注目の近刊
5月8日刊 レイ・ブラッドベリ『猫のパジャマ』 巨匠による極上のラブストーリー「猫のパジャマ」、初期の名作「さなぎ」ほか、人生のほろ苦い驚きが詰まった珠玉の作品集。新装版。中村融訳 (河出文庫 予価990円)[amazon] 5月8日刊 チャールズ・ブコウスキー『勝手に生きろ!』 1940年代アメリカ。職を転々としながら全米を放浪する主人公。つらい日常の救いはユーモアと酒と「書くこと」だった。映画化。都甲幸治訳 (河出文庫 予価1045円)[amazon] 5月8日刊 イーユン・リー『理由のない場所』 母親の「私」と自殺してまもない16歳の息子との会話で進められる物語。実体験をもとに書かれ、母親の深い悲しみが強く心を打つ。篠森ゆりこ訳 (河出文庫 予価1100円)[amazon] 5月8日刊 小泉八雲『心 日本の内面生活がこだまする暗示的諸編』 明治日本から世界へ、日本の文化を発信したラフカディオ・ハーン=小泉八雲。日本解釈者ハーンの代表作。エッセイ・評論、全15編。平川祐弘訳 (河出文庫 予価990円)[amazon] 5月8日刊 清少納言『枕草子 上・下』 平安中期、一条天皇の中宮定子に仕えた清少納言が、宮中での生活を才気煥発の筆で綴った随筆集。エスプリの効いた現代語訳で甦る。酒井順子 現代語訳 (河出文庫 予価各880円)[amazon上・下] 5月8日刊 吉田健一『言葉というもの』 イエーツ、ヴァレリー、鷗外、宇治拾遺物語……。古今東西の文学を自在に横断しながら、文学とは何か、言葉とは何かを解き明かし独自の文明論に至る、吉田健一随筆の真骨頂。 (平凡社ライブラリー 予価1870円)[amazon] 5月9日刊 ウィル・リーチ『死ぬまでほんの二、三分』 難病を患い、車椅子で生活をするダニエルは、玄関ポーチから近所を観察することを趣味としていた。頻繁に通る若い女性のことが少し気になるダニエルだったが、ある日、彼女が誘拐される場面を目撃してしまう。彼はネットを駆使して独自の捜査を始めるが……。服部京子訳 (ハヤカワ・ミステリ 予価2750円)[amazon] 5月9日刊 グレゴリー・マグワイヤ『ウィキッド 誰も知らない、もう一つのオズの物語』 オズの国の悪い魔女と善い魔女は、かつて親友だった。だが、二人の大学で起きた殺人事件が人生を分ける。同名ミュージカルの原作。市ノ瀬美麗訳 (ハヤカワ文庫NV 予価各1210円)[amazon上・下] 5月9日刊 ジャック・キャンベル『彷徨える艦隊13 戦艦ウォースパイト』 ギアリーと艦隊は、使節団を護衛してダンサー族の宙域へ旅立つ。だが、謎の種族の奇襲 と艦隊内での陰謀が彼らを待ち構えていた。月岡小穂訳 (ハヤカワ文庫SF 予価1650円)[amazon] 5月9日刊 トム・スタンデージ『ヴィクトリア朝時代のインターネット』 かつてない距離を即時に越えるコミュニケーションを可能にした電信。その発明史と、19世紀の欧米社会に与えた大いなる影響を描く。服部桂訳 (ハヤカワ文庫NF 予価1320円)[amazon] 5月9日刊 ジョスリン・ニコール・ジョンソン『モンティチェロ 終末の町で』 鳴り響くアメリカ国歌、銃声。逃げ惑う住民が辿りついたのは元大統領邸宅だった……。近未来アメリカを舞台に、トマス・ジェファーソンと奴隷の間に生まれた女性を先祖に持つ女子学生が、暴徒化した白人至上主義者から逃れ、因縁の場所で運命と対峙する表題作はじめ、全6編を収録した作品集。石川由美子訳 (集英社 予価2640円)[amazon] 5月10日刊 山野浩一『レヴォリューション+1』 SFの、否、文学の総体の「革命」を目論むNW-SF社版『レヴォリューション』(1983)に、同書未収録の異色短編「スペース・オペラ」をプラスした連作集完全版。岡和田晃編 (小鳥遊書房 予価3080円)[amaon] 5月11日刊 ジョセフ・オコーナー『シャドウプレイ』 1900年代初頭、ブラム・ストーカーは、人気俳優ヘンリー・アーヴィングに雇われ、ロンドンのライシーアム劇場の支配人となっていた。ストーカー、アーヴィング、そして一座に加わった名優エレン・テリー。個性的な三人の人生をドラマティックな筆致で描く。そしてこれは、劇場支配人の激務をこなしながらストーカーの内部でかの名作『吸血鬼ドラキュラ』をいかに育み、形にしたのかの物語でもある。栩木伸明訳 (東京創元社 予価3520円)[amazon] 5月11日刊 ジョナサン・ストラーン編『シリコンバレーのドローン海賊 人新世SF傑作選』 人新世、それは人間の活動が地球環境そのものに多大な影響を与える時代。パンデミック、世界的な経済格差、人権問題、資源問題、そして環境破壊や気候変動問題……未来が破滅的に思えるときこそ、サイエンス・フィクションというツールの出番だ。不透明な未来を見通し、希望をもたらすにはどうしたらよいか、グレッグ・イーガンを始めとする気鋭の作家たちが探ってゆく。中原尚哉他訳 (創元SF文庫 予価1540円)[amazon] 5月14日刊 アンナ・シューウェル『黒馬物語』 毛並みの美しいブラックビューティは仲間の馬たちや優しい厩務員たちと平和に暮らしていたが、やがて売られた先で扱き使われ、厳しい現実を目の当たりにする……。馬の視点から語られた名作。小学校高学年以上対象。挿絵60点以上。三辺律子訳 (光文社古典新訳文庫 予価1430円)[amazon] 5月14日刊 イヴァン・ゴンチャロフ 『オブローモフの夢』 怠惰と無気力、無為に空しく日々を過ごす青年オブローモフ。その彼が朝目覚めても寝床から起き上がるだけの気力も湧かないまま、自分はどうしてこのような人間になってしまったのだろうかと、うつらうつら微睡むうちに見る夢を詩情豊かに綴った「オブローモフの夢」。長編小説『オブローモフ』の土台であり独立して書かれたこの章をメインに、抄訳付きで贈る。ロシア文学史上もっとも愛されるオブローモフとは、いったい何者か? 安岡治子訳 (光文社古典新訳文庫 予価1100円)[amazon] 5月15日予定 クロード・ビショワ『ネルヴァル伝』 (水声社 予価9900円)[e-hon] 5月17日刊 ハインリヒ・マン『ウンラート教授 あるいは一暴君の末路』 ハインリヒ・マンの名を世界に知らしめた小説。「ウンラート(汚物))教授」とあだ名される教師は、生徒を追いかけ入った酒場で美しい歌姫の虜となる。転落していく主人公を通して帝国社会を諧謔的に描いた本書は、マレーネ・ディートリヒ出演の映画『嘆きの天使』原作であり、ファシズムを予見した作ともされる。今井敦訳 (岩波文庫 予価1221円)[amazon] 5月17日刊 奈倉有里『ロシア文学の教室』 社会とはなにか、愛とはなにか? 戦争の時代に文学とどう向き合ったらいいのか――ロシア文学訳者、エッセイストとして活躍する著者が描き出す、真摯でチャーミングな「愛のロシア文学教室」。ゴーゴリ、プーシキン、ドストエフスキー、レーモンルトフ、ゴンチャロフ、ツルゲーネフ、チェーホフ、トルストイなど全12回。 (文春新書 予価1595円)[amazon] 5月17日刊 S・A・コスビー『すべての罪は血を流す』 ヴァージニア州の小さな田舎町。郡初の黒人保安官が連続殺人事件に挑む。 (ハーパーBOOKS 予価1430円)[amazon] 5月17日刊 周浩暉『7人殺される』 阿井幸作訳 (ハーパーBOOKS 予価1540円)[amazon] 5月18日刊 鹿島茂『新版 馬車が買いたい』 〈書物復権〉19世紀の小説に登場するパリの風俗・世相を膨大な資料を駆使して描いた、著者の代表作といえる傑作。サントリー学芸賞受賞。 (白水社 予価4180円)[amazon] 5月20日刊 アリスン・モントクレア『ワインレッドの追跡者 ロンドン謎解き結婚相談所』 戦後ロンドン。結婚相談所の経営者アイリスは、ワインレッドのコートを着た女に尾行されていると気づく。戦時中の情報部での活動に関係している? しかも帰宅すると、同じく情報部員だった元恋人が部屋に来ていた。しばらくここに潜伏すると言われたアイリスは、グウェンの家に泊めてもらうが、2日後、アイリスの部屋から若い女性の死体が発見されて……。元スパイと上流階級出身、正反対の女性たちの活躍を描く人気シリーズ最新作。山田久美子訳 (創元推理文庫 予価1320円)[amazon] 5月20日刊 トラヴィス・バルドリー『伝説とカフェラテ 傭兵、珈琲店を開く』(仮) 珈琲店を開きたい。それがヴィヴの夢だった。最後の冒険の戦利品である幸運の輪を引き寄せるというスカルヴァートの石を懐に店作りに着手。厩を改装した店は最初は閑古鳥が鳴いていたが、店員が描いた看板や、隠れた天才パン職人のつくるパンや菓子のおかげで、次第に繁盛しはじめるが……。ネビュラ賞最終候補の心温まるコージーファンタジイ。原島文世訳 (創元推理文庫 予価1320円)[amazon] 5月20日刊 ヘルマン・ブロッホ『ウェルギリウスの死 上・下』 詩人ウェルギリウスは、アテナイからローマへの帰国の途中で熱病に侵され、死の思いに耽り詩人としての自分に思い及び、やがて未完の大作『アエネーイス』についてある決断をすることに。現実と非現実、過去と現在と未来、意識と超意識が内的独白で融解していく。古代ローマの大詩人の死の直前の18時間を描いた、20世紀ドイツ文学の記念碑的名作を復刊。川村二郎訳 (あいんしゅりっと 予価各2750円)[amazon上・下] 5月20日刊 朱和之『南光』 〈アジア文芸ライブラリー〉日本統治時代に台湾に生まれ、内地留学先の法政大学でライカと出会ったことで写真家の道を歩み出した鄧騰煇(南光)。モダンな東京、そして戦争と戦後の動乱で変わりゆく台湾の姿を写し続けた実在の写真家をモデルにした歴史小説。中村加代子訳 (春秋社 予価2860円)[amazon] 5月21日刊 レスリー・シモタカハラ『リーディング・リスト』 日系カナダ人4世の著者の手による自伝小説。主人公はカナダの地方大学で文学を講じているが、学生から「史上最悪の教授」と揶揄され、転職も恋愛も失敗、極度の鬱状態でトロントの実家へ。定年退職した父のために作った「リーディング・リスト」に添って、日系カナダ人の両親や祖父母の人生をたどり、自身の生と死を見つめる日々を送ることに。全13章のタイトルはすべて、リーディング・リストの作品名になっている。加藤洋子訳 (北烏山編集室 予価3080円)[amazon] 5月21日刊 チャック・ホーガン『ギャングランド』 1975年、シカゴ。マフィア組織のボスが盗難に遭う。潜入捜査員のニッキーは、組織を壊滅させかねない盗品の奪取を命じられ……。渡辺義久訳 (ハヤカワ・ミステリ文庫 予価1848円)[amazon] 5月21日刊 原英一『カズオ・イシグロ、沈黙の文学』 日系イギリス人作家で、2017年にノーベル文学賞を受賞したカズオ・イシグロの長編小説8作を読み解く。イシグロ文学の特質を「沈黙」の文学としてとらえ、イシグロ作品全体のマスターナラティヴとは何かを論じていく。曲亭馬琴の〈省筆〉、デリダの〈喪の作業〉をキー概念に語られるイシグロの小説世界の魅力。 (北烏山編集室 予価3520円)[amazon] 5月22日刊 和田誠/山田宏一『定本 たかが映画じゃないか』 残る思い出は映画だけ──稀代の映画ファン和田誠の驚くべき映画的記憶を、友人である映画評論家山田宏一がとことん聞き出した伝説の名対談集、大幅増補版でついに復活。内容 (国書刊行会 予価3300円)[amazon] 5月22日刊 アーサー・コナン・ドイル『ササッサ谷の怪 コナン・ドイル奇譚集』 幻のデビュー作「ササッサ谷の怪」から、ストランド・マガジン最後の掲載作品「最後の手段」まで。ミステリのみに留まらない希代のストーリーテラー、コナン・ドイルの魅力を再発見する短篇全14編を収録。小池滋監訳/編・解説=北原尚彦 (中公文庫 予価990円)[amazon] 5月22日刊 坂口安吾『安吾探偵事件帖 事件と探偵小説』 坂口安吾は「文壇随一の探偵小説通」であり、『不連続殺人事件』『安吾捕物帖』など実作も手がけた。その一方、自ら「安吾タンテイ」と名乗り、帝銀事件や下山事件など実際の事件について大胆な推理を展開した。こうした事件評論・裁判傍聴記と、愛好する探偵小説を論じたエッセイを一冊にした文庫オリジナル編集。 (中公文庫 予価1100円)[amazon] 5月22日刊 マーティン・エイミス『関心領域』 おのれを「正常」だと信じ続ける強制収容所の司令官、司令官の妻と不倫する将校、死体処理班として生き延びるユダヤ人。おぞましい殺戮を前に露わになる人間の本質を、英国を代表する作家が皮肉とともに描いた傑作。北田絵里子訳 (早川書房 予価2530円)[amazon] 5月22日刊 クリス・ウィタカー『終わりなき夜に少女は』 アラバマ州グレイス。連続少女失踪事件が解決されないまま、サマーという少女が失踪した。双子の妹レインは、姉の失踪に疑念を抱く。サマーが私を置いていくはずがない。だが、レインが姉の足取りを追うにつれ見えてきたのは、彼女の知らないサマーの姿だった。 (早川書房 予価2310円)[amazon] 5月22日刊 アニー・エルノー『若い男/もうひとりの娘』 30歳下の男性と付き合うなかで感じる熱情、若かりし頃の記憶、脳裏によぎる死の想念を冷徹に描く「若い男」。著者が生まれる前に亡くなった姉と両親の秘密を緊密な文章で解きほぐす「もうひとりの娘」。ノーベル文学賞作家のエッセンスを凝縮した自伝的作品。堀茂樹訳 (早川書房 予価2530円)[amazon] 5月24日刊 ジャン・チュラール『ナポレオン時代の犯罪』 栄光のナポレオン時代。国内では民法典、大改革、レジョンドヌール勲章によって統治された社会に、実際は殺人者や盗賊、密売人、無法者の世界が対立していた。ナポレオン自身が狙われた「サン=ニケーズ通りの仕掛け爆弾」事件、「短剣の策謀」をはじめ、バルザックの『暗黒事件』にインスピレーションを与えた「元老院議員クレマン・ド・リの誘拐」などの犯罪を取り上げて詳細に分析、その実態を明らかにした好著。辻谷泰志訳 (国書刊行会 予価3520円)[amazon] 5月24日刊 紀蔚然『DV8 台北プライベートアイ2』 台北郊外の街・淡水に引っ越した私立探偵の呉誠は、人捜しをきっかけに20年前に容疑者死亡で幕を閉じた連続殺人事件の真相に迫る。舩山むつみ訳 (文藝春秋 予価2200円)[amazon] 5月24日刊 岸本佐知子『わからない』 名翻訳家/エッセイストが贈る、抱腹絶倒、奇想天外、虚実の境をまたぎ越すエッセイ集。単行本未収録、四半世紀分のキシモトワールド。 (白水社 予価2530円)[amazon] 5月24日刊 青木正児『中華飲酒詩選』 陶淵明、李白、白楽天など周代~唐代を代表する名詩から、稀代の中国文学者で名文筆家の著者が「酒徒が酔余の朗詠に供する」のを目的に編んだ、愛酒家必読の名著。現代語訳を新かな遣いにあらため初文庫化。 (角川ソフィア文庫 予価1364円)[amazon] 5月25日発売 《ミステリマガジン》8月号 (早川書房 1320円)[amazon] 5月28日刊 オーウェン・デイヴィス『ビジュアル図鑑 魔導書の歴史』 呪文、護符、呪いなど、自らの欲望を実現されるために、悪魔、天使、霊などを操る技法が描かれた魔導書の歴史を250点超の図版とともに紹介。辻元よしふみ・辻元玲子訳 (河出書房新社 予価6490円)[amazon] 5月28日刊 エイドリアン・トミネ『紐育百景』 『長距離漫画家の孤独』などのグラフィック・ノヴェルで知られるエイドリアン・トミネ、初の画集NEW YORK DRAWINGS日本版。『ニューヨーカー』誌のカバー・イラストレーションを中心に、ストリート・スケッチや描き下ろしコミックを満載。生命力とユーモアにあふれ、ささやかな出来事がぎゅっと詰まった『紐育百景』は、第二の故郷に対するトミネのオマージュであり、ニューヨークが彼のアートに与えたひらめきと影響の記録でもある。長澤あかね訳 (国書刊行会 予価5500円)[amazon] 5月28日刊 ヒュー・コンウェイ『コールド・バック』 〈論創海外ミステリ〉愛する妻に付きまとう疑惑の影。青年は遠路シベリアへ旅立つ。高木直二・門脇智子訳 (論創社 予価2640円)[amazon] 5月29日刊 フランツ・カフカ『実存と人生 新装版』 カフカが書き残した多くのアフォリズムと日記を編纂した一冊。そこにはさまざまな謎を秘めた彼の文学が映し出されている。辻瑆 編訳 (白水社 予価3080円)[amazon] 5月29日刊 デイモン・ラニアン『ガイズ&ドールズ』 賭け事にとり憑かれた生粋のギャンブラーが一目惚れしたのは、魂を救済するため布教活動に従事する清廉な美女だった――。ブロードウェイを舞台に悲喜こもごもの人間喜劇を描き続けたデイモン・ラニアン。ジャズ・エイジを代表する短篇の名手の歴史的デビュー作品集。田口俊樹訳 (新潮文庫 予価935円)[amazon] 5月29日刊 フランツ・カフカ『カフカ断片集 海辺の貝殻のようにうつろで、ひと足でふみつぶされそうだ』 カフカは完成した作品の他に、手記やノート等に多くの断片を残した。その短く、未完成な小説のかけらは人々を魅了し、断片こそがカフカだという評価もあるほど。そこに記されたなぜか笑える絶望的な感情、卓越した語彙力で発せられるネガティブな嘆き、不条理で不可解な物語、そして息をのむほど美しい言葉。誰よりも悲観的で人間らしく生きたカフカが贈る極上の言葉たち。完全新訳で登場。頭木弘樹訳 (新潮文庫 予価693円)[amazon] 5月31日刊 ヤン・ポトツキ『サラゴサ手稿 上』 ポーランド貴族ポトツキが病床の妻のために読み切ってしまった『千一夜物語』の代わりに、毎日一話ずつ書きつづったのが本作ともいわれるが、いくつもの異本が存在し、謎に満ちた存在でもあった。近年その完全版がフランスで刊行され、岩波文庫に収録されたが、本書はその完全版刊行以前の、完全版とも異なる逸話も多く含む版の工藤幸雄全訳。 (創元ライブラリ 予価1320円)[amazon] 5月31日刊 ミネット・ウォルターズ『女彫刻家 新装版』 母親と妹を切り刻み、それをまた人間の形に並べて、台所の床に血みどろの抽象画を描いた女。その無期懲役囚について一冊書け、と出版社に命じられたライターのロズは、覚悟を決めて取材にかかる。オリーヴとの面会では並はずれた威圧感に震え上がったが、相手は意外にも理性の閃きをのぞかせた。かすかな違和感は、微妙な齟齬の発見をへて、大きな疑問に着する……本当に彼女がやったのか? MWA賞受賞作。成川裕子訳 (創元推理文庫 予価1540円)[amazon] 5月31日刊 フランシス・ハーディング『ガラスの顔』 人々が《面》と呼ばれる表情を顔にまとって暮らす地下都市を舞台に、はねっかえりの少女が、国をゆるがす謎に満ちた陰謀に巻き込まれる。児玉敦子訳 (創元推理文庫 予価1870円)[amazon] ▼6月予定 6月5日刊 スティーヴン・キング『死者は嘘をつかない』 ぼくが持つある能力。それは、死者が見えること――。恐怖の帝王得意の青春物語+ホラー。これで面白くないはずがない、円熟の逸品。土屋晃訳 (文春文庫 予価1760円)[amazon] 6月5日刊 M・W・クレイヴン『恐怖を失った男』 頭の怪我によって恐怖を感じなくなり、連邦保安官を退任したベン。彼はかつての上司から行方不明の娘を捜索するよう依頼される。 (ハヤカワ文庫NV 予価1430円)[amazon] 6月5日刊 ルパート・ホームズ『殺人者養成学校教本』 舞台は、殺人技術を教えるマクマスターズ校。学校の場所は厳重に隠されており、学生たちでさえもその所在は知らない。さらに、マクマスターズ校に入学した学生が外界に戻る方法は二つしか存在しない。無事に卒業するか、死体となって運び出されるかだ……。奥村章子訳 (早川書房 予価3080円)[amazon] 6月6日刊 富岡直方『日本怪奇物語』 明治以降の新聞、雑誌、伝聞から、怪談、猟奇、不思議、珍談を収集。貴重な民俗譚。戦前の同名書を、新字新仮名遣いにして初文庫化。 (河出文庫 予価990円)[amazon] 6月6日刊 長田幹彦『霊界 五十年の記録』 心霊研究家だった作家の代表作『霊界五十年』の初文庫化。霊に出遭い続けた人の、幼少期からの目撃譚や聞いた話が淡々と語られる。 (河出文庫 予価792円)[amazon] 6月6日刊 平原直美『クラーク・アンド・ディヴィジョン』 1944年、強制収容所を出てシカゴに着いた日系二世のアキ・イトウは、一足先に同地で新生活を始めていた姉ローズが前日クラーク・アンド・ディヴィジョン駅で轢死したと知らされる。警察の自殺説に疑問を感じたアキは自ら調査を始めるが……。戦時中の日系人の境遇にスポットを当てた、日系米国人作家の歴史ミステリー、新シリーズ第1弾。芹澤恵訳 (小学館文庫 予価1210円)[amazon] 6月6日刊 泉鏡花『泉鏡花きのこ文学集成』 「茸の舞姫」他、“世界に冠たる「きのこ文学」作家”泉鏡花の8作品を集成。『原色日本菌類図鑑』より、190種以上のきのこ図版を収録。「編者解説「きのこ文学者としての泉鏡花」。飯沢耕太郎編 (作品社 予価2970円)[amazon] 6月8日刊 サマル・ヤズベク『歩き娘 シリア・2013年』 言葉を発せず、歩くのをやめられない少女。包囲下で爆撃にさらされ、地下室に拘束されたまま、見知らぬ「あなた」に宛てて書き綴る。柳谷あゆみ訳 (白水社 予価3300円)[amazon] 6月10日刊 オラフ・ステープルドン『最後にして最初の人類』 20億年後の〈最後の人類〉が現代の人類に語る未来の歴史。数度の世界戦争、疫病の蔓延と地球規模の環境激変、火星人類の侵略など、度重なる災禍によって退行した人類は、やがて再び進化の階梯を登り始める。超人類の創造と諸文明の興亡、果しなき流れの果に人類がたどり着いた場所とは……。20億年に及ぶ悠久の年代記を驚異の想像力と神話的ヴィジョンで描いて、多方面に影響と衝撃を与えた伝説的名作。改訳文庫化。浜口稔訳 (ちくま文庫 予価1650円)[amazon] 6月10日刊 山尾悠子『初夏ものがたり』 初期のSFファンタジー『オットーと魔術師』収録の表題作品を酒井駒子の挿絵と共に。みずみずしさを織り込み、鮮やかで不思議な印象を残す4作品。 (ちくま文庫)[amazon] 6月11日刊 鮎川哲也『夜の挽歌 鮎川哲也短編クロニクル1969~1976』 推理界の重鎮のきわめてレアな短編を年代順に収録。 (光文社文庫 予価1320円)[amazon] 6月11日刊 李人稙『血の涙』 日清戦争のさなか、平壌で家族と離れ離れになった少女オンリョン。渡りゆく先は日本、そしてアメリカ。故郷から離れた土地では、思いがけぬ出会いがあり……。運命に翻弄される人間の姿を描く、「朝鮮最初の小説家」と称される著者の代表作。波田野節子訳 (光文社古典新訳文庫 予価990円)[amazon] 6月12日刊 マウリツィオ・デ・ジョバンニ『鼓動 P分署捜査班』 4月初めの朝。ロマーノ巡査長がP分署近くのゴミ集積所で見つけたのは生後まもない赤ん坊だった。捨て子の親を探して捜査班の面々は奔走するが、ピザネッリ副署長が得た情報が、事態を思わぬ方向へ導いていく。いっぽう、アラゴーナ一等巡査は少年に懇願され犬を探す羽目に……個性派刑事たちの活躍を描く警察小説シリーズ。直良和美訳 (創元推理文庫 予価1210円)[amazon] 6月12日発売 《紙魚の手帖》vol.17 今こそ読みたい!大注目の翻訳ミステリ特集。川野芽生、読切短編掲載。第24回本格ミステリ大賞全選評、一挙掲載ほか。 (東京創元社 1540円)[amazon] 6月13日刊 エラリー・クイーン『境界の扉 日本カシドリの秘密』 国名シリーズに続いて発表されたThe Door Betweenは、ニューヨークにある日本風邸宅が舞台。本作が執筆された当時ニューヨークでのジャポニズム・ブームの残り香が感じられる、エラリー唯一無二の傑作ミステリ。越前敏弥訳 (角川文庫 予価1320円)[amazon] 6月13日刊 オスカー・ワイルド『新訳 サロメ』 月夜の晩。エロド王に請われ、妖艶な踊りを披露したサロメ。王に求めた褒美は美しき預言者ヨカナーンの首だった。少女の激情を描き、男性同性愛の記号(モチーフ)を潜めることで、当時の西欧社会の抑圧を挑戦的に描いた本作は、実はワイルドの抵抗(レジスタンス)!? 仏語原文を忠実に読み解き、見過ごされてきた男達の意外な葛藤を示し、真のドラマ性を見事に新訳。ビアズリー画18点掲載。河合祥一郎訳 (角川文庫 予価968円)[amazon] 6月13日刊 ヘンリー・D・ソロー『ウォールデン 森の生活』 マサチューセッツ州ウォールデン池のほとりで約2年の自給自足生活を送ったソローの日記。自然の中に身を置きながら人間社会を諫め、「我々はどう生きるべきか」を思索したアメリカ文学の最高峰。田内志文訳 (角川文庫 予価1496円)[amazon] 6月13日刊 『このホラーがすごい! 2024年版』 『このミス』編集部が贈るホラー小説のランキングブック。2023年4月~2024年3月に発売されたホラー小説から、国内・海外ベスト20の作品を紹介。綾辻行人ほか人気作家13名による特別エッセイ「私の怖い話」など。 (宝島社 900円)[amazon] 6月刊 オノレ・ド・バルザック『「人間喜劇」総序・金色の目の娘』 西川祐子訳 (岩波文庫)[amazon] 6月17日刊 『新版 アイスランド サガ』 これぞ中世北欧文学の最高峰――幻の名著が新装版で待望の復刊。「サガ」とは、語り、語られた出来事、物語の意。13世紀頃のヴァイキング時代に人々がノルウェーからアイスランドへ入植した経緯、活躍した英雄、血族同士の復讐、異教時代の魔法や呪いなどを活写した壮大な史伝的散文作品のうち、本書は圧巻とされる6篇を収める。最新の研究を踏まえた図版・系図・地図・文献案内付き。谷口幸男訳/松本涼監修 (新潮社 予価19,800円)[amazon] 6月18日刊 トレイシー・リエン『言えなかった言葉』 高校生の弟の不審な死を知らされ、数年ぶりに実家に帰った女性キー。ベトナム系の一家のなかでも、オーストラリアに馴染んだ優等生である弟。だが、それは本当の顔だったのか。謎を追ううち、キーは、自らを取り巻く社会と、弟の命を奪ったものの正体を知る。吉井智津訳 (早川書房 予価2860円)[amazon] 6月11日刊 ドン・ウィンズロウ『終の市』(仮) 1997年。かつて東海岸のマフィアの一員だったダニー・ライアンは、いまやラスヴェガスに王国を築き、カジノホテル業界の陰の“大物”にのし上がっていた。だが強引な手段が商売敵のホテル王との関係に禍根を刻み、平穏な生活は終わりを告げる。FBIとマフィアにつけ狙われ仲間を惨殺されたダニーは、再び血の抗争に身を投じていくが……。壮大な叙事詩の壮絶な幕引き。田口俊樹訳 (ハーパーBOOKS 予価1680円)[amazon] 6月11日刊 ダニエル・シルヴァ『The Collector』(原題) フェルメールの世界的名画が盗まれ、いわくつきの富豪が殺害された。その背後には大国の恐るべき陰謀が――。巨匠が描くスパイ小説の最前線。山本やよい訳 (ハーパーBOOKS 予価1560円)[amazon] 6月19日刊 アリス・フィーニー『グッド・バッド・ガール』 ロンドンのケアハウスで暮らす80歳のエディス。自分をここに押し込んだ娘とはうまくいっていないものの、職員の18歳のペイシェンスとは、世代は違えど友情を築いている。そしてペイシェンスも、母親と喧嘩して家出してきた身だった。そんなある日、ケアハウスの所長が殺害される。実は数ヵ月前にも入居者が不審な死を遂げていて……。『彼と彼女の衝撃の瞬間』のどんでん返しの女王の新境地。越智睦訳 (創元推理文庫 予価1320円)[amazon] 6月19日刊 C・J・ボックス『暁の報復』 猟区管理官ジョー・ピケットの留守電に、知人のファーカスから伝言が残されていた。ダラス・ケイツとその仲間が、ジョーを襲う密談をしているのを盗み聴いたという。ダラスは2年前の事件で破滅し、その一因となったジョーに強烈な恨みを抱いていた。その後ファーカスの遺体が発見され、犯人を捜しはじめるが、ピケット一家にも次々と危機が襲いかかる。サスペンス漲る人気シリーズ新作。野口百合子訳 (創元推理文庫 予価1430円)[amazon] 6月19日刊 P・ジェリ・クラーク『精霊を統べる者』 〈創元海外SF叢書〉19世紀、伝説の魔術師アル=ジャーヒズがジン(精霊)の世界の扉を開き、世界は一変。ジンの魔法と科学の融合によりエジプトは急速に発展するが、アル=ジャーヒズは姿を消した。それから40年、カイロに彼の名を名乗る謎の男が現れ、彼を崇拝する人々を焼きつくした。エジプト魔術省の女性エージェント、ファトマは恋人の女性シティらと共に捜査に乗り出す。ネビュラ賞他受賞作。鍛治靖子訳 (東京創元社 予価3960円)[amazon] 6月19日刊 ラモーナ・エマーソン『シャッター』 警察所属の写真家リタは霊能力の持ち主だ。事故現場を撮影中、自分は殺されたと主張する被害者の霊に殺人犯への復讐を強いられ……。中谷友紀子訳 (ハヤカワ・ミステリ文庫 予価1320円)[amazon] 6月19日刊 ジョン・ル・カレ『シルバービュー荘にて』 海辺の町の書店主ジュリアンと町はずれのシルバービュー荘に住む男の交流は、やがて諜報機関が乗り出す英国を揺るがす事態に……。加賀山卓朗訳 (ハヤカワ文庫NV 予価1320円)[amazon] 6月19日刊 劉慈欣『三体3 死神永生 上・下』 迫り来る三体文明の地球侵略。若きエンジニアの程心(チェン・シン)は、三体艦隊に人類のスパイを送り込む、極秘の「階梯計画」を進行させるが!? 大森望・光吉さくら・ワン・チャイ・泊功訳 (ハヤカワ文庫SF 予価各1320円)[amazon上・下] 6月19日刊 デイモン・ガルガット『約束』 社会変革の渦中にある南アフリカ。プレトリアで農場を営む白人の家族とその黒人メイドとの間に交わされた土地の所有権をめぐる約束が、40年にわたり一家の運命を翻弄する。アフリカ文学の最先端にして英国ブッカー賞受賞作。宇佐川晶子訳 (早川書房 予価3300円)[amazon] 6月19日刊 坂口安吾『不連続殺人事件 附・安吾探偵とそのライヴァルたち』 日本の本格ミステリ史上屈指の名作『不連続殺人事件』。その誕生背景には、若き文学者たちが戦時下に行なった伝説の「犯人当て」イベントがあった。荒正人・大井広介・平野謙ら、坂口安吾の〈ライヴァル探偵〉たちによる貴重な回想・証言と、小説本文を初めて一冊に。 (中公文庫 予価1320円)[amazon] 6月19日刊 黒岩重吾『法王の牙 病院サスペンス集』 「病院」「医療」を背景にした作品は、直木賞受賞作『背徳のメス』に代表される黒岩重吾の初期作品の真骨頂。著者の戦争体験、戦後の小児麻痺による闘病を色濃く投影し、社会の底辺から、病院に巣くう権力構造、愛憎、欲望、人間の業を描き出す。「病葉の踊り」「深夜の競走」「法王の牙」「さ迷える魂」「造花の値段」「最後の踊り」の6編を収録。日下三蔵編 (中公文庫 予価990円)[amazon] 6月19日刊 福田恆存『シェイクスピア』 愛、嫉妬、復讐心、懐疑。悪のどん底までおりていった先に待ち受ける罰と、衝動からの解放――。時代や国を超えて人々を激情の渦に巻き込むシェイクスピアの主要19作品を解題。日本におけるシェイクスピア翻訳の礎を築いた著者が、定本や改訂についての考証、作品に影響を与えた歴史的背景や先行作品の紹介などを交えつつ、シェイクスピアの壮大な作品世界を解き明かす。 (中公文庫 予価1430円)[amazon] 6月19日刊 南條竹則『中華文人食物語』 肉料理・東坡肉に宋代の詩人蘇東坡の名前が冠されているのはなぜ? 中華料理の多様な味わい、摩訶不思議な珍味の数々には、民衆、皇帝、文人たちのエピソードが隠されている。食と酒を愛する著者が、日本・中国各所で口にした美味・珍味とそのエピソードを語るエッセイ。 (中公文庫 予価990円)[amazon] 6月19日刊 鹿島茂『パリの本屋さん』 一癖も二癖もある古書店、文化の中心を担ってきたカフェ、邸宅美術館とルーブル美術館それぞれの楽しみ方(悔しがり方!)、美しくも醜くもあるパリの歴史散策……博覧強記にして達意の文章家たる著者が、四半世紀にわたって書いてきたパリにまつわる60編余の文章を編み直したエッセイ集。 (中央公論新社 予価3520円)[amazon] 6月20日刊 リチャード・フラナガン『グールド魚類画帖 十二の魚をめぐる小説 新装版』 タスマニアの孤島に流刑された画家グールドは、島の外科医殺害の罪で絞首刑を宣告され、獄中で魚の絵を描く……その衝撃の最期とは? 渡辺佐智江訳 (白水社 予価4950円)[amazon] 6月20日刊 クラリッセ・リスペクトル『ソフィアの災難』 『星の時』の著者による日本オリジナル短篇集。武田千香・福嶋伸洋訳 (河出書房新社 予価2640円)[amazon] 6月21日刊 ロジーナ・ハリソン『わたしはこうして執事になった』 執事には誰がどんな経験を経てなるのか。貴族の大邸宅や在米イギリス大使館に勤めた五人が語る、笑いと苦労、時に涙の職業人生。新井潤美監修/新井雅代訳 (白水Uブックス 予価2640円)[amazon] 6月22日刊 『別冊太陽 日本のこころ 生誕130年 武井武雄の本 幻想世界のレオナルド・ダヴィンチ』 大正から昭和にかけて絵雑誌『コドモノクニ』等を舞台に活躍した、《童画の父》武井武雄。珠玉の「刊本作品」はじめ、元祖マルチクリエーターの多彩な創作世界を紹介する。イルフ童話館監修 (平凡社 予価2750円)[amazon] 6月25日刊 『新編 怪奇幻想の文学5 幻影』 生と死、現実と幻想、正気と狂気のはざまの世界の物語を収録。鏡の向こう側から幽冥の境を経て無限の庭園まで、13人の作家が目も彩な幻影の世界へと御招待。紀田順一郎・荒俣宏監修/牧原勝志編 (新紀元社 予価2750円)[amazon] 6月25日刊 ジェイムズ・ジョイス『フィネガンズ・ウェイク Ⅰ・Ⅱ』 『ユリシーズ』に続いて死の間際まで書き継がれ、20世紀最大の文学的事件とされる大傑作。人間の意識と歴史・神話の重層的物語。柳瀬尚樹訳 (河出書房新社 予価6490円)[amazon] ジェイムズ・ジョイス『フィネガンズ・ウェイク Ⅲ・Ⅳ』 海に流れこむアナ・リディアの美しい独白で夢の言語は閉じられる。数千年の人類の歴史を一夜の夢に凝縮した抱腹絶倒の円環的物語。柳瀬尚樹訳 (河出書房新社 予価5390円)[amazon] ジェイムズ・ジョイス『フィネガンズ・ウェイク Ⅰ・Ⅱ/Ⅲ・Ⅳセット』 全2巻・セット函入 (河出書房新社 予価11,000円)[amazon] 6月26日刊 ガブリエル・ガルシア=マルケス『百年の孤独』 宿業を運命づけられた一族の、目も眩む百年の物語。1960年代、世界中にラテンアメリカ文学ブームを巻き起こした名作、邦訳刊行から半世紀を経てついに文庫化。鼓直訳 (新潮文庫 予価1375円)[amazon] 6月27日刊 ミシェル・ウエルベック『わが人生の数か月 2022年10月-2023年3月』 イスラム嫌悪をめぐる諍いの裏で、ポルノ映像出演という最悪の事態に見舞われた著者が赤裸々に描く自己分析的エッセイ。木内尭訳 (河出書房新社 予価1980円)[amazon] 6月27日刊 ジュリー・オオツカ『スイマーズ』 わたしたちはどんな痛みからも解き放たれる。泳いでいる、そのときだけは――。小竹由美子訳 (新潮社 予価2035円)[amazon] 6月28日刊 ジョン・ディクスン・カー『悪魔のひじの家』 故ワイルドフェア判事の旧宅である緑樹館は〈悪魔のひじ〉に聳え立つ。前当主の遺言で相続人にされた孫のニックは、ほしくもない遺産を拒否すべく友人を伴い館を訪れた。そこに響き渡る銃声、幸い現当主の命に別状はなかったが館を覆う不穏な雰囲気は疑いようがない。フェル博士登場の後期作。白須清美訳 (創元推理文庫 予価1100円)[amazon] 6月28日刊 ヤン・ポトツキ『サラゴサ手稿 中』 峻険なシエラ・モレナの山中をさまよう軍人アルフォンス・バン・ウォルデンが遭遇する、数多の奇怪な出来事。そして彼の出会う不可思議な人々……。読み進むうちに読者も道を見失い、ヒターノの親方の語る物語の中に分け入り、正気を失いかける。正統とされる完全版とはエピソードの順番も異なり、完全版では切り捨てられた逸話も多数盛り込まれた、今となっては異本である『サラゴサ手稿』〈ラドリザニ編〉の工藤幸雄訳。 (創元ライブラリ 予価1320円)[amazon] 6月28日刊 小森収編『ミステリ=22 推理小説ベスト・エッセイ』 ひとつの真実にむかって書かれる推理小説から、なぜこれほどまでに多様な面白さが生まれるのか。北村薫、坂口安吾や中条省平、若島正――古今の作家・評論家たちは、推理小説をいかに読み解いたか。『短編ミステリの二百年』の小森収が編んだ、ミステリに関する名文をあつめたアンソロジー。 (創元推理文庫 予価990円)[amazon] 6月28日刊 ジョン・コナリー『失われたものたちの国』 ひとりで8歳の娘を育てているセレス。ある日、娘が交通事故で意識不明となってしまう。娘を看病し続けるセレスが限界を迎えた夜、彼女は娘が入院している施設に建つ古い屋敷の屋根裏部屋に入り込み、本の囁きを聴いた。そして突然現れた化物から逃げる途中で深い森を抜け、知らない場所に迷い込んでしまう。そこは狼男や魔女、巨人などが存在する異世界だった。本にまつわる異世界冒険譚『失われたものたちの本』続編。田内志文訳 (東京創元社 予価2970円)[amazon] 6月下旬刊 ヴァネッサ・チャン『私たちが起こした嵐』(仮) 〈アジア文芸ライブラリー〉英国統治下から日本占領下のマラヤ(マレーシア)で、日本軍のスパイに協力した主婦セシリーと、その家族に起きた悲劇。戦争の記憶をスリリングなフィクションに再構成し、女性の視点から戦争を描く衝撃のデビュー作。品川亮訳 (春秋社)[amazon] ▼7月以降予定 7月3日刊 ハリソン・クエリ&マット・クエリ『幽囚の地』 都会の喧騒を離れ田舎に家を買ったブレイクモア夫妻。そこに、隣人のダンが忠告にやって来る。この地には精霊が住んでおり、季節ごとに彼らを悩ませるというのだ。最初は不気味な光が飛び回る程度だったが、やがて精霊たちは夫妻に直接危害を加えはじめ……。田辺千幸訳 (ハヤカワ・ミステリ 予価2750円)[amazon] 7月3日刊 マーティン・エドワーズ『モルグ館の客人』 完全犯罪を成し遂げた者が集うパーティが開かれる館。新聞記者ジェイコブと名探偵レイチェルは謎の女にパーティへ招かれるが……。加賀山卓朗訳 (ハヤカワ・ミステリ文庫 予価1320円)[amazon] 7月3日刊 『台湾文学コレクション1 近未来短篇集』 先端技術を敬遠する母と反発する娘を描く「2042」、恋する相手のデータを収集する女性の行き過ぎた愛情の行方を語る「USBメモリの恋人」、逃げた介護ロボットの真相を痛切に描く「小雅」など、台湾の実力派作家たちの選りすぐりの傑作SF8篇を収録。三須祐介訳 (早川書房 予価2860円)[amazon] 7月16日予定 オスカー・ワイルド『芸術家としての批評家』 河内恵子訳 (みすず書房 予価4620円)[amazon] 7月18日刊 ジョン・ル・カレ『パナマの仕立屋 上・下』 英国の諜報員オスナードは、パナマ運河返還後の政情を探るためパナマへ向かう。彼は要人御用達の仕立屋ハリーに目をつけ……。田口俊樹訳 (ハヤカワ文庫NV 予価各1320円)[amazon上・下] 7月18日刊 エリック・ラーソン『万博と殺人鬼』 万博間近の19世紀末シカゴ。欲望うごめく大都会に「殺人ホテル」を構える猟奇殺人犯が潜んでいた。『悪魔と博覧会』復刊文庫化。野中邦子訳 (ハヤカワ文庫NF 予価1430円)[amazon] 7月18日刊 キャサリン・M・ヴァレンテ『デシベル・ジョーンズの銀河(スペース)オペラ』 全銀河の芸術コンテストで、地球人代表が好成績を残さなければ人類全滅!? 地球の命運はとある冴えないロックスターに託された! 小野田和子訳 (ハヤカワ文庫SF 予価1562円)[amazon] 7月18日刊 ダヴィド・ディオップ『夜、すべての血は黒い』 仏軍セネガル兵アルファは、友人を看取っていた。痛みから解放するため殺してほしいという友の願いは叶えられないまま。恐怖と罪悪感に取り憑かれたアルファは、やがて敵兵を捕らえ、残虐な儀式をくり返す。第一次大戦の兵士の心理を描くブッカー国際賞受賞作。加藤かおり訳 (早川書房 予価2530円)[amazon] 7月18日刊 施叔青『台湾文学コレクション2 風の前の塵』 日本統治下の台湾で弾圧される先住民の青年。日本人に憧れる客家人の写真家。日本人村で育つ警察官の娘、月姫。彼らは何を願い、誰を愛したのか? 時を経て、月姫の娘の無弦琴子は期せずして亡母の足跡をたどる。史実と幻想を織り交ぜて描かれた傑作歴史小説。池上貞子訳 (早川書房 予価2860円)[amazon] 7月18日刊 イ・ヨンド『涙を呑む鳥1』 人間、ナガ、トッケビ、レコンの四種族が暮らす大陸。その南方に暮らすナガの少年リュンは、死の際の友に託された使命を果たすべく北へ旅に出る。そして彼を守るため三人の仲間が集まった……。〈ドラゴンラージャ〉著者による本格ファンタジイ、シリーズ開幕。小西直子訳 (早川書房 予価2750円)[amazon] 7月予定 デイヴィッド・ダムロッシュ『ハーバード大学ダムロッシュ教授の世界文学講義』 世界文学とはなにか。国際的に活躍する文学研究の第一人者が古今東西縦横に、世界のあらゆる文学作品との比較の中で、日本文学の魅力を語る。今まで比較されることのなかった作家をあえて関連づけることによって文学の新たな可能性を見出し、刺激的な読書の世界へ誘う。沼野充義監訳/片山耕二郎・高橋知之・福間恵 訳 (東京大学出版会 予価3520円)[amazon] マフムード・ダルウィーシュ『パレスチナ詩集』 パレスチナに生まれ、亡命を生きた大詩人ダルウィーシュ。惨事と野蛮に抗し、実存的な主題として同地に向きあった。敗者の声を詩に結実させた絶唱。四方田犬彦訳 (ちくま文庫 予価1540円)[amazon] ▼予定表に出たり消えたり(そのうち何とかなるだろう) Amazonのアソシエイトとして、藤原編集室は適格販売により収入を得ています。 |