蓮沼から愛を込めて。
(※水色は「登場人物/用語集」を参照)
第1話「戦場に赴く2人」(2008.8.5〜9.30掲載)
この物語に登場する人物や地名等は全てフィクションであり、実際のものとは一切関係ありません。
・・・心からそう願いたかった。
俺の名前は「ユキト」。
パチスロで喰ってる・・・いわゆる無職だ。
今日はここ「鎌田」にやって来た。
夕方から友達と会うまでまだ時間があるな。
ちょっとだけパチスロを打っても大丈夫だろう。
俺が選択した機種は「大花火」。
BIG平均約600枚取れる大量獲得機。
分かりやすく言えば1回当たれば1万2000円前後は見込めるのだ。
さて時間がもったいないから打つか。
それから2時間後。
俺は本日の最低ノルマを稼いだのでここで止めておく事にした。
これ以上やると奴と会う時間に間に合いそうにないからな。
俺は換金を済ませてから待ち合わせ場所に向かう事にした。
何なく到着するとまだ10分もある事に気付いた。
「タバコでも吸うか。」
そういえばここにはスタンド灰皿が無いな。
こことはそう、JOY裏だ。
俺は取り出したタバコ「KOOL」をズボンのポケットにしまった。
しばらくすると奴がやって来た。
ほぼ時間通りだな。
奴の名は「マサカズ」。
俺とマサカズは中学の時の同級生だ。
確か今は武蔵新田で働いてるとか言ってたっけ。
中学を卒業してからもちょくちょく会っているので久し振りという気はしない。
「お疲れ〜。」
「お疲れ。そういえば今無職なんだって?」
「これでも仕事探してるつもりだよ。」
そんな挨拶代わりの会話をして、俺らは鎌田駅に向かって歩き出した。
JOY裏から鎌田駅までは徒歩1分くらいなのですぐに着いた。
「時間が無いから急ぐか。」
「そうだね、ちょっと急ごう。」
そう、これから電車に乗って出掛けるのだ。
まずは東急線の改札に向かおう。
切符を買って改札に入ると最初の難関が!
「むぅ・・・4択か。」
「あぁ・・・4択だ。」
見渡すとホームが4つある。
どれを選んだらいいのか・・・。
よしアレだ!
俺らは直感を信じて一番右の電車に飛び乗った。
「ふぅ、どうやら間に合いそうだな。」
「だな。」
しばらくして電車が出発した。
「次は〜蓮沼〜蓮沼〜。」
という事は俺らは池上線に乗ったのか。
「どうやら4択をはずしたみたいだぞ。」
「だな。」
時間が無いにもかかわらず、蓮沼で降りてすぐに引き返した。
「戻ってきたな。」
「だな。」
「残りは3つだ。どれを選ぼうか?」
またもや直感を信じて選んだホームは・・・一番左だ。
なぜ行き先を確認しないのかって?
その方が人生にスリルとサスペンスを与えてくれるからだ!
「お、電車が出発したぞ。」
「だな。」
次こそ正解を選んでますように・・・。
「次は〜矢口渡〜矢口渡〜。」
よし、正解!!
かなり時間が無いがギリギリ間に合いそうだ。
とりあえずはこのまま目鎌線に乗って行けばイイんだよな。
「次は〜田園調布〜田園調布〜。」
おっと、ここで乗り換えだ。
「ここで降りて乗り換えるぞ。」
「だな。」
目鎌線を降りて急いで東横線のホームに向かった。
「ちょうど急行がきたから乗るぞ!」
「だな。」
今度は渋谷行きの急行に急いで飛び乗った。
「各駅だったら間に合わなかったよ。」
「だな。」
とりあえず先へ急ごう。
「今日は誘ってくれてありがとう。」
「いえいえ。」
俺はマサカズにお礼を言った。
「ずいぶん急な誘いだったから驚いたよ。」
「一緒に行こうとした別の人がキャンセルしたもんでネ。」
「そうなんだ。で、俺を誘ってくれたんだ!?」
「うん。こっちもユキトがOKで助かったよ。」
「いえいえ。」
「チケットがムダにならずに済んだし。」
そう、今日はマサカズにあるイベントに誘われたのだ。
そのイベント会場に向かってる最中で、たぶんもうすぐ着くだろう。
すでに心はウキウキだ。
「次は〜終点渋谷〜渋谷〜。」
渋谷に着くと俺らは急いで駈け出した。
「先へ急ごう。」
「だな。」
今度は半蔵門線に乗り換えだ。
確かホームが離れているはずだから探すか。
「どこにあるんだ〜?」
「あっちだ。」
どうやらマサカズがホームを知ってるみたいだ。
迷路のような渋谷駅内を最短距離で案内してくれたおかげで、わずか2分で半蔵門線のホームに辿り着いた。
「ありがとな、マサカズ。」
「いえいえ。」
これで時間までには間に合うはずだ。
さて、そろそろ電車が出発するみたいだから乗るか。
「ちょっと緊張してきたよ。」
「だな。」
電車が動き出してイベント会場の最寄り駅に向かい始めた。
「でもよくチケット取れたね?」
「ちょっとしたツテがあってね。」
「俺、観るの初めてだよ!」
「そうなんだ?俺は3回目かな。」
「そういえばチケットを取ってもらうのはこれで2回目だよね。」
「あぁ・・・1回目はアレか。」
「そう、知らない方々から間接的に恨みを買った・・・」
「伝説の4001 DAYS GROOVEか。」
「しかも2日目の最終公演・・・(涙)」
「確かユキトは自力で取ろうとしたけどダメだったんだよね。」
「アレは一生の感謝だよ、マジで!」
「何回も言ってるけど、お礼は取ってくれた俺の友達にだね。」
「あぁ、もちろん分かってるさ。」
そんな昔話をしてたら、そろそろ最寄り駅に到着するみたいだ。
「次は〜九段下〜九段下〜。」
会場に近づくにつれて緊張が高まってきた。
「よし、降りるか。」
「だな。」
駅を出て俺たちは目的地に向かって歩き出した。
そう、日本武道館へ。
(完)
第2話「さらば青春の光」(2008.10.1〜12.2掲載)
無事に日本武道館に辿り着いたユキトとマサカズ。
「おぉ!ここが武道館かぁ!!」
「だな。」
今日は全日本プロレスの試合を観戦しに来たのだ。
俺は生でプロレスを観るのは初めてなので、すでに興奮&緊張している。
とりあえずチケットを確認して座席を探そう。
「ここかな?」
「だな。」
目の悪い俺でも全然見える席で良かった。
「結局間に合わなかったみたいだね。」
「だな。」
どうやらすでに始まっており、今は第2試合のようだ。
初めて生で観るプロレスはどれも興奮のルツボ!
永源遥のツバ飛ばしを実際に見れたりと、前半戦から早くもヒートアップ!
「うぉーーーー!」
「うぉーーーー!」
俺もマサカズも拳を振り上げてマットに釘付け!
盛り上がり疲れたちょうど良いタイミングで休憩が入った。
「ふぅ、すでに疲れたよ。」
「だな。」
「でもやっぱり生で観ると迫力あるよな〜!」
「これからもっと盛り上がるし!」
「昔から全日ファンだからマジで感激だよ!!」
「俺もどっちかというと全日の方が好きだな。」
「テリー・ゴディ&ウィリアムズの殺人魚雷コンビは強かった!」
「ハンセン&ブロディーも忘れちゃいけませんぜ!」
「あとは鶴田&谷津の五輪コンビ!」
「三沢&小橋は新世代最強タッグ!」
「そのライバルといえば川田&田上か。」
「その後の世代に秋山、菊池とかがいるんだよな。」
「他には当然、馬場社長は忘れてはいけない!」
「人間発電所、ブルーノ・サンマルチノも思い出してほしい。」
「テリー・ファンク&ドリー・ファンクJr.のファンク兄弟も強かったよね!」
「ヒール路線ではザ・シークが一番!」
「まぁ、ブッチャーは言わずともお分かりだろう。」
「タイガー・ジェット・シンのサーベルは卑怯だよな(笑)」
「ブロディーのチェーンは危険過ぎ!」
「ブッチャーの地獄突きも危ないな。」
「ウィリアムスの殺人バックドロップで小橋が失神した事もあった!」
「あー、あったあった。アレは危険過ぎだわな。」
「団体は違うけど北斗のノーザンライトボムが最凶技No.1かな〜。」
「アジャの裏拳もエグいよな。」
「ダイナマイト関西のスプラッシュ・マウンテン喰らったら絶対死ぬ!」
「ホーガンのアノ太い腕でアックス・ボンバー喰らっても死ねる!」
「橋本の蹴りもヤバイぞ!」
「三沢のフェイスロックも何気にエグイよな。」
「鶴田のウォー!の後のジャンピングニーは大好き!」
「好きな技ならやはりブロディーのキングコング・ニードロップかな。」
「小橋のグッ!と拳を胸の前で握ってからのムーンサルトも大興奮!」
「ハンセンのディーッヤ!の後のエルボーもイイよな。」
「亡くなったプラム麻里子のサブミッションは全て好きだった・・・。」
「豊田真奈美のジャパニーズ・オーシャン・サイクロン・スープレックスも好きだな。」
「堀田祐美子の蹴りはどれも重さがありそうだよね。」
「尾崎魔弓のテキーラ・サンライズは綺麗だと思う。」
「パワー・ウォリアーとホーク・ウォリアーのヘルレイザーズのコンビ技は全てが強烈だった!」
「あぁ、確かパワー・ウォリアーって佐々木健介だったっけ。」
「まさかの日米タッグ!」
「あとは田上の喉輪落としが豪快で好きかな。」
「ジョニー・エースのエースクラッシャーもイイなぁ〜。」
「ドリー・ファンクJr.のスピニングトゥホールドはカッコイイ!」
「長州はサソリ固めより、リキ・ラリアットだよね!」
「猪木も卍固めより、延髄斬り!」
「天龍のパワーボムは圧巻!」
「フリッツ・フォン・エリックのアイアンクローは有名!」
「プロレスの神様、カール・ゴッチのジャーマン・スープレックスは美しい・・・。」
「馬場社長の16文キックはお約束で喰らわないといけないよな。」
「お?そろそろ休憩が終わりみたいだね。」
「だな。」
どうやらこれから後半戦が始まるみたいだ。
前半は若手レスラーの試合が多かったが、後半に入ってからは名前の知ってる選手がようやく出始めた。
「盛り上がるのはホントこれからだね!」
「だな。」
そうこうしてると試合も進んでセミファイナルまでやってきた。
「お?4人タッグ!?」
「だな。」
リングアナのアナウンスにより4人の名前が発表された。
「うぉー!小橋〜!!」
「小橋ーっ!!」
「秋山〜!」
「秋山ー!」
小橋と秋山のコンビか。
「うぉー!三沢〜!!」
「三沢ーっ!!」
三沢のパートナーは・・・?
「小川〜?」
「小川か・・・」
足を引っ張りそうな予感だ。
試合が始まり、白熱した戦いとなった。
一進一退の攻防戦を繰り広げ、応援するユキトとマサカズも興奮!
「ウォー!!」
「ウォォーー!!」
盛り上がった4人タッグも終わり、ついに本日最後の試合となった。
どうやらタイトルマッチのようだ。
しかも三冠ヘビー級王座!
「おぉ!田上vsベイダー戦か!」
「だな。」
「がんばれー!田上ー!!」
「田上ー!!」
会場の全員が見守る緊張の中、試合が始まった。
試合は沈黙を保ってるかのような重い雰囲気。
両者ともパワー型なので派手な飛び技は無く、打撃を打ち合っている。
そんな試合展開だったが、開始10分過ぎたところでベイダーが動いた!
「頑張れ、田上ーー!!」
「田上ーー!!」
2人の声援もむなしく、その数秒後に田上はマット上に横たわっていた。
そして三冠ヘビー級新王者はベイダーとなった。
「ちょっと強過ぎたね〜。」
「だな。」
「セミファイナルのタッグマッチの方が盛り上がった気が・・・。」
「それを言ってはいけない。」
そんな事を言っていると突然、会場内に音楽が流れ始めた。
「まさか、この曲は・・・?」
「どうやらそのまさからしいな。」
「マジかよ!?」
ユキトとマサカズは胸の内に高鳴る興奮を抑え切れなかった。
そして彼が会場に現れたのであった。
彼の名は「ジャンボ鶴田」という。
音楽が鳴り止み、会場は静かになった。
そしてジャンボ鶴田が話し始めようとしていた。
「何だろうネ?」
「まさか・・・。」
ジャンボ鶴田がポツリと語り始めた話の内容はこうだった。
今日をもって正式に引退する、と。
「マジかよ・・・。」
「・・・・・・。」
あまりにもショッキングな内容に2人は言葉を失った。
派手な演出も無く、ただただ重い告白。
今年になって馬場社長が亡くなってから全日本プロレスが少し変わった。
そんな中での名選手の引退宣言。
「世界で一番好きなプロレスラーだった・・・。」
「・・・・・・。」
ジャンボ鶴田の引退を見届る事ができて本当に良かった、そう想う2人であった。
「さて、帰ろうか。」
「だな。」
目頭が少し熱くなってるのをこらえて、ユキトとマサカズは帰路に就いたのであった。
(完)
第3話「貴様、それでも軍人か!」(2008.12.4〜2009.1.15掲載)
鎌田に戻ったユキトとマサカズ。
さっきまでの興奮と悲しみがまだ忘れられないでいた。
「もう3月かぁ。」
「だな。」
駅からJOY裏に向かって歩き出し、今日はここで解散しようと思っていた。
お金も無い事だしな。
と、ここでマサカズが声を掛けてきた。
「このあとユキトさえ良ければ飲みに行かない?」
「え?でも今お金持って無いし・・・。」
「別にいいよ。オゴるからさ。」
「給料前でマジでお金持ってないよ!ホントにイイの!?」
「あぁ。今日付き合ってくれたお礼と思って。」
「超嬉しい♪ゴチになります!」
「いえいえ。」
と、ほんの10秒前まで帰る気マンマンだったのが嘘みたいだ。
飲みに行くと決まった事だし、さっそくお店を探すか。
「どっか行きたいところある?」
「今日は土曜だし、今は・・・9時か。う〜ん、どこも混んでそうだなぁ。」
「空いてるか分からないけど、どりあえずあそこに行ってみようか。」
「どこ?」
「白木屋。いい?」
「別にいいよ。」
と、やっぱり混んでいそうな白木屋に向かった。
白木屋を選んだ理由は特に無い。
しいて言えばここ(元JOY裏)から近いのと、普通に安いから。
充分な理由だな。
あとは普通にメニューがたくさんあるし、飲み物の種類も困らないであろう。
オゴってもらうとはいえ、無難な店を選ぶのが正解。
まだ入れると決まったわけではないけどね。
そんな事を考えている間に、白木屋が入ってるビルの前に辿り着いた。
「空いてるとイイんだけどな〜。」
「だな。」
螺旋階段を登り、3階にある白木屋のドアの前にやって来た。
不安と期待の気持ちが交差しつつ、ドアを開けて入るとすぐに店員らしき男がやって来て、俺たちに気付いた。
「いらっしゃいませ〜!」
「2人ですけど入れますか?」
「確認しますので少々お待ちください。」
それから間もなくしてから、店員が戻ってきた。
「お待たせしました。ただ今お2人様入れますよ。」
「じゃあお願いします。」
「はい、それではご案内しますね。こちらです。」
と、通された席は座敷の4人掛けテーブルだ。
俺とマサカズは靴を脱ぎ、座敷に上がった。
「良かったね、入れて。」
「だな。」
精神的にも疲れていたのでひとます腰を下ろして座った。
「ご注文がお決まりになりましたら、お呼びください。」
「とりあえずビール2つ!」
「だな。」
「はい、かしこまりました。」
しばらくすると、店員がビール2つを持ってきた。
「お待たせしました。ごゆっくりどうぞ。」
ファーストオーダーが来て、これでやっとくつろげるな。
「今日はホントにお疲れ様!それでは、ジーク!」
「ジオン!!」
鎌田でまれに見かける乾杯の儀式だ、気にするな。
すきっ腹では飲めないからテキトーにツマミを注文した。
「改めて、今日は誘ってくれてありがとう!」
「いえいえ、こちらこそ急に誘って悪かったね。」
「初めて観に行ったプロレスがまさか鶴田の引退セレモニーだとは思わなかったよ!」
「三冠王座よりそっちの方が重要だったな。」
「馬場社長も亡くなったばっかりだし、これから全日どうなるんだろうね。」
「ちょっと心配だよな・・・。」
そんな全日をホント心配してるプロレス馬鹿2人は、その後も熱くプロレス談義に花を咲かせたのであった。
それから1時間後。
「そういえば神やネーさんは元気!?」
「あぁ、ネーさんはたまに会うけど元気だよ。神は相変わらずだな。」
「そうか。」
「ユキトは今彼女いるの?」
「1月に別れたばっかり。」
「いたんだ?知らなかったよ。」
「こないだの事だから、まだ忘れられないけどネ。」
「そっか。」
「マサカズは女性の知り合い多いんだっけ?」
「それなりにはいるよ。年上が多いけど。」
「いいなぁ〜、うらやましいよ!」
「ほとんどの人は彼氏がいるけどね。」
「じゃあ、マサカズは女性と話すのも慣れてるよね?」
「普通にね。」
「ちょっと女の子呼んでみようか?」
「はぁ?今から?」
「うん、今から。ダメかもしれないけど誘ってみるよ。」
「マジかよ!」
すぐさま俺は知り合いの女の子に電話した。
・・・・・・出た!
「もしもし?」
「ユキトだけど、今何してるの?」
「今は〜、これからお風呂入るの♪」
「そっか。」
「どうしたの?」
「いや、今友達と飲んでるんだけどヒマかなと思って。」
「どこで飲んでるの?」
「鎌田西口の白木屋。来る?」
「うん!お風呂入るから1時間後くらいになるよ。」
「分かった。また出る時に連絡ちょうだい!」
「あ、ハルコも誘ってみるネ♪」
「分かった。じゃあ、またあとでね。」
俺は電話を切り、目の前にいるマサカズに事情を話した。
「今、カリンっていう子に電話したら、早ければ1時間後に来れるみたい。」
「・・・・・・そうなんだ。」
「ひょっとしたら、さらにもう一人増えるかもしれない。」
「・・・・・・分かった。」
「まさかこんな急な連絡で来てくれるとは思わなかったよ!半分冗談だったし。」
「・・・・・・なるほど。来るなら待つしかないか。」
「急に呼んじゃって悪いね。」
「呼んだものはしょうがないな。」
夜遅くの急な誘いで、はたして本当に女の子は来るのか!?
そんな真冬3月のとある日の真夜中の出来事であった。
(完)
第4話「THE POINT OF LOVERS' NIGHT」(2009.1.17〜3.3掲載)
鎌田西口の白木屋で飲んでいるユキトとマサカズ。
今の時刻はそろそろ真夜中に差しかかる頃。
電話してから1時間経つが連絡が来ない。
「そろそろ連絡あってもイイんだけどなぁ〜。」
「どうしたんだろうね。」
「もうちょっと待ってみよう。何かあったのかもしれないし。」
「分かった。」
それから30分が経って、そろそろこっちから電話してみよかと思ったら携帯が鳴った。
「もしもし?」
「もしもし?いま準備してるから、あと30分くらいで着くよ!」
「分かった!待ってるよ♪」
「うん!あ、ハルコもOKだから2人で向かいま〜す♪」
「気を付けてネ〜!」
「は〜い♪」
どうやらカリンはホントにハルコも連れて来るようだ。
「あと30分くらいで女の子たちが来るよ♪」
「了解。」
「実は誘ってみたのは今日が初めてでドキドキした!」
「そうなの?どんな子が来るのか分からないけど仲良さそうだね。」
「前の職場で一緒だったからね。」
「ふ〜ん。」
「来てからちゃんと紹介するよ。」
「分かった。」
この後まさかあんな事が起きるとは、俺たちは考えてもいなかった。
カリンの電話を切ってから約20分後。
俺の携帯が鳴った。
「もしもし?」
「私。いまお店のビルに着いたよ〜。」
「早かったね!?お店入って奥の座敷にいるよ!」
「分かった!すぐ行きま〜す♪」
どうやら着いたみたいだ。
「今着いたって。もう来るよ。」
「了解。」
と、話していると、お店の入り口から明るい声が聞こえてきた。
カリンとハルコだ。
俺は2人に手を振って場所を知らせた。
「こっちだよ〜 !」
「あ〜、いた!」
俺たちはカリンとハルコを快く迎え入れた。
「お疲れ〜!こんな時間に呼んで悪かったね。」
「ううん、今日はヒマだったし。」
「良かった。とりあえず座んなよ。」
そう言って、やっと4人でテーブルを囲む事ができた。
カリンとハルコのファーストドリンクも来たので、改めて乾杯しよう。
「それじゃ〜、お疲れ様〜!」
「お疲れ〜!」
こうしてユキト・マサカズ・カリン・ハルコによる飲み会が始まった。
「とりあえず俺がみんなを紹介するよ。」
「うん。」
「こっちが俺の中学の時の同級生のマサカズ。」
「マサカズです、ヨロシク。」
「ヨロシク〜!」
「で、こっちがカリンで隣の子がハルコ。さっき軽く言ったけど、2人とも俺と職場が一緒だったんだ。」
「カリンとハルコだね、ヨロシク。」
「は〜い♪」
これでひとまず、みんなの自己紹介が終わった。
さて、マサカズも含めて交流を深めるか。
「そういえば年いくつだっけ?」
「私もハルコも16(歳)だよ。」
「そうそう、ピチピチ♪」
「・・・・・・。」
何だかマサカズの俺を見る目が冷たい。
気のせいだろう。
それからはみんなで楽しく話をしながら食べて飲んだ。
マサカズがあんまり会話に絡んで来ないなぁ。
う〜ん、年下の女の子に慣れてないのかな?
まぁ初対面だし、しょうがないか。
ホント急に合わせちゃったわけだし。
俺はみんなに気を使いつつ、場を盛り上げようとした。
その時、マサカズが俺に話しかけてきた。
「ゴメン、ユキト。酔い醒ましでちょっと外に行ってくるよ。」
「えぇ?ちょっと待ってよ!」
「少ししたら帰って来るからさ。」
「待ってよ〜!!」
有無を言わさずにマサカズは店を出たのであった。
去り際にサイフを預けてくれたのは、もう戻って来ないのか?
カリンとハルコは早くも酔っ払っていて、全く気にしてない様子。
・・・・・・ま、いいか。
それからしばらく残った3人で楽しく飲んでいた。
が、やっちまった・・・。
居酒屋で寝ちゃったよ!
俺が一番嫌う事を自分でやっちまうなんて!
身体は起きたが頭がかなり重い。
飲み過ぎたようだ。
辺りを見回すとカリンとハルコも酔い潰れて寝ていた。
携帯で時間を確認すると、30分くらい寝てたみたいだ。
よく店員に起こされなかったなぁ〜。
そういえばマサカズはまだ戻ってきてないのか?
〜その頃のマサカズ〜
俺は店を出た。
ただ、あの飲みの席から離れたかっただけだ。
ふだん女性と接してるといっても、ほとんどが年上。
あんな若い子と何を話せばイイのか分からない・・・だからあの場から逃げたのだ。
まぁ、ユキトの好みは見なかった事にしよう。
とりあえずどこかでゆっくりしたい。
「あそこに行くか。」
俺は西蒲田公園に向かった。
お店からは少し歩くが、それが心地良い。
公園に着くと俺はコーヒーとタバコで心を潤した。
「ふぅ・・・ちょっとしたら戻るか。」
俺はもう一本タバコに火を点けた。
コレを吸ったら店に戻るとするか。
と、その時俺の携帯が鳴った。
ユキトからだ。
モチロンすぐに出た。
「もしもし?」
〜その頃のユキト〜
寝てる間にマサカズから着信も無いし、まだ戻って来てないか。
とりあえず2人を起こして早く店を出よう!
「おい、カリン!ハルコ!起きて!!店を出るよ!!」
俺はカリンとハルコをゆすって起こした。
セ、セクハラじゃないからねっ!
「う〜ん・・・気持ち悪い〜」
「私も〜」
2人はフラフラしながら女子トイレに入って行った。
それから5分後、2人はゲッソリしてトイレから出てきた。
「大丈夫?」
「眠いし、気持ち悪いよ〜」
「私も〜」
という事でお店を出る事にした。
幸いマサカズから預かった財布があるから、お金は足りるだろう。
まず2人を先に店の外に出してから会計をした。
「1万4860円になります。」
俺はマサカズの財布から全額出すのに心が痛んだ。
そして支払いを済ませてマサカズに電話した。
「もしもし、マサカズ?」
戻らない男と酔い潰れた3人の冬物語は、もう少し続くのであった・・・。
(完)
「もしもし?」
「今お店出たよ。みんなビルの前で待ってるから戻ってきて!」
「了解、すぐ行く。」
ちょうど西蒲田公園から戻ろうとしていたマサカズ。
白木屋で酔い潰れて寝てしまったユキト・カリン・ハルコの3人。
全員が合流したのは電話の会話が終わってから10分後のことだった。
「お待たせ〜」
「お帰り〜。とりあえず今日はこれで解散しようよ。」
「3人ともヤバそうだし、そうした方がイイね。」
確かにその通りで、実は俺も気持ち悪い。
ハルコは何とか立てるけど、カリンはヤバいな。
元気なのはマサカズだけか。
「カリンは家近いの?」
「私は大森の方〜」
ちょっと遠いし、今のカリンだと帰るまで危ないな。
よし、送ってやるか!
べ、べつに下心なんて無いんだからね!!
「ハルコの家はどの辺?」
「カリンちの近くだけど、彼氏の家がすぐ近くだから泊めてもらうよ。」
「そうなんだ!?分かった。近いなら送らなくても平気?」
「うん、大丈夫!ホントすぐ近くだから。」
よしっ!
これで邪魔モノはいないな!!
もちろんマサカズには帰ってもらおう。
「俺はカリンを送ってくよ。」
「2人とも大丈夫?俺もついて行こうか?」
「大丈夫!任せてくれ!!」
「ホント大丈夫?心配だなぁ〜。」
「大丈夫だって!ヤバかったらすぐに連絡するから〜!」
「分かった、じゃあ俺も帰るわ。今日はお疲れ〜。」
「お疲れ〜!またね。」
「お疲れ様でした〜」
「・・・おつかれ〜」
ハルコは彼氏の家に泊まると言って鎌田東口に向かった。
マサカズは家のある矢口方面に向かって自転車を走らせた。
俺はカリンをちゃんと家まで送らないといけないな。
送ると言っても俺は歩きで、カリンは自転車。
ここは当然、カリンの自転車で2人乗りだな。
後輪にステップが付いてるから問題ない。
「カリン、送ってくから後ろ乗れる?」
「うん、ありがと〜」
「乗った?じゃあ行くよ!」
「うん!」
俺はカリンを後ろに乗せて出発した。
「どこに向かえばイイの?」
「大森の方だよ〜」
「なら、まずは東口に出よう。」
東口に先に向かったハルコに気を付けて、大森を目指そう!
まずは線路沿いに進んでガード下をくぐり抜け、西口から東口に行く事ができた。
「ねぇ、起きてる?」
「うん、気持ち悪いけど〜」
「俺さぁ、この辺の道とか住所って全く分かんないから誘導してくれる?」
「うん、イイよ〜」
「じゃあ、基本は真っ直ぐで曲がる時に右とか左って言ってネ!」
「うん、分かった〜。あ、次の十字路を右ね!」
「よし、了解!」
もちろん俺は左に曲がった。
「何で左に曲がるの〜!右だよ〜!」
「まぁまぁ、方角は合ってるでしょ?」
「合ってるよ〜」
俺はカリンと少しでも長く一緒にいたいから、わざと遠回りをする事にした。
ちなみにカリンに恋心が芽生えたのは、今日の飲みに来てくれてからだ!
勘の良いマサカズとハルコにはバレてるだろう。
カリンとは以前一緒だった職場も時間帯が違かったから面識があるくらいで、プライベートで飲んだのは今回が初めて。
というか、初めて誘って来てくれるだけで嬉しいって!
そうだ、カリンに大事な事を聞かなくちゃ!!
「ねぇ、カリンって今彼氏いるの?」
「いないよ〜」
「じゃあ今は恋してないの?」
「好きな人はいるよ〜。片想いかな〜」
「・・・そうなんだ」
カリンには好きな人がいるのか。
でも彼氏じゃないならチャンスはある!
カリンの好きな人がどんな人か気になるなぁ〜。
そうだ!
「ねぇ、片想いの人に気持ちを聞いた事あるの?」
「うぅん、ない」
「じゃあさ、今電話して聞いてみれば?」
「えぇ〜?恥ずかしいよ〜」
「こんな時間だから電話に出るか分からないけどさ、ねっ?」
「・・・うん、分かった。掛けてみる。」
勇気を振り絞って、カリンは好きな人に電話を掛けた。
・・・・・・出た!
「もしもし、カリンだけど起きてた?」
俺はどこだか知らない路地裏に自転車を停めた。
カリンは好きな人と真剣に話をしてるようだ。
話が聞こえないくらいの距離をとって、少し休む事にしよう。
それから数分後。
どうやら電話が終わったみたいだ。
凄い気になるよぅ〜!
ガマンできずに、すぐにカリンに聞いてみた。
「どうだった?」
「私の事どう思う?って聞いてみた。」
「返事は聞けた?」
「うん・・・仲の良い友達って言われた。好きだけど友達としてだって・・・。」
「・・・・・・。」
俺がカリンに答えを急かしたのが悪い気がした。
カリンもヒドく落ち込んでいるし。
どうしたらイイのか・・・。
とりあえず、カリンを家まで送ろう。
「帰ろう、カリン。後ろに乗って。」
「うん」
沈んでるカリンを後ろに乗せ、再び自転車を走らせた。
右、左、右・・・とカリンの家に順調に向かっている。
その間眠たい俺とカリンは他愛ない話をしながら、お互いを寝かさないようにした。
その時、突然俺の携帯が鳴った!
誰だ?こんな時間に。
「もしもし?」
「俺だけど、大丈夫かい?」
電話の声はマサカズだった。
別れて帰宅してからも心配してくれてたみたいだ。
〜その頃のマサカズ〜
鎌田でみんなと別れた俺は、見えない不安を抱きながら帰る事にした。
「カリンはかなり酔っ払ってたけど大丈夫かな〜。」
一緒にいるユキトも心配だな。
「まぁ、大森だったらそんなに遠くないから大丈夫だろう。」
俺はチンタラ自転車を漕いだ。
「それにしても寒いなぁ。」
今は3月、しかも夜中の3時。
寒いのは当たり前か。
・・・何か心配だ。
今ならまだ追いつけるかもしれないから、電話してみるか。
頼むから出てくれよ。
・・・・・・出た!
「もしもし、ユキト?」
「もしもし?」
「俺だけど、大丈夫かい?」
「なんだ、マサカズか。ちょっと気持ち悪いけど、ちゃんと送ってるよ。」
「そう。何かあったら連絡してね。」
「分かった。ありがとね〜」
俺は電話を切った。
少なくともユキトは大丈夫そうだから心配ないか。
「帰ろう。」
そして俺は再び自転車を走らせた。
蓮沼より不安を込めて・・・。
(完)
最終話「大田区の中心で愛を叫んだケモノ」(2009.5.10〜12.16掲載)
あれから数分後。
俺は第二京浜の手前にいる。
横断歩道の赤信号が青に変わるのを待っているところだ。
ここを渡れば家はすぐそこ。
だがやっぱり、あの2人が心配だ。
俺は青になった信号を渡らずに、ユキトに最後の電話を掛けた。
「電話に出なかったら帰ろう。」
・・・・・・出ないか?
・・・・・・頼む、出てくれ!
「もしもし?」
出た!
「もしもし?俺だけど今どこ?」
〜その頃のユキト〜
さっきの電話でマサカズはホントに心配してくれてるみたいだ。
寒いし、眠いし、気持ち悪いから早くカリンを家まで送らないと。
「そういえばカリンは昔からこの辺に住んでるの?」
「ん?そうだよ〜」
「へ〜。こっちで道合ってる?」
「うん。もう少し行くとね〜、私が通ってた中学校だよ〜」
「へぇ〜」
カリンに言われた通りに進むと、何やら知らない川が見えてきたぞ。
川沿いを走っていくと、急激な酔いが俺を襲った!
「カリン、ちょっと休んでイイ?」
「ん?分かった〜」
すぐさま自転車を停め、俺とカリンは塀に寄り掛かって座ろうとした。
と、その時携帯が鳴った。
「もしもし?」
「もしもし?俺だけど今どこ?」
マサカズからだ。
「チョット待って、・・・カリン、ここどこ?」
カリンはたまたま目に入った川の看板を見た。
「んとねぇ〜、内川だよ〜」
どこだよ、内川って!?
「内川!?どこそれ?・・・って大丈夫?」
「ダメ、ギブアップ」
俺はこれ以上ないくらい寒くて眠くて気持ち悪かった。
「心配だから今からそっちに行くよ!」
「×◎△?▼#☆・・・」
ホントもうダメそう。
電話を切って、俺とカリンは塀に寄り掛かって座った。
するとカリンも安心して気分が楽になったのか、一気に酔いが回ってきたようだ。
「大丈夫、カリン?」
「もうダメ〜」
2人ともヤバイし、ちょっとここで休むか。
そういえば、マサカズはホントに来るのかな?
それよりも今はチャンスでしょ!
何がだ!?
と、俺はわずかな理性と打算と欲望でカリンを介抱する事にした。
「カリン〜、起きてる〜?」
「ん〜?眠い〜」
しばらくしてカリンの小さな体に寄り添って、彼女の寝顔に見とれていた。
「可愛いなぁ〜♪」
ここで酔っ払った頭脳をフル回転させて考えた。
「もしマサカズがホントに来るとしたら、早くても30分は掛かるな」
俺は急いで、そして焦らずにカリンを抱きしめた。
「寒いから2人でくっつけば温まるよね!」
という理由(言い訳)が彼女に伝わったのかは、カリンのみぞ知る。
「・・・・・・」
寝ちゃったのかな?
「ま、いいか。」
「それにしても抱き合ってると、ホントに温かいなぁ〜。」
俺は寒い真冬の夜中に何をやってるんだろうか、とは深く考えずに行動した。
「カリン・・・好きだよ。」
そう言ってカリンの唇に軽くキスをした。
「・・・・・・」
お酒の力と勢いにまかせて、さらに攻めよう。
抱き合った状態でカリンの上着の後ろから手を入れた。
そして手探りでブラのホックを探す。
「あった。」
いともカンタンにブラを外す事ができた。
そんな自分の才能に満足する事無く、次に進もう。
俺は体勢を入れ替え、今度はカリンを後ろから抱きしめた。
「・・・・・・」
上着の中から抱きしめ、カリンの小さな胸に触れてみた。
何だか体が温かくなってきたぞ!
そして俺はカリンの・・・。
〜その頃のマサカズ〜
さっきの電話だとユキトはかなりヤバそうだな。
何か胸騒ぎがする・・・。
不安というか何というか。
目の前の第二京浜を渡れば家に着くが、俺はすぐさま蒲田に引き返した。
「そういえば内川って言ってたけど、どこだよそれ!?」
そんな川は全く知らん!
確かカリンという子の家が大森の方らしいから、そっちに向かってみるか。
まずは蒲田東口に出て、大森方面に自転車を走らせた。
「っていうか、内川が分からないのにどうすればイイんだ?」
2人が心配で不安が募り、深夜の真冬の風がいっそう冷たく感じた。
しばらく進むとコンビニが見えた。
「そうか、近くに住んでいる人なら知ってるかも。」
そう考えてると、たまたまコンビニからカップルが出てきた。
ちょうどいい、あの人に聞いてみよう。
「すいません、内川っていう川を探してるんですけど、どこか知ってますか?」
「あぁ、内川ならそこをしばらくまっすぐ行ったらあるよ。」
「ありがとうございます!」
カップルにお礼を言ってから、急いで内川へと向かった。
なぜコンビニの店員じゃなくて、カップルに聞いたのかだって?
それがアドリブだ!
電話を切ってから30分経つけど、あれから連絡は無いな。
2人は大丈夫だろうか・・・。
教えてもらった道をしばらく行くと・・・アレか!?
川が見えてきたぞ!
蒲田で有名な呑川じゃないから、たぶんアレが内川だろう。
おそらく正解であろう川に沿って行くと、交番が見えた。
「大変だな、警官も。」
と、心にも無い事を考えてると、すぐ近くに人影を発見!
どうやら2人組で座ってるようだ。
たぶんユキトとカリンって子だろう。
俺は急いで掛け寄った。
「お待たせ、大丈夫だった?」
「うん、気持ち悪いけどね」
ユキトは大丈夫そうだけど、カリンって子はヤバそうだ。
・・・?
よく見ると、彼女の服装がどこかオカシいな。
着ている服が少し乱れているのは気のせい?
おそらくユキトの仕業だろう。
深くは追求しないが、こんな真冬の夜中に何をやってるのか。
しかもすぐ近くに交番があるというのに。
とりあえず迎えに来て正解だったようだな。
「悪いね、マサカズ」
「いえいえ。まずはカリンを家まで送ろうか」
「そうだね」
寝ているカリンを起こして、3人でカリン宅に向かった。
5分もしないうちに無事到着。
っていうか、何であんな所で休んでたんだ!?
あとで詳しく聞いてみるか。
「カリン、ここで合ってる〜?」
「うん、ありがと〜」
「今日は楽しかった♪また飲もうね!」
「うん♪」
と、その時だった。
カリンの家の中の明かりが点いた。
どうやら親御さんが気付いたらしいな。
とっととその前に退散しよう。
「じゃあね、カリン!またね♪」
「またね〜♪」
俺とユキトは急いでカリン宅から離れたのであった。
とりあえずは大きな通りで出よう。
「マジで危なかったね!」
「あぁ。お母さんが起きたんだろうね。」
「さすがに16歳の娘を夜中まで付き合わせたのはマズかったな〜」
「あぁ。」
っていうか、それってアウトじゃん!
しばらくすると池上通りに出た。
池上と大森をつなぐ道路だ。
「どっちが池上方面だと思う?」
「こっちだ!」
ユキトが選んだ方面に向かった。
しばらく行くと案内標識が見えてきたぞ。
「え〜と・・・この先は大森。」
「引き返そう。」
どうやら2択をハズしたようだ。
すぐさま来た道を引き返し、池上方面に向かって走った。
言い忘れたが、ユキトはカリンの自転車を借りて帰っている。
まぁ、返すのにまた会う口実が出来て嬉しい事だろう。
「ちょっとコンビニ寄っていい?」
「あぁ。」
池上通り沿いにあるコンビニに立ち寄った。
どうやらユキトはこんな寒い真冬の真夜中にアイスが食べたくなったらしい。
俺はスポーツ新聞を買って外に出た。
「よくこんな寒いのにアイスなんて食べるなぁ。」
「ちょっと酔い醒ましで食べたくなった。」
そんな能天気な会話をしながら再び池上方面に向かった。
もうすぐ地元に近い池上だ。
午前5時になろうとしているが、夜明けはまだ遠い。
家に帰ったら深い眠りにつこう。
何も考えずに。
「今日はホントいろいろあったね〜」
「あぁ。」
「ムリヤリ付き合わせちゃって悪かったし。」
「こっちも付き合ってくれて助かったよ、ありがとう。」
「いえいえ。」
話していると池上に到着。
そしてそのまま通過。
「今日はこの辺で解散しようか?」
「あぁ、そうしようか。」
次の角で今日が終わる。
「じゃあ、またね。」
「あぁ、お疲れ様。」
たった12時間の出来事が長く感じた。
思い出すのはまた今度にしよう。
あの時ユキトとカリンに何があったのか聞くのも。
さぁ帰ろう。
あとは目の前の第二京浜を渡るだけ。
家に帰ったら深い眠りにつこう。
何も考えずに。
<マサカズside 完>
〜その頃のユキト〜
「じゃあ、またね。」
「あぁ、お疲れ様。」
さて、家に帰るかな。
今日は楽しかった事がいっぱいあった♪
たぶん一生忘れない!
「小さかったけど、温かかったなぁ〜」
あの感触も一生忘れない!
「でもマサカズが来なかったらどうなってたんだろう。」
後から聞いた話だと、カリンと休んでたすぐ近くに交番があったとか。
嘘でしょ!?
ヘタしたら犯罪歴がたくさん付くところだったよ!
今考えると、よくマサカズはあの場所が分かったよな!
ほとんどノーヒントに近い状況だったはず。
「っていうか、あの時は酔っ払ってたからあんまり覚えてないや。」
そういう事にしておこう。
次の角で今日が終わる。
さぁ帰ろう。
カリンの自転車に感謝の気持ちを込めて。
家に帰ったら深い眠りにつこう。
何も考えずに。
<ユキトside 完>
〜その頃のカリン〜
「じゃあね、カリン!またね♪」
「またね〜♪」
ふう〜、飲み過ぎかな!?
気持ち悪いし、帰ってくる途中の記憶が少し無いし。
ユキトとマサカズって人に送ってもらって良かった。
でも絶対にユキトに胸触られた!!
今度会ったら文句いってやろう!
「オゴってもらったから、ま、いいか。」
あ、ユキトに自転車貸したままだ!
明日起きたら持って来させよう。
「もう寒いから寝よ〜」
さぁ眠ろう。
あとは電気を消すだけ。
またユキトに逢えるのを楽しみにして。
<カリンside 完>
劇終