注目の近刊
10月20日刊 セルジョ・トーファノ『おやつにキャベツ』 〈シリーズ 再生の文学〉錆びた甲冑に囚われの身となった勇猛果敢な無敵の隊長、犬の毛刈りの失敗から集合住宅に巻き起こる大騒動、全員の使用言語が異なる祖父母と両親のもとに生まれた男の子に起こった奇跡、サルタンの不眠を治した軍総司令官の機知、ガチョウによる強奪事件を調べる地方判事が辿りついた驚くべき結論……。イタリア演劇人、挿絵画家、作家として著名な鬼才による、奇想と意外性、不思議な諧謔に富んだ短篇小説10篇。原著挿絵付き。橋本勝雄訳 (英明企画編集 予価1870円)[amazon] 10月21日刊 江戸川乱歩『乱歩心象作品集』 乱歩の心に映る執着と愛着、強迫的な思念、どこかへと惹かれてゆく心の有様……。「夢遊」「恐怖」「人形」「残虐」「身体」「錯視」「浅草」の七つの切り口で、短篇、および長篇中の名場面を精選。乱歩の神髄・魅力を凝縮した一冊。高原英理編 (中公文庫 予価1430円)[amazon] 10月21日刊 小泉八雲原作/長田結花絵『ミミナシホーイチ』 〈八雲えほん〉盲目の琵琶法師ホーイチのもとに夜ごと訪れる鎧武者。壇ノ浦の戦いを聞かせて欲しいと頼まれたホーイチは、通うごとにやつれゆく。円城塔翻案/東雅夫編 (岩崎書店 予価1760円)[amazon] 10月22日刊 ジェニファー・コーディー・エプスタイン『血痕の記憶』 19世紀パリ。記憶を失い精神病院に収容された少女と付添人の愛は、やがて恐るべき真実を暴く。エドガー賞最終候補の歴史ミステリ。唐木田みゆき訳 (ハヤカワ・ミステリ文庫 予価2200円)[amazon] 10月22日刊 ウィリアム・ギブスン『カウント・ゼロ 新版』 新米ハッカーのボビイが没入中に邂逅した謎の少女の正体とは。『ニューロマンサー』を超越する圧倒的スケール、シリーズ第二作。黒丸尚訳 (ハヤカワ文庫SF 予価2310円)[amazon] 10月22日刊 エリー・グリフィス『小路の奥の死』 ロンドンのマナーパーク校の同窓会で下院議員が殺害された。被害者の友人は個性的な有名人ばかり。被害者は「血を流す心臓」と書かれた手紙を何通も受け取っており、21年前に起きたある生徒の死亡事故の目撃者だったことが明らかになるが……。上條ひろみ訳 (創元推理文庫 予価1320円)[amazon] 10月22日刊 筒井康隆『筒井康隆エッセイ集成1 SFを追って』 時代を超えて読み継がれる数々の傑作を生み出してきた筒井康隆はエッセイの名手でもあった。昭和期に雑誌・新聞などに掲載されてきたエッセイの数々を2巻本で集成する豪華企画。日下三蔵編 (早川書房 予価3300円)[amazon] 10月22日刊 ギオルギ・ゴスポディノフ『タイム・シェルター』 幸福だった時代を再現しアルツハイマーを治療するクリニック。患者は懐かしい記憶を追体験することで症状の改善を目指す。だが再現度が高まるほど、現実逃避を望む者が集い、やがて世界中で模倣される。過去は楽園か、それとも監獄か――。ブッカー国際賞受賞作。寺島憲治訳 (早川書房 予価3300円)[amazon] 10月22日刊 クローディ・ウンジンガー『食卓にきた犬』 老いを意識し、創作への不安を抱える作家ソフィのもとに、モップのような毛並みの若い犬が現れる。信頼と愛情を向けてくる犬と森を歩き、自然と向き合う時間が、彼女に作家として、女性としての自分を見つめ直すきっかけをもたらした。フェミナ賞受賞の感動作。永田千奈訳 (早川書房 予価3740円)[amazon] 10月22日刊 鈴木潤『Jホラーの核心 女性、フェイク、呪いのビデオ』 なぜ幽霊は「髪の長い女性」なのか、なぜ「ビデオ」が呪いを伝播させるのか。『リング』『呪怨』ほか黎明期の名作から『変な家』『近畿地方のある場所について』に至るまで、気鋭の映画研究者がジェンダー/メディアの観点でJホラーの本質を緻密に分析する。 (ハヤカワ新書 予価1210円)[amazon] 10月22日刊 『アメリカ詩アンソロジー 原詩・和訳・評釈付』沢崎順之助・富山英俊・江田孝臣編訳 ホイットマンからスティーヴンズ、パウンド、エリオット、そしてクレインまで、19-20世紀アメリカにおいて定評ある15詩人の29作品を収載したアンソロジー。ことばによる詩という装置を前に、おのずと読みが駆動され、果てなき作品世界が湧出する。 (春風社 予価2200円)[amazon] 10月24日刊 東雅夫・下楠昌哉編『怪奇と幻想の英文学Ⅴ 関西疾風編』 気鋭の英文学者らが論じた幻想文学の本格的な研究・批評の集成第5弾。関西の若手研究者を中心とした論考群に加え、「首なし騎士」伝説を論じた東雅夫によるエッセーも収録。内容 (春風社 予価3300円)[amazon] 10月24日刊 ロバート・W・フィーゼラー『焚殺 歴史の闇に隠されたあるゲイ・クラブの悲劇』 1970年代アメリカで歴史に消された「ゲイ・クラブ放火事件」があった。なぜ死者の名は隠され、社会の誰も向き合おうとしなかったのか。生き延びた者たちが語り継ぐ生と尊厳の記録。エドガー賞(犯罪実話部門)受賞。柿沼瑛子・西本理恵子訳 (国書刊行会 予価3960円)[amazon] 10月24日刊 ダグラス・プレストン『怪死 遺骨と埋葬と殺人の迷宮』 怪しくも魅惑的な〈古代~現代〉の未解明事件や死の謎の数々。考古学、人類学、法医学、古生物学、生化学、DNA解析……最新科学のあらゆる知見から斬り込むスリリングな探索の軌跡。手に汗にぎる珠玉の謎解きノンフィクション13編。棚橋志行訳 目次 (亜紀書房 予価2970円)[amazon] 10月24日刊 筒井康隆『筒井康隆自伝』 生まれて最初の記憶と初恋、戦時中に過ごした幼少期、そして音楽、映画、演劇に明け暮れた青春を経て人気作家となるまで。 (文藝春秋 予価2090円)[amazon] 10月24日刊 ウィリアム・シェイクスピア『新訳 冬物語/シンベリン』 シチリア王は妃ハーマイオニと親友ボヘミア王の密通を疑う。親友の暗殺を臣下に命じ、妊娠中の妻を投獄し、生まれた赤子を捨てるが……(『冬物語』)。ブリテン王女と身分違いの結婚をして宮廷を追放されたポステュマス。伊達男に王女の操が奪えるかという賭けをもちかけられ……(『シンベリン』)。著者の人生に重なるロマンス劇の金字塔を徹底解説&注釈で。河合祥一郎訳 (角川文庫 予価1386円)[amazon] 10月24日刊 ジェフリー・アーチャー『消えた王冠は誰の手に ロンドン警視庁王室警護本部』 ロンドン塔から盗まれた英国の至宝。奪還に残されたのは24時間――。巨匠が放つ、驚異の警察小説。〈ウィリアム・ウォーウィック〉シリーズ最新刊。戸田裕之訳 (ハーパーBOOKS 予価1320円)[amazon] 10月24日刊 エリック・シャクール『あなたについて知っていること』 エジプト、カイロ。親に決められた既定路線の人生を歩む新婚の医師ターレクは、ある日魅力的な青年アリーと出会い、その平穏な未来は一変した。保守的な地域での同性愛と不倫は疑惑と波紋を呼び、そして物語は思わぬ方向へと転がり始める……。喪失と欠落、そして家族の愛を描く珠玉の文芸作品。加藤かおり訳 (集英社 予価2750円)[amazon] 10月24日発売 《SFマガジン》12月号 火星SF特集/SFコンテスト (早川書房 1540円)[amazon] 10月27日刊 ジェイムズ・モロウ『ヒロシマめざしてのそのそと』 第2次世界大戦中、B級モンスター映画界のスター、シムズ・ソーリーは、アメリカ海軍から巨大なトカゲの着ぐるみに入ってほしいという依頼を受ける。それは火を噴く怪獣ベヒモスが日本を破壊するさまを日本外交団に見せつけ、降伏を促そうという極秘計画だった。シムズはこの「生涯最高の役」に取り組むが……。荒唐無稽でありながら、人類への愛に溢れたシオドア・スタージョン記念賞受賞作。内田昌之訳 (竹書房 予価2640円)[amazon] 10月27日刊 サラ・ピンスカー『失われたいくつかの場所』 彼女が噓のつもりで適当に言った不気味なローカル番組は実在し、しかも彼女自身も出演していた(「二つの真実と一つの嘘」)。飛び込んだ人間がたまに消える池で行方不明になった兄の思い出(「センチュリーはそのままにしておいた」)。バラッドの謎を解き明かそうとするネットユーザーたちは、その歌に秘められた恐ろしい意味に気づきはじめる(「オークの心臓集まるところ」)。もっとも新しく、もっとも懐かしい、記憶を揺さぶる奇想短篇集。市田泉訳 (竹書房 予価2640円)[amazon] 10月27日刊 シャルロット・ド・ラトゥール夫人『花々の言葉 世界ではじめての花言葉辞典』 花言葉の起源へ――清新な物語とともに〈花言葉〉は萌え出した。文学・歴史・博物学からひもとく花々のメッセージ。 19世紀フランスで爆発的に流行した「世界ではじめての花言葉辞典」本邦初訳。三宅京子訳 (国書刊行会 予価3300円)[amazon] 10月28日刊 ピエール・スヴェストル/マルセル・アラン『ファントマと囚われの王』 〈ベル・エポック怪人叢書〉コンコルド広場の噴水のニンフ像が夜な夜な歌をうたう──大晦日、新聞記者ファンドールはお忍びでパリにやってきたヘッセ=ヴァイマル王国の王と意気投合。ところが王の愛妾死亡事件に巻き込まれ、ひょんなことから王の身代わりを演じるはめに――。悪のヒーロー、怪人ファントマとジューヴ警部の因縁の対決。愛人殺し容疑の王の身代わりに幽閉された新聞記者ファンドール危機一髪! 久生十蘭が換骨奪胎し『魔都』を生んだ怪作。シリーズ完結。赤塚敬子訳 (国書刊行会 予価4180円)[amazon] 10月28日刊 アグスティナ・バステリカ『肉は美(うま)し』 人肉食が合法化された近未来。食肉処理工場で働くマルコスは、日々「頭」を屠畜していたが……究極の超問題ディストピアホラーSF。宮﨑真紀訳 (河出書房新社 予価2750円)[amazon] 10月28日刊 何致和『地下鉄駅』 失業、いじめ、孤立……駅で自ら死を選ぶ人々と、その防止に奔走する地下鉄職員。都会の声なき声を拾い、再生を描いた台湾発の話題書。及川茜訳 (河出書房新社 予価3080円)[amazon] 10月28日刊 ティム・ブルックス『絶滅しそうな世界の文字』 文字にこれほどのドラマがあったとは! 消滅の危機に瀕する世界の文字体系83種類の、物語、歴史、現況を探求する。黒輪篤嗣訳 (河出書房新社 予価5390円)[amazon] 10月28日刊 『メダンの夕べ 戦争と女たち』エミール・ゾラ、ギ・ド・モーパッサン、J・K・ユイスマンス他 〈ルリユール叢書〉戦場、野戦病院、兵舎、総司令部などにおける「現実」を直視し、戦時下の軍人や女たちの生を鮮明に描き出すことによって、戦争美化の言説に抗議の声をあげる――パリ郊外のメダンにあるゾラ宅に集った、モーパッサン、ユイスマンスら6人のフランス自然主義作家が普仏戦争(1870-71)を記録、諷刺した短編小説集。本邦初完訳。足立和彦・安達孝信訳 内容 (幻戯書房 予価4290円)[amazon] 10月28日刊 水島爾保布『耽美・悪食・へらず口 水島爾保布コラム・創作選』 谷崎潤一郎『人魚の嘆き』の挿画・装画で知られる水島爾保布。世間を斜に視た江戸っ子は、画業に留まらず、明治・大正・昭和の時代の記録、東京の下町のこと、紀行文、美術・芝居・音楽をめぐる論考、はては小説と、サビの利いた数多の文章を遺した。明治天皇大葬の夜、関東大震災、5・15事件、2・26事件、国粋主義批判、画壇悪口、ライオンの味……。漫画・漫文も加え、水島爾保布の文業に迫った類書なき一冊。前田恭二編 (幻戯書房 予価3630円)[amazon] 10月29日刊 レオ・マレ『探偵はパリへ還る』 第二次大戦下のドイツ。捕虜として収容所の病院で働く探偵ビュルマは、瀕死の男に謎の言葉を告げられる。「エレーヌに伝えてくれ、駅前通り120番地」。釈放後パリへ戻るなり、再会した探偵助手が何者かの凶弾に倒れ、彼もまた同じ住所を言い残す――。死に際の言葉、暗号解読、稀代の大泥棒、一同集めての推理披露と、ミステリー要素満載。フランスのハードボイルド小説はここから始まった。田中裕子訳 (新潮文庫 予価825円)[amazon] 10月29日刊 ジャン・コクトー『恐るべきこどもたち』 美しいものはとてつもない特権に恵まれている――。こども時代のために生まれてきたかのようなエリザベートとポールは、双子用の揺りかごで揺られるように暮らしていた。深く愛し合いながら同時に苦しめ合うふたりの部屋へジェラールとアガートが加わり、世界は変質してゆく。純粋すぎたエリザベートが選んだ結末は? 世界の数多の芸術家を触発しつづけてきたフランス20世紀の古典の新訳。村松潔訳 (新潮文庫 予価649円)[amazon] 10月29日刊 津村記久子『やりなおし世界文学』 もういいかげん、ギャツビーのことを知る潮時が来たようだ――。いつかは読みたい、けれどなんだか敷居が高い古典名作の数々。国も時代も文化も違うそれらの世界は、自分と同じような悩みや、新しい友達のような登場人物や、生きるうえで勇気が持てる姿勢に満ち満ちていた。 『灯台へ』『ペスト』『カラマーゾフの兄弟』など、全92作の魅力をふだん使いの言葉で綴る、軽やかで愉快な文学案内。 (新潮文庫 予価935円)[amazon] 10月29日刊 南條竹則『文豪と食』 尾崎紅葉、泉鏡花、夏目漱石、森鴎外、永井荷風、井伏鱒二、志賀直哉、島崎藤村、林芙美子、谷崎潤一郎――錚々たる文豪たちの「食」へのこだわりに迫った本。彼らが作品や随筆の中で描いた、食にまつわる情景や思い出、執念ともいえる執筆ぶりを味わえる、まさに“食のエッセイ集”。文学と食が交差する、豊かな世界を楽しめる一冊。 (春陽堂書店 予価2420円)[amazon] 10月30日刊 リチャード・パワーズ『プレイグラウンド』 急速なテクノロジーの進化とその更に先を描く、アメリカ最重要作家の最新作。南太平洋に浮かぶ人口百名足らずの小島は、IT業界の寵児が訪れるとの噂で沸いていた。なんでもここに新国家を作るという。だが島には彼のかつての親友が家庭を築いていて――テクノロジーと人間の相克、そして果たされなかった友情の行方。迫りくるシンギュラリティを前に文学の可能性を映し出す、謎と驚異に満ちた物語。木原善彦訳 (新潮社 予価4950円)[amazon] 10月30日刊 黄錦樹『南洋人民共和国備忘録』 〈サイノフォン〉マラヤ共産党をめぐる24篇。個人の記憶の奥深くに隠されたマレーシア華人の集団の記憶とトラウマを圧倒的な想像力で描き出す。日本オリジナル編集によるマレーシア華人作家の最新代表作。王徳威編 (白水社 予価4180円)[amazon] 10月30日刊 キム・イソル『わたしたちの停留所と、書き写す夜』 40代未婚の「わたし」は、老いた父母やDVを受けて実家に戻ってきた妹親子のケア労働に追われ、詩人になる夢も「あの人」とのささやかな幸せもすべてを諦めて生きている。一日の終わりに、好きな詩を筆写することだけが自分を取り戻す時間であった「わたし」が、それすら失ってしまう前にとった選択とは――。韓国フェミニズムのうねりのなか生まれ、いま「停留所」に佇むすべての人におくる「人生小説」。小山内園子訳 (エトセトラブックス 予価2200円)[amazon] 10月31日刊 ケイティ・ティージェン『事件現場をドールハウスに』 第二次世界大戦で夫を失ったメープル・ビショップ。二人の大切な家を守るために彼女にできるのは、趣味のドールハウスの制作と販売だった。幸先良いスタートを切った折、商品の配達先で農場経営者の死体を発見してしまう。警察は自殺としたが、納得できないメープルは、保安官を説得しようとドールハウスで事件現場を再現するが……。シリーズ第1弾。杉田七重訳 (創元推理文庫 予価1320円)[amazon] 10月31日刊 アリスン・モントクレア『奇妙な花嫁候補 ロンドン謎解き結婚相談所』 元スパイのアイリスと上流階級出身のグウェンが経営する結婚相談所に、アデラという既婚女性が現れる。病気で余命わずかの彼女は、昆虫にしか興味のない夫が孤独な余生を送らずにすむよう、自分の死後に後添えをさがしてほしいと依頼する。二人は頭を悩ませるが、数日後、アデラの遺体が発見され……。シリーズ第5弾。山田久美子訳 (創元推理文庫 予価1430円)[amazon] 10月下旬予定 ヴァンス・トンプソン『歪んだ木』 〈論創海外ミステリ〉精神科医レデスキー教授と出会った犯罪学者のジュール=マリー・ゲルパ氏はニューヨークで起こった保険金詐欺事件に巻き込まれていく。板垣節子訳 (論創社 予価3850円)[amazon] 10月予定 カンパネッラ『太陽の都市』 教会とスペイン帝国に対し武装蜂起を企図したカトリック僧が、逮捕された獄中にて執筆したユートピア論。神政政治、結婚と生殖の管理、財産の共有、卓越した科学技術……混迷の17世紀イタリアで千年王国到来の予感とともに夢想する、原始共産制社会の驚くべきヴィジョン。澤井繁男訳 (水声社 予価2970円) ▼11月予定 11月4日刊 アレクサンドル・コジェーヴ『ヘーゲル読解入門 『精神現象学』を読む 上・下』 バタイユ、ラカン、カイヨワ、ブルトンらが参加し、現代フランス思想に多大な影響を与えた記念碑的講義録がついに復刊。上妻精・今野雅方訳 (白水Uブックス/思想の地平線 予価各1760円)[amazon上・下] 11月4日刊 デイヴィッド・ヒューム『ヒューム イングランド史 Ⅰ・Ⅱ』 ヒューム思想の結晶として近年注目が集まっている『イングランド史』。そのうち最初に公刊されたステュアート史を、網羅的な資料調査と綿密な校訂にもとづき初めて全訳。内戦へと向かう分断の時代を語るなかで、認識論、因果論、情念論などの哲学的分析は歴史といかに出会うのか。犬塚元・壽里竜・池田和央訳 【目次 1巻 2巻】 (名古屋大学出版会 予価各9350円)[amazonⅠ・Ⅱ] 11月5日刊 チェ・ウニョン『無理して頑張らなくても』 友達との心の距離に揺れる10代特有の感情(「無理して頑張らなくても」)。大人たちの理不尽や偏見に気づいてしまった幼い日の痛み(「良き時代」)。まっすぐに生きる他者に感じる劣等感(「デビー・チェン」)。誰もが知るほろ苦い感情を掬いあげた珠玉の14篇。古川綾子訳 (早川書房 予価3080円)[amazon] 11月5日刊 クレア・キーガン『あずかりっ子』 赤ちゃんが生まれるまで、ひと夏の間、親戚の家に預けられた少女。怒らず優しく接してくれる親戚との生活は初めて知る愛に満ちていた。だがこの夏もやがて終わりの時が――映画「コット、はじまりの夏」原作。感情の深みを驚くほど静かに描き出す著者の代表作。鴻巣友季子訳 (早川書房 予価2200円)[amazon] 11月6日刊 トム・ミード『空に浮かぶ密室』 1938年、ロンドン。銀行支配人のドミニクが稼働中の観覧車で射殺された。疑いは妻のカーラに向き、無罪の証拠探しを若き弁護士エドムンドに依頼する。しかし彼自身も密室殺人事件に巻き込まれ。元奇術師の探偵スペクターの推理が冴える黄金期オマージュ本格。中山宥訳 (ハヤカワ・ミステリ 予価2750円)[amazon] 11月6日刊 シーラン・ジェイ・ジャオ『天空龍機 鋼鉄紅女2 上・下』 則天は史上最強パイロット秦政を二百年の眠りから覚醒させ、巨大戦闘機械の力で国を掌握した。目的は天上の神への反撃だが!? 中原尚哉訳 (ハヤカワ文庫SF 予価各1650円)[amazon上・下] 11月6日刊 ダン・ブラウン『シークレット・オブ・シークレッツ 上・下』 宗教象徴学者ロバート・ラングドンは、最近恋仲になった純粋知性科学者キャサリン・ソロモンの講演を聴くためプラハを訪れた。彼女は人間の意識にまつわる驚くべき発見についての著書を発表予定だという。ところが残忍な殺人事件が起き、混乱のなかキャサリンは原稿とともに突然姿を消す。物語はロンドン、ニューヨークへ飛び、ラングドンはキャサリンを探しながら謎を解明していき、苦闘の末、ある秘密のプロジェクトに関する衝撃の真実を知る……。著者8年ぶりの新作。越前敏弥訳 (KADOKAWA 予価各2750円)[amazon上・下] 11月7日刊 『ユートピア文学選集』 ユゴーにゾラ、タルドからリラダンまで、近代化と産業化が加速する19世紀フランスで書かれた、来るべき社会を想像するユートピア文学のアンソロジー。小倉孝誠監訳 (平凡社ライブラリー 予価2420円)[amazon] 11月7日刊 キム・イファン『お布団の外は危険』 「布団の外は危ないから出ないで」――ある日、お布団が話しかけてきた(表題作)。マクドナルドの店内で宇宙の謎が解き明かされる(「万物の理論」)。整形どころか人体改造が一般的になった世界(「君の変身」)。透明ネコが最高な話(「透明ネコは最高だった)。韓国の奇才による奇想SF短篇集。関谷敦子訳 (竹書房文庫 予価1540円)[amazon] 11月10日刊 韓松『紅色海洋 上・下』 人類が地上に住めなくなった未来、遺伝子工学によって創られた「水棲人」が生きる「紅い海」の世界を描いた、哲学的かつ挑戦的な作品。中国SF四天王のひとり、韓松の長編SF。 立原透耶・大恵和実訳 (新紀元社 予価各3300円)[amazon上・下] 11月10日刊 リン・メッシーナ『公爵さま、謎解きディナーです 行き遅れ令嬢の事件簿7』 公爵夫人らしからぬ「探偵癖」のせいで、世間の笑いものになってしまったベアトリス。「それなら実力を示せばいい!」名誉挽回を狙って「殺人劇」の謎を解くことに。でも、筋書にはなかった本物の殺人事件が起こってしまい⁉ 佐藤満里子訳 (原書房/コージ―ブックス 予価1540円)[amazon] ![]() 11月11日刊 浜口稔『ホモ・ロクエンス 言葉とメディアを介して事物世界を編む』 人間言語の誕生、抽象的概念を表象する文字や図形の発明、ライプニッツ、英国〈王立協会〉、ポール・オトレらによる知の普遍化の探究、インターネット、仮想空間、生成AIの登場――。言語/情報を操り、五感を交錯させて豊穣な世界を形づくる、人類の驚異に満ちた比類ない軌跡を描き出す。目次 (明石書店 予価3850円)[amazon] 11月11日刊 ダイアナ・ウィン・ジョーンズ『大魔法使いクレストマンシー クリストファーの魔法の旅 上・下』(仮) クリストファーは別世界に旅することのできる強い魔力を持って生まれ……。『ハウルの動く城』作者の代表連作、文庫化。田中薫子訳 (徳間文庫 予価各935円)[amazon上・下] 11月12日刊 香山滋『悪霊島 人見十吉秘境小説集成2 探偵くらぶ』 映画「ゴジラ」の原作者としても著名な香山滋。そのライフワークともいえる秘境探検家、人見十吉を主人公とするシリーズ第二弾。江戸川乱歩も驚愕したオンリーワンの個性を持った作品群を集大成。日下三蔵編 (光文社文庫 予価1540円)[amazon] 11月12日刊 ギュスターヴ・フローベール『ボヴァリー夫人』 19世紀フランスを代表する小説。平凡な結婚生活に退屈した女性が、不倫・蕩尽の末に服毒自殺するまでを描く。センセーショナルな内容から発表当時は不道徳の廉で訴えられて裁判沙汰になったが、その効果もありベストセラーになった。「ボヴァリー夫人はわたしだ」というフローベール自身の言葉はあまりにも有名。作家の深意、意向、意図を可能なかぎり反映させた、作者の精神に忠実な翻訳。太田浩一訳 (光文社古典新訳文庫 予価1870円)[amazon] 11月12日刊 曲亭馬琴『椿説弓張月 4』 王位継承をめぐる争いで 廉夫人、忠臣の毛国鼎らは命を落とした。そして寧王女の絶体絶命の危機を救った為朝は、矇雲を討つべく南風原へと赴き、利勇と対面する……。矇雲、利勇、為朝の、知略と謀略がぶつかり合う三つ巴の戦い。葛飾北斎画/菱岡憲司訳 (光文社古典新訳文庫 予価1100円)[amazon] 11月12日刊 ロブ・ハート&アレックス・セグラ『暗黒空間』 人類初の太陽系外惑星探査船〈モザイク〉に、突如深刻なトラブルが発生。何者かの妨害工作らしい。だが、船が発した緊急信号を、月面都市の星間連合本部はなぜか無視。元諜報員ティモニーだけが単身、真相を求めて調査を開始する。一方、危機を乗り越えた〈モザイク〉船内では、操縦士カリレスが犯人を探し始めるが……。茂木健訳 (創元SF文庫 予価1760円)[amazon] 11月12日刊 菊池寛『半自叙伝』 文豪であり、文藝春秋創業者でもある「菊池寛」に成る前の日々――。随筆5編&芥川龍之介が菊池を語る「兄貴のような心持」を併録。 (ちくま文庫 予価880円)[amazon] 11月12日刊 スティーヴン・グリーンブラット『一四一七年、その一冊がすべてを変えた』 ルネサンスの原動力となったのは、忘れ去られていた古代ローマの哲学詩だった──。ある写本の発見が与えた衝撃を描く傑作歴史物語。河野純治訳 (ちくま学芸文庫 予価1760円)[amazon] 11月12日刊 イザベラ・ハンマード『見知らぬ人を認識する パレスチナと語りについて』 その場にいない私たち、遠くからただ見守るしかない私たちは、これに耐えようと自分の感情を切り離すとき、どのように自分自身を深く損なっているのだろうか――。パレスチナの人を消し去ろうとする支配的な語りをいかにして解体するか。その転換点はどこにあるのか。文学の視点から暴力の発生地点をみつめる。岡真理訳 (みすず書房 予価2750円)[amazon] 11月12日刊 チェ・ウニョン『ほんのかすかな光でも』 『ショウコの微笑』『わたしに無害なひと』で人気を博し、数々の賞を受賞してきた作家の最新短編集。2018~23年作全7編。二人の関係に心揺さぶられる。古川綾子訳 (筑摩書房 予価2200円)[amazon] 11月12日刊 小妻容子『小妻容子/要画集』 嗜虐と被虐の極北の美を追い求めた、小妻容子、別名小妻要の縛り絵と刺青美人画世界。晩年まで手元に保管された傑作を選りすぐり収録。 (河出書房新社 予価4950円)[amazon] 11月14日刊 『原典訳 マハーバーラタ 1』 神々の血筋を引くクル王家の系譜と、一族を破滅へ導く大戦争への道のりを数世代にわたって描く大叙事詩『マハーバーラタ』。実現する呪い、秘められた過去、果たされる誓い……絡み合う因果に翻弄されながらも自己のダルマ(正しいあり方)を求め、英雄たちは聖なる戦場で対峙する。第一巻はクル王族の子孫と祖先の物語。王子たちの驚異の誕生と長い確執のはじまりがここに語られる。サンスクリット原典訳。上村勝彦訳 (法蔵館文庫 予価1980円)[amazon] 11月15日刊 カン・ソッキョン『脚のない鳥』 〈韓国文学ショートショート〉命の果てまで彷徨う〈脚のない鳥〉は香港のスターか、慶州の老園芸学者か、もしくは自分なのか。主人公の一日を軸に、失われゆくものに執着する人間の性(さが)や自我を求めてさまよう姿が、静かな余韻をともなって描かれる。松渕優子訳 (クオン 予価1320円)[amazon] 11月15日刊 チョン・ジドン『僕の彼女の彼氏』 〈韓国文学ショートショート〉恋人のモアと一緒に日本のとある研究所を訪れた「僕」。その目的は、病死後9年間冷凍保存されている、モアの夫を蘇らせるためだった。アンソロジー『愛、別れ、死に関するショートストリー』に収録された短編小説。ユン・ブンミ訳 (クオン 予価1320円)[amazon] 11月17日刊 小泉八雲原作/高畠那生絵『むじな』 〈八雲えほん〉商人の男が紀国坂で出会った若い女は、目も鼻も口もない、卵のようなつるりとした顔をしていた。驚き慄き、這々の体で蕎麦屋に逃げて来た商人は、主人にその話をする。小泉八雲を絵本でたのしむ。田辺青蛙翻案/東雅夫編 (岩崎書店 予価1760円)[amazon] ![]() 11月18日刊 ジークムント・フロイト『続・精神分析入門講義』 ウィーン大学で実際に行われた『精神分析入門講義』から十五年。今回は講義の形をとりつつ書き下ろされたその続篇。夢、自我・エス・超自我、不安、欲動、女性性、世界観などについて語られた後期精神分析の精髄。道籏泰三訳 (岩波文庫 1353円)[amazon] ![]() 11月18日刊 莫言『赤い高粱 上』 婚礼の輿が一つ、赤に染まる高粱畑の道を往く。輿に揺られる美しい纏足の少女。汗に濡れ輿を担ぐ逞しい青年。ただならぬ予感が、ゆらめく炎のように二人の行く手を照らす。山東省高密県東北郷。日本軍が蛮行を尽くすこの地で、血と土、酒に彩られた凄烈な物語が始まる。ノーベル文学賞受賞者の代表作。井口晃訳 11月19日刊 ダニエル・キイス『アルジャーノンに花束を 特装版』 32歳になっても幼児なみの知能しかないチャーリイ・ゴードン。そんな彼に夢のような話が舞いこんだ。大学の先生が頭をよくしてくれるというのだ。やがて手術によってチャーリイの知能は向上していくのだが……。全世界が涙した不朽の名作を函入りの特装版で。小尾芙佐訳 (早川書房 予価7150円)[amazon] 11月19日刊 デニーン・ミルナー『そして血は語る』 1960年代米国。南部の厳しい差別から逃れ、育ったNYで娘を身ごもったグレイス。だが裏切りにより娘は養子縁組に。その子をレイと名付け、里親となったデロリス。人種差別や男女格差が引き裂いた母と娘の物語が、今、三人の黒人女性を通じて一つに編み直される。北田絵里子訳 (早川書房 予価4400円)[amazon] 11月19日刊 クリス・ウィタカー『われら闇より天を見る 上・下』 自称無法者の少女ダッチェスが住む町に帰ってきた30年前の事件の加害者。彼の帰還は、ダッチェスを苛烈な運命へ巻き込んでいく。鈴木恵訳 (ハヤカワ・ミステリ文庫 予価各1210円)[amazon上・下] 11月19日刊 余兒『九龍城砦2 龍頭』 いつか、阿祖は天を駆ける龍となる――。1950年代香港。貧しい労働者だった阿祖は、いかにして〈龍城幇〉の頭目、龍捲風となり九龍城砦を統べるにいたったのか? その裏には、彼の人生を揺るがす男との出会いと別れがあった――。《九龍城砦》シリーズ第二弾。よしだかおり訳 (早川書房 予価2530円)[amazon] 11月20日刊 トマス・リゴッティ『悪夢工場』 「ホラーの化身」と呼ばれ、ラヴクラフト、ポー、カフカ、ベルンハルト、ナボコフに比する作家の初邦訳単行本。若島正・宮脇孝雄・白石朗訳 (河出書房新社 予価2475円)[amazon] 11月20日刊 エラリー・クイーン『シャム双子の謎 新訳版』 自動車で旅行中、突如発生した山火事に追われたクイーン父子は、山頂近くの一軒家へ逃げこんだ。屋敷の主ゼーヴィア博士には歓待されるが、居合わせた人々は皆いわくありげな様子。そして不安な一夜が明けると、博士は何者かに殺害されていた。遺体の手には半分になったトランプのカード――スペードの6が。猛火が迫りくる極限状況で、エラリーは決死の推理を試みる。〈国名シリーズ〉最大の異色作。中村有希訳 (創元推理文庫 予価1100円)[amazon] 11月20日刊 E・T・A・ホフマン編『クリスマスに捧げるドイツ綺譚集』 ホフマンは友人のコンテッサとフケーを誘い、それぞれ1作ずつ短編を創作し、『子どものメルヘン』として1816年、17年のクリスマスに刊行した。ホフマンの「クルミ割り人形とネズミの王さま」が代表作で、今は翻案のバレエがクリスマスの定番となるほど親しまれている。本書には1、2巻を集約、他に森の精霊に翻弄される話(コンテッサ「別れの宴」)など全6編を収録。遠山明子訳 (創元推理文庫 予価1320円)[amazon] 11月20日刊 スチュアート・ウィルソン『百十三番目の司書見習い』 13歳になった子どもがどの職業の見習いになるかが決まる〈召命の日〉。オリバーを採用したのは図書館の司書だという偏屈そうな老人だった。ところが翌朝出勤したところ、師匠の老司書が発作を起こして死んでしまった。利用者たちは押しかけるし、図書館の本はとんでもない秘密を抱えているし……途方に暮れるオリバーを助けてくれたのは、謎の少女と何匹もの猫だった。見習い司書の奮闘を描く図書館ファンタジイ。児玉敦子訳 (東京創元社 予価3300円)[amazon] 11月20日刊 フェルディナント・フォン・シーラッハ『午後』 元弁護士で作家の「私」は世界各国の都市を訪れ、さまざまな過去を抱える人々と出会う。16年前に弁護したかつての依頼人がマラケシュで語った、当時明かさなかった事故死の真相。ヴェネツィアの邸宅で怪我をした女性が話す衝撃的な身の上話。ベルリンで亡くなった知人の遺言執行者に指名されて知った、彼の唯一の遺産相続人との愛憎半ばする関係。死や罪悪感に翻弄される純粋で奇妙な人々を描く全26話。酒寄進一訳 (東京創元社 予価2090円)[amazon] 11月20日刊 エーリヒ・ケストナー『雪の中の三人男』 ある冬、百万長者のトーブラーは雪山に囲まれたグランドホテルへ出かける。いたずら心から自分は貧乏人に変装し、従者には良い服を着せて。ちょうどその日、懸賞旅行に当選した本物の貧乏青年もやってきて、ホテルでは大いなる勘違いが起こり……。冬のリゾートを舞台に繰り広げられる、ユーモアと風刺の効いた、心温まる物語。小松太郎訳 (中公文庫 予価1100円)[amazon] 11月20日刊 篠田航一『コナン・ドイル伝 ホームズよりも事件を呼ぶ男』 心霊現象と「愛国」に没頭、40歳で突然「軍隊に入る」宣言、「切り裂きジャック事件」の犯人説、世間を騒がせた「妖精事件」、アガサ・クリスティ失踪で勝手に「心霊捜査」、タイタニック号事件をめぐり大論争、政治家を目指して二度落選——「科学」と「非科学」の間で揺れ動きながら名探偵シャーロック・ホームズを生んだ不思議。「名探偵の父」の数奇な人生。 (講談社現代新書 予価1210円)[amazon] 11月21日刊 金承福『本を作るのも楽しいですが、売るのはもっと楽しいです。 韓国の文学を届ける』 本の街・神保町に、韓国の本とちょっとしたカフェ〈チェッコリ〉はある。店主の金さんは1991年に韓国からの留学生として来日し、その後いろいろあって、今では出版社〈クオン〉を経営しながら、本を売ったり作ったり――。日本と韓国文学との架け橋として尽力してきた著者が見つめる、文学の可能性。 (岩波書店 予価2420円)[amazon] ![]() 11月25日刊 ミア・コウト『夢遊の大地』 〈アフリカ文学の愉楽〉内戦下のモザンビーク。老人と記憶を失った少年が戦火を逃れ、どこまでも続く道路を歩いている。焼け焦げたバスの傍らで、彼らは血まみれの死体と殴り書きされた何冊ものノートを見つける。頁に残された男の名はキンヅ。文字の読める少年は老人にノートを読み聞かせはじめ、やがて物語はキンヅの遍歴とパラレルに進んでゆく。過去と現在が溶け合い、記憶と語りが幻想へと変容する。果たして夢遊の大地に翻弄される二人の行き着く先は……。現代アフリカ文学最重要作家ミア・コウトの長篇デビュー作。伊藤秋仁訳 (国書刊行会 予価3080円)[amazon] 11月25日刊 荒俣宏編訳『アメリカ異世界冒険譚 荒俣宏幻想文学翻訳集成 欧米幻想ファンタジー精華3』 アメリカで誕生した心霊現象や幻獣、不可解な人間の無意識な現象にまで及ぶ新感覚の怪異談集。「来たるべき能力」(エドワード・ベラミー)、「血は命なれば」(F・M・クロフォード)、「カリブ海の魔術師」(H・S・ホワイトヘッド)他。 (春陽堂書店 予価6050円)[amazon] 11月25日刊 ジャン・ジャック・ルソー『孤独な散歩者の夢想』 生きていくことの喜びと哀しみ。『マルゼルブ租税法院院長への四通の手紙』も収録。佐々木康之訳 (白水Uブックス/思想の地平線 予価1760円)[amazon] 11月25日刊 ジョージ・オーウェル『新訳 動物農場』 人間に搾取される家畜たちが反乱を起こし、理想社会を目指すも、やがて独裁政治へと変貌する――。人間の欲望と権力闘争を風刺し、全体主義の恐怖を描いた、『1984』に並ぶオーウェルの代表作。田内志文訳 (角川文庫 予価1100円)[amazon] 11月25日刊 レイチェル・ウェルズ『通い猫アルフィーと始まりの家』 ハートフル猫物語シリーズ第9弾。エドガー・ロードに来る前の、仔猫時代のアルフィーに会える最新刊。中西和美訳 (ハーパーBOOKS 予価990円)[amazon] 11月25日刊 B・A・パリス『完璧な家』 結婚した男は、悪魔でした。誰もが羨む理想の家が、牢獄だったら――戦慄サイコ・サスペンス。新装版。富永和子訳 (ハーパーBOOKS 予価1122円)[amazon] 11月25日発売 《ミステリマガジン》1月号 (早川書房)[amazon] ![]() 11月26日刊 ジョルジュ・シムノン『故ギャレ氏 リバティ・バー』 〈ルリユール叢書〉作家シムノンが生涯を通じて書き続けたメグレ警視シリーズの最初期の傑作2篇を合本。早晩、結実する〈硬い小説(ロマン・デュ―ル)〉を彷彿とさせる舞台で、偏見持ちで情の深いメグレ警視ならではの人間観察が冴える、じっくり味読したい探偵小説が新訳で復活。中村佳子訳 (幻戯書房 予価3520円)[amazon] 11月26日刊 マーク・スティーヴン『スプラッター映画と資本主義 血しぶきホラーの政治経済学』 人体が暴力的に引き裂かれ、ズタズタにされ、切り刻まれ、切り裂かれ、バラバラにされ、溶かされ、変質し、液体として飛び散り、怪物のような忌まわしい形態に変化するとき…。私たちを魅了し続けているその表現の裏側にある資本主義という大きな潮流に目を向ける。誰もが直面しているホラーのような日常をサバイブするための理論的・実践的な知のガイド。風間賢二訳 (青土社 予価3300円)[amazon] 11月26日刊 チャイナ・ミエヴィル/キアヌ・リーヴス『再誕の書』 殺戮の運命に呪われた不死者ウヌテは、あらゆる時代を彷徨い、死を求める。異端SF作家と世界的俳優の共著による、暗黒幻想奇譚。安野玲・内田昌之訳 (河出書房新社 予価4840円)[amazon] 11月26日刊 二コラ・メラ『歴史のなかの奇妙な仕事』 吸血鬼ハンター、目覚まし屋、サイコロ飲み……古代ローマから近代までの今はなき危険で珍奇な仕事の数々を紹介。生と死、職業と人類の進化、当時の社会背景が仕事から浮かび上がる。寺井杏里訳 (原書房 予価2970円)[amazon] 11月26日刊 キャリー・ハート『クイックシルバー 異邦の錬金術師と妖精王子 上・下』 女王の怒りを買い処刑寸前のセアリスは、異世界への鍵を握る金属〈クイックシルバー〉を目覚めさせ、妖精王の息子に命を救われる。やがて彼女は、希少な金属を操る錬金術師として、妖精とヴァンパイアが覇権を争う戦乱と、危険な恋に身を投じることとなる――。田辺千幸訳 (早川書房 予価各3190円)[amazon上・下] 11月26日刊 平井敏晴『中華と綺想 東アジアのマニエリスム精神史』 広義のマニエリスムをベースに、「過剰・多義的・異種混合(アルス・コンビナトリア)」が、東アジアの芸術・文化・建築様式にひとつの精神史として通底していることを読み解いていく。 (工作舎 予価3300円)[amazon] ![]() 11月26日刊 グアダルーペ・ネッテル『一人娘』 私とアリナは親友で、20代の頃「子どもは産まない」と誓い合った仲だった。その意志を貫く私とは反対に、アリナは結婚して子供を身ごもる。一方、私はアパートの隣に暮らす母子家庭の男の子と交流を深めるが、男の子は感情を制御することが苦手で、衝動的な暴力を母親にぶつけがち。やがてアリナの子イネスが生まれるが……。メキシコの新星ネッテルの国際ブッカー賞最終候補作。宇野和美訳 (現代書館 予価3080円)[amazon] 11月26日予定 田中孝信『世紀末イースト・エンドとスラム小説』(仮) 世紀末ロンドンの貧民街「イースト・エンド」を舞台にした「スラム小説」を、当時の社会背景と絡めて分析する初の研究書。 (彩流社 予価3520円)[amazon] 11月27日刊 『別冊太陽 子どもの昭和史 科学と怪奇の空想大全』別冊太陽編集部編 憧れの未来や、夜も眠れぬ怪奇を紹介し、子どもたちの奔放な想像力を養った少年誌の数々。その中から名挿絵・口絵を厳選して紹介。昭和に置き忘れた、夢見る力を取り戻す。 (平凡社 予価2750円)[amazon] 11月27日刊 朝宮運河『日本ホラー小説史 怪談、オカルト、モキュメンタリー』 1970年代のオカルトブーム、80年代のホラー映画ブームと共鳴しつつ広がった日本のホラー小説。戦後の江戸川乱歩の影響から現在のモキュメンタリー人気に至るまでその歴史を語る。 (平凡社新書 予価1100円)[amazon] 11月27日刊 八條忠基『呪術と科学の有職故実図鑑』 平安時代の呪術は当時の最新科学でもあり、また天文道や医術とともに生活の中に深く根づいていた。宗教と呪術、科学の関係、歴史的背景を豊富なヴィジュアルとともに概説する。 (平凡社 予価3850円)[amazon] 11月27日刊 マリーナ・パレイ『カビリア』 〈ロシア語文学のミノタウロスたち〉荒々しくも繊細に紡がれる悲哀と強かさ。ソ連崩壊前夜に新たな小説ジャンルを切り拓いた女性作家の初期三部作。体液や肉をもって描かれる、新しい「テクスト・ペテルブルク」。高柳聡子訳 (白水社 予価3410円)[amazon] 11月27日刊 グレゴリー・ヒスチャク/エドワード・ゴーリー公益信託『EはエドワードのE ゴーリー大解剖』 エドワード・ゴーリー生誕100年記念出版。不幸な子供たち、架空の動物、殺人ミステリー、ノンセンス。多彩な図版で読み解くそのゴシック世界の秘密。柴田元幸監訳 (河出書房新社 予価16,500円)[amazon] 11月27日刊 クリスティアン・クラハト『死者たち』(仮) 1930年代初頭。ハリウッドに勝利すべく始まった日独合作のホラー映画撮影は、やがて不気味な熱を帯び──。衝撃の歴史改変小説。髙田梓訳 (河出書房新社 予価2640円)[amazon] 11月27日刊 ケイトリン・R・キアナン『溺れる少女』 絵画「溺れる少女」に瓜二つの女性に魅入られた主人公は、精神に異常をきたす。信頼できない語り手の傑作サイコロジカル・ホラー。鯨井久志訳 (河出書房新社 予価3630円)[amazon] 11月27日刊 フィリップ・マティザック『失われた古代都市 歴史に刻まれた過去の記憶』(仮) 戦乱、災害、気候変動など、さまざま理由で破壊され、放棄され、荒れ果てて廃墟となり、忘却の彼方に消えた古代都市の歴史を追う。安原和見訳 (河出書房新社 予価4290円)[amazon] 11月27日刊 イーディス・ウォートン『幽霊 新装版』 アメリカを代表する女性作家イーディス・ウォートンによる、すべての「幽霊を感じる人」のための、珠玉のゴースト・ストーリーズ。静謐で優美な、そして恐怖を湛えた極上の世界。薗田美和子・山田晴子訳 (作品社 予価2970円)[amazon] ![]() 11月28日刊 ジャドスン・フィリップス『終止符には早すぎる』 大都会ニューヨークの夜。いままさにアパートメントビルのテラスから飛び降りようとしている若い娘が一人。警察官や近親者の説得にもかかわらず、彼女の決意は固かった。誰もが固唾をのみ見守るなか、殺人事件の容疑者で逃亡中の富豪投資家が現れ、彼女に一歩近づいていくが……。植草甚一が『雨降りだからミステリーでも勉強しよう』で絶賛したNYミステリーの隠れた名作。矢口誠訳 (新潮文庫 予価825円)[amazon] ![]() 11月28日刊 ジェス・ロウリー『怪物の森 未解決事件捜査官ヴァン・リード』 生き埋めにされたばかりの死体が発見された。被害者は1980年ミネソタの森で失踪した少女の一人と判明、地元に激震が走る。未解決事件捜査官のヴァンは、カルト的小集団で育った自身の心の傷を抱えつつ、辣腕科学捜査官ハリーとチームを組み事件に挑む。少女は誰に連れ去られ、なぜ今になって殺されたのか。次々アリバイが崩れる関係者たちの真実は? 北綾子訳 (新潮文庫 予価1210円)[amazon] ![]() 11月28日刊 ポール・オースター『サンセット・パーク』 恋人をフロリダに残し、ブルックリンへと逃亡したマイルズ。彼を待っていたのは、一軒の廃屋と将来への不安を抱えた三人の仲間だった。気のいいドラマーのビング、画家志望のエレン、博士論文執筆中のアリス。景気が後退の一途を辿る中、不確かな未来へ踏み出そうとした彼らに突き付けられた無慈悲で甘くない現実とは……。失うものの方が多い世界で、まだ見ぬ明日を願った若者たちの物語。柴田元幸訳 (新潮文庫 予価990円)[amazon] 11月28日刊 マーティン・ヒューイット『ヴィクトリア朝』 イギリス史においてもっとも重要で、日本でも人気の「ヴィクトリア朝」について世界的権威が簡潔に描くイギリス文化入門。田中裕介訳 (白水社 予価2640円)[amazon] 11月28日刊 エル・コシマノ『サスペンス作家が殺し屋を特定するには』 作家フィンレイは窮地に陥っていた。ロシアン・マフィアからEasyCleanという殺し屋の正体を特定しろと脅されているのだ。期限は2週間。殺し屋の正体は警官だとしかつかめておらず、フィンレイは手がかりを得るために、市民向け警察学校体験入学に参加する。殺し屋を見つけなければ、自分や家族の命が危険に! 命がけの任務に挑む作家探偵のジェットコースター・サスペンス。辻早苗訳 (創元推理文庫 予価1870円)[amazon] 11月28日刊 福井健太編『横丁の名探偵 犯人当て小説傑作選』 ミステリ作家たちが読者と頭脳戦を繰り広げる犯人当て小説。“読者への挑戦”ものを中心に精選し、全3巻のアンソロジーに集成。第2巻には、長屋のご隠居が掛軸泥棒を見抜く仁木悦子「横丁の名探偵」、遺産相続人の真偽調査が殺人事件に発展する巽昌章「埋もれた悪意」、犯人当て短篇を作中に挟んだ今邑彩「時鐘(とけい)館の殺人」など全7篇。 (創元推理文庫 予価990円)[amazon] 11月28日刊 ケレン・ブランクフェルド『アウシュヴィッツの恋人たち』 23歳で強制収容所に移送されたツィッピ。グラフィックデザインの腕を見こまれ事務職に就き、さまざまな手段で大勢の収容者の命を救う。16歳のダヴィド。家族を殺害され、同じ収容所に到着した彼は、音楽の才を活かして生き延びる。初めて会った瞬間からふたりは恋に落ち、命がけの逢瀬を重ねる。解放後、ツィッピは再会を約した地に向かうが――。アウシュヴィッツで出会ったふたりの70年の軌跡を描くノンフィクション。杉田七重訳 (東京創元社 予価3850円)[amazon] 11月29日刊 チョン・ボラ『呪いのウサギ』 関谷敦子訳 (竹書房文庫 予価1540円)[amazon] 11月刊 イ・ジェニ『夜明けと音楽』 なくなったものの痕跡をたどり、孤独とともに創作する詩人イ・ジェニが綴るエッセイ集。ある夜明けには涙のようにあふれる音楽について語り、またある夜明けには悲しみに満ちたプレイリストを思い出しながら詩を読む。旅先で遭った不慮の事故、不眠症に悩まされたこと、音楽に心酔していた二十代の頃。孤独とともに創作する詩人が、母の最期に立ち会い、イヨネスコやボードレールらの足跡をたどり生まれた、詩と散文の境界を行き来する言葉の記録。橋本智保訳 (書肆侃侃房 予価2420円)[amazon] 11月予定 アルノ・シュミット『レヴィアータン』 〈アルノ・シュミット・コレクション〉幻の地を求めて灼熱の砂漠を突き進む男、半世紀ものあいだ脱獄を企む老探検家、馬鹿げた戦争から逃れようとする兵士、遭難した島で何者かに怯える若者……書き綴ることに囚われた人たちの生き様を描いた短編集。時代に先駆けた実験精神で既存の文学史を徹底的に再編し、戦後ドイツ文学の源流ともなった鬼才の、いまだ知られざる作品群を紹介する第2弾。窪俊一訳 (水声社 予価2200円) 11月予定 オノレ・ド・バルザック『《人間喜劇》第1巻 〈風俗研究〉「私生活情景*」』 未完を含め長短百を超える小説を収めたバルザック《人間喜劇》、本邦初の全巻邦訳の試み。その壮大な意図は、作者の構想に従う配列での刊行によって初めて明らかになるだろう。全巻内容 【1巻 収録内容】総序/子供たち/女子寄宿学校/学校の内側/鞠打つ猫の店/ソーの舞踏会/二人の若妻の手記/財布/モデスト・ミニョン (水声社 予価9900円) ▼12月刊以降予定 ![]() 12月1日刊 杉本一文『公式 角川文庫横溝正史カバー画集』 1971年の『八つ墓村』第2版から、角川文庫の横溝正史作品のカバー装画を手掛ける杉本一文。『犬神家の一族』『八つ墓村』『本陣殺人事件』『獄門島』『悪魔の手毬唄』『悪魔が来りて笛を吹く』など120点以上収録。あの傑作たちは、これらの装画と共にあった。バージョン違いのカバー画を多数掲載、杉本のロングインタビュー、横溝正史装画年譜も収録した豪華画集。内容 (KADOKAWA 予価8250円)[amazon] 12月1日刊 ベン・ラーナー『10:04』 《ニューヨーク・タイムズ》紙が選ぶ21世紀のベスト100冊に選出された、「新しい古典」とも呼びうるベン・ラーナーの飛躍作。木原善彦訳 (白水Uブックス 予価2530円)[amazon] 12月1日刊 スティーヴン・ミルハウザー『高校のカフカ、一九五九年』 内気な高校生カフカの思春期の情景を描く表題作、梯子を天高く伸ばす熱に浮かされる町を描く一篇など、職人技が光る不可思議な9篇。柴田元幸訳 (白水社 予価2750円)[amazon] 12月1日刊 カルダー・ウォルトン『スパイたちの百年戦争 東西の熾烈な諜報活動 上』 ロシア革命から第二次大戦、冷戦、ソ連崩壊、新冷戦、ウクライナ戦争、ロシア・中国の策謀まで逸話満載、「陰の戦争」の攻防を追う。学術性と物語性を兼ね備えた諜報史の決定版。松島芳彦訳 (白水社 予価4180円)[amazon] 12月2日刊 ウィリアム・ケント・クルーガー『真実の眠る川』 50年代、アメリカの田舎町。地主の死体が川中で発見され、第二次大戦帰還兵の保安官ブロディの捜査で、日本人の妻を持つノアが容疑者として浮かぶ。弁護士チャーリーは住人たちの過去を調べるが……。エドガー賞ほか四冠に輝いた『ありふれた祈り』著者の新作。宇佐川晶子訳 (ハヤカワ・ミステリ 予価3520円)[amazon] 12月2日刊 パーシヴァル・エヴェレット『赤く染まる木々』 2019年、ミシシッピ州で白人男性の遺体が発見された。傍らには70年前に惨殺された黒人少年エメット・ティルに酷似した遺体が。やがて同様の事件が全米で連鎖する。過去への報復か、新たな反乱の幕開けか。アメリカの黒人リンチの歴史に迫る文芸ミステリ。上野元美訳 (早川書房 予価3960円)[amazon] 12月3日刊 フリーダ・マクファデン『ハウスメイド2 秘密の代償』 寝室には入るな――ギャリック家の主人に忠告されたハウスメイドのミリー。彼女は寝室から女性の嗚咽が聞こえることに気づき……。高橋知子訳 (ハヤカワ・ミステリ文庫 予価1364円)[amazon] 12月3日刊 ウィリアム・ギブスン『モナリザ・オーヴァドライヴ 新版』 『ニューロマンサー』『カウント・ゼロ』のメインキャラクターが再登場し、電脳空間のヴィジョンを超駆動させる、シリーズ完結篇。黒丸尚訳 (ハヤカワ文庫SF 予価2310円)[amazon] 12月3日予定 イーディス・ウォートン『歓楽の家』 ニューヨーク上流社会の人間模様を描いたイーディス・ウォートン初期の傑作。1995年刊の共訳を新たに一人で訳し直し再刊。山口ヨシ子訳 (彩流社 予価3850円)[amazon] 12月刊 『このミステリーがすごい! 2026年版』 (宝島社)[amazon] ![]() 12月8日刊 小泉八雲『チータ・ユーマ ラフカディオ・ハーン全小説』 ラフカディオ・ハーン=小泉八雲が来日前にアメリカで発表した小説「チータ」「ユーマ」の2編を収録。ハーンは小説が高く評価され、日本に派遣されることになった。平川祐弘訳 (河出文庫 予価1100円)[amazon] 12月8日刊 ローラ・チャイルズ『ブレンド・ティーは死を占う』 映画撮影中に監督が感電死。茶葉占い師役に抜擢されたセオドシアもまた、事件に巻き込まれてしまう。映画委員会の大物も次の犠牲となり、親友に容疑が。紅茶占いの不吉な予兆を頼りに、華やかな銀幕の裏に隠された真実へ挑む。東野さやか訳 (原書房/コージ―ブックス 予価1540円)[amazon] 12月12日刊 『2026本格ミステリ・ベスト10』探偵小説研究会編 気鋭の台頭がジャンルを焦がす! 今年も見逃せない濃密ランキングをはじめ、特集は「特殊設定ミステリ100」、インタビューはもちろんあの話題作。映像、コミックからゲーム、演劇方面まで、「本格の呼吸」を網羅した必携版。 (原書房 1210円)[amazon] 12月12日刊 『原典訳 マハーバーラタ 2』 ドゥルヨーダナの謀殺から逃れたパーンダヴァ五王子。ビーマは羅刹の娘との間に息子をもうけ、婿選式に参加したアルジュナはパンチャーラ国の王女ドラウパディーを勝ち取る。無事クル王国に帰還を果たしたユディシティラは皇帝即位式を挙行する。彼らの繁栄ぶりを妬むドゥルヨーダナは、叔父のシャクニと謀り、ユディシティラをいかさま賭博に誘う。賭博に負け13年の国外追放となった五王子は、復讐の誓いを胸に放浪の旅へ出立する。上村勝彦訳 (法蔵館文庫 予価1980円)[amazon] ![]() 12月刊 ジェイン・オースティン『ノーサンガー・アビー』 ゴシック小説に夢中な17歳のキャサリンは、社交界デビューした舞踏会で、魅力的なティルニー氏と知り合う。 彼の自宅に招かれて行ってみると、そこは小説に登場するような古い僧院だった! 夢見がちな女子の成長・恋愛小説。唐戸信嘉訳 (光文社古典新訳文庫)[amazon] ![]() 12月刊 曲亭馬琴『椿説弓張月5』 葛飾北斎 画/菱岡憲司 現代語訳 (光文社古典新訳文庫)[amazon] 12月発売 《紙魚の手帖》vol.26 阿部智里、越谷オサム、櫻部由美子、澤田瞳子で贈る、読切特集「猫」。桜庭一樹、新連載スタートほか。 (東京創元社)[amazon] ![]() 12月刊 莫言『赤い高粱 下』 井口晃訳 (岩波文庫)[amazon] ![]() 12月刊 スーザン・ソンタグ『隠喩としての病い・エイズとその隠喩』 富山太佳夫訳 (岩波文庫)[amazon] ![]() 12月刊 ヤーコプ・ヴァッサーマン『カスパー・ハウザー あるいは怠惰な心』 酒寄進一訳 (岩波文庫)[amazon] 12月16日刊 アンソニー・ドーア『天空の都の物語』 陥落を前にしたコンスタンティノープル、現代アメリカの図書館、未来の宇宙船。異なる時空を生きる人々が古代ギリシャの物語により繋がっていく。どの時代も避けられぬ絶望の中で物語は希望を灯し――。『すべての見えない光』作者が語り継ぐ力を讃えるサーガ。藤井光訳 (早川書房 予価4950円)[amazon] 12月16日刊 余兒『九龍城砦外伝 信一伝 特装版』 〈青天會〉が瓦解し、香港黒社会で龍捲風率いる〈龍城幫〉の脅威はいなくなった。だがある日突然悲劇が訪れ、龍捲風は親友にかわりその甥・信一を育てることを決意する。信一と龍捲風のかつての日々を描くシリーズ外伝を函入り・特典盛りだくさんの特装版で。光吉さくら/ワン・チャイ訳 (早川書房 予価5830円)[amazon] 12月16日刊 筒井康隆『筒井康隆エッセイ集成2 記憶の断片』 昭和期に発表された筒井康隆によるエッセイの数々を、名アンソロジスト日下三蔵の編集で集成する豪華企画の第2巻。会社員時代の回想から、神戸のこと、社会時評まで、エッセイの名手が自由自在に語りつくす。ここでしか読めないファン垂涎の一冊。日下三蔵編 (早川書房 予価3850円)[amazon] 12月17日刊 マーク・グリーニー『暗殺者の奪還 上・下』 極寒の強制収容所に捕らわれたゾーヤを救うため、グレイマンはロシア入国を目指し、脅迫や賄賂、殺人などあらゆる手を尽くすが……。伏見威蕃訳 (ハヤカワ文庫NV 予価各1540円)[amazon上・下] ![]() 12月18日刊 若林踏『日本ミステリ新世紀MAP 現代ミステリ25年の歩みと31人の作家たち』 2000年~2025年の日本ミステリの潮流を社会の変化と共に描く。ブックガイドとしても楽しめ、資料も充実。 (実業之日本社 予価2530円)[amazon] 12月23日刊 ハン・ガン『光と糸』 2024年にノーベル文学賞受賞後に韓国で刊行された初の単行本。命と光をめぐる祈りのメッセージ。斎藤真理子訳 (河出書房新社 予価2200円)[amazon] 12月24日刊 アンドレイ・プラトーノフ『プラトーノフ・コレクション I エーテル軌道 1920‒1931』 カフカ、ベケットと並び20世紀を代表する幻のロシア作家の全貌がついに明らかに――代表的な中篇・短篇・評論・童話・戯曲を網羅した待望の著作コレクション全2巻。「ヤムスカーヤ町」「月探査」「エーテル軌道」「電化」「エピファニの水門」他。工藤順・古川哲編 (作品社 予価5940円)[amazon] ![]() 12月25日予定 ウンベルト・エーコ『薔薇の名前 完全版 上・下』 北イタリアの僧院で起きた『ヨハネの黙示録』に従った連続殺人。すべての秘密は迷宮構造を持つ文書館にあるらしい。バスカヴィルのウィリアム修道士が事件の影には一冊の書物の存在があることを探り出したが……。刊行後、折々に加えられた訂正や削除……執筆にあたり、エーコ自身が描いた登場人物のスケッチ、文書館の図面、そして覚書を加えた完全版。河島英昭・河島思朗訳 (東京創元社 予価3300円/3520円)[amazon上・下] ![]() 12月25日刊 タビサ・スタンモア『中世ヨーロッパの魔術師』 中世ヨーロッパでは魔術は日常の一部であり、王も騎士も聖職者までがそれに頼っていた。魔術を通して当時のリアルな生活を描く。ダコスタ吉村花子訳 (河出書房新社 予価3850円)[amazon] ![]() 12月26日予定 ソール・ベロー『ソール・ベロー傑作短篇集』 生き生きした《笑い》と、いっぷう変わったユーモア、タッチの軽妙さで人間を描くノーベル文学賞作家ソール・ベローは、優れた肖像画家である。世俗的で宗教的な問いを読者に投げかける全10篇。「セント・ローレンス川のほとりで」「銀の皿」「遠い親類たち」「ゼットランド」「足を口にくわえた彼」「覚えていてほしいこと」の6篇は本邦初訳。鈴木元子監訳 内容 (小鳥遊書房 予価3570円)[amazon] 12月29日予定 イーデン・ロビンソン『モンキービーチ』(仮) カナダ先住民女性作家によるマジックリアリズム小説。北村みちよ訳 (彩流社 予価3850円)[amazon] ![]() 12月刊 アントニイ・バークリー『毒入りチョコレート事件 新訳版』 ある夫妻が譲り受けたひと箱のチョコレート。夫妻はともにそれを食べ、夫は一命をとりとめたが、妻は死亡した。中に毒が仕込まれていたのだ。迷宮入り寸前の事件に興味を抱いたロジャー・シェリンガムと、彼が創設した〈犯罪研究会〉の面々は、それぞれが探偵として事件を調査し、ひと晩にひとり、推理を披露することに――。謎のチョコレートをめぐる究極の推理合戦。ミステリ史に燦然と輝く傑作、著者序文を追加収録した新訳決定版。藤村裕美訳 (創元推理文庫)[amazon] ![]() 12月刊 小鷹信光『パパイラスの舟 海外ミステリ随想』 夫婦探偵小説のパターン分類、フランスのセリノワールから発見したジム・トンプスン、エドガー短編賞受賞作研究、書誌をめぐるジョン・D・マクドナルドとファンの交流、ロス・マクドナルドとリュウ・アーチャーの歪な関係、ハードボイルドにおける“英雄”の死――アメリカ探偵小説の大海を知的好奇心の赴くまま縦横無尽した航海記録。日本におけるアメリカ探偵小説受容に絶大な影響を与えた伝説的名著、初刊から五十年目にして初の文庫化。 (創元推理文庫)[amazon] ![]() 12月刊 マウリツィオ・デ・ジョバンニ『対立 P分署捜査班』 早朝、実直なパン屋の主人が撃たれて殺された。現場に急行したロヤコーノ警部たちだが、検察庁マフィア対策班の横槍がはいる。被害者は対マフィア一家裁判の重要証人だったため、口封じされたと確信しているのだ。だが、現場の状況からロヤコーノはマフィアの犯行ではないと推理する。捜査方針で真っ向から対立したP分署の刑事たちは、署の存続を賭けて事件に挑むことに――〈21世紀の87分署〉イタリアの警察小説シリーズ。直良和美訳 (創元推理文庫)[amazon] ![]() 12月刊 アンデシュ・デ・ラ・モッツ&モンス・ニルソン『死が内覧にやってくる』 スウェーデン南部の田舎町で、不動産開発を目論んでいた不動産ブローカーでテレビタレントの女性が死亡した。反対する地元住民を懐柔するために購入した彫刻の上に転落したのだ。事故か、はたまた殺人か。事件を担当するのは、病気療養のために現地に滞在していたストックホルムの敏腕捜査官と、地元警察署の駆け出し女性刑事。久山葉子訳 (創元推理文庫)[amazon] ![]() 12月刊 C・J・ボックス『群狼』 猟区管理官ジョー・ピケットは、隣の地区の猟区管理官から、ドローンがシカの群れを追い立てている件で協力を要請される。情報を集めるうち、ドローンの所有者が2年前に東部から来た男で、ジョーの三女のボーイフレンドの父親らしいとわかるが、なぜか捜査にFBIが絡んでくる。一方、鷹匠のネイトは銃のケースを持つ男女を目撃し、不穏な予感を抱くが……。ジョー・ピケットVS.冷酷非情な暗殺者チーム。大人気冒険サスペンス。野口百合子訳 (創元推理文庫)[amazon] ![]() 12月刊 ダイアナ・ウィン・ジョーンズ『わたしが幽霊だった時 新装版』 歩きながら(事故だわ!)ふいにそう思った。事故にあったって思うんだけど、頭がぼやけてて何も思い出せない。下を見たら体がない! 生垣を通り抜け、ドアを通り抜けて家のなかに入った。宙に浮きながら。部屋じゃ、だいっ嫌いな姉さんや妹たちが相変わらずのけんか。誰もあたしのこと気づかない。あたし、幽霊になっちゃったんだ……でも、なぜ? ほろ苦く暖かい、時空を超えたファンタジイ。浅羽莢子訳 (創元推理文庫)[amazon] ![]() 12月刊 シヴォーン・ダウド/エマ・ショード絵『崖の上のヒバリたち』 ジムは、両親や親族とトレーラーで集団移動しながら暮らす〈パヴィー〉の少年。アイルランドの小さな町で、定住者である〈バッファー〉の学校に通いはじめるが、偏見や差別、不良たちからの暴力に苦しむ。そんな中、周囲から浮いているバッファーの少女、キットと親しくなるが、ジムの病弱の従弟が不良たちに襲われる事件が起きて――。『ロンドン・アイの謎』の著者の繊細な一編に、気鋭の版画家が挿絵をつけた忘れがたい物語。宮坂宏美訳 (東京創元社)[amazon] |