ラージは、父が経営する家業を手伝うことになっが、その初日、仕事先の古い屋敷の壁を崩してみると、何とそこから……。楽しい不思議が満載のシリーズ第1弾。鈴木美朋訳
(創元推理文庫 1320円)[amazon]

《新青年趣味》24号
特集 ユーモアと『新青年』/この人も『新青年』!
(新青年研究会 2200円)取扱=盛林堂

アラン・ムーア/ジェイセン・バロウズ『プロビデンス Act3』
プロビデンスにたどり着いたロバート・ブラックは、自らの手記をラヴクラフトに開示する。その出会いは世界を決定的に変えてしまうものだった。隠されていた真実を悟ったブラックは、恐怖と絶望のうちにニューヨークへ戻るのだが……。物語の魔術師にしてアメコミ界の帝王アラン・ムーア版クトゥルー神話全四部作ついに完結。柳下毅一郎訳
(国書刊行会 3080円)[amazon]

飯城勇三『本格ミステリの構造解析 奇想と叙述と推理の迷宮
他に類を見ない特殊な構造を持つ唯一無二の小説ジャンル〈本格ミステリ〉。その構造を解析し、それが生まれた理由を考察する。カー、クイーン、高木彬光、横溝正史、島田荘司、都築道夫、芦辺拓、刑事コロンボから、21世紀の本格まで。
(南雲堂 3850円)[amazon]

フランク・グルーバー『ソングライターの秘密』
〈論創海外ミステリ〉
智将ジョニーと怪力男サム、二人の活躍も遂に見納め。知力と腕力の凸凹コンビが挑む最後の難題は楽曲をめぐる“旋律”の事件。〈ジョニー&サム〉シリーズ全長編邦訳プロジェクト、ここに堂々完結。三浦玲子訳
(論創社 2530円)[amazon]

ニーナ・ネセス『ホラー映画の科学 悪夢を焚きつけるもの
私たちの脳や身体はホラー映画の何に恐怖を感じ、どのように反応するのか? 科学コミュニケーターとして活動する著者が多彩なホラー映画を例に、人が恐怖を感じ、脅威に対処するメカニズムを紹介。脳科学・心理学・神経科学・生物学の知見から、〈恐怖〉のさまざまな側面を明らかにする。五十嵐加奈子訳
(フィルムアート社 2750円)[amazon]

湯本豪一『図説 怪異百物語 江戸東京篇
〈ふくろうの本〉
江戸・東京に起きた怪異現象や謎の事件を、江戸時代の記録、明治の新聞などからとりあげ、錦絵や瓦版・新聞の挿絵とともに紹介する都市伝説百話。『図説 江戸東京怪異百物語』を改題・新装復刊。
(河出書房新社 2200円)[amazon]

〈岩波文庫一括重版〉
『『パンチ』素描集』松村昌家編
チャールズ・ディケンズ『ディケンズ短篇集』
W・S・モーム『世界の十大小説 上・下』
H・G・ウェルズ『タイム・マシン』
オノレ・ド・バルザック『ゴリオ爺さん 上・下』



シルヴィア・プラス『ベル・ジャー』
〈IamIamIam〉
優秀な大学生エスターはニューヨークのファッション誌でのインターンを勝ち取ったとき、夢がついに叶うと信じて喜んだ。しかし、退屈なパーティー、偽善的に感じられる恋人、空虚なだけのニューヨークの生活に違和感を覚え、世界が支離滅裂なものに感じられる。そして、とあることをきっかけに精神のバランスが徐々に崩れていく。ピュリツァ―賞受賞の天才詩人が書き残した伝説的長編小説、20年ぶりの新訳。小澤身和子訳
(晶文社 2750円)[amazon]

《ミステリマガジン》9月号
〈特集 現代海外ミステリ短篇を読もう!〉
M・W・クレイヴン、アン・クリーヴス、リンダ・カスティロ、ケイト・ホール
(早川書房 1320円)[amazon]

エドワード・ブルワー゠リットン『ポンペイ最後の日 下
〈ルリユール叢書〉
愛と死の慟哭のクライマックスへ――豪華絢爛の饗宴、殺人、血みどろの決闘、ヴェスヴィオ山爆発……人間の情熱、信仰、魔術の行く末は? ポーに影響を与え、探偵小説・スリラー小説・ファンタジー・SFの父と呼ばれたブルワー=リットンのスリルとサスペンスにみちた恐怖の感動巨編が完結。田中千惠子訳
(幻戯書房 4400円)[amazon]

ユーリ・ツェー『メトーデ』
健康が義務とされ、科学最優先の健康維持システム〈メトーデ〉が国民の生活を管理。体という究極の個人情報がすべて筒抜けの近未来ディストピア小説。ドイツで110万部超のベストセラー。浅井晶子訳
(河出書房新社 2640円)[amazon]

ヴァージニア・ウルフ『月曜か火曜』
永遠のフェミニスト作家、ヴァージニア・ウルフが自ら編んだ最初にして唯一の短編小説集を、1921年刊行当時のまま、姉ヴァネッサ・ベルの版画5点とともに完全収録。「幽霊たちの家」「ある協会」「月曜か火曜」「書かれなかった小説」「弦楽四重奏」「青と緑」「キュー植物園」「壁のしみ」――ウルフの原点であり、その後の長編にも連なる真摯で切実な全8編。片山亜紀訳
(エトセトラブックス 2200円)[amazon]

千街晶之『ミステリから見た「二○二○年」』
新型コロナのパンデミックによって生活や社会構造が激変した2020年。この激動の年にミステリは時代をどう描き、どう解釈したのか。新型コロナ、東京オリンピック、分断国家、政治腐敗、失われた30年……2020年以降の日本を象徴する出来事を扱ったミステリを通して見えてきたこととは?
(光文社 3080円)[amazon]

ベンジャミン・スティーヴンソン『ぼくの家族はみんな誰かを殺してる』
ぼくたちカニンガム家は曰くつきの一族だ。35年前に父が警官を殺したあの日以来、世間からは白い目で見られている。そんな家族が3年ぶりに雪山のロッジに集まることになったのだが、ぼくらがロッジに到着した翌日、見知らぬ男の死体が雪山で発見された……。富永和子訳
(ハーパーBOOKS 1470円)[amazon]

J・M・クッツェー『その国の奥で』
20世紀初めの南アフリカ。人里離れた農場に暮らす孤独な娘と、若い黒人女を得た父の葛藤を激しく暴力的に描く傑作。植民地社会の矛盾とディスコミュニケーション。映画化。新訳決定版。くぼたのぞみ訳
(河出書房新社 3190円)[amazon]

サムエル・アウグスト・ドゥーセ『スミルノ博士の日記』
天才法医学者ワルター・スミルノはある晩、女優アスタ・ドゥールの殺害事件に遭遇。容疑者として、かつての恋人スティナ・フェルセンが挙げられる。名探偵レオ・カリングの手を借り、不可解な謎に挑むのだが……。世界ミステリ史上にその名を刻む、スウェーデン探偵小説の先駆的長篇。宇野利泰訳
(中公文庫 1100円)[amazon]

シュテファン・ツヴァイク『ジョゼフ・フーシェ ある政治的人間の肖像
フランス革命から帝政、さらに復古王政へ。この激動期に現れた「完全なマキアヴェリスト」ジョゼフ・フーシェ。ある時はギロチンよりも効率的な方法で反動者を殺戮し、ある時は秘密警察を駆使し、ナポレオンをも心理的に追いつめる。陰謀と変節と裏切りの限りを尽くして生き抜いた政治的人間の生態を浮き彫りにする本格評伝。改訳版。山下肇・山下萬里訳
(中公文庫 1430円)[amazon]

ピエール・ルメートル『邪悪なる大蛇』
63歳の殺し屋マティルド。凄腕と恐れられた彼女を認知症が侵し始めた時、狂乱の幕が開く。黒い笑いに満ちた巨匠最後のミステリー。橘明美・荷見明子訳
(文藝春秋 3300円)[amazon]

デルモア・シュワルツ『夢のなかで責任がはじまる』
ナボコフ、T・S・エリオットがその才能を絶賛し、ソール・ベロー、鮎川信夫に霊感を与えた不世出の作家シュワルツの代表作を収めた短篇集を本邦初訳。序文ルー・リード。小澤身和子訳
(河出書房新社 3190円)[amazon]

山根貞男『日本映画時評集成 2011-2022』
徹底して日本映画の現在と格闘しながら新たな〈活劇の行方〉を問いつづける――。45年におよぶ《日本映画時評》を一挙単行本化。時評を突き抜けた圧巻の時評集成、最終巻。
(国書刊行会 7920円)[amazon]

イーユン・リー『ガチョウの本』
13歳のアニエスは作家として華々しくデビュー。本当の作者は親友のファビエンヌ。二人の小説を書くという「遊び」は周囲を巻き込み思わぬ方向に。2023年度ペン/フォークナー賞受賞。篠森ゆりこ訳
(河出書房新社 2970円)[amazon]

ピーター・トレメイン『風に散る煙 上・下
海路カンタベリーに向かうフィデルマは、時化のためダヴェド王国に上陸を余儀なくされ、国王から、小さな修道院の修道士が消え失せるという不可解な出来事の謎を解いて欲しいとの要請を受ける。捜査を引き受けたフィデルマは、王国の判事と問題の修道院へ向かうが……。王の妹にして弁護士、美貌の修道女が活躍するシリーズ第10弾。田村美佐子訳
(創元推理文庫 1100円/1144円)[amazon]

アリス・マンロー『小説のように』
ある日、一冊の小説に出合った音楽家の女性。その物語では、音楽教師時代の自分が、どこか面影のある少女の目を通じて描かれていた。この子は誰だっただろう。ページをめくるにつれ、過去が新たな景色を見せる――表題作ほか、孤独な女性と逃走中の殺人犯との対話が震えるほどの余韻をもたらす「遊離基」など、人生ががらりと様相を変える瞬間を捉えた十の物語。ノーベル文学賞に輝く短編小説の女王、初の文庫化。小竹由美子訳
(創元文芸文庫 1540円)[amazon]

ミラン・クンデラ『ほんとうの自分』
「私はスパイのようにあなたの後をつけています、あなたは美しい」突然届いた匿名の手紙が巻き起こす男と女の葛藤。待望の文庫化。西永良成訳
(集英社文庫 990円)[amazon]

ジョン・ル・カレ『パナマの仕立屋 上・下
英国の諜報員オスナードは、パナマ運河返還後の政情を探るためパナマへ向かう。彼は要人御用達の仕立屋ハリーに目をつけ……。田口俊樹訳
(ハヤカワ文庫NV 各1452円)[amazon

エリック・ラーソン『万博と殺人鬼』
19世紀末シカゴ。建築家ダニエル・バーナムは史上最大規模の万国博覧会を成功させるべく邁進する。だが、建設ラッシュに沸く街の片隅では、後に「アメリカ最初のシリアルキラー」と呼ばれるH・H・ホームズの手による連続猟奇殺人が起きていた……。新興国アメリカの光と闇を描き世界的ベストセラーとなった、エドガー賞(犯罪実話部門)受賞の傑作ノンフィクション。『悪魔と博覧会』復刊文庫化。野中邦子訳
(ハヤカワ文庫NF 1848円)[amazon]

ダヴィド・ディオップ『夜、すべての血は黒い』
仏軍セネガル兵アルファは、友人を看取っていた。痛みから解放するため殺してほしいという友の願いは叶えられないまま。恐怖と罪悪感に取り憑かれたアルファは、やがて敵兵を捕らえ、残虐な儀式をくり返す。第一次大戦の兵士の心理を描くブッカー国際賞受賞作。加藤かおり訳
(早川書房 2640円)[amazon]

施叔青『風の前の塵』
〈台湾文学コレクション〉
日本統治下の台湾で弾圧される先住民の青年。日本人に憧れる客家人の写真家。日本人村で育つ警察官の娘、月姫。彼らは何を願い、誰を愛したのか? 時を経て、月姫の娘の無弦琴子は期せずして亡母の足跡をたどる。史実と幻想を織り交ぜて描かれた傑作歴史小説。池上貞子訳
(早川書房 3190円)[amazon]

キャサリン・M・ヴァレンテ『デシベル・ジョーンズの銀河(スペース)オペラ』
全銀河の芸術コンテストで、地球人代表が好成績を残さなければ人類全滅!? 地球の命運はとある冴えないロックスターに託された! 小野田和子訳
(ハヤカワ文庫SF 1848円)[amazon]

ディーノ・ブッツァーティ『山のバルナボ』
若き森林警備隊員バルナボは、山岳地帯にある火薬庫が盗賊に襲われたとき、怖気づいて岩かげに隠れてしまう。解雇され山を離れたあとも、恥の意識に囚われつづけるバルナボに、やがて名誉挽回のチャンスがおとずれるが……。峰々のそそり立つ美しい自然を舞台に心の苦悩と平安を描きだした、イタリアの人気作家のデビュー作。川端則子訳/山村浩二絵
(岩波少年文庫 869円)[amazon]

ガリレオ・ガリレイ『新科学論議
宗教裁判により『天文対話』を禁書とされ、天文学の道を閉ざされたガリレオ。老いと病の困難を乗り越え、最後に意を注いだのは力学研究の完成であった。三人の登場人物の対話を通じて明らかにされる「二つの新しい科学」。物理学と工学への道を切りひらいた、1638年、ガリレオ最晩年の著書。全2冊。田中一郎訳
(岩波文庫 1001円)[amazon]

スーザン・メジャー『ヴィクトリア朝英国の鉄道旅行史』
1830年代に初の周遊列車のポスターが貼られてから、鉄道網の発達とともに列車による一般市民の大量移動時代が始まる。どんな人たちがどのように、どこへ向かっていったのかを資料をつぶさに紐解いてまとめあげた集大成。白須清美訳
(原書房 3300円)[amazon]

ウィリアム・フライアー・ハーヴィー『五本指のけだもの W・F・ハーヴィー怪奇小説集
鬼気迫る幽霊談、暗合と運命の交錯する奇譚から、精神の暗部を抉る不気味な物語まで、英国怪奇小説作家W・F・ハーヴィー、初の邦訳短篇集。怪奇小説アンソロジーの定番的名作「炎暑」、映画化でも知られる「五本指のけだもの」他、初訳3篇を含む珠玉のコレクション。横山茂雄訳 【収録作品】 炎暑/ミス・アヴェナル/アンカーダイン家の専用礼拝席/ミス・コーニリアス/追随者/道具/セアラ・ベネットの憑依/ピーター・レヴィシャム/五本指のけだもの
(国書刊行会 2970円)[amazon]

マフムード・ダルウィーシュ『パレスチナ詩集』
パレスチナに生まれ、亡命を生きた大詩人ダルウィーシュ。惨事と野蛮に抗し、実存的な主題として同地に向きあった。敗者の声を詩に結実させた絶唱。四方田犬彦訳
(ちくま文庫 1540円)[amazon]

クリスティン・ペリン『白薔薇殺人事件』
ミステリ作家の卵アニーは、大叔母の住む村に招かれた。資産家の大叔母は、16歳のときに占い師から告げられた、いつかおまえは殺されるという予言を信じ続けていたが、アニーが屋敷に到着すると、大叔母は図書室の床に倒れて死んでいた。両手には血がついていて、そばには白薔薇が。予言が的中したときのために大叔母が約60年をかけて調査した記録を手がかりに、アニーは犯人探しに挑む。上條ひろみ訳
(創元推理文庫 1320円)[amazon]

泡坂妻夫『乱れからくり 新装版
玩具会社部長の馬割は、乗車中に隕石が直撃するという奇禍で命を落とす。その葬儀も終わらぬ内に、今度は彼の幼い息子が睡眠薬の誤飲で死亡。さらに不可解な死が連続して馬割家を襲う。一族の謎と、ねじ屋敷と呼ばれる馬割家の庭に造られた、巨大迷路に隠された秘密とは? からくり尽くしの中で、探偵事務所所長・宇内舞子と新米助手・勝敏夫が事件に挑む。第31回日本推理作家協会賞受賞作。
(創元推理文庫 1100円)[amazon]

アン・マキャフリー『歌う船 完全版
この世に生まれ出た彼女の頭脳は申し分ないものだった。だが身体のほうは、機械の助けなしには生きていけない状態だった。そこで〈中央諸世界〉は彼女に宇宙船の身体を与えた――優秀なサイボーグ宇宙船となった彼女は歌いながら、パートナーとともに銀河を思うさま駆けめぐる。少女の心とチタン製の身体を持つ宇宙船、ヘルヴァの活躍と成長を描く旧版の6編に、のちに書かれた短編2編を追加収録した、不朽の名作の新訳完全版。嶋田洋一訳
(創元SF文庫 1540円)[amazon]

イーディス・ウォートン『イーサン・フロム』
寒村の孤独、親の介護、挫かれた学業、妻の病……ニューイングランドの厳冬に生を閉ざされた主人公を襲う苦難と、その果ての悲劇を精緻な技巧で描く。宮澤優樹訳
(白水Uブックス 1870円)[amazon]

奈倉有里『文化の脱走兵』
留学時代を過ごしたロシア、そこで出会った大切な人たち。心から愛してやまない詩と文学、子供時代の懐かしい思い出。戦争があって日常がある、いまの日々のこと。《群像》連載エッセーを書籍化。
(講談社 1760円)[amazon]

チョ・ナムジュ『ソヨンドン物語』
『82年生まれ、キム・ジヨン』著者の邦訳最新作。マンションを舞台にした連作小説。資産価値にこだわる者の果てしない欲望と、持たざる者の希望。古川綾子訳
(筑摩書房 1870円)[amazon]

ジュール・ヴェルヌ『十五少年漂流記 二年間の休暇
ニュージーランドの寄宿学校の生徒たち十五人が乗り込んだ船が太平洋を漂流し、無人島の浜に座礁する。過酷な環境の島で、少年たちはときに仲違いしながらも、協力して生活基盤を築いていくが……。原書初版の図版約90点収録。鈴木雅生訳
(光文社古典新訳文庫 1738円)[amazon]

アレクサンドル・デュマ『新訳 モンテ・クリスト伯 1』
漆黒の瞳と髪をもつ船乗りエドモン・ダンテス。美しいメルセデスと婚約し前途洋々だった彼を襲う嫉妬の刃と運命の残酷。息つく間もなく展開する大人気超長編、待望の新訳。西永良成訳
(平凡社ライブラリー 1980円)[amazon]

松本清張『清張の迷宮 松本清張傑作短編セレクション
有栖川有栖・北村薫編
 数百編にもおよぶ松本清張の短編の中から、ミステリ界の旗手ふたりが各々のベスト5を厳選!清張入門にもうってつけのアンソロジー。
(文春文庫 1056円)[amazon]

稲垣足穂『我が見る魔もの 稲垣足穂怪異小品集
〈文豪怪異小品集〉シリーズ第13弾。三島由紀夫を驚嘆させた少年愛文学の先駆者・足穂が遺した膨大な作品群から、怪奇幻想の名にふさわしい妖しい名作・怪作を精選。東雅夫編
(平凡社ライブラリー 2090円)[amazonn]

《ナイトランド・クォータリー》vol.36 夢魔がもたらす幻想
ジョン・ウィズウェル、ブラム・ストーカー、フーゴー・フォン・ホフマンスタール、アレクサンダー・モーリッツ・フライ、エドワード・ルーカス・ホワイト、マイクル・ムアコック、ラフカディオ・ハーン、他
(アトリエサード 2090円)[amazon]

吉田悠軌『ジャパン・ホラーの現在地』
今、なにが怖い? 人気作家、TVプロデューサー、映画監督、配信者など、日本のホラー文化最前線のクリエイターたちとともに考える論考集。
(集英社 1650円)[amazon]

イライザ・クラーク『ブレグジットの日に少女は死んだ』
2016年6月、英国のEU離脱を問う国民投票の日に海辺の過疎地で起きた少女3人による16歳の少女暴行殺人事件。ジャーナリストのカレリは背景を取材し、被害者・加害者の生い立ちから事件に至るまでをまとめたノンフィクションを発表したが……。英国で話題の疑似ノンフィクション型犯罪小説。満園真木訳
(小学館文庫 1408円)[amazon]

老舎『私のこの生涯 老舎中短編小説集
中国において「京味作家」と称され、海外においても中国を代表する作家としての高い評価を受ける老舎。文革期に非業の死を遂げた文豪の残した中短編4作。関根謙・杉野元子・松倉梨恵訳
(平凡社 3080円)[amazon]

松下隆志『ロシア文学の怪物たち』
ロシア文学は現実の不確かさを読者に突きつけ、世界の裂け目に開いた深淵を露わにする。ソローキン『青い脂』、マムレーエフ『穴持たずども』などの“怪作”を翻訳してきた著者による「悪」のロシア文学入門。
(書肆侃侃房 1980円)[amazon]

マーティン・エドワーズ『モルグ館の客人』
完全犯罪を成し遂げた者が集うパーティが開かれる館。新聞記者ジェイコブと名探偵レイチェルは謎の女にパーティへ招かれるが……。加賀山卓朗訳
(ハヤカワ・ミステリ文庫 1320円)[amazon]

ハリソン・クエリ&マット・クエリ『幽囚の地』
都会の喧騒を離れ田舎に家を買ったブレイクモア夫妻。そこに、隣人のダンが忠告にやって来る。この地には精霊が住んでおり、季節ごとに彼らを悩ませるというのだ。最初は不気味な光が飛び回る程度だったが、やがて精霊たちは夫妻に直接危害を加えはじめ……。田辺千幸訳
(ハヤカワ・ミステリ 2970円)[amazon]

『台湾文学コレクション1 近未来短篇集』
先端技術を敬遠する母と反発する娘を描く「2042」、恋する相手のデータを収集する女性の行き過ぎた愛情の行方を語る「USBメモリの恋人」、逃げた介護ロボットの真相を痛切に描く「小雅」など、台湾の実力派作家たちの選りすぐりの傑作SF8篇を収録。三須祐介訳
(早川書房 予3190円)[amazon]

ヴァネッサ・チャン『わたしたちが起こした嵐』
〈アジア文芸ライブラリー〉
英国統治下から日本占領下のマラヤ(マレーシア)で、日本軍のスパイに協力した主婦セシリーと、その家族に起きた悲劇。戦争の記憶をスリリングなフィクションに再構成し、女性の視点から戦争を描く衝撃のデビュー作。品川亮訳
(春秋社 2970円)[amazon]


▼6月刊

秋吉巒『秋吉巒 挿画集 夢幻の悦楽郷』
さまざまな風俗雑誌の表紙や挿画を描き、やがて独特な幻想絵画の制作に没頭。その超現実的な幻想風景を生む想像力と卓越した画力が遺憾なく発揮された挿画の数々を収録。いまよみがえる、幻想とエロスのユートピア。相馬俊樹 編著
(アトリエサード 2970円)[amazon]

J・J・ファージョン『すべては〈十七〉に始まった』
〈論創海外ミステリ〉
霧深いロンドンの街で〈十七〉という数字に付きまとわれた不定期船の船乗りベンは、寝床を求めて十七番地の空き家へ侵入した。彼を待ち受ける世にも恐ろしい一夜とは……。ヒッチコック映画《第十七番》(1932)の原作。小倉さなえ訳
(論創社 3080円)[amazon]

ジョン・ディクスン・カー『悪魔のひじの家』
故ワイルドフェア判事の旧宅である緑樹館は〈悪魔のひじ〉に聳え立つ。前当主の遺言で相続人にされた孫のニックは、ほしくもない遺産を拒否すべく友人を伴い館を訪れた。そこに響き渡る銃声、幸い現当主の命に別状はなかったが館を覆う不穏な雰囲気は疑いようがない。フェル博士登場の後期作。白須清美訳
(創元推理文庫 1100円)[amazon]

ヤン・ポトツキ『サラゴサ手稿 中
峻険なシエラ・モレナの山中をさまよう軍人アルフォンス・バン・ウォルデンが遭遇する、数多の奇怪な出来事。そして彼の出会う不可思議な人々……。読み進むうちに読者も道を見失い、ヒターノの親方の語る物語の中に分け入り、正気を失いかける。正統とされる完全版とはエピソードの順番も異なり、完全版では切り捨てられた逸話も多数盛り込まれた、今となっては異本である『サラゴサ手稿』〈ラドリザニ編〉の工藤幸雄訳。
(創元ライブラリ 1320円)[amazon]

小森収編『ミステリ=22 推理小説ベスト・エッセイ
ひとつの真実にむかって書かれる推理小説から、なぜこれほどまでに多様な面白さが生まれるのか。北村薫、坂口安吾や中条省平、若島正――古今の作家・評論家たちは、推理小説をいかに読み解いたか。『短編ミステリの二百年』の小森収が編んだ、ミステリに関する名文をあつめたアンソロジー。
(創元推理文庫 990円)[amazon]

ジョン・コナリー『失われたものたちの国』
ひとりで8歳の娘を育てているセレス。ある日、娘が交通事故で意識不明となってしまう。娘を看病し続けるセレスが限界を迎えた夜、彼女は娘が入院している施設に建つ古い屋敷の屋根裏部屋に入り込み、本の囁きを聴いた。そして突然現れた化物から逃げる途中で深い森を抜け、知らない場所に迷い込んでしまう。そこは狼男や魔女、巨人などが存在する異世界だった。本にまつわる異世界冒険譚『失われたものたちの本』続編。田内志文訳
(東京創元社 2970円)[amazon]

ク・ビョンモ『破砕』
「この車に乗ったら最後、お前の身体は、一から十まで作り変えられる」。師に見出され殺しの道を歩みはじめた彼女は、死と隣り合わせの最終訓練に臨む。人を破壊する術を身につけることは、人として、女としての「普通」の一生を粉々にすること──。伝説の殺し屋誕生を濃密に描き出す、戦慄と陶酔ほとばしる『破果』外伝。小山内園子訳
(岩波書店 1870円)[amazon]

ホルスト・S・デムリヒ/イングリット・G・デムリヒ『西洋文学テーマ・モチーフ事典』
光、狂気、偶然、黙示録、ファム・ファタール――古来よりいかなる主題が物語を駆動し、その伝統はいかに新しく変奏されてきたのか。160余の文学テーマ・モチーフを扱い、およそ1,800の作家、3,500の文学作品を例示しながら、その機能、特徴、歴史的変遷を詳説する。研究と創作のための必携書。川東雅樹訳
(国書刊行会 13,200円)[amazon]

ジュリー・オオツカ『スイマーズ』
わたしたちはどんな痛みからも解き放たれる。泳いでいる、そのときだけは――。小竹由美子訳
(新潮社 2035円)[amazon]

『合作探偵小説コレクション7 むかで横丁/ジュピター殺人事件』
昭和20年代の合作を収録した戦後傑作集1。「能面殺人事件」「昇降機殺人事件」「三つの運命」「執念」「桂井助教授探偵日記」「むかで横丁」「ジュピター殺人事件」+資料編。日下三蔵編
(春陽堂書店 4180円)[amazonn]

ガブリエル・ガルシア=マルケス『百年の孤独』
宿業を運命づけられた一族の、目も眩む百年の物語。1960年代、世界中にラテンアメリカ文学ブームを巻き起こした名作、邦訳刊行から半世紀を経てついに文庫化。鼓直訳
(新潮文庫 1375円)[amazon]

マット・ラフ『魂に秩序を』
わずか2年前、アンドルーは多重人格者の魂の代表として26歳にして〝誕生〟し、魂たちの共存のため奮闘していた。ある日、殺人犯を事故死へ追い込んだことで、自分が継父を殺害したのではないかという疑念に囚われる。真相解明のため、同じ障害をもつ女性ペニーと故郷へ向かうが、自身の隠された秘密だけでなく闇の魂からの脅威にも晒され……。あらゆるジャンルを包み込む物語の万華鏡。浜野アキオ訳
(新潮文庫 1705円)[amazon]

高遠弘美『楽しみと日々 壺中天書架記
「目新しいものばかり追う風潮はやはり読書の愉しみとは無縁のものだ」。プルースト、石川淳、澁澤龍彥、種村季弘、市河晴子、吉田健一、中村真一郎、矢野峰人、『ルバイヤート』……数々の鍾愛の書。再読できなければ本の意味はなく、精神の自由を守り、生きる喜びに出会う瞬間のために本を読み続ける。『失われた時を求めて』個人全訳刊行中の仏文学者にして、稀代の随筆家でもある著者の半世紀に及ぶ文筆の集大成。
(法政大学出版局 7700円)[amazon]

エドワード・ブルワー゠リットン『ポンペイ最後の日 上
〈ルリユール叢書〉
紀元1世紀、ローマ帝国のポンペイを舞台に、ギリシアの美女をめぐる青年貴族とエジプト人魔術師の対決を軸に、遺跡発掘調査に基づき、当時のローマ文化と風俗、退廃的な文化と生活を描く波乱万丈の歴史小説。ヴィクトリア時代にゴシック小説を復活させたブルワー゠リットンの、一大恐怖絵巻が繰り広げられる名作の完訳。田中千惠子訳
(幻戯書房 4400円)[amazon]

新編 怪奇幻想の文学5 幻影』
生と死、現実と幻想、正気と狂気のはざまの世界の物語を収録。鏡の向こう側から幽冥の境を経て無限の庭園まで、13人の作家が目も彩な幻影の世界へと御招待。マイリンク、ブラックウッド、メアリ・E・ウィルキンズ=フリーマン、オニオンズ、バレイジ、D・H・ケラー、R・ブロック、エイクマン、ブッツァーティ、ボルヘス他。紀田順一郎・荒俣宏監修/牧原勝志編
(新紀元社 2750円)[amazon]

《SFマガジン》8月号
クリストファー・プリースト追悼特集
(早川書房 1320円)[amazon]

別冊太陽 日本のこころ 生誕130年 武井武雄の本 幻想世界のレオナルド・ダヴィンチ
大正から昭和にかけて絵雑誌『コドモノクニ』等を舞台に活躍した、《童画の父》武井武雄。珠玉の「刊本作品」はじめ、元祖マルチクリエーターの多彩な創作世界を紹介する。イルフ童話館監修
(平凡社 2750円)[amazon]

岡田建文『霊怪真話』
明治~昭和初の霊怪や奇跡などの怪奇実話集(1936初刊)。「日本一の化物屋敷」「物品寄せの千里眼」「関谷沢の怪異」など全50余話。新字新仮名遣いで復刊。
(河出書房新社 2090円)[amazon]

吉村正和『図説 魔術と秘教 近代の繁栄
〈ふくろうの本〉
魔術の最盛期である19~20世紀を中心に、その前史、占星術、秘密結社などを考察する。『図説 近代魔術』を改題復刊。
(河出書房新社 2530円)[amazon]

吉村正和『図説 錬金術 歴史と実践 新装版
〈ふくろうの本〉
16、17世紀、ヨーロッパを席巻した錬金術の歴史、理論、実践法、そして文学、芸術への多大なる影響まで読み解く。新装復刊。
(河出書房新社 2475円)[amazon]

P・G・ウッドハウス『スウープ!』
ドイツ、ロシア、中国など、九か国の軍隊がイギリスに襲来(スウープ)! 同日同時刻に諸外国から侵攻されて絶体絶命のイギリス。祖国の命運を賭けてボーイスカウトの若き総長クラレンスが反撃を挑む――。〈ジーヴス〉シリーズのウッドハウスが戦争と世相を笑い飛ばす、幻の快作。本邦初訳。深町悟訳
(国書刊行会 2640円)[amazon]

ロジーナ・ハリソン『わたしはこうして執事になった』
執事には誰がどんな経験を経てなるのか。貴族の大邸宅や在米イギリス大使館に勤めた五人が語る、笑いと苦労、時に涙の職業人生。新井潤美監修/新井雅代訳
(白水Uブックス 2640円)[amazon]

『幻想と怪奇 不思議な本棚 ショートショート・カーニヴァル
27作家書き下ろし競作集。第2回『幻想と怪奇』ショートショート・コンテスト入選作品を収録。
(新紀元社 2530円)[amazon]

リチャード・フラナガン『グールド魚類画帖 十二の魚をめぐる小説 新装版
タスマニアの孤島に流刑された画家グールドは、島の外科医殺害の罪で絞首刑を宣告され、獄中で魚の絵を描く……その衝撃の最期とは? 渡辺佐智江訳
(白水社 4950円)[amazon]

クラリッセ・リスペクトル『ソフィアの災難』
若者の目覚め、主婦におとずれた啓示、少女の運命、出口を求める老婆――。一貫性を捨て、混沌へと向かう、鋭利な言葉と燃え盛る世界。10代から晩年の作品まで、南米の巨匠の全貌を示す衝撃の短篇群。日本オリジナル編集。武田千香・福嶋伸洋訳
(河出書房新社 2970円)[amazon]

ミラン・クンデラ『緩やかさ』
パリ郊外の城に滞在する作家が見た、18世紀の騎士とさる夫人の一夜の逢瀬と、20世紀末の自意識過剰な茶番劇。文庫化。西永良成訳
(集英社文庫 935円)[amazon]

C・J・ボックス『暁の報復』
猟区管理官ジョー・ピケットの留守電に、知人のファーカスから伝言が残されていた。ダラス・ケイツとその仲間が、ジョーを襲う密談をしているのを盗み聴いたという。ダラスは2年前の事件で破滅し、その一因となったジョーに強烈な恨みを抱いていた。その後ファーカスの遺体が発見され、犯人を捜しはじめるが、ピケット一家にも次々と危機が襲いかかる。サスペンス漲る人気シリーズ新作。野口百合子訳
(創元推理文庫 1430円)[amazon]

アリス・フィーニー『グッド・バッド・ガール』
ロンドンのケアハウスで暮らす80歳のエディス。自分をここに押し込んだ娘とはうまくいっていないものの、職員の18歳のペイシェンスとは、世代は違えど友情を築いている。そしてペイシェンスも、母親と喧嘩して家出してきた身だった。そんなある日、ケアハウスの所長が殺害される。実は数ヵ月前にも入居者が不審な死を遂げていて……。『彼と彼女の衝撃の瞬間』のどんでん返しの女王の新境地。越智睦訳
(創元推理文庫 1320円)[amazon]

P・ジェリ・クラーク『精霊を統べる者』
〈創元海外SF叢書〉
19世紀、伝説の魔術師アル=ジャーヒズがジン(精霊)の世界の扉を開き、世界は一変。ジンの魔法と科学の融合によりエジプトは急速に発展するが、アル=ジャーヒズは姿を消した。それから40年、カイロに彼の名を名乗る謎の男が現れ、彼を崇拝する人々を焼きつくした。エジプト魔術省の女性エージェント、ファトマは恋人の女性シティらと共に捜査に乗り出す。ネビュラ賞他受賞作。鍛治靖子訳
(東京創元社 3960円)[amazon]

ラモーナ・エマーソン『鑑識写真係リタとうるさい幽霊』
警察所属の写真家リタは霊能力の持ち主だ。事故現場を撮影中、自分は殺されたと主張する被害者の霊に殺人犯への復讐を強いられ……。中谷友紀子訳
(ハヤカワ・ミステリ文庫 1452円)[amazon]

ジョン・ル・カレ『シルバービュー荘にて』
海辺の町の書店主ジュリアンと町はずれのシルバービュー荘に住む男の交流は、やがて諜報機関が乗り出す英国を揺るがす事態に……。加賀山卓朗訳
(ハヤカワ文庫NV 1386円)[amazon]

劉慈欣『三体3 死神永生 上・下
迫り来る三体文明の地球侵略。若きエンジニアの程心(チェン・シン)は、三体艦隊に人類のスパイを送り込む、極秘の「階梯計画」を進行させるが!? 大森望・光吉さくら・ワン・チャイ・泊功訳
(ハヤカワ文庫SF 各1210円)[amazon]

デイモン・ガルガット『約束』
社会変革の渦中にある南アフリカ。プレトリアで農場を営む白人の家族とその黒人メイドとの間に交わされた土地の所有権をめぐる約束が、40年にわたり一家の運命を翻弄する。アフリカ文学の最先端にして英国ブッカー賞受賞作。宇佐川晶子訳
(早川書房 3410円)[amazon]

坂口安吾『不連続殺人事件 附・安吾探偵とそのライヴァルたち
日本の本格ミステリ史上屈指の名作『不連続殺人事件』。その誕生背景には、若き文学者たちが戦時下に行なった伝説の「犯人当て」イベントがあった。荒正人・大井広介・平野謙ら、坂口安吾の〈ライヴァル探偵〉たちによる貴重な回想・証言と、小説本文を初めて一冊に。
(中公文庫 1320円)[amazon]

黒岩重吾『法王の牙 病院サスペンス集
「病院」「医療」を背景にした作品は、直木賞受賞作『背徳のメス』に代表される黒岩重吾の初期作品の真骨頂。著者の戦争体験、戦後の小児麻痺による闘病を色濃く投影し、社会の底辺から、病院に巣くう権力構造、愛憎、欲望、人間の業を描き出す。「病葉の踊り」「深夜の競走」「法王の牙」「さ迷える魂」「造花の値段」「最後の踊り」の6編を収録。日下三蔵編
(中公文庫 990円)[amazon]

福田恆存『シェイクスピア』
愛、嫉妬、復讐心、懐疑。悪のどん底までおりていった先に待ち受ける罰と、衝動からの解放――。時代や国を超えて人々を激情の渦に巻き込むシェイクスピアの主要19作品を解題。日本におけるシェイクスピア翻訳の礎を築いた著者が、定本や改訂についての考証、作品に影響を与えた歴史的背景や先行作品の紹介などを交えつつ、シェイクスピアの壮大な作品世界を解き明かす。
(中公文庫 1430円)[amazon]

南條竹則『中華文人食物語』
肉料理・東坡肉に宋代の詩人蘇東坡の名前が冠されているのはなぜ? 中華料理の多様な味わい、摩訶不思議な珍味の数々には、民衆、皇帝、文人たちのエピソードが隠されている。食と酒を愛する著者が、日本・中国各所で口にした美味・珍味とそのエピソードを語るエッセイ。
(中公文庫 990円)[amazon]

鹿島茂『パリの本屋さん』
一癖も二癖もある古書店、文化の中心を担ってきたカフェ、邸宅美術館とルーブル美術館それぞれの楽しみ方(悔しがり方!)、美しくも醜くもあるパリの歴史散策……博覧強記にして達意の文章家たる著者が、四半世紀にわたって書いてきたパリにまつわる60編余の文章を編み直したエッセイ集。
(中央公論新社 3520円)[amazon]

ドン・ウィンズロウ『終の市』
1997年。かつて東海岸のマフィアの一員だったダニー・ライアンは、いまやラスヴェガスに王国を築き、カジノホテル業界の陰の“大物”にのし上がっていた。だが強引な手段が商売敵のホテル王との関係に禍根を刻み、平穏な生活は終わりを告げる。FBIとマフィアにつけ狙われ仲間を惨殺されたダニーは、再び血の抗争に身を投じていくが……。壮大な叙事詩の壮絶な幕引き。田口俊樹訳
(ハーパーBOOKS 1680円)[amazon]

ダニエル・シルヴァ『償いのフェルメール』
フェルメールの世界的名画が盗まれ、いわくつきの富豪が殺害された。その背後には大国の恐るべき陰謀が――。巨匠が描くスパイ小説の最前線。山本やよい訳
(ハーパーBOOKS 1560円)[amazon]

トレイシー・リエン『言えなかった言葉』
高校生の弟の不審な死を知らされ、数年ぶりに実家に帰った女性キー。ベトナム系の一家のなかでも、オーストラリアに馴染んだ優等生である弟。だが、それは本当の顔だったのか。謎を追ううち、キーは、自らを取り巻く社会と、弟の命を奪ったものの正体を知る。吉井智津訳
(早川書房 3080円)[amazon]

オノレ・ド・バルザック『「人間喜劇」総序・金色の目の娘』
フランス社会の書記として、社会の全体を写し取る――長短90の小説から成る「人間喜劇」の壮大な構想を、作家みずから述べた「総序」は、近代文学の重要なマニフェスト。その詩的応用編として、『金色の眼の娘』を併収。植民地生まれの美少女と非情な伊達男の恋は、黄金と快楽、人種と性の交差の中でどこへ向かうのか?西川祐子訳
(岩波文庫 1001円)[amazon]

ウィース『スイスのロビンソン 上・下

(岩波文庫 1155円/1100円)〈復刊〉

新版 アイスランド サガ』

これぞ中世北欧文学の最高峰――幻の名著が新装版で待望の復刊。「サガ」とは、語り、語られた出来事、物語の意。13世紀頃のヴァイキング時代に人々がノルウェーからアイスランドへ入植した経緯、活躍した英雄、血族同士の復讐、異教時代の魔法や呪いなどを活写した壮大な史伝的散文作品のうち、本書は圧巻とされる6篇を収める。最新の研究を踏まえた図版・系図・地図・文献案内付き。谷口幸男訳/松本涼監修
(新潮社 19,800円)[amazon]

《MONKEY》 vol. 33 特集 ニュー・アメリカン・ホラー
ブライアン・エヴンソン+柴田元幸共同編集 先住民族作家、アフリカン゠アメリカン作家、ヒスパニック作家など多様な書き手も登場し、「ドラマチックに怖い!というより、じわじわと気分が変わっていくような書き方が増えている」というアメリカの現代ホラー小説。その中から2020年以降に発表された最新作に絞り、ブライアン・エヴンソンと柴田元幸が選りすぐりの5作家5作品をセレクト。他にイ・ジョンサン「空の紙袋」(斎藤真理子訳)、西崎憲「『魔女の科学』訳者あとがき」、トマス・ハーディ「ジョージー・クルックヒル氏の生涯における一事件」(柴田訳)など。
(スイッチパブリッシング 1320円)[amazon]

和田誠/山田宏一『定本 たかが映画じゃないか』
残る思い出は映画だけ──稀代の映画ファン和田誠の驚くべき映画的記憶を、友人である映画評論家山田宏一がとことん聞き出した伝説の名対談集、大幅増補版でついに復活。内容
(国書刊行会 3300円)[amazon]

『このホラーがすごい! 2024年版』
『このミス』編集部が贈るホラー小説のランキングブック。2023年4月~2024年3月に発売されたホラー小説から、国内・海外ベスト20の作品を紹介。綾辻行人ほか人気作家13名による特別エッセイ「私の怖い話」など。
(宝島社 900円)[amazon]

エラリー・クイーン『境界の扉 日本カシドリの秘密
国名シリーズに続いて発表されたThe Door Betweenは、ニューヨークにある日本風邸宅が舞台。本作が執筆された当時ニューヨークでのジャポニズム・ブームの残り香が感じられる、エラリー唯一無二の傑作ミステリ。越前敏弥訳
(角川文庫 1320円)[amazon]

オスカー・ワイルド『新訳 サロメ』
月夜の晩。エロド王に請われ、妖艶な踊りを披露したサロメ。王に求めた褒美は美しき預言者ヨカナーンの首だった。少女の激情を描き、男性同性愛の記号(モチーフ)を潜めることで、当時の西欧社会の抑圧を挑戦的に描いた本作は、実はワイルドの抵抗(レジスタンス)!? 仏語原文を忠実に読み解き、見過ごされてきた男達の意外な葛藤を示し、真のドラマ性を見事に新訳。ビアズリー画18点掲載。河合祥一郎訳
(角川文庫 968円)[amazon]

ヘンリー・D・ソロー『ウォールデン 森の生活
マサチューセッツ州ウォールデン池のほとりで約2年の自給自足生活を送ったソローの日記。自然の中に身を置きながら人間社会を諫め、「我々はどう生きるべきか」を思索したアメリカ文学の最高峰。田内志文訳
(角川文庫 1496円)[amazon]

マウリツィオ・デ・ジョバンニ『鼓動 P分署捜査班
4月初めの朝。ロマーノ巡査長がP分署近くのゴミ集積所で見つけたのは生後まもない赤ん坊だった。捨て子の親を探して捜査班の面々は奔走するが、ピザネッリ副署長が得た情報が、事態を思わぬ方向へ導いていく。いっぽう、アラゴーナ一等巡査は少年に懇願され犬を探す羽目に……個性派刑事たちの活躍を描く警察小説シリーズ。直良和美訳
(創元推理文庫 1210円)[amazon]

《紙魚の手帖》vol.17
今こそ読みたい!大注目の翻訳ミステリ特集。川野芽生、読切短編掲載。第24回本格ミステリ大賞全選評、一挙掲載ほか。
(東京創元社 1540円)[amazon]

『ミステリーツアー』講談社編
青崎有吾・・阿津川辰海・伊吹亜門・似鳥鶏・真下みこと
 ミステリーのことはよくわからない、でも知りたい。そんなあなたに、5人の小説家が刺激的な「謎」の世界をわかりやすく紹介。1回2分で読める全75回のミステリー書評。
(講談社 2145円)[amazon]

エドマンド・クリスピン『列をなす棺』
〈論創海外ミステリ〉
煌びやかな虚飾の世界で殺人事件に巻き込まれるジャーヴァス・フェン教授。映画業界を舞台にしたシリーズ後期作を初邦訳。宮澤洋司訳
(論創社 3080円)[amazon]

鮎川哲也『夜の挽歌 鮎川哲也短編クロニクル1969~1976
推理界の重鎮のきわめてレアな短編を年代順に収録。
(光文社文庫 1320円)[amazon]

李人稙『血の涙』
日清戦争のさなか、平壌で家族と離れ離れになった少女オンリョン。渡りゆく先は日本、そしてアメリカ。故郷から離れた土地では、思いがけぬ出会いがあり……。運命に翻弄される人間の姿を描く、「朝鮮最初の小説家」と称される著者の代表作。波田野節子訳
(光文社古典新訳文庫 990円)[amazon]

オラフ・ステープルドン『最後にして最初の人類』
2
0億年後の〈最後の人類〉が現代の人類に語る未来の歴史。数度の世界戦争、疫病の蔓延と地球規模の環境激変、火星人類の侵略など、度重なる災禍によって退行した人類は、やがて再び進化の階梯を登り始める。超人類の創造と諸文明の興亡、果しなき流れの果に人類がたどり着いた場所とは……。20億年に及ぶ悠久の年代記を驚異の想像力と神話的ヴィジョンで描いて、多方面に影響と衝撃を与えた伝説的名作。改訳文庫化。浜口稔訳
(ちくま文庫 1650円)[amazon]

山尾悠子『初夏ものがたり』
初期のSFファンタジー『オットーと魔術師』収録の表題作品を酒井駒子の挿絵と共に。みずみずしさを織り込み、鮮やかで不思議な印象を残す4作品。
(ちくま文庫 1100円)[amazon]

ゾラン・ジヴコヴィチ『フョードル・ミハイロヴィチの四つの死と一つの復活』
セルビアの幻想小説家が贈る「ゾラン・ジヴコヴィチ ファンタスチカ」第三弾。《大文豪ドストエフスキーは、また死ぬ。》2023年発表の最新作が早くも翻訳刊行。三門優祐訳。解説 高野史緒。
盛林堂ミステリアス文庫 1600円)[amazon]

サマル・ヤズベク『歩き娘 シリア・2013年
言葉を発せず、歩くのをやめられない少女。包囲下で爆撃にさらされ、地下室に拘束されたまま、見知らぬ「あなた」に宛てて書き綴る。柳谷あゆみ訳
(白水社 3300円)[amazon]

富岡直方『日本怪奇物語』
明治以降の新聞、雑誌、伝聞から、怪談、猟奇、不思議、珍談を収集。貴重な民俗譚。戦前の同名書を、新字新仮名遣いにして初文庫化。
(河出文庫 990円)[amazon]

長田幹彦『霊界 五十年の記録
心霊研究家だった作家の代表作『霊界五十年』の初文庫化。霊に出遭い続けた人の、幼少期からの目撃譚や聞いた話が淡々と語られる。
(河出文庫 792円)[amazon]

平原直美『クラーク・アンド・ディヴィジョン』
1944年、強制収容所を出てシカゴに着いた日系二世のアキ・イトウは、一足先に同地で新生活を始めていた姉ローズが前日クラーク・アンド・ディヴィジョン駅で轢死したと知らされる。警察の自殺説に疑問を感じたアキは自ら調査を始めるが……。戦時中の日系人の境遇にスポットを当てた、日系米国人作家の歴史ミステリー、新シリーズ第1弾。芹澤恵訳
(小学館文庫 1331円)[amazon]

泉鏡花『泉鏡花きのこ文学集成』
「茸の舞姫」他、“世界に冠たる「きのこ文学」作家”泉鏡花の8作品を集成。『原色日本菌類図鑑』より、190種以上のきのこ図版を収録。「編者解説「きのこ文学者としての泉鏡花」。飯沢耕太郎編
(作品社 2970円)[amazon]

スティーヴン・キング『死者は嘘をつかない』
ぼくが持つある能力。それは、死者が見えること――。恐怖の帝王得意の青春物語+ホラー。これで面白くないはずがない、円熟の逸品。土屋晃訳
(文春文庫 1650円)[amazon]

M・W・クレイヴン『恐怖を失った男』
頭の怪我によって恐怖を感じなくなり、連邦保安官を退任したベン。彼はかつての上司から行方不明の娘を捜索するよう依頼される。
(ハヤカワ文庫NV 1430円)[amazon]

ルパート・ホームズ『殺人者養成学校教本』
舞台は、殺人技術を教えるマクマスターズ校。学校の場所は厳重に隠されており、学生たちでさえもその所在は知らない。さらに、マクマスターズ校に入学した学生が外界に戻る方法は二つしか存在しない。無事に卒業するか、死体となって運び出されるかだ……。奥村章子訳
(早川書房 3080円)[amazon]


▼5月刊

ミシェル・ウエルベック『わが人生の数か月 2022年10月-2023年3月』
イスラム嫌悪をめぐる諍いの裏で、ポルノ映像出演という最悪の事態に見舞われた著者が赤裸々に描く自己分析的エッセイ。木内尭訳
(河出書房新社 1980円)[amazon]

ヤン・ポトツキ『サラゴサ手稿 
ポーランド貴族ポトツキが病床の妻のために読み切ってしまった『千一夜物語』の代わりに、毎日一話ずつ書きつづったのが本作ともいわれるが、いくつもの異本が存在し、謎に満ちた存在でもあった。近年その完全版がフランスで刊行され、岩波文庫に収録されたが、本書はその完全版刊行以前の、完全版とも異なる逸話も多く含む版の工藤幸雄全訳。
(創元ライブラリ 1320円)[amazon]

ミネット・ウォルターズ『女彫刻家 新装版
母親と妹を切り刻み、それをまた人間の形に並べて、台所の床に血みどろの抽象画を描いた女。その無期懲役囚について一冊書け、と出版社に命じられたライターのロズは、覚悟を決めて取材にかかる。オリーヴとの面会では並はずれた威圧感に震え上がったが、相手は意外にも理性の閃きをのぞかせた。かすかな違和感は、微妙な齟齬の発見をへて、大きな疑問に着する……本当に彼女がやったのか? MWA賞受賞作。成川裕子訳
(創元推理文庫 1540円)[amazon]

フランシス・ハーディング『ガラスの顔』
人々が《面》と呼ばれる表情を顔にまとって暮らす地下都市を舞台に、はねっかえりの少女が、国をゆるがす謎に満ちた陰謀に巻き込まれる。児玉敦子訳
(創元推理文庫 1870円)[amazon]

小川公代『翔ぶ女たち』
明治から昭和にかけて活躍した小説家・野上弥生子。語学力や教養やケア実践を、彼女はその先駆的な仕事にどう活かしたのか。「ケア」をテーマに研究を続けてきた英文学者の「私」が弥生子の人生に惹かれた理由とは。文学、映画、アニメ、音楽……現代の表現者たちの言葉をつなげて語る斬新な評論。
(講談社 1760円)[amazon]

フランツ・カフカ『実存と人生 新装版
カフカが書き残した多くのアフォリズムと日記を編纂した一冊。そこにはさまざまな謎を秘めた彼の文学が映し出されている。辻瑆 編訳
(白水社 3080円)[amazon]

デイモン・ラニアン『ガイズ&ドールズ』
賭け事にとり憑かれた生粋のギャンブラーが一目惚れしたのは、魂を救済するため布教活動に従事する清廉な美女だった――。ブロードウェイを舞台に悲喜こもごもの人間喜劇を描き続けたデイモン・ラニアン。ジャズ・エイジを代表する短篇の名手の歴史的デビュー作品集。田口俊樹訳
(新潮文庫 935円)[amazon]

フランツ・カフカ『カフカ断片集 海辺の貝殻のようにうつろで、ひと足でふみつぶされそうだ
カフカは完成した作品の他に、手記やノート等に多くの断片を残した。その短く、未完成な小説のかけらは人々を魅了し、断片こそがカフカだという評価もあるほど。そこに記されたなぜか笑える絶望的な感情、卓越した語彙力で発せられるネガティブな嘆き、不条理で不可解な物語、そして息をのむほど美しい言葉。誰よりも悲観的で人間らしく生きたカフカが贈る極上の言葉たち。完全新訳で登場。頭木弘樹訳
(新潮文庫 693円)[amazon]

オーウェン・デイヴィス『ビジュアル図鑑 魔導書の歴史』
呪文、護符、呪いなど、自らの欲望を実現するために、悪魔、天使、霊などを操る技法が描かれた魔導書の歴史を250点超の図版とともに紹介。辻元よしふみ・辻元玲子訳。【目次】序章/第1章 古代の素材で/第2章 羊皮紙と書籍/第3章 印刷と紙/第4章 手描きは生き続ける/第5章 パルプ印刷の力/第6章 現代のグリモワール
(河出書房新社 6490円)[amazon]

ヒュー・コンウェイ『コールド・バック』
〈論創海外ミステリ〉
愛する妻に付きまとう疑惑の影。青年は遠路シベリアへ旅立つ。高木直二・門脇智子訳
(論創社 2640円)[amazon]

エイドリアン・トミネ『紐育百景』
『長距離漫画家の孤独』などのグラフィック・ノヴェルで知られるエイドリアン・トミネ、初の画集NEW YORK DRAWINGS日本版。『ニューヨーカー』誌のカバー・イラストレーションを中心に、ストリート・スケッチや描き下ろしコミックを満載。生命力とユーモアにあふれ、ささやかな出来事がぎゅっと詰まった『紐育百景』は、第二の故郷に対するトミネのオマージュであり、ニューヨークが彼のアートに与えたひらめきと影響の記録でもある。長澤あかね訳
(国書刊行会 5500円)[amazon]

モーリス・ゼルマッテン『雪のフィアンセたち スイス幻想民話集
スイス・アルプスの村々を舞台に、親から子へ、子から孫へと語り継がれてきた伝説をもとに、生の世界と死の世界を行きかう者たちを描いた、怪奇と幻想の渦巻く短編集。佐原隆雄訳
(国書刊行会 5500円)[amazon]

ジャン・チュラール『ナポレオン時代の犯罪』
栄光のナポレオン時代。国内では民法典、大改革、レジョンドヌール勲章によって統治された社会に、実際は殺人者や盗賊、密売人、無法者の世界が対立していた。ナポレオン自身が狙われた「サン=ニケーズ通りの仕掛け爆弾」事件、「短剣の策謀」をはじめ、バルザックの『暗黒事件』にインスピレーションを与えた「元老院議員クレマン・ド・リの誘拐」などの犯罪を取り上げて詳細に分析、その実態を明らかにした好著。辻谷泰志訳
(国書刊行会 3520円)[amazon]

紀蔚然『DV8 台北プライベートアイ2
台北郊外の街・淡水に引っ越した私立探偵の呉誠は、人捜しをきっかけに20年前に容疑者死亡で幕を閉じた連続殺人事件の真相に迫る。舩山むつみ訳
(文藝春秋 2200円)[amazon]

岸本佐知子『わからない』
名翻訳家/エッセイストが贈る、抱腹絶倒、奇想天外、虚実の境をまたぎ越すエッセイ集。単行本未収録、四半世紀分のキシモトワールド。
(白水社 2530円)[amazon]

青木正児『中華飲酒詩選』
陶淵明、李白、白楽天など周代~唐代を代表する名詩から、稀代の中国文学者で名文筆家の著者が「酒徒が酔余の朗詠に供する」のを目的に編んだ、愛酒家必読の名著。現代語訳を新かな遣いにあらため初文庫化。
(角川ソフィア文庫 1364円)[amazon]

《ミステリマガジン》7月号
〈特集 令和の鉄道ミステリ〉
霞流一/山本巧次/コーネル・ウールリッチ/ジョン・チーヴァー/他
(早川書房 1320円)[amazon]

アーサー・コナン・ドイル『ササッサ谷の怪 コナン・ドイル奇譚集
幻のデビュー作「ササッサ谷の怪」から、ストランド・マガジン最後の掲載作品「最後の手段」まで。ミステリのみに留まらない希代のストーリーテラー、コナン・ドイルの魅力を再発見する短篇全14編を収録。小池滋監訳/編・解説=北原尚彦
(中公文庫 990円)[amazon]

坂口安吾『安吾探偵事件帖 事件と探偵小説
坂口安吾は「文壇随一の探偵小説通」であり、『不連続殺人事件』『安吾捕物帖』など実作も手がけた。その一方、自ら「安吾タンテイ」と名乗り、帝銀事件や下山事件など実際の事件について大胆な推理を展開した。こうした事件評論・裁判傍聴記と、愛好する探偵小説を論じたエッセイを一冊にした文庫オリジナル編集。
(中公文庫 1100円)[amazon]

マーティン・エイミス『関心領域』
おのれを「正常」だと信じ続ける強制収容所の司令官、司令官の妻と不倫する将校、死体処理班として生き延びるユダヤ人。おぞましい殺戮を前に露わになる人間の本質を、英国を代表する作家が皮肉とともに描いた傑作。北田絵里子訳
(早川書房 2750円)[amazon]

クリス・ウィタカー『終わりなき夜に少女は』
アラバマ州グレイス。連続少女失踪事件が解決されないまま、サマーという少女が失踪した。双子の妹レインは、姉の失踪に疑念を抱く。サマーが私を置いていくはずがない。だが、レインが姉の足取りを追うにつれ見えてきたのは、彼女の知らないサマーの姿だった。
(早川書房 2420円)[amazon]

アニー・エルノー『若い男/もうひとりの娘』
3
0歳下の男性と付き合うなかで感じる熱情、若かりし頃の記憶、脳裏によぎる死の想念を冷徹に描く「若い男」。著者が生まれる前に亡くなった姉と両親の秘密を緊密な文章で解きほぐす「もうひとりの娘」。ノーベル文学賞作家のエッセンスを凝縮した自伝的作品。堀茂樹訳
(早川書房 2640円)[amazon]

チャック・ホーガン『ギャングランド』
1975年、シカゴ。マフィア組織のボスが盗難に遭う。潜入捜査員のニッキーは、組織を壊滅させかねない盗品の奪取を命じられ……。渡辺義久訳
(ハヤカワ・ミステリ文庫 1848円)[amazon]

レスリー・シモタカハラ『リーディング・リスト』
日系カナダ人4世の著者の手による自伝小説。主人公はカナダの地方大学で文学を講じているが、学生から「史上最悪の教授」と揶揄され、転職も恋愛も失敗、極度の鬱状態でトロントの実家へ。定年退職した父のために作った「リーディング・リスト」に添って、日系カナダ人の両親や祖父母の人生をたどり、自身の生と死を見つめる日々を送ることに。全13章のタイトルはすべて、リーディング・リストの作品名になっている。加藤洋子訳
(北烏山編集室 3080円)[amazon]

原英一『カズオ・イシグロ、沈黙の文学』
日系イギリス人作家で、2017年にノーベル文学賞を受賞したカズオ・イシグロの長編小説8作を読み解く。イシグロ文学の特質を「沈黙」の文学としてとらえ、イシグロ作品全体のマスターナラティヴとは何かを論じていく。曲亭馬琴の〈省筆〉、デリダの〈喪の作業〉をキー概念に語られるイシグロの小説世界の魅力。
(北烏山編集室 3520円)[amazon]

アリスン・モントクレア『ワインレッドの追跡者 ロンドン謎解き結婚相談所
戦後ロンドン。結婚相談所の経営者アイリスは、ワインレッドのコートを着た女に尾行されていると気づく。戦時中の情報部での活動に関係している? しかも帰宅すると、同じく情報部員だった元恋人が部屋に来ていた。しばらくここに潜伏すると言われたアイリスは、グウェンの家に泊めてもらうが、2日後、アイリスの部屋から若い女性の死体が発見されて……。元スパイと上流階級出身、正反対の女性たちの活躍を描く人気シリーズ最新作。山田久美子訳
(創元推理文庫 1320円)[amazon]

トラヴィス・バルドリー『伝説とカフェラテ 傭兵、珈琲店を開く
珈琲店を開きたい。それがヴィヴの夢だった。最後の冒険の戦利品である幸運の輪を引き寄せるというスカルヴァートの石を懐に店作りに着手。厩を改装した店は最初は閑古鳥が鳴いていたが、店員が描いた看板や、隠れた天才パン職人のつくるパンや菓子のおかげで、次第に繁盛しはじめるが……。ネビュラ賞最終候補の心温まるコージーファンタジイ。原島文世訳
(創元推理文庫 1320円)[amazon]

朱和之『南光』
〈アジア文芸ライブラリー〉
日本統治時代に台湾に生まれ、内地留学先の法政大学でライカと出会ったことで写真家の道を歩み出した鄧騰煇(南光)。モダンな東京、そして戦争と戦後の動乱で変わりゆく台湾の姿を写し続けた実在の写真家をモデルにした歴史小説。中村加代子訳
(春秋社 2860円)[amazon]

押川春浪『海底宝窟 完全版
“ハイカラ豪傑”高濱勇は世界漫遊の帰途、救助した遭難船の乗組員から怪物が棲むという南海の怪島の話を聞き……。春浪の死により未完のまま連載終了した『海底宝窟』(大正2年、「武侠世界」連載)には、幻の最終回ともいうべき〈完結篇〉が存在した!  春浪没後110年を経て初の完全版刊行。北原尚彦編
盛林堂ミステリアス文庫 2000円)[amazon]文学フリマ東京(5/19)で販売

《Re-ClaM》 vol.12
特集=ダブルデイ・クライムクラブとその歴史(続) エド・ハルス「クライムクラブの黄金時代 1928-1940(承前)」、A・バークリー「疑惑の効用」、小特集エリザベス・フェラーズ、原書レビュー他。クラシックミステリ同人誌。
Re-ClaM編集部)※文学フリマ東京(5/19)で販売

ヘルマン・ブロッホ『ウェルギリウスの死 上・下
詩人ウェルギリウスは、アテナイからローマへの帰国の途中で熱病に侵され、死の思いに耽り詩人としての自分に思い及び、やがて未完の大作『アエネーイス』についてある決断をすることに。現実と非現実、過去と現在と未来、意識と超意識が内的独白で融解していく。古代ローマの大詩人の死の直前の18時間を描いた、20世紀ドイツ文学の記念碑的名作を復刊。川村二郎訳
(あいんしゅりっと 2750円/2970円)[amazon]

鹿島茂『新版 馬車が買いたい』
〈書物復権〉
19世紀の小説に登場するパリの風俗・世相を膨大な資料を駆使して描いた、著者の代表作といえる傑作。サントリー学芸賞受賞。
(白水社 4180円)[amazon]

奈倉有里『ロシア文学の教室』
社会とはなにか、愛とはなにか? 戦争の時代に文学とどう向き合ったらいいのか――ロシア文学訳者、エッセイストとして活躍する著者が描き出す、真摯でチャーミングな「愛のロシア文学教室」。ゴーゴリ、プーシキン、ドストエフスキー、レーモンルトフ、ゴンチャロフ、ツルゲーネフ、チェーホフ、トルストイなど全12回。
(文春新書 1595円)[amazon]

ハインリヒ・マン『ウンラート教授 あるいは一暴君の末路
ハインリヒ・マンの名を世界に知らしめた小説。「ウンラート(汚物))教授」とあだ名される教師は、生徒を追いかけ入った酒場で美しい歌姫の虜となる。転落していく主人公を通して帝国社会を諧謔的に描いた本書は、マレーネ・ディートリヒ出演の映画『嘆きの天使』原作であり、ファシズムを予見した作ともされる。今井敦訳
(岩波文庫 1221円)[amazon]

アレクサンドル・ゲルツェン『過去と思索 1』
ナポレオン侵攻前夜にモスクワで生まれ、「パリ・コンミューン」前夜にパリで没したアレクサンドル・ゲルツェン。近代史のこの転換期に「人間の自由と尊厳」の旗を掲げてロシアから西欧へと駆け抜けた、一人の亡命者の壮烈な人生の幕が今開く。第一分冊は生い立ちから政治に目覚めた青年時代まで(全7冊)。金子幸彦・長縄光男訳
(岩波文庫 1507円)[amazon]

S・A・コスビー『すべての罪は血を流す』
ヴァージニア州の高校で教師が銃撃され、容疑者の黒人青年が白人保安官補に射殺された。人種対立の残る町に衝撃が走るなか、元FBI捜査官の黒人保安官タイタスは捜査を開始する。容疑者は銃を捨てるよう説得するタイタスに奇妙な言葉を残していたのだ。「先生の携帯を見て」と。被害者の携帯電話を探ると、そこには彼と“狼”のマスクを被った男たちによる残忍な殺人が記録されていた――。
(ハーパーBOOKS 1430円)[amazon]

アンナ・シューウェル『黒馬物語』
毛並みの美しいブラックビューティは仲間の馬たちや優しい厩務員たちと平和に暮らしていたが、やがて売られた先で扱き使われ、厳しい現実を目の当たりにする……。馬の視点から語られた名作。小学校高学年以上対象。挿絵60点以上。三辺律子訳
(光文社古典新訳文庫 1430円)[amazon]

イヴァン・ゴンチャロフ 『オブローモフの夢』
怠惰と無気力、無為に空しく日々を過ごす青年オブローモフ。その彼が朝目覚めても寝床から起き上がるだけの気力も湧かないまま、自分はどうしてこのような人間になってしまったのだろうかと、うつらうつら微睡むうちに見る夢を詩情豊かに綴った「オブローモフの夢」。長編小説『オブローモフ』の土台であり独立して書かれたこの章をメインに、抄訳付きで贈る。ロシア文学史上もっとも愛されるオブローモフとは、いったい何者か? 安岡治子訳
(光文社古典新訳文庫 1100円)[amazon]

ジョセフ・オコーナー『シャドウプレイ』
1900年代初頭、ブラム・ストーカーは、人気俳優ヘンリー・アーヴィングに雇われ、ロンドンのライシーアム劇場の支配人となっていた。ストーカー、アーヴィング、そして一座に加わった名優エレン・テリー。個性的な三人の人生をドラマティックな筆致で描く。そしてこれは、劇場支配人の激務をこなしながらストーカーの内部でかの名作『吸血鬼ドラキュラ』をいかに育み、形にしたのかの物語でもある。栩木伸明訳
(東京創元社 予3520円)[amazon]

ジョナサン・ストラーン編『シリコンバレーのドローン海賊 人新世SF傑作選
人新世、それは人間の活動が地球環境そのものに多大な影響を与える時代。パンデミック、世界的な経済格差、人権問題、資源問題、そして環境破壊や気候変動問題……未来が破滅的に思えるときこそ、サイエンス・フィクションというツールの出番だ。不透明な未来を見通し、希望をもたらすにはどうしたらよいか、グレッグ・イーガンを始めとする気鋭の作家たちが探ってゆく。中原尚哉他訳
(創元SF文庫 1540円)[amazon]

トム・スタンデージ『ヴィクトリア朝時代のインターネット』
かつてない距離を即時に越えるコミュニケーションを可能にした電信。その発明史と、19世紀の欧米社会に与えた大いなる影響を描く。服部桂訳
(ハヤカワ文庫NF 1210円)[amazon]

グレゴリー・マグワイヤ『ウィキッド 誰も知らない、もう一つのオズの物語
オズの国の悪い魔女と善い魔女は、かつて親友だった。だが、二人の大学で起きた殺人事件が人生を分ける。同名ミュージカルの原作。市ノ瀬美麗訳
(ハヤカワ文庫NV 1100円/1056円)[amazon]

ジャック・キャンベル『彷徨える艦隊13 戦艦ウォースパイト』
ギアリーと艦隊は、使節団を護衛してダンサー族の宙域へ旅立つ。だが、謎の種族の奇襲 と艦隊内での陰謀が彼らを待ち構えていた。月岡小穂訳
(ハヤカワ文庫SF 1870円)[amazon]

ジョスリン・ニコール・ジョンソン『モンティチェロ 終末の町で
鳴り響くアメリカ国歌、銃声。逃げ惑う住民が辿りついたのは元大統領邸宅だった……。近未来アメリカを舞台に、トマス・ジェファーソンと奴隷の間に生まれた女性を先祖に持つ女子学生が、暴徒化した白人至上主義者から逃れ、因縁の場所で運命と対峙する表題作はじめ、全6編を収録した作品集。石川由美子訳
(集英社 2640円)[amazon]

山野浩一『レヴォリューション+1』
SFの、否、文学の総体の「革命」を目論むNW-SF社版『レヴォリューション』(1983)に、同書未収録の異色短編「スペース・オペラ」をプラスした連作集完全版。岡和田晃編
(小鳥遊書房 3080円)[amaon]

ウィル・リーチ『車椅子探偵の幸運な日々』
難病を患い、車椅子で生活をするダニエルは、玄関ポーチから近所を観察することを趣味としていた。頻繁に通る若い女性のことが少し気になるダニエルだったが、ある日、彼女が誘拐される場面を目撃してしまう。彼はネットを駆使して独自の捜査を始めるが……。服部京子訳
(ハヤカワ・ミステリ 2860円)[amazon]

レイ・ブラッドベリ『猫のパジャマ』
巨匠による極上のラブストーリー「猫のパジャマ」、初期の名作「さなぎ」ほか、人生のほろ苦い驚きが詰まった珠玉の作品集。新装版。中村融訳
(河出文庫 1100円)[amazon]

チャールズ・ブコウスキー『勝手に生きろ!』
1940年代アメリカ。職を転々としながら全米を放浪する主人公。つらい日常の救いはユーモアと酒と「書くこと」だった。映画化。都甲幸治訳
(河出文庫 1045円)[amazon]

イーユン・リー『理由のない場所』
母親の「私」と自殺してまもない16歳の息子との会話で進められる物語。実体験をもとに書かれ、母親の深い悲しみが強く心を打つ。篠森ゆりこ訳
(河出文庫 1100円)[amazon]

小泉八雲『心 日本の内面生活がこだまする暗示的諸編
明治日本から世界へ、日本の文化を発信したラフカディオ・ハーン=小泉八雲。日本解釈者ハーンの代表作。エッセイ・評論、全15編。平川祐弘訳
(河出文庫 1100円)[amazon]

清少納言『枕草子 上・下
平安中期、一条天皇の中宮定子に仕えた清少納言が、宮中での生活を才気煥発の筆で綴った随筆集。エスプリの効いた現代語訳で甦る。酒井順子 現代語訳
(河出文庫 予価各880円)[amazon]

紀蔚然『台北プライベートアイ』

劇作家・大学教授の呉誠は日頃の鬱憤が爆発して酒席で失態を演じ、職を辞して台北の裏路地・臥龍街で私立探偵の看板を掲げることに。にわか仕立ての素人探偵は、やがて台北中を震撼させる連続殺人事件に巻き込まれ、己の冤罪をはらすため真犯人を見つけ出すことを誓う。謎のシリアルキラー〈六張犂の殺人鬼〉の正体は? 舩山むつみ訳
(文春文庫 1375円)[amazon]

吉田健一『言葉というもの』
イエーツ、ヴァレリー、鷗外、宇治拾遺物語……。古今東西の文学を自在に横断しながら、文学とは何か、言葉とは何かを解き明かし独自の文明論に至る、吉田健一随筆の真骨頂。
(平凡社ライブラリー 予価1870円)[amazon]

ドヴィド・ベルゲルソン/デル・ニステル『二匹のけだもの/なけなしの財産 他五篇
〈ルリユール叢書〉
東欧ユダヤ文化の「生き証人」としてポグロム(虐殺)と亡命の記憶を活写した、ドヴィド・ベルゲルソン。「隠遁者」の筆名でスターリニズムのテロルを予感させる幻想的な作品を発表した、デル・ニステル。スターリン時代に粛清されたイディッシュ文学の代表作家二人の傑作短編集。田中壮泰・赤尾光春訳
(幻戯書房 3960円)[amazon]

ダニエル・スウェレン=ベッカー『キル・ショー』
アメリカ東部の田舎町フレデリックで、16歳の女子高生サラ・パーセルが失踪した。26人の事件関係者の「証言」から浮かびあがる10年前に全米を揺るがした事件の「真実」とは? 特異な叙述形式と意想外の展開。才気煥発の「実録犯罪」ミステリー。矢口誠訳
(扶桑社ミステリー 1485円)[amazon]

佐々木真理『アーシュラ・K・ルグィン 新たなる帰還
〈アメリカ文学との邂逅〉
想像力の持つ可能性と希望を信じ、異文化の共存の可能性を模索し、限界に挑戦し続けたルグィンの螺旋をのぼる旅をたどる。
(三修社 4180円)[amazon]

西成彦『多言語的なアメリカ』
英語、フランス語、スペイン語、ポルトガル語、パトワ、イディッシュ、パピアメント、日本語……さまざまな言語が鳴り響く、新たなる「アメリカ大陸文学史」の試み。『イディッシュ』『エクストラテリトリアル』に続く、移動文学論第三弾。
(作品社 4180円)[amazon]

ユードラ・ウェルティ『デルタ・ウエディング』
1923年秋、結婚式のために集ったデルタ地方の大農園一家の日常を、主に5人の白人女性の複雑な内面を通して緻密に描き出す。アメリカ深南部ミシシッピの作家ウェルティの長編代表作、57年ぶりの新訳(旧訳『デルタの結婚式』)。本村浩二訳
(論創社 4180円)[amazon]

後藤隆基『乱歩を探して』
立教大学江戸川乱歩記念大衆文化研究センター(旧江戸川乱歩邸)で行なわれた、乱歩に所縁の人々、乱歩作品を愛する人々へのインタビューを一冊にまとめたもの。内容
(立教学院 2420円)[e-hon]


▼4月刊

ラドヤード・キプリング『幽霊の物語』
ダンセイニ卿が当世紀最大の幻想作家と推す、ラドヤード・キプリングの幽霊物語集。単純な幽霊邂逅録を超え、人々の心の機微と悲哀、驚異と意外性が精緻に折り込まれた秀作揃い。代表作「彼等」、「人力車の幽霊」な11作品を収載。稲垣博訳
盛林堂ミステリアス文庫 2600円)[amazon]

マリー・ルイーゼ・カシュニッツ『ある晴れたXデイに カシュニッツ短編傑作選
死んだはずの養子に見張られていると主張し、戸締まりを厳重にする妻。夫との会話から見えてくる真実は……(「雪解け」)。手脚に痣や傷がついていくのに痛みを感じない女性の日記。内容はどんどん異様になり……(「火中の足」)。ある母親は、世界が滅亡する日が気がかりで詳細な手記を執筆するが……(「ある晴れたXデイに」)。戦後ドイツを代表する女性作家が描く日常に忍び込む幻想と戦慄の人間心理。全15編の傑作短編集。酒寄進一訳
(東京創元社 2310円)[amazon]

レイモンド・チャンドラー『プレイバック』
フィリップ・マーロウはある弁護士の依頼を受け、ひとりの女の動向を探る。彼女は男につきまとわれ脅されているらしい。ホテルに宿泊した彼女は同じホテルに部屋を取ったマーロウのもとに現われ、自分の部屋のベランダに男の死体があると助けを求めてきた。しかし、行ってみると死体は消えていた。 いったい何が起きているのか? この女は何者なのか? チャンドラーの遺作を新訳で。田口俊樹訳
(創元推理文庫 990円)[amazon]

アラン・コルバン『疾風とそよ風 風の感じ方と思い描き方の歴史
「風」は歴史の対象になりえるのか? 人知の及ばぬ力と神秘的な存在感をもって、古来、変わることなく人間の傍らにあり続けてきた「風」――。しかし、その「風」への認識は、空気の組成や気象の力学への理解が進み、さらに人類が「空」へ進出し始めた18‐19世紀に大きな転換を迎える。「感性の歴史」の第一人者が、多様な文献を通じて跡付ける、人間にとっての「風」の歴史。綾部麻美訳
(藤原書店 2860円)[amazon]

ボリス・グロイス編『ロシア宇宙主義』
再評価著しい思想「ロシア宇宙主義」の現代的意義を問う画期的アンソロジー。科学技術による死者の復活、人類進化による不死の達成。宗教、哲学、科学、共産主義など、重要エッセイを集成。乗松亨平監訳
(河出書房新社 3960円)[amazon]

リサ・ラッツ『スワロウズ』
私立の寄宿学校に赴任し、創作を教えることになったアレックス・ウィットは、スクールカーストの一軍男子が女子を「採点」し貶めるコンテストの存在を知る。反逆をもくろむ女子生徒たちを助けようとするアレックスだが、学校全体にかかわる歪んだ性暴力の闇に巻き込まれて……。スクールカーストの闇を描くサスペンス。杉山直子訳
(小鳥遊書房 2640円)[amazon]

ワースリー・グロスマン『スターリングラード 
『人生と運命』の前編となる全3巻。チェーホフを思わせる詩情、人物と心理、情景の描写、戦争の現実が胸を打つ。文学史上の金字塔。園部哲訳
(白水社 5390円)[amazon]

アラスター・グレイ『ほら話とほんとうの話、ほんの十ほど 新装版
静かな怒りと哀しみ、リアリズムとファンタジーが混淆した作風で現代スコットランド文学を代表する鬼才の短篇集。高橋和久訳
(白水社 2860円)[amazon]

シルヴィー・ジェルマン『小さくも重要ないくつもの場面』
〈エクス・リブリス〉
父の再婚で新たに兄姉ができたリリ。一人が命を落とし家族を次々と悲劇が襲う。関係を模索する再構成家族の姿と秘密を詩的に描く。岩坂悦子訳
(白水社 3080円)[amazon]

エドワード・ゴーリー『青い煮凝り』
ゴーリーのオペラへの愛が凝縮された悲劇的物語。歌姫カヴィグリアと、その狂信的なファンである孤独な男ジャスパーの運命はいかに。細密な線画で表現されたダークなゴーリーの真骨頂。柴田元幸訳
(河出書房新社 1540円)[amazon]

ルー・リード『ニューヨーク・ストーリー ルー・リード詩集
ヴェルヴェット・アンダーグラウンド時代を含む自選歌詞集。ハヴェル大統領、作家セルビーとの対話も収録。待望の復刊。梅沢葉子訳
(河出書房新社 3630円)[amazon]

H・C・アンデルセン『夜ふけに読みたい 森と海のアンデルセン童話』
人気の「夜ふけに読みたいおとぎ話」シリーズ、アンデルセン童話の第2弾。「人魚姫」「みにくいアヒルの子」など古典童話の新訳を、アーサー・ラッカムの美しい挿絵とともに。吉澤康子・和爾桃子訳
(平凡社 2530円)[amazon]

キム・フン『ハルビン』
1909年10月26日、ハルビン駅。伊藤博文に凶弾を放った安重根——それは英雄でもテロリストでもない、悩める30歳の青年だった。大地主の家に生まれるも勉学よりも狩猟を好み、義兵部隊は日本人捕虜を解放したことでクビ。やり場のない怒りを抱え、凶行へと駆り立てられた青年の姿を描く、歴史小説の第一人者による話題作。蓮池薫訳
(新潮クレスト・ブックス 2365円)[amazon]

小島瓔禮『猫の王 猫伝承とその源流
猫は突然、姿を消すことがある。彼らはみな阿蘇山の猫岳を目指して旅に出るという。帰ってきたものは耳が裂け、尻尾は二股に割れて、踊り出す。家に帰ってこないものは猫の王となって猫岳に君臨する。 この「猫の王」伝承をたどり、日本各地からアジア、ユーラシア大陸を経て、ヨーロッパ、古代エジプトへ。古今東西の豊富な資料を基に、招き猫・猫また屋敷・踊る猫・猫魂ほか、海を越えて伝わった猫の怪異と魔性の謎を解き明かす。
(角川ソフィア文庫 1914円)[amazon]

《SFマガジン》6月号
(早川書房 1320円)[amazon]

ブルース・J・シュルマン『アメリカ70年代 激動する文化・社会・政治
1
970年代アメリカの文化・社会・政治を多角的・横断的に捉え、以後半世紀にわたってダイナミックに変容していく社会の萌芽を見出す。21世紀におけるアメリカの分断と南部化の予兆をヴィヴィッドに描き出した話題の書。巽孝之監訳/北村玲子訳
(国書刊行会 3960円)[amazon]

フランツ・カフカ『決定版カフカ短編集』
父親との対峙を描く「判決」、特殊な拷問器具に取り憑かれた士官を取材する「流刑地にて」、檻の中での断食を見世物にする男の生涯を追う「断食芸人」……。遺言で原稿の焼却を頼むほど自身の作品への評価が厳しかったカフカ。その中でも自己評価の高かった15編を厳選した、カフカ短編集の決定版。頭木弘樹編
(新潮文庫 781円)[amazon]

フランソワーズ・サガン『ブラームスはお好き』
パリに暮らすインテリアデザイナーのポールは、離婚歴のある39歳。美しいがもう若くないことを自覚している。恋人のロジェを愛しているけれど、移り気な彼との関係に孤独を感じていた。そして出会った美貌の青年、シモン。ポールの悲しげな雰囲気に一目惚れした彼は、14歳年上の彼女に一途な愛を捧げるが——。二人の男の間で揺れる大人の女の感情を繊細に描く、洒脱で哀切な恋愛小説の名品。河野万里子訳
(新潮文庫 781円)[amazon]

シャロン・ボルトン『身代りの女』
卒業を間近にしたパブリック・スクールの優等生6人が、泥酔して逆走させた自動車で母娘3人の命を奪う大事故を起こしてしまう。20年後、事故当時ひとり罪をかぶり刑期を務めたメーガンが、いまや成功した人生を享受している5人の前に姿をあらわす。身代りとなったメーガンは、彼らと、ある〝約束〟を交わしていたのだった……。オックスフォードを舞台にした予測不能のサスペンス小説。川副智子訳
(新潮文庫 1320円)[amazon]

ネイサン・オーツ『死を弄ぶ少年』
甥は11歳の夏に"事件"を起こした。6年後、両親を亡くした彼を引き取ることに。悪魔のような少年から家族を守り切れるのか……。山田佳世訳
(ハヤカワ・ミステリ文庫 1584円)[amazon]

劉慈欣『三体2 黒暗森林 上・下
新天地を求める三体文明の侵略艦隊が太陽系に到達するのは四百数十年後。 危機に直面 した人類は衝撃の「面壁計画」を発動させる。大森望・立原透耶・上原かおり・泊功訳
(ハヤカワ文庫SF 各1100円)[amazon]

シェリー・リード『川が流れるように』
ヴィクトリアは17年間なにも選べなかった。家事と農作業に明け暮れ、近所の川がどんな景色に繋がるかも知らない。だが、流れ者の青年ウィルと出会った。反対する家族に嘘をつき、逢瀬を選んだ彼女。背後には悲劇が迫っていた。喪失と再生を描く米国の感動作。桑原洋子訳
(早川書房 3080円)[amazon]

《怪と幽》vol.016
特集1 陰陽師を知る/特集2 デビュー30周年 京極夏彦「巷説百物語」了
(KADOKAWA 2200円)[amazon]

マリオ・プラーツ『古都ウィーンの黄昏 建築と美術と文学と
〈碩学の旅 Ⅳ マリオ・プラーツ都市文化論〉
永遠の都ローマを知り尽くした碩学が、古の栄光に導かれ、かつては光輝いていた東欧から中欧の古都を旅し、何気ない広場や街路や佇まいに秘められた、時空を超えた深い歴史的意味と、栄枯盛衰への哀悼と芸術的精華を語る、珠玉のエッセイ集。伊藤博明・金山弘昌・新保淳乃訳
(ありな書房 3960円)[amazon]

エーリヒ・ケストナー『消え失せた密画』
ベルリンで長年真面目に働いてきた肉屋の親方キュルツは、突然すべてが嫌になって家を飛び出し、デンマークの都市コペンハーゲンにやって来た。そこで高価な密画をベルリンまで運ぼうとする女性に協力を頼まれる。盗賊団や、謎の青年から狙われる密画を、人の良いキュルツは守れるか……。「抵抗の作家」がナチスからの迫害下に著した、登場人物すべてがどこか憎めない痛快ユーモアミステリー。小松太郎訳
(中公文庫 990円)[amazon]

松本清張『閉じた海 社会派推理レアコレクション
ジャンルの始祖・清張にとって、「社会派推理」とは何だったのか? 初書籍化となる中篇「閉じた海」はじめ、これまで単著・全集未収録の貴重な小説・トーク・エッセイを中心にセレクト。本人およびその同時代作家たちによる証言を通して、「社会派推理」が求められた原点、そしてその展開の軌跡と可能性の中心をさぐる。
(中央公論新社 2420円)[amazon]

坂口安吾『明治開化 安吾捕物帖』
時は明治。洋行帰りの紳士探偵・結城新十郎と、維新の傑物・勝海舟のダブル推理で謎を解く。 人間たちの欲望と情念が練りこまれたエグくて悪い物語を精選。 奇才安吾による空前絶後の自由なストーリー。
(春陽文庫 946円)[amazon]

ミカ・ヴァルタリ『エジプト人 シヌヘ 上・下
世界中の人々を魅了してやまない古代エジプト文明が克明に描かれた歴史小説。 古代エジプト文明の栄華を誇る新王朝時代末期に生を受けた主人公シヌヘの一代記。テーベで頭蓋切開医師となり、シリア、バビロン、ヒッタイト、クレタ島への壮大な旅が始まる。各地で医術を学びながら思いも寄らない運命に巻き込まれていく。ファラオ・アクエンアテン、ホルエムヘブ、神官アイなど史実に基づく登場人物も生き生きと描かれる。世界的ベストセラー、本邦初のフィンランド語原典からの完訳版。セルボ貴子訳/菊川匡監修
(みずいろブックス 各2750円)[amazon]

ファニー・クラドック『シャーロック・ホームズ家の料理読本』
シャーロック・ホームズが暮らす下宿の賄い方兼家政婦であったハドスン夫人が、引退後に彼とワトスンの好物のレシピを思い出とともに綴る。朝食・スープから魚料理・禽獣類の料理、臓物料理にお酒のレシピまで。パスティーシュ小説のようでありつつ、ヴィクトリア朝の食文化・風俗の貴重な記録としても楽しめる。成田篤彦訳
(朝日文庫 1430円)[amazon]

フィリップ・ロス『プロット・アゲンスト・アメリカ』
1940年、もしもヒトラーの友人で反ユダヤ主義者のリンドバーグが米大統領になっていたら!? フィリップ・ロスの歴史改変小説。柴田元幸訳
(集英社文庫 1760円)[amazon]

フランツ・カフカ『カフカの日記 1910-1923 新版
日記文学の金字塔を、カフカ没後100年の今年、新たに世に送る。常人ではわからないカフカの研ぎ澄まされた五感が捉えた日常、それを受け止めるカフカの心の世界、不眠と夢の描写、父との葛藤、フェリーツェはじめ女性への苦悩、ユダヤ人社会のことなど、そのすべてがカフカの文学に連なり、それ自体が文学になっている。新潮社版『決定版カフカ全集』第7巻(1992)を底本に新版で刊行。マックス・ブロート編/谷口茂訳
(みすず書房 5500円)[amazon]

ツェリン・ヤンキー『花と夢』
〈アジア文芸ライブラリー〉
ラサのナイトクラブで働きながら場末のアパートで身を寄せ合って暮らす四人の女性たちの共同生活と、やがて訪れる悲痛な運命……。家父長制やミソジニー、搾取、農村の困窮などの犠牲となり、傷を抱えながら生きる女性たちの姿を慈愛に満ちた筆致で描き出す。チベット発、シスターフッドの物語。星泉訳
(春秋社 2640円)[amazon]

ケヴィン・ブロックマイヤー『いろいろな幽霊』
〈海外文学セレクション〉
失恋した瞬間を永遠に繰り返す幽霊、雨となって降り注ぐ幽霊、方向音痴の幽霊、瞬間転送装置が生み出す幽霊……イタロ・カルヴィーノ短編賞受賞作家が贈る、時に切なく、時におかしく、そして時にはちょっと怖い幽霊たちの物語を100編収めた不思議な短編集。市田泉訳
(東京創元社 2640円)[amazon]

アシュリー・ウィーヴァー『金庫破りとスパイの鍵』
第二次大戦下のロンドンで、鍵のかかったカメオ付きのブレスレットをつけた女性の遺体が発見された。陸軍のラムゼイ少佐の依頼で、金庫破りのエリーはその錠を解錠する。カメオの中身と女性が毒殺されていたことから、彼女はスパイ活動に関わっていたと判明、エリーは少佐に協力し、殺人事件の犯人とドイツのスパイを探りだすことに。凄腕の金庫破りと堅物の青年少佐の活躍を描く人気シリーズ第二弾。辻早苗訳
(創元推理文庫 1320円)[amazon]

ジェフリー・アーチャー『遙かなる未踏峰 上・下
エヴェレスト初登頂を目指し、消息を絶った伝説の登山家マロリー。100年前の死の謎に迫る山岳小説。戸田裕之訳
(ハーパーBOOKS 980円/950円)[amazon]

イアン・ファーガソン&ウィル・ファーガソン『ミステリーしか読みません』
観客の前で、出演者が殺された。ミステリー劇が本物の殺人事件に――犯人は舞台と客席、どちらかにいる? 元“空手チョップ探偵”が謎に迫る。吉嶺英美訳
(ハーパーBOOKS 1470円)[amazon]

申京淑『父のところに行ってきた』
「私」は一人娘を事故で失い、頑なな心を持て余している女性作家。故郷に一人暮らしとなった父の世話を兄弟に頼まれ、老いた父に向き合うことになる。植民地時代から朝鮮戦争、南北分断、軍事独裁、民主化抗争まで、朝鮮半島の激動の時代を生きてきた父にあらためて寄り添い、「私」が分け入っていく父の記憶のひだ、父の人生の物語。姜信子・趙倫子訳
(アストラハウス 2640円)[amazon]

草生亜紀子『逃げても、逃げてもシェイクスピア 翻訳家・松岡和子の仕事
ソ連に11年抑留された父、女手一つで子供達を守り育てた母。自身の進学、結婚、子育て、介護、そして大切な人達との別れ――人生の経験すべてが、古典の一言一言に血を通わせていった。最初は苦手だったシェイクスピアのこと、蜷川幸雄らとの交流、一語へのこだわりを巡る役者との交感まですべてを明かす宝物のような一冊。
(新潮社 1980円)[amazon]

古橋信孝『ミステリーで読む平成時代 1989~2019年
バブルの崩壊、アメリカ同時多発テロ、リーマン・ショック、阪神淡路大震災……。行き場を失った平成時代を、社会や世相を反映することの多いミステリー作品を通して振り返る。
(平凡社新書 1210円)[amazon]

フランク・グルーバー『一本足のガチョウの秘密』
〈論創海外ミステリ〉
金髪美女、債務取立人、食料品王の息子、ゴロツキ。“ガチョウの貯金箱”に群がるアブナイ奴ら。相棒サムを拉致されて孤立無援となったジョニーは難局を切り抜けられるか? “笑撃”のクライマックスが待ち受ける〈ジョニー&サム〉シリーズ長編第13作。金井美子訳
(論創社 2640円)[amazon]

ライナー・マリア・リルケ/リザ・ハイゼ『若き女性への手紙 若き女性リザ・ハイゼからの手紙16通を含む
世界中の女性を勇気づけたリルケ「若き女性への手紙」。これまで割愛され、謎に包まれていた「若き女性」からの16通、2003年初公開されたリルケ最後の一信を加え、26通の手紙の全貌を本邦初紹介。往復書簡として読むことでリルケの内省、深い側面が見えてくる。安家達也訳
(未知谷 2200円)[amazon]

マルレーン・ハウスホーファー『人殺しは夕方やってきた マルレーン・ハウスホーファー短篇集
山中でサバイバル闘争を繰り広げる女性を描いた長篇『壁』で世界を震撼させた作家の知られざる短篇小説集。収録作はオーストリアの村で生まれ育った作者の少女時代を彷彿させる。共に暮らした人々や動物たち……そして、平和な暮らしを一変させる戦争の影。「さくらんぼ」「雌牛事件」「フォン・ガイエン氏の夜の出逢い」ほか、かなしみにユーモアをまぶした切なく心あたたまる作品集。松永美穂訳
(書肆侃侃房 2310円)[amazon]

カルロス・フランス『僕の目で君自身を見ることができたなら』
〈フィクションのエル・ドラード〉
19世紀半ば、南米大陸の調査旅行に同行した画家ルゲンダスは、チリに寄港した折に美しい貴婦人カルメンと邂逅する。お互いに惹かれ合い、一線を越えた二人の前に現れたのは、ビーグル号で航海中のチャールズ・ダーウィンだった。情熱的な画家と理性的な科学者、対照的な二人の男はアンデスの高みで対峙する。史実とフィクションを巧みに織り交ぜ、見事な想像力で《愛》を描きだす野心的長編。富田広樹訳
(水声社 4950円)

ジャック・ロンドン『ザ・ロード アメリカ放浪記
1892年アメリカ、16歳のジャック・ロンドンは初めて放浪の旅に出た。列車にタダ乗りして大陸を巡る旅は、苦しいながらも自由で、信じられない出来事の連続だった。無賃乗車や騙りの技術、刑務所でのサバイバル、警察との追跡劇、忘れがたいホーボー(放浪者)の仲間たち……『野性の呼び声』で知られる作家が、若き日の冒険を語る。生気に満ちた文体と鋭い視点が光る、アメリカ文学の隠れた名作。川本三郎訳
(ちくま文庫 968円)[amazon]

梶山季之『犯罪日誌』
昭和を代表するジャーナリストであり、流行作家でもあった奇才が描く〈色〉と〈金〉をめぐる〈復讐〉をモチーフしたミステリ短篇集。日下三蔵編
(ちくま文庫 1210円)[amazon]

何敬堯/魚儂『台湾の妖怪図鑑』
台湾の妖怪はどんな名前? どんな姿? どこで何をしているの? 台湾全土を渡り歩き地元の人や原住民に丁寧な聞き取りを続けてきた著者が、108の妖怪をイラストとともに解説。数百年の長寿妖怪から現代妖怪までが大集合。出雲阿里訳
(原書房 3960円)[amazon]

三上於菟吉/竹中英太郎『銀座事件』
昭和恐慌の時代、ブルジョアとプロレタリア、妖艶な人妻と不憫な美少女。対照的な世界の間で揺れながら殺人事件に巻き込まれていく主人公廣一と周囲の人々の物語。大衆小説の巨人三上於菟吉の長編探偵小説にして人情物語。昭和5年《主婦之友》連載。竹中英太郎が手掛けた挿絵、連載予告カット、装飾やタイトル文字をすべて収録。内容
MM PROJECT文庫 2400円)

ジェイン・オースティン『説得』
周囲の説得にあって若い海軍士官との婚約を破棄したアンは、八年ののち、出世して裕福になった元婚約者に再会する。よそよそしさと気まずさのなか、二人の胸のうちは穏やかではいられず……。大人の心情を細やかに描いた著者最後の長篇。廣野由美子訳
(光文社古典新訳文庫 1430円)[amazon]

ジャナ・デリオン『嵐にも負けず』
新町長シーリア就任のせいで、シンフルの町はいまだ落ち着かない。長年、行方不明だったシーリアの怪しい夫も現われ、不穏さは増すばかり。そんななか襲来したハリケーンはとんでもない置き土産を残していっていた……。今度は、偽札に殺人?! 破天荒すぎる老婦人ふたりの助けを借りて、フォーチュンは町と自分の窮地を救えるか? 好評〈ワニ町〉シリーズ第7弾。島村浩子訳
(創元推理文庫 1210円)[amazon]

《紙魚の手帖》 vol.16
朝倉宏景、君嶋彼方、砂村かいり、額賀澪で贈る読切特集「駅×旅」。堂場瞬一、新連載スタート。読切、赤野工作。芦辺拓、高田大介、連載最終回。創元ホラー長編賞選評掲載ほか。
(東京創元社 1540円)[amazon]

エドマンド・バーク『崇高と美の起源』
巨大で危険な対象がもたらす感動「崇高」は恐怖と緊張を喚起して神経を運動させる。一方「美」は身体全体の組織を弛緩させて快を生じ、「愛」の情念を生み出し、社交をも促進する。崇高と美は市民社会構成のための主要な社会的原理であるとし、19世紀ロマン派への道を拓いた美学史上に残る不朽の名著。大河内昌訳
(平凡社ライブラリー 1870円)[amazon]

『母娘短編小説集』利根川真紀編訳
連帯、葛藤、愛、裏切り──時を超え、世代を超えて繰り返される「母の娘」と「娘の母」の物語。19世紀末から20世紀末、アメリカの女性作家によって書かれた傑作9篇。シャーロット・ギルマン、エレン・グラスゴー、フラナリー・オコナー、ボビー・アン・メイスン他
(平凡社ライブラリー 1980円)[amazon]

スティーヴン・キング『ビリー・サマーズ 上・下
凄腕の殺し屋ビリーが受けた「最後の仕事」。なんと標的を待つために小説家を装うことに!? 巨匠の企みに満ちたクライム・ノベル。白石朗訳
(文藝春秋 各2970円)[amazon]

小林信彦『決定版 世界の喜劇人』
マルクス兄弟、チャップリン、キートン、ダニー・ケイ、ウディ・アレンらの珠玉ギャグ300超を徹底解説した伝説的名著を増補加筆。『決定版 日本の喜劇人』の著者が人生を賭して喜劇文化人類学へと昇華させた聖典。
(新潮社 3960円)[amazon]

『宇治拾遺物語』
「こぶとりじいさん」として知られる「奇怪な鬼に瘤を除去される」など、現在に通じる心の動きを見事に捉えた名訳33篇を収録。町田康 現代語訳
(河出文庫 880円)[amazon]

斎藤美奈子『挑発する少女小説』
若草物語、赤毛のアン、あしながおじさん、小公女、ハイジ、大草原の小さな家、長くつ下のピッピ……大人になって読む少女小説は、発見に満ちている。あの名作は今、何を教えてくれるのか?
(河出文庫 946円)[amazon]

《ナイトランド・クォータリー》vol.35
〈特集 永劫の戦い、終わりなき恐怖〉
マイクル・ムアコック、レイ・ブラッドベリ、トマス・M・ディッシュ、グスタフ・マイリンク、T・F・ポウイス、E・ホフマン・プライス他。
(アトリエサード 2090円)[amazon]

ダン・マクドーマン『ポケミス読者よ信ずるなかれ』
嵐により陸の孤島となった会員制クラブ。そこに居合わせた私立探偵。密室殺人。古今東西のミステリからの引用……。すべては本格ミステリの舞台として完璧かと思われた。しかし――。読者を待ち受けるものは困惑か狂喜か。これはミステリなのか、それとも……。田村義信訳
(ハヤカワ・ミステリ 2860円)[amazon]

カリン・スミノフ『ミレニアム7 鉤爪に捕らわれた女 上・下
娘の結婚式に出席するため、スウェーデン北部に向かうミカエル。しかし、町の有力者の結婚相手には好ましくない噂が付きまとっていた。そして、田舎町に潜んでいた陰謀が凄惨な暴力となって噴出したとき、彼とリスベットは再会を果たす。人気シリーズ再始動。山田文・久山葉子訳
(早川書房 各1980円)[amazon]

J・N・チェイニー&ジョナサン・P・プレイジー『戦士強制志願』
些細な交通違反で三年の兵役を科せられた新兵が、過酷な訓練と身体改変を受け、戦場へ向かう。敵は正体不明の異星人の戦闘メカ。金子浩訳
(ハヤカワ文庫SF 1738円)[amazon]


▼3月刊

『中国語現代文学案内 中国、台湾、香港ほか栗山千香子・上原かおり編
中国および台湾、香港、東南アジア等の代表的な中国語作家とその作品を紹介し、広い視点で中国語圏の現代文学を知ることができるよう編集した案内書。作家ごとの「作家ファイル」「邦訳リスト」も。
(ひつじ書房 3520円)[amazon]

ハン・ガン『別れを告げない』
〈エクス・リブリス〉
済州島4.3事件を背景に、いま生きる力を取り戻そうとする女性の友人同士の再生の物語。待望の最新長篇。斎藤真理子訳
(白水社 2750円)[amazon]

ベルトン・コッブ『善人は二度、牙を剝く』
〈論創海外ミステリ〉
闇夜に襲撃されるアーミテージ。凶弾に倒れるチェンバーズ。警官殺しも厭わない恐るべき“善人”が研ぎ澄まされた牙を剥く。上司のチェヴィオット・バーマン警部も登場する警察小説の傑作。菱山美穂訳
(論創社 2420円)[amazon]

『絶景本棚3』本の雑誌編集部編
本好きにとって人の本棚を眺めることこそ最良の喜びのひとつ。36人の本棚が一冊に集結。待望の第3弾。
(本の雑誌社 2530円)[amazon]

ジェイムズ・ホッグ『義とされた罪人の手記と告白』
17世紀末のスコットランド、領主コルウァンの二人の息子は両親の不和により別々に育てられた。厳格で狂信的な母親の下で大きくなった弟ロバートは、17歳の誕生日に出会った不思議な力を持つ人物に唆されるまま罪を重ねていく。そして兄ジョージとの運命的な対決へ……。目も眩むような重層する語りによって小説の可能性を極限まで追求し、ジッドやバタイユが絶賛、現代作家にも多大な影響を与えるゴシック最後の傑作。『悪の誘惑』改題。高橋和久訳
(白水Uブックス 2530円)[amazon]

アレン・エスケンス『あの夏が教えてくれた』
ボーディは田舎町で暮らす15歳の少年。静かすぎるその町で最近大事件が起きた。町最大の企業に勤める黒人女性が不審な失踪を遂げたのだ。思いがけない事件が、ボーディの日常に不穏な影を落とす――。現実に悩みながらも、少年は鮮やかに成長する。『償いの雪が降る』の著者による心震える青春ミステリ。務台夏子訳
(創元推理文庫 1386円)[amazon]

J・L・ブラックハースト『スリー・カード・マーダー』
被害者は空から降ってきた。落下したと思われたフラットの五階の部屋は無人で、玄関ドアは内側から釘と板で封じられていた。この不可解な密室殺人を捜査するのは、サセックス警察重大犯罪班のテス・フォックス警部補。しかし彼女は、現場の壁にダーツで止められていたチラシを見て愕然とする。それはかつて、妹を救うために自分が犯した殺人を示唆していた……。密室殺人×警察小説の新シリーズ開幕。三角和代訳
(創元推理文庫 1386円)[amazon]

篠田真由美/長沖充(絵・図)『ミステリな建築 建築なミステリ』
『悪魔が来りて笛を吹く』『髑髏城』『Yの悲劇』『ねじれた家』他、名作ミステリに登場する建物+実在する不思議な建築の謎をミステリ作家×1級建築士が図面で読み解く。『建築知識』連載を書籍化。
(エクスナレッジ 2200円)[amazon]

エドワード・アンダースン『夜の人々』
終身刑で収監中の青年ボウイは、囚人仲間二人とともに刑務所を脱獄する。早速、銀行を襲い犯行を重ねるなか、逃亡先でボウイが出会ったのは、仲間の遠縁の娘キーチー。二人は互いに惹かれ合っていくが、自動車事故現場で仲間の一人が警官を射殺し、誤報からボウイは殺人犯として追われることに……。堕ちていく青春像を活写してR・チャンドラーに激賞された、ノワール小説の原点。矢口誠訳
(新潮文庫 880円)[amazon]

安部公房『(霊媒の話より)題未定 安部公房初期短編集
太平洋戦争末期、満州で激動の日日を過ごした青年は、その時何を思い、何を未来に残したのか――。漂泊民の少年が定住を切望する19歳の処女作「(霊媒の話より)題未定」、2012年新たに原稿が発見された、精神病棟から抜け出した男を描く「天使」、「壁―S・カルマ氏の犯罪」に繫がる「キンドル氏とねこ」。やがて世界に名を馳せる安部文学、その揺籃にふさわしい清新な思想を示す初期短編11編。
(新潮文庫 825円)[amazon]

松本清張『空白の意匠 初期ミステリ傑作集 二
Q新聞広告部長・植木欣作はある日の自社の朝刊を広げて目を疑う。和同製薬の広告のすぐ上に、同社の新薬を注射された患者が中毒死した記事が出ていたのだ。広告代理店と編集部の板挟みになった植木は……。組織のなかで苦悩する管理職を描く表題作をはじめ、男女の恋情と打算を描く「一年半待て」「支払い過ぎた縁談」など初期の傑作8編を収録。日下三蔵編
(新潮文庫 825円)[amazon]

マイケル・エラード『バベルをこえて 多言語習得の達人をめぐる旅
18世紀後半から現代に至るまで、歴史の流れに翻弄され続ける「言葉を学ぶ」という営みを、超多言語習得者という存在の解明を通して捉えようとする一冊。社会学、文化人類学、脳神経科学、言語学、言語教育学の複数の観点から外国語を学ぶことの本質と、人間の能力の限界点に迫る。竹内理訳
(松柏社 4180円)[amazon]

ヤーン・エクストレム『ウナギの罠』
ウナギ漁のための小部屋のような仕掛け罠のなかで、地元の大地主の死体が発見された。入り口には外から錠がかけられ、鍵は被害者のポケットに――そう、完璧な密室殺人だったのだ。さらに遺体には一匹のウナギがからみついていた。被害者をめぐる複雑な人間関係、深まる謎また謎……。「スウェーデンのディクスン・カー」の不可能犯罪ミステリ。瑞木さやこ訳
(扶桑社ミステリー 1375円)[amazon]

ロバート・アーサー『幽霊を信じますか? ロバート・アーサー自選傑作集
キャリデイ館はまさに呪われた屋敷だった。そこへやって来たのは心霊現象専門家ニック・ディーン。もちろんこれはインチキで、今回もラジオ番組の収録だった。全国の聴取者が真に迫ったニックの放送に夢中になり、そして異変は起こった! 新時代のゴースト・ストーリーとなった表題作はじめ、全10篇を収録。『ガラスの橋』が話題を呼んだ短篇の名手によるホラー/ファンタジー集。
(扶桑社ミステリー 1320円)[amazon]

ガブリエル・ガルシア=マルケス『出会いはいつも八月』
音楽家の優しい夫との間に二人の子宝にも恵まれ、愛にあふれた結婚生活をおくるアナ。だが、アナには誰にも打ち明けられない秘密があった。年に一度、母親が埋葬されているカリブ海の島をおとずれるアナは、現地の男と一晩限りの関係を結ぶことを心待ちにしているのだ。アナが刹那的な関係から、そして男たちから得たものは――。ガルシア=マルケスが最期まで情熱を注いだ未完の傑作。旦敬介訳
(新潮社 2420円)[amazon]

『合作探偵小説コレクション 6 諏訪未亡人/猪狩殺人事件日下三蔵編
横溝正史参加作品6本&戦前の作品4本を収録。【収録作品】朝から夜中までの彼と彼女/諏訪未亡人/三太郎とヘナ子/探偵作家コンクール/毒環/病院横町の首縊りの家/楠田匡介の悪党ぶり/天賞堂金塊事件/五本の手紙/猪狩殺人事件
(春陽堂書店 4180円)[amazon]

マーガレット・アトウッド『マッドアダム 上・下
謎のウィルスにより人類はほぼ絶滅した。生き残ったのはトビーやゼブら一握りの人々と、人造人間クレイカー、そして残忍な凶悪犯たち。ゼブは荒廃した街で兄アダムの手がかりを探す。世界を破滅させたウィルスの正体は何だったのか──時間はゼブが若き天才クレイクに出逢った日に遡る。壮大な物語はクライマックスへ。三部作完結篇。林はる芽訳
(岩波書店 各3630円)[amazon]

《ミステリマガジン》5月号
特集 シャーロック・ホームズを演じる 内容
(早川書房 1320円)[amazon]

ジョージ・エリオット『ミドルマーチ 上・下
19世紀後半、イギリス地方都市を舞台に展開する人間模様、キリスト教と科学がせめぎあう時代相を凝視する女流作家の魂の軌跡。エリオット円熟期の名作。福永信哲訳
(彩流社 各8800円)[amazon]

小川公代『ゴシックと身体 想像力と解放の英文学
家父長制に抗う女たちが用いたものこそ、“ゴシック”の戦術だったのではないか。メアリ・シェリー、アン・ラドクリフ、メアリ・ウルストンクラフト、ゴドウィン、マチューリン、エミリー・ブロンテ、レ・ファニュら、英国のゴシック作家たちの作品を読み解く先に見えるものとは──。目次
(松柏社 2640円)[amazon]

福田安佐子『ゾンビの美学 植民地主義・ジェンダー・ポストヒューマン
『恐怖城』『私はゾンビと歩いた!』から、ジョージ・A・ロメロを経て『バイオハザード』『ワールド・ウォー・Z』まで、ヴードゥー呪術、噛みつき、ウィルス感染など、多様な原因で人間ならざるものへと変化し、およそ100年にもわたり増殖し続けるゾンビと作品の数々。ゾンビの歴史を通覧し、おもに植民地主義、ジェンダー、ポストヒューマニズムの視点から重要作を分析する。アガンベンの生権力論を援用し、ゾンビに現代および近未来の人間像をみる.。
(人文書院 4950円)[amazon]

阿部賢一『翻訳とパラテクスト ユングマン、アイスネル、クンデラ
19世紀初頭の民族再生運動のなかで、チェコ語の復興をめざし、芸術言語たらしめようとした、近代チェコ語の祖ユングマン。ナチスが政権を掌握しようとした時代、多民族と多言語のはざまで共生を目指したユダヤ系翻訳家アイスネル。冷戦下の社会主義時代における亡命作家クンデラ。ボヘミアにおける文芸翻訳の様相を翻訳研究の観点から明らかにする。
(人文書院 4950円)[amazon]

張國立『炒飯狙撃手』
イタリアの小さな炒飯店で腕を振るう台湾の潜伏工作員、小艾はある日命令を受け、ローマで標的の東洋人を射殺する。だが根城に戻ったところを何者かに襲撃され、命を狙われる身に。一方、定年退職を12日後に控えた刑事老伍は、台湾で発生した海軍士官と陸軍士官の連続不審死を追っていた。やがて遺体に彫られた“家”という刺青が二つの事件をつなげ――。背後に蠢く巨大な陰謀とは!? 台湾発の謀略スリラー。玉田誠訳
(ハーパーBOOKS 1390円)[amazon]

ゾラン・ジヴコヴィチ『本を読む女(ひと)
セルビアの幻想小説家が贈る「ゾラン・ジヴコヴィチ ファンタスチカ」第二弾。 読書を好み本を愛で果実を頬張る女性タマラさんの日常を彩る、ごく当たり前でときどき不穏な非日常を描く連作短編集。三門優祐訳
盛林堂ミステリアス文庫 1500円)[amazon]

〈絵本 ピーターラビット〉
ビアトリクス・ポター
 川上未映子訳
『ちっちゃなねずみふじんのおはなし』
早川書房 1540円)[amazon]
『アプリイ・ダプリイのわらべうた』
(早川書房 1430円)[amazon]
『セシリ・アセリのわらべうたのおはなし』
(早川書房 1430円)[amazon]

ウ・ダヨン『アリス、アリスと呼べば』
〈となりの国のものがたり〉
洗練された文体と神秘的なスタイルで注目される韓国文学の新鋭による短編集。夢と現実が交差する迷路のような物語は、私たちの目を世界の本質へと向ける。共生の感覚を回復させる魅惑的な8つの物語。ユン・ジヨン訳
(亜紀書房 2310円)[amazon]

呉貞姫『幼年の庭』
日常にひそむ不安や欲望。家族の中で抱く孤立感。生きあぐね、もがく女たち。現代女性文学の原点となった呉貞姫の作品集。朝鮮戦争を体験した著者の幼少期が反映された「幼年の庭」「中国人街」のほか、”三十代の内面の記録”という6編を収録。清水知佐子訳
(クオン 2420円)[amazon]

エドワード・バートン゠ライト『シャーロック・ホームズの護身術 バリツ 英国紳士がたしなむ幻の武術
ホームズがライヘンバッハの滝でモリアーティ教授と対決した際に披露した伝説の護身術「バリツ」。そのルーツといわれる19世紀英国で創始された武術「バーティツ」の全貌を当時の写真と共に解説。田内志文訳/新美智士監修
(平凡社 2420円)[amazon]

池上俊一『魔女狩りのヨーロッパ史』
15-18世紀、ヨーロッパ文明がまばゆい光を放ち始めたまさにそのとき、「魔女狩り」という底知れぬ闇が口を開いたのはなぜか。その起源・広がり・終焉、迫害の実態、魔女イメージを創り上げた人たち、女性への差別――進展著しい研究をふまえ、ヨーロッパの歴史を映し出す「鏡」としての魔女と魔女狩りを総合的に描く。
(岩波新書 1100円)[amazon]

松岡正剛『千夜千冊エディション 数学的』
古今東西の数学書を読み解く。「数」の概念の誕生から、微分の発明、幾何・代数をへて、カオス理論、そして情緒としての数学に至るまで。数学という、一見すると難解な世界を「言葉」としてとらえ、理解するための一冊。
(角川ソフィア文庫 1980円)[amazon]

チョ・ナムジュ『耳をすませば』
『82年生まれ、キム・ジヨン』著者のデビュー作。抜群の聴力を持つ少年がテレビ番組のサバイバルゲームに出場し……。著者インタビューも収録。小山内園子訳
(筑摩書房 1870円)[amazon]

下薗りさ・木田綾子編著『カフカふかふか とっておきの名場面集
魅力的なキャラがいっぱい登場し、出だしも面白い。描かれる世界は謎だらけ。そんなカフカ作品のふかふかエッセンスがこの一冊に。
(白水社 1980円)[amazon]

馬伯庸『両京十五日 2  天命』
皇帝暗殺まで残り七日。宿敵・梁興甫との交戦によって分断された皇太子一行は、陸路と水路に分かれて北京を目指す。追手の猛攻はさらに激しくなり、次々と倒れていく仲間たち。逃亡先で皇太子は敵対している白蓮教徒の男と出会い、衝撃の真実を告げられる……。齋藤正高・泊功訳
(ハヤカワ・ミステリ 2530円)[amazon]

アラン・パークス『悪魔が唾棄する街』
ロックスターの奇妙な死。少女連続失踪事件。上層部から捜査妨害を受けるハリー・マッコイは、解決のため自らを犠牲にするが……。吉野弘人訳
(ハヤカワ・ミステリ文庫 1848円)[amazon]

クロエ・コルマン『姉妹のように』
著者クロエの親族だったコルマン三姉妹は、幼くしてナチの強制収容所で亡くなり、その人生の物語は空白のまま。クロエは生存者や資料をあたるうちに、彼女たちと実の姉妹だったかのような別の三姉妹の存在を知る。第2回「日本の学生が選ぶゴンクール賞」受賞作。岩津航訳
(早川書房 2420円)[amazon]

カルロス・ルイス・サフォン『マリーナ バルセロナの亡霊たち
スペインの巨匠サフォン幻の初期作。霧の都バルセロナに潜む怪奇と真実とは。少年オスカルと少女マリーナの青春と冒険の物語。木村裕美訳
(集英社文庫 1100円)[amazon]

コーマック・マッカーシー『ステラ・マリス』
1972年。21歳の数学者アリシアは、自ら望んで精神科病棟へ入院した。医師に問われるままに彼女は語りはじめる――数学と死に魅せられた自身の人生、原爆の開発チームにいた父、早世した母、そして最愛の兄ボビー。静かな対話から孤高の魂の痛みが浮かび上がる。黒原敏行訳
(早川書房 3080円)[amazon]

コーマック・マッカーシー『通り過ぎゆく者』
1980年、ミシシッピ州。サルベージダイバーのボビーは深海に沈んだ飛行機に潜るが、それ以降、周囲に不穏な影が見え隠れしはじめる。亡き妹への思いを心の奥底に抱えたまま、彼は広大で無情な世界をさまようが……。アメリカ文学の巨匠が描く喪失と受容の物語。黒原敏行訳
(早川書房 4180円)[amazon]

ジル・マゴーン『騙し絵の檻 新装版
無実の叫びもむなしく、ビル・ホルトは冷酷な殺人犯として投獄された。それから16年後、仮釈放された彼は真犯人を捜し始める。自分を罠に嵌めたのは、誰だったのか? 次々に浮かび上がる疑惑と仮説。そして、終幕で明らかにされる驚愕の真相。2000年代の10年間に翻訳された海外本格ミステリの頂点に選ばれた、犯人当ての大傑作。中村有希訳
(創元推理文庫 1144円)[amazon]

ジュリアナ・グッドマン『夜明けを探す少女は』
シカゴの高校に通う黒人の少女ボーは、卒業を機にこの街を出ると決めていた。絵の才能を活かし、盗みも撃ち合いもないどこか遠くへ行くのだ。そんなある日、姉のカティアが不法侵入の疑いで警官に射殺された。ボーは姉の無実を証明するため、現場から消えた姉の恋人を探し始める。ひたむきな少女の調査行、そして成長と旅立ちを描く、MWA賞最終候補作。圷香織訳
(創元推理文庫 1386円)[amazon]

田村明一『ペータヘンの月世界旅行』
コガネ虫のズンゼマンが、失われた6本目の脚を求めて、ペータヘン・アネリーゼ兄妹と一緒に、月を目指し、天界を旅する児童向けSFファンタジー。 大正15年に慶文堂書店から刊行された作品を全挿絵入りで復刊。解説 北原尚彦
盛林堂ミステリアス文庫 2200円)[amazon]

長山靖生『SF少女マンガ全史 昭和黄金期を中心に
1970-80年代はSF少女マンガ黄金期だった。黄金時代を中心に、数多い名作を残してきた作家たちの歩みとその魅力を、SF評論の第一人者が語りつくす。
(筑摩選書 2200円)[amazon]

探偵小説の鬼 横溝正史 謎の骨格にロマンの衣を着せて 別冊太陽編集部編
〈別冊太陽〉
名探偵・金田一耕助を生んだ探偵小説家の実像に迫る決定版。仄暗い世界へと読者をいざなうその魅力の源泉を貴重な資料で探る。文=石坂浩二、小林信彦、有栖川有栖、柳家喬太郎 内容
(平凡社 2750円)[amazon]

《本の雑誌》4月号
〈特集 マジックリアリズムに酔い痴れて〉
『百年の孤独』文庫化 新潮社インタビュー、マジックリアリズム小説ガイド座談会ほか
(本の雑誌社 825円)[amazon]

清少納言『枕草子』
「この草子、目に見え心に思ふ事を」。鋭くて繊細、少し意地悪でパンクな清少納言の誕生。栄華を誇った中宮定子を支えた女房としての誇りと痛快な批評が、笑いや哀感と同居する。歯切れ良く引き締まる新訳で楽しむ、平安朝文学を代表する随筆集。解説、年譜のほかに、位階、装束、牛車、建物などの図版資料を含む、宮廷生活ガイド付き。佐々木和歌子 現代語訳
(光文社古典新訳文庫 1562円)[amazon]

キム・グミ『敬愛の心』
1999年に韓国・仁川で実際に起きたビヤホール火災事件を題材とした、著者初の長編小説。火災が起きたとき、店の主人が金を払えと言って出入口を塞ぎ、未成年者を中心に多くの犠牲者が出たことで大きな社会問題となった。ミシン会社に勤めるサンスとキョンエの関係を軸に、火災事件の関係者たちが悲劇の記憶を抱えて生きる様を描く。すんみ訳
(晶文社 2640円)[amazon]

スタニスワフ・レム『捜査・浴槽で発見された手記』
〈スタニスワフ・レム・コレクション〉
英国各地で起こる死体消失事件の捜査は難航を極める……メタ推理小説『捜査』、地球文明崩壊後の遺跡から出土した手記に記されていた記録――疑似SF的不条理小説『浴槽で発見された手記』の2篇を収録。久山宏一/芝田文乃訳◇解説 沼野充義
(国書刊行会 3190円)[amazon]

日影丈吉『ミステリー食事学』
「名探偵も大悪漢も、一週間も物を食わなかったら、追いつ追われつどころじゃない」ミステリファン垂涎の古今東西”グルメ”随筆。
(ちくま文庫 990円)[amazon]

『江戸の戯作絵本3』小池正胤・宇田敏彦・中山右尚・棚橋正博編
まさかの展開、忠臣蔵は美談か? うさぎが死ぬとどうなる? 常識を覆す黄表紙作家の自由奔放さ。黄表紙作者の手にかかれば、あの忠臣蔵も――。井上ひさしがSF的と評した『莫切自根金生木』など、目を見張る名作17本を収録。
(ちくま文庫 1980円)[amazon]

レイモンド・チャンドラー『プレイバック』
調査対象の女性、そして消えた死体の謎……。緻密な構造、巧みなプロットとさりげなく埋め込まれた伏線の数々。フィリップ・マーロウの生き方を確かめたい。チャンドラーの遺作を新訳で。市川亮平訳
(小鳥遊書房 2090円)[amazon]

セコイア・ナガマツ『闇の中をどこまで高く』
未知のパンデミックに襲われ、世界は一変した。余命わずかな子供たちを安楽死させる遊園地で働くコメディアンの青年、亡くなった人々との短い別れを提供するホテルの従業員、地球を離れて新天地をめざす宇宙移民船……滅びの危機を経て緩やかに回復してゆく世界で、消えない喪失を抱えながら懸命に生きる人々の姿をオムニバス形式で描く。アーシュラ・K・ル=グイン賞特別賞受賞。金子浩訳
(東京創元社 3080円)[amazon]

イヴリン・スカイ『ダムゼル 運命を拓きし者』
貧しいイノフェ公国のプリンセス、エロディに、豊かな島国オーリア国の皇子から結婚の申し込みがあった。結婚と引き換えに国を援助してくれるというのだ。オーリア国に行ってみれば、皇子は素敵だし、豪華な婚礼衣装、贅沢な料理といいことづくめ。だがエロディは、どこか違和感を感じていた。そして結婚式の夜……。貧乏国のプリンセスが機知と勇気で運命を切り開く異世界ファンタジイ。杉田七重訳
(創元推理文庫 1430円)[amazon]

クォン・ナミ『翻訳に生きて死んで 日本文学翻訳家の波乱万丈ライフ
村上春樹、村上龍、恩田陸作品などを手がける韓国の人気翻訳家がつづる厳しくも楽しい翻訳人生。読解と翻訳の違い、翻訳料ウラ話など、翻訳家を目指す人へのアドバイスも満載。藤田麗子訳
(平凡社 2750円)[amazon]

レッド・ライリー『MI6英国秘密情報部スパイ技術読本』
監視から秘密の通信手段、身の回りのものによる自己防衛術、そして情報収集術から危機回避法まで、元エージェントが分かりやすい具体例とともに案内する。序文イアン・シャープ(007/ゴールデンアイ)。木下恵訳
(原書房 1980円)[amazon]

種村季弘『江戸東京《奇想》徘徊記 新装版
粋人による「最強」の江戸・東京の歩き方―― 不朽の名著を復刊。 博覧強記の人、種村季弘が、東京の裏町30を厳選して闊歩。ポストモダン臭一色になった東京のアスファルトを一枚一枚剥がすと、江戸や明治の名残が顔をのぞかせる。新装版に際し、森まゆみ「令和版・徘徊の手引き」を収録。 
(朝日文庫 1210円)[amazon]

ジョルジュ・シムノン『ロニョン刑事とネズミ』
〈論創海外ミステリ〉
死体が持っていた財布の15万フランを狙う浮浪者“ネズミ”。彼に不審を抱くパリ九区担当のロニョン刑事。遺失物扱いされた財布を巡り、それぞれの思惑が交叉する中、事態は思わぬ展開を見せ始める。花の都パリが併せ持つ仄暗い世界を描いた〈メグレ警視〉シリーズ番外編。宮嶋聡訳
(論創社 2200円)[amazon]

ジェンティル・スラリ『ボストン図書館の推理作家』
ハンナは作家志望のレオに助言を仰ぎ、四人の男女が図書館で起きた事件を追う推理小説を執筆していた。だがレオは暴走を始め……。不二淑子訳
(ハヤカワ・ミステリ文庫 1804円)[amazon]

ジェイムズ・S・マレイ/ダン・ウェアハウス『密航者』
連続殺人事件の陪審員を務めたマリアは休暇を取って船の旅へ出る。ところが船上で次々と人が殺され、怪しい影がマリアに迫り……。北野寿美枝訳
(ハヤカワ文庫NV 1496円)[amazon]

フランク・ハーバート『デューン 砂丘の子供たち 新訳版 上・下
緑化が進むアラキスで、アトレイデス家の双 子レトとガニーマは黄金の道の幻視を観る。 伝説的傑作《デューン》シリーズ第三部新訳。酒井昭伸訳
(ハヤカワ文庫SF 各1628円)[amazon]

レイ・ブラッドベリ『とうに夜半を過ぎて』
救急車のなかで交わされる会話の戦慄、チョコレート中毒の男が神父に語った懺悔……。SFの詩人が贈るとっておきの22篇。小笠原豊樹訳
(河出文庫 1210円)[amazon]

R・D・レイン『結ぼれ』
結ぼれ、絡みあい、こんがらがり、袋小路、支離滅裂、堂々めぐり、きずな――異才の精神科医が詩の言葉として書きつけた、人間を束縛する関係性の模様。「詩人」レインの原点たる寓話性に満ちた伝説の書。村上光彦訳
(河出文庫 891円)[amazon]

『日本霊異記・発心集』
平安初期に景戒によって善悪、奇跡や怪異などを描いた最古の説話集「日本霊異記」と、鎌倉初期の鴨長明による仏教説話「発心集」。古典新訳に定評のある詩人・伊藤比呂美が両作品から厳選した現代語訳。
(河出文庫 880円)[amazon]

戸矢学『鬼とはなにか まつろわぬ民か、縄文の神か
来訪神は、鬼の姿で現れ福音をもたらし、太古の土俗神たちも、異形の鬼として荒ぶる神となるが、転じて守護神となる。怨霊、鬼道、鬼門、伝説などから、鬼は神と捉える日本人の信仰心の原像に迫る。
(河出文庫 880円)[amazon]

ジリアン・マカリスター『ロング・プレイス、ロング・タイム』
愛する夫ケリー、18歳のひとり息子トッドと、平凡で幸せな生活を送っていた離婚弁護士のジェン。10月30日に日付が変わったばかりの深夜、その人生が一変する。帰宅したトッドがジェンとケリーの目の前で、見知らぬ男性を刺し殺したのだ。トッドは逮捕され、呆然としながら眠りについたジェンが目覚めると、カレンダーは10月28日の朝に戻っていた……。タイムリープ×ミステリ×家族小説。梅津かおり訳
(小学館文庫 1342円)[amazon]

J・M・G・ル・クレジオ『ブルターニュの歌』
毎年家族で夏の数カ月間を過ごした、思い出の地ブルターニュ。水のにおい、水の色、古城での祭り、土地の人々との交流……。そして、戦時下に生を享け、戦争と共に五年を過ごしたニース。母と祖母の庇護、兄との川での水浴、まばゆい日々の記憶……。ノーベル文学賞作家が初めて語る幼少年時代。中地義和訳
(作品社 2970円)[amazon]

奈良敏行『町の本屋という物語 定有堂書店の43年
鳥取の定有堂書店は、いかにして地域の文化拠点となり、日本中から本好きや書店員が足を運ぶ「聖地」となっていったのか。名店の店主が折に触れつづった言葉から、その軌跡が立ち現れる。〈本の力〉が疑われる今まさに、手に取るべき一冊。三砂慶明編
(作品社 2420円)[amazon]

レックス・スタウト『母親殺し』
〈論創海外ミステリ〉
世界一赤ん坊(ベビー)が苦手な探偵ネロ・ウルフと、世界一女性(ベビー)が得意な助手アーチー・グッドウィンが、捨て子(ベビー)に悩める美しい未亡人を救うために捜査に乗り出す。二人の行方に待ち受ける事件とは……。家族問題に切り込んだシリーズ後期作。鬼頭玲子訳
(論創社 2750円)[amazon]

リカルド・アドルフォ『死んでから俺にはいろんなことがあった』
郵便配達をしていた俺は故郷の「くに」から逃げてきた。妻のカルラと幼い息子とともに「島」で不法滞在している。買い物をした帰りに乗っていた地下鉄が故障で止まってしまい、右も左もわからない場所で降ろされてしまった一家。なんとか家にたどり着こうとあれこれ画策するが、やることなすことすべてが裏目に出て――。周囲から存在を認められず、無視され続ける移民の親子は、果たしてどうなるのか? 木下眞穂訳
(書肆侃侃房 2310円)[amazon]

ワシーリー・グロスマン『スターリングラード 
1942年4月のヒトラーとムッソリーニ会談から、主人公の一人クルイモフがヴォルガ川を渡ってスターリングラードへ入る9月まで、5カ月未満の物語。『人生と運命』の前編となる全3巻。チェーホフを思わせる詩情、人物と心理、情景の描写、戦争の現実が胸を打つ。文学史上の金字塔。園部哲訳
(白水社 5390円)[amazon]

林奕含『房思琪の初恋の楽園』
高級マンションに住む13歳の文学好きな美少女・房思琪は、憧れの国語教師から性的虐待を受ける関係に陥り……。台湾の実話に基づく衝撃作。泉京鹿訳
(白水Uブックス 1980円)[amazon]

リーナ・ボルツォーニ『すばらしい孤独 ルネサンス期の「読む技法」
著書は魂の肖像であり、読書は古の知性との対話だった。ペトラルカ、ボッカチョ、モンテーニュら、ルネサンスの人文主義者たちを読者という観点から捉え、彼らの読書行為と著作との関係を読み解こうとする試み。宮坂真紀訳
(白水社 6930円)[amazon]

ラーシュ・ケプレル『蜘蛛の巣の罠 上・下
連続殺人をほのめかす絵葉書を公安警察のサーガ・パウエルが受け取ってから三年が過ぎたある日、国家警察長官が突如失踪、後日遺体で発見される。現場には葉書の記述どおり残された純白の薬莢。それは殺人鬼が練りあげた計画の始まりを告げていた……。北欧が誇るクライム・シリーズ最新作。品川亮訳
(扶桑社ミステリー 各1320円)[amazon]

柯宗明『陳澄波を探して 消された台湾画家の謎
1984年、台北。駆け出しの画家、阿政のもとに奇妙な依頼が持ち込まれた。古い絵画の修復だが、作者は明かせないという。阿政が恋人の新聞記者、方燕と調査に乗り出すと、長い間歴史から抹消されていた画家・陳澄波の存在が浮かびあがり……。日本統治時代の台湾に生まれ、二・二八事件で幕を閉じた苦闘の生涯を描く歴史小説。栖来ひかり訳
(岩波書店 3300円)[amazon]


▼2月刊

ラッセル・カーク『幽霊のはなし』
アメリカの政治哲学者・歴史学者にして伝統的な怪奇小説の作者として知られるラッセル・カークの短篇集。荒廃した街に、古びた屋敷のなかに、不気味な幽鬼があらわれる。おびえる女、たたかう男。恐怖とロマンが織りなす傑作6編。横手拓治訳 【収録内容】イザヤおじさん/呪われた館/弔いの鐘/リトルエジプトの地下室/影を求め/ロストレイク
(彩流社 2750円)[amazon]

アントニイ・バークリー『最上階の殺人』
閑静な住宅街、四階建てフラットの最上階で高齢女性の絞殺死体が発見されたとの報を受け、モーズビー首席警部率いる捜査班は現場に急行した。室内の状況から警察は物盗りの犯行と断定、容疑者を絞り込んでいく。しかし警察に同行したロジャー・シェリンガムは、建物内に真犯人がいると睨み、被害者の姪を秘書に雇うと調査に乗り出す。探偵小説本来の謎解きの魅力と、才気溢れるユーモア、痛烈な批評精神が奇跡的な融合を果たしたシリーズ屈指の傑作。藤村裕美訳
(創元推理文庫 1100円)[amazon]

クイーム・マクドネル『有名すぎて尾行ができない』
平凡すぎる顔が特徴の青年ポールは、恋人のブリジット、元警官のバニーと探偵事務所を始めることに。早速訪れた依頼人の女性は、国中が注目する詐欺事件の被告三人組のひとりの愛人で、その男の浮気調査をしてほしいと言う。ポールは依頼を引き受けたが、相手を尾行しては見失っているうちに、またも殺人事件に巻きこまれてしまう。『平凡すぎて殺される』に続く、ノンストップ・ミステリ第2弾。青木悦子訳
(創元推理文庫 1430円)[amazon]

夏来健次編訳『ロンドン幽霊譚傑作集』

大英帝国が文化・産業ともに大発展を遂げたヴィクトリア朝は、シャーロック・ホームズが活躍、切り裂きジャックが暗躍した近代的犯罪の黎明期でもあった。その中心となったのは生者と死者が行き交う魔都ロンドンである――『月長石』のウィルキー・コリンズが描く、若くして夫を失った美貌の女性を巡る霊的愛憎譚「ザント夫人と幽霊」ほか、ケンジントン公園からロイヤル・オペラ・ハウスなどを舞台とした13のゴースト・ストーリー。本邦初訳多数。
(創元推理文庫 1210円)[amazon]

B・S・ジョンソン『老人ホーム 一夜の出来事

ある老人施設の一夜。八人の老人と、一人の寮母。いつもどおりの夕食と作業とお楽しみ会。老人たちは体力も知力もまちまちで、歩けない人、何もわからなくなっている人もいる。それぞれが、自分だけの世界にひきこもり、過去を思い現在を思う(あるいは何も思わず?)。それでも一夜の時は流れ、八人の行動と思考はシンクロしてはまた離れてゆく。独立した九章が同時に進行するスタイルで老いの真実、人間の真実を滑稽に、残酷に、浮き彫りにする実験的小説。青木純子訳
(創元ライブラリ 1540円)[amazon]

北上次郎『冒険小説論 近代ヒーロー像100年の変遷
スティーヴンスン『宝島』から始まり『水滸伝』を経由して『南総里見八犬伝』、そして戦後――英雄なき時代に繚乱する冒険小説のオデッセイアへ。洋の東西さえ越えて、著者は膨大な資料と文献を文字通り縦横無尽に渉猟する。ただ一心に、面白い小説を追い求めて。百年の文学史のなかで切り開かれた豊饒なる小説世界、その山嶺を闊達な筆致で踏破する一大評論。第77回日本推理作家協会賞受賞。
(創元推理文庫 1650円)[amazon]

マリ=フィリップ・ジョンシュレー『あなたの迷宮のなかへ カフカへの失われた愛の手紙
カフカの恋人として知られるチェコ人女性ミレナ。カフカから彼女への手紙は後に出版されたが、失われてしまったミレナからの手紙には何が書かれていたのか。作家への愛と情熱、父や夫との葛藤、そして自身の孤独と叫び。別離後もカフカを慕い続け、強制収容所で絶命した女性の魂を、現代の作家が甦らせる。村松潔訳
(新潮クレスト・ブックス 2640円)[amazon]

リチャード・ライト『地下で生きた男』
無実の殺人の罪を着せられて警察の拷問を受け、地下の世界に逃げ込んだ男の奇妙で理不尽な体験。20世紀黒人文学の先駆者として高い評価を受ける作家の、充実期の長篇小説、本邦初訳。重要な中短篇5作品を併録した、日本オリジナル編集。上岡伸雄訳
(作品社 3960円)[amazon]

ジャクリーン・バブリッツ『わたしの名前を消さないで』
18歳の誕生日に、現金と盗んだカメラだけを持ってニューヨークにやってきたアリス。わずか1ヶ月後、彼女は遺体となって発見される。一方、36歳のルビーはハドソン川で身元不明の遺体(アリス)を発見し、とり憑かれたようになってしまう。死んだアリスの意識は現世をさまよい、ルビーが自分の短い人生と悲劇的な死の謎を解き明かすことを切に願っていた。二人の女性の人生が交差するさまを、死んだ少女の視点から描いたミステリアスなサスペンス・ストーリー。宮脇裕子訳
(新潮文庫 1155円)[amazon]

安部公房『飛ぶ男』
《飛ぶ男》の出現。目撃者は3人。暴力団の男、男性不信の女、そしてとある中学教師……。突然の電話、窓の外に浮かぶ不可解な物体、2発の銃弾、女の来訪、妙な収集癖で満ちた部屋。安部公房が最後に創造した、不条理にしてユーモラスな世界とは。死後フロッピーディスクから見つかった遺作が文庫化。本作に繋がる「さまざまな父」を併録。
(新潮文庫 649円)[amazon]

『教科書の中の世界文学 消えた作品・残った作品25選秋草俊一郎・戸塚学編
1950年代以降に国語教科書に採録された外国文学作品から25編を厳選し、採録時にカットされた箇所も含めて収録。各年代の採録作品を通して,当時の世相や国語教育を取り巻く状況に触れた解説やコラムも必見。
(三省堂 2750円)[amazon]

ベヴ・ヴィンセント『スティーヴン・キング大全』
作家生活50周年、ホラーの帝王のコンプリートガイド。キング自身が提供したプライベート写真、手書き原稿、編集者との手紙等の図版を多数収録。風間賢二訳
(河出書房新社 5478円)[amazon]

チョン・ジア『父の革命日誌』
パルチザンとして闘争に身を捧げた父の突然の死。その葬儀には思いもよらない弔問客たちが訪れる。人生の複雑さを称える傑作長篇。橋本智保訳
(河出書房新社 2310円)[amazon]

アンナ・カヴァン『眠りの館』
昼の光を夜の魔法に変えて――夜の言葉で紡がれた、幻影が織りなす異色の自伝的小説。安野玲訳
(文遊社 2750円)[amazon]

ロイス・ローリー『ヴィンデビー・パズル』
1952年、北欧の湿地で見つかった少女の遺体はなにを物語るのか? 『ギヴァー』四部作で世界的に著名なストーリーテラーの最新作。考古学・法医人類学の最新知見と帝政期ローマの民族誌をくみあわせ、古代ゲルマン世界を生きた名も知れぬ「女子供」の歴史=物語を紡ぎだす。島津やよい訳
(新評論 2420円)[amazon]

ジョルジュ・ペレック『さまざまな空間 増補新版
あのベッドの狭さ、部屋の狭さ、冷めてしまった濃いお茶の舌に残る苦さ。机上から宇宙にいたるあらゆる空間を、言葉遊びやパロディを織り交ぜながら、ときに哲学的に、ときに遊び心たっぷりに綴る、奇妙で美しいエッセイ。塩塚秀一郎訳
(水声社 3850円)[honto]

《SFマガジン》4月号
特集 BLとSF 2
(早川書房 1320円)[amazon]

尾崎俊介『アメリカは自己啓発本でできている ベストセラーからひもとく
アメリカンドリームからスピリチュアルまで、建国の父フランクリン『自伝』から始まる自己啓発書のベストセラーから見えるアメリカ。
(平凡社 3080円)[amazon]

式水下流『特撮に見えたる妖怪』
妖怪をモチーフにしたキャラクターが登場する各年代の特撮作品を紹介。妖怪については、古典や民話、また同時代の児童向け雑誌や図鑑、関連資料から横断的に探り尽くす。資料編は、妖怪に関する特撮や映画などの映像作品と刊行物をまとめた年表、特撮作品別の登場妖怪一覧、妖怪別の特撮作品一覧の3つを収録。
(文学通信 2200円)[amazon]

オマル・ハイヤーム『トゥーサン版 ルバイヤート』フランツ・トゥーサン編
生と死と運命の瞑想、薔薇と盃の愉楽——聖書と並ぶ全世界的な古典『ルバイヤート』待望の新訳版。原作の感覚と感情を見事に伝えることを完璧な技量で成し遂げたと評される、吹きゆく微風のように軽やかな、フランツ・トゥーサンによる大胆かつ流麗なフランス語散文訳版からの初めての邦訳。全170首を完訳、挿絵も多数収録。高遠弘美訳
(国書刊行会 2860円)[amazon]

ウィリアム・シェイクスピア『新訳 テンペスト』
邪悪な弟に公爵位を奪われ、娘ミランダとともに島流しにされたプロスペローは、ナポリ王と弟への復讐を誓い、12年後、魔法で大嵐を起こし、彼らを載せた船を難破させて島に上陸させるが……。赦しと再生、そして植民地支配を描いたシェイクスピア最後の傑作。河合祥一郎訳
(角川文庫 968円)[amazon]

ホレイショ・アルジャー『ぼろ着のディック』
1800年代のニューヨーク。路上で暮らす靴磨きの少年ディックは、無一文から成功の階段をのぼり始める。主人公の勤勉、誠実、節約思考、向上意欲は、1867年の刊行以来アメリカ国民に立身出世のバイブルとして読まれてきた。畔柳和代訳
(角川文庫 1034円)[amazon]

ベン・マッキンタイアー『キム・フィルビー かくも親密な裏切り
伝説的スパイ、キム・フィルビーについては多くの書物が書かれ、数々の小説のモチーフともなってきたが、本書はまったく新たな視点――フィルビーと無二の親友だったMI6同僚のニコラス・エリオットとの関係に光を当てること――で、厚みのあるフィルビー像を描き出している。読めば読むほど、スパイ活動の知られざる実態とともに、人間心理の不可解さに驚愕すること必至。ジョン・ル・カレによる「あとがき」を付す。
(中公文庫 1650円)[amazon]

劉慈欣『三体』
文化大革命で父を惨殺され、人類に絶望した科学者・葉文潔。彼女がスカウトされた軍事基地では、人類の運命を左右するプロジェクトが進行していた。数十年後、科学者の連続自殺事件を追って謎の学術団体に潜入したナノテク素材の研究者・汪淼を、怪現象〈ゴースト・カウントダウン〉が襲う!そして、汪淼が入り込むVRゲーム『三体』の驚くべき真実とは? 大森望・光吉さくら・ワン チャイ訳/立原透耶監修
(ハヤカワ文庫SF 1210円)[amazon]

南伸坊『仙人の桃』
余白を楽しむ、大人のマンガ。奇妙でおかしな中国怪異の世界を描いた『仙人の壺』『李白の月』を合本、新作描き下ろし作品を収録。
(中央公論新社 3300円)[amazon]

保阪正康『松本清張の昭和史』
松本清張の膨大な仕事のなかでも、同時代史に取り組んだ『昭和史発掘』『日本の黒い霧』は重要な柱といえる。清張は、軍部をはじめとする国家権力、二・二六事件の将校たちにどのような眼差しをむけていたか。占領期に起きた不可解な事件をいかに捉えていたか。没後30年を経て、清張史観はいかに評価されるべきか。その核心を平易な文体で伝える。
(中央公論新社 2420円)[amazon]

アレックス・マイクリーディーズ『ザ・メイデンズ ギリシャ悲劇の殺人
セラピストのマリアナは、姪のゾーイに親友が殺されたと相談を受ける。犯人は大学教授のフォスカだと言い張るゾーイだったが……。坂本あおい訳
(ハヤカワ・ミステリ文庫 1870円)[amazon]

ローラ・パーセル『象られた闇』
ヴィクトリア朝バース。病を抱えながらも小さな切り絵店を営むアグネスに、不穏な影が迫る。彼女に肖像画を依頼した客が次々と謎の死を遂げているのだ。真相解明のためアグネスが縋ったのは、11歳の霊媒師パールだった。降霊会を繰り返す彼女を待つ運命とは――。国弘喜美代訳
(早川書房 4070円)[amazon]

エーリヒ・ケストナー『独裁者の学校』
「ところで俺は、替え玉何号なんでしょうか?」 暗殺された大統領の替え玉を養成する「独裁者の学校」。大臣たちは彼らを使い回して権力の座に居座ろうとするが、思わぬ政変が起きる。果たしてその行方は……。ナチ時代を生き抜いたケストナーが痛烈な皮肉で独裁体制のメカニズムを暴く。反骨の作家、渾身の戯曲。酒寄進一訳
(岩波文庫 715円)[amazon]

ベンハミン・ラバトゥッツ『恐るべき緑』
〈エクス・リブリス〉
科学の常識を塗り替えた学者たちの奇妙な人生と、それぞれに訪れた発見/啓示の瞬間。チリの新鋭による、前代未聞の〈科学小説〉。第二次大戦末期、ナチの高官らが所持した青酸カリと、青色顔料をめぐる歴史、第一次大戦の塹壕戦で用いられた毒ガス兵器の開発者の物語「プルシアン・ブルー」。初めてブラックホールの存在を示唆した天文学者の知られざる人生「シュヴァルツシルトの特異点」。不世出の数学者グロタンディークと、日本人数学者、望月新一の人生の交錯を空想する「核心中の核心」他。松本健二訳
(白水社 2750円)[amazon]

『読書アンケート2023 識者が選んだ、この一年の本
100名以上の有識者が、新刊・既刊を問わず、2023年に読んだ本のなかから印象深かったものを挙げる。
(みすず書房 880円)[amazon]

ルー・バーニー『7月のダークライド』
遊園地で働く青年ハードリーはある日、煙草の火傷痕の残る幼い姉弟を見かける。虐待を通報するも当局に相手にされなかった彼は、証拠を掴むため素人探偵まがいの調査を開始する。見えてきたのは裕福なのに荒れ果てた家と、弁護士の父親の背後にちらつく麻薬組織の影……。MWA賞受賞作家の瑞々しい青春ノワール。加賀山卓朗訳
(ハーパーBOOKS 予価1230円)[amazon]

フランチェスコ・コロンナ『ポリフィルス狂戀夢』
嗚乎ポリア、君何處にかあらむ!――龍や猛き獣に苛まれ乍らも宿命の女精(ファム・ファタール)を追い求め、独り彷徨うは廃墟か仙境か、将又不可思議な機械構造か。戀に病い愛に跪く男の地獄天國ないまぜとなっためくるめく内宇宙の道行きを描く冒険的ルネサンス文學の妖星、待望の刊行。高山宏訳
(東洋書林 8250円)[amazon] [honto]

馬伯庸『両京十五日 1 凶兆』
15世紀の中国、明の時代。北京から南京に遣わされた皇太子は爆発による襲撃に襲われる。さらに北京にいる皇帝も命を狙われていることを知った皇太子は、幾度と襲い掛かってくる刺客から逃れつつ、南京から北京へ向かう幾千里にもわたる決死行が始まる――。齋藤正高・泊功訳
(ハヤカワ・ミステリ 2420円) [amazon]

《MONKEY》vol.32 特集 いきものたち
イノシシ、カエル、イヌなど「いきもの」が登場する創作を集めた特集。 ジョン・アーヴィングの小説内小説の柴田元幸による新訳や、 岸本佐知子が本特集のために選び訳したステファニー・ヴォーンの短篇のほか、 伊藤比呂美や小山田浩子の書き下ろし作品から、長場雄の絵物語などを掲載。 さらに、トルーマン・カポーティ「夜の樹」を村上春樹による新訳で収録。
(スイッチパブリッシング 1320円)[amazon]

ヨハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテ『若きウェルテルの悩み』
ウェルテルは恋をした。許嫁のいるロッテに。故郷の友への手紙に綴るのは、ロッテと過ごす日々と溢れんばかりの生の喜び。その叶わぬ恋の行きつく先とは……。ドイツ文学、否、世界文学史に燦然と輝く青春文学の傑作。身悶え不可避の不朽の名作。酒寄進一訳
(光文社古典新訳文庫 858円)[amazon]

『幻想と怪奇15 霊魂の不滅 心霊小説傑作選
19世紀半ばから20世紀初頭までの、降霊術や輪廻転生などをテーマにした心霊小説傑作選。文豪の知られざる逸品から、パルプ・ファンタシーの埋もれた名作まで、多彩な霊魂の物語を、気鋭の作家陣の書き下ろしにともに。エドガー・ジェプスン、マージョリー・ボウエン、キプリング、ブラックウッド、シーベリー・クイン、リヒャルト・フォス、H・ジェイムズ他。牧原勝志(幻想と怪奇編集室) 編
(新紀元社 2420円)[amazon]

アガサ・クリスティ『二人で探偵を 新訳版
結婚して幸せな生活を送っていたトミーとタペンスは、上司の提案で〈国際探偵社〉の経営者になりすますことに。探偵社に持ちこまれる難事件、怪事件の数々を、トミーとタペンスは古今東西の名探偵の捜査法を真似て解決していく。野口百合子訳
(創元推理文庫 946円)[amazon]

ネレ・ノイハウス『友情よここで終われ』
著名な編集者ハイケが失踪した。彼女の家のドアには血の跡があり、二階には鎖でつながれた老人がいた。捜査が始まり、老人は彼女が介護していた父親だと判明、血痕はハイケのものと断定された。彼女に剽窃を暴露されたベストセラー作家が被疑者に浮かぶが……。出版業界をめぐる事件に刑事オリヴァー&ピアが挑む。酒寄進一訳
(創元推理文庫 1760円)[amazon]

ラヴィ・ティドハー『ロボットの夢の都市』
〈創元海外SF叢書〉
太陽系を巻き込んだ大戦争から数百年。宇宙への脱出を夢見るジャンク掘りの少年、それ自体がひとつの街になっている移動隊商宿で旅する少年、そして砂漠の巨大都市の片隅で見慣れぬロボットと出会った女性と警察官。彼らの運命がひとつにより合わさるとき、かつて一夜にしてひとつの都市を滅ぼしたことのある戦闘ロボットが、数世紀の眠りから目覚めて……世界幻想文学大賞作家が贈る、どこか懐かしい未来のSF物語。茂木健訳
(東京創元社 2640円)[amazon]

《紙魚の手帖》vol.15
貫井徳郎、待望の新連載『不等辺五角形』。伊吹亜門、今村昌弘、北山猛邦、白井智之が贈る最新短編。サマンサ・ミルズ、2023年ヒューゴー賞受賞作掲載。創立70周年記念企画スタートほか。
(東京創元社 1540円)[amazon]

片山廣子『片山廣子随筆集 ともしい日の記念』
つれづれから掬い上げた慎ましい日常の中にこそ揺らぎない生の本質が潜んでいる、とその人は知っていた。美しくゆかしい随筆と短歌を集めた一冊。早川茉莉編
(ちくま文庫 990円)[amazon]

青山南『本は眺めたり触ったりが楽しい』
積ん読したり、拾い読みしたり、歩いて読んだり、寝転んで読んだり、バスで読んだり。本はどう読んでもいい! 読書エッセイの名著。
(ちくま文庫 880円)[amazon]

種村季弘『種村季弘コレクション 驚異の函』
世界のからくりや不思議を語らせたら随一、教え子であり本書編者でもある諏訪哲史をして「日本の人文科学が世界に誇るべき〈知の無限迷宮〉の怪人」と言わしめた種村季弘──本書はその博覧強記のエッセンスをぎゅっと詰め込んだアンソロジーだ。「怪物の作り方」、「吸血鬼幻想」、「少女人形フランシーヌ」、「ケペニックの大尉」などの代表作はもちろん、著者の素顔が透けて見える自伝的随想・講演・読書論・対談まで網羅。没後20年、インチキと不寛容に満ちた現代に放つ文庫オリジナル。諏訪哲史編
(ちくま学芸文庫 1430円)[amazon]

『江戸の戯作絵本2』小池正胤・宇田敏彦・中山右尚・棚橋正博編
いじり倒すのが身上の黄表紙はお上にも一切忖度なし。幕府の改革政治も徹底的に茶化す始末。しかし自らも武士である作者たちは処罰されることに。江戸時代の黄表紙の傑作を集成。
(ちくま学芸文庫 1980円)[amazon]

『SFが読みたい! 2024年版』SFマガジン編集部編
年間ベストSF発表、ベスト1作家からのメッセージ、サブジャンル別ベスト、この一年のSF関連トピック、2024年の各出版社のSF書籍刊行予定、SF作家たちの最新予定「2024年のわたし」、SF関連書籍&DVD目録などでおくる恒例のガイドブック最新版。
(早川書房 1166円)[amazon]

片岡真伊『日本の小説の翻訳にまつわる特異な問題 文化の架橋者たちがみた「あいだ」
日本文学は「どうしても翻訳できない言葉」で書かれてきた、と大江健三郎は言う。事実、谷崎も川端も三島も、英訳時に改変され、省略され、時に誤読もされてきた。なぜそのまま翻訳することができないのか。どのような経緯で改変され、その結果、刊行された作品はどう受け止められたのか。1950-70年代の作家、翻訳者、編集者の異文化間の葛藤の根源を、米クノップフ社のアーカイヴ資料等をつぶさに検証し、初めて明らかにする。
(中公選書 2750円)[amazon]

西野嘉章『チェコ・アヴァンギャルド ブックデザインにみる文芸運動小史
20世紀初頭のプラハで生まれた躍動的な芸術交流を俯瞰、「生活とアート」の統合を目指した運動にチェコ・カルチャーの魅力を探る。
(平凡社ライブラリー 2420円)[amazon]

アヴラム・デイヴィッドスン『エステルハージ博士の事件簿』
架空の小国の難事件を博覧強記のエステルハージ博士が解決。唯一無二の異色作家による、ミステリ、幻想小説、怪奇小説を超えた傑作。世界幻想文学大賞受賞。池央耿訳/解説 殊能将之
(河出文庫 1320円)[amazon]

チョン・イヒョン『優しい暴力の時代』
いま韓国で「時代の記録者」といわれる屈指の作家による、代表作となる短篇集。絶望も希望も消費するいまを生きる人々の、生活の鎮魂歌。解斎藤真理子訳
(河出文庫 1210円)[amazon]

小泉八雲『怪談・骨董』
「耳なし芳一の話」「雪女」等を収める、小泉八雲(ラフカディオ・ハーン)の『怪談』『骨董』を、ハーン研究の第一人者が個人完訳。平川祐弘訳
(河出文庫 990円)[amazon]

サラ・パレツキー『コールド・リバー 上・下
ヴィクが救出した火傷を負った少女は病院から姿を消した。少女から渡されたものをよこせと、警察は執拗にヴィクに迫るが……。山本やよい訳
(ハヤカワ・ミステリ文庫 各1430円)[amazon]

カミラ・レックバリ/ヘンリック・フェキセウス『罪人たちの暗号 上・下
ミーナら特捜班を嘲笑うように連続する誘拐殺人。次の犯行はいつ? ストックホルムを舞台に犯人との頭脳戦が始まる。好評第二弾。富山クラーソン陽子訳
(文春文庫 各1375円)[amazon]

ロバート・ベイリー『ザ・ロング・サイド』
テネシー州プラスキ。高校のアメリカンフットボール・チーム〈ボブキャッツ〉がライバル校を相手に歴史的な勝利を収め、町中が熱狂した翌朝、バス置き場で死体が見つかった。被害者は地元の人気バンドの女性シンガー、容疑者は彼女の恋人で〈ボブキャッツ〉のスター選手。証拠はどれも決定的に見えたが……。弁護士ボーセフィス・ヘインズ・シリーズ完結篇。吉野弘人訳
(小学館文庫 1320円)[amazon]

前田恭二『文画双絶 畸人水島爾保布の生涯
谷崎潤一郎『人魚の嘆き・魔術師』の挿絵と装幀を手がけて日本のビアズレーとも呼ばれ、長谷川如是閑に大阪朝日新聞記者として迎えられ画・文で活躍、武林無想庵や佐藤春夫と交友、岡本一平らと漫文『東海道漫画紀行』を刊行。明治・大正・昭和にわたり、文学・美術の分野に大きな足跡を残しながら忘却の彼方に消し去られた畸人の魅力を、十年の歳月をかけて調べ上げ、執念と使命感を以て掘り起こす。
(白水社 15,400円)[amazon]

ライアン・ステック『燎原の死線』
米国海兵隊特殊部隊のマシュー・レッドは、FBIの要請で生物兵器専門家の捕獲作戦に参加するべく基地へと向かうが、その途上で謎の女に薬を盛られて意識を失う。レッド抜きで現地へ赴いた小隊は待伏せに遭って全滅。レッドは情報漏洩の廉で逮捕され、非名誉除隊の処分に。全てを奪われた男の復讐が今始まる。棚橋志行訳
(扶桑社ミステリー 各1430円)[amazon]


▼1月刊

芦辺拓/江戸川乱歩『乱歩殺人事件 「悪霊」ふたたび
謎めいた犯罪記録の手紙で語られるのは、美しい未亡人の死体が蔵の二階で発見された密室殺人、遺体の傍で見つかった不可解な記号、怪しげな人物が集う降霊会、そして新たに「又一人美しい人が死ぬ」という予告……。江戸川乱歩のいわくつきの中絶作『悪霊』(1933)を芦辺拓が書き継ぎ、完結させる。そして物語は更なる仕掛けへ。
(KADOKAWA 2090円)[amazon]

マルコ・バルツァーノ『この村にとどまる』
北イタリア、チロル地方、ドイツ語圏の一帯はムッソリーニの台頭によりイタリア語を強制され、ヒトラーの移住政策によって村は分断された。母語を愛し、言葉の力を信じるトリーナは、地下で子どもたちにドイツ語を教え、ダム建設に反対する夫とともに生きてゆくのだが……。イタリア文学界の最高峰、ストレーガ賞の最終候補作。関口英子訳
(新潮クレスト・ブックス 2365円)[amazon]

アイザック・バシェヴィス・シンガー『モスカット一族』
20世紀初頭のポーランド、ワルシャワのユダヤ人社会。実利に聡く独善的で気難しい絶対的な長がいた栄華から三世代を経て、伝統的家族社会は内部から崩壊していく。その間、ポーランド独立回復を目指す数度の蜂起、ロシア革命、第一次世界大戦と独立回復、ポーランド・ソヴィエト戦争、ナチスのポーランド侵攻、第二次世界大戦……と続く激動の時代、近代化と戦争に揺れる一族を描く大長編。大﨑ふみ子訳
(未知谷 6600円)[amazon]

フランク・グルーバー『レザー・デュークの秘密』
〈論創海外ミステリ〉
一文無しになった凸凹コンビが製革工場に就職。 出勤初日から殺人事件に遭遇し、“しぶしぶ”事件解決に乗り出すサム&ジョニー。そんな二人に忍び寄る怪しい影の正体とは……。命の危機に晒された二人の運命や如何に? 抱腹絶倒のユーモア・ミステリ。中川美帆子訳
(論創社 2640円)[amazon]

マイケル・ホーム『奇妙な捕虜』
〈論創海外ミステリ〉
ドイツ人捕虜を翻弄する数奇な運命(さだめ)。謀略の飛行機事故や英国空軍パイロット射殺事件が見え隠れする中、〈奇妙な捕虜〉の過去が徐々に明かされていく。クリストファー・ブッシュが別名義で書いた異色ミステリ。福森典子訳
(論創社 3740円)[amazon]

ホレス・マッコイ『屍衣にポケットはない』
地方紙『タイムズ・ガゼット』の人気記者ドーランは、報道より広告収入重視の社の体制と縁を切り、自ら雑誌を創刊。告発記事を次々発表することで報道の信義を貫き、多くの読者を獲得する。そんな彼に対し、古巣の新聞社からの圧力、資金難、告発された関係者による雑誌強奪騒動など、幾多の苦難が立ちはだかる――。真実のみを追究する記者の孤闘を描き、疾走する人間像を浮き彫りにする名作。田口俊樹訳
(新潮文庫 825円)[amazon]

『ドイツ・ヴァンパイア怪縁奇談集』森口大地 編訳
〈ルリユール叢書〉
ジョン・ポリドリ『ヴァンパイア』ブームのさなか、1820~30年代にかけて発表された、ラウパッハ『死者を起こすなかれ』、シュピンドラー『ヴァンパイアの花嫁』など、怪縁が織りなすドイツ・ヴァンパイア文学傑作短編集。本邦初訳。訳者解題「ヴァンパイア文学のネットワーク」。
(幻戯書房 4620円)[amazon]

ジョン・バカン/エドワード・ゴーリー絵『三十九階段』
アフリカ帰りの鉱山技師リチャード・ハネーは、ロンドンの生活に退屈しきっていた。しかし、たまたま知り合った男が殺され、国際的スパイ組織の陰謀に巻き込まれてしまう。世界大戦の危機をはらむ陰謀を阻止する手掛かりは、ただひとつ、「三十九階段」という言葉のみ。スパイ小説の原点ともいうべき古典名作を、エドワード・ゴーリーの10点のイラスト入りで贈る魅惑の一冊。小西宏訳
(東京創元社 1980円)[amazon]

大矢博子『クリスティを読む! ミステリの女王の名作入門講座
没後45年を経ても変わらぬ人気を保ち続ける、ミステリの女王アガサ・クリスティ。カルチャー講座「アガサ・クリスティを読む」の講師である書評家が、名探偵、舞台と時代、人間関係、そして騙しのテクニックに焦点を当て、各章でおすすめ作品を紹介しながら魅力を丁寧に語る。「読者をいかにミスリードするか」の章では、驚くべきテクニックをじっくり解説。この一冊でクリスティのすごさを実感できる、入門に最適な一冊。
(東京創元社 1980円)[amazon]

ジェレミー・ドロンフィールド『飛蝗の農場 新装版
ヨークシャーの荒れ野で農場を営むキャロルのもとに、奇妙な男が転がりこむ。不運な経緯から彼女は男に怪我を負わせ、回復までの宿を提供することにしたのだが、意識を取り戻した男は、過去の記憶がまるでないと言う。幻惑的な冒頭から忘れがたい結末まで、圧倒的な筆力で紡がれる悪夢と戦慄の謎物語。ミステリランキング1位に輝いた驚嘆のデビュー長編。越前敏弥訳
(創元推理文庫 1540円)[amazon]

ウィリアム・ブルワー『レッド・アロー』
デビュー作で思わぬ反響を呼んだ作家。次作の契約が決まるも原稿は一文字も進まず、前金は旅行に消えた。ある物理学者の回想録ゴーストライターの仕事が決まるも学者は失踪。このまま消えるかサイケデリック療法か。窮地に立たされた作家の精神世界を巡る長篇。上野元美訳
(早川書房 2970円)[amazon]

アン・ハーゲドーン『スリーパー・エージェント 潜伏工作員
オッペンハイマー率いる核開発計画施設に潜入した〈原爆スパイ〉の秘密。ソ連はなぜアメリカによる広島・長崎への投下からわずか4年という短期間で原爆を開発できたのか? その鍵を握るアメリカ生まれの赤軍スパイ、コードネーム〈デルマー〉は、いかにして最高機密取扱資格を得て〈マンハッタン計画〉に潜入したのか? 米国人ジャーナリストが秘密の生涯に迫る。MWA賞(犯罪実話部門)候補作。布施由紀子訳
(作品社 2970円)[amazon]

ユーリー・マムレーエフ『穴持たずども』
〈ロシア語文学のミノタウロスたち〉
1960年代のモスクワ郊外。殺人を重ねながら魂や死、彼岸の世界を追求する主人公フョードル。彼がねぐらとするレベジノエ村の共同住宅には、世界を不条理で満たさなければ気がすまない妹クラーワと、フォミチェフ家の人々、そこに「形而上派」の面々が合流、さらに敬虔なキリスト者ながら死の間際に鶏になってしまう老人やセクトに属さず独自の道を歩む去勢者らも加わり……。 社会主義体制下のソ連ロシアのアンダーグラウンドで息づいたもうひとつの精神世界。生と性、死と不死、世界、神、自我をめぐる「異常者」たちの物語。神秘主義やエゾテリスムを湛えるソ連地下文学の巨匠マムレーエフの怪作。松下隆志訳
(白水社 4180円)[amazon]

岡崎武志『昨日も今日も古本さんぽ 2015-2022
毎月未踏の古本屋に足を運び、新しい古本屋の誕生に歓喜し、時には老舗古書店の閉店の報にショックを受けながらも、古本屋探訪は今日も続く。 『日本古書通信』の連載8年間をまとめた古本屋探訪ルポの集大成。
盛林堂ミステリアス文庫 3000円)[amazon]

アン・スウェイト『秘密の花園の向こうへ  フランシス・ホジソン・バーネットの生涯
『小公子』『小公女』『秘密の花園』の作者バーネットの栄光と失意に満ちた波乱の生涯を辿った伝記。山内玲子訳
(国書刊行会 4180円)[amazon]

H・C・アンデルセン『夜ふけに読みたい 雪夜のアンデルセン童話』
人気「夜ふけに読みたいおとぎ話」シリーズ最新作はアンデルセン。古典童話の新訳をアーサー・ラッカムの美しい挿絵とともに。吉澤康子・和爾桃子訳
(平凡社 2420円)[amazon]

〈絵本 ピーターラビット〉
ビアトリクス・ポター
 川上未映子訳
『こぶたのロビンソンのおはなし』
早川書房 2090円)[amazon]
『いじのわるいうさぎのおはなし』
(早川書房 1430円)[amazon]

S・エリザベス『暗闇の美術 陰鬱でもの悲しく怪奇な作品集
目を背けたくなる人間の陰鬱さ、物悲しさ、怪奇さをテーマにした芸術作品ばかりを200点以上も紹介する、美しくもダークな芸術作品集。歴史的名画から現代アートまで、数世紀の時空を超えて厳選された「恐ろしいものやグロテスクなもの」が、見るものを強烈に引き込む。丁寧な作品解説とテキストがダークアートへの道案内となる、見始めたら止められない一書。
(求龍堂 3960円)[amazon]

《ミステリマガジン》3月号
特集=繚乱たる華文ミステリ
(早川書房 1320円)[amazon]

ジョアン・トンプキンス『内なる罪と光』
幼馴染のダニエルを殺し、自殺したジョナ。二人に何があったのか……。悲しみに沈む町に現れた謎の少女は妊娠しているようだった。矢島真理訳
(ハヤカワ・ミステリ文庫 1848円)[amazon]

紫金陳『検察官の遺言』
地下鉄で拘束された張弁護士のスーツケースには江検察官の遺体が入っていた。犯行を認めていた張は法廷で突如無罪を主張して……。大久保洋子訳
(ハヤカワ・ミステリ文庫 1232円)[amazon]

アガサ・クリスティー『ミス・マープルの名推理 火曜クラブ』
〈ハヤカワ・ジュニア・ブックス〉
作家に画家、警視総監……職業も年齢も様々な男女6人が推理合戦を楽しむ集まり「火曜クラブ」。ミス・マープルは、メンバーの中でも一番地味なふつうのおばあさん。でも推理力は誰にも負けない。13作品を収録した短篇集。矢沢聖子訳
(早川書房 1980円)[amazon]

劉慈欣『流浪地球』
地球の自転がストップし、人類は別の星系に移住する決断を下す。連合政府は地球エンジンを構築し、地球を太陽系から脱出させる計画を立案、実行に移す。こうして、悠久の旅が始まった。「流浪地球」他収録のSF短篇集。大森望・古市雅子訳
(角川文庫 1320円)[amazon]

土屋隆夫『推理小説作法 増補新版
推理小説とは何か? そしてその作法とは? 日常的な発想法のヒント、創作メモの取り方、プロット作り、ストーリイの構成……鮎川哲也とともに戦後の本格ミステリシーンを支えた巨匠による超実践的創作指南。多くの実作者、読者から支持を得てきた定評ある名著に、自身の作家人生をふりかえる晩年のインタビュー、エッセイを増補。
(中公文庫 1100円)[amazon]

アーネスト・ヘミングウェイ『老人と海』
老漁師サンティアーゴには、もう84日ものあいだ釣果がなかった。ある日、一人で漁に出た彼の綱に巨大なカジキがかかった。そこから、サンティアーゴとカジキの命を賭けた闘いが始まる。簡潔な文体と研ぎ澄まされた表現で、大いなる自然と自らの人生に対峙する男の姿を力強く描きだす、ヘミングウェイの傑作。越前敏弥訳
(角川文庫 770円)[amazon]

宮田登『新版 都市空間の怪異』
妖怪変化のイメージを作り出したのは、都市住民のこころである――民俗学者宮田登が、都市空間に潜む怪異に迫る。都市伝説からホラー小説まで、江戸から現代まで、都市怪異譚を知り尽くせ。
(角川ソフィア文庫 1320円)[amazon]

カイ・バード/マーティン・J・シャーウィン『オッペンハイマー 上・中・下
「原爆の父」と呼ばれた天才物理学者J・ロバート・オッペンハイマーの生涯を丹念に描くことで、人類にとって国家とは、科学とは、平和とは何かを問う。全米で絶賛された傑作評伝、文庫化。2006年ピュリッツァー賞受賞作。河邉俊彦訳
(ハヤカワ文庫NF 各1408円)[amazon]

森見登美彦『シャーロック・ホームズの凱旋』
「天から与えられた才能はどこへ消えた?」舞台はヴィクトリア朝京都。洛中洛外に名を轟かせた名探偵ホームズが……まさかの大スランプ!? 謎が謎を呼ぶ痛快無比な森見劇場、開幕。
(中央公論新社 1980円)[amazon]

火野葦平『比島民譚集 フィリピンの島々に伝わる話
可笑しくて悲しく、少し残酷。『麦と兵隊』の作家火野葦平がフィリピン従軍中、「比島の民情を知るため」仕事の合間を縫って民話を採集し翻訳した、近いけれど遠い島々に伝わる奇妙な話。1945年刊を復刊。挿画=川上澄生
(国書刊行会 2970円)[amazon]

マイケル・オンダーチェ『イギリス人の患者』
砂漠に墜落し燃え上がる飛行機から生き延びた男は顔も名前も失い、廃墟となった屋敷に辿り着いた。ひとり屋敷に残って男を看護する女性ハナは、彼の語る物語に惹かれていく。世界からとり残されたような場所にひとり、またひとりと訪れる、戦争の癒えぬ傷を負ったひとびと。それぞれの哀しみの源泉が美しい言葉で紡がれるとともに〈イギリス人の患者〉の秘密もまたゆるやかに、しかし抗いがたい必然性をもって解かれてゆく。ブッカー賞受賞作。土屋政雄訳
(創元文芸文庫 1320円)[amazon]

アーナルデュル・インドリダソン『悪い男』
レイキャヴィクのアパートの一室で、刃物で喉を切り裂かれた若い男の死体が発見された。男はレイプドラッグを所持しており、どうやら酒に酔った女性にクスリを飲ませて意識を失わせレイプをしていた常習犯らしいことがわかる。被害者に復讐されたのか? 犯罪捜査官エーレンデュルが行方不明のなか、部下のエリンボルクは現場に落ちていた一枚のスカーフの香りを頼りに捜査を進める。北欧ミステリの人気シリーズ第7弾。柳沢由実子訳
(東京創元社 2420円)[amazon]

アレッサンドロ・バルベーロ『ダンテ その生涯
詩人、騎士、政治家、外交使節、流浪の食客……。ダンテとは、いったい何者だったのか? イタリアを代表する歴史家が、中世という激動の時代を生きたダンテの人生を徹底的に分析した評伝。鈴木昭裕訳
(亜紀書房 3520円)[amazon]

小倉孝誠『ボヘミアンの文化史 ロマン主義からビート・ジェネレーションまで
オペラ『ラ・ボエーム』やミュージカル『レント』に登場する、自由を求め放浪する芸術集団。彼らの実態を19~20世紀の小説、詩、日記から辿り、その心性と美学を解明する。
(平凡社 3080円)[amazon]

ハインリヒ・フォン・クライスト『ミヒャエル・コールハース チリの地震 他一篇

領主の不正により飼い馬と妻を失った馬商人が、正義の回復を求め帝国をも巻き込む戦いを起こす「ミヒャエル・コールハース」など、日常の崩壊とそこで露わになる人間の本性が悲劇的運命へとなだれ込む3作品を収録。カフカをはじめ多くの作家を魅了したクライストの、言葉と世界の多層性を包摂する文体に挑んだ意欲的新訳。山口裕之訳
(岩波文庫 1001円)[amazon]

オクタビオ・パス『鷲か太陽か?』
ノーベル賞詩人オクタビオ・パスがパリに暮らした1940年代後半に創作した散文詩と、イメージとリズムの法則に支配された、夢のような味わいをもつ短篇。シュルレアリスムの正統的・批判的継承者として知られる巨匠による、研ぎ澄まされた詩的直観が鮮烈な印象を残す初期の代表作。1951年刊。野谷文昭訳
(岩波文庫 792円)[amazon]

《岩波文庫 重版再開》
エウリーピデース『ヒッポリュトス』
W・S・モーム『読書案内』


ヴィヴィアン・コンロイ『プロヴァンス邸の殺人』
伯爵邸で起きた殺人……犯人は招待客の中に? 令嬢が祖父から受け継いだのは莫大な財産と"探偵業"――トラベル令嬢ミステリー。西山志緒訳
(ハーパーBOOKS 1320円)[amazon]

ポール・ホールズ&ビン・ギャビー・フィッシャー『異常殺人 科学捜査官が追い詰めたシリアルキラーたち
不気味で凄惨な犯行現場に臨場し続ける科学捜査官は、密かに「最凶の連続強姦殺人鬼」を追っていた。10数人が殺害され、50人以上が凌辱された未解決事件。「犯人はまだ生きている」。40年間、警察を出し抜いてきたサディストをどう炙り出せるか。DNA解析の最新技術や犯罪捜査の複雑な力学も明かす驚愕のドキュメント。濱野大道訳
(新潮社 2860円)[amazon]

『江戸の戯作絵本1』小池正胤・宇田敏彦・中山右尚・棚橋正博編
江戸時代の黄表紙の傑作を集め、当時の版本のように見開きでレイアウトしつつ、現代文で読めるように訳と注を配置した黄表紙アンソロジーの決定版。江戸時代人の想像力が爆発する荒唐無稽なナンセンス文学を、当時一流の絵師による挿画とともに。
(ちくま学芸文庫 1870円)[amazon]

鶴見俊輔『ドグラ・マグラの世界/夢野久作 迷宮の住人
1962年に雑誌《思想の科学》に発表した評論「ドグラ・マグラの世界」により、戦後忘れられた存在となっていた夢野久作は「再発見」される。その後遺族との交流もあり、日記等の資料も読みこんだ上で書かれた作家・作品論『夢野久作 迷宮の住人』(1989)と併せて収録。
(講談社文芸文庫 2200円)[amazon]

S・S・ヴァン・ダイン『グリーン家殺人事件 新訳版
ニューヨーク市の一画に建つ古色蒼然たるグリーン屋敷に暮らす名門一族を惨劇が襲った。ある雪の夜、グリーン家の長女が射殺され、三女が銃創を負った状態で発見されたのだ。物取りの犯行とも思われたが、さらに第二の事件が発生し――。不可解な謎が横溢する難事件に挑む探偵ファイロ・ヴァンス。『僧正殺人事件』と並ぶシリーズ代表作が新訳で登場。日暮雅通訳
(創元推理文庫 1100円)[amazon]

ホリー・ジャクソン『受験生は謎解きに向かない』
高校生のピップに招待状が届いた。試験休み中、友人宅で架空の殺人の犯人当てゲームが開催されるという。舞台は1924年、孤島に建つ大富豪の館で、参加者は同級生とその兄の7人。開始早々、館の主が心臓を刺されて死亡しているのが発見される。勉強が気になって乗り気ではなかったピップだが、次第にゲームにのめり込んでいき……。『自由研究には向かない殺人』前日譚。服部京子訳
(創元推理文庫 880円)[amazon]

井原西鶴『好色五人女』
“お夏清十郎”や“八百屋お七”など、実際の事件をもとに西鶴が創り上げた極上のエンターテインメント小説五作品。恋愛不能の時代ともいうべき令和の世にこそ響く、性愛と「義」の物語。恋に賭ける女たちのリアルを、臨場感あふれる現代語訳で。田中貴子訳
(光文社古典新訳文庫 946円)[amazon]

山本一生『百間外伝 これくん風到来
見つけましたよ、初さん――。『百間、まだ死なざるや』に書き切れなかったことがこんなにも。長野初、谷中安規、森田草平、平山三郎、中村武志ら百間に最後まで付いていった人たち、百間から離れていった人たち。「日記読み魔」がそれぞれが放つ光を掬い上げ、気難しくて涙もろい不世出の文章家、内田百間の別の一面を浮かび上がらせる。猫のノラもクルも登場。
(中央公論新社 4180円)[amazon]

『合作探偵小説コレクション5 覆面の佳人/吉祥天女の像』日下三蔵編

横溝正史が参加した5作品、「覆面の佳人」「吉祥天女の像」「六大都市小説集」「越中島運転手殺し」「一九三二年」と、座談会1本を収録。
(春陽堂書店 4180円)[amazon]

J・D・サリンジャー『ナイン・ストーリーズ』
砂浜で男が少女に語る、ある魚の悲しい生態(『バナナフィッシュ日和』)、客船で天才少年に起きた出来事(『テディ』)。不確かな現実を綱渡りで生きる人々を描いた、アメリカ文学史に燦然と輝く9篇。柴田元幸訳
(河出文庫 891円)[amazon]

池央耿『翻訳万華鏡』
あらゆるジャンルの書を訳し、常に第一線で活躍してきた名訳者が初めて明かした、名訳が生まれる現場と翻訳の極意。唯一のエッセイ集。
(河出文庫 990円)[amazon]

ジャック・カー『トゥルー・ビリーバー ターミナル・リスト 2 上・下
復讐のためアメリカ国防長官を暗殺し逃亡者となった元SEALチーム7指揮官ジェイムズ・リースが、巨大テロ組織の黒幕に挑む。熊谷千寿訳
(ハヤカワ文庫NV 各1496円)[amazon]

デイヴィッド・ウェリントン『致死のパラダイス
上・下

連絡が絶えた植民星へ向かったサシャは、攻撃を受け、大破した船内で冷凍睡眠から目覚める。敵は感染性の狂気!? 最恐のSFホラー。中原尚哉訳
(ハヤカワ文庫SF 各1584円)[amazon]

ハビエル・セルカス『テラ・アルタの憎悪』
獄中でユゴーの『レ・ミゼラブル』と出会い、犯罪をやめ警察官となったメルチョールは、カタルーニャ州郊外の町テラ・アルタで、富豪夫妻殺人事件の捜査に当たる。夫妻は拷問の末に惨殺されていた。メルチョールは夫妻の事業には裏があることを直感するが……。白川貴子訳
(ハヤカワ・ミステリ 2530円)[amazon]

パオロ・ジョルダーノ『タスマニア』
地球の環境問題が深刻なのに、僕は不妊治療なんかに悩んでいる。逃げるよう参加した気候変動会議で会った物理学者とは、世界の終末に逃げるならタスマニアだと話した。そして僕は、何かに駆られて広島と長崎ヘ被爆者の取材に来た。伊人気作家による傑作私小説。飯田亮介訳
(早川書房 3410円)[amazon]

岡本綺堂『江戸に欠かせぬ創作ばなし 綺堂随筆
岡本綺堂は江戸のことばとどのように向き合ったのか。今も古びない創作論に、怪談話、貴重な寄席と芝居の記録を収録した名エッセイ集。『綺堂随筆 江戸のことば』改題再刊。
(河出文庫 990円)[amazon]

戸板康二『楽屋の蟹 中村雅楽と日常の謎
歌舞伎界の名優にして名探偵、中村雅楽が日常の謎に挑む。江戸川乱歩に見いだされた著者による味わい深い名推理の数々。直木賞受賞作「團十郎切腹事件」はじめ11編を精選。新保博久編
(河出文庫 1155円)[amazon]

スティーヴン・キング『アウトサイダー
 上・下
完璧な証拠で逮捕された少年惨殺事件の犯人。しかし彼には鉄壁のアリバイがあって──。事件の裏に隠れた恐ろしい存在とは。白石朗訳
(文春文庫 各1980円)[amazon]

デイヴィッド・グーディス『溝の中の月』
波止場で働くケリガンは妹をレイプし死に追いやった犯人を捜すことを誓う。酔いどれ、ならず者、失業者が溢れる荒んだ街で、ケリガンはアップタウンからやってくるプレイボーイのニュートンに狙いを定めるが、その美しい妹ロレッタと知り合ったことから、彼の心には思わぬ波風が立ち始める。ノワールの名手グーディスによる漆黒のサスペンスドラマ。真崎義博訳 ※電子書籍
(HM出版 1200円)[amazon]


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