注目の近刊

5月1日刊
ギュンター・グラス『猫と鼠』
第二次世界大戦の暗い影を落とす、バルト海に面した港町で暮らす少年たちの生き生きとしつつも、ちょっといびつな日常の物語。主人公と友人のマールケたちは沈没したポーランドの掃海艇に潜り、いろいろなものを引き上げてくる日々を送っていたが、やがて軍隊に加わり、戦争に関わっていくことに。戦後ドイツを代表する作家グラスの「ダンツィヒ三部作」の第二作。高本研一訳
(あいんしゅりっと 予価2640円)[amazon]

5月7日刊
ザフラーン・アルカースィミー『水脈を聴く男』
井戸で発見された溺死体のお腹から取り出された胎児。彼には大地の「水脈を聴く」能力が宿っていた。水源を探し当て、村を旱魃から救った少年の評判は遠方まで轟き、「水追い師」として各地で引く手あまたになるが──。アラブ小説国際賞受賞作。山本薫/マイサラ・アフィーフィー訳
(書肆侃侃房 予価2200円)[amazon]

5月8日刊
フェリックス・フランシス『覚悟』
引退した調査員シッド・ハレーに持ち込まれた不正レース疑惑。直後に変死を遂げた依頼主の意志を継ぎ、シッドは卑劣な敵の潜む闇に。加賀山卓朗訳
(文春文庫 予価1760円)[amazon]

5月8日刊
ジャッキー・フレミング『問題だらけの女性たち』
女の脳は小さい? 女が考えると生殖器がダメになる!? 笑うに笑えない19世紀ヴィクトリア朝の「大問題」な女性観を、痛快なユーモアと皮肉で描いたイギリス発傑作風刺絵本。松田青子訳
(河出文庫 予価990円)[amazon]

5月8日刊
大泉黒石『黄夫人の手
 黒石怪奇物語集

大正文壇の寵児にして、追放され忘れ去られた異端の国際的無頼派作家、大泉黒石。死んだ女の手が怪事件を引き起こす「黄夫人の手」ほか、黒石怪奇小説の傑作・主要作8篇を精選。新装復刊。
(河出文庫 予価990円)[amazon]

5月8日刊
鹿島茂『フランスのモダン・グラフィック 鹿島茂コレクション
鹿島茂が集大成と銘打つ稀書コレクション。20世紀前半フランスのモダン・グラフィックの様相を充実のビジュアル資料でたどる。群馬県立館林美術館《鹿島茂コレクション フランスのモダングラフィック展》(4/26~)公式図録。
(平凡社 予価3740円)[amazon]

5月9日刊
エイミー・チュア『獄門橋』
1944年、カリフォルニア。刑事サリバンは、大統領候補ウォルターが暗殺された事件を追いかけていた。やがて、同じホテルで10年前に少女が不審な死を遂げていたと知る。サリバンは、政治的圧力を受けながらも名家の影に隠された衝撃の真相を突き止めるが……。吉野弘人訳
(ハヤカワ・ミステリ 予価3410円)[amazon]

5月9日刊
セレステ・イング『密やかな炎
リチャードソン家の邸宅が燃えた。厳しい母エレナが管理する、完璧に見える家庭だった。エレナの唯一の悩みは、末娘の問題児イジー。でも、今は姿を消していた。一家の貸家に住んでいたミアとパール母娘もいなくなっていた。だれが、なぜ火をつけたのか? 秘密を抱える二つの家族が、焼け跡で見つけた真実とは? 井上里訳
(早川書房 予価2750円)[amazon]

5月9日予定?
ジョン・ル・カレ『終生の友として 上・下
ヴェトナム戦争からプラハの春、ベルリンの壁崩壊と冷戦の終結、そしてイラク戦争へ……。世界に翻弄された2人のスパイの物語。加賀山卓朗訳
(ハヤカワ文庫NV 予価各1870円)[amazon]

5月9日刊
イーダ・トゥルペイネン『極北の海獣』
18世紀ロシア、19世紀アラスカ、現代フィンランド……絶滅した海獣ステラーカイギュウを巡り3つの時代に生きた人々が、時空を超え繋がる。史実に基づいた息を呑む冒険譚。古市真由美訳
(河出書房新社 予価2970円)[amazon]

5月10日刊

野崎歓『翻訳はおわらない』

AI 翻訳なんか怖くない!(ただし、当分のあいだは……)フランス文学の名翻訳者が、言語と思考の連環について考えた軽妙なエッセー。
(ちくま文庫 予価1100円)[amazon]

5月10日刊
加藤幹郎『映画 視線のポリティクス 古典的ハリウッド映画の戦い
スタジオ・システム、監督と撮影所の対立、自主検閲組織など。様々な力学が働く中での映画の生成過程に実証的に迫った画期的書物。
(ちくま学芸文庫 予価1210円)[amazon]

5月12日刊
アシュリー・ウィーヴァー『金庫破りの謎解き旅行』
金庫破りのエリーは、ラムゼイ少佐から国家の極秘任務として北部のサンダーランドへ行くよう指示される。翌日現地に到着したエリーは、何者かによってトラックに轢かれかけ、親切な男性に助けられるが、下宿屋に入った直後、その男性が前の道路で倒れて死んでしまう。この不審な死は偶然? 第二次大戦下のイギリスを舞台に、凄腕の女性金庫破りと堅物の青年少佐の謎解きを描く人気シリーズ最新刊。辻早苗訳
(創元推理文庫 予価1430円)[amazon]

5月12日刊
アレックス・ホワイト『超機動音響兵器ヴァンガード』
27世紀、人類は滅亡の危機に瀕していた。謎の巨大人型ロボット・ヴァンガードにより、太陽系統合防衛軍は壊滅。ついに地球に降り立ったヴァンガードを前に、ジャズピアニストのガスはロックスターのアーデントと人生最後のジャムセッションを敢行する。するとその音楽が別のヴァンガードと響きあい、ガスはヴァンガードの搭乗者として取りこまれる。人類を救うための戦いがはじまる。金子浩訳
(創元SF文庫 予価1760円)[amazon]

5月12日刊
フローレンス・パリー・ハイド/エドワード・ゴーリー『ツリーホーンのねがいごと』
今日はツリーホーンの誕生日、おかあさんとおとうさんは忙しそうだけど、ちゃんとプレゼントはもらえるかな? 裏庭の地面の穴で見つけた古いつぼのせんを抜いたら、けむりといっしょに男の人があらわれた。これっておかあさんが待っているガスの検針員さん? それとも精霊? ためしにツリーホーンはねがいをかけてみることにした。ジンならかなえてくれるはず。エドワード・ゴーリーのイラスト30点。ナンセンスでとぼけた物語。三辺律子訳
(東京創元社 予価1980円)[amazon]

5月12日刊
ヨシフ・ブロツキー『レス・ザン・ワン 詩について 詩人について 自分について
20世紀後半最大のロシア詩人、ノーベル文学賞受賞者ヨシフ・ブロツキーの神髄を示すエッセイ集。詩の魅力と可能性を存分に語り、精緻で深遠な詩の分析を行ない、同郷のアフマートワ、ツヴェターエワ、マンデリシュタームへの思いを綴り、幼年期から1972年に国外追放されるまでのソ連時代の生活を描く。格調高く瑞々しい17篇。加藤光也・沼野充義・斉藤毅・前田和泉・工藤順訳
(みすず書房 予価7150円)[amazon]

5月13日刊
モーリス・ルブラン『三十棺桶島』
悪名高い伯爵と結婚した末に、幼い息子と実父を一度に失う悲劇に見舞われたヴェロニク。14年後、彼女は悲しみを忘れるべく遠くの町で働き成功していたが、偶然見た映画の一場面で、見知らぬ土地の小屋に自分のサインが刻まれていることに気づく。探偵の情報をもとにその小屋に行ってみると、中には男性の遺体が!  それは新たな惨劇の始まりに過ぎなかった。不吉な伝承と企みに満ちた島を舞台とした、怪盗ルパン・シリーズの傑作。中条省平訳
(光文社古典新訳文庫 予価1980円)[amazon]

5月13日刊
ケネス・グレアム『楽しい川辺』
純朴なモグラと人生経験豊かな川ネズミの冒険、カワウソやアナグマさんとの交流、そして後先考えずに行動するヒキガエルが巻き起こす騒動の行方は? 美しい英国の田園を舞台とした動物物語。 ジョン・バーニンガムの挿絵収録。麻生九美訳
(光文社古典新訳文庫 予価1650円)[amazon]

5月13日刊
呉明益『海風クラブ』

白い犬の後を追いかけてきたタロコ族の少年と、父親から逃げてきた少女。山の深い洞穴で二人は出会う。少年が少女の村に、少女が少年の村へ入れ替わり出ていくのを、巨人は見つめていた。山は巨人の体であった。人々に忘れ去られた最後の巨人ダナマイの言葉を解すのは、傷を負った動物たち。時を経て再会する二人を軸に、様々な過去を背負う人々を抱えて物語は動き出す。現代台湾文学を牽引する著者最新作。三浦裕子訳
(KADOKAWA 予価3080円)[amazon]

5月15日刊
カミラ・グルドーヴァ『人形のアルファベット』
注目の作家による、シャーリイ・ジャクスン賞受賞作「ワクシー」を含む中毒不可避の短編集。上田麻由子訳
(河出書房新社 予価2420円)[amazon]

5月15日刊
ジョルジュ・デュメジル『神々の構造 印欧語族三区分イデオロギー

比較神話学・言語学の巨星デュメジルが、自身の「三区分イデオロギー」――印欧語族は世界を「聖性/戦闘性/豊饒性」の三要素からなるものとしてとらえ、かつそれぞれの機能に対応する神々を奉じていた――のエッセンスをまとめた、コンパクトかつダイナミックな神話学入門。松村一男訳
(講談社学術文庫 予価1320円)[amazon]


5月16日刊

アンドレア・アヴレウ『
両膝を怪我したわたしの聖女』

決壊する文体――圧倒的な感情がほとばしり、膨れ上がり自壊する言葉の群れが未熟な欲望を覆い尽くす。10歳の少女らを閉じ込めるひどく退屈な夏休み、早熟なふたりの過激で破滅的な友情。スペイン最南カナリア諸島発、世界18カ国語に翻訳の問題作。村岡直子・五十嵐絢音訳
(国書刊行会 予価3190円)[amazon]

5月17日刊

ガストン・バシュラール『科学認識論』
〈書物復権〉科学的認識の理論に新しい道を拓いたバシュラール。その科学・科学史に関する思想の核心を伝える格好の入門書。竹内良知訳
(白水社 予価5500円)[amazon]

5月19日刊
アントワーヌ・ド・サン=テグジュペリ『夜間飛行・人間の大地』

「夜の闇の中に橋を架ける必要がある」――夜空にひそむ美と脅威、人間の責務と幸福とのせめぎ合いを描く『夜間飛行』。アフリカ・南米航路の開拓者たちの命がけの挑戦や、現地の人々の気高さを語る『人間の大地』。生涯、飛行士として飛び続けた作家が、天空と地上での生の意味を問う代表作二作。原文の硬質な輝きを伝える新訳。野崎歓訳
(岩波文庫 予価1221円)[amazon]

5月19日刊
アレクサンドル・ゲルツェン『過去と思索 7』

1864年5月、ロシアに対するポーランド蜂起が終息。一貫してポーランドを支持し続けたゲルツェンは、ロシアの世論から孤立し、新聞《コロコル》も終刊、失意の最晩年を迎える。西欧の政治世界では英独仏の三強による覇権争いの時代が始まる。ゲルツェンは自分の時代が終わったことを痛感する。全7冊完結。金子幸彦・長縄光男訳
(岩波文庫 予価1716円)[amazon]

5月19日刊
アルトゥル・ショーペンハウアー『自殺について 他四篇

『意志と表象としての世界』を著したショーペンハウアーの『余録と補遺』から、生と死をめぐる5篇を収録。人生とは意志=欲望が満たされぬ苦しみの連続であるが、自殺は偽りの解決策として斥ける。皮肉と遊び心に富んだ人生観察家による珠玉の哲学的散文、新訳。藤野寛訳
(岩波文庫 予価770円)[amazon]

5月19日刊
『カフカ 最後の手紙』ヨーゼフ・チェルマーク/マルチン・スヴァトス 編

〈書物復権〉1986年に発見されたカフカ最晩年の書簡。ベルリンでの困窮、迫る死。一級資料であり、カフカ文学を伝える迫真のドキュメント。三原弟平訳
(白水社 予価3850円)[amazon]

5月19日刊
ジャン=ジャック・ルソー『新エロイーズ 上・下
〈書物復権〉貴族の令嬢と平民の家庭教師との身分違いの恋を描く書簡体小説。ロマン主義文学に大きな影響を与えた18世紀最大のベストセラー。松本勤訳
(白水社 予価各7920円)[amazon]

5月19日刊
谷川渥『美学講義 バウムガルテンからグリーンバーグへ
美学とは何か? ドイツ哲学に派生する近代美学の誕生、明治日本におけるその受容、現代美術批評の言説と美学の関係など通し、美学への批判的言説を思索する。
(筑摩選書 予価2090円)[amazon]

5月20日刊
ニー・ヴォ『歌う丘の聖職者』
ありふれた英雄譚が鮮やかに覆る。お伽噺の奇才、ニー・ヴォが紡ぐ旅の聖職者と記憶を伝える鳥の摩訶不思議な物語シリーズ続編。金子ゆき子訳
(集英社文庫 予価1067円)[amazon]

5月21日刊
イサク・ディネセン『復讐には天使の優しさを』
身寄りのない少女ルーカンとその親友ゾジーヌは、ロンドンの職業紹介所で、フランスの田舎に住む牧師夫妻から一年間の期限付きで養女にしたいという申し出を受ける。異国の地で平穏な生活を送り始めた少女たちは、やがてその裏側に隠された恐ろしい悪の存在を知ることに。圧倒的な悪の力に立ち向かう二人の運命は? 『アフリカの日々』の作家ディネセンが変名で発表、ナチス占領下のデンマークで暗い時代に生きる人々を魅了した、サスペンスと甘美なロマンスに満ちた冒険物語。。横山貞子訳
(白水Uブックス 予価2530円)[amazon]

5月21日刊
アルンダティ・ロイ『至上の幸福をつかさどる家』
〈アジア文芸ライブラリー〉
荒廃した墓場に家を建て住み始めたヒジュラーのアンジュム。家はやがてゲストハウスとなり、そこで著者の幻影とも思われるティロー、そのパートナーのムーサーなど、様々な傷を抱えた人々の人生が交錯する。首都の抗議運動やカシミール紛争など、現代インド史の出来事を寓話的に織り交ぜ、周縁で生きる人々の姿を詩情あふれる文章で描く。『小さきものたちの神』のブッカー賞作家、20年ぶりの新作長編。パロミタ友美訳
(春秋社 予価4180円)[amazon]

5月21日刊

セシル・ピヴォ『エステルの手紙教室』
北フランスのリールで書店を営むエステルは、亡くなった父を偲んで手紙教室を開くことにした。参加者を募る新聞広告を出すと、5人から応募があった。孤独な老婦人、重度の産後うつに苦しむ夫婦、仕事にやりがいを見いだせないビジネスマン、そして進路に悩む青年。性別も年齢も異なる参加者とエステルは、手紙のやりとりを通して新しい言葉との出会いに飛び込んでゆく。言葉の力を賛美した小説。田中裕子訳
(講談社 予価2420円)[amazon]

5月22日刊
グレアム・マクレー・バーネット『揺れる輪郭』
60年代ロンドンで異端児と呼ばれた精神科医。彼の伝記を書く作家宛てに、ある女性の日記が届く。そこには、姉の自殺と精神科医の治療の関連を疑い、真相を明らかにすべく偽名で治療を受けた女が次第に我を失っていく様が描かれ──。ブッカー賞候補の実験小説。宇佐川晶子訳
(早川書房 予価3300円)[amazon]

5月22日刊
キム・チョヨプ『惑星語書店』
銀河系内の数万の言語が同時翻訳されている時代。辺境の惑星の、翻訳機では解読できない本を販売する書店にやってきた女性の、意外な目的とは……(表題作)。長篇『派遣者たち』の原型となった「沼地の少年」を含むレトロテイストなショートストーリー14篇。カン・バンファ訳
(早川書房 予価2640円)[amazon]

5月22日刊
ピエール・ルメートル『欲望の大地、果てなき罪 上・下
1946年、ベイルート。長男ジャンが犯した殺人を追う次男フランソワ。不審死を遂げた三男エティエンヌ。長女のエレーヌにも秘密が……。平岡敦訳
(ハヤカワ・ミステリ文庫 予価各1650円) [amazon]

5月22日刊
オリヴィー・ブレイク『アトラス・パラドックス 上・下
6人の魔法使い(メディアン)たちの〈協会〉への入会争いの中、ある候補者が死体で発見された。動揺する残りの候補者はそれぞれ己と向き合うが……。佐田千織訳
(ハヤカワ文庫FT 予価各2090円)[amazon]

5月22日刊
アーネスト・ヘミングウェイ『老人と海』
巨大魚と格闘する老漁夫の姿を通して描く、現代の神話。長く親しまれてきた福田恆存訳に、ヘミングウェイ作品および『老人と海』が日本でいかに読まれてきたかを示す、作家たちのエッセイを巻末に収録。
(中公文庫 予価880円)[amazon]

5月22日刊
日下三蔵『断捨離血風録 3年で蔵書2万5千冊を減らす方法
40年間貯めに貯めた本を大放出する涙と笑いの蔵書処分ルポ。目標は和室を空けること。盛林堂書房の小野氏、古本屋ツアー・イン・ジャパンの小山氏という強力な助っ人を得て、本で埋め尽くされた家の片付けが始まった──。「本の雑誌」好評連載に加え、「おじさん三人組 日下三蔵邸に行く」、日下三蔵蔵書年表、関係者座談会などを収録。
(本の雑誌社 予価2420円)[amazon]

5月22日刊
小山力也『古本屋ツアー・イン・日下三蔵邸』
もう魔窟とは言わせない。今こそ“魔窟”の呪いを解き、“書庫”へと回帰させるのだ――ゆらゆらと揺れる絶妙なバランスで積み上げられた本タワー、その隙間に出来た古本獣道、本で出来た巨大軍艦……前後左右上下、どちらを見ても、本・本・本・本! 古本の底無し沼・日下三蔵邸を整理せよ。書評家+古書店主+古本マニアによる蔵書整理プロジェクト10年の記録。
(本の雑誌社 予価1980円)[amazon]

5月22日刊
『書籍の思想史』若尾政希編
シリーズ〈本の文化史〉
日本の出版文化史を多面的に論ずるシリーズ。第5巻は、生きるために本を読む時代500年の思想史。90年代以降の研究を総覧する。
(平凡社 予価3960円)[amazon]

5月22日刊
『様式と造本』鈴木俊幸編
シリーズ〈本の文化史〉
日本の出版文化史を多面的に論ずるシリーズ。活字か整版か、刷り方は? 綴じ方は? などなど、モノと技術が語る本の時代の歴史。
(平凡社 予価3960円)[amazon]

5月23日刊
マーガレット・アトウッド『ペネロピアド 女たちのオデュッセイア
トロイの英雄オデュッセウスを待ち続けた、賢く貞淑な妻ペネロペイア。今初めて明かされる彼女の本心と、殺された12人の女中の真実ーー。ギリシア神話の壮大な叙事詩が、女たちの声によって現代に蘇る。鴻巣友季子訳
(角川文庫 予価1078円)[amazon]

5月23日刊
ミリアム・テイヴズ『ウーマン・トーキング ある教団の事件と彼女たちの選択
あるキリスト教系団体のコロニーで起きた大量レイプ事件。最年少の被害者は3歳の少女。それは「悪魔の仕業」「作り話」とされたが、実は身内の8人の男による犯行だった。彼らを保釈させようと村の男たちが外出する2日間。女たちは子どもを守るために未来を選ばねばならない。何もしないか、闘うか、村を出ていくか。文字の読めない女たちの会議が始まる。マーガレット・アトウッド絶賛、実話にもとづくサスペンス。鴻巣友季子訳
(角川文庫 予価1518円)[amazon]

5月23日刊

ダーヴラ・マクティアナン『#ニーナに何があったのか?』
「彼氏が殺した」「義父が怪しい」「炎上狙いの自作自演?」森に消えた女子大生の謎を追う全豪1位ノンストップ・スリラー。田辺千幸訳
(ハーパーBOOKS 予価1420円)[amazon]

5月23日刊
ズジスワフ・ベクシンスキ/ベクシンスキー『新装版 ベクシンスキー1929-2005』
〈パン・エキゾチカ〉死、腐敗、損壊。寂寥感と恐怖に支配され永遠の廃墟と化した時空。夢魔的な画風で世界中のファンを魅了する孤高の画狂の作品集。
(河出書房新社 予価4620円)[amazon]

5月23日刊
鴻巣友季子『100分de名著 アトウッド『侍女の物語』『誓願』』
全体主義国家に変貌した近未来のアメリカ、女性の性と生殖に関わる権利が剝奪された恐怖社会を描いた小説『侍女の物語』(1985)は、世界中で強まる右傾化や全体主義的傾向を予見した書物として、改めて注目を集めている。そして15年後の未来を描いた『誓願』(2019)。フィクションを越える事態が現実に起こりつつある状況下で、これらのディストピア小説を読み解き、「今そこにある危機」について思索する。
(NHK出版 700円)[amazon]

5月25日発売
《ミステリマガジン》7月号
特集 ホラーミステリの最前線

(早川書房 1650円)[amazon]

5月25日刊
ジャニス・プーン『ハンニバル・レクター博士の優雅なお料理教室』
究極の美食家による、最高の“食材”を集めた晩餐会へようこそ。豪奢、耽美、そして背徳!!! レクター博士が堪能した“素晴らしい料理”の秘密が味わえる。衝撃のサイコサスペンス・ドラマ《HANNIBAL/ハンニバル》のフードスタイリストが紹介する、戦慄のレシピ集。
(晶文社 予価3630円)[amazon]

5月26日刊
スタニスワフ・レム『電脳の歌』
〈スタニスワフ・レム コレクション〉
全能のロボット建造師トルルルとクラパウツィウスの二人組は、広大無辺の宇宙を旅し、行く先々で権力に貪欲な惑星の王たちや、暗黒に住まう未知の怪物からつきつけられる難題の数々にぶち当たる。奇想天外、奇妙奇天烈、抱腹絶倒の冒険を、諧謔と風刺、機智とユーモア、パロディに言語遊戯、文体実験や文明論的批評などを交えて寓話風に描いた連作短篇集。邦訳版『宇宙創世記ロボットの旅』に未収録作品を精選増補し、新訳でお届けする決定版。芝田文乃訳/解説 沼野充義
(国書刊行会 予価3190円)[amazon]

5月26日刊
ピエール・エルバール『アルキュオネ 力線』
〈ルリユール叢書〉対独抵抗運動に挺身した「闘士」の作家ピエール・エルバール。無人島で営まれる少年同士の同性愛的な友情を活写するBL小説『アルキュオネ』、スターリニズム下の若き反抗者たちの同性愛と政治参加を巧みに描いた、エルバールの私小説的作品『力線』の2篇を収録。本邦初訳。森井良訳
(幻戯書房 予価3740円)[amazon]

5月26日刊
オリヴィエ・グローグ『カミュ ふたつの顔』
正義感溢れる小説家か、それとも植民地主義の相続人か。『異邦人』の「アラブ人」には名前がなく、『ペスト』の舞台アルジェリアに登場するのはフランスからの入植者ばかり。反植民地主義者にしてヒューマニストという称号を与えられた作家アルベール・カミュの、もうひとつの顔を描き、今なお根強く残る植民地主義をめぐるタブーに踏み込んだ画期的ドキュメント。木岡さい訳
(青土社 予価3520円)[amazon]

5月27日刊
閻連科『聊斎本紀』
古典怪異短篇集『聊斎志異』を巨匠が再創作。絵画の中で生を得る絵師、人間の心臓を食べて転生する妖女、狐と人間の交歓など、千夜一夜物語のごとく紡がれる世にも不思議な36の物語。谷川毅訳
(河出書房新社 予価5280円)[amazon]

5月27日刊
ジャン・ジュネ『ヘリオガバルス』
あらゆる侵犯を繰り返す若きローマ皇帝が追い求めた、美しき愛のかたち――ジュネが最も輝ける時代に書かれた幻の戯曲。80年の時を経て発見された文学史的事件。宇野邦一・鈴木創士訳
(河出書房新社 予価3850円)[amazon]

5月27日刊
藤沢衛彦『怪異伝説の民俗学』

人間が生きるところ、洋の東西を問わず、怪異の伝説は受け継がれてきた。その先駆的研究者が、世界的視野で日本の現象を中心に紹介分析。図版多数の名著から、読みやすい形で復刊。
(河出書房新社 予価3520円)[amazon]

5月27日刊
『歴史のなかの怪異・妖怪』小松和彦監修/木場貴俊編
〈怪異・妖怪学コレクション2〉今世紀に入っても大きな進展を遂げている怪異・妖怪研究の近年の重要論考を精選。歴史(古代~近代)を対象にした研究を扱う第2巻。
(河出書房新社 予価3520円)[amazon]

5月27日刊
ウィリアム・S・バロウズ『裸のランチ』
バロウズの代表作にして、ビートニク文学の最高峰作品。麻薬中毒の幻覚や超現実的イメージが全く前衛的な世界へ誘う。改訳・新組版。鮎川信夫訳
(河出文庫 予価1540円)[amazon]

5月27日刊
ウィリアム・S・バロウズ『ジャンキー』
『裸のランチ』によって驚異的な反響を巻き起こしたバロウズのデビュー作。ジャンキー=麻薬中毒者による自伝的小説。改訳・新組版。鮎川信夫訳
(河出文庫 予価1320円)[amazon]

5月27日刊

伊澤みゆき『いっそあの方が死んで下すったなら 伊澤みゆき作品集
友愛のなかに潜む、暗い情念と烈しい感情――闇のオーラを纏う少女たちの内面。百年前の少女たちの叫びは、今もなお私たちの心に鮮烈な衝撃をもたらす。少女小説の黎明期に『少女画報』を舞台に数々の傑作を残し、吉屋伸子も傾倒した作家、伊澤みゆき、初の作品集。
(国書刊行会 予価3960円)[amazon]

5月28日刊
ドロシイ・B・ヒューズ『ゆるやかに生贄は』
姪の結婚式に出席するため、母親のキャデラックでロサンジェルスからフェニックスへ向かっていた若き研修医ヒュー・デンズモア。砂漠のハイウェイでヒッチハイクの若い娘を見かけても、できれば拾いたくなかった。渋々同乗させ、なんとかバス乗り場で彼女を降ろしたが、アイリスと名乗るその娘は執拗に彼に接触してくる。彼女の目的はいったい何なのか。階級と人種の問題に切り込んだサスペンス・ノワールの古典的名作。野口百合子訳
(新潮文庫 予価1045円)[amazon]

5月28日刊
キャサリン・R・ハワード『罠』
アイルランドの片田舎。人気のない道路を彼女はひとり歩いていた。そこへ男の運転する車が近づいてきて声をかける……。約一年前の深夜、ダブリンのパブを出たまま行方不明となった妹の行方を捜し続ける女性、ルーシー。この数年、アイルランドでは不可解な失踪事件が続いていた。警察の捜査にしびれを切らしたルーシーは、危険をかえりみず独自に拉致犯を突き止めようと決意する。斬新な構成の妙でサスペンス小説の新潮流を作り出してきた作家の最先端サスペンス。髙山祥子訳
(新潮文庫 予価1100円)[amazon]

5月28日刊

C・S・ルイス『ナルニア国物語6 魔術師のおい』
ルーシーの物語が始まるずっと昔、ロンドンに住むディゴリーとポリーは魔術研究をしているアンドリュー伯父により異世界へと飛ばされ、滅びの都チャーンの女王を目覚めさせてしまった。ロンドンまでついてきた彼女をもとの世界に戻そうと奮闘する二人が迷い込んだのは、また別の世界。そこでは一頭のライオンが新しい国を創造しようとしていた。いまナルニア創成のひみつが明かされる。小澤身和子訳
(新潮文庫 予価737円)[amazon]

5月28日刊
海野十三『地球盗難』
「日本SFの父」と呼ばれる海野十三の隠れた名作。ある日、矢追村で巨大な甲虫が現れ、休暇で訪れていた大隅博士は「地球盗難事件」という奇怪な事件を解明していく。「怪鳥艇」を併録。
(春陽文庫 予価1320円)[amazon]

5月28日刊
蘭郁二郎『白日鬼』
探偵小説から科学小説に転じ一躍人気作家となるも、戦時中の飛行機事故により夭折した天才、蘭郁二郎の名作長篇。ある日、若手文士の河村は、銀座の喫茶店で美少女に出会った直後、銃声を聞き殺人事件に遭遇する。
(春陽文庫 予価1320円)[amazon]

5月28日刊
『疵(きず)の迷楼 耽美幻想セレクション
山上の神社へ肝試しに訪れた、美しい少年士官が出逢った不可思議な出来事とは。(泉鏡花「妙の宮」) 病気療養中の少女には、女学園の後輩であり恋人の少女がいた。ある日、恋人が密室殺人事件に巻き込まれ――。(小栗虫太郎「方子と未起」) 下宿先の住人は皆奇妙な行動をする。(坂口安吾「蝉 あるミザントロープの話―」) 七人の文豪の名作が集った、耽美と幻想の世界に溺れる一冊。
(宝島社文庫 予価790円)[amazon]

5月29日刊
ミリアム・ルロワ『わたしがナチスに首をはねられるまで』
〈新潮クレスト・ブックス〉女性はなぜナチスに斬首されたのか。真実を求め「あなた」は歴史を越える。占領下のブリュッセルでナチスの将校を単身で襲い、斬首刑に処された女性。抵抗運動の最初の狼煙をあげながら、女性であったが故に歴史から消されたその生涯を調べる著者の「あなた」もまた、女性として抑圧や差別を経験してきた。彼女の人生を甦らせるのは「あなた」しかいない――史実を元にし、それを踏み越える小説。村松潔訳
(新潮社 予価2530円)[amazon]

5月30日刊
カルステン・ヘン『本と歩く人』
老書店員カール・コルホフのもとにやってきた謎の少女シャシャ。本を愛するすべての人に贈るドイツのベストセラー小説、待望の邦訳。川東雅樹訳
(白水社 予価2970円)[amazon]

5月30日刊
アン・クレア『雪山書店と愛書家殺し クリスティ書店の事件簿
美しい雪山の書店ブック・シャレーを切り盛りするエリーと姉のメグは、いとこが始めた結婚仲介業のモニターを引き受けることに。本好き同士を本の好みをもとに結びつける図書館デートの翌日、火かき棒で殴り殺されたメグのデート相手が発見される。続いて麓の劇場で第二の事件が……。手がかりは、現場から消えたクリスティの戯曲『ねずみとり』の脚本? 謎と雪が降り積もる書店を舞台にしたミステリシリーズ第二弾。谷泰子訳
(創元推理文庫 予価1760円)[amazon]

5月30日刊
トラヴィス・バルドリー『伝説とカフェラテ 傭兵、書店をたてなおす』
戦闘中に大怪我をした傭兵ヴィヴは、治るまでと小さな町に置いていかれる。痛む脚で町を歩いていたヴィヴは潰れそうな本屋に入ってみた。まったく本に縁のないヴィヴも店主の小鼠人が薦める本を読むうちに物語の虜になり、店主の尻をたたいて本屋の建て直しに着手する。友人たちの協力も得て立て直しは順調に進んでいたが……。『伝説とカフェラテ』前日譚。原島文世訳
(創元推理文庫 予価1430円)[amazon]

5月30日刊
ルーシー・ウッド『漂着物、または見捨てられたものたち』
海沿いに点在する無人の家、潮に洗われる洞穴のある岩場、古びた塩の貯蔵小屋、漂着物が絶えず流れ着く砂浜、さびれたオートキャンプ場……英国コーンウォールの海辺に見られるありふれた場所では、ふとしたはずみに幻めいた現象が起こり、もの哀しくも美しい物語がいくつも生み出される。『潜水鐘に乗って』に続く、13の短編を収録した珠玉の第二作品集。木下淳子訳
(東京創元社 予価2970円)[amazon]

5月30日刊
舘野皙編『韓国と本に詳しい45人が “今、どうしても薦めたい本”を選んでみました』
翻訳者、書店員、編集者、大学教員、そしてKカルチャーファンまで、世代も経験もさまざまな総勢45人の目利きが選ぶ、朝鮮半島と東アジアをめぐるジャンル横断のブックガイド。
(クオン 予価1650円)[amazon]

5月予定
レックス・スタウト『人盗り合戦』
〈論創海外ミステリ〉探偵ウルフと助手のアーチーは今日も事務所内で口喧嘩。女性嫌いのウルフに嫌がらせするため、アーチーは身元を伏せる謎めいた美女を「女人禁制」の西35丁目の家に受け入れた。しかし、その女性が殺害される非常事態に、ウルフとアーチーは否応なく殺人事件に巻きこまれていく。鬼頭玲子訳
(論創社 予価2750円)[amazon]

5月予定

ヒラリー・ウォー『マダムはディナーに出られません』
〈論創海外ミステリ〉私立探偵のシェルダン・ウェズリーは富豪の女性からディナー・パーティの招待を受けた。妻のダイアナと連れ立って会場入りするが、殺人事件の発生によって晩餐の席は疑惑の場と化してしまう。駆けつけた地元警察のスローカム署長とウェズリー探偵は捜査に乗り出すが……。熊木信太郎訳
(論創社 予価2640円)[amazon]

5月予定

M・R・ラインハート『イザベルの不在証明』
〈論創海外ミステリ〉第二次大戦下の緊迫した空気を孕みながら繰り広げられるスリルと謎とサスペンス。一世を風靡した人気作家M・R・ラインハートの傑作短編集。菱山美穂訳
(論創社 予価2530円)[amazon]

5月予定
W・H・オーデン『詩集 アキレスの盾』
(水声社 予価4400円)

5月予定
W・H・オーデン『もうひとつの時代』
(水声社 予価4400円)

5月予定
レオナルド・パドゥーラ『風に舞う塵のように』
(水声社 予価4400円)

5月予定
アブデッラー・ターイア『ベッドがあれば』
(水声社 予価2200円)[amazon]


▼6月予定

6月1日刊
レイラ・ララミ『ムーア人による報告書』
〈エクス・リブリス〉1528年、スペインの「フロリダ探検隊」は黒人奴隷を連れて黄金を探索、メキシコを目指す……実在の報告書を元に実在した奴隷の視点から再構築。木原善彦訳
(白水社 予価4620円)[amazon]

6月1日刊
アラン『幸福論』
抽象思考を重ねるのでなく、日常的な場面の中から幸福への合理的な道筋を見つけだす。デカルトやスピノザの情念論・感情論をふまえて「幸福とは何か」を追究したアラン畢生の名著。串田孫一・中村雄二郎訳
(白水Uブックス/思想の地平線 予価1760円)[amazon]

6月2日刊

アーシュラ・K・ル=グウィン『火明かり ゲド戦記別冊
まどろみながら彼は、はてみ丸のことを考えていた。あの小さな舟で旅した日々を――。作家の没後に公表された〈ゲド戦記〉最後のエピソード「火明かり」。ほか、未邦訳短編「オドレンの娘」、『夜の言葉』よりエッセイ3編、講演「「ゲド戦記」を“生きなおす”」などを収めた、日本語版オリジナル編集による別冊。井上里・ 清水真砂子・ 山田和子・ 青木由紀子・ 室住信子 訳
(岩波少年文庫 予価990円)[amaozn]
『ゲド戦記 全7冊 美装ケースセット』
(岩波少年文庫 予価5742円) [amazon]

6月3日刊
アガサ・クリスティー『白昼の悪魔 新訳版
人里離れたリゾート地で、元女優が白昼堂々と命を奪われた。 犯人は滞在客の中にいる。名探偵ポアロが鉄壁のアリバイ崩しに挑む。田村義進訳
(早川書房/クリスティー文庫 予価1760円)[amazon]

6月5日刊
ジェシカ・ノール『夜を駆ける女たち』
大学女子寮で学生が惨殺された。犯人を目撃したパメラのもとに、国の反対側からティナが会いに来た。ティナは4年前に失踪した恋人を捜しているという。彼女たちが手を取り合い、調査をしていくと、警察も気づかなかった、巨大な連続殺人事件が浮かび上がる。国弘喜美代訳
(ハヤカワ・ミステリ 予価3300円)[amazon]

6月5日刊
T・キングフィッシャー『イラクサ姫と骨の犬』
小国の王女マーラは、大国に嫁いだ姉が王子に暴力をふるわれていると知る。魔法に護られた王子を止められるのは、マーラだけ……。原島文世訳
(ハヤカワ文庫FT 予価1650円)[amazon]

6月5日刊
カズオ・イシグロ『遠い山なみの光 新版
英国で暮らす悦子は、娘を自殺で失い、故郷の日々を想う。戦後の長崎で出会った母娘。友情の記憶には不穏な影が差す。小野寺健訳
(ハヤカワepi文庫 予価1342円)[amazon]

6月6日刊
サリー・ヘプワース『グッド・シスター』
シングルマザーに育てられたファーンとローズの双子の姉妹は、12歳のときに母親がオーバードーズで入院、それからは里親を転々として生きてきた。二人には、決して人には言えないある秘密があった。双子姉妹それぞれの視点で繙かれ歪む真実と虚偽。不穏と癒やしが混在する豪州発新感覚心理スリラー。梅津かおり訳
(小学館文庫 予価1254円)[amazon]

6月6日刊
マーク・トウェイン『ハックルベリー・フィンの冒険』
トム・ソーヤーとの冒険で大金を得たハックは、まっとうな生活を送っていたが、金目当ての飲んだくれの父親が現れた。ハックは黒人奴隷のジムとともに、筏でミシシッピ川を下る冒険に出かける。市川亮平訳
(小鳥遊書房 予価3300円)[amazon]

6月9日刊
井波律子編訳『中国奇想小説集』
『捜神記』『唐代伝奇』『聊斎志異』『子不語』など六朝から清代まで、変幻自在の奇想幻想小説約30篇を、ミステリ評論家でもある練達の中国文学者が精選。
(平凡社ライブラリー 予価1980円)[amazon]

6月11日刊
トマス・ハーディ『日陰者ジュード』
聖職者になろうと大学入学を志すジュードは、その願いも叶わぬうちに、奔放なアラベラと結婚するも、関係はすぐに破綻する。一方、知的で進歩的な考えを持つ従妹スーに惹かれ、同棲を始めるが……。近代人の悲劇的運命を描いた大作。木村政則訳
(光文社古典新訳文庫 予価2486円)[amazon]

6月11日刊
アレクサンドル・デュマ『モンテ・クリスト伯 1』
将来を嘱望された若き船乗りエドモン・ダンテスは、嫉妬した同僚に陥れられ、海に浮かぶ監獄で14年もの獄中生活を送ることに。絶望の中、他の囚人が壁を削る音に気づいた彼は……。息をつかせぬ展開と冒険、劇画風で情感豊かな描写。フランスの文豪デュマの心躍る代表作。各巻に作家や作品の周辺情報などを紹介する「読書ガイド」を収録。全6巻。前山悠訳
(光文社古典新訳文庫 予価1540円)[amazon]

6月12日刊
ラヴァンヤ・ラクシュミナラヤン『頂点都市』
荒廃した世界から浮上したかつてのベンガルールの街は、能力本位の技術統治体制がしかれ、“頂点都市”と改名して繁栄を極める。この街の住民は生産性とソーシャルスコアにより評価され、上位二割と中間七割のヴァーチャル民は最新テクノロジーを駆使した生活を享受している。だがそこから排除された下位一割のアナログ民のあいだでは、叛逆の胎動が……衝撃の近未来を描くローカス賞・クラーク賞最終候補作。新井なゆり訳
(創元SF文庫 予価1650円)[amazon]

6月12日発売
《紙魚の手帖》vol.23
初邦訳の犯人当て短編や、コラムなどで贈る「英国ミステリ特集」。大島清昭、君嶋彼方による読み切り掲載。第25回本格ミステリ大賞全選評、一挙掲載ほか。
(東京創元社 1540円)[amazon]

6月12日刊
イーディス・ウォートン『歓楽の家』
20世紀初頭のニューヨーク。裕福な家庭で育った娘リリーは、父親の倒産後もなお、華やかな社交界で生き抜くため、良縁を求めて悪戦苦闘する。耳に痛いことも言ってくれる友人セルデンに心惹かれながらも、彼との結婚は考えられない。上流階級にひそむ悪意と嫉妬、運命のいたずらによって、リリーの人生は少しずつ転落へと向かってゆく。イーディス・ウォートンの出世作、待望の新訳。加藤洋子訳
(北烏山編集室 予価3960円)[amazon]

6月12日刊
アイルハルト・フォン・オーベルク『トリストラントとイザルデ』
ワーグナー《トリスタンとイゾルデ》で知られる「トリスタン伝説」は、ケルト起源からウェールズとブルターニュを経て、12世紀後半に古フランス語で物語化され(散逸)、ほぼ同時期にドイツで詩人アイルハルト・フォン・オーベルクによって作品化された。トリスタン伝説の現存する最古の姿を伝える書の本邦初の全訳。石川栄作訳
(講談社学術文庫 予価1650円)[amazon]

6月12日刊
井之口章次『日本の俗信』
予兆、卜占、禁忌、呪術、妖怪、憑物……全国各地で採集された俗信、すなわち「超人間的な力の存在を信じ、それに対処するための知識や技術」を体系的に整理。日本文化の基層を明らかにする、民俗学の精華。
(講談社学術文庫 予価1760円)[amazon]

6月刊
行方昭夫編訳『お許しいただければ 続イギリス・コラム傑作選
(岩波文庫)[amazon]

6月刊
トーマス・マン『トーニオ・クレーガー』
小黒康正訳
(岩波文庫)[amazon]

6月刊
J・M・G・ル・クレジオ『歌の祭り』
管啓次郎訳
(岩波文庫)[amazon]

6月17日刊
アーサー・コナン・ドイル『失われた世界』
ロンドンの若き新聞記者マローンが恋焦がれる才女グラディス。彼女との結婚の条件は「英雄的な行いを為すこと」。博覧強記で乱暴者の科学者チャレンジャー教授が話す「未知の台地と恐竜の存在」。その真偽を確かめるため、マローンとチャレンジャーはロクストン卿、サマリー教授と船で旅立つ。たどり着いた台地で彼らを待ち受けるものとは――。冒険SF小説の古典的傑作の新訳刊行。駒月雅子訳
(角川文庫 予価1166円)[amazon]

6月17日刊
チャールズ・ディケンズ『新訳 大いなる遺産 上・下
親のいない少年ピップは意地悪な姉に育てられた。ある晩、脱獄囚の命を救うが、その日を境に不可解な出来事が起きる。何者かから譲られた莫大な遺産。謎の暴行事件。資産家の美しい養女エステラとの出会い。彼女に見合う男になろうと、故郷を捨てロンドンへ紳士修行に向かうが……。文豪ディケンズの最高峰。原文に忠実な新訳でラストの真意が初めてわかる。河合祥一郎訳
(角川文庫 予価各1078円)[amazon]

6月18日刊
L・M・チルトン『死へ誘うマッチング・アプリ』
長年の交際が破局したグウェンは一念発起してマッチングアプリに登録するが、これまでのデート相手が次々に殺されてしまい……!? 山田佳世訳
(ハヤカワ・ミステリ文庫 予価1980円)[amazon]

6月18日刊
宝樹『三体X 観想之宙』
太陽系侵略を企む三体文明に人類のスパイを送る「階梯計画」の主人公となった孤独な男・雲天明が語る真実とは。『三体』公式外伝。大森望・光吉さくら・ワン チャイ訳
(ハヤカワ文庫SF 予価1540円)[amazon]

6月18日刊
パスカル・ロベール゠ディアール『小さな嘘つき』
5年前の強姦事件の被害者リザは控訴審の弁護をアリスに依頼した。アリスが調査を進めると、当時15歳のリザの嘘により誤審が下ったことが判明する。嘘をつかざるを得なかった少女の痛み、社会の偏見により歪む司法……法廷記者の著者が放つ繊細な倫理の物語。伊禮規与美訳
(早川書房 予価2640円)[amazon]

6月18日刊

クリスティン・ハナ『風に向かって』
1930年代テキサス。愛を知らずに育ったエルサは、幸せな家庭を夢見た。やがて手に入れた夢は、大干ばつによって崩れ去る。飢えと絶望の中、彼女は決断を迫られる。愛する養父母とここに残るか、希望を求めて子どもと西へ旅立つか。試練を乗り越える女性の物語。岩瀬徳子訳
(早川書房 予価3740円)[amazon]

6月19日刊
カーター・ディクスン『爬虫類館の殺人 新訳版
第二次世界大戦下のロンドン。ある夜、爬虫類館で名高いロイヤル・アルバート動物園の一室で、園長と一匹の大蛇がガス中毒で死亡する。部屋は内側からすべての扉と窓に目張りがされた密室で、状況からは自殺としか思えない。だが、爬虫類に生涯を捧げた園長が蛇を道連れにするだろうか? 名探偵サー・ヘンリ・メリヴェール登場。不可能犯罪の巨匠、中期の傑作。白須清美訳
(創元推理文庫 予価1012円)[amazon]

6月19日刊
ドーン・ブルックス『地中海クルーズにうってつけの謎解き 警官レイチェル&看護師サラの事件簿
婚約者に裏切られて傷心の警察官レイチェルは、豪華客船で看護師として働く親友のサラに誘われて、2週間の地中海クルーズに参加した。しかし寄港したリスボンで同じ船の乗客がトラックの下敷きになって亡くなってしまう。レイチェルは親しくなった乗客の男性が現場から走り去る姿を見かけ、サラと協力して事件を調べることに。親友同士の女性たちが謎解きに挑む新シリーズ開幕。田辺千幸訳
(創元推理文庫 予価1100円)[amazon]

6月刊
スティーブン・グリーンブラット、アダム・フィリップス『セカンド・チャンス シェイクスピアとフロイトに学ぶ「やり直しの人生」
河合祥一郎訳
(岩波新書)[amazon]

6月刊
小川公代『ケアの物語 フランケンシュタインからはじめる』
(岩波新書)[amazon]

6月20日刊
フョードル・ドストエフスキー『カラマーゾフの兄弟 1・2
ドストエフスキー作品の謎に最も迫った翻訳者・江川卓による魂の訳業、初文庫化。各巻に、訳者自身による詳細な注解を付す。
(中公文庫 予価各1320円)[amazon]

6月23日刊
ズジスワフ・ベクシンスキ/ベクシンスキー『新装版 ベクシンスキー作品集成Ⅱ ver.1.2』
〈パン・エキゾチカ〉ポーランド幻想絵画の巨匠ベクシンスキを集成したシリーズ。1980~90年代と晩年の絵画作品、60年代の彫刻レリーフ作品を収める。
(河出書房新社 予価4400円)[amazon]

6月24日刊
ショーン・バイセル『ブックセラーズ・ダイアリー3 スコットランドの古書店主がまたまたぼやく
古書ポルノ・ハンター、熱狂的なアーサー王読者、居心地のいい書店の一角でおしっこをしたがる幼児……古書店主ショーンのもとには、ひと癖もふた癖もある客が今日も訪れる。古書店主の世界的ベストセラー日記シリーズ最新作。阿部将大訳
(原書房 予価2970円)[amazon]

6月25日
《SFマガジン》8月号
(早川書房)[amazon]

6月27日刊
パーシヴァル・エヴェレット『ジェイムズ』
世界の終末を予測する未来予知デバイスをめぐって、テック企業の支配者たちとサバイバリストたちの壮大な情報戦がはじまる。木原善彦訳
(河出書房新社 予価2750円)[amazon]

6月27日刊

トーリ・ピーターズ『ディトランジション、ベイビー』
性のあり方に悩み、傷つけ合いながら、新しい家族の形を模索し生きる三人のマイノリティの物語。NYT「21世紀のベスト100冊」。吉田育未訳
(河出書房新社 予価3278円)[amazon]

6月27日刊

『怪異・妖怪の博物誌』小松和彦監修/伊藤龍平編
〈怪異・妖怪学コレクション6〉今世紀に入っても大きな進展を遂げている怪異・妖怪研究の近年の重要論考を精選。個別のキャラクターを探究する第6巻。
(河出書房新社 予価3520円)[amazon]

6月下旬予定
C・S・ルイス『ナルニア国物語7 さいごの戦い』
小澤身和子訳
(新潮文庫)[amazon]

6月30日刊

夏来健次編訳『英国幽霊屋敷譚傑作集』
英国では奇妙なことに幽霊が居着いている物件ほど高く評価される傾向にある。殺人や凶事が起きた建物を巡るツアーも人気を博し、現在でも幽霊は英国人の「親しき隣人」として敬意を払われている。領主屋敷、廃城、農場屋敷など、様々な建物に現われる怪異を描いた13編を集成する本書には、ゴシック譚から推理小説風の逸品、ゴーストハントもの、変わり種としては灯台の幽霊話などバリエーション豊かな逸品を収める。本邦初訳作多数。コナン・ドイル、アンドリュー・ラング他。
(創元推理文庫 予価1320円)[amazon]

6月30日刊
ピーター・スワンソン『9人はなぜ殺される』
ある日、アメリカ各地の9人に、自分の名を含む9つの名前だけが記されたリストが郵送されてくる。差出人も意図も不明。まず、ホテルを経営する老人が溺死させられた。そして翌日、ランニング中の男性が背中を撃たれた。FBI捜査官ジェシカはリストの人々の特定にかかる。自分も、死んだふたりと同じリストを受け取っていたのだ。驚愕の展開の連続で読者を翻弄する極上のサスペンス。務台夏子訳
(創元推理文庫 予価1320円)[amazon]

6月30日刊
アーナルデュル・インドリダソン『黒い空』
レイキャヴィク警察の犯罪捜査官シグルデュル=オーリは、友人から厄介な相談を受ける。妻の姉夫婦がいかがわしい写真をネタに強請られているので、表沙汰にならないよう写真のデータを取りもどして欲しいというのだ。恐喝者の女性の家に行ってみると彼女は血を流して倒れており、彼自身も何者かに殴られて昏倒してしまう……。主人公エーレンデュルが行方不明のなか、同僚シグルデュル=オーリが捜査を進める。柳沢由実子訳
(東京創元社 予価2860円)[amazon]

6月30日刊
アガサ・クリスティー『そして誰もいなくなった 特装版』
孤島に招き寄せられた、職業や年齢も違う十人の男女。招待主の姿は島にはなく、やがて、彼らの過去の犯罪を暴き立てる謎の声が……。そして、彼らが一人ずつ殺されてゆく。ミステリの女王の最高傑作が、ファン垂涎の仕掛けのついた豪華な函入り本として登場。青木久惠訳
(早川書房 予価7150円)[amazon]

6月30日刊
サーデク・ヘダーヤト『盲目の梟』
世界文学の視座からも再評価著しいイラン作家、ヘダーヤトの代表作を含む中短篇集。復刊にあたり、旅行記『エスファハーンは世界の半分』を併録。中村公則訳
(白水Uブックス 予価2090円)[amazon]

6月予定
荒俣宏『イギリス寒雪夜がたり集 荒俣宏幻想文学翻訳集成 欧米幻想ファンタジー精華2
荒俣宏による半世紀にわたる幻想文学翻訳の集大成(全4巻)。第2巻は「霊的なふしぎ世界」と「現実のほころび」への関心を描く作品群を収録。ビュルガー「レノーレ」、ヴァーノン・リー「まぼろしの恋人」、アンナ・キングズフォード「夢日記」、ブラックウッド「帰還」他、全15篇。
(春陽堂書店 予価6600円)[amazon]

6月予定

西崎憲編『7月の本』
〈12か月の本〉
(国書刊行会 予価3080円)[amazon]
6月予定
西崎憲編『8月の本』
〈12か月の本〉
(国書刊行会 予価3080円)[amazon]
6月予定
西崎憲編『9月の本』
〈12か月の本〉
(国書刊行会 予価3080円)[amazon]

6月予定

アルノ・シュミット『レヴィアータン』
〈アルノ・シュミット・コレクション〉幻の地を求めて灼熱の砂漠を突き進む男、半世紀ものあいだ脱獄を企む老探検家、馬鹿げた戦争から逃れようとする兵士、遭難した島で何者かに怯える若者……書き綴ることに囚われた人たちの生き様を描いた短編集。時代に先駆けた実験精神で既存の文学史を徹底的に再編し、戦後ドイツ文学の源流ともなった鬼才の、いまだ知られざる作品群を紹介する第2弾。窪俊一訳
(水声社 予価2200円)


▼7月以降予定

7月2日刊
ラグナル・ヘルギ・オラフソン『父の四千冊 アイスランドのアーティストによる回想
小林玲子訳
(作品社 予価2750円)[amazon]

7月15日刊
平井敏晴『中華と綺想 東アジアのマニエリスム精神史
広義のマニエリスムをベースに、「過剰・多義的・異種混合(アルス・コンビナトリア)」が、東アジアの芸術・文化・建築様式にひとつの精神史として通底していることを読み解いていく。
(工作舎 予価3300円)[amazon]

7月31日刊
ネオクリス・ガラノプロス『ヨルゴス・ダノシスの新たなバージョン』(仮)
現代ギリシャ随一の本格ミステリ作家のデビュー作。橘孝司訳
(竹書房文庫 予価1540円)[amazon]

9月3日刊

ウラジミール・アレクサンドロフ『ロシアの鎖を断ち切るために ボリス・サヴィンコフと皇帝およびボリシェヴィキに対する彼の闘い
竹田円訳/沼野充義 解説
(作品社 予価8580円)[amazon]


予定表に出たり消えたり(そのうち何とかなるだろう)

グレース・D・リー『十二支像を奪還せよ』
中国系アメリカ人のウィルは、美術史を専攻する大学生。ある日、中国人の資産家から驚愕の依頼を受けた。かつて英仏軍に盗まれた清朝の5つの美術品を奪還するというものだ。ウィルは、友人のハッカーや解錠師、詐欺師とともに、世界中の美術館に向かうが……。 田村義進訳
(ハヤカワ・ミステリ 予価2420円)[amazon]


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